以下、本発明を実施するための好ましい形態について図面を参照して説明する。図4に本発明に係る動力断接装置が設けられた動力伝達装置1の全体構成を模式的に示している。この動力伝達装置1は、エンジンENGと、このエンジンの出力軸ESにトルクコンバータTCを介して連結された自動変速機(以下トランスミッションという)2と、トランスミッション2の車軸側に配設された第1駆動モータM1と、トランスミッション2とエンジンENGとの間に配設された第2駆動モータM2とから構成され、エンジンENGの回転駆動力を左右の駆動輪WL,WRに伝達して車両を走行させる。
第1駆動モータM1及び第2駆動モータM2は、電気モータ・ジェネレータであり、車載の図示省略するバッテリにより駆動されてエンジンENGの駆動力をアシストし、あるいはエンジンの停止時(休筒時)にモータの駆動力で走行することが可能であるとともに、エンジン走行時や減速走行時等に発電を行ってバッテリの充電を行うことができるようになっている。すなわち、動力伝達装置の駆動源は、エンジンENGとこれらの駆動モータM1,M2とからなり、ハイブリッド型になっている。
トランスミッション2は、多板クラッチ等の油圧アクチュエータに供給する油圧を制御することで変速制御がなされる前進5速、後進1速の平行軸式の変速機構であり、エンジンENGのクランクシャフトESに、ロックアップ機構LCを有するトルクコンバータTCを介して接続されたメインシャフト10と、このメインシャフト10と平行に延びて配設されるとともに、複数のギヤ列を介してメインシャフト10に接続されたセカンダリシャフト20、サードシャフト30、カウンタシャフト40を備え、図示省略するトランスミッションケースの内部に配設される。
メインシャフト10には、メイン3速ギヤ13が結合配設されるとともに、メイン4速ギヤ14、メイン5速ギヤ15、及びメイン5速ギヤ15と一体に連結されたメインリバースギヤ16が相対回転自在に配設されている。またメインシャフト10には、それぞれ相対回転自在に配設されたメイン4速ギヤ14をメインシャフト10に結合させる4速クラッチC4、メイン5速ギヤ15及びこれと一体のメインリバースギヤ16をメインシャフト10に結合させる5速クラッチC5が設けられている。
セカンダリシャフト20には、セカンダリ1速ギヤ21及びセカンダリ2速ギヤ22が相対回転自在に配設され、セカンダリアイドルギヤ23が結合配設されている。またセカンダリシャフト20には、相対回転自在に配設されたセカンダリ1速ギヤ21をワンウェイクラッチ27を介してセカンダリシャフト20に結合させる1速クラッチC1、セカンダリ1速ギヤ21をワンウェイクラッチ27を介することなく直接セカンダリシャフト20に結合させる1速ホールドクラッチCL、及び相対回転自在に配設されたセカンダリ2速ギヤ22をセカンダリシャフト20に結合させる2速クラッチC2が設けられている。
サードシャフト30には、メイン3速ギヤ13と噛合するサード3速ギヤ33が相対回転自在に配設され、メイン4速ギヤと噛合するサード4速ギヤ34が結合配設されるとともに、相対回転自在に配設されたサード3速ギヤ33をサードシャフトに結合させる3速クラッチC3が設けられている。
カウンターシャフト40には、セカンダリ1速ギヤ21と噛合するカウンタ1速ギヤ41、セカンダリ2速ギヤ22と噛合するカウンタ2速ギヤ42、及びメイン4速ギヤ14と噛合するカウンタ4速ギヤ44が結合配設される。またカウンターシャフト40には、メイン3速ギヤ13及びセカンダリ3速ギヤ23と噛合するカウンタアイドルギヤ43、メイン5速ギヤ15と噛合するカウンタ5速ギヤ45、及びリバースアイドルギヤ36を介してメインリバースギヤ16と噛合するカウンタリバースギヤ46がそれぞれ相対回転自在に配設されている。
カウンターシャフト40上におけるカウンター5速ギヤ45とカウンターリバースギヤ46との間にドグ歯機構を利用したリバースセレクタ47が設けられており、そのセレクタスリーブ47sを、後に詳述する油圧サーボ機構で軸方向に移動させて、カウンタ5速ギヤ45をカウンタシャフト40に結合させ、あるいはカウンタリバースギヤ46をカウンタシャフト40に結合させることができるようになっている。
