JP4818063B2 - 嵩高紙の製造方法 - Google Patents

嵩高紙の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4818063B2
JP4818063B2 JP2006282821A JP2006282821A JP4818063B2 JP 4818063 B2 JP4818063 B2 JP 4818063B2 JP 2006282821 A JP2006282821 A JP 2006282821A JP 2006282821 A JP2006282821 A JP 2006282821A JP 4818063 B2 JP4818063 B2 JP 4818063B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
paper
water
base paper
bulky
embossing
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2006282821A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008101283A (ja
Inventor
寛 橋向
治 湯浅
幹雄 豊浦
一雄 森
弘幸 赤井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP2006282821A priority Critical patent/JP4818063B2/ja
Publication of JP2008101283A publication Critical patent/JP2008101283A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4818063B2 publication Critical patent/JP4818063B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Controlling Rewinding, Feeding, Winding, Or Abnormalities Of Webs (AREA)
  • Paper (AREA)

Description

本発明は凹凸賦形により嵩高とされた紙の製造方法に関に関する。
パルプ等を主体とした繊維からなる紙を嵩高にする方法としては、彫刻したロール間で紙を押圧するエンボス法がある。紙のエンボス法は、抄造途中の湿紙に対してエンボスを行うウェットエンボス法と、紙を抄造してからエンボスを行うドライエンボス法に大別できる。ウェットエンボス法は、抄紙機上で紙が乾燥されるまでの間にエンボスを行う方法(特許文献1及び2参照)である。特許文献1には、湿ったペーパーウエブを押型用織物上に支持し、該押型用織物のナックルパターンを該ペーパーウエブに押し付けて嵩高にし、最後にヤンキードライヤで乾燥させることが記載されている。特許文献2には、エンボス加工を行った湿紙を乾燥工程で乾燥することが記載されている。しかし抄造時の湿紙に含まれる多量の水分を乾燥させるためには、ヤンキードライヤの表面に強く湿紙を接触させて熱効率を良くする必要があるので、これに起因してエンボス賦形により形成された嵩高な凹凸が潰れてしまう。
一方ドライエンボス法は、一旦抄造して乾燥させた紙にエンボスを行う方法である。しかし、パルプ等の非熱融着性繊維を主体とする紙にエンボスを行った場合、パルプ繊維間結合(水素結合、バインダーを介しての結合等)が維持されたままエンボスが行われるので、これに起因してエンボス加工時に繊維間結合の破壊や繊維の破断が生じ、紙の強度や嵩高性が低下してしまう。
そこで本出願人は先に、水溶性バインダ又は水膨潤性バインダを含有する実質的に水分散可能な繊維シートに、該繊維シート中の水分含有率が10〜200重量%の状態でエンボス加工を施し、それと同時に又はその直後に該繊維シートを乾燥させる水解紙の製造方法を提案した(特許文献3参照)。この製造方法によれば、嵩高な凹凸を潰すことなく、凹凸賦形された紙を乾燥させることができる。しかし、この方法では乾燥の効率がやや低く、大型の乾燥装置が必要となることがある。
特公昭53−41243号公報 特開平8−260397号公報 特開2006−83509号公報
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る嵩高紙の製造方法を提供することにある。
本発明は、湿潤状態にある原紙にエンボス加工を施して該原紙を凹凸賦形し、凹凸賦形された該原紙に、100〜200℃に加熱された気体を貫通させて該原紙を水分含有率4.8〜8重量%に乾燥させる嵩高紙の製造方法であって、
前記原紙が、水溶性バインダ又は水膨潤性バインダを含有する実質的に水分散可能な坪量30〜150g/m 2 のものであり、
該原紙に水分含有率が10〜40重量%となるように水を施した後に、エンボス加工を施す嵩高紙の製造方法を提供するものである。
本発明の製造方法によれば、乾燥の効率が高く、乾燥に用いられるエネルギーを最小にすることができる。また、機械方向での強度とそれに直交する方向での強度の差が小さくなり、嵩高紙が均質になって全体としての強度が向上する。更に、エンボス加工によって賦形された凹凸形状が、その後に行われる乾燥中に潰れづらくなり、得られる紙を嵩高にすることができる。
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本実施形態は、本発明の製造方法を嵩高水解紙の製造に適用した例である。本実施形態に従い製造される嵩高水解紙は、水溶性バインダ又は水膨潤性バインダを含有する実質的に水分散可能な繊維シートが原紙として用いられる。
水溶性バインダを含有する水分散可能な繊維シートは種々の方法にて製造される。例えば、抄紙原料であるパルプ分散液中に、水溶性バインダと、該水溶性バインダのパルプ繊維への定着剤を添加して、所定量の水溶性バインダを含有する水解紙原反を製造することが知られている(特開平3−193996号公報)。また、パルプ分散液からシートをフォーミングし、プレス脱水あるいは半乾燥した後に水溶性バインダを噴霧乾燥あるいは塗工乾燥して、所定量の水溶性バインダを含有する水解紙原反を製造することも可能である。この際には、プレス脱水よりも熱風通過乾燥機などのプレ乾燥方式を用いた方が、低密度でより水解性の良い水解紙原反を得ることができる。更に上述の湿式抄紙法ではなく、水を使わず乾式でパルプ繊維を解繊して、ウェブを形成した後、水溶性バインダを噴霧あるいは塗工し、その後乾燥して繊維シートを製造することも可能である。いわゆるエアレイド製法である。
図1には水溶性バインダを含有する実質的に水分散可能な繊維シートの製造に好ましく用いられる製造装置の一例の概略図が示されている。図1に示す製造装置(湿式抄造機)は、フォーマーと、ワイヤーパートと、第1ドライパートと、スプレーパートと、第2ドライパートとを備えて構成されている。フォーマーは、調製装置(図示せず)から供給された完成紙料を所定の濃度に調節してワイヤーパートへ供給するものである。図示しない調製装置は、パルプ繊維等の原料を離叩解する装置と、離叩解された原料にサイズ剤、顔料、紙力増強剤、漂白剤、凝集剤等の添加剤を添加する添加装置とを備え、水解紙の特性に応じた所定濃度の原料からなる紙料を完成紙料として調製するように構成されている。また、パルプスラリーにバインダを混合することも可能である。ワイヤーパートは、フォーマーから供給された完成紙料を抄き網に湿紙として形成するものである。第1ドライパートは、ワイヤーパートにおいて形成された湿紙を乾燥させるものである。スプレーパートは、第1ドライパートで乾燥された紙にバインダを噴霧するものである。第2ドライパートは、スプレーパートでバインダが噴霧され湿潤状態になっている紙を乾燥させるものである。
