[第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)]
本発明のウレタン系水性組成物では、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)を、第3級アミノ基および芳香族環を含有する化合物(B)[「第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)」と称する場合がある]と組み合わせて用いていることが重要である。このように、1分子中に第3級アミノ基と芳香族環とを含有している化合物を用いることにより、それぞれの基による作用又は効果を有効に且つ効果的に発揮させることができる。このような第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)としては、1分子中に、第3級アミノ基(ジ置換アミノ基)を少なくとも1つ有するとともに、芳香族環(すなわち、芳香族炭化水素基)を少なくとも1つ有している化合物であれば特に制限されない。前記第3級アミノ基と、前記芳香族環とは、他の基を介して間接的に結合していてもよいが、直接結合していることが好ましい。すなわち、第3級アミノ基を構成する窒素原子と、芳香族環を構成する炭素原子とが直接結合していることが好ましい。
なお、第3級アミノ基を構成する窒素原子と、芳香族環を構成する炭素原子とが他の基を介して間接的に結合している場合、第3級アミノ基と芳香族環との間に位置する基としては、特に制限されず、公知の2価の有機基[例えば、アルキレン基(炭素数が1〜4のアルキレン基など)等の2価の炭化水素基など]の中から適宜選択することができる。
第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)において、芳香族環を構成する炭素原子が、第3級アミノ基を構成する窒素原子に直接結合している場合、第3級アミノ基を構成する窒素原子には、芳香族環としての芳香族炭化水素基が1〜3個結合することができるが、1又は2個(特に1個)結合していることが好ましい。また、第3級アミノ基を構成する窒素原子が、芳香族環を構成する炭素原子に直接結合している場合、芳香族環には、第3級アミノ基が1〜6個結合することができるが、1〜3個(特に1個)結合していることが好ましい。
なお、芳香族環としては、単環または縮合環のいずれの形態の芳香族環であってもよいが、単環の形態の芳香族環(特に、ベンゼン環)が好適である。従って、芳香族環としての芳香族炭化水素基としては、フェニル基を好適に用いることができる。フェニル基等の芳香族炭化水素基は、本発明の効果や作用を阻害しない範囲で、1種又は2種以上の置換基(アルキル基等の炭化水素基など)を有していてもよい。
具体的には、第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)としては、下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる、
[式(1)において、R
1、R
2は、同一又は異なって、ヒドロキシル基および/または「−(R
3−O)
n−」基(R
3は2価の炭化水素基、nは1又は2以上の整数)を有していてもよいアルキル基である]
前記式(1)において、R1、R2は、それぞれ、アルキル基である。該アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数が1〜10のアルキル基などが挙げられる。R1、R2のアルキル基としては、それぞれ、炭素数が1から6のアルキル基が好ましく、その中でも炭素数が1〜4のアルキル基(特に、エチル基)が好適である。R1、R2のアルキル基は、同一のアルキル基であってもよく、異なるアルキル基であってもよい。
また、R1、R2におけるアルキル基としては、置換基として、ヒドロキシル基(−OH)や、「−(R3−O)n−」基(R3は2価の炭化水素基、nは1又は2以上の整数)を有していてもよい。前記「−(R3−O)n−」基(「エーテル結合含有基」と称する場合がある)におけるR3は、2価の炭化水素基(例えば、2価の脂肪族炭化水素基など)であれば特に制限されないが、2価の脂肪族炭化水素基が好適である。R3における2価の脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、3−メチルトリメチレン、2,2−ジメチルエチレン、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等の炭素数が1〜10のアルキレン基など)を好適に用いることができ、その中でも炭素数が1〜4のアルキレン基(特にエチレン基、プロピレン基)が好適である。nは、1又は2以上の整数であれば特に制限されないが、1〜10の整数が好適であり、その中でも1〜6の整数(特に1〜4の整数)が好ましい。
なお、R1、R2におけるアルキル基が、エーテル結合含有基を有する場合、末端は、ヒドロキシル基であることが好ましい。
R1、R2のアルキル基としては、ヒドロキシル基および/またはエーテル結合含有基を有するアルキル基が好適である。このようなアルキル基[すなわち、ヒドロキシル基および/またはエーテル結合含有基を有するアルキル基]としては、例えば、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ−アルキレンオキシ−アルキル基、ヒドロキシ−ポリ(アルキレンオキシ)−アルキル基などが挙げられる。
なお、前記式(1)におけるフェニル基(窒素原子に結合しているフェニル基)は、本発明の作用又は効果を損なわない範囲で、置換基(例えば、アルキル基等の炭化水素基など)を有していてもよい。
具体的には、前記式(1)で表される第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)としては、R1、R2が、ともに、同一の又は異なるアルキル基である場合、例えば、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジプロピルアニリン、N,N−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジn−ブチルアニリン、N,N−ジイソブチルアニリン、N,N−ジs−ブチルアニリン、N,N−ジt−ブチルアニリン、N,N−ジペンチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、N,N−ジヘプチルアニリン、N,N−ジオクチルアニリン等のN,N−ジアルキルアニリン;N−メチル−N−エチルアニリン、N−メチル−N−プロピルアニリン、N−メチル−N−イソプロピルアニリン、N−メチル−N−n−ブチルアニリン、N−メチル−N−イソブチルアニリン、N−メチル−N−s−ブチルアニリン、N−メチル−N−t−ブチルアニリン、N−エチル−N−プロピルアニリン、N−エチル−N−イソプロピルアニリン、N−エチル−N−n−ブチルアニリン、N−エチル−N−イソブチルアニリン、N−エチル−N−s−ブチルアニリン、N−エチル−N−t−ブチルアニリン等のN−アルキル−N−アルキルアニリンなどが挙げられる。
また、前記式(1)で表される第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)としては、R1、R2が、ともに、同一の又は異なるヒドロキシアルキル基である場合、R1、R2が、ともに、同一の又は異なるアルキル基である場合の第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)として前記に例示されたものに対応するものが挙げられる。例えば、R1、R2が、ともに、同一のヒドロキシアルキル基である場合、前記式(1)で表される第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)としては、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)アニリン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ビス(ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ビス(ヒドロキシイソプロピル)アニリン、N,N−ビス(ヒドロキシn−ブチル)アニリン、N,N−ビス(ヒドロキシイソブチル)アニリン、N,N−ビス(ヒドロキシs−ブチル)アニリン、N,N−ビス(ヒドロキシt−ブチル)アニリン等のN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)アニリンなどが挙げられる。
さらに、前記式(1)で表される第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)としては、R1、R2が、ともに、同一の又は異なるヒドロキシ−モノ又はポリ(アルキレンオキシ)−アルキル基である場合、R1、R2が、ともに、同一の又は異なるアルキル基である場合の第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)として前記に例示されたものに対応するものが挙げられる。例えば、R1、R2が、ともに、同一のヒドロキシ−モノ又はポリ(アルキレンオキシ)−アルキル基である場合、前記式(1)で表される第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)としては、N,N−ビス[ヒドロキシ−モノ又はポリ(メチレンオキシ)−メチル]アニリン、N,N−ビス[ヒドロキシ−モノ又はポリ(エチレンオキシ)−エチル]アニリン、N,N−ビス[ヒドロキシ−モノ又はポリ(トリメチレンオキシ)−n−プロピル]アニリン、N,N−ビス{2−[ヒドロキシ−モノ又はポリ(プロピレンオキシ)]−2−メチルエチル]アニリン、N,N−ビス[ヒドロキシ−モノ又はポリ(テトラメチレンオキシ)−n−ブチル]アニリン等のN,N−ビス[ヒドロキシ−モノ又はポリ(アルキレンオキシ)−アルキル]アニリンなどが挙げられる。なお、N,N−ビス[ヒドロキシ−モノ又はポリ(アルキレンオキシ)−アルキル]アニリンにおいて、アルキレンオキシ単位の数(繰り返し数)が2以上である場合、アルキレンオキシ単位は、1種のみであってもよく、2種以上が組み合わせられていてもよい。具体的には、第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)は、N,N−ビス[ヒドロキシ−モノ又はポリ(プロピレンオキシ)−モノ又はポリ(エチレンオキシ)−エチル]アニリン、N,N−ビス{2−[ヒドロキシ−モノ又はポリ(エチレンオキシ)−モノ又はポリ(プロピレンオキシ)]−2−メチルエチル]アニリンなどであってもよい。
前記式(1)で表される第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)は、R1及び/又はR2(特に、R1及びR2)が、ヒドロキシル基や、エーテル結合含有基を有するアルキル基である場合、良好な親水性を発揮することができる。このように、第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)は、親水性を有していると、ウレタン系水性組成物と混合させた際に、溶解させることができる。そのため、第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)としては、N,N−ビス(ヒドロキシアルキル)アニリン、N,N−ビス[ヒドロキシ−モノ又はポリ(アルキレンオキシ)−アルキル]アニリン等の親水性基(ヒドロキシル基、エーテル結合含有基など)を含有するアルキル基(親水性基含有アルキル)を有しているN,N−ジ置換アニリン系化合物[N,N−ジ(親水性基含有アルキル)アニリン系化合物]を好適に用いることができる。
