JP4834353B2 - 車両用エネルギ吸収ビーム及び車両用ドア構造 - Google Patents
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例えば、車両の側部に設けられるドアは、衝突時に入力されるエネルギを十分に吸収しかつ変形量を低減するため、アウタパネルとインナパネルとの間の空間部内に、前後方向にわたして中空のパイプによって形成されたエネルギ吸収ビームであるサイドインパクトビームを配置したものが知られている。
そこで、サイドインパクトビームは、比較的軽量でありかつ断面形状を成型する自由度が大きいアルミニウム合金の押出材を用いることが提案されている。
本発明の課題は、エネルギ吸収性能を向上した車両用エネルギ吸収ビーム及び車両用ドア構造を提供することである。
請求項1の発明は、衝突に起因する荷重が入力される入力面部と、前記入力面部と前記荷重の入力方向に間隔を隔てて対向して配置される支持面部と、前記入力面部と前記支持面部との間にわたして設けられ、相互に離間して配置された複数のウェブ面部とをそれぞれ有し、前記荷重の入力方向と略直交する方向に離間して配置された第1の閉断面部及び第2の閉断面部と、前記第1の閉断面部における前記入力面部の前記第2の閉断面部側の端部と、前記第2の閉断面部における前記入力面部の前記第1の閉断面部側の端部とを接続する入力側ブリッジ部とを備える車両用エネルギ吸収ビームにおいて、前記第1の閉断面部における前記第2の閉断面部と対向するウェブ面部は、前記第2の閉断面部側に向けて凸となる凸面状に形成され、前記第2の閉断面部における前記第1の閉断面部と対向するウェブ面部は、前記第1の閉断面部側に向けて凸となる凸面状に形成されることを特徴とする車両用エネルギ吸収ビームである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両用エネルギ吸収ビームにおいて、前記入力側ブリッジ部は、前記第1の閉断面部及び前記第2の閉断面部の前記ウェブ面部よりも面剛性を低くしたことを特徴とする車両用エネルギ吸収ビームである。
請求項5の発明は、請求項4に記載の車両用エネルギ吸収ビームにおいて、前記第1の閉断面部における前記第2の閉断面部と反対側のウェブ面部が最も前記第2の閉断面部側から離間する箇所は、前記第2の閉断面部における前記第1の閉断面部と反対側のウェブ面部が最も前記第1の閉断面部から離間する箇所と、前記荷重の入力方向において略同じ位置に配置されることを特徴とする車両用エネルギ吸収ビームである。
請求項6の発明は、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車両用エネルギ吸収ビームにおいて、前記第1の閉断面部と、前記第2の閉断面部と、前記入力側ブリッジ部と、前記第1の閉断面部の前記支持面部及び前記第2の閉断面部の前記支持面部間を連結する支持側ブリッジ部とを一体に形成したことを特徴とする車両用エネルギ吸収ビームである。
(1)第1の閉断面部、第2の閉断面部の相互に対向するウェブ面部を、他方の閉断面部側に凸となる凸面状に形成することによって、これらのウェブ面部の圧縮荷重による変形は、入力方向における中間部が相互に近接する変形モードとなる。そして、これらのウェブ面部が相互に当接して干渉することによって、エネルギ吸収ビームの変形に対する抗力を増大することができ、エネルギ吸収性能を向上することができる。
(2)第1の閉断面部、第2の閉断面部の相互に対向するウェブ面部が他方の閉断面部側に最も近づく箇所を、荷重の入力方向において略同じ位置に配置することによって、これらのウェブ面部どうしを確実に当接させることができ、上述したエネルギ吸収性能の向上をより確実にすることができる。
(3)面剛性をウェブ面部よりも低くした入力側ブリッジ部を設けることによって、第1の閉断面部、第2の閉断面部を連結してこれらが独立して制御困難な変形をすることを防止することができ、かつ適度に変形することによって第1の閉断面部、第2の閉断面部の潰れ変形に対して過度に干渉することがなく、これらの変形をコントロールしてエネルギ吸収ビームのエネルギ吸収性能を確保することができる。
(4)第1の閉断面部、第2の閉断面部の他の閉断面部と反対側のウェブ面部を、それが含まれる閉断面部の外側に凸となる凸面状に形成することによって、これらのウェブ面部は同じ閉断面部に含まれる他のウェブ面部とは反対側の方向に変形する。これによって、各閉断面部に含まれるウェブ面部どうしが干渉することを防止し、これらが相互に開くように変形することによって、エネルギ吸収性能をより向上することができる。
