JP4821711B2 - 軟窒化用鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、軟窒化用鋼材に関し、詳しくは、例えば自動車や建設機械などのエンジン部品であるクランク軸などのような、軟窒化処理を施して使用される部品の素材として用いるのに適した軟窒化用鋼材に関する。より詳しくは、曲りの矯正を必要とする軟窒化部品の素材として用いるのに好適で、曲げ矯正後に上記部品に高い疲労強度を具備させることができる軟窒化用鋼材に関する。
自動車や建設機械などのクランク軸を始めとして、高い疲労強度や耐摩耗性が要求される部品は、鍛造や機械加工によって所定の形状に成形された後に、表面硬化のために高周波焼入れ処理や軟窒化処理を施されて製造されることが多い。
上記のうちで軟窒化処理は、高周波焼入れ処理に比べて熱処理歪が少ないことが大きな特徴である。
このため、特に、クランク軸などの部品には軟窒化処理が施されることが多いが、軟窒化処理の場合にも歪を皆無にすることはできない。
したがって、軟窒化部品は、軟窒化処理後の仕上工程において曲げ矯正処理を行うことによって、軟窒化処理以前に存在する歪に加えて軟窒化処理によって生じた歪を除去することが行われていた。
しかしながら、上記の曲げ矯正処理を施した場合には、軟窒化部品の疲労強度が大幅に低下するということを避け難かった。これは、曲げ矯正処理によって、軟窒化処理で形成された表面窒化層に割れが発生するためである。
したがって、産業界からは、軟窒化処理後の仕上工程において曲げ矯正処理を施した場合に、大きな曲げ変位量に至るまで表面窒化層に割れが発生しないという優れた曲げ矯正性を有し、軟窒化処理を施した部品に対して高い疲労強度を具備させることができる軟窒化用鋼材が要望されていた。
そこで、前記した要望に応えるべく、例えば、特許文献1〜4に、軟窒化処理に関する種々の技術が提案されている。また、特許文献5には、窒化処理に関する技術が提案されている。
具体的には、特許文献1に、「C:0.5%以下、Cr:0.5%以下、Al:0.2%以下およびV:0.3%以下を含み、必要に応じてさらに、(a)Ti、Zr:いずれも0.3%以下の1種又は2種、(b)Nb+Ta:0.3%以下、(c)Si、Mn、Cu、Mo、W、Co:おのおの1.5%以下、(d)S:0.15%以下、Pb+Te:0.4%以下、Se:0.3%以下の1種又は2種以上、の4グループの元素を1又は2以上組み合わせて含有し、残部がFeおよび不可避の不純物からなる鋼を加工して所望の機械部品の形状を与え、熱処理を行って含有されているVの少なくとも一部を析出させたのち軟窒化処理を施す機械部品の製造方法」が開示されている。
特許文献2には、「重量%で、C:0.4〜0.7%、Si:1.0%以下、Mn:0.6〜2.0%、Cr:0.2%以上且つ(C含有量+0.1)%以下、Al:0.05%以下を含有し、必要に応じてさらに、(a)P:0.015%以下、(b)S:0.15%以下、Pb:0.3%以下、Bi:0.3%以下、Se:0.1%以下及びCa:0.0005〜0.010%から選択された少なくとも1種、の2元素群のうちの少なくとも1つの元素群から選ばれる元素を含み、残部実質的にFeよりなり、軟窒化処理後に高強度及び高靱性が得られる低合金軟窒化鋼」が開示されている。
特許文献3には、「重量%で、C:0.4〜0.7%、Si:1.0%以下、Mn:0.8〜2.0%、Cr:0.2%以下、Al:0.05%以下、Ti+V:0.02%以上且つ(C含有量/6)%以下を含有し、必要に応じてさらに、(a)P:0.015%以下、(b)S:0.15%以下、Pb:0.3%以下、Bi:0.3%以下、Se:0.1%以下及びCa:0.0005〜0.010%から選択された少なくとも1種、の2元素群のうちの少なくとも1つの元素群から選ばれる元素を含み、残部実質的にFeよりなり、軟窒化処理後に高強度及び高靱性が得られる低合金軟窒化鋼」が開示されている。