このように構成されたトランスミッション2において、1速クラッチC1を係合させてセカンダリ1速ギヤ21をセカンダリシャフト20に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン3速ギヤ13、カウンタアイドルギヤ43、セカンダリアイドルギヤ23、セカンダリ1速ギヤ21、カウンタ1速ギヤ41からなる1速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される1速段が設定される。1速クラッチC1を係合させた1速段では、セカンダリ1速ギヤ21がワンウェイクラッチ27を介してセカンダリシャフト20に結合されるため、アクセルをオフにしたときにワンウェイクラッチ27が滑り急減速しないようになっている。一方、1速ホールドクラッチCLを係合させた1速ホールド段ではギヤ列は同一であるが、セカンダリ1速ギヤ21がワンウェイクラッチ27を介することなく直接セカンダリシャフト20に結合されるため、強力なエンジンブレーキを作動させることができる。
2速クラッチC2を係合させてセカンダリ2速ギヤ22をセカンダリシャフト20に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン3速ギヤ13、カウンタアイドルギヤ43、セカンダリアイドルギヤ23、セカンダリ2速ギヤ22、及びカウンタ2速ギヤ42からなる2速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される2速段が設定される。同様に、3速クラッチC3を係合させてサード3速ギヤ33をサードシャフト30に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン3速ギヤ13、サード3速ギヤ33、サード4速ギヤ34、メイン4速ギヤ14、及びカウンタ4速ギヤ44からなる3速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される3速段が設定される。また4速クラッチC4を係合させると、メインシャフト10の回転が、メイン4速ギヤ14とカウンタ4速ギヤ44とからなる4速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される4速段が設定される。
一方、5速クラッチC5を係合させて一体に形成されたメイン5速ギヤ15及びメインリバースギヤ16をメインシャフト10に結合させると、メインシャフト10の回転がこれらのギヤと噛合するカウンタ5速ギヤ45及びカウンタリバースギヤ46に伝達される。但し、カウンタ5速ギヤ45及びカウンタリバースギヤ46はそれぞれカウンタシャフト40に相対回転自在に配設されており、リバースセレクタ47の作動に応じてカウンタシャフト40と選択的に係脱される。
すなわち、油圧サーボ機構によりセレクタスリーブ47sを図4における右方に移動させてカウンタ5速ギヤ45をカウンタシャフト40に結合させると、メインシャフト10の回転がメイン5速ギヤ15及びカウンタ5速ギヤ45からなる5速ギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達される5速段が設定される。一方、セレクタスリーブ47sを図4における左方に移動させてカウンタリバースギヤ46をカウンタシャフト40に結合させると、メインシャフト10の回転がメインリバースギヤ16、リバースアイドルギヤ36、及びカウンタリバースギヤ46からなるリバースギヤ列を介してカウンタシャフト40に伝達されるリバース段が設定される。
以上のように、1速、2速、3速、4速、5速クラッチC1〜C5及び1速ホールドクラッチCLの係合制御と、油圧サーボ機構によるリバースセレクタ47のセレクタスリーブ47aの移動制御とにより1速〜5速、1速ホールド、及びリバース段の設定がなされる。これら1速〜5速クラッチC1〜C5及び1速ホールドクラッチCLの係合制御と、油圧サーボ機構の作動制御、及びトランスミッション各部の潤滑が油圧制御装置7から供給される作動油により行われる。油圧制御装置7の作動制御はコントロールユニットECUからの制御信号に基づいて行われる。