フォーマー4から供給された完成紙料がワイヤーパートにおいて抄造され、ワイヤー5上に湿紙が形成される。湿紙は、ワイヤーパートに設置されているサクションボックス6による吸引によって水分が除去され、所定の水分率となされる。次いで湿紙は、第1ドライパート7に導入されて乾燥される。第1ドライパート7はスルー・エア・ドライヤー(以下、TADという)から構成されている。TADは、周面が通気性を有する回転ドラム8と、該回転ドラム8をほぼ気密に覆うフード9とを備えている。TADにおいては、所定温度に加熱された空気がフード9内に供給されるようになされている。加熱された空気は回転ドラム8の外側から内部に向けて流通する。湿紙は、図1中、矢印方向に回転する回転ドラム8の周面に抱かれた状態で搬送される。TAD内を搬送されている間、湿紙にはその厚み方向へ加熱空気が貫通し、それによって湿紙は乾燥され紙となる。
第1ドライパート7で得られた紙には、スプレーパートにおいてバインダを含む水溶液が噴霧される。スプレーパートは第1及び第2ドライパート7,14間の位置である。両ドライパート7,14は、コンベアを介して連結されている。
コンベアは、それぞれ矢示方向に回転する上コンベアベルト10と下コンベアベルト11とを備えている。コンベア10は、第1ドライパート7のTADによって乾燥されて紙をこれら両ベルト10,11間に挟持した状態で第2ドライパート14へ搬送するように構成されている。上コンベアベルト10の下流側の折り返し端には真空ロール12が配置されている。真空ロール12は、上コンベアベルト10の裏面に紙を吸着させ、その吸着状態下に上コンベアベルト10を搬送させるようになっている。
図1に示すように、スプレーパートはスプレーノズル13を備えている。スプレーノズル13は第2ドライパート14の下方で且つ真空ロール12に対向するように配設されている。スプレーノズル13は、真空ロール12に向けてバインダを含む噴霧液を噴霧して、紙に該噴霧液を添加(外添)するものである。
スプレーパートにおいてバインダが供給された後、紙は第2ドライヤーパート14へ搬送される。第2ドライヤーパート14はヤンキードライヤから構成されている。噴霧液が噴霧されて湿潤状態となっている紙は、フード16内に設置されたヤンキードライヤの回転ドラム15の周面に抱かれた状態で搬送される。回転ドラム15に抱かれて搬送されている間に紙の乾燥が進行する。
ヤンキードライヤの出口にはドクターブレード17が設置されている。ドクターブレード17は、紙にクレープをかけながら、ヤンキードライヤの回転ドラム15から紙を剥離させるものである。これによって紙にクレープがかけられる。次いで紙は、一旦ワインダー(図示せず)に巻き取られてロールとなされる。
一方、水膨潤性バインダを含有する水分散可能な繊維シートも種々の方法にて製造することが可能である。例えば、パルプ分散液中に所定量の水膨潤性の繊維状バインダを添加し、湿紙をフォーミングし、乾燥して繊維シートを得ることが知られている(特開平4−370300号公報、特開平2−74694号公報)。また、湿式抄紙法ではなく、エアレイド法にてパルプ繊維と水膨潤性の繊維状バインダの混合繊維原料を乾式解繊して、ウェブを形成した後、乾燥して繊維シートを製造することが可能である。
更に、上述の方法を組み合わせることによって、水溶性バインダと水膨潤性バインダの両方を含有する繊維シートを製造することも可能である。以下の説明においては、エンボス加工による凹凸賦形がなされる前の状態にある、水溶性バインダ又は水膨潤性バインダを含有する実質的に水分散可能な繊維シートを原紙として用いる。
原紙は、引き続く工程において、又は一旦ロールの形で保管された後に、再度水が添加されて、エンボス加工による凹凸賦形が施される。そしてその後に乾燥が施されて、多数の凹凸部を有する嵩高な水解紙となされる。このような製法は、例えば図2に示す装置によって行われる。図2に示す装置は、エンボス装置及び乾燥装置を備えている。
エンボス装置は、一対のエンボスロール18,18を有している。各エンボスロール18は、その周面に多数の凹凸を有し且つ互いに噛み合い形状となっている。つまり、図2に示すエンボス装置は、スチールマッチエンボス装置である。各エンボスロール18は、図2中矢印で示す方向に回転している。各エンボスロール18は金属製である。各エンボスロール18には、必要に応じ、これらを所定温度に加熱可能とする加熱手段(図示せず)を取り付けてもよい。エンボスロールを加熱する場合には、その材質は金属が好ましい。エンボスロール18,18の上流側には、スプレーノズル19が設置されている。スプレーノズル19からは、原紙1aに向かって水が散布される。
図2に示すように、原紙1aは、図1に示す工程に引き続いて、又は一旦巻回された状態のロール(図示せず)から巻き出され、スプレーノズル19から散布された水によって湿潤状態になった後にエンボス装置へ送られる。エンボス装置においては、原紙1aが一対のエンボスロール18,18間で挟圧されてエンボス加工される。先に述べた通り、各エンボスロール18は互いに噛み合う構造となっているので、両ロール18によって挟圧された原紙1aには、ロール18に施された凹凸形状に対応する凹凸形状が付与される。つまり、原紙1aはスチールマッチエンボス加工される。これによって原紙は、多数の凹凸形状を有する嵩高なものとなる。
図3には、スチールマッチエンボス加工されている状態の原紙が模式的に示されている。この状態での原紙は、水が噴霧されて湿潤している。つまり、構成繊維間の水素結合が弱まっている。この理由によって、原紙の構成繊維19は、外力を受けて、つまりスチールマッチエンボスの凹凸パターンに沿って再配置できる状態になっている。従って、原紙がエンボスロール18,18間を通過すると、エンボスロール18の凹凸パターンに合わせて繊維が再配置して、原紙が凹凸賦形される。この結果、特に凸部の側壁(或いは凹部の側壁)に破れが生じにくくなる。また、繊維の再配置そのものによって、原紙の強度が向上する。原紙の強度は、その機械方向(Machine Direction、略してMD)及びそれに直交する方向(Cross machine Direction、略してCD)の何れにおいても向上するが、特にCDにおける強度の向上が顕著である。その結果、MDとCDでの強度の差が小さくなる。CDの強度が特に向上することは、最終的に得られる嵩高紙が均質なものとなり、その全体としての強度が向上する点から有利である。また、嵩高紙の搬送中に、「折り」や「搬送ライン曲げ」など、CDに負荷が加わる加工を行っても、嵩高紙の損傷を抑制し得る点からも有利である。
本製造方法と異なり、一般的な乾燥状態の紙を湿潤させずにそのままエンボスロール18,18によって凹凸賦形しようとすると、構成繊維間の水素結合が維持された状態で、垂直方向に大きく変形が加わるために、図4に示すように繊維間の結合が破壊あるいは繊維そのものが切断されて、凸部の側壁(或いは凹部の側壁)に破れが生じてしまう。その結果、得られた紙には一旦凹凸部が形成されるものの、該凹凸部は外力が加わると容易に潰れてしまうことになる。また、得られた紙は、凹凸賦形前に比べて強度が大幅に低下してしまうことになる。