特許文献4には、「C:0.35〜0.65重量%、Si:0.35%〜2.00重量%、Mn:0.80〜2.50重量%、Cr:0.20重量%以下及びAl:0.035重量%以下を含有し、必要に応じてさらに、(a)Ni:3.0重量%以下、Cu:1.0重量%以下及びMo:0.5重量%以下からなる群より選ばれる1種以上、(b)Pb:0.03〜0.35重量%、Ca:0.0010〜0.0100重量%及びS:0.04〜0.13重量%からなる群より選ばれる1種以上、(c)B:0.0080重量%以下、の3元素群のうちの少なくとも1つの元素群から選ばれる元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる軟窒化用鋼」が開示されている。
特許文献5には、「重量%で、Feの含有率が90%以上とされるとともに、それぞれ、C:0.35〜0.5%、Si:0.01〜0.3%、Mn:0.6〜1.8%、Cu:0.01〜0.5%、Ni:0.01〜0.5%、Cr:0.01〜0.5%、Al:0.001〜0.01%、N:0.005〜0.025%とされる成分元素を含有し、必要に応じてさらに、Pb:0.30%以下、S:0.20%以下、Ca:0.01%以下、Bi:0.30%以下、Ti:0.02%以下、Zr:0.02%以下、Mg:0.01%以下とされる成分元素のうち1種または2種以上が含有されてなることに加えて、炭素当量、クロム当量を特定の範囲に調整し、部材表面から50μm位置のビッカース硬さが340〜460HV、窒化の影響が及んでいない略一定硬さを示す内層部のビッカース硬さが190〜260HV、さらに、ビッカース硬さが270HVとされる部材表面からの有効硬化層深さが0.3mm以上に調整されてなる機械部品」が開示されている。
特開昭59−67365号公報 特開昭64−4457号公報 特開昭64−25949号公報 特開平4−83849号公報 特開2004−162161号公報
前述の特許文献1で開示された技術の場合は、Vが必須の構成元素として添加されている。このため、必ずしも十分な曲げ矯正性が確保できるとはいえなかった。
特許文献2で開示された技術の場合、C及びCrを多量に含むものである。このため、必ずしも十分な曲げ矯正性が確保できるとはいえなかった。
特許文献3で開示された技術の場合、Cを多量に含むものである。このため、必ずしも十分な曲げ矯正性が確保できるとはいえなかった。
特許文献4で開示された技術の場合、0.35〜2.00重量%という過剰のSiを含むものである。このため、必ずしも十分な曲げ矯正性が確保できるとはいえなかった。
特許文献5で開示された技術の場合、Tiは必ずしも含有されるものでなく、このため、結晶粒の粗大化抑制という点では十分とはいえず、疲労強度に十分優れるものではなかった。
そこで、本発明の目的は、軟窒化処理後の仕上工程において曲げ矯正処理を行った場合に、大きな曲げ変位量に至るまで表面窒化層に割れが発生しないという優れた曲げ矯正性を有するだけではなく、軟窒化処理後の仕上工程において曲げ矯正処理を行った軟窒化部品に対して高い疲労強度を具備させることができる軟窒化用鋼材を提供することである。
従来、軟窒化用鋼材の特性は、軟窒化処理ままでの疲労強度と、表面窒化層に割れが発生するまでの曲げ変位量あるいは曲げ歪量で表される曲げ矯正性、の2つでのみ評価されていた。これは、軟窒化処理後の疲労強度が高くても、わずかな曲げ矯正処理で表面窒化層に割れが発生するような場合には、曲げ矯正した部品の実体的な疲労強度が劣るためである。
しかしながら、前記した課題を解決するために種々検討を行った結果、本発明者は、
(a)曲げ矯正時に表面窒化層に割れが発生しない場合であっても、曲げ矯正後に疲労強度が低下することがある。
という事実に気付いた。
そこで、さらに検討を加えた結果、
(b)曲げ矯正後の疲労強度は、曲げ矯正時に発生した表面窒化層の割れが要因で決定される場合と、曲げ矯正時の残留応力が要因で決定される場合の2種類が存在すること、具体的には、疲労き裂が曲げ矯正時に割れが発生する引張矯正側ではなく、曲げ矯正時に割れが発生しない圧縮矯正側から進行する場合がある。