第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)は、公知の製造方法を利用して調製することができる。例えば、前記式(1)で表され且つR1、R2のアルキル基が、ヒドロキシル基を有するアルキル基や、エーテル結合含有基(「−(R3−O)n−」基)を有するアルキル基である第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)は、例えば、アルキレンオキサイド等の環状エーテル系化合物を、所定の割合で、アニリンに反応させることにより、調製することができる。具体的には、エチレンオキサイドを、アニリンに反応させることにより、反応させるエチレンオキサイドの量に応じて、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル−オキシエチル)アニリン、N,N−ビス[ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]アニリンなどが得られる。この反応において、反応温度等の反応条件は、特に制限されず、公知乃至慣用の反応条件より適宜選択することができる。また、反応に際しては、公知乃至慣用の触媒や溶媒等を適宜選択して用いることができる。
なお、N,N−ビス(ヒドロキシエチル−オキシエチル)アニリンは、N,N−ビス(ヒドロキシ−エチレンオキシ−エチル)アニリンと等価であり、N,N−ビス[ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]アニリンは、N,N−ビス[ヒドロキシ−ポリ(エチレンオキシ)−エチル]アニリンと等価である。また、他の化合物についても同様である。
[水分散性ポリウレタン系樹脂(A)]
水分散性ポリウレタン系樹脂(A)は、ウレタン結合部位を少なくとも有し且つ水溶性又は水分散性を有している公知のポリウレタン系樹脂から適宜選択して用いることができる。水分散性ポリウレタン系樹脂(A)は、1種のみが用いられていてもよく、2種以上が組み合わせられて用いられていてもよい。なお、ポリウレタン系樹脂は、分子中に親水性基(例えば、カルボキシル基又はその塩、スルホ基又はその塩や、ヒドロキシル基、アミノ基又はその塩、エーテル結合を含有する基など)が導入されていることにより、水溶性又は水分散性を発揮することができる。このように親水性基が導入されたポリウレタン系樹脂は、例えば、モノマー成分として、カルボキシル基を含有するジオール成分等の親水性基を有するジオール成分などを用いることにより調製することができる。
本発明では、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)としては、水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)を好適に用いることができる。水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)は、アルコキシシリル基を含有するウレタンプレポリマー(A1)[「水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)」と称する場合がある]により構成されている。このような水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)は、水中では、アルコキシシリル基が部分的に又は全体的に水により加水分解されて、シラノール基及び/又はシロキサン結合となっており、このシラノール基が縮合反応を起こすことにより、硬化(架橋)が生じて接着性を発揮することができる。この硬化(架橋)反応は、水の減少により進行しており、しかも、水がある程度存在していても進行することができる。そのため、水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)は、水を保持したままでも、凝集力を発現することができる。
このような水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)としては、ウレタン結合部位を少なくとも有しているとともに、アルコキシシリル基を有しており、且つ水溶性又は水分散性を有しているポリウレタン系樹脂であれば特に制限されないが、さらに、分子中にアニオン性基(カルボキシル基など)を有している水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂[「アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)」と称する場合がある]を好適に用いることができる。このようなアニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)としては、例えば、アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-a)、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-b)、ポリイソシアネート化合物(A1-c)及びイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1-d)の反応により得られるアルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーを好適に用いることができる。
特に、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)としては、モノマー成分として、アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-a)、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-b)、ポリイソシアネート化合物(A1-c)及びイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1-d)とともに、さらに、第3級アミノ基及びイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-e)が用いられていると、より一層優れた初期接着強度を発揮させることができる。従って、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)としては、分子中に、アニオン性基及び第3級アミノ基を有している水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂[「アニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)」と称する場合がある]が好適である。このようなアニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)は、アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-a)、アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-b)、第3級アミノ基及びイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-e)、ポリイソシアネート化合物(A1-c)及びイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1-d)の反応により得られるアルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーを好適に用いることができる。
なお、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)[特に、アニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)]は、鎖延長剤(A1-f)が用いられていてもよい。
[アニオン性基非含有・複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1-a)]
アニオン性基非含有で且つ複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-a)(「イソシアネート反応性化合物(A1-a)」と称する場合がある)としては、分子内にアニオン性基を有しておらず、かつ分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。イソシアネート反応性化合物(A1-a)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。イソシアネート反応性化合物(A1-a)において、イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基などが挙げられる。なお、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上が組み合わせられていてもよい。本発明では、該イソシアネート反応性基としては、ヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基が好ましく、特にヒドロキシル基が好適である。従って、イソシアネート反応性化合物(A1-a)としては、例えば、アニオン性基非含有ポリオール化合物、アニオン性基非含有ポリアミン化合物、アニオン性基非含有ポリチオール化合物(好ましくは、アニオン性基非含有ポリオール化合物やアニオン性基非含有ポリアミン化合物、特にアニオン性基非含有ポリオール化合物)などを用いることができる。
イソシアネート反応性化合物(A1-a)において、アニオン性基非含有ポリオール化合物としては、多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリビニルエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール、ヒマシ油などが挙げられる。これらのアニオン性基非含有ポリオール化合物としては、例えば、特開2004−043554号公報において、[アニオン性基非含有・複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1−a)]の項で、イソシアネート反応性化合物(A1−a)としてのアニオン性基非含有ポリオール化合物(A1−a)として例示されているアニオン性基非含有ポリオール化合物(多価アルコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアクリルポリオール、ヒマシ油など)から適宜選択して用いることができる。
本発明では、イソシアネート反応性化合物(A1-a)としては、ポリエーテルポリオール、ポリビニルエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを好適に用いることができ、特にポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが好適である。具体的には、イソシアネート反応性化合物(A1-a)としてポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリアルキレングリコールの他、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などのモノマー成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド−他のアルキレンオキサイド)共重合体などが挙げられ、中でもポリテトラメチレングリコールが好適である。また、ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などを用いることができる。前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが挙げられる。前記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。前記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
