JP4816852B2 - 易開封性、高透明性のシーラントフィルム、ラミネートフィルム及び包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、易開封性、高透明性のシーラントフィルムに関し、さらに、基材層を基材にしてシーラントフィルムを積層したラミネートフィルムに関し、さらに、かかるシーラントフィルム又はラミネートフィルムを用いた包装体に関するものであって、ヒートシール部を手で開封する際に剥離部位の糸引き、ケバ立ちを発生させないシーラントフィルム、ラミネートフィルム及び包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、食品、薬品、化粧品などは包装体などで収納されている。これら包装体は外気を遮断、内容物の飛散、酸化や香りの飛散を防止している。これらの包装体は内面に施されたヒートシール層によって熱融着することで密封する方法が一般的に用いられている。従って前記の包装体の目的を達するためには、このヒートシール層は充分な密封性を有することが必要であり、さらに輸送時などの過程でこのヒートシール部が剥がれないようにする必要がある。
【0003】
しかしながら、外気の遮断、内容物の飛散、酸化や香りの飛散を防止するための過剰なヒートシール強度は、逆に、消費者がその内容物を取り出す際、手で開封することができず、ナイフや鋏などの器具を使わなければならないことも少なくなかった。このような問題点から、外気の遮断、内容物の飛散、酸化や香りの飛散を防止するために充分な密封性と開封時に手で容易に開封できるような易開封性を有するシーラントフィルム、ラミネートフィルムやそれを用いた包装体が提案されている。
【0004】
例えば、特開昭57−131556号公報には、ポリエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体にポリブテン−1をブレンドした層、または、低密度ポリエチレンにポリプロピレンをブレンドした層をヒートシール層とし、これと加工性改善樹脂層とを共押出ししてなる、ポリオレフィン系樹脂層とイージーピール可能なイージーピールフィルムの製造方法について開示されている。また、特開昭60−239238号公報には、アイオノマー樹脂にエチレン−プロピレン共重合体をブレンドしてなるヒートシール層を積層体のヒートシール層として配してなる、オレフィン系樹脂をシール相手として易開封性ヒートシールが可能な多層包装材について開示されている。これらは樹脂間の接着強度の低さをもとに開封時に容易に樹脂が破壊されることにより、易開封性のシーラントを達成している。ところが、これらのイージーピール性包装材料は、開封時に剥離面が繊維化してざらざらしたり、糸引き現象や薄膜残り(剥離時にシール層の材質が膜状に薄く剥がれてくる)を生じ、その結果、シール面の見栄えを著しく低下させ、商品価値を損なうという問題があった。
【0005】
また、他の例として特開昭62−109768号公報には、ポリプロピレンの層と、ポリプロピレンを含む厚さ11μm以下のブレンドポリマー層との共押出フィルムをシーラント層とした易開封性密封包装材料について開示されている。しかし、この包装材料は、ポリプロピレン層に接着力がないため、開封時に両層間での界面剥離が起こるものの、均一かつ円滑に開封することができず、しかも剥離面の美観が損なわれ易い、という問題点がある。
【0006】
さらに、これらの問題点を改善しようとして、特開平5−212835号公報には、共押出しによるヒートシール性積層フィルムにおいて、ヒートシール層となる第1層として、厚み20μm以下、かつ、凝集破壊強度50〜1,000g/15mm巾の特定のポリマーブレンド層を用い、これに隣接する第2層として、接着性を有するポリマー層であって、その凝集破壊強度が第1層の凝集破壊強度の1.5倍以上のものを用いたイージーピール性包装材料について開示されている。しかしながら、これも剥離されたあとの剥離面の美観については満足できるものではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来の易開封性シーラントフィルムの有する問題点を解決し、ヒートシール層と支持層の2層以上の積層構成からなり、該ヒートシール層融着面では剥離せず、ヒートシール層の破壊、さらには、ヒートシール層と支持層の界面剥離及びヒートシール層の破壊を容易とすることにより、ヒートシールが容易で、密封性、易開封性、透明性に優れ、開封時に糸引き、ケバ立ちを発生させない、総合的に優れた性能を発揮する易開封性シーラントフィルム及び該シーラントフィルムを含むラミネートフィルム及び包装体を