原紙への凹凸賦形を首尾良く行う観点から、エンボスロール18,18間に導入される前に原紙に噴霧される水の量(水分含有率)は、原紙の乾燥重量に対して10〜200重量%とすることが好ましい。更に好ましくは10〜130重量%であり、一層好ましくは12〜50重量%であり、最も好ましくは15〜40重量%である。原紙には一般に予め5〜10重量%程度の水分が含有されており、それも合わせて原紙中の水分率が10重量%未満であると、繊維間水素結合を弱めたりバインダの膨潤や溶解を十分なものにできず、凹凸パターンに沿った繊維の充分な再配置が起こりにくい。また200重量%超になると、乾燥するための負荷が大きいものとなり、経済性に劣ることとなる。
エンボスロール18,18による原紙の凹凸賦形においては、場合によっては原紙がロール18の凹凸にくい込み該ロール18から剥離しづらくなることがある。そこでエンボスロール18,18で凹凸賦形した原紙を簡単に剥離させるために、剥離剤を水と同時に原紙に添加することが好ましい。剥離剤としては、高級脂肪酸、ポリエチレンワックス、シリコンオイル、鉱物油、その他界面活性剤を配合した溶液等が挙げられる。
図2に示すように、凹凸賦形された原紙1bは乾燥装置20に搬送される。乾燥装置20は、TAD21を備えている。TAD21は、周面が通気性を有する回転ドラム22と、該回転ドラム22をほぼ気密に覆うフード23とを備えている。回転ドラム22のシートと接する周面は、通常パンチングメタルや網目状となっている。特にハニカム構造になっているものが乾燥効率の面から最も好ましい。回転ドラム22の内部には吸引手段であるファン(図示せず)が備えられており、周面22を通じて、ドラム22の外部から内部への流体の吸引が可能になっている。フード23の上部にはヒータ24が設置されている。ヒータ24は、循環ファン25から供給される気体を所定温度に加熱してフード23内へ供給するために用いられる。
循環ファン25は大気を吸入してヒータ24へ供給する。従って、フード23内に供給される気体とは、本実施形態においては空気のことである。しかし本発明で用いられる気体は空気に限定されるものではない。循環ファン25は、大気を吸入することに加えて、TAD21の回転ドラム22で吸引された気体も吸引する。つまりTAD21に用いられる気体は、乾燥装置20を循環することで、乾燥する気体温度の維持に必要な熱量を最小限とする。尤も、循環ファン25から送り出された気体は、その一部が排気ファン26を通じて大気へ放出される。この理由は、TAD21による原紙1bの乾燥で、循環する気体中に水分が次第に蓄積することに起因する乾燥効率の低下を防止するためである。気体の循環率は、乾燥効率と経済性を考慮すると85〜90%程度であることが好ましい。
TAD21において、凹凸賦形された原紙1bは、一方向に回転する回転ドラム22の周面に抱かれた状態で搬送される。その間に、ヒータ24によって加熱された気体が原紙1bを貫通するように、ドラム22の外部から内部へ向けて吸引される。これによって原紙1bの乾燥が進行し、目的とする嵩高水解紙1が得られる。TADによる乾燥は、原紙1bにプレス圧が加わらない状態での乾燥なので、原紙1bに賦与された嵩高な凹凸形状が当該乾燥によって減じられにくくなる。またTADによる乾燥は、加熱された気体を循環させて使用することに起因して高効率となる。
気体として空気を用いる場合、その加熱温度は乾燥効率を考慮すると100〜200℃、特に130〜150℃であることが好ましい。原紙1bの焦げ防止も考慮すると150℃以下にすることが好ましい。風速は0.5〜3.0m/sec、特に1.5〜2.0m/secであることが好ましい。本発明においては、気体として空気以外のものも用い得ることは上述の通りであるところ、空気以外の気体としては例えば過熱蒸気を用いることができる。過熱蒸気による乾燥は、媒体に酸素を含まないことから酸化作用が無いという利点がある。酸化作用が無いことは、乾燥の対象である原紙が乾燥によって変色しないという点や、爆発・火災の危険性が低いという点で有利である。また、過熱蒸気を用いた乾燥は、再循環利用が可能であり熱環境にやさしいという利点や、熱効率が高く省エネルギーであるという利点も有する。また本実施形態のTADは丸網(筒)方式であるが、これに代えて直線式等の別方式のTADを用いてもよい。乾燥後の嵩高水解紙1に含まれる水分は、水性薬剤を含浸した後の厚みや強度を考慮すると、8重量%以下とすることが望ましい。
図2に示すように、原紙1aは一方向に搬送されながら、これにエンボス加工が施される。従って原紙には、その搬送に起因するテンションが加わっている。その結果、エンボス加工によって凹凸賦形された原紙1bは該テンションによって引き伸ばされた状態でTAD21に搬送され、折角形成された嵩高な凹凸形状が潰れ、嵩が減じられてしまう場合が生じることが本発明者らの検討結果判明した。この不都合を解消するために、TAD21の回転ドラム22とエンボスロール18,18を個々に回転速度制御可能な機構とすることが好ましい。具体的には、異なる駆動源によって回転ドラム22とエンボスロール18を個別に回転させたり、一つの駆動源と変速装置を組み合わせて用い回転ドラム22とエンボスロール18の回転速度を個別に制御させたりするなどの手段を用いる。これによってエンボスロール18,18と回転ドラム22との間において、原紙1bにたるみを生じさせることなく該原紙1bに加わるテンションを最小限にすることができる。その結果、凹凸形状の潰れの発生を防止することが可能となる。
更に、エンボス加工によって形成される凹凸パターンを工夫することでも凹凸形状の潰れの発生を防止することが可能となることが、本発明者らの検討の結果判明した。具体的には次の通りである。スチールマッチエンボス加工においては、原紙の一方の面における凸部が形成されている位置の他面に凹部が形成され、且つ一方の面における凹部が形成されている位置の他面に凸部が形成されるように該原紙を凹凸賦形する。このようにして賦形された凹凸パターンは、一般に図5(a)に示されるように、凸部Pとこれを反転した形状の凹部Dとが交互に且つ一列Lに配置され、該列Lが多列に且つ隣り合う列における凸部と凹部の配置が互いに半ピッチずれるように配列されたものである。図5(b)は、実際に製造された嵩高水解紙における凹凸パターンを示している。そして、このような凹凸パターンが賦形された原紙1bは、前記の列Lの延びる方向と一致する方向に搬送される。凹凸パターンが賦形された原紙1bが、このような状態で搬送されると、図5(c)に示すように、搬送のテンションによって原紙1bが引き伸ばされて該原紙1bの嵩が減じられてしまうことが判明した。
これに対して、図6(a)に示すように、原紙に賦形する凹凸パターンとして、図5(a)に示す凹凸パターンを、該原紙の搬送方向に対して45度傾けたものを用いると、即ち図6(a)中、凸部Pと凹部Dとが交互に配置された列Lを原紙の搬送方向に対して45度傾けたものを用いると、多数の凸部Pが、隣り合う凸部P間に凹部Dが存在しない状態で、搬送のテンションの働く方向に配列した状態となる。つまり、多数の凸部群からなる凸部列LPが、搬送のテンションの働く方向に多数配列した状態となる。同様に、多数の凹部Uが、隣り合う凹部D間に凸部Pが存在しない状態で、搬送のテンションの働く方向に配列した状態となる。つまり、多数の凹部群からなる凹部列LDが、搬送のテンションの働く方向に多数配列した状態となる。図6(b)は、実際に製造された嵩高水解紙における凹凸パターンを示している。その結果、凹凸賦形された原紙、即ち嵩高水解紙に搬送のテンションが加わると、図6(c)に示すように、該テンションの働く方向に配列した凸部列LP及び凹部列LDにおける各凸部P及び各凹部Dがネッキングを起こしてテンションを吸収する。その結果、凹凸賦形された原紙1bは、テンションによっていわゆる幅縮みを起こすのみであり、凹凸の潰れが起こりにくくなる。このようなメカニズムによって、エンボス加工で賦形された凹凸形状が、その後の搬送に起因するテンションによって潰れづらくなり、得られる嵩高水解紙を嵩高にすることが可能となる。
