本発明は、ウイルス、細菌、カビ又はアレルゲンといった生物に起因する汚染原因を除去・不活化する効果のある正負イオン発生装置、及び正負イオン発生装置を備えた空気浄化装置に関する。
住宅環境の密閉度合が高まり、室内の空気が滞留しがちであることから、また、人々の環境意識の変化等から、室内の空気を浄化することにより、匂いや汚れを除去して、健康で快適な生活を送りたいという要望が高まっている。そこで、空気浄化装置(及びそれを組み込んだエアコンなどの空気調和装置)により、空間に浮遊する粒子を除去する装置が広く用いられている。
しかしながら、従来から空気浄化装置に用いられているHEPAフィルタ、活性炭、吸着剤等の物理的な除去手段では、これらの物理的除去手段が空間に浮遊する粒子を除去したとしても、物理的除去手段の中でウイルス、浮遊細菌、カビ又は花粉やダニ等のアレルゲンといった生物に起因する汚染原因が活性状態を維持したまま存在している。これらの活性状態を維持した汚染原因は、空気浄化装置を停止した場合などに、再度脱離して空間に再放出されることが懸念されてきた。
そこで、空間に正負イオンを放出することにより上記の生物に由来する汚染原因を除去/不活化するための手法として、大気中の正負イオンを利用する方法が非常に好ましい方法として用いられる。本件に関しては、下記の特許文献1に詳細に記されている。イオンは原子・分子がプラスやマイナスに帯電したものであり、正イオンと負イオンが存在する。活性化ガスとしての効果を高めるためには、負イオン単体もしくは正イオン単体ではなく、正イオンと負イオンの両方を活性化ガスとして、空間に放出することが好ましい。
特開2002−95731号公報(段落[0025]〜[0039]、図1〜図5)
イオン発生素子の作動原理は、イオン発生電極を有するイオン発生素子の電極間に交流の高電圧(多くの場合はパルス電圧)を印加すると、電極間にプラズマ領域が形成されて、放電によりイオン発生電極から正イオンと負イオンを発生するというものである。発生した正イオンとしては、H+(H2O)m(mは任意の自然数)、負イオンとしてはO2 −(H2O)n(nは任意の自然数)が最も安定に生成している。イオン種については、質量分析法による精密な測定で同定されている。
これらの正イオンと負イオンが空気中に同時に生成して存在すると化学反応が起こり、これらの正イオンと負イオンから活性種である過酸化水素H2O2又はヒドロキシラジカル・OHが生成する。これらの酸化水素H2O2又はヒドロキシラジカル・OHが極めて強力な活性を示していることから、この作用により空気中の浮遊菌やウイルスや花粉やダニのアレルゲン成分を除去・不活化することができるというものである。
これらの大気中の正負イオンを利用する場合、上記の生物由来の汚染原因を効率的に不活化・除去するため、イオン発生素子のイオン発生電極で発生した正負イオンを空間のより広い範囲に効率的に放出・拡散させることが望ましい。そのためには、イオン発生装置から正負イオンを放出する送風手段が更に備えられる。送風手段の型式については特に限定されるものではなく、例えば、プロペラファンやシロッコファンやクロスフローファンといった送風手段を効果的に用いることが可能である。
上記の通り、室内空間において、イオン発生素子で発生させた正負イオンを放出・拡散することにより、正負イオンが広い空間に波及し、人体に悪影響を及ぼす生物由来の汚染原因を除去・不活化することができる。また、あわせて、近年、感染症に対する感染・罹患する割合が増加しており社会的な問題となっているが、これらの感染症予防に対しても抑制の効果が期待できる。このような正負イオンを発生する素子を、従来からのHEPAフィルタ等の上記物理的除去手段を備えた空気浄化装置に導入し、正負イオンを送風手段からの気流に乗せて放出することにより、単に物理的除去手段により浮遊粒子を除去するだけではなく、生物由来の汚染原因を除去・不活化することにより、これらによる感染症やアレルギー性疾患に罹患することが抑制される。
ここで、正負イオンの発生手段は、ほとんどの場合、プラズマ領域を形成し、放電現象を用いて正負イオンを発生させる型式のものである。ここで、放電現象としては、例えば、沿面放電現象、コロナ放電現象、バリア放電現象、ストリーマ放電現象等、従来から各種手法が知られている。各種の放電現象を達成するためには、電極間に印加する電圧波形だけではなく、電極の形状についても各種の形状が適用される。これらの放電は電極形状や印加電圧の大きさや波形により適宜選択される。これらの放電現象に用いられる電極形状は上述の通り最適な形状に形成されるが、大きく2種類に分類することが可能である。即ち、平面型の構造を有する電極と、立体型の構造を有する電極である。
上記の形状のうち、平面型電極を有する放電素子は、電圧を印加した際に放電特性が非常に安定するという特徴を有するため、イオン発生素子として好適に用いられる。
図9は、平面型のイオン発生電極を有するイオン発生素子の断面図である。イオン発生素子A10は、構成材料としてセラミックやアルミナ等である誘電体1を挟んで、正負イオンを発生するイオン発生電極2と対向電極3とを備えている。これらの電極は印刷法やフォトリソグラフィ法やスパッタ法やめっき法や蒸着法やラミネート法といった公知手法により、誘電体1に形成される。電極の厚さについては特に限定されるものではないが、電極として電気を通す程度であれば問題はない。例えば、50nm以上あれば使用可能である。ただし、電極強度を考慮すれば、1μm以上であればさらに効果的である。