そして、1速段〜5速段、1速ホールド段、及びリバース段が設定され、各ギヤ列を介してメインシャフト10の回転がカウンタシャフト40に伝達される。カウンタシャフト40の回転は、このカウンタシャフト40に結合配設されたファイナルドライブギヤ48、及びファイナルドライブギヤ48と噛合するファイナルドリブンギヤ58を介してディファレンシャル機構DFに伝達され、左右のアクスルシャフト59,59を介して左右の駆動輪WL,WRに伝達される。
一方、トランスミッション2の車軸側には、第1駆動モータM1の回転駆動力を駆動輪に伝達するモータ動力伝達機構5が配設されている。モータ動力伝達機構5は、第1駆動モータM1のスピンドルに結合配設されたモータ駆動ギヤ51、モータ駆動ギヤ51と噛合するモータアイドラギヤ52、モータカウンタシャフト50に回転自在に配設されたモータ従動ギヤ53、モータカウンタシャフト50に結合配設されたモータファイナルドライブギヤ54、及びシンクロクラッチ57から構成される。
シンクロクラッチ57は、詳細図示省略する油圧サーボ機構によりシンクロスリーブ57sを軸方向に移動させてモータ従動ギヤ53をモータカウンタシャフト50に結合させ、あるいはモータ従動ギヤ53とモータカウンタシャフト50との結合を切り離す。シンクロクラッチ57が係合されると、第1駆動モータM1の回転がモータ駆動ギヤ51、モータアイドラギヤ52、モータ従動ギヤ53、モータファイナルドライブギヤ54からなるモータギヤ列を介して、モータファイナルドライブギヤ54と噛合するファイナルドリブンギヤ58を介してディファレンシャル機構DFに伝達され、左右のアクスルシャフト59,59を介して左右の駆動輪WL,WRに伝達される。
従って、このハイブリッド車両では、第2駆動モータM2をエンジンENGのスタータとして使用しアイドル停止状態(休筒状態)のエンジンを始動させることができ、エンジンENGの駆動時にはエンジン駆動力をアシストさせてトランスミッション2において設定された速度段で車両を走行させることができる。またエンジンENGを停止させ、1速〜5速クラッチC1〜C5及び1速ホールドクラッチCLの係合を解除した状態で、モータ動力伝達装置5のシンクロクラッチ57を係合させ、第1駆動モータM1により走行が可能になっている。シンクロクラッチ57の油圧サーボ機構の作動制御、及びモータ動力伝達装置5の各部の潤滑も、トランスミッション2と同様に油圧制御装置7から供給される作動油により行われる。
油圧制御装置7は、トルクコンバータTCの入力軸側に設けられエンジンENGにより回転駆動される第1オイルポンプP1、図示省略するバッテリの電力を利用して電気モータにより回転駆動される第2オイルポンプP2(図1を参照)、これらのオイルポンプから吐出された作動油を各変速アクチュエータ(C1〜C5、CL、リバースセレクタ47及びシンクロクラッチ57の油圧サーボ機構等)やベアリング等の潤滑部位に導くための複数の油圧制御バルブ、及びこれらの間を繋ぐ油路からなり、各油圧制御バルブの作動が、運転者がシフトレバー装置において選択したシフトポジションにより油路を切り換えるマニュアルバルブ、コントロールユニットECUからの制御信号により油路を切り換えるソレノイドバルブ等により制御される。
コントロールユニットECUには、運転者がシフトレバーにおいて選択した走行レンジ(D,N,R,Pレンジ)の選択信号やスロットル開度の信号、車両の走行速度や傾斜角度等の走行状態を検出する検出信号が入力されており、コントロールユニットECUは、これらの信号に基づいた制御信号を油圧制御装置7に出力して1速〜5速クラッチC1〜C5、リバースセレクタ47、シンクロクラッチ57等の作動を制御し、第1駆動モータM1、第2駆動モータM2に制御信号を出力して各駆動モータの作動を制御する。これによりトランスミッション2がシフトレバーにおいて選択された走行レンジに応じた動力伝達経路に設定されるとともに、第1,第2駆動モータM1,M2を利用した駆動力アシストやモータ走行、バッテリの充電が行われる。なお本実施形態においては前進方向の走行レンジに複数の前進レンジがある場合を含めてDレンジと記載する