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の易開封性、高透明性のシーラントフィルムは、少なくともポリエチレン系樹脂組成物からなるヒートシール層と、ポリプロピレン系樹脂組成物又はポリプロピレン系樹脂を60重量%以上とポリエチレン系樹脂40重量%以下のポリオレフィン系樹脂組成物からなる支持層との2層以上の熱可塑性樹脂からなる積層構成からなり、該ヒートシール層の融着面では剥離せず、ヒートシール層を構成する樹脂組成物の引張り破壊強さが20MPa以下であり、ヒートシール層の破壊強度が5N/15mm以下であり、ヒートシール層と支持層の界面剥離強度が5N/15mm以下であり、かつ、ヘイズが6%以下であることを特徴とする。
【0013】
この場合、本発明のラミネートフィルムが、シーラントフィルムの支持層側面に基材層を積層したものであることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、この場合、本発明の包装体が、前記シーラントフィルム又は前記ラミネートフィルムを層構成に含んだものであることを特徴とする。
【0015】
上記の構成からなる本発明の易開封性、高透明性のシーラントフィルム、ラミネートフィルム及び包装体は、ヒートシールが容易で、密封性、易開封性、透明性に優れ、開封時に糸引き、ケバ立ちを発生させることがない。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の易開封性、高透明性のシーラントフィルム、ラミネートフィルム及び包装体の実施の形態を説明する。
【0017】
本発明のシーラントフィルムはヒートシール層と支持層との界面剥離で易開封性を発現させるため、少なくともヒートシール層と支持層の2層以上の熱可塑性樹脂からなる積層構成であることが必須であり、ヒートシール層融着面では剥離せず、ヒートシール層の破壊強度が5N/15mm以下、かつ、ヘイズが6%以下であることが必要である。ヘイズが6%を超えると透明性に劣る。さらには、ヒートシール層と支持層との界面剥離強度及びヒートシール層の破壊強度が共に5N/15mm以下であることが好ましい。
【0018】
このような積層フィルムとして、好ましくは、ヒートシール層としてポリエチレン系樹脂組成物を、支持層としてポリオレフィン系樹脂組成物を積層させたシーラントフィルムが総合的に優れた性能を発揮する。
【0019】
ヒートシール層の破壊強度が5N/15mm以上の場合には、易開封感を得ることができず好ましくない。本発明のシーラントフィルムはヒートシール層の融着面では剥離しない。本発明のシーラントフィルムはヒートシール層同士や本発明のシーラントフィルムのヒートシール層と本発明のラミネートフィルムのヒートシール層、さらには本発明のシーラントフィルムのヒートシール層又は本発明のラミネートフィルムのヒートシール層と他のフィルムないし成形物表面の熱可塑性樹脂組成物からなるヒートシール層と融着させた場合、ヒートシール部を手で開封する際にヒートシール層の破壊により開封が始まり、ヒートシール層の融着面では剥離しないことが必要である。
【0020】
本発明において用いるポリエチレン系樹脂組成物は、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどであって、直鎖状低密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンのように2種類以上を混合したものも用いることができる。かかるポリエチレン系樹脂組成物によりヒートシール層を構成したときにヒートシール層の破壊強度は5N/15mm以下であり、好ましくは、引張り破壊強さは20MPa以下である。また、通常は、ヒートシール層と支持層との界面剥離強度も5N/15mm以下である。
【0021】
ヒートシール層を構成するポリエチレン系樹脂組成物の引張り破壊強さが20MPaを超えると糸引き、ケバ立ちが発生することがあり、最悪の場合はヒートシール層が剥離時に伸び剥がれた状態になってしまう。また、界面剥離強度が5N/15mmを超えると易開封感が劣る。
【0022】
本発明において用いる、支持層を構成するポリオレフィン系樹脂組成物は効果が損なわれない限り公知で得られる樹脂を使用することができ、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂のように2種類以上を混合したものでも良いが、ポリプロピレン系樹脂を60重量%以上混合したものが好ましく、70重量%以上混合したものがさらに好ましい。ポリプロピレン系樹脂と混合される樹脂がポリエチレン系樹脂の場合はポリエチレン系樹脂が40重量%を上回る場合はヒートシール層との界面剥離強度が強くなり開封性が悪くなり好ましくない。本発明において、支持層は1層である他、共押出し法により同一樹脂組成又は異なる樹脂組成で複数層とすることも任意である。