電極に用いる材料についても特に限定されるものではなく、公知の金属単体又は合金を使用することが可能である。ただし、放電現象を用いる場合は、電極近傍において放電現象による酸化還元反応を伴うことが多いので、一般的には、容易に酸化しにくい金属(例えば、タングステンや金や銀やステンレス等)が好適に用いられている。更に、電極に正負イオンを発生させるための電力を供給する目的で電圧発生装置4が取り付けられている。電圧発生装置4を誘電体1の内部に内蔵させることにより、一体型の素子となり、小型化・省スペース化達成可能となる。なお、電圧発生装置4については、誘電体1の内部に必ずしも内蔵するものではなく、外付けの構成とすることも可能である。
図10には、平面型のイオン発生電極を有するイオン発生素子の断面の概略図の別の例が示されている。図10に示すイオン発生素子A11においては、図9に示されたイオン発生素子A10と共通する構成要素には同じ符号を付すことで再度の説明を省略する。イオン発生素子A10との相違点は、誘電体1上に形成される対向電極3が埋もれた構造となっている点である。即ち、誘電体1上に対向電極3が形成された後、さらに続いて、電極保護手段5が形成されている。このように、電極保護手段5を形成する利点としては、平面型電極を有する放電素子を空気浄化装置に適用する場合に、装置への組込み取扱いを容易にすることができる点や、あるいは安全性の向上という点が挙げられる。
図11及び図12は、平面型のイオン発生電極を有するイオン発生素子の別の例を概略で示す断面図である。図11又は図12に示す平面型のイオン発生電極を有するイオン発生素子A12,A13は、それぞれ図9又は図10に示されたイオン発生素子A10,A11に対応しており、共通する構成要素には同じ符号を付すことで再度の説明を省略する。イオン発生素子A12,A13においては、誘電体1に形成されるイオン発生電極2の上に更に保護層6が形成されている。各素子A12,A13に用いられる保護層6の材質については、公知材料を使用できるが、誘電体1で用いた材料と共通化することも可能である。
イオン発生電極2が外部に露出している状態では電圧を印加した際にイオン発生電極2の表面が劣化する可能性があるが、保護層6を形成する利点として、こうした表面劣化の可能性を抑制し、長期駆動の信頼性を高めることが可能となる。また、イオン発生素子を一般的な民生機器に用いる場合に、保護層6は、使用者の安全性を確保するという観点からも効果的である。
図9〜図12に示す平面型の正負イオン発生素子は、優れた特徴として、電力発生装置4から電極に供給された電力が効果的に作用し放電状態が非常に安定するという特徴を有している。したがって、平面型の正負イオン発生素子を用いた場合、発生するイオンの量(イオン濃度)が安定する。発生させる正負イオンの量(イオン濃度)に関しては、空間に正イオン、負イオンともに1000個/cm3の割合で存在させることが望ましく、平面型イオン発生素子の構成や駆動条件を適宜変更することにより達成されるものである。印加電圧を高める、周波数を高める、又は波形の立ち上がり時間を高めるという駆動条件を変更することにより、正負イオンの発生量を高めることができる。また、電極2,3間の誘電体1については、誘電率の高い物質とする又は誘電体厚さを薄くすることにより、正負イオンの発生量を高めることができる。
このような構成のイオン発生素子について、放電方式としては、各種手法が考えられるが、特に沿面放電現象を用いる方式が好適に用いられる。平面型のイオン発生素子とすると、イオン発生電極2と対向電極3と誘電体1が一体形成されている。
平面型の電極構造を有する正負イオン発生素子を放電現象により駆動させる放電の方式としては、沿面放電現象を用いることとなる。沿面放電現象はコロナ放電方式やバリア放電方式と比較して、放電安定性が高いため、安定して空間に正負イオンを放出することが可能である。
一方、立体型の電極を用いるイオン発生素子の概略図が図13に示されている。図13には、立体型の電極として針型電極を用いたイオン発生素子B10が示されている。針型の形状を有しているイオン発生電極が基板9上に形成されている。針型の形成方法に関しては公知手法で形成することが可能である。また、例えば、金属製の針を複数本数組み合わせることにより形成することも可能である。
イオン発生素子B10においては、イオン発生電極7と空間を隔てて対向電極8が形成されている。イオン発生電極7と対向電極8は電圧発生装置4と接続されており、電力を供給することにより、イオン発生電極7から空間に正負イオンを放出する。イオン発生電極7と対向電極8に用いる材料としては特に規定されるものではないが、一般的には、酸化されにくい金属であるタングステンや金や銀やステンレスが好適に用いられる。
図13に示す立体型の電極構造を持つ正負イオン発生素子B10は、図9〜図12で示すような平面型の電極構造を有する正負イオン発生素子A10〜A13と比較して、素子の作製が比較的容易であり、コスト的にも有利である。正負イオン発生素子B10の放電方式としては、沿面放電方式を用いることができないため、コロナ放電方式やバリア放電方式による放電現象を用いて空間に正負イオンを放出する。したがって、正負イオン発生素子B10を一般のユーザが使用する装置(例えば、空気清浄機)等に用いて空間に正負イオンを効果的に放出することができる。