さて、以上のように概要構成される動力伝達装置1において、前後進を切り換えるリバースセレクタ47における油圧サーボ機構120の作動制御に本発明が適用されており、この前後進を切り換えるための制御装置について図1を参照して説明する。なお、図1では運転席のシフトレバーにおいて、走行レンジがRレンジ(後進レンジ)からNレンジ(ニュートラルレンジ)に切り換えられて、Nレンジに設定された状態における各バルブ等の状況を示している。
この制御装置には、車両のエンジンENGにより駆動される第1オイルポンプP1、電動モータにより駆動される第2オイルポンプP2、これらのオイルポンプから供給される作動油の供給油路を運転席のシフトレバーにおいて選択された走行レンジに基づいて切り替えるマニュアルバルブ70、リバースセレクタ47の油圧サーボ機構120、油圧サーボ機構120の作動を制御するサーボコントロールバルブ100及びリバースバルブ110を備えて構成される。
エンジン駆動の第1オイルポンプP1には、ストレーナを有するオイルパンTから吸入された作動油を吐出する吐出油路61が接続され、この吐出油路61に設けられたレギュレータバルブ63によりライン圧(PL)に調圧される。吐出油路61はマニュアルバルブ70の入力ポート71に接続されるとともに、その途中で分岐する油路64を介して、図1中に丸囲みのAで接続関係を示すソレノイドバルブ81,82の入力ポートに繋がっている。
電動モータ駆動の第2オイルポンプP2には、オイルパンTから吸入した作動油を吐出する吐出油路62が接続され、この吐出油路62がチェック弁62cを介して第1オイルポンプの吐出油路61に合流されマニュアルバルブ70に繋がっている。チェック弁62cは、第2オイルポンプP2が吐出した作動油を第1オイルポンプP1の吐出油路61へ供給することだけを許可する。吐出油路62はチェックバルブ62cよりも上流側で分岐する油路65を介してサーボコントロールバルブ100の右端の第1パイロットポート101に接続される。
すなわちサーボコントロールバルブ100の第1パイロットポート101は、運転席のシフトレバーにおいて選択された走行レンジ(D,N,R,Pレンジ)にかかわらず、第2オイルポンプP2と接続されている。なおエンジン回転状態では第1オイルポンプP1が駆動され、第2オイルポンプP2は停止されるが、第1オイルポンプの吐出した作動油はチェック弁62cにより遮断されるため、サーボコントロールバルブ100は、後述する第2及び第3パイロットポート102,103に作用する油圧によってのみ制御される。すなわち、第1パイロットポート101(油路65)は、第2オイルポンプP2からのみ信号圧が供給されるポートになっている。
マニュアルバルブ70は、運転席のシフトレバーと連結されて当該シフトレバーにおいて選択された走行レンジに基づいて、第1オイルポンプP1及び第2オイルポンプP2から供給される作動油の供給油路を切り替える油路切り換えバルブであり、シフトレバーにおいて選択された走行レンジがDレンジ(前進レンジ)のときに入力ポート71と前進レンジ出力ポート74が接続され、選択された走行レンジがRレンジ(後進レンジ)のときに入力ポート71と後進レンジ出力ポート73が接続される。前進レンジ出力ポート74には油路140、後進レンジ出力ポート73には油路130が接続されている。
前進レンジが選択されたときに作動油圧(前進レンジ選択圧)が供給される油路140は、油路141,142,143に分岐されており、このうち油路141がサーボコントロールバルブ100の入力ポート104に、油路142がリバースバルブ110の右端の第2パイロットポート112に、油路143が1速クラッチC1に繋がっている。また、後進レンジが選択されたときに作動油圧(後進レンジ選択圧)が供給される油路130は、リバースバルブ110の入力ポート114に接続されるとともに、分岐する油路131がサーボコントロールバルブ100の左端の第3パイロットポート103に繋がっている。