なお、イソシアネート反応性化合物(A1-a)としてのアニオン性基非含有ポリアミン化合物やアニオン性基非含有ポリチオール化合物は、例えば、前記アニオン性基非含有ポリオール化合物に対応するアニオン性基非含有ポリアミン化合物やアニオン性基非含有ポリチオール化合物などが挙げられる。
[アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1-b)]
アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-b)(以下、「イソシアネート反応性化合物(A1-b)」と称する場合がある)としては、分子内に少なくとも1つのアニオン性基を有しており、かつ分子内に少なくとも2つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。イソシアネート反応性化合物(A1-b)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。イソシアネート反応性化合物(A1-b)において、アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホ基を好適に用いることができ、中でもカルボキシル基が最適である。また、イソシアネート反応性化合物(A1-b)において、イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基(無置換アミノ基)、第2級アミノ基(モノ置換アミノ基)、メルカプト基などが挙げられる。なお、アニオン性基やイソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上が組み合わせられていてもよい。本発明では、該イソシアネート反応性基としては、ヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基が好ましく、特にヒドロキシル基が好適である。従って、イソシアネート反応性化合物(A1-b)としては、例えば、アニオン性基含有ポリオール化合物、アニオン性基含有ポリアミン化合物、アニオン性基含有ポリチオール化合物(好ましくは、アニオン性基含有ポリオール化合物やアニオン性基含有ポリアミン化合物、特にアニオン性基含有ポリオール化合物)などを用いることができる。
イソシアネート反応性化合物(A1-b)としてのアニオン性基含有ポリオール化合物としては、例えば、前記イソシアネート反応性化合物(A1-a)としてのアニオン性基非含有ポリオール化合物にカルボキシル基が導入されたカルボキシル基含有ポリオール化合物などが挙げられる。本発明では、イソシアネート反応性化合物(A1-b)としては、アニオン性基を有する低分子量のポリオール化合物が好ましく、特開2004−043554号公報において、[アニオン性基及び複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1−b)]の項で、イソシアネート反応性化合物(A1−b)としてのアニオン性基含有ポリオール化合物(A1−b)として例示されているアニオン性基含有ポリオール化合物から適宜選択して用いることができ、特に、下記式(2)で表されるポリヒドロキシカルボン酸を好適に用いることができる。
(HO)XL(COOH)Y (2)
(但し、式(2)において、Lは炭素数1〜12の炭化水素部位を示す。Xは2以上の整数であり、Yは1以上の整数である。)
前記式(2)において、Lの炭化水素部位としては、脂肪族炭化水素部位であることが好ましく、直鎖状又は分岐鎖状の形態のいずれであってもよい。また、X,Yは同一であってもよく、異なっていてもよい。2つ以上のヒドロキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。さらに、Yが2以上である場合、2つ以上のカルボキシル基は、同一の炭素原子に結合していてもよく、異なる炭素原子に結合していてもよい。
このようなポリヒドロキシカルボン酸としては、特に、ジメチロールアルカン酸(なかでも、2,2−ジメチロールアルカン酸)が好適である。ジメチロールアルカン酸としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、2,2−ジメチロールヘキサン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸、2,2−ジメチロールノナン酸、2,2−ジメチロールデカン酸などが挙げられる。
なお、イソシアネート反応性化合物(A1-b)としてのアニオン性基含有ポリアミン化合物やアニオン性基含有ポリチオール化合物としては、例えば、前記アニオン性基含有ポリオール化合物に対応するアニオン性基含有ポリアミン化合物(前記式(2)で表されるポリヒドロキシカルボン酸に対応するポリアミンカルボン酸など)やアニオン性基含有ポリチオール化合物(前記式(2)で表されるポリヒドロキシカルボン酸に対応するポリチオールカルボン酸など)などが挙げられる。
[第3級アミノ基及びイソシアネート反応性基含有化合物(A1-e)]
第3級アミノ基及びイソシアネート反応性基を含有する化合物(A1-e)(以下、「イソシアネート反応性化合物(A1-e)」と称する場合がある)は、分子内に少なくとも1つの第3級アミノ基を含有しており、かつ分子内に少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有する化合物であれば特に制限されない。イソシアネート反応性化合物(A1-e)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
イソシアネート反応性化合物(A1-e)において、第3級アミノ基(ジ置換アミノ基)としては、炭化水素基(例えば、フェニル基などのアリール基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基など)等の置換基を有することにより、第3級アミノ基を形成していてもよい。該炭化水素基は、さらに他の置換基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基など)を有していてもよい。なお、イソシアネート反応性化合物(A1-e)における分子内の第3級アミノ基の数としては、特に制限されず、例えば、1〜6の範囲から選択することができ、好ましくは1〜3(さらに好ましくは1又は2、特に1)であることが好適である。なお、複数の第3級アミノ基を有している場合、第3級アミノ基は、1種のみであってもよく、2種以上が組み合わせられていてもよい。
また、イソシアネート反応性化合物(A1-e)において、イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対する反応性を有する基であれば特に制限されず、例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基、メルカプト基などが挙げられ、ヒドロキシル基、第1級アミノ基又は第2級アミノ基が好ましく、特にヒドロキシル基が好適である。イソシアネート反応性化合物(A1-e)における分子内のイソシアネート反応性基の数としては、少なくとも1つであれば特に制限されないが、例えば、1〜6(好ましくは1〜3)の範囲から選択することができ、特に2であることが好適である。なお、複数のイソシアネート反応性基を有している場合、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上組み合わせられていてもよい。
イソシアネート反応性化合物(A1-e)において、イソシアネート反応性基は、第3級アミノ基の窒素原子に直接結合していてもよいが、2価の基を介して結合していることが好ましい。このような2価の基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、アルキレン−ポリ(オキシアルキレン)基[ポリ(アルキレンオキシ)−アルキル基]等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の基などが挙げられる。
イソシアネート反応性化合物(A1-e)は、第3級アミノ基が各種有機基に結合している形態を有しており、前記有機基としては炭化水素基が好適である。このような炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基など)、脂環式炭化水素基(例えば、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基など)、芳香族炭化水素基(例えば、フェニル基等のアリール基など)などが挙げられる。炭化水素基は、置換基を1種又は2種以上有していてもよく、該置換基としては、例えば、他の炭化水素基、イソシアネート反応性基(例えば、ヒドロキシル基、第1級アミノ基、第2級アミノ基、メルカプト基など)や、非イソシアネート反応性基(例えば、第3級アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基など)などが挙げられる。
従って、イソシアネート反応性化合物(A1-e)としては、イソシアネート反応性基(特に、ヒドロキシル基)を含有する第3級アミン系化合物を用いることができる。イソシアネート反応性基を含有する第3級アミン系化合物としては、例えば、1つの窒素原子に、イソシアネート反応性基を含有する有機基(イソシアネート反応性基含有有機基)が1つ結合しているとともに、炭化水素基を含有する有機基(炭化水素基含有有機基)が2つ結合している形態の第3級アミン系化合物[「イソシアネート反応性基含有第3級アミン系化合物(A1-e1)」と称する場合がある]、1つの窒素原子に、イソシアネート反応性基含有有機基が2つ結合しているとともに、炭化水素基含有有機基が1つ結合している形態の第3級アミン系化合物[「イソシアネート反応性基含有第3級アミン系化合物(A1-e2)」と称する場合がある]、1つの窒素原子に、イソシアネート反応性基含有有機基が3つ結合している形態の第3級アミン系化合物[「イソシアネート反応性基含有第3級アミン系化合物(A1-e3)」と称する場合がある]、1つの窒素原子に、イソシアネート反応性基含有有機基が2つ結合している第3級アミノ基同士が、直接又は2価の基を介して結合している形態の第3級アミン系化合物[「イソシアネート反応性基含有第3級アミン系化合物(A1-e4)」と称する場合がある]などが挙げられる。