ところで、これらの平面型の電極構造を有する正負イオン発生素子においては、次の課題が存在する。即ち、平面型の電極構造を有するイオン発生素子は、立体型の電極構造を有するイオン発生素子と比較して、通常の室内環境においては動作が安定しているものの、空間の湿度が非常に高い環境において、特に、電極表面に水分が付着すると、正負イオンの発生量が減少してしまうという問題が発生することが判明した。正負イオンの発生量減少の原因としては、電極表面に水分が付着すると電極上で水分子による一種の膜が形成された状態となり、膜状態に付着した水の存在によってイオン発生電極2より発生する正負イオンが電気的に中和して失活し、結果として空間に放出されるイオンの割合が減少することが考えられる。また、別の原因として、水が膜状態として電極2,3の表面を含めて基板表面上に形成されると、基板と水分による誘電率両方を考慮することとなり、マクロな視点から観ると誘電率が変化する。そのため、空間に放出される正負イオンが減少するということも考えられる。
図14〜図17は、それぞれ、図9〜図12に対応した平面型の電極構造を有するイオン発生素子A10〜A13について、電極表面に水が付着し、膜状態となった様子の概要を示している。図14〜図17に示すように、イオン発生電極2の表面、基板(誘電体1)表面に水Wが付着することにより、イオン発生電極2で形成された正負イオンが中和・失活する、又はイオン発生素子全体の誘電率が低下するという原因で、正負イオンが形成されにくくなり、空間に放出されるイオン濃度が減少するという問題があった。
図13に示した立体型の電極構造を有する正負イオン発生素子B10は、図9〜図12で示したような平面型の電極構造を有する正負イオン発生素子A10〜A13と比較して、水分に対する安定性は優れている。こうした安定優位性は、湿度が極めて高い環境に設置した場合においても、先端が鋭利な形状を有しているために、水分が付着しにくく、水の膜状態が形成されてにくいことに起因していると考えられる。その結果、正負イオン発生素子B10では空間に放出される正負イオン濃度は湿度によって変化しないので、湿度に対する安定性に関しては、平面型の電極構造を有するイオン発生素子よりも立体型の電極構造を有するイオン発生素子の方が優れている。
しかし、湿度に対する安定性に優れる立体型の電極構造を有するイオン発生素子においては、平面型のイオン発生素子と比較して、次の2つの課題が存在する。即ち、一つの課題は、振動が加えられた際の、放電現象安定性に関するものである。平面型の電極構造のイオン発生素子と比較して、立体型の電極構造を有するイオン発生素子は、振動に対する安定性が低いことが分かった。放電現象の強度や度合いは放電現象を起こす2つの電極の距離や状況に大きく依存するので、立体的な電極構造を有するイオン発生素子の場合、振動等により電極がわずかに動く、あるいは、針形状の構造物が振動によって振れることがある。このように立体型の電極が衝撃によりわずかでも動くと、これに伴い放電状態が大きく変わることとなり、正負イオンの発生状況も大きく変わる。イオン発生素子は、例えばエアコンや空気清浄機といった、振動が発生しやすい環境で用いられるため、放電状態を安定させることが課題である。
もう一つの課題は、イオン発生電極の長期信頼性の問題が挙げられる。図13に示す立体型の電極構造を有する正負イオン発生素子B10においては、長時間にわたって駆動すると、イオン発生電極7が徐々に削られて磨耗し小さくなるという問題である。即ち、放電現象によりプラズマ領域が形成された状態というのは、一種のスパッタリング状態となっている。そのため、徐々に針型のイオン発生電極7が磨耗して小さくなるという現象が生じる。図18は、図13に示した正負イオン発生素子B10を長期間駆動した際に見られる現象の概略図である。イオン発生電極7が放電現象により形成されるプラズマにより、針型形状の電極が磨耗した様子を示している。このように針型形状を有する電極の先端部について磨耗が進行すると、各針型電極の電極間距離が変化するために、放電状態が不安定となり、放電状態も安定せず、結果として空間に放出される正負イオンも濃度も不安定となる。
立体型の電極構造を有する正負イオン発生素子に見られる上記の問題は、平面型の電極構造を有する正負イオン発生素子においては見られない現象である。平面型の電極構造の場合は、図9〜図13に示すように電極が誘電体基板に形成されているために振動の影響が全く見られない。また、長期間駆動した場合においても、針型等の立体型の電極に比べて磨耗といった現象が小さく、長時間の駆動に対しても安定している。更に図12及び図13に示すような保護膜形成により、長期間の作動に対する信頼性はさらに上昇する。
そこで、放電現象を用いる正負イオン発生素子に関して、平面型の電極構造を有する素子と、立体型の電極構造を有する素子においては、それぞれ長所と短所があるため、これらの特徴を効果的に利用することが望まれる。
この発明の目的は、上述の平面型と立体型の優れた特徴を利用して、ウイルス、細菌、カビ、アレルゲン等の生物に起因する汚染原因を除去・不活化する効果のある正負イオン発生装置及び正負イオン発生装置を備えた空気浄化装置を提供することである。
上記課題を解決するための手法として、本発明の平面型の電極構造を有する正負イオン発生素子と、立体型の電極構造を有する正負イオン発生素子を組み合わせたことを特徴としている。即ち、組み合わせることによって上述の平面型と立体型の優れた特徴を利用するというものである。本正負イオン発生装置は、少なくとも一つの電極間に誘電体を挟んだ形状を有する平面型の電極構造を有する第1正負イオン発生素子と、少なくとも一つの針状の鋭利形状の電極を有する立体型の電極構造を有する第2正負イオン発生素子とから成り、前記第1正負イオン発生素子は通常の使用環境において駆動され、前記第2正負イオン発生素子は高湿度環境又は前記誘電体や電極に水分が付着する環境条件の場合に駆動されることから成っている。したがって、平面型電極の利点であるところの長時間の信頼性が高いことや衝撃に強いことと、立体型電極の利点であるところの高湿度環境でのイオン発生量の維持、という利点を組み合わせることができる。