サーボコントロールバルブ100は、バルブボディ内部のスプールハウジングに軸方向に摺動自在に配設されたスプールと、このスプールを右方に付勢するスプリングとを備え構成される。スプールは直径が異なる3段構成になっており、スプールハウジングの右端側に設けられた第1パイロットポート101、中段の段付き部に設けられた第2パイロットポート102、左端の第3パイロットポート103に作用する信号圧及びスプリングの付勢力により、第2パイロットポート102と第3パイロットポート103との間に設けられた入力ポート104と出力ポート105、または出力ポート105とドレンポート106との接続を切り換える。
すなわち、スプールの右端部、中間部、及び左端部の各部は、右端部の円形の受圧面に第2オイルポンプP2の吐出圧が作用したときにスプールがスプリングの付勢力に抗して左動される受圧面積(右端直径)に、中間段付き部の円環状の受圧面に1速クラッチC1を締結作動させる前進レンジ選択圧が作用したときにスプールがスプリングの付勢力に抗して左動される受圧面積(中間直径)に、左端部の円形の受圧面に後進レンジ選択圧が作用したときにスプールが右端のセット位置にロック保持される受圧面積(左端直径)に設定されている。
このため、サーボコントロールバルブ100は、いずれのパイロットポート101,102,103にも信号圧が作用していない状態では、後述する自己保持状態が形成された場合を除き、スプリングの付勢力によってスプールが右方のセット位置に配設され、出力ポート105がドレンポート106と接続される。一方、第3パイロットポート103に信号圧(後進レンジ選択圧)が作用せず、第1パイロットポート101及び第2パイロットポート102のいずれかに信号圧(第2オイルポンプ吐出圧または前進レンジ選択圧)が作用した場合には、スプールがスプリングの付勢力に抗して左方の作動位置に配設され、入力ポート104と出力ポート105とが接続される。また第3パイロットポート103に信号圧が作用した状態、すなわち後進レンジが選択された状態では、スプールが後進レンジ選択圧及びスプリングの付勢力により右方のセット位置にロック保持される。
サーボコントロールバルブ100の出力ポート105は、油路144により油圧サーボ機構120の第1油室121に接続されており、上記のように各パイロットポートに信号圧を作用させることで出力ポート105の接続油路を切り換え、油圧サーボ機構120への油圧供給を制御することにより油圧サーボ機構120の作動を制御する。サーボコントロールバルブ100は、このバルブが果たす機能からドライブ・インヒビタ・バルブとも称される。
リバースバルブ110は、バルブボディ内部のスプールハウジングに軸方向に摺動自在に配設されたスプールと、このスプールを左方に付勢するスプリングとを備え構成される。このバルブのスプールはスプール溝部を除き同一直径であり、スプールハウジングの左端側に設けられた第1パイロットポート111と、右端側に設けられた第2パイロットポート112に作用する信号圧及びスプリングの付勢力とにより、第1パイロットポート111と第2パイロットポート112との間に設けられた入力ポート114と出力ポート115、または出力ポート115とドレンポート116との接続を切り換える。第1パイロットポート111には、油路66が接続されソレノイドバルブ82を介して油路64に繋がっている。なおソレノイドバルブ82は油路64と油路66とを連通または遮断する電磁開閉弁であり、その作動がコントロールユニットECUにより制御される。