エンボス加工により賦形される凸部はほぼ半球の形状をしている。凹部についても同様である。凹凸賦形された原紙1bの一方の面における凸部の形状及び間隔は、他方面のそれと略同様であることが好ましい。また一方の面に存する凸部は、他方の面に存する凹部と表裏の関係にあり、同様に一方の面に存する凹部は、他方の面に存する凸部と表裏の関係にあることが好ましい。更に、凸部の形状は、凹部の形状を反転したものであることが好ましい。
凹凸賦形された原紙1bにおいては、凸部は、該原紙1bの一方の面において、10cm×10cmの正方形の領域を考えた場合、該面の何れの位置においても、該領域中に平均して50〜850個、特に100〜600個形成されていることが好ましい。凸部の個数をこの範囲内とすることにより、凸部と凹部とがバランスよく配される。その結果、本製造方法に従い製造された嵩高水解紙を例えば清掃用として使用する場合、汚れの除去性に一層優れたものとなる。
本実施形態においては、図2に示すように、エンボスロール18,18を備えたエンボス装置と乾燥装置20との間では、凹凸賦形された原紙1bに対して何らの加工も施さないことが好ましい。この理由は原紙1bの嵩高さを損なわないようにするためである。また、凹凸賦形された原紙1bの乾燥は、所定温度に加熱された気体を該原紙1bに貫通させることによって行われることが、得られる嵩高水解紙の嵩高さを損なわないようにする観点から好ましい。つまり本実施形態においては、従来技術で用いられていたヤンキードライヤを始めとするプレス圧が加わる乾燥は行わないことが好ましい。
次に、本製造方法によって製造された嵩高水解紙について説明する。嵩高水解紙は、典型的には、それに水性薬剤が含浸されて、水解性清掃物品として好適に用いられる。例えば対物用としてトイレ、洗面所、台所など水回りの清掃物品、対人用としては、おしり拭き、介護用からだ拭き、メーク落とし用シートとしても好適に用いられる。使用後の清掃物品はそのまま水に流して廃棄すればよく、水に流すと速やかに水解するので排水管を詰まらせることはない。
嵩高水解紙は、その嵩高さによって特徴付けられている。水解紙の厚みTd、即ち水解紙の一方の面における凸部の頂点から、他方面における凸部の頂点までの距離は、エンボス後の乾燥状態で0.3kPa荷重下の厚みTdで表して、好ましくは1.0〜3.0mmであり、更に好ましくは1.2〜2.5mmという嵩高なものである。0.3kPa荷重は非常に小さいので、Tdは水解紙の見かけの厚みに近似される。
水解紙に水性薬剤が含浸されている場合、水解紙は、嵩高であることに加えて、一定の荷重を加えて押さえつけても厚みが維持される保形性を有することが好ましい。本発明では例えば手で強く押さえた力を2.2kPaと想定している。この保形性は、水性薬剤が含浸されている状態での水解紙の2.2kPa荷重下で測定された厚みをTwとすると、厚み比Tw/Tdが1に近いほど保形性(嵩の維持性)が良くなることを意味する。本製造方法に従えば、好ましくは0.7以上の厚み比が達成され、更に好ましくは0.75、一層好ましくは0.8以上が達される。厚み比が0.7未満になると保形性が低く、従来のエンボス方法との差が見られない。
Twの値は、水性薬剤の含浸量が100〜500重量%の範囲では有意な差がみられない。この理由で、本発明においてはTwの測定条件に水性薬液の含浸量を含めていない。もしTwの測定条件に水性薬液の含浸量を含める場合には、本発明における典型的な含浸量である、水解紙の乾燥重量の2倍とすることが適切である。
水解紙の原料である原紙は、前述の通り、実質的に水分散可能な繊維と水溶性バインダ又は水膨潤性バインダを含んでいる。水溶性バインダ又は水膨潤性バインダは、水解紙に水性薬剤含浸された場合、湿潤強度発現、嵩高エンボス形状の保形性維持、水洗トイレ廃棄時の水解性に寄与するものである。
実質的に水分散可能な繊維としては、繊維長が好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下、一層好ましくは5mm以下のものが用いられる。水解性と湿潤強度を両立する観点からは、重量平均繊維長で0.5mm〜3.0mmのパルプ繊維を主体に用いることが好ましい。更に、風合いを良好にする観点から平均繊維長4.0〜7.0mm程度のレーヨン繊維や合成繊維を混抄することもできる。繊維の種類としては、生分解性を有する繊維が好ましく、セルロース系繊維が典型的なものとして挙げられる。セルロース系繊維としては、例えばパルプ、コットン等の天然繊維やレーヨン等の半合成繊維等が挙げられる。これらの繊維は一種又は二種以上を組み合わせて用いることができる。叩解度を変えてフィブリル化した繊維を用いることもできる。パルプとしては、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)等の漂白された木質パルプ、その他麻等由来のパルプ、化学処理を施してアルカリ膨潤したマーセル化パルプ、螺旋構造を有する化学架橋パルプ、微小繊維状セルロースを用いることもできる。また、生分解性を有しないポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系繊維やポリエステル系等の合成繊維を用いることもでき、ポリ乳酸からなる合成繊維は生分解性を有するので更に好ましく用いることができる。原紙には、バインダを除いてセルロース系繊維が70〜100重量%、特に80〜100重量%含まれていることが好ましい。
水溶性バインダとしては、天然高分子、多糖誘導体、合成高分子などが挙げられる。天然高分子としては、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルランなどが挙げられる。多糖誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチル化デンブン又はその塩、デンプン、メチルセルロース、エチルセルロースなどが挙げられる。合成高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、不飽和カルボン酸の重合体又は共重合体の塩、不飽和カルボン酸と該不飽和カルボン酸と共重合可能な単量体との共重合体の塩などが挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸などが挙げられる。これらの水溶性バインダの添加量は、用途やバインダの種類に応じて適切な値とすることができるが、一般的には繊維シートの重量に対して1〜30重量%、特に2〜15重量%となるように添加されることが、嵩高性の維持、適度な湿潤強度発現、良好な水解性発現、経済性の観点から好ましい。また、これらのバインダは、水を高濃度に含む水性薬剤が水解紙に含浸された状態において、一時的に不溶化して繊維間の結合を維持する結合剤として機能し、嵩高性や清掃時の強度維持の役割を果たしていることが好ましい。水性薬剤中の水分含量は、30〜95重量%、好ましくは50〜95重量%、更に好ましくは60〜95重量%であり、この水解紙をトイレ清掃用物品として用いる場合、尿ジミ汚れの洗浄性、手肌への刺激性の観点から好ましい。