ということに気付いた。
そして、上記疲労き裂が圧縮矯正側から進行する場合があるのは、曲げ矯正後の残留応力が、引張矯正側では圧縮残留応力となっているのに対して、圧縮矯正側では引張残留応力となっているためであることが明らかになった。
(c)したがって、曲げ矯正後に良好な疲労強度を確保するためには、鋼材の疲労強度を確保することと、曲げ矯正時の表面窒化層の割れを防ぐだけでは十分ではなく、圧縮矯正側に発生する引張残留応力の絶対値を小さくする必要がある。
さらに検討を加えた結果、下記(d)の知見を得るに至った。
(d)曲げ矯正後に良好な疲労強度を確保するには、鋼材の化学組成を特定の範囲にするとともに、軟窒化処理前の機械的性質、特に、軟窒化処理前の降伏比(引張強度に対する降伏応力の割合で「降伏応力/引張強度」で表される値。以下、「YR」ともいう。)が0.6以上になるように制御すればよい。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(3)に示す軟窒化用鋼材にある。
(1)質量%で、C:0.35〜0.45%、Si:0.10〜0.35%、Mn:1.2〜1.8%、S:0.12%以下、Ti:0.001〜0.02%、N:0.008〜0.025%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、不純物中のP:0.08%以下、Al:0.01%以下、Cr:0.20%以下、V:0.01%未満で、かつ、Ti(%)/N(%)<1.0を満足する化学組成で、さらに、軟窒化処理前の降伏比が0.6以上であることを特徴とする軟窒化用鋼材。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.3%以下を含有することを特徴とする上記(1)に記載の軟窒化用鋼材。
(3)Feの一部に代えて、質量%で、Pb:0.3%以下、Ca:0.01%以下及びBi:0.3%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の軟窒化用鋼材。
以下、上記(1)〜(3)の軟窒化用鋼材に係る発明を、それぞれ、「本発明(1)」〜「本発明(3)」という。また、総称して「本発明」ということがある。
本発明の軟窒化用鋼材は、軟窒化処理後の仕上工程において曲げ矯正処理を行った場合に、大きな曲げ変位量に至るまで表面窒化層に割れが発生しないという優れた曲げ矯正性を有するだけではなく、軟窒化処理後の仕上工程において曲げ矯正処理を行った軟窒化部品に対して高い疲労強度を具備させることができる。このため、軟窒化部品の素材として用いるのに好適である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
C:0.35〜0.45%
Cは、必要な疲労強度を確保するため有効な元素であり、高い疲労強度を得るためには0.35%以上の含有量とする必要がある。しかしながら、Cの含有量が過剰になると鋼材自体の疲労強度が低下するのに加え、YRが低下して曲げ矯正後の引張残留応力が大きくなるため、曲げ矯正後の疲労強度の低下を招き、特に0.45%を超えると、YRの低下が著しくなって曲げ矯正後の疲労強度が大きく低下してしまう。したがって、Cの含有量を0.35〜0.45%とした。なお、C含有量のより望ましい範囲は0.35〜0.43%である。
Si:0.10〜0.35%
Siは、溶製時の脱酸用として必要な元素であり、かかる効果を得るために少なくとも0.10%の含有量とする必要がある。しかしながら、Siの多量の含有は曲げ矯正性の低下を招き、特に、Siの含有量が0.35%を超えると、曲げ矯正性の低下が著しくなる。したがって、Siの含有量を0.10〜0.35%とした。なお、Si含有量のより望ましい範囲は0.15〜0.35%である。
Mn:1.2〜1.8%