具体的には、イソシアネート反応性基含有第3級アミン系化合物(A1-e2)としては、イソシアネート反応性基がヒドロキシル基である場合、例えば、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)−N−メチルアミン、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)−N−エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−プロピルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−イソプロピルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−n−ブチルアミン等のN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)−N−アルキルアミン;N,N−ビス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]−N−メチルアミン、N,N−ビス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]−N−エチルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−プロピルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−イソプロピルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−n−ブチルアミン等のN,N−ビス[ヒドロキシアルキル−ポリ(オキシアルキレン)]−N−アルキルアミンなどのN,N−ビス(ヒドロキシ−有機基)−N−アルキルアミンや、N,N−ビス(ヒドロキシメチル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−フェニルアミン、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)−N−フェニルアミン等のN,N−ビス(ヒドロキシアルキル)−N−アリールアミン;N,N−ビス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]−N−フェニルアミン、N,N−ビス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]−N−フェニルアミン等のN,N−ビス[ヒドロキシアルキル−ポリ(オキシアルキレン)]−N−アリールアミンなどのN,N−ビス(ヒドロキシ−有機基)−N−アリールアミン;これらに対応するN,N−ビス(ヒドロキシ−有機基)−N−シクロアルキルアミンなどが挙げられる。
さらに、イソシアネート反応性基含有第3級アミン系化合物(A1-e3)としては、イソシアネート反応性基がヒドロキシル基である場合、例えば、N,N,N−トリス(ヒドロキシメチル)アミン、N,N,N−トリス(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N,N−トリス(3−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N,N−トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N,N−トリス(4−ヒドロキシブチル)アミン等のN,N,N−トリス(ヒドロキシアルキル)アミン;N,N,N−トリス[ヒドロキシメチル−ポリ(オキシメチレン)]アミン、N,N,N−トリス[2−ヒドロキシエチル−ポリ(オキシエチレン)]アミン、N,N,N−トリス[3−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシプロピレン)]アミン、N,N,N−トリス[2−ヒドロキシプロピル−ポリ(オキシイソプロピレン)]アミン、N,N,N−トリス[4−ヒドロキシブチル−ポリ(オキシブチレン)]アミン等のN,N,N−トリス[ヒドロキシアルキル−ポリ(オキシアルキレン)]アミンなどのN,N,N−トリス(ヒドロキシ−有機基)アミンなどが挙げられる。
さらにまた、イソシアネート反応性基含有第3級アミン系化合物(A1-e4)としては、イソシアネート反応性基がヒドロキシル基である場合、例えば、N,N,N´,N´−テトラ(ヒドロキシメチル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(3−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N´,N´−テトラ(4−ヒドロキシブチル)エチレンジアミン等のN,N,N´,N´−テトラ(ヒドロキシ−アルキル)アルキレンジアミンなどのN,N,N´,N´−テトラ(ヒドロキシ−有機基)アルキレンジアミンなどが挙げられる。
なお、イソシアネート反応性基含有第3級アミン系化合物(A1-e1)〜イソシアネート反応性基含有第3級アミン系化合物(A1-e4)において、イソシアネート反応性基がアミノ基(第1級アミノ基や第2級アミノ基)である場合、それぞれ、前記のイソシアネート反応性基がヒドロキシル基である場合のイソシアネート反応性基含有第3級アミン系化合物(A1-e1)〜イソシアネート反応性基含有第3級アミン系化合物(A1-e4)に対応した第3級アミン系化合物が挙げられる。
[ポリイソシアネート化合物(A1-c)]
ポリイソシアネート化合物(A1-c)(以下、「ポリイソシアネート(A1-c)」と称する場合がある)は、分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有する化合物であれば特に制限されない。ポリイソシアネート(A1-c)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリイソシアネート(A1-c)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなどの各種ポリイソシアネート化合物が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物としては、特開2004−043554号公報において、[ポリイソシアネート化合物(A1−c)]の項で、ポリイソシアネート化合物(A1−c)として例示されているポリイソシアネート化合物(脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネートなど)から適宜選択して用いることができる。なお、本発明では、ポリイソシアネート(A1-c)としては、ポリイソシアネ−ト化合物による二量体や三量体、反応生成物又は重合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの二量体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネートなど)なども用いることができる。
ポリイソシアネート(A1-c)としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,3−キシリレンジイソシアネ−ト、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト、ノルボルナンジイソシアネート、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼンを好適に用いることができる。
[イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1-d)]
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1-d)(以下、「イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)」と称する場合がある)としては、分子内に少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有しており、かつ分子内に少なくとも1つのアルコキシ基を有するシラン化合物であれば特に制限されない。イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)において、イソシアネート反応性基としては、イソシアネート基に対して反応性を有している基であれば特に制限されず、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、ヒドロキシル基などが挙げられ、第1級又は第2級アミノ基、メルカプト基が好適である。なお、イソシアネート反応性基は、1種のみであってもよく、2種以上が組み合わせられていてもよい。
本発明では、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)としては、第1級又は第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物(A1-d1)(「アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)」と称する場合がある)、メルカプト基含有アルコキシシラン化合物(A1-d2)(「メルカプト基含有アルコキシシラン(A1-d2)」と称する場合がある)を好適に用いることができる。
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)において、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブチルオキシ基、s−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基などのC1-4アルコキシ基を好適に用いることができる。さらに好ましいアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(なかでもメトキシ基、エトキシ基)が挙げられる。このようなアルコキシ基は、通常、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)のケイ素原子に結合しており、その数は、通常、1〜3個(好ましくは2又は3個)である。なお、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)のケイ素原子には、同一のアルコキシ基が結合されていてもよく、異なるアルコキシ基が2種以上組み合わせられて結合されていてもよい。
また、イソシアネート反応性基がアミノ基である場合、第2級アミノ基や第3級アミノ基は、炭化水素基(例えば、フェニル基などのアリール基;メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基など)等の置換基を有することにより、第2級アミノ基や第3級アミノ基を形成していてもよい。なお、該炭化水素基は、さらに他の置換基(例えば、アルコキシ基、アリールオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アシル基など)を有していてもよい。
さらに、イソシアネート反応性基(第1級アミノ基、第2級アミノ基や、メルカプト基など)は、ケイ素原子に直接結合していてもよいが、2価の基を介して結合していることが好ましい。このような2価の基としては、例えば、アルキレン基、アリレン基、アルキレン−アリレン基、アルキレン−アリレン−アルキレン基等の炭化水素基のみにより構成される2価の炭化水素基;アルキレン−オキシ−アルキレン基、アルキレン−カルボニル−オキシ−アルキレン基、アルキレン−オキシ−カルボニル−アルキレン基、アルキレン−ポリ(オキシアルキレン)基等の炭化水素基と他の基(オキシ基、カルボニル−オキシ基など)との種々の組み合わせにより構成される各種の2価の基などが挙げられる。