(5)エネルギ吸収ビームを一体に形成することによって、部品点数を低減し構造及び組立工程を簡素化することができる。
(6)第1の閉断面部、第2の閉断面部の入力面部を、ドアアウタパネルの傾斜に応じて車幅方向にオフセットすることによって、エネルギ吸収ビームをドアアウタパネルに沿った形状としてデッドスペースを低減し、エネルギ吸収性能を向上することができる。
図1は、本実施例の車両用エネルギ吸収ビーム及び車両用ドア構造を備えた車両の側面図である。図2は、図1のII−II部矢視断面図である。図3は、図1のIII−III部矢視断面図である。
車両1は、例えばセダン型の乗用車であって、フロントドア開口10、フロントドア20、パイプビーム30、アッパビーム40、メインビーム100を備えている。
フロントドア開口10は、フロントピラー11、センターピラー12、サイドシル13、ルーフ14に囲まれて形成されている。
センターピラー(Bピラー)12は、ドア20の後端部に設けられ、サイドシル13とルーフ14とにわたして設けられている。センターピラー12は、ドア20後端部の図示しないラッチ部が係合される図示しないストライカ部と、リアドアの前端部を回転可能に支持する図示しないヒンジ部が設けられている。
ルーフ14は、フロントピラー11及びセンターピラー12の上端部がそれぞれ接続されている。
アウタパネル21は、車両1の外表面部の一部を構成するフロントドア20の表皮部である。
インナパネル22は、アウタパネル21の車室内側に配置される部材であって、アウタパネル21に対してその前端縁部、後端縁部、下端縁部どうしをそれぞれ接合されている。
アウタパネル21及びインナパネル22は、例えば鋼板等の金属薄板をプレス加工して形成されている。
これらは、フロントドア20の前端部及び後端部においてインナパネル22に固定されている。また、このような領域においては、インナパネル22は、図示しないリンホースメント部材によってその補剛が図られている。
アッパビーム40は、パイプビーム30の上側に間隔を隔てて配置されている。アッパビーム40は、図2に示すように、入力面部41、支持面部42、上面部43、下面部44を備え、車幅方向に切って見た横断面が閉断面となっている。
支持面部42は、入力面部41の車幅方向内側の面と間隔を隔てて対向して配置され、インナパネル22に対して固定されるものである。
下面部44は、入力面部41、支持面部42の下端部間にわたして設けられ、下側が凸となるように屈曲させて凸面状に形成されている。
上面部43、下面部44は、車両1の側面衝突によって入力面部41が車幅方向内側に押圧された際に、座屈変形することによって衝突エネルギを吸収するウェブ面部である。上面部43、下面部44は、上述したように屈曲させて形成されていることから、その車幅方向における中間部分が相互に離間する方向に座屈するようになっている。
上述したアッパビーム40は、例えばアルミニウム合金の押出加工によって一体に形成されている。
また、メインビーム100は、図3に示すように、上側閉断面部110、下側閉断面部120、入力側ブリッジ部130、支持側ブリッジ部140を備え、これらは例えばアルミニウム合金の押出加工によって一体に形成されている。
入力面部111は、アウタパネル21の内面に対向して配置された面部であって、アウタパネル21側が凸となるように、その上下方向における略中央部に設けられた変曲点111aにおいて屈曲させて凸面状に形成されている。
ここで、アウタパネル21は、図2に示すように、メインビーム100と対向する範囲においては、車幅方向における位置がその下側ほど車体中央側となるように傾斜して配置されている。
下面部114は、入力面部111、支持面部112の下端部間にわたして設けられ、下側(下側閉断面部120側)が凸となるように、その車幅方向の中間部に設けられた変曲点114aにおいて屈曲させて凸面状に形成されている。ここで、変曲点114aは、下面部114が最も下方側に張り出した範囲内に設けられる。
また、上面部113、下面部114の変曲点113a,114aをそれぞれ挟んだ両側の領域は、略平面状に形成されている。
入力面部121は、アウタパネル21の内面に対向して配置された面部であって、アウタパネル21と対向する面は略平面状に形成されている。
支持面部122は、入力面部121の車幅方向内側の面と間隔を隔てて対向して配置されている。また、支持面部122は、支持面部112と同様にしてメインビーム100の前端部及び後端部においてインナパネル22に固定され、この固定に用いられるボルト112a、ナット112bが設けられている。