Mnは、上記Siと同様に鋼の脱酸に有効な元素である。Mnには、焼入れ性を高める作用及び軟窒化時の固溶窒素量を増加させて疲労強度を向上させる作用もある。前記した効果を得るためにはMnの含有量は1.2%以上とする必要がある。しかしながら、Mnの含有量が1.8%を超えると、曲げ矯正性が低下する。したがって、Mnの含有量を1.2〜1.8%とした。なお、Mn含有量のより望ましい範囲は1.3〜1.7%である。
S:0.12%以下
Sは、被削性を改善する作用を有する。しかしながら、Sの含有量が多くなると疲労強度と曲げ矯正性が低下し、特に、Sの含有量が0.12%を超えると、疲労強度と曲げ矯正性の低下が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.12%以下とした。なお、被削性向上効果を得るためには、Sの含有量は0.04%以上とすることが望ましい。このため、S含有量のより望ましい範囲は0.04〜0.12%であり、0.04〜0.07%であれば一層望ましい。
Ti:0.001〜0.02%
Tiは、結晶粒の粗大化を抑制し、結晶粒を微細化する元素である。この効果を得るためにはTiの含有量は0.001%以上とする必要がある。一方、Tiの含有量が多くなって0.02%を超えると、曲げ矯正性が低下する。したがって、Tiの含有量を0.001〜0.02%とした。Ti含有量のより望ましい範囲は0.005〜0.02%である。
なお、上記範囲にあるTiの含有量は、後述するように、Ti(%)/N(%)<1.0の条件も満たす必要がある。
N:0.008〜0.025%
Nは、窒化物を形成して結晶粒を微細化するのに有効な元素である。しかしながら、その含有量が0.008%未満では上記の効果が十分には期待できない。一方、Nを0.025%を超えて含有しても上記の効果が飽和するとともに曲げ矯正性が低下する。したがって、Nの含有量を0.008〜0.025%とした。なお、N含有量のより望ましい範囲は0.015〜0.022%である。
なお、上記範囲にあるNの含有量は、次に述べるように、Ti(%)/N(%)<1.0の条件も満たす必要がある。
Ti(%)/N(%)<1.0
TiとNの含有量の比であるTi(%)/N(%)の値が1.0以上となると、大型の窒化物あるいは炭窒化物が生成し、これが破壊の起点となって疲労強度の低下につながる。したがって、Ti(%)/N(%)<1.0とした。なお、Ti(%)/N(%)の値の下限は、Tiの含有量の下限値である0.01%とNの含有量の上限値である0.025%の場合の、0.04である。
本発明に係る軟窒化用鋼材においては、不純物中のP、Al、Cr及びVの含有量を、それぞれ、P:0.08%以下、Al:0.01%以下、Cr:0.20%以下及びV:0.01%未満に制限する。
以下、このことについて説明する。
P:0.08%以下
Pは、不純物であり、疲労強度及び曲げ矯正性を低下させてしまう。特に、その含有量が0.08%を超えると、疲労強度及び曲げ矯正性の低下が著しくなる。したがって、不純物中のPの含有量を0.08%以下とした。なお、不純物中のP含有量のより望ましい範囲は0.03%以下である。
Al:0.01%以下
Alは、不純物であり、曲げ矯正性を低下させてしまう。特に、その含有量が0.01%を超えると曲げ矯正性の低下が著しくなる。したがって、不純物中のAlの含有量を0.01%以下とした。
Cr:0.20%以下
Crは、不純物であり、その含有量が0.20%を超えると、曲げ矯正性が著しく低下し、曲げ矯正後の疲労強度が低下する。そこで、本発明では、不純物中のCrの含有量を0.20%以下とした。なお、不純物中のCr含有量のより望ましい範囲は0.10%以下である。
V:0.01%未満
Vは、不純物であり、その含有量が0.01%以上になると曲げ矯正性が低下するし、YRが低下して、曲げ矯正後の疲労強度の低下を招く。したがって、不純物中のVの含有量を0.01%未満とした。
上記の理由から、本発明(1)に係る軟窒化用鋼材は、C、Si、Mn、S、Ti、Nを上述した範囲で含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中のP、Al、Cr及びVがそれぞれ、上述の範囲にあり、しかも、Ti(%)/N(%)<1.0を満足することと規定した。