平面型の電極構造を有する第1イオン発生素子を放電現象により駆動させる放電方式としては沿面放電方式とし、立体型の電極構造を有する第2正負イオン発生素子の放電方式としてはコロナ放電方式又はバリア放電方式とすることができる。第1イオン発生素子の駆動方式としてはコロナ放電方式やバリア放電方式も採用可能ではあるが、沿面放電現象を利用することで、コロナ放電方式やバリア放電方式と比較して放電安定性が高いため、安定して空間に正負イオンを放出することが可能である。第2正負イオン発生素子については、沿面放電方式を用いることができないため、コロナ放電方式又はバリア放電方式とされる。
上記の正負イオン発生装置において、第1正負イオン発生素子が駆動状況において、第2正負イオン発生素子の作動条件を変更可能とすることができる。また、通常の使用環境においては平面型の電極構造を有する第1正負イオン発生素子を駆動するとともに前記第2正負イオン発生素子の駆動を停止し、高湿度環境又は誘電体や電極の表面に水分が付着するような環境においては、第1正負イオン発生素子の駆動を停止するとともに立体型の電極構造を有する第2正負イオン発生素子を駆動することができる。即ち、空間の湿度が極端に高くない通常の使用環境では、正負イオンを安定して長期間にわたり発生することが可能な第1正負イオン発生素子を用いて正負イオン発生装置を運転させることが好ましく、また、高湿度環境又は誘電体や電極の表面に水分が付着するような環境では、水分に対する安定性が優れている第2正負イオン発生素子を用いて正負イオン発生装置を運転させることが好ましい。更に、高湿度環境と通常の使用環境との間で変遷する環境の場合には、変遷の度合いに応じて第1正負イオン発生素子の駆動度合いと第2正負イオン発生素子の駆動度合いを変化させることもできる。
上記の正負イオン発生装置において、湿度検知手段を更に備えており、第1正負イオン発生素子は湿度検知手段が90%未満の湿度を検出する場合に駆動され、第2正負イオン発生素子は湿度検知手段が90%以上の湿度を検出する場合に駆動される。例えば室内空間の湿度については、別途、湿度センサ等の湿度検知手段が設けられる。第1及び第2のイオン発生素子の切り替えに関しては、湿度検知手段の検出情報により容易に達成することができる。第1正負イオン発生素子と第2正負イオン発生素子との駆動の切り換えは、湿度検知手段が検出する湿度が例えば90%未満か以上かで行うことができる。
更に、本発明のイオン発生装置においては、通常の使用環境において(即ち、空間の湿度が極端に高くない通常の環境)、第1正負イオン発生素子が駆動している状況において、第2正負イオン発生素子の作動条件を場合によって変更することができる。正負イオンを放出する室内空間の状況によって、次の3つの動作方法を選択することができる。
[本発明の特徴1]室内空間が通常の環境である場合の動作
最も通常の環境である場合は、第2正負イオン発生素子は完全に停止状態とし、第1正負イオン発生素子のみを駆動させることにより、室内空間に長時間に渡り安定して正負イオンを供給する運転態様が得られる。第1正負イオン発生素子の単独運転によっても、室内空間に充分に正負イオンを放出することができる。更に、第2正負イオン発生素子は運転を停止しているので、消費電力も抑制することができる。
更に、この湿度検知手段からの情報は、第1正負イオン発生素子の駆動回路部と、第2正負イオン発生素子の駆動回路部にリンクしていることを特徴としている。したがって、室内空間の湿度が通常の状態、更に具体的に言えば、90%以下の環境においては、湿度検知手段が90%以下であるとセンシングした情報を第1及び第2の正負イオン発生素子の駆動回路に伝達し、この情報を基にして、第1正負イオン発生素子の駆動回路部については通常通り運転を実施し、一方、第2正負イオン発生素子の駆動回路部については停止するという運転形態が採用される。
[本発明の特徴2]室内空間の湿度が極端に高くなった環境である場合の動作
高湿度の環境においては、第1正負イオン発生素子はイオン発生電極の表面に水分が付着してしまうことにより、正負イオンの発生量が減少する。このような場合には、高湿度環境においても安定して正負イオンを発生させることが可能である第2正負イオン発生素子を駆動させることにより室内空間に効果的に正負イオンを放出することができる。第1正負イオン発生素子については停止しておくことにより、消費電力を抑制することができる。
室内空間の湿度については、別途湿度検知手段が設けられている。更に、この湿度検知手段からの情報は、第1正負イオン発生素子のための第1駆動回路部と第2正負イオン発生素子のための第2駆動回路部にリンクしていることを特徴としている。したがって、室内空間の湿度が極端に高い状態さらに具体的に言えば、湿度90%以上の環境においては、湿度検知手段が90%以上であるとセンシングした情報を第1駆動回路及び第2駆動回路に伝達し、この情報を基にして、第1駆動回路部については第1正負イオン発生素子の運転を停止し、一方、第2駆動回路部については第2正負イオン発生素子の運転を実施するという駆動形態が採用される。