【0023】
本発明のシーラントフィルムは必要に応じヒートシール層を積層させる支持層の他方の面に、基材層を1層又は複数層積層することができる。
【0024】
本発明のラミネートフィルムは、基材層を設けてその一方の面に本発明のシーラントフィルム、例えば、ポリエチレン系樹脂組成物をヒートシール層として有するシーラントフィルムの場合、ポリエチレン系樹脂組成物からなるヒートシール層が外側になるように配して貼合して得られる。また、基材層を設けて一方の面に金属箔を積層し、その金属箔面に本発明のシーラントフィルムを、ヒートシール層が外側になるように配して貼合して得られる。基材層としては、例えば、二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、金属蒸着二軸延伸フィルムなど、2軸延伸フィルムを典型的なものとして挙げることができる。
【0025】
本発明の包装体は、本発明のシーラントフィルムのヒートシール層面同士及び/又は本発明のラミネートフィルムのヒートシール層面同士や本発明のシーラントフィルムのヒートシール層面と本発明のラミネートフィルムのヒートシール層面、さらに本発明のシーラントフィルムのヒートシール層面及び/又は本発明のラミネートフィルムのヒートシール層面と他のフィルムないし成形物表面の熱可塑性樹脂組成物からなるヒートシール層面とをヒートシールすることすることで得られる。
【0026】
本発明の易開封性、高透明性のシーラントフィルム、ラミネートフィルム及び包装体の例を図面により説明すると、図1(a)は支持層の一方の面にヒートシール層を、(b)は支持層の両方の面にヒートシール層を形成したシーラントフィルムであり、(c)は支持層の一方の面にヒートシール層を形成し、支持層の他方の面に基材層を形成したラミネートフィルム、(d)は支持層の一方の面にヒートシール層を形成し、支持層の他方の面に金属箔を介して基材層を形成したラミネートフィルムである。また、図2(a)は支持層の一方の面にヒートシール層を形成したシーラントフィルムのヒートシール層面同士をヒートシールして得た包装体のヒートシール部断面図、(b)は支持層の一方の面にヒートシール層を、他方の面に基材層を形成したラミネートフィルムのヒートシール層面同士をヒートシールして得た包装体のヒートシール部断面図、(c)は上記(a)で用いたシーラントフィルムと(b)で用いたラミネートフィルムのヒートシール層面同士をヒートシールして得た包装体のヒートシール部断面図の例を示す。図3(a)は、包装体の開封時の、破断の一例を示す断面図、(b)は、包装体の開封時の、破断の他の例を示す断面図である。
【0027】
次に、本発明のシーラントフィルムの製造方法について説明する。まず、本発明のシーラントフィルムの製造に用いる各々の樹脂組成物を所定の組成比に混合し、各溶融押出機に供給し、210〜280℃の温度で溶融押出しし、濾過フィルターを経た後、口金からシート状に成形し、20〜80℃に調整された金属ドラムに巻き付け冷却固化し、金属ドラムの速度を調整して、任意の厚みの易開封性に優れるシーラントフィルムを得る。
【0028】
なお、本発明のシーラントフィルムの製造に際しては、本発明の効果が損なわれない限り必要に応じて安定剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても差し支えない。
【0029】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。なお、本発明において用いた特性値は次の測定法による。
【0030】
(1)引張り破壊強さ(MPa)
JIS−K−6760−1981により測定した。
【0031】
(2)ヘイズ(%)
JIS−K−7105により測定した。
【0032】
(3)破壊強度、界面剥離強度(N/15mm)
実施例及び比較例で得られたシーラントフィルム又はラミネートフィルムのヒートシール層面同士をシーラントフィルムの場合は温度115℃、ラミネートフィルムの場合は140℃、圧力0.2MPa、加熱・加圧時間1秒でヒートシールした後巾15mmに切り取り、引張り速度200mm/分の速度でそれぞれを反対方向に引張って剥離させ、ヒートシール層の破壊強度及びヒートシール層と支持層との界面剥離強度を測定した。あわせて、ヒートシール層の融着面での剥離の有無を観察した。
【0033】
(4)開封性
上記(3)と同じ方法でヒートシールした後、巾100mmに切り取り、手で任意の方法で剥離して以下の基準で官能評価した。