本発明に係る軟窒化用鋼材には、必要に応じて、上記本発明(1)におけるFeの一部に代えて、
第1群:Mo:0.3%以下、
第2群:Pb:0.3%以下、Ca:0.01%以下及びBi:0.3%以下のうちの1種又は2種以上、
の少なくとも1つの群の元素のうち1種以上を含有するものとすることができる。
すなわち、さらにより優れた特性を得るために、前記第1群と第2群の少なくとも1つの群の元素のうち1種以上を、本発明(1)の軟窒化用鋼材におけるFeの一部に代えて、含有してもよい。
以下、上記の元素に関して説明する。
第1群:Mo:0.3%以下
Moは、焼入れ性を高めることによって、疲労強度及び靱性の向上に寄与する元素であるので、必要に応じて添加含有させてもよい。しかしながら、0.3%を超えるMoを含有させても前記の効果が飽和するのでコストが嵩んで経済性が損なわれる。したがって、添加する場合のMoの含有量を0.3%以下とした。
前記したMoの焼入れ性向上効果を確実に得るためには、Moの含有量を0.05%以上とすることが好ましい。このため、添加する場合のより望ましいMo含有量は0.05〜0.3%である。なお、添加する場合の一層望ましいMoの含有量は0.05〜0.15%である。
第2群:Pb:0.3%以下、Ca:0.01%以下及びBi:0.3%以下のうちの1種又は2種以上
Pb、Ca及びBiは、いずれも、被削性を改善する作用を有する。このため、より優れた被削性を得たい場合には以下の範囲で含有してもよい。
Pb:0.3%以下
Pbは、被削性を改善する作用を有するので、さらなる被削性向上のために含有させてもよい。しかしながら、Pbの含有量が0.3%を超えると介在物が多くなって疲労強度が著しく低下する。したがって、添加する場合のPbの含有量を0.3%以下とした。
前記したPbの被削性改善効果を確実に得るためには、Pbの含有量を0.05%以上とすることが好ましい。このため、添加する場合のより望ましいPb含有量は0.05〜0.3%である。なお、添加する場合の一層望ましいPbの含有量は0.1〜0.3%である。
Ca:0.01%以下
Caは、被削性を改善する作用を有するので、さらなる被削性向上のために含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が0.01%を超えると大型介在物の混入が避けられず疲労強度低下の原因となる。したがって、添加する場合のCaの含有量を0.01%以下とした。
前記したCaの被削性改善効果を確実に得るためには、Caの含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。このため、添加する場合のより望ましいCa含有量は0.0003〜0.01%である。なお、添加する場合の一層望ましいCaの含有量は0.0005〜0.01%である。
Bi:0.3%以下
Biも、被削性を改善する作用を有するので、さらなる被削性向上のために含有させてもよい。しかしながら、Biの含有量が0.3%を超えると疲労特性および曲げ矯正性が著しく低下する。したがって、添加する場合のBiの含有量を0.3%以下とした。
前記したBiの被削性改善効果を確実に得るためには、Biの含有量を0.05%以上とすることが好ましい。このため、添加する場合のより望ましいBi含有量は0.05〜0.3%である。なお、添加する場合の一層望ましいBiの含有量は0.1〜0.3%である。
上記のPb、Ca及びBiは、いずれか1種のみ、あるいは2種以上の複合で含有することができる。
上述の理由から、本発明(2)に係る軟窒化用鋼材の化学組成を、本発明(1)に係る軟窒化用鋼材のFeの一部に代えて、Mo:0.3%以下を含有するものと規定した。
また、本発明(3)に係る軟窒化用鋼材の化学組成を、本発明(1)又は本発明(2)の軟窒化用鋼材におけるFeの一部に代えて、Pb:0.3%以下、Ca:0.01%以下及びBi:0.3%以下のうちの1種又は2種以上を含有することと規定した。
(B)軟窒化処理前の降伏比