リバースバルブ110は、第1及び第2パイロットポート111,112に信号圧が作用していない状態では、スプリングの付勢力によってスプールが左方のセット位置に配設され、出力ポート115がドレンポート116と接続される。一方、第2パイロットポート112に信号圧(前進レンジ選択圧)が作用せずに、第1パイロットポート111に信号圧(ライン圧)が作用した場合には、スプールがスプリングの付勢力に抗して右方の作動位置に配設され、入力ポート114と出力ポート115とが接続される。また第2パイロットポート112に信号圧が作用した状態、すなわち前進レンジが選択された状態では、スプールが前進レンジ選択圧及びスプリングの付勢力により左方のセット位置にロック保持される。
リバースバルブ110の出力ポート115は、油路134を介して油圧サーボ機構120の第2油室122に接続されており、上記のように各パイロットポートに信号圧を作用させることで出力ポート115の接続油路を切り換え、油圧サーボ機構120への油圧供給を制御することにより油圧サーボ機構120の作動を制御する。リバースバルブ110はリバース・インヒビタ・バルブとも称される。
油圧サーボ機構120は、第1油室121または第2油室122に供給される油圧により伸縮作動するピストンロッド123と、このピストンロッド123の先端部に固定されたシフトフォーク128、及びピストンロッド123を前進用動力伝達経路の設定位置(図1において枠囲みのDで示す位置)または後進揺動力伝達経路の設定位置(図1において枠囲みのRで示す位置)に係止保持するディテント構造129などから構成される。
すなわち、作動油を第1油室121に作動油を供給してピストンロッド123を図1に示す左端位置まで移動させると、シフトフォーク128が前進用動力伝達経路の設定位置(以下D位置という)に設定され、第2油室122に作動油を供給してピストンロッド123を図1に示す左端位置まで移動させると、シフトフォーク128が後進用動力伝達経路の設定位置(以下R位置という)に設定される。D位置またはR位置ではディテント構造129の作用によりピストンロッドが係止され、第1油室121及び第2油室122に油圧が作用していない状態でも設定位置が保持されるようになっている。
シフトフォーク128は、既述したリバースセレクタ47のセレクタスリーブ47sに係合されており、シフトフォーク128がD位置に設定されると、図4に示すカウンタ5速ギヤ45がカウンタシャフト40に結合され、1速クラッチC1〜5速クラッチC5の係合制御により1速段〜5速段の前進用動力伝達経路が設定される。一方、シフトフォーク128がR位置に設定されると、カウンタリバースギヤ46がカウンタシャフト40に結合され、5速クラッチC5の係合制御によりリバース段を構成する後進用動力伝達経路が設定される。
油圧サーボ機構120におけるピストンロッド123には、図示するように2箇所のスプール溝が形成されるとともに、ピストンロッド123の移動によりこれらのスプール溝と連通・遮断される第1ポート124、ドレンポート125、第2ポート126、第3ポート127が設けられている。このうち第3ポート127は油路133を介してマニュアルバルブ70の後進レンジ出力ポート73に繋がり、第1ポート124は油路146を介して図2に示すCPCバルブ151、シフトバルブ152、圧力スイッチ153に接続されている。
また、油圧サーボ機構の第2ポート126は、油路147及びCPCバルブ154を介してシフトバルブ155の第1入力ポートに接続されるとともに、油路148を介してシフトバルブの第2入力ポートに接続されている。シフトバルブ155のパイロットポートには、油路67が接続されソレノイドバルブ81を介して油路64に繋がっている。シフトバルブの出力ポートは油路148を介して5速クラッチC5に接続されている。なおソレノイドバルブ81は油路64と油路67とを連通または遮断する電磁開閉弁であり、その作動がコントロールユニットECUにより制御される。
以上のように構成される前後進切り換えの油圧制御装置について、以下では、作用について説明する。まず、図1に示すNレンジにおいて、エンジン駆動時には第1オイルポンプP1のみが作動し、第2オイルポンプP2は停止されている。またマニュアルバルブ70は図示するスプール位置に設定されており、マニュアルバルブ70の前進レンジ出力ポート74及び後進レンジ出力ポート73は、いずれも入力ポート71と接続されることなくドレンされている。