○:容易に開封でき、かつヒートシール部が全巾に渡り開封できる。
△:○より明らかに抵抗感はあるものの開封でき、ヒートシール部が全巾に渡り開封できる。
×:明らかに抵抗が強い。または開封途中に開封界面以外で裂けが発生する。
【0034】
(5)糸引き・ケバ立ち
上記(3)で得られた剥離後の剥離界面を観察し以下の基準で官能評価した。
○:糸引き・ケバ立ちが起こらない。
×:糸引き・ケバ立ちが起こる。
【0035】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0036】
(実施例1、2)
ヒートシール層を構成する樹脂組成物として、引張り破壊強さが10MPa、実施例2では14MPaである低密度ポリエチレン樹脂を用い、支持層を構成する樹脂組成物としてポリプロピレン樹脂(メルトフローレート7.0g/10分、融点159℃)を用い、公知の共押出し法にて積層し、層構成厚み比1/3になるように20μmのシーラントフィルムを製造した。
【0037】
(比較例1)
ヒートシール層を構成する樹脂組成物として、引張り破壊強さが25MPaである低密度ポリエチレン樹脂を用いた以外は全て前記実施例1に従った。結果を表1に示す。
【0038】
(実施例3、4)
支持層を構成する樹脂組成物として、実施例3では実施例1で用いたポリプロピレン樹脂80wt%に実施例1で用いた低密度ポリエチレン20wt%、実施例4では実施例1で用いたポリプロピレン樹脂70wt%に実施例1で用いた低密度ポリエチレン30wt%混合した組成物とした以外は全て実施例1に従った。支持層を構成する樹脂組成物中のポリエチレン樹脂の混合比率及び結果を表2に示す。
【0039】
(比較例2)
支持層を構成する樹脂組成物として、実施例1で用いたポリプロピレン樹脂50wt%に実施例1で用いた低密度ポリエチレンを50wt%混合した組成物とした以外は全て実施例1に従った。支持層を構成する樹脂組成物中のポリエチレン樹脂の混合比率及び結果を表2に示す。
【0040】
(実施例5、実施例6、比較例3、比較例4)
実施例1、実施例3、比較例1及び比較例2で得られた該シーラントフィルムをポリプロピレンフィルム(東洋紡績社製P2161.厚み30μm)とドライラミネート法により貼合し、ラミネートフィルムとし、該ラミネートフィルムのヒートシール層面同士をヒートシールして包装体を得た。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【発明の効果】
本発明の易開封性、高透明性のシーラントフィルム、ラミネートフィルム及び包装体によれば、ヒートシールが容易で密封性、易開封性、透明性に優れ、開封時に糸引き、ケバ立ちを発生させることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)本発明のシーラントフィルムの一例を示す断面図である。
(a)本発明のシーラントフィルムの他の例を示す断面図である。
(c)本発明のラミネートフィルムの一例を示す断面図である。
(d)本発明のラミネートフィルムの他の例を示す断面図である。
【図2】(a)本発明の包装体のヒートシール部の一例を示す断面図である。
(b)本発明の包装体のヒートシール部の他の例を示す断面図である。
(c)本発明の包装体のヒートシール部の他の例を示す断面図である。
【図3】(a)本発明の包装体の開封時の、破断の一例を示す断面図である。
(b)本発明の包装体の開封時の、破断の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 支持層
2 ヒートシール層
3 基材層
4 金属箔
5、6 破断部
Claims (3)
- 少なくともポリエチレン系樹脂組成物からなるヒートシール層と、ポリプロピレン系樹脂組成物又はポリプロピレン系樹脂を60重量%以上とポリエチレン系樹脂40重量%以下のポリオレフィン系樹脂組成物からなる支持層との2層以上の熱可塑性樹脂からなる積層構成からなり、該ヒートシール層の融着面では剥離せず、ヒートシール層を構成する樹脂組成物の引張り破壊強さが20MPa以下であり、ヒートシール層の破壊強度が5N/15mm以下であり、ヒートシール層と支持層の界面剥離強度が5N/15mm以下であり、かつ、ヘイズが6%以下であることを特徴とする易開封性、高透明性のシーラントフィルム。
- 請求項1記載のシーラントフィルムの支持層側面に基材層を積層してなることを特徴とするラミネートフィルム。
- 請求項1記載のシーラントフィルム又は請求項2記載のラミネートフィルムを層構成に含んでなることを特徴とする包装体。
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