下面部124は、入力面部121、支持面部122の下端部間にわたして設けられ、下側が凸となるように、その車幅方向の中間部に設けられた変曲点124aにおいて屈曲させて凸面状に形成されている。ここで、変曲点124aは、下面部124が最も下方側に張り出した範囲内に設けられる。
また、上面部123、下面部124の変曲点123a、124aをそれぞれ挟んだ両側の領域は略平面状に形成されている。
入力側ブリッジ部130は、その板厚が上側閉断面部110の上面部113及び下面部114、下側閉断面部120の上面部123及び下面部124よりも小さく形成され、これによってこれらの各面部よりも曲げ剛性が小さくなっている。
上側閉断面部110の支持面部112、支持側ブリッジ部140、下側閉断面部120の支持面部122は、略同じ板厚を有しかつ連続した平板状に形成され、この板厚は上述した入力側ブリッジ部130よりも大きく設定されている。
図4は、メインビーム100を車幅方向に切って見た状態を示す横断面図であって、側面衝突による変形後の状態を示す図である。
アウタパネル21は、例えばバリアBの先端面部(試験の場合)又は他の車両のフロントバンパ等によって押圧され、変形しながら車幅方向内側へ変位し、メインビーム100の上側閉断面部110の入力面部111、入力側ブリッジ部130、下側閉断面部120の入力面部121を加圧する。
このとき、上側閉断面部110及び下側閉断面部120の上面部113,123の変曲点113a,123aはそれぞれ上側に変位し、下面部114,124の変曲点114a,124aはそれぞれ下側に変位する。
(1)相互に対向する上側閉断面部110の下面部114及び下側閉断面部120の上面部123を、他方の閉断面部側に凸となる凸面状に形成することによって、これらの面部の車幅方向の圧縮荷重による座屈変形は、それぞれの変曲点114a,123a付近の領域が相互に近接する変形モードとなり、これらの領域が相互に当接して干渉することによって、各面部をさらに変形させるのに必要な入力が増してメインビーム100の変形抗力が増大し、そのエネルギ吸収性能を向上することができる。
(2)上側閉断面部110の下面部114、下側閉断面部120の上面部123が他方の閉断面部側に最も近接する箇所である変曲点114a,123aを、荷重の入力方向において略同じ位置に配置することによって、これらの変曲点114a,123a近傍の領域どうしを確実に当接させることができ、上述したエネルギ吸収性能の向上をより確実にすることができる。
(3)上側閉断面部110の入力面部111と下側閉断面部120の入力面部121とを接続する入力側ブリッジ部130を設けることによって、例えば各閉断面部が独立して離間する方向に倒れ込むように変形する等、制御困難な変形を防止して両方の閉断面部の変形モードを規制することができる。
また、入力側ブリッジ部130の板厚をウェブ面部として機能する各面部よりも薄くしてその面剛性を下げ、適度に変形するようにすることによって、図4に示すように、上側閉断面部110の下面部114が入力面部111に対して倒れ込むモーメントM1、下側閉断面部120の上面部123が入力面部121に対して倒れ込むモーメントM2を妨げにくく、各閉断面部110,120の変形に過度に干渉することがないから、これらの変形をコントロールしてメインビーム100のエネルギ吸収性能を確保することができる。
(4)上側閉断面部110の上面部113を上側に凸となる凸面とし、下側閉断面部120の下面部124を下側に凸となる凸面としたから、これらは変形時にその変曲点113a,124a近傍の領域がそれぞれ上側及び下側に変位する。これによって、同じ閉断面部内においてその上面部と下面部とが干渉することを防止して、エネルギ吸収性能をより向上することができる。
(5)メインビーム100はアルミニウム合金の押出加工等によって一体に形成されているから、部品点数を低減し構造及び組立工程を簡素化することができる。
(6)上側閉断面部110の入力面部111の下側の領域、入力側ブリッジ部130、下側閉断面部120の入力面部121を、アウタパネル21の傾斜に対応して、下側が車幅方向内側にオフセットされるように傾斜して配置したから、フロントドア20内のデッドスペースを低減し、エネルギ吸収性能を向上することができる。
本発明は、以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)実施例のエネルギ吸収ビームは、例えばフロントドア内に配置されるサイドインパクトビームであったが、本発明はこれに限らず、例えばリアドアのサイドインパクトビームや、車両の前端部に設けられるフロントバンパ内に配置されるバンパビーム等の他の用途にも適用することができる。