このため、油路140,143を介して前進レンジ出力ポート74と接続されるサーボコントロールバルブ100の第2パイロットポート102、油路140,142を介して接続されるリバースバルブ110の第2パイロットポート112、油路130,131を介して後進レンジ出力ポート73と接続されるサーボコントロールバルブ100の第3パイロットポート103は、いずれもドレンされた状態になっている。またNレンジでは、ソレノイドバルブ82は閉止状態でありリバースバルブ110の第1パイロットポート111にも信号圧が作用していない。すなわち、Nレンジではサーボコントロールバルブ100及びリバースバルブ110のいずれのパイロットポートにも信号圧が作用しておらず、これらのバルブのスプールは図示するセット位置に配設された状態になっている。
この状態では、サーボコントロールバルブ100の出力ポート105がドレンポート106と繋がって、油路144を介して接続されたサーボ制御機構120の第1油室121がドレンされ、リバースバルブ110の出力ポート115がドレンポート116と繋がって、油路134を介して接続されたサーボ制御機構120の第2油室122がドレンされる。また油圧サーボ機構120における第1ポート124とドレンポート125が繋がって油路146がドレンされ、第2ポート126と第3ポート127が繋がって油路147が油路133及び130を介してドレンされる。
従って、油圧サーボ機構120のピストンロッド123には作動油圧が作用せず、ディテント構造129の作用により、Nレンジに切り換えられる直前に設定されたR位置またはD位置に保持される。なお、エンジンENGが停止された状態では、第2オイルポンプP2が駆動され、油路65を介してサーボコントロールバルブ100の第1パイロットポート101に第2オイルポンプP2の吐出圧が作用してスプールを左方の作動位置にセットさせるが、このとき出力ポート105と繋がる入力ポート104はライン140を介してドレンされており、第1油室121及び第2油室122に作動油圧が作用しないため、ピストンロッド123は上記同様に直前設定のR位置またはD位置に保持される。
また、Nレンジに切り換えられる直前の設定位置がD位置の場合には、ピストンロッドの配設位置が図1と異なり左端位置となるが、この場合でも第1油室121及び第2油室122に作動油圧が立たないのは上記同様であり、またD位置においては第1油室121と第1ポート124、ドレンポート125と第2ポート126とがそれぞれ繋がって油路146及び147がいずれもドレンされ、ピストンロッド123がD位置に保持される。
次に、Nレンジにおいて上記のようにピストンロッド123がR位置またはD位置に保持された状態から、シフトレバーを操作してDレンジまたはRレンジに設定した場合の油圧サーボ機構の作動制御について説明する。ここで、問題となるのはNレンジにおいて保持されたピストンロッドの位置を変更する場合、すなわち動力伝達経路の設定を前進から後進(D位置→R位置)、または後進から前進(R位置→D位置)に切り換える場合であり、とくに、エンジン停止状態で駆動モータM1により走行を開始した場合に、迅速かつ滑らかにエンジン走行に移行できるかどうか、すなわち、エンジン停止状態で動力伝達経路の設定をR位置からD位置に切り換える場合である。そこで、第2オイルポンプP2のみが駆動し、ピストンロッド123がR位置に保持されている状態からシフトレバーをDレンジに設定操作した場合の作動制御について説明する。
シフトレバーがDレンジに設定されると、マニュアルバルブ70では、スプールが右動されて入力ポート71と前進レンジ出力ポート74が繋がり、油路140に作動油(前進レンジ選択圧)が供給される。油路140に供給された作動油は、油路141〜143を介してサーボコントロールバルブ100の第2パイロットポート102及び入力ポート104、リバースバルブ110の第2パイロットポート112に供給される。また第2オイルポンプP2から油路65を介してサーボコントロールバルブ100の第1パイロットポート101に第2オイルポンプ吐出圧が供給される。