軟窒化用鋼材の化学組成が前記(A)項で述べたものであっても、軟窒化処理前のYRが0.6未満であれば、曲げ矯正後の疲労強度が大きく低下してしまう。このため、軟窒化処理前のYRを0.6以上とした。なお、0.9を超えるYRを確保するには合金元素を多量に含まざるを得ず、表面硬度が高くなりすぎるので、曲げ矯正時に表面窒化層に割れが発生しやすくなる。したがって、軟窒化処理前のYRは0.9以下とすることが好ましい。
なお、化学組成が前記(A)項の条件を満たす場合に、軟窒化処理前のYRを0.6以上とするためには、例えば、820〜870℃で焼準し、その後、0.5〜1.0℃/秒の冷却速度で室温まで冷却すればよい。上記のような処理を施すことによって、細かい結晶粒が得られるので、軟窒化処理前に0.6以上の大きなYRを具備させることが可能になる。
なお、Ac1点以下の500〜600℃前後の温度域で、N及びCを侵入・拡散させて高い表面硬さを得る軟窒化の処理条件は特に規定する必要はなく、ガス軟窒化、塩浴軟窒化やプラズマ軟窒化などを適宜用いればよい。例えば、ガス軟窒化の場合には、通常行われるように、NH3ガス(アンモニアガス)とRXガス(「RXガス」は吸熱型変成ガスの商標である。)の混合比である「NH3/RX」が1、つまり、NH3ガス:RXガス=1:1の雰囲気中にて600℃で2時間程度処理し、その後100℃の油中に冷却すればよい。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
表1に示す化学組成を有する鋼1〜16を70トン転炉溶製−連続鋳造して得た鋳片を分塊圧延して一辺が180mmの角材とした。
Figure 0004821711
このようにして得た一辺が180mmの角材を素材として、1200℃加熱、1000℃仕上げの熱間鍛造によって、直径50mmの丸棒を作製した。
次いで、直径50mmの丸棒を、表2に示す温度で2時間焼準した。焼準後は、表2に示す冷却速度で室温まで冷却した。
Figure 0004821711
上記のようにして得た直径が50mmの各丸棒のR/2部(但し、「R」は丸棒の半径を表す。)から、JIS Z 2201(1998)に記載の4号引張試験片(但し、平行部の長さ:30mm、直径:7mm、肩部のR:15mm)を採取し、標点距離を25mmとして室温で引張試験を行って、降伏応力(YS)及び引張強度(TS)を測定した。
また、上記の直径が50mmの各丸棒の中心部から、図1に示す形状の平面曲げ疲労試験片を採取し、NH3ガス:RXガス=1:1の雰囲気中にて600℃で2時間処理し、その後100℃の油中に冷却した。なお、上記図1に示した平面曲げ疲労試験片における寸法の単位は全て「mm」である。
次いで、上記軟窒化処理を施した平面曲げ疲労試験片の一部のものについて、その切欠底に0.3mmの歪ゲージを接着し、歪ゲージが断線するまで歪を加え、歪ゲージが断線した時点での歪量、すなわち曲げ矯正可能歪量で曲げ矯正性を評価した。
また、上記軟窒化処理を施した残りの平面曲げ疲労試験片は、その切欠底に0.3mmの歪ゲージを接着し、歪ゲージの出力が15000με(曲げ矯正歪で1.5%に相当)になるまで曲げ矯正歪を付与した。
上記の15000μεの曲げ矯正歪を付与した試験片と軟窒化処理のままで曲げ矯正歪を付与していない試験片のそれぞれを用いて、室温、大気雰囲気中にて、周波数20Hzの両振りの条件で平面曲げ疲労試験を行い、曲げ矯正前後の疲労強度(σw)を調査した。
なお、各試験の目標値は、曲げ矯正可能歪量が20000με以上、曲げ矯正後の疲労強度が500MPa以上、「曲げ矯正後の疲労強度/曲げ矯正前の疲労強度」で表される曲げ矯正前後の疲労強度変化率が0.70以上とした。
表3に、上記の試験結果を整理して示す。
Figure 0004821711
表3から、本発明で規定する条件を満たす「本発明例」に係る試験番号1〜11は、曲げ矯正可能歪量が20000με以上、曲げ矯正後の疲労強度が500MPa以上、かつ「曲げ矯正後の疲労強度/曲げ矯正前の疲労強度」で表される曲げ矯正前後の疲労強度変化率が0.70以上という目標を達成しており、優れた曲げ矯正性に加えて、高い疲労強度を有することが明らかである。