従って、例えば、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)が、アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)である場合、アミノアルキル基の形態としてアミノ基を含有していてもよい。このようなアミノアルキル基としては、例えば、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、1−アミノプロピル基、2−アミノプロピル基、3−アミノプロピル基等のアミノ−C1-3アルキル基や、これに対応する第2級アミノ基(置換基として炭化水素基を1つ有しているアミノ−C1-3アルキル基等)又は第3級アミノ基(置換基として炭化水素基を2つ有しているアミノ−C1-3アルキル基等)などが挙げられる。なお、第2級アミノ基や第3級アミノ基における窒素原子に置換している炭化水素基などの置換基が、さらにアミノ基を有していてもよい。すなわち、例えば、N−アミノアルキル−アミノアルキル基、N−[N−(アミノアルキル)アミノアルキル]アミノアルキル基の形態であってもよい。なお、第1級アミノ基とともに、第2級アミノ基を有していてもよい。第1級又は第2級アミノ基の数は、特に制限されないが、通常、1又は2個である。
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)において、アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)やメルカプト基含有アルコキシシラン(A1-d2)としては、例えば、特開2004−043554号公報において、[イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1−d)]の項で、アミノ基含有アルコキシシラン(A1−d1)やメルカプト基含有アルコキシシラン(A1−d2)として例示されているアミノ基含有アルコキシシランやメルカプト基含有アルコキシシラン(式(2a)〜(2c)で例示されているアミノ基含有アルコキシシランや、式(2d)で例示されているメルカプト基含有アルコキシシランなど)から適宜選択して用いることができる。
イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)としては、アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)を好適に用いることができる。アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)において、イソシアネート反応性基として少なくとも第1級アミノ基を有するアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランを好適に用いることができる。また、イソシアネート反応性基として第2級アミノ基のみを有するアミノ基含有アルコキシシランとしては、例えば、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−n−ブチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランを好適に用いることができる。
本発明では、アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)としては、前記に例示のような少なくとも第1級アミノ基(特に、第1級アミノ基および第2級アミノ基)をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物(以下、「第1級アミノ基含有アルコキシシラン」と称する場合がある)と、不飽和カルボン酸エステルとが反応して得られた少なくとも第2級アミノ基をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物(以下、「エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d3)」と称する場合がある)であってもよい。エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d3)としては、少なくとも第1級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物と、不飽和カルボン酸エステルとの反応により得られる第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物が好適であり、特に、第1級アミノ基及び第2級アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物と、不飽和カルボン酸エステルとの反応により得られる第2級アミノ基含有アルコキシシラン化合物を好適に用いることができる。
このようなエステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d3)において、不飽和カルボン酸エステルとしては、不飽和カルボン酸のカルボン酸基(カルボキシル基)のうち少なくとも1つ(好ましくはすべて)がエステルの形態となっている化合物であれば、特に制限されない。不飽和カルボン酸エステルとしては、不飽和1価カルボン酸エステルであってもよく、不飽和多価カルボン酸エステル(例えば、不飽和2価カルボン酸エステルなど)であってもよい。不飽和カルボン酸エステルは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。不飽和カルボン酸エステルの具体例としては、例えば、特開2004−043554号公報において、[イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1−d)]の項で、不飽和カルボン酸エステル(A1−d3)として例示されている不飽和カルボン酸エステルなどが挙げられる。なお、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル(これらを「(メタ)アクリル酸エステル」と総称する場合がある)、マレイン酸ジエステルを好適に用いることができる。
エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d3)の具体例としては、特開2004−043554号公報において、[イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン化合物(A1−d)]の項で、エステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A1−d4)として例示されている少なくとも第2級アミノ基をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物(式(4)、式(5a)、式(5b)で表されるエステル変成アミノ基含有アルコキシシラン(A1−d4)など)などが挙げられる。
本発明では、アミノ基含有アルコキシシラン(A1-d1)としては、少なくとも第2級アミノ基を含有しているアルコキシシラン化合物[なかでも、特開2004−043554号公報において、式(4)、式(5a)や式(5b)で表されている少なくとも第2級アミノ基をイソシアネート反応性基として含有するアルコキシシラン化合物(エステル変成アルコキシシラン)]を好適に用いることができる。
[鎖延長剤(A1-f)]
鎖延長剤(A1-f)としては、特に制限されず、公知の鎖延長剤から適宜選択して用いることができるが、アミン系鎖延長剤を好適に用いることができる。アミン系鎖延長剤としては、例えば、特開2004−043554号公報において、[アニオン性基非含有・複数のイソシアネート反応性基含有化合物(A1−a)]の項で、イソシアネート反応性化合物(A1−a)としてのポリアミン化合物(A1−a2)として例示されている数平均分子量が500未満のアニオン性基非含有ポリアミン化合物(脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、ヒドラジン及びその誘導体など)から適宜選択して用いることができる。アミン系鎖延長剤としては、エチレンジアミン、1,3−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4´−メチレンビス(3−メチル−シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,3−キシリレンジアミン等の脂肪族、脂環式及び芳香脂肪族ポリアミンや、ヒドラジン、カルボジヒドラジド等のヒドラジン及びその誘導体を好適に用いることができる。
[アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)]
アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)は、例えば、イソシアネート反応性化合物(A1-a)、イソシアネート反応性化合物(A1-b)、ポリイソシアネート(A1-c)およびイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)と、必要に応じてイソシアネート反応性化合物(A1-e)や鎖延長剤(A1-f)との反応生成物であり、分子内にイソシアネート反応性化合物(A1-b)に由来するアニオン性基と、主鎖の末端にイソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)に由来するアルコキシシリル基とを少なくとも有しているポリマーである。さらに、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)は、例えば、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)に係る不飽和カルボン酸エステルに由来する側鎖[エステル基(エステル結合を有する基)]や、イソシアネート反応性化合物(A1-e)に由来する第3級アミノ基、ポリイソシアネート(A1-c)に由来するイソシアネート基と鎖延長剤(A1-f)としてのアミン系鎖延長剤のアミノ基との反応による尿素結合部位などを、必要に応じて、有することができるポリマーである。
アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)としては、イソシアネート反応性化合物(A1-a)、イソシアネート反応性化合物(A1-b)、ポリイソシアネート(A1-c)、および必要に応じてイソシアネート反応性化合物(A1-e)の反応により得られるアニオン性基含有ウレタンプレポリマーと、イソシアネート反応性基含有アルコキシシラン(A1-d)との反応により、前記アニオン性基含有ウレタンプレポリマーの末端のイソシアネート基が部分的にアルコキシシリル化されて得られる末端部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ウレタンプレポリマーであってもよく、さらに、該末端部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ウレタンプレポリマーを、必要に応じて鎖延長剤(A1-f)により、前記末端部分的アルコキシシリル化アニオン性基含有ウレタンプレポリマー中の残存しているイソシアネート基と、前記鎖延長剤(A1-f)の官能基(アミノ基など)とを反応させて鎖延長したアルコキシシリル化アニオン性基含有ウレタンプレポリマーであってもよい。
アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)の調製方法は、特に制限されない。アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)は、例えば、特開2004−043554号公報で例示されているアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A1)の調製方法、特開2003−105053号公報で例示されているアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)の調製方法、特開2003−105305号公報で例示されているアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)の調製方法、特開2003−105307号公報で例示されているアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)の調製方法などの調製方法に準じて調製することができる。