一方、後進レンジ出力ポート73はマニュアルバルブ70においてドレンされた状態のままであり、油路130及び131を介して後進レンジ出力ポート73に接続されたサーボコントロールバルブ100の第3パイロットポート103、及びリバースバルブ110の入力ポート114はドレンされた状態になっている。またDレンジでは、ソレノイドバルブ82は閉止状態に制御され、リバースバルブ110の第1パイロットポート111に信号圧は作用しない。
すると、サーボコントロールバルブ100のスプールは、第1パイロットポート101に供給される第2オイルポンプ吐出圧によって左動され、さらに1速クラッチC1の無効ストローク詰めの終了に伴い第2パイロットポート102に供給される油路143の油圧(1速クラッチ圧)により左方への付勢力が付加されて、入力ポート104と出力ポート105とが接続される。またリバースバルブ110は、第2パイロットポート112に作用する前進レンジ選択圧によりスプールが左端に位置するセット状態にロックされる。
一方、油圧サーボ制御機構120は、第2油室122が油路134及び油路130を介してドレンされ、第1ポート124がドレンポート125と繋がってドレンされ、第2ポート126と第3ポート127が繋がって油路133及び130を介してドレンされた状態になっている。このため、サーボコントロールバルブ100の入出力ポート104,105の接続によって油路140から出力ポート105に流れる作動油が、油路144を介して第1油室121に供給され、サーボ機構120のピストンロッド123を左動させて、動力伝達経路がR位置からD位置に切り換えられる(油圧サーボ機構120のピストンロッド123のみをD位置に配置した状態を示す図3を参照)。
このR位置からD位置への切り換えに際して、サーボコントロールバルブ100の入出力ポート104,105が接続され、油路140から出力ポート105に流れる作動油の圧力が上昇すると、スプール溝の右側の受圧面と左側の受圧面の面積差(スプールの中間部と左端部との直径差)によりスプールに左方向の付勢力が作用し、第1パイロットポート101に作用する第2オイルポンプ吐出圧が低下しても、スプールを左端の作動位置に保持するようになっている。すなわち、サーボ制御バルブ100は、マニュアルバルブ70から供給される作動油が第1油室121に供給される状態になると、第3パイロットポートに後進レンジ選択油圧が作用して入出力ポートの接続が解除されるまで、入出力ポート間の接続を自己保持するように構成されている。
そして、ピストンロッド123が左端のD位置まで移動されると、油圧サーボ機構120の第1油室121と第1ポート124とが連通状態になり、油路146を介して接続されたCPCバルブ151、シフトバルブ152、圧力スイッチ153に前進レンジ選択圧が供給される。従って、圧力スイッチ153による検出値が所定圧力に到達したことでR位置からD位置への切り換えを検出することができる。これにより動力伝達経路の前後進の切り換えが完了される。
このように、以上説明した油圧制御装置によれば、エンジンENGが停止し、比較的低吐出圧の第2オイルポンプP2のみが駆動されている状態でも、第1パイロットポート101に供給される第2オイルポンプ吐出圧によってサーボコントロールバルブ100を切り換えて動力伝達経路を後進用動力伝達経路から前進揺動力伝達経路に切り換えることができ、さらに1速クラッチ圧によるアシスト及び前進レンジ選択圧による自己保持機能により、油圧回路に多少のリーク等が存在しても動力伝達経路の切り換え作動を、より確実に行わせることができる。
従って、以上説明した本発明によれば、従来用いられていたサーボコントロールバルブの右端部に、第2オイルポンプ圧で作動する信号圧回路を形成することにより、第1オイルポンプP1および油圧回路を従来と同様のものを用いつつ、比較的低吐出圧の小型の第2オイルポンプでも前後進の切り換え作動が可能な油圧制御装置を構成することができる。