このような水溶性バインダの一時的不溶化は、水解紙への薬液含浸量、水解紙や水性薬剤に含まれるバインダ不溶化成分によって達成される。水解紙への水性薬剤の含浸量は、バインダの種類や分子量、水解紙中の含有量によっても異なるため、限定はできないが、バインダの大半が溶解できないレベルの水性薬剤を含浸させることが好ましい。また、バインダの不溶化成分としては、水溶性有機溶剤あるいは特定の酸や電解質等が挙げられる。
水溶性有機溶剤としては、具体的にはエタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等の一価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、3−メチル−1,3−ブタンジオール等のグリコール類、これらグリコール類とメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールとのモノ又はジエーテル、前記グリコール類と低級脂肪酸とのエステル、グリセリンやソルビトール等の多価アルコールが挙げられる。水性薬剤中における水溶性有機溶剤は、単独又は2種類以上の混合でも用いられることができ、その濃度は好ましくは30〜70重量%、更に好ましくは30〜60重量%、一層好ましくは30〜50重量%である。また、後述する酸や電解質と併用する場合には、好ましくは1〜50重量%、更に好ましくは5〜40重量%、一層好ましくは10〜30重量%の範囲である。
酸や電解質としては、代表的には塩析あるいは架橋により水溶性バインダを一時的に不溶化するものが挙げられる。塩析に用いる塩としては、水溶性の塩であれば特に限定されず、種々のものを用いることができる。一方、架橋に用いる塩としては、バインダの種類によって選択される物質が異なる。例えばカラギーナンやグアーガム等と架橋してゲル化するカリウムイオンを水性薬剤中で供与する水溶性塩が挙げられる。また、少量の水溶性溶剤の存在下でカルボン酸系バインダと架橋して不溶化する二価金属イオンを薬液中で供与する水溶性塩が挙げられる。一方、ポリビニルアルコールと架橋ゲル化するホウ酸、四ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩が挙げられる。なお、これらの酸や電解質の水性薬剤中での濃度は、バインダの種類や水解紙中の含有量によっても異なるので一概に特定できないが、清拭後の仕上がり性や手肌への残留性を考慮すると、1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の範囲となる。
嵩高水解紙に含浸される水性薬剤は、水を媒体として前述した架橋剤及び有機溶剤が配合されてなるものである。水性薬剤にはこれらの成分に加えて必要に応じ界面活性剤、殺菌剤、キレート剤、漂白剤、消臭剤、香料などを配合して、該水性薬剤の清掃性能を高めてもよい。界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の何れもが用いられ、特に洗浄性と仕上がり性の両立の面から、ポリオキシアルキレン(アルキレンオキサイド付加モル数1〜20)アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エーテル、アルキル(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)グリコシド(平均糖縮合度1〜5)、ソルビタン脂肪酸(炭素数8〜22の直鎖又は分岐鎖)エステル、及びアルキル(炭素数6〜22の直鎖又は分岐鎖)グリセリルエーテル等の非イオン界面活性剤並びにアルキルカルボキシベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドカルボキシベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン等のアルキル炭素数8〜24の両性界面活性剤が好適に用いられる。水性薬剤は、十分な清拭効果が発現する点から、水解紙の重量(乾燥基準)に対して好ましくは100〜500重量%含浸され、更に好ましくは100〜300重量%含浸される。
一方、水膨潤性バインダとしては、繊維状のポリビニルアルコールや繊維状カルボキシメチルセルロース、繊維状カルボキシエチルセルロースなどが挙げられる。このような水膨潤性バインダを用いる場合には、一般的にパルプ繊維等の原料繊維と混合して抄紙される。水膨潤性バインダの繊維シート中での含有率は、嵩高性の維持、適度な湿潤強度発現、良好な水解性発現、経済性の観点から、好ましくは5〜40重量%、更に好ましくは8〜30重量%、一層好ましくは10〜25重量%の範囲である。なお、水膨潤性バインダを用いた場合においても上述の水溶性バインダの場合と同様に、水解紙に水を高濃度に含む水性薬剤が含浸された状態において、該バインダの膨潤が一時的に抑制されて繊維間の結合を維持する結合剤として機能し、嵩高性や清掃時の強度維持の役割を果たしていることが好ましい。例えば繊維状ポリビニルアルコールの場合においては、ホウ酸、四ホウ酸ナトリウムなどのホウ酸系塩、繊維状カルボキシメチルセルロース、繊維状カルボキシエチルセルロースの場合においては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、亜鉛イオン等の二価金属イオンを生成する水溶性塩が好適に用いられる。
水溶性又は水膨潤性バインダの種類やそれにマッチしたバインダの一時不溶化あるいは膨潤抑制させる剤については、上述のごとく種々の組み合わせがあるが、その中でもカルボン酸系水溶性バインダと二価金属イオン、水溶性有機溶剤を含む水性薬剤の組み合わせが好適である。
カルボン酸系水溶性バインダのうち特に好ましいものはカルボキシメチルセルロース(以下CMCともいう)のアルカリ金属塩である。CMCはそのエーテル化度が0.8〜1.2、特に0.85〜1.1であることがバインダとしての性能が良好となる点、及び後述する架橋剤との親和性が良好である点から好ましい。CMCは25℃における1重量%水溶液の粘度が10〜40mPa・s、特に15〜35mPa・sであり、同温度における5重量%水溶液の粘度が2500〜4000mPa・s、特に2700〜3800mPa・sであり、更に60℃における5重量%水溶液の粘度が1200mPa・s以下であることがスプレーなどによって紙に添加する場合には、そのハンドリング性の面から好適である。
カルボン酸系水溶性バインダを含有する水解紙において、それに含浸される水性薬剤としては、水分濃度が60〜90重量%及び水溶性有機溶剤の濃度が8〜35重量%及びアルカリ土類金属、マンガン、亜鉛、コバルト及びニッケルからなる群から選ばれる1種又は2種以上の金属イオンを供与する水溶性二価金属塩を1〜5重量%濃度で含有する組成のものが、バインダを一時不溶化して、充分な湿潤強度を発現させ、且つ良好な水解性を得る点から好ましい。
水性薬剤が含浸された状態での湿潤強度は、MDで300cN/25mm以上、CDで100cN/25mm以上であることが清掃時の丈夫さの観点から好ましい。MDについては、更に好ましくは400cN/25mm以上、一層好ましくは500cN/25mm以上である。CDについては、更に好ましくは150cN/25mm以上、一層好ましくは200cN/25mm以上である。
水性薬剤が含浸されてなる水解紙は、水性薬剤が含浸されている程度では水解しないが、大量の水中に廃棄されると速やかに且つ繊維レベルでばらばらに崩壊する。水解紙の水解程度は、JIS P 4501−1993(トイレットペーパー)に規定されるほぐれやすさで測定しており、この値が低いほど水解性が良好となる。ほぐれやすさの目安として100秒以下が好ましく、更に好ましくは60秒以下が好ましい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記の実施形態は、本発明の製造方法を嵩高水解紙の製造に適用した例であったが、本発明の製造方法は他の種類の嵩高紙の製造方法にも同様に適用することができる。