また、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)において、各成分の割合は特に制限されない。アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)における各成分の割合は、例えば、特開2004−043554号公報で例示されているアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A1)の各成分の割合、特開2003−105053号公報で例示されているアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)の各成分の割合、特開2003−105305号公報で例示されているアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)の各成分の割合、特開2003−105307号公報で例示されているアニオン性基含有アルコキシシリル基末端ポリマー(A)の各成分の割合などに準じた割合とすることができる。なお、イソシアネート反応性化合物(A1-e)については、従来の文献には記載されていないが、ポリイソシアネート化合物と反応させるイソシアネート反応性化合物全体に含まれるような割合とすることができる。具体的には、イソシアネート反応性化合物(A1-e)が用いられている場合、ポリイソシアネート(A1-c)と、イソシアネート反応性化合物(A1-a)、イソシアネート反応性化合物(A1-b)およびイソシアネート反応性化合物(A1-e)との割合としては、ポリイソシアネート(A1-c)におけるイソシアネート基/イソシアネート反応性化合物(A1-a)、イソシアネート反応性化合物(A1-b)およびイソシアネート反応性化合物(A1-e)におけるイソシアネート反応性基(ヒドロキシル基など)(NCO/NCO反応性基)(当量比)が、1より大きく2.0以下(好ましくは1.02〜1.5、さらに好ましくは1.05〜1.4)となるような範囲から選択することができる。該NCO/NCO反応性基の比が大きすぎると(例えば、2.0(当量比)を越えると)、延長する際の反応(架橋反応)の制御が困難になり、分散性が低下する。一方、該NCO/NCO反応性基の比が小さすぎると(例えば、1以下(当量比)であると)、鎖延長とシリル基導入が充分にできなくなり、タック発現までの時間が長くなるだけでなく、物性も低下する。
また、イソシアネート反応性化合物(A1-e)を用いる場合(すなわち、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)がアニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)である場合)は、アニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)中の第3級アミノ基の含有量が、0.15meq/g以上(例えば、0.15〜0.8meq/g、好ましくは0.15〜0.6meq/g)となるような割合で、イソシアネート反応性化合物(A1-e)を用いることにより、アニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)のタック力を向上させ、タック力発現に要する時間を短縮させて、初期接着強度を効果的に高めることができる。
さらにまた、イソシアネート反応性化合物(A1-e)を用いる場合は、アニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)の分子中に含まれるアニオン性基と第3級アミノ基との割合が、第3級アミノ基/アニオン性基(モル比)=0.2〜1(好ましくは0.3〜0.9)となるような割合や、アニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)の分子中に含まれる第3級アミノ基とアルコキシシリル基との割合が、第3級アミノ基/アルコキシシリル基(モル比)=1.0〜5.5(好ましくは1.5〜5.5、さらに好ましくは1.6〜4.0)となるような割合で、イソシアネート反応性化合物(A1-e)を用いることにより、タック力発現に要する時間を短縮させて、タック力を高め、初期接着強度を効果的に高めることができる。
このように、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)がアニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)である場合、アニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)の分子中に含まれるアニオン性基と第3級アミノ基との割合や、第3級アミノ基とアルコキシシリル基との割合(特にアニオン性基、第3級アミノ基およびアルコキシシリル基の割合)をコントロールすることにより、アニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)は、水がわずかに飛散しただけで、アニオン性基と第3級アミノ基との相互作用が急激に高まり、さらに、シラノール基同士が縮合し、急速にゲル化することにより、タック発現までの時間が従来の水性接着剤に比べ大幅に短縮でき、さらに、優れたタック力を発現することができる。つまり、アニオン性基、第3級アミノ基、シリル基の相乗効果により優れた性能が発揮されている。
[塩基性化合物]
本発明では、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)が、分子内にアニオン性基を有している場合[例えば、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)が、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)である場合]、ウレタン系水性組成物中には、塩基性化合物が含有されていてもよい。塩基性化合物を用いることにより、分子内にアニオン性基を有するポリマー[例えば、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)など]を塩の形態にして水溶性または水分散性にすることができる。
塩基性化合物としては、塩基性無機化合物であってもよく、塩基性有機化合物であってもよい。塩基性化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。塩基性化合物としては、例えば、特開2004−043554号公報において、[塩基性化合物(E)]の項で、塩基性化合物(E)として例示されている塩基性化合物(塩基性無機化合物や塩基性有機化合物)から適宜選択して用いることができる。塩基性化合物としては、アンモニアやアミン系化合物(なかでも、トリアルキルアミンやトリアルコールアミンなどの第三級アミン化合物)を好適に用いることができる。
[水]
なお、本発明のウレタン系水性組成物では、水(例えば、水道水、イオン交換水や純水など)が用いられている。
[ウレタン系水性組成物]
本発明のウレタン系水性組成物は、前述のように、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)と、第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)とを含有している。もちろん、ウレタン系水性組成物には、水も含まれている。水分散性ポリウレタン系樹脂(A)と、第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)との割合としては、特に制限されないが、第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)の割合が、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)100質量部(固形分)に対して5〜30質量部(好ましくは5〜20質量部)の範囲から適宜選択することができる。第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)の割合が、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)100質量部(固形分)に対して5質量部未満であると、貼り合わせ可能時間が十分でなくなり、一方、30質量部を超えていると、硬化物又は被膜の凝集力が低下する。
なお、本発明のウレタン系水性組成物では、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)は塩の形態を有していてもよい。従って、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)について、塩を形成させるための物質(例えば、塩基性化合物や酸など)が用いられていてもよい。
また、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)が、水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)(アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)など)である場合、水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)は、水と反応していてもよい。水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)と、水との反応としては、水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)における末端のアルコキシシリル基が水により加水分解される加水分解反応が挙げられる。すなわち、水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)と、水との反応により、水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)における末端のアルコキシシリル基が部分的に又は全体的にシラノール基及び/又はシロキサン結合となっている。なお、シラノール基とは、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するケイ素原子からなる基のことを意味しており、アルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
従って、例えば、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)がアニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)である場合、ウレタン系水性組成物は、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)におけるアニオン性基が塩基性化合物により中和されてアニオン性基の塩となっており、且つ末端のアルコキシシリル基が部分的に又は全体的に水により加水分解されてシラノール基及び/又はシロキサン結合となっている水性シラノール化ウレタンプレポリマー(「水性シラノール化ポリウレタン系樹脂」と称する場合がある)を含んでいてもよい。すなわち、本発明のウレタン系水性組成物は、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)としての水性シラノール化ポリウレタン系樹脂と、第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)とを含有していてもよい。