[本発明の特徴3]室内空間の湿度について、極端に高い環境から通常の環境に低下していく状況の場合
湿度が減少していく場合について、湿度検知手段により空間の湿度を連続的にモニタリングすることにより、上記(本発明の特徴1)や(本発明の特徴2)に見られるように、一方の正負イオン発生素子を完全に停止するのではなく、一方の正負イオン発生素子の駆動度合いを高め、他方の正負イオン発生素子の駆動度合いを低めるという手法を採用することができる。
室内空間の湿度が例えば、89%といった場合においては、上記(本発明の特徴その1)に該当するので、第2正負イオン発生素子は駆動停止することとなるが、(本発明の特徴3)においては、第2正負イオン発生素子を完全に停止させるのではなく、弱い度合いで運転する。これは即ち、例えば湿度が89%という環境においては、第1正負イオン発生素子の電極表面に関して、湿度が90%には到達していないものの、場合によっては電極表面に水分の膜が形成される可能性がある。したがって、このように、第1正負イオン発生素子からの正負イオン発生量の低下が危惧されるような場合において、第2正負イオン発生素子を弱い度合いで運転するという手法を採用するものである。ここで、正負イオンを弱い度合いで駆動するというのは、例えば、通常に比べて印加電圧を小さくする、あるいは、周波数を小さくする等といった手法により、空間に放出される正負イオンの発生量を低下させる手法である。空間に放出されるイオンの大部分は第1正負イオン発生素子が担うものとし、補佐的な役割を第2正負イオン発生素子が担うようにする。
逆に、例えば室内空間の湿度が91%の場合、上記(本発明の特徴その2)に該当するので、第1正負イオン発生素子は駆動停止することとなるが、(本発明の特徴3)においては、第1正負イオン発生素子を完全に停止させるのではなく、弱い度合いで駆動させるものである。
これは即ち、例えば湿度が91%という環境においては、第1正負イオン発生素子の電極表面に関して、湿度が90%を超過しているものの、場合によっては電極表面に水分の膜が完全に形成されていない可能性がある。このように、第1正負イオン発生素子からの正負イオン発生量が完全にゼロになっていない状況であるため、長期信頼性に優れた第1正負イオン発生素子の性能を維持することを図る。ここで、正負イオンを弱い度合いで駆動するというのは、例えば、通常に比べて印加電圧を小さくする、あるいは、周波数を小さくする等といった手法により、空間に放出される正負イオンの発生量を低下させる手法である。空間に放出されるイオンの大部分は第2正負イオン発生素子が担うものとし、補佐的な役割を第1正負イオン発生素子が担うことを図る。
また、第1正負イオン発生素子において、当該第1正負イオン発生素子のイオン発生電極の近傍に加熱手段を設けることが好ましい。加熱手段を設ける利点としては、室内環境の湿度が高い環境において、当該第1正負イオン発生素子の平面型の電極表面や基板表面に付着する水分を、加熱手段による加熱により蒸発させて、付着の度合いを低下させることができる。加熱の手段としては、公知の手法が利用可能であり、例えばニクロム線等の電熱線を誘電体1の中に埋め込むといった手法を用いることができる。
本加熱手段による水分除去効果だけでは不十分であり、あくまでも補佐的な役割をになうものである。即ち、本加熱手段は、室内空間の環境が高湿度環境であり、且つ第1正負イオン発生素子のイオン発生電極や基板表面の温度が室内環境よりも低い場合に、空間に高湿度で存在している水蒸気が電極表面や基板表面で熱エネルギーを失い、液体状態となって付着することを抑制するために用いられるものである。加熱手段を用いて電極表面や基板表面の温度を高い状態とすることにより、水分子の付着が抑制され、室内空間に正負イオンを効果的に放出することができる。ただし、極端に湿度が高くなってくる場合は、第1正負イオン発生素子だけでは加熱手段を有していても不十分な場合があり、第2正負イオン発生素子を駆動して、室内空間に正負イオンを効果的に放出することとなる。
上記の正負イオン発生装置において、第1正負イオン発生素子のための電圧発生装置と、第2正負イオン発生素子のための電圧発生装置とを兼用することができる。両電圧発生装置の兼用によって、製造コストを抑制することができる。また、第1正負イオン発生素子の電極の基板と、第2正負イオン発生素子の鋭利形状の前記電極の基板とを一体化して、小形化しコンパクトに形成することができる。
上記の正負イオン発生装置については、浄化すべき空気の通路が形成されている構造物において、通路を流れる空気に正負イオンを放出するように配設して適用することで、空気浄化装置を得ることができる。
以上、上記の[本発明の特徴1]、[本発明の特徴2]、[本発明の特徴3]に示すとおり、本発明の空気浄化装置は、長期的な信頼性が高く衝撃にも強い第1正負イオン発生素子と、空間の湿度が例えば90%以上と高い環境においても効果的に正負イオンを発生できる第2正負イオン発生素子を組み合わせ構成されており、それぞれの長所を生かして駆動させることができる。更に、空間の湿度を検知する手段と第1正負イオン発生素子のための第1駆動回路部と第2正負イオン発生素子のための第2駆動回路部をリンクした場合には、湿度検知手段の情報に応じて、第1駆動回路部と第2駆動回路部の作動条件について、室内空間の湿度がいかなる状態になろうとも効果的に正負イオンを放出することができるように駆動条件を最適に調整することができる。更に、第1正負イオン発生素子の基板内に加熱手段を設けた場合には、基板を加熱することにより、室内空間の湿度が高い環境において、平面型電極や基板表面に水分が付着しにくくなるように補佐的な役割を担わせ、空間に放出される正負イオン濃度の低下の度合いを抑制することができる。更にまた、正負イオン発生装置を、浄化すべき空気の通路が形成されている構造物において、通路を流れる空気に正負イオンを放出するように配設して適用することで、正負イオンを外部に放出する空気浄化装置を得ることができる。