また前記実施形態においては、原紙にエンボス加工を施すための装置として、その周面に多数の凹凸を有し且つ互いに噛み合い形状となっている一対のエンボスロールを用いたが、これに代えて図7に示すように、一方の周面に多数の凹凸を有する金属製のエンボスロール18aと、その周面が平滑なゴムロール18bとを備えたエンボス装置を用いてもよい。
また、原紙は単層構造のものに限られず複数枚のマルチプライからなる多層構造であってもよい。多層構造である場合には、そのうちの少なくとも表層の紙に水溶性バインダ又は水膨潤性バインダが含有されていればよい。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
〔実施例1〕
図1に示す湿式抄紙機を用いて、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)100%の紙料を抄紙して湿紙を得た。湿紙を第1乾燥機であるTAD7で水分率が4%になるまで乾燥させた。得られた紙を一対のプラスチック製コンベア10,11間に挟持して搬送し、5%溶液で60℃、1000mP・sであるCMC(エーテル化度0.9、日本製紙製)バインダ液をスプレーノズル13にて噴霧した。噴霧量は紙の重量に対して130%とした。CMCの添加量は、紙の重量に対して6.5%であった。CMCが添加された紙を、第2乾燥機としてのヤンキードライヤ14で乾燥させた後、ドクターブレード17によってクレープ加工を行った。これによって坪量80g/m2の原紙を作製し、これを一旦巻き取った。
原紙を巻き出し、図2に示すスプレーノズル19を用いて水を噴霧した。水が噴霧された原紙の水分量は、加熱乾燥式水分計(エー・アンド・デイ製MX−50)にて測定した。原紙の水分量は25.0%であった。なお水を噴霧する前の原紙由来の水分である平衡含水率は9.1%であった。水が噴霧された原紙を、図2に示す一対のエンボスロール18,18間に導入した。各エンボスロールは、その周面に多数の凹凸を有し且つ互いに噛み合い形状となっている。各エンボスロール18は150℃に加熱した。原紙は一対のエンボスロール18,18間で挟圧されて、図6(a)に示すパターンで凹凸賦形された。
凹凸賦形された原紙を、TAD21で乾燥させた。TADの風温は表1に示す通りであった。風速は2.0m/s、原紙の搬送速度は60/minであった。乾燥によって原紙に含まれていた水が除去されて、目的とする嵩高水解紙が得られた。TAD21による乾燥においては、凹凸賦形された原紙を、図6(a)に示すように搬送させてTAD21内に導入した。また、TAD21の回転ドラム22及びエンボスロール18それぞれの回転速度を、異なる駆動源によって個別に制御した。
得られた嵩高水解紙に、以下の組成を有する水性薬剤を含浸させて水解性清掃物品を得た。含浸量は、含浸前の嵩高水解紙の乾燥重量の2倍とした。
・アルキルグルコシド 0.2%
・CaCl2 3%
・プロピレングリコールモノメチルエーテル 13%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール 5%
・水 バランス
〔実施例2及び3並びに比較例1ないし3〕
嵩高水解紙の製造条件を表1に示す通りとする以外は実施例1と同様にして水解性清掃物品を得た。
〔比較例4〕
実施例1において、原紙に水を噴霧せず、原紙由来の水分のみが含有された状態で、エンボスロール18によって凹凸賦形を行い且つ乾燥を行った。各エンボスロール18は150℃に加熱されていた。また、TAD21による乾燥は行わなかった。その後は実施例1と同様にして水解性清掃物品を得た。
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた水解性清掃物品について、0.3kPa及び2.2kPa下での厚み、並びに引張強度を測定した。その結果を表1に示す。引張強度の測定方法は次の通りである。
〔引張強度の測定方法〕
MDの引張強度については、試料をMDに100mm、CDに25mm切り出し、MDが引張方向となるように、チャック間距離50mmで引張試験機(ORIENTEC製テンシロンRTA−100)に取り付ける。引張速度300mm/minで試料を引っ張り、破断したときの強度を引張強度とする。CDの引張強度については、試料をCDに100mm、MDに25mm切りだし、CDが引張方向となるように、チャック間距離50mmで引張試験機に取り付ける。その後はMDの引張強度と同様の方法で測定を行う。
表1に示す結果から明らかなように、実施例1で得られた水解性清掃物品は、比較例で得られた水解性清掃物品に比べて嵩高なものであることが判る。また、強度が高いものであることが判る。特に、CDの強度が高いものであることが判る。
実施例1と実施例2を比較すると、嵩高水解紙の製造において、TADの風温を高めて乾燥後の水分率を低くした実施例2の方が、実施例1よりも厚み及び引張強度の値が良くなっている。但し、実施例2は乾燥条件が実施例1に比べて過酷なため、焦げ等に起因した不良品の発生が起こるまでの滞留可能時間が短くなる傾向にあり、風温を得るために必要なエネルギーも多くなる。
実施例1と実施例3を比較すると、凹凸賦形前の水分率を高くした実施例3の方が、実施例1よりも厚み及び引張強度の値が良くなっている。この理由は、凹凸賦形前の水分率を高くすることで、原紙における繊維の水素結合やバインダによる繊維間の結合がほぐれやすくなり、凹凸賦形及び乾燥後に繊維が再配置されたときに結合が強くなり、また厚みが大きくなることに起因していると考えられる。但し、実施例3は乾燥負荷が実施例1よりも大きいため、装置が大きくなる傾向にある。
以上を総合的に勘案すると、実施例1ないし3のうち、実施例1の条件が最も好ましいと考えられる。
図1は、本発明の製造方法に用いられる湿式抄紙機の一例を示す模式図である。 図2は、本発明の製造方法に用いられるエンボス装置及び乾燥装置の一例を示す模式図である。 図3は、本発明の製造方法における凹凸賦形の状態の一例を示す模式図である。 図4は、乾燥状態の紙に凹凸賦形したときの状態の一例を示す模式図である。 図5(a)は、従来の凹凸パターンを示す模式図であり、図5(b)は、実際に製造された嵩高水解紙の凹凸パターンを示す写真であり、図5(c)は、図5(a)に示す凹凸パターンが賦形された紙を引っ張った状態を示す模式図である。 図6(a)は、本発明に従い賦形された凹凸パターンを示す模式図であり、図6(b)は、実際に製造された嵩高水解紙の凹凸パターンを示す写真であり、図6(c)は、図6(a)に示す凹凸パターンが賦形された紙を引っ張った状態を示す模式図である。 図7は、ヒートエンボス装置の他の例を示す模式図である。
符号の説明
4 フォーマー
5 ワイヤー
6 サクションボックス
7 スルー・エア・ドライヤー
8 回転ドラム
9 フード
10 上コンベアベルト
11 下コンベアベルト
12 真空ロール
13 スプレーノズル
14 ヤンキードライヤ
15 回転ドラム
16 フード
17 ドクターナイフ
18 エンボスロール
19 スプレーノズル
20 乾燥装置
21 スルー・エア・ドライヤー
22 回転ドラム
23 フード
24 ヒータ
25 循環ファン
26 排気ファン
P 凸部
U 凹部