なお、水分散化剤としての塩基性化合物は、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)を調製した後に用いられていてもよく、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)を調製する際に予め用いられていてもよい。塩基性化合物の使用量としては、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)中のアニオン性基に対して50〜120モル%(好ましくは80〜110モル%)程度の範囲から選択することができる。
また、水は、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)(アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)等の水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)など)を調製した後に用いられていてもよく、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)を調製する際に予め用いられていてもよい。水の使用量としては、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)100質量部に対して65〜900質量部(好ましくは100〜400質量部)程度の範囲から選択することができる。
なお、本発明のウレタン系水性組成物では、樹脂分としては、特に制限されないが、例えば、10〜60質量%(好ましくは20〜50質量%)程度の範囲から選択することができる。
本発明のウレタン系水性組成物は、有機溶剤を全く含まない完全に水性であるウレタン系水性組成物であることが好ましいが、粘度調整等のために、ケトン類、低級アルコールなどの親水性の有機溶剤(水溶性有機溶剤)を含んでいてもよい。
また、ウレタン系水性組成物には、例えば、濡れ性改質親水性溶剤(例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の界面活性剤、アルギン酸ナトリウム、ムコ多糖類、アクリル酸ナトリウムなど)、充填材(例えば、炭酸カルシウム、フュームドシリカ、クレー、タルク、各種バルーン、ノイブルシリカ、カオリン、ケイ酸アルミニウムなど)、可塑剤(例えば、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチルなどの脂肪族カルボン酸エステルなど)、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤(顔料や染料など)、防かび剤、濡れ促進剤、粘性改良剤、香料、各種タッキファイヤー(例えば、安定化ロジンエステル、重合ロジンエステル、テルペンフェノール、石油系樹脂等のエマルジョンタッキファイヤーなど)、カップリング剤(チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤など)、光硬化触媒、乳化剤、界面活性剤、エマルジョンやラテックス、架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ポリエチレンイミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、コロイダルシリカなど)、保湿剤、消泡剤などの各種添加剤又は成分、溶剤などが含まれていてもよい。
[水性接着剤など]
本発明のウレタン系水性組成物は、水性接着剤や、水性コーティング剤(水性塗料など)として用いることができ、特に、水性接着剤(なかでも、水性ラッピング用接着剤や水性コンタクト型接着剤)として好適に用いることができる。また、前記ウレタン系水性組成物は、水性接着剤や水性コーティング剤の他にも、バインダ、ラミネート、シーラー、プライマー、サイジング剤、シーリング材等として用いることができる。すなわち、水性接着剤や水性コーティング剤などの各種処理剤は、前記ウレタン系水性組成物を含有している。
前記ウレタン系水性組成物を含有する水性接着剤や水性コーティング剤などは、ウレタン系水性組成物が前記構成を有しているので[すなわち、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)と、第3級アミノ基・芳香族環含有化合物(B)とが組み合わせられているので]、初期接着強度が高く、初期の付着性(初期接着性や初期密着性など)が優れており、しかも、貼り合わせ可能時間(オープンタイム)が大幅に伸ばされている。この理由は定かではないが、第3級アミノ基を非含有で且つ芳香族環を含有する化合物、芳香族環を非含有で且つ第3級アミノ基を含有する化合物や、これらの混合物では、このような効果が発揮されないことより、分子中に第3級アミノ基及び芳香族環を有する化合物を用いることにより、初めて発揮することができる効果であると言える。
このように、本発明の水性接着剤は、接着可能条件に幅ができて広くなっており、優れた接着効果を安定して発揮させることが可能となっている。具体的には、貼り合わせ可能時間が長くなっているので、水性接着剤を被着体の所定の面に塗布した後、すぐに被着体同士を貼り合わせる必要がない。また、初期接着強度が優れているので、被着体同士を貼り合わせる際に仮押さえ・圧締を行う必要がなく又はそれに要する時間を短縮することができる。そのため、被着体同士を容易に且つ安定して接着させることができるだけでなく、貼り合わせる被着体同士の組み合わせ(ペアー)が複数であっても、容易に貼り合わせ作業を行うことができる。
なお、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)として、アニオン性基及び第3級アミノ基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)を用いることにより、より一層優れたタック力を短時間で発現させることができ、より一層優れた初期接着性や初期密着性を発揮させることができる。また、アミン系鎖延長剤を用いることにより、硬化速度を速めることも可能である。
特に、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)が、シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)[なかでも、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)]である場合、シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)は、水中でも、末端のアルコキシシリル基が部分的に又は全体的に水により加水分解されてシラノール基及び/又はシロキサン結合となった状態で安定に存在することができる。そのため、本発明のウレタン系水性組成物を含有する水性接着剤や、水性コーティング剤などは、1液型の水性接着剤や1液型の水性コーティング剤などの1液型の処理剤とすることができる。
なお、このような水性接着剤や水性コーティング剤は、水性タイプであるので(特に、有機溶剤を全く含まない完全な水性であってもよいので)、取り扱い性や作業性が優れており、人体や環境に対して安全性が高い。
また、水分散性ポリウレタン系樹脂(A)が、シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)[なかでも、アニオン性基含有水分散性シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)]である場合、シリル化ポリウレタン系樹脂(A1)のアルコキシシリル基は、シラノール基等の形態となっているので、ウレタン系水性組成物を含有する水性接着剤(特に、水性コンタクト型接着剤)や水性コーティング剤などは、紙などの多孔質材料のみならず、金属やガラスなどの非多孔質材料に対しても良好な接着性や密着性を発現することができる。すなわち、前記水性接着剤や水性コーティング剤などを適用できる基材(被着体や塗布体など)として、以下に具体例が示されているように、種々の基材を用いることができる。なお、接着により貼り合わせる際の基材としては、同一の素材からなる基材同士であってもよく、異なる素材からなる基材であってもよい。基材はそれぞれ単独で又は2種以上が組み合わせられていてもよい。
前記基材としては、例えば、多孔質材料、非多孔質材料のいずれであってもよい。より具体的には、被着体の素材としては、例えば、木材、合板、チップボード、パーチクルボード、ハードボードなどの木質材料;スレート板、珪カル板、モルタル、タイルなどの無機質材料;メラミン樹脂化粧板、ベークライト板、発泡スチロール、各種プラスチックフィルム又は成形品(例えば、ポリ塩化ビニル系フィルム又は成形品、ポリエステル系フィルム又は成形品、ポリスチレンフィルム又は成形品、ポリオレフィン系フィルム又は成形品等)などのプラスチック材料;天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム等のゴム材料;段ボール紙、板紙、クラフト紙などの紙質材料の他、加工紙(例えば、防湿紙などの表面処理された加工紙など)などの難接着紙材料、ガラス材料、金属材料(例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス、銅など)、皮革材料、布、不織布などの繊維質材料などが挙げられる。
このように、本発明のウレタン系水性組成物を含有する水性接着剤や水性コーティング剤などは、幅広い材料からなる基材に対して適用することが可能であり、特にコンタクト接着により、非多孔質同士の接着に対しても用いることができるようになる。
なお、ウレタン系水性組成物を含有する水性接着剤を用いて被着体を貼り合わせる方法としては、特に制限されず、例えば、被着体に塗布した後、直ちに被着体同士を貼り合わせる方法や、被着体に塗布した後、所定時間経過させて、粘着性が発現している状態で被着体同士を貼り合わせるコンタクト接着方法などの種々の方法を採用することができる。なお、本発明において、コンタクト接着方法としては、JIS K 6800で規定されているように、貼り合わせる2つの被着体における両被着体の貼着面に塗布して、所定時間経過させて、粘着性が発現している状態で2つの被着体を貼り合わせて接着させる方法だけでなく、貼り合わせる2つの被着体における何れか一方の被着体の貼着面に塗布して、所定時間経過させて、粘着性が発現している状態で2つの被着体を貼り合わせて接着させる方法も含まれる。すなわち、本発明では、コンタクト接着とは、貼り合わせる被着体のうち少なくとも何れか一方の貼着面に塗布して、所定時間経過後に粘着性が発現している状態で、2つの被着体を貼り合わせて接着させることを意味している。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。実施例及び比較例で用いた材料は下記の通りである。
(水分散性ポリウレタン系樹脂組成物の調製例1)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、商品名「PTMG2000」(三菱化学社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量:2000、水酸基価:57.4mg−KOH/g;「ポリオール−1」と称する場合がある):150部、1,4−ブタンジオール(「ポリオール−2」と称する場合がある):6部、2,2−ジメチロールブタン酸(水酸基価:754.0mg−KOH/g;「ポリオール−3」と称する場合がある):20部、イソホロンジイソシアネート[イソシアネート含有率(NCO含有率):37.8%;「IPDI」と称する場合がある]:75.0部及びメチルエチルケトン(MEK):100部を配合し、80〜85℃の温度で窒素気流下6時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