以下に、本発明である正負イオン発生装置の実施例について説明する。図1、図2及び図3は、本発明による平面型の電極構造を有する正負イオン発生素子(第1正負イオン発生素子)と立体型の電極構造を有する正負イオン発生素子(第2正負イオン発生素子)から構成される正負イオン発生装置の一例を示す概略図である。
図1には、この発明による正負イオン発生装置の第1実施例の概略が示されている。第1実施例は、平面型のイオン発生電極を有する第1正負イオン発生素子A1と、立体型の電極構造を有する第2正負イオン発生素子B1とを組み合わせて構成されている。第1正負イオン発生素子A1は、図12において平面型のイオン発生電極を有する正負イオン発生素子A13として説明した素子と同等のものであり、第2正負イオン発生素子B1は、図13において立体型の電極構造を有する正負イオン発生素子B10として説明した素子と同等のものである。両素子A1,B1を構成する同じ構成要素については、素子A13,B10に用いた符号と同じ符号を付すことで、再度の説明を省略する。
図1に示す正負イオン発生装置においては、電圧発生装置4が一つだけ設けられており、第1正負イオン発生素子A1と第2正負イオン発生素子B1に兼用されている。図1に示すイオン発生装置は、電圧発生装置4が一つであるため、製造コストを抑制することができる。
図2には、この発明による正負イオン発生装置の第2実施例の概略が示されている。第2実施例は、平面型のイオン発生電極を有する第1正負イオン発生素子A2と、立体型の電極構造を有する第2正負イオン発生素子B2とを組み合わせて構成されている。第1正負イオン発生素子A2は、図12において平面型のイオン発生電極を有する正負イオン発生素子A13として説明した素子と同等のものである。第2正負イオン発生素子B2は、図13において立体型の電極構造を有する正負イオン発生素子B10として説明した素子と基本的に同等のものである。両素子A2,B2を構成する同じ構成要素については、素子A13,B10に用いた符号と同じ符号を付すことで、再度の説明を省略する。
図2に示す正負イオン発生装置においては、図1に示す第1実施例と同様に、電圧発生装置4が一つだけ設けられており、第1正負イオン発生素子A2と第2正負イオン発生素子B2に兼用されている。図2に示す正負イオン発生装置においては、更に、第2正負イオン発生素子B2のイオン発生電極7を設ける基板10について、第1正負イオン発生素子A2の誘電体1と共通化したことを特徴としている。第2実施例としてのイオン発生装置は、電圧発生装置4に加えて、第2正負イオン発生素子B2のイオン発生電極7を設ける基板10と、第1正負イオン発生素子A2の誘電体1と共通化しているため、最も小型化、一体化を達成することができる。基板10に加えて、保護手段5についても共通化されており、更に一体化が図られている。
図3には、この発明による正負イオン発生装置の第3実施例の概略が示されている。第3実施例は、平面型のイオン発生電極を有する第1正負イオン発生素子A3と、立体型の電極構造を有する第2正負イオン発生素子B3とを組み合わせて構成されている。第1正負イオン発生素子A3は、図12において平面型のイオン発生電極を有する正負イオン発生素子A13として説明した素子と同等のものである。第2正負イオン発生素子B3は、図13において立体型の電極構造を有する正負イオン発生素子B10として説明した素子と同等のものである。両素子A3,B3を構成する同じ構成要素については、素子A14,B10に用いた符号と同じ符号を付すことで、再度の説明を省略する。
図3に示す正負イオン発生装置においては、各正負イオン発生素子A3,B3において電圧発生装置4がそれぞれ設けられており、基板についても、第2正負イオン発生素子B3の基板9と、第1正負イオン発生素子A3の誘電体1はそれぞれ別になっている。第3実施例のメリットとしては、最も作製方法が簡便であることが挙げられる。さらに、電圧発生装置4が二つあるため、第1及び第2の各正負イオン発生素子A3,B3にそれぞれ最適な電圧印加条件を与えることができる。
更に、図4には、この発明による正負イオン発生装置の第4実施例の概略が示されている。第4実施例は、平面型の電極構造を有する第1正負イオン発生素子A4と立体型の電極構造を有する第2正負イオン発生素子B4から構成されているが、各素子A4,B4は基本的に図1に示す第1実施例に備わる第1正負イオン発生素子A1と第2正負イオン発生素子B1と同等であるので、共通する事項についての再度の説明については省略する。第4実施例は、第1正負イオン発生素子A4の基板である誘電体1内に、水分の付着を抑制するための加熱手段11が配設されている点で、第1実施例との違いがある。配設されている加熱手段11を作動させることにより、平面型の電極2,3の表面や誘電体1の表面への水分付着が抑制され、室内空間に放出する正負イオン濃度の減少度合いを小さくすることができる。加熱手段11は、例えば、誘電体1の中に埋め込まれたニクロム線等の電熱線とすることができる。