(2)実施例のウェブ面部は、平板を屈曲点において折り曲げることによって凸面状に形成しているが、これに限らず、例えばウェブ面部の所定の範囲を曲面状に形成してもよい。
(3)実施例のエネルギ吸収ビームは、アルミニウム合金の押出加工によって一体に形成されているが、これに限らず、複数の部材を接合して形成するようにしてもよい。
(4)実施例のエネルギ吸収ビームは、例えば2つの閉断面部を上下方向に配列したものであるが、本発明はこれに限らず、3つ以上の閉断面部を配列した構成としてもよく、また、配列方向も想定される入力方向に応じて適宜変更することができる。
20 フロントドア
21 アウタパネル
22 インナパネル
100 メインビーム
110 上側閉断面部
120 下側閉断面部
130 入力側ブリッジ部
140 支持側ブリッジ部
Claims (7)
- 衝突に起因する荷重が入力される入力面部と、前記入力面部と前記荷重の入力方向に間隔を隔てて対向して配置される支持面部と、前記入力面部と前記支持面部との間にわたして設けられ、相互に離間して配置された複数のウェブ面部とをそれぞれ有し、前記荷重の入力方向と略直交する方向に離間して配置された第1の閉断面部及び第2の閉断面部と、
前記第1の閉断面部における前記入力面部の前記第2の閉断面部側の端部と、前記第2の閉断面部における前記入力面部の前記第1の閉断面部側の端部とを接続する入力側ブリッジ部と
を備える車両用エネルギ吸収ビームにおいて、
前記第1の閉断面部における前記第2の閉断面部と対向するウェブ面部は、前記第2の閉断面部側に向けて凸となる凸面状に形成され、
前記第2の閉断面部における前記第1の閉断面部と対向するウェブ面部は、前記第1の閉断面部側に向けて凸となる凸面状に形成されること
を特徴とする車両用エネルギ吸収ビーム。 - 請求項1に記載の車両用エネルギ吸収ビームにおいて、
前記第1の閉断面部における前記第2の閉断面部と対向するウェブ面部が最も前記第2の閉断面部側に近接する箇所は、前記第2の閉断面部における前記第1の閉断面部と対向するウェブ面部が最も前記第1の閉断面部側に近接する箇所と、前記荷重の入力方向において略同じ位置に配置されること
を特徴とする車両用エネルギ吸収ビーム。 - 請求項1又は請求項2に記載の車両用エネルギ吸収ビームにおいて、
前記入力側ブリッジ部は、前記第1の閉断面部及び前記第2の閉断面部の前記ウェブ面部よりも面剛性を低くしたこと
を特徴とする車両用エネルギ吸収ビーム。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両用エネルギ吸収ビームにおいて、
前記第1の閉断面部における前記第2の閉断面部と反対側のウェブ面部は、前記第1の閉断面部の外側に向けて凸となる凸面状に形成され、
前記第2の閉断面部における前記第1の閉断面部と反対側のウェブ面部は、前記第2の閉断面部の外側に向けて凸となる凸面状に形成されること
を特徴とする車両用エネルギ吸収ビーム。 - 請求項4に記載の車両用エネルギ吸収ビームにおいて、
前記第1の閉断面部における前記第2の閉断面部と反対側のウェブ面部が最も前記第2の閉断面部側から離間する箇所は、前記第2の閉断面部における前記第1の閉断面部と反対側のウェブ面部が最も前記第1の閉断面部側から離間する箇所と、前記荷重の入力方向において略同じ位置に配置されること
を特徴とする車両用エネルギ吸収ビーム。 - 請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の車両用エネルギ吸収ビームにおいて、
前記第1の閉断面部と、前記第2の閉断面部と、前記入力側ブリッジ部と、前記第1の閉断面部の前記支持面部及び前記第2の閉断面部の前記支持面部間を連結する支持側ブリッジ部とを一体に形成したこと
を特徴とする車両用エネルギ吸収ビーム。 - 高さ方向の位置に応じて車幅方向の位置が変化する曲面状に形成されたドアアウタパネルと、
前記ドアアウタパネルの内面側に配置された請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の車両用エネルギ吸収ビームと
を備える車両用ドア構造において、
前記第1の閉断面部の前記入力面部、及び、前記第2の閉断面部の前記入力面部は、それぞれ前記ドアアウタパネルの内面側に対向し、かつ、前記ドアアウタパネルの傾斜に応じて車幅方向にオフセットして配置されること
を特徴とする車両用ドア構造。
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