次に、このカルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を40℃まで冷却した後、トリエチルアミン:13.6部を配合し、高速攪拌下、予めイソホロンジアミン(「IPDA」と称する場合がある):8.1部を脱イオン水409gに溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、45〜50℃でMEKを留去した後、脱イオン水により固形分を38%に調整した水分散性ポリウレタン系樹脂組成物(「ポリウレタン系樹脂組成物(1)」と称する場合がある)を得た。
(水分散性ポリウレタン系樹脂組成物の調製例2)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、商品名「PTMG2000」(三菱化学社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量:2000、水酸基価:57.4mg−KOH/g;ポリオール−1):150部、N−メチル−ジエタノールアミン[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン;水酸基価:941.6mg−KOH/g;「ポリオール−4」と称する場合がある]:6部、2,2−ジメチロールブタン酸(水酸基価:754.0mg−KOH/g;ポリオール−3):20部、イソホロンジイソシアネート[イソシアネート含有率(NCO含有率):37.8%;IPDI]:71.2部及びメチルエチルケトン(MEK):100部を配合し、80〜85℃の温度で窒素気流下6時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のカルボキシル基及び第3級アミノ基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
次に、このカルボキシル基及び第3級アミノ基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を40℃まで冷却した後、トリエチルアミン:13.6部を配合し、高速攪拌下、予めイソホロンジアミン(IPDA):8.0部を脱イオン水403gに溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、45〜50℃でMEKを留去した後、脱イオン水により固形分を38%に調整した水分散性ポリウレタン系樹脂組成物(「ポリウレタン系樹脂組成物(2)」と称する場合がある)を得た。
(水分散性ポリウレタン系樹脂組成物の調製例3)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、商品名「PTMG2000」(三菱化学社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量:2000、水酸基価:57.4mg−KOH/g;ポリオール−1):150部、1,4−ブタンジオール(ポリオール−2):6部、2,2−ジメチロールブタン酸(水酸基価:754.0mg−KOH/g;ポリオール−3):20部、イソホロンジイソシアネート[イソシアネート含有率(NCO含有率):37.8%;IPDI]:75.0部及びメチルエチルケトン(MEK):100部を配合し、80〜85℃の温度で窒素気流下6時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のカルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
また、商品名「KBM602」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン]:1モルに対して、2−エチルヘキシルアクリレート:2モルの割合で用い、混合して、50℃で7日間反応させて、アミノ基含有アルコキシシランを得た。
次に、前記カルボキシル基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーの反応混合物全量に、前記アミノ基含有アルコキシシラン:16.6部を配合して混合した後、80〜85℃の温度で窒素気流下1時間反応を行い、カルボキシル基を含有するイソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
さらに、このカルボキシル基を含有するイソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を40℃まで冷却した後、トリエチルアミン:13.6部を配合し、高速攪拌下、予めイソホロンジアミン(IPDA):5.7部を脱イオン水432gに溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、45〜50℃でMEKを留去した後、脱イオン水により固形分を38%に調整した水分散性ポリウレタン系樹脂組成物(「ポリウレタン系樹脂組成物(3)」と称する場合がある)を得た。
(水分散性ポリウレタン系樹脂組成物の調製例4)
窒素導入管、温度計、コンデンサー及び撹拌装置の付いた4つ口フラスコに、商品名「PTMG2000」(三菱化学社製、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量:2000、水酸基価:57.4mg−KOH/g;ポリオール−1):150部、N−メチル−ジエタノールアミン[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミン;水酸基価:941.6mg−KOH/g;ポリオール−4]:8部、2,2−ジメチロールブタン酸(水酸基価:754.0mg−KOH/g;ポリオール−3):20部、イソホロンジイソシアネート[イソシアネート含有率(NCO含有率):37.8%;IPDI]:75.2部及びメチルエチルケトン(MEK):100部を配合し、80〜85℃の温度で窒素気流下6時間反応を行い、残存イソシアネート基が2.0%のカルボキシル基及び第3級アミノ基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
また、商品名「KBM602」[信越化学工業社製、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン]:1モルに対して、2−エチルヘキシルアクリレート:2モルの割合で用い、混合して、50℃で7日間反応させて、アミノ基含有アルコキシシランを得た。
次に、前記カルボキシル基及び第3級アミノ基含有イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物に、前記アミノ基含有アルコキシシラン:16.7部を配合して混合した後、80〜85℃の温度で窒素気流下1時間反応を行い、カルボキシル基及び第3級アミノ基を含有するイソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を得た。
さらに、このカルボキシル基及び第3級アミノ基を含有するイソシアネート基及びアルコキシシリル基末端ウレタンプレポリマーを含む反応混合物を40℃まで冷却した後、トリエチルアミン:13.6部を配合し、高速攪拌下、予めイソホロンジアミン(IPDA):5.7部を脱イオン水436gに溶解した水溶液を加えて、分散液を得た。この分散液を減圧下、45〜50℃でMEKを留去した後、脱イオン水により固形分を38%に調整した水分散性ポリウレタン系樹脂組成物(「ポリウレタン系樹脂組成物(4)」と称する場合がある)を得た。
なお、水分散性ポリウレタン系樹脂組成物の調製例1〜水分散性ポリウレタン系樹脂組成物の調製例4により得られた水分散性ポリウレタン系樹脂組成物は、表1に示される組成となっている。
(実施例1)
表2で示されるように、水分散性ポリウレタン系樹脂組成物の調製例1により得られたポリウレタン系樹脂組成物(1):100部に対して、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン:3部の割合で混合して、ウレタン系水性組成物を得た。
(実施例2〜5)
それぞれ、表2で示されるように、水分散性ポリウレタン系樹脂組成物の調製例1〜4のいずれかにより得られたポリウレタン系樹脂組成物(1)〜ポリウレタン系樹脂組成物(4)を用い、且つN,N−ジヒドロキシエチルアニリンを、ポリウレタン系樹脂組成物(1)〜ポリウレタン系樹脂組成物(4)のいずれかのポリウレタン系樹脂組成物:100部に対して6部の割合で用いて混合して、ウレタン系水性組成物を得た。
(比較例1〜4)
ウレタン系水性組成物として、それぞれ、表2で示されるように、水分散性ポリウレタン系樹脂組成物の調製例1〜4のいずれかにより得られたポリウレタン系樹脂組成物(1)〜ポリウレタン系樹脂組成物(4)のみを用いた。
(比較例5)
表2で示されるように、水分散性ポリウレタン系樹脂組成物の調製例1により得られたポリウレタン系樹脂組成物(1):100部に対して、N−メチル−ジエタノールアミン:6部の割合で混合して、ウレタン系水性組成物を得た。
(比較例6)
表2で示されるように、水分散性ポリウレタン系樹脂組成物の調製例1により得られたポリウレタン系樹脂組成物(1):100部に対して、フタル酸ジブチル:6部の割合で混合して、ウレタン系水性組成物を得た。
(評価)
実施例1〜5及び比較例1〜6に係るウレタン系水性組成物について、下記の初期接着性の評価方法により、ウレタン系水性組成物の初期接着性を評価した。なお、評価結果は表2に併記した。
[初期接着性の評価方法]
ウレタン系水性組成物を、オレフィン系樹脂製シートに塗布し(塗布量:約80g/m2)、70℃で任意の所定時間(それぞれ、表2に示される時間)乾燥後、MDF(多孔質木質材料)を塗布面に貼り合わせて、60℃に加温した熱ロールを用いて圧着し、直ちに、剥離接着強さ(N/25mm)をJIS K 6854−2に準じて測定し、下記の評価基準により初期接着性を評価した。
(評価基準)
◎:剥離接着強さが10(N/25mm)以上である
○:剥離接着強さが7.5(N/25mm)以上10(N/25mm)未満である
△:剥離接着強さが5(N/25mm)以上7.5(N/25mm)未満である
×:剥離接着強さが5(N/25mm)未満である
××:タックフリーとなり、貼り合わせることができない
なお、上記の試験(初期接着性の評価方法)の評価基準において、「◎」は「優」を意味し、「○」は「良」を意味し、「△」は「可」を意味し、「×」は「不可」を意味している。
表2から明らかなように、実施例1〜5に係るウレタン系水性組成物は、それぞれ対応する比較例1〜4に係るウレタン系水性組成物と比較すると、タック力を発現するのに要する時間が短縮されており、しかも、その際の初期接着強度が大きくなっている。さらに、タック力が発現している時間(タック保持時間)が大幅に長くなっており、貼り合わせ可能時間が大幅に延ばされている。
なお、比較例5では、芳香族環を有しておらず且つ第3級アミノ基を有している化合物(具体的には、N−メチル−ジエタノールアミン)が用いられており、比較例1の場合と比べて、タック力が発現するのに要する時間は短縮されており、また、貼り合わせ可能時間は延びてはいるが、初期接着強度は低く、容易に被着体同士を貼り合わせることができない。
また、比較例6では、可塑剤として機能を有しているフタル酸ジブチルが用いられており、比較例1の場合と比べて、タック力が発現するのに要する時間は長くなっており、また、貼り合わせ可能時間は延びていない。