これに対して、試験番号12〜14は、化学組成が本発明で規定する条件を満たす鋼5を用いているが、軟窒化処理前のYRがいずれも0.59と低く本発明の規定から外れている。このため、いずれの試験番号の場合も、曲げ矯正後の疲労強度及び曲げ矯正前後の疲労強度変化率がともに目標に未達である。
試験番号15〜17は、化学組成が本発明で規定する条件を満たす鋼6を用いているが、軟窒化処理前のYRがいずれも0.58と低く本発明の規定から外れている。このため、いずれの試験番号の場合も、曲げ矯正後の疲労強度及び曲げ矯正前後の疲労強度変化率がともに目標に未達である。
試験番号18〜20は、化学組成が本発明で規定する条件を満たす鋼7を用いているが、軟窒化処理前のYRがいずれも0.59と低く本発明の規定から外れている。このため、いずれの試験番号の場合も、曲げ矯正後の疲労強度及び曲げ矯正前後の疲労強度変化率がともに目標に未達である。
試験番号21は、鋼12のTi(%)/N(%)の値が1.16と高く本発明で規定する条件から外れている。このため、粗大な窒化物が生成して曲げ矯正後の疲労強度が低く、目標に未達である。
試験番号22は、鋼12のMn含有量が1.00%と低く、本発明で規定する条件から外れている。このため、軟窒化時の固溶窒素量が低くなって曲げ矯正後の疲労強度が低く、目標に未達である。
試験番号23は、鋼13のCr含有量が0.22%と高く、本発明で規定する条件から外れている。このため、曲げ矯正性が低下し、曲げ矯正可能歪量及び曲げ矯正後の疲労強度がともに目標に未達である。
試験番号24は、鋼15のV含有量が0.012%と高く、また軟窒化処理前のYRが0.54と低く、本発明で規定する条件から外れている。このため、曲げ矯正性が低下し、曲げ矯正可能歪量、曲げ矯正後の疲労強度及び曲げ矯正前後の疲労強度変化率がいずれも目標に未達である。
試験番号25は、鋼16のC含有量が0.50%と高く、軟窒化処理前のYRが0.56と低く、本発明で規定する条件から外れている。このため、曲げ矯正性が低下し、曲げ矯正可能歪量、曲げ矯正後の疲労強度及び曲げ矯正前後の疲労強度変化率がいずれも目標に未達である。
本発明の軟窒化用鋼材は、軟窒化処理後の仕上工程において曲げ矯正処理を行った場合に、大きな曲げ変位量に到るまで表面窒化層に割れが発生しないという優れた曲げ矯正性を有するだけではなく、軟窒化処理後の仕上工程において曲げ矯正処理を行った軟窒化部品に対して高い疲労強度を具備させることができる。このため、軟窒化部品の素材として用いるのに好適である。
実施例で用いた平面曲げ疲労試験片の形状を示す図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.35〜0.45%、Si:0.10〜0.35%、Mn:1.2〜1.8%、S:0.12%以下、Ti:0.001〜0.02%、N:0.008〜0.025%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、不純物中のP:0.08%以下、Al:0.01%以下、Cr:0.20%以下、V:0.01%未満で、かつ、Ti(%)/N(%)<1.0を満足する化学組成で、さらに、軟窒化処理前の降伏比が0.6以上であることを特徴とする軟窒化用鋼材。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.3%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の軟窒化用鋼材。
  3. Feの一部に代えて、質量%で、Pb:0.3%以下、Ca:0.01%以下及びBi:0.3%以下のうちの1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の軟窒化用鋼材。
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