図5には、この発明による正負イオン発生装置の第5実施例の概略が示されている。第5実施例は、平面型の電極構造を有する第1正負イオン発生素子A5と立体型の電極構造を有する第2正負イオン発生素子B5から構成されているが、各素子A5,B5は基本的に図2に示す第2実施例に備わる第1正負イオン発生素子A2と第2正負イオン発生素子B2と同等であるので、共通する事項についての再度の説明を省略する。第5実施例は、第1正負イオン発生素子A5の基板である誘電体1内に、図4に示す第4実施例と同様の加熱手段11が配設されている点で、第2実施例との違いがある。加熱手段11の構成及び作用については、既に説明したのと同様であるので、再度の説明を省略する。
図6には、この発明による正負イオン発生装置の第6実施例の概略が示されている。第6実施例は、平面型の電極構造を有する第1正負イオン発生素子A6と立体型の電極構造を有する第2正負イオン発生素子B6から構成されているが、各素子A6,B6は基本的に図3に示す第3実施例に備わる第1正負イオン発生素子A3と第2正負イオン発生素子B3と同等であるので、共通する事項についての再度の説明を省略する。第6実施例は、第1正負イオン発生素子A6の基板である誘電体1内に、図4に示す第4実施例と同様の加熱手段11が配設されている点で、第3実施例との違いがある。加熱手段11の構成及び作用については、既に説明したのと同様であるので、再度の説明を省略する。
図7には、本発明の正負イオン発生装置を備えた空気浄化装置の実施例が概略図として示されている。図7に示す空気浄化装置においては、図5に示されている正負イオン発生装置が搭載されている。第1正負イオン発生素子A5と第2正負イオン発生素子B5とからなる正負イオン発生装置が、空気浄化装置を構成する構造物において、通路を流れる空気に正負イオンを放出するように、正負イオンを空間に効果的に放出するための送風手段に組み込まれている。さらに、図示しないが、湿度検知手段も備えており、空間の湿度どのように変化しようとも、効果的に正負イオンを空間に放出することができるものである。構造物は、図示のような筒体20を備えるものであり、筒体20については、内部に浄化すべき空気が流通させることができる通路を形成する筒としての機能を備えていれば形状(断面形状、長さ)は自由である。筒体20の大きさについても、内部に正負イオン発生装置を設置することができ且つ送風手段を関連して設置することができる規模であればよい。筒体20の材質としては、金属、樹脂材、ガラス材等の公知材料を用いることができ、色彩等も自由である。送風手段は、正負イオン発生装置によって筒の内部に発生された、生物性の汚染原因を除去・不活性化された浄化空気を外部空間に放出するために用いられるものであり、多くの場合、プロペラファンやシロッコファン、或いはクロスフローファン等の種類から選択されるファンでよい。
図8(a)は、本発明による正負イオン発生装置に適用可能な回路であって、連続通電に伴うオゾンの発生を抑制しつつ充分な量のイオンを発生させることができる回路の一例を示す図である。この回路は、交流の駆動電圧を印加することによりプラスイオン及びマイナスイオンを発生させるイオン発生素子21と、イオン発生素子21に印加する駆動電圧を発生する電圧発生回路22とを備えている。交流商用電源23は、SSR(ソリッドステートリレー)を介して電圧発生回路22の一方の入力端Aに接続されている。電圧発生回路22の他方の入力端Bは、交流商用電源23に直接接続され、図示の如く接地されている。SSRは、イオン発生装置、又は該イオン発生装置を備える機器の制御部24から与えられる制御信号に応じてオンオフ制御される。SSRのオン時に、電圧発生回路22の入力端Aは、抵抗R1を介してダイオードD3のアノード側に接続されており、ダイオードD3のカソード側は、コンデンサC2の正極側に接続されている。またコンデンサC2の負極側は、ダイオードD1のアノード側に接続されており、該ダイオードD1のカソード側は電圧発生回路22の他方の入力端Bに接続されている。
コンデンサC2の正極側は、更に、スイッチングトランス51の一次巻線51Pの一端に接続されており、一次巻線51Pの他端は、SCR(サイリスタ)を介してダイオードD1のアノード側に接続され、ダイオードD1及び入力端Bを介して接地されている。電圧発生回路22中のコンデンサC1、抵抗R3,R4,R5は、SCRのゲート制御回路を構成している。抵抗R2は、抵抗R1とで交流商用電源23を分圧し、所定の電圧をコンデンサC2に印加させる働きをする。また、逆流防止のために、ダイオードD2,D4が設けられている。
スイッチングトランス51の二次巻線51Sは、イオン発生素子21に接続されている。イオン発生素子21は、誘電体30と、誘電体30を介して対向する放電電極(表面電極、即ち、平面型の電極構造を有するイオン発生素子のイオン発生電極に相当)31及び誘導電極(内部電極、即ち、平面型の電極構造を有するイオン発生素子の対向電極に相当)32とを備えており、電極31,32が二次巻線51Sの両端に夫々接続されており、二次巻線51Sに発生する誘導電圧が放電電極31と誘導電極32との間に印加される。イオン発生素子21の一方の電極(ここでは放電電極31)は、ダイオードD5とコンデンサC3とを並列接続して成る整流手段、及びリレー52により成る開閉手段によって構成される直列回路を介して、電圧発生回路22の他方の入力端Bに接続されている。リレー52は、制御部24から与えられる制御信号に応じてオンオフ制御される。制御部24は、入力部60と運転処理部61を備えるマイクロコンピュータとして構成されている。入力部60は、ユーザによる図示しない操作部の操作内容を示す情報、各種のセンサから与えられる運転制御に必要な情報等の各種の入力情報を、図示しないインターフェイスを介して受け付ける。運転処理部61は、前記入力情報を用い、予め定めた手順に従って運転モードの切換え等の運転処理動作を行う。SSR及びリレー52への制御信号は、運転処理部61から図示しないインターフェイスを介して与えられている。