Claims (7)

  1. 湿潤状態にある原紙にエンボス加工を施して該原紙を凹凸賦形し、凹凸賦形された該原紙に、100〜200℃に加熱された気体を貫通させて該原紙を水分含有率4.8〜8重量%に乾燥させる嵩高紙の製造方法であって、
    前記原紙が、水溶性バインダ又は水膨潤性バインダを含有する実質的に水分散可能な坪量30〜150g/m 2 のものであり、
    該原紙に水分含有率が10〜40重量%となるように水を施した後に、エンボス加工を施す嵩高紙の製造方法
  2. エンボス装置の上流側に設置されたスプレーノズルによって前記原紙に向けて水を散布し、
    周面が通気性を有する回転ドラムを備えたスルー・エア・ドライヤーによって前記原紙を乾燥させる請求項1記載の嵩高紙の製造方法。
  3. 前記原紙を一方向に搬送させながら、互いに噛み合い形状になっている一対のエンボスロール間に該原紙を通して凹凸賦形する請求項1又は2記載の嵩高紙の製造方法。
  4. 前記回転ドラムと前記エンボスロールを個々に回転速度制御可能な機構によって駆動させる請求項3記載の嵩高紙の製造方法。
  5. 前記原紙の一方の面における凸部が形成されている位置の他面に凹部が形成され、且つ一方の面における凹部が形成されている位置の他面に凸部が形成されるように前記原紙を凹凸賦形する請求項1ないし4の何れかに記載の嵩高紙の製造方法。
  6. 前記水溶性バインダが、カルボキシルキ基を有する水溶性バインダであり、前記水膨潤性バインダが、繊維状のカルボキシル基を有するセルロース系若しくはデンプン系誘導体、又は水酸基を有するポリビニルアルコール若しくはその誘導体である請求項1ないし5の何れかに記載の嵩高紙の製造方法。
  7. 前記エンボス加工による凹凸賦形のパターンとして、凸部と凹部が交互に且つ一列に配置され、該列が多列に且つ隣り合う列における凸部と凹部の配置が互いに半ピッチずれるように配列された凹凸パターンを、前記原紙の搬送方向に対して45度傾けたものを用いた請求項1ないしの何れかに記載の嵩高紙の製造方法。
JP2006282821A 2006-10-17 2006-10-17 嵩高紙の製造方法 Active JP4818063B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006282821A JP4818063B2 (ja) 2006-10-17 2006-10-17 嵩高紙の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006282821A JP4818063B2 (ja) 2006-10-17 2006-10-17 嵩高紙の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008101283A JP2008101283A (ja) 2008-05-01
JP4818063B2 true JP4818063B2 (ja) 2011-11-16