制御部24からの制御信号に応じてSSRがオンされることにより、電圧発生回路22は交流商用電源23に接続され、入力端A−B間に交流が印加される。ここで、入力端Aの電位が入力端Bの電位よりも高い半周期においては、抵抗R1→ダイオードD3→コンデンサC2→ダイオードD1なる第1経路に電流が流れ、コンデンサC2が充電される。この間、SCRのゲート・カソード間に電位差は生じず、SCRがオフ状態を維持するため、スイッチングトランス51の一次巻線51Pに電流は流れず、スイッチングトランス51の二次側に接続されたイオン発生素子21に駆動電圧は印加されない。一方、入力端A−B間に印加される交流が反転し、入力端Aの電位が入力端Bの電位よりも低い半周期においては、前記第1経路に電流は流れず、コンデンサC2への充電は停止される。この後、入力端B−A間の電位差が所定の閾値を超えたとき、前記ゲート制御回路の動作によりSCRのゲート・カソード間に電圧が印加され、SCRがオンする。SCRのオンにより、コンデンサC2→スイッチングトランス31(一次巻線51P)→SCR→ダイオードD1なる第2経路にコンデンサC2の放電電流が流れ、これによりスイッチングトランス51の二次巻線51Sに誘導電圧が発生してイオン発生素子21に印加される。
イオン発生素子21は、前述の如く、誘電体30を介して対向する放電電極31及び誘導電極32を備え、疑似的には容量負荷と抵抗負荷であるため、スイッチングトランス51の二次側回路は、等価的にはLCR振動回路となる。従ってイオン発生素子21には、図8(b)に示す駆動電圧の波形に描かれているように、一次側のコンデンサC2に蓄えられたエネルギーを放出するまで(期間T1秒)振動する駆動電圧が印加される。コンデンサC2の放電が終了すると、R5→R4→R3→R2→R1の回路となり、SCRは、ゲート・カソード間の電圧降下によりオフする(その後、コンデンサC2に蓄えられたエネルギーが次回に放出されるまでの期間T2秒)。このイオン発生装置の回路構成によれば、連続通電に伴うオゾンの発生を抑制しつつ充分な量のイオンを擬似連続的に発生させることが可能である。
上記の波形を発生させる駆動波形発生装置(駆動回路部)を利用して、平面型と立体型の両方の正負イオン発生素子に接続することにより、両方の正負イオン発生素子から正負イオンを発生させることができる。また、各型の正負イオン発生素子でそれぞれ最適な駆動電圧値が異なる場合には、回路の途中に電圧の増幅手段を設定することで対応することができる。また、一方の型の正負イオン発生素子のみを駆動する場合があるので、回路の途中に各型の正負イオン発生素子を独立して制御するスイッチが設定される。
以上、本発明による正負イオン発生装置とそれを用いた空気浄化装置の実施例について説明したが、本発明は、特許請求の範囲に記載されている発明の思想の範囲内で適宜、変更をなし得るものであり、本実施例により限定されるものではない。
本発明の正負イオン発生装置の第1実施例の概略を示す断面図である。
本発明の正負イオン発生装置の第2実施例の概略を示す断面図である。
本発明の正負イオン発生装置の第3実施例の概略を示す断面図である。
本発明の正負イオン発生装置の第4実施例の概略を示す断面図である。
本発明の正負イオン発生装置の第5実施例の概略を示す断面図である。
本発明の正負イオン発生装置の第6実施例の概略を示す断面図である。
本発明の正負イオン発生装置を備えた空気浄化装置の実施例の概略図である。
本発明の正負イオン発生装置を駆動する回路の一例を示す回路図と、当該回路によって得られる駆動電圧の波形の一例を示す波形図である。
平面型の電極構造を有するイオン発生素子の一例の概略を示す断面図である。
平面型の電極構造を有するイオン発生素子の別例の概略を示す断面図である。
平面型の電極構造を有するイオン発生素子の更に別例の概略を示す断面図である。
平面型の電極構造を有するイオン発生素子の更に別例の概略を示す断面図である。
立体型の電極構造を有するイオン発生素子の一例の概略を示す断面図である。
図9に示すイオン発生素子に水が付着した状態を示す概略図である。
図10に示すイオン発生素子に水が付着した状態を示す概略図である。
図11に示すイオン発生素子に水が付着した状態を示す概略図である。
図12に示すイオン発生素子に水が付着した状態を示す概略図である。
図13に示すイオン発生素子を長時間駆動した場合に現れる現象を示す概略図である。
符号の説明
A1,A2,A3,A4,A5,A6 平面型の電極構造を有するイオン発生素子
B1,B2,B3,B4,B5,B6 立体型の電極構造を有するイオン発生素子
1 有電体 2 イオン発生電極
3 対向電極 4 電圧発生装置
5 保護手段 6 保護層
7 イオン発生電極 8 対向電極
9 基板 10 基板
11 加熱手段 20 筒体
21 イオン発生素子 22 電圧発生回路
23 交流商用電源 24 制御部
30 誘電体
31 放電電極(表面電極) 32 誘導電極(内部電極)
51 スイッチングトランス
51P 一次巻線 51S 二次巻線
52 リレー
60 入力部 61 運転処理部
A 入力端 B 入力端