Family

ID=39435828

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006282821A Active JP4818063B2 (ja) 2006-10-17 2006-10-17 嵩高紙の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4818063B2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9399841B2 (en) 2012-05-02 2016-07-26 Kikuo Yamada Method for producing water-disintegrable paper
US10441978B2 (en) 2014-05-30 2019-10-15 Kikuo Yamada Fiber sheet

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8012309B2 (en) 2007-01-12 2011-09-06 Cascades Canada Ulc Method of making wet embossed paperboard
JP6277842B2 (ja) * 2014-04-19 2018-02-14 日油株式会社 衛生紙用柔軟剤
JP6193310B2 (ja) * 2015-06-30 2017-09-06 大王製紙株式会社 水解性シート
JP6230570B2 (ja) * 2015-06-30 2017-11-15 大王製紙株式会社 水解性シートの製造方法
JP2017137599A (ja) * 2016-02-04 2017-08-10 河野製紙株式会社 エンボス加工クレープ紙の製造装置及び製造方法
CN112219080A (zh) * 2018-05-01 2021-01-12 瓦尔梅特股份有限公司 具有热空气注入的空气穿透干燥***和方法
KR101923489B1 (ko) * 2018-07-27 2018-11-29 이응기 형압무늬를 이용한 친환경 전산지 장치
JP7030895B2 (ja) * 2020-05-29 2022-03-07 大王製紙株式会社 水解性シートの製造方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH09158093A (ja) * 1995-12-15 1997-06-17 Kao Corp 嵩高紙及びその製造方法
JP4219323B2 (ja) * 2004-08-20 2009-02-04 花王株式会社 水解紙の製造方法
JP4315893B2 (ja) * 2004-08-20 2009-08-19 花王株式会社 嵩高水解性清掃物品
JP2006150695A (ja) * 2004-11-26 2006-06-15 Kao Corp 水解紙の製造方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US9399841B2 (en) 2012-05-02 2016-07-26 Kikuo Yamada Method for producing water-disintegrable paper
US10441978B2 (en) 2014-05-30 2019-10-15 Kikuo Yamada Fiber sheet

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008101283A (ja) 2008-05-01

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4703534B2 (ja) 嵩高紙の製造方法
JP4818063B2 (ja) 嵩高紙の製造方法
EP1630288B1 (en) Bulky water-disintegratable cleaning article and process of producing water-disintegratable paper
JP4753738B2 (ja) 嵩高清掃物品及びその製造方法
JP4733070B2 (ja) 水解性物品
JP6211160B1 (ja) 水解性シート
JP4219323B2 (ja) 水解紙の製造方法
JP2008002017A (ja) 水解性清掃物品及びその製造方法
CN100560011C (zh) 膨松水解性清扫物品以及水解纸的制造方法
WO2018143095A1 (ja) 水解性シート及び当該水解性シートの製造方法
JP6893108B2 (ja) 清掃用シート及び当該清掃用シートの製造方法
CN113271834A (zh) 清扫用片和清扫用片的制造方法
JP2008167784A (ja) 水解性物品の製造方法
JP4540470B2 (ja) 水解性清拭物品
JP4097583B2 (ja) 水解紙の製造方法
JP4315893B2 (ja) 嵩高水解性清掃物品
JP2006150695A (ja) 水解紙の製造方法
JP6775393B2 (ja) 水解性シート及び当該水解性シートの製造方法
JP6792487B2 (ja) 水解性シートの製造方法
JP6962701B2 (ja) 清掃用シート及び当該清掃用シートの製造方法
JP6474923B2 (ja) 水解性シートの製造方法
JP4619110B2 (ja) 水解紙の製造方法及び水解性清拭物品の製造方法
JP6929073B2 (ja) 水解性シート及び当該水解性シートの製造方法
JP4219267B2 (ja) 水解紙の製造方法及び水解性清掃物品
JP2006002277A (ja) 水解紙

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090907

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110513

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110517

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110711

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110830

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110830

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140909

Year of fee payment: 3

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4818063

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140909

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250