JP4815823B2 - 燃料電池用触媒及びその製造方法、並びにそれを用いた燃料電池用電極及び燃料電池 - Google Patents

燃料電池用触媒及びその製造方法、並びにそれを用いた燃料電池用電極及び燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、炭化タングステンを触媒成分として用いた燃料電池用触媒及びその製造方法と、この燃料電池用触媒を用いた燃料電池用電極並びに燃料電池に関する。
近年、エネルギーのより一層の効率化と環境問題の解決のために、燃料電池を自動車の動力源とすることにより排気ガスをクリーンにすることが試みられており、その普及に大きな関心が寄せられている。特に、燃料自動車(FCHV)用燃料電池として固体高分子型燃料電池(PEFC:Polymer Electrolyte Fuel Cell)の実用化に向けた開発が急速に進んでいる。
燃料電池は、アノードに燃料、カソードに酸化剤をそれぞれ供給し、アノードとカソード間の電位差を電圧として取り出し、負荷に供給する発電装置であり、アノード燃料としては水素が、酸化剤としては一般的には空気中の酸素が用いられる。燃料電池は、アノード極とカソード極とその間に挟まれた電解質で構成されており、固体高分子型燃料電池においては、電解質としてイオン交換膜が用いられている。具体的には、電解質としてのイオン交換膜の両面に触媒層が形成され、該触媒層の外側にそれぞれアノードガス拡散層及びカソードガス・燃料拡散層が一体に形成されてなる電解質膜/電極接合体が、隔壁板、電解質膜/電極接合体及び隔壁板の積層体よりなる単位セルとして、用途に応じた所望の電圧が得られるように数十セルから数百セル積層されて燃料電池が構成されている。
このような燃料電池では、アノード触媒層に水素が到達すると電気化学的反応過程によりプロトンと電子が生ずる。ここで生成したプロトンは順次電解質中を移動してカソードに達する。一方、電子は、外部負荷を経由してカソードに送られる。カソード触媒層では、外部負荷を経由して送られてきた電子と、酸化剤としての空気中の酸素と、電解質中を移動してきたプロトンとが電気化学的反応過程により結合して水を生成する。
従来、このような燃料電池の触媒としては、カソード、アノードとも、高価で資源的にも問題がある白金等の貴金属を主体にした触媒が使用されており、その使用量は、同じ動力を発生するガソリン車の排気ガス浄化用触媒に使用される白金の量よりも相当に多量となっている。
従って、燃料電池を商業的に実用化するためには、価格的にも資源的にも問題のある白金等の、安価で実用に供しうる燃料電池用触媒の開発が必須の課題の一つとなる。
貴金属を主体とした触媒に代わる燃料電池用触媒として、特許文献1には、担体上に炭化タングステン(WC)が担持されてなる燃料電池用触媒が記載され、WCの平均粒径は0.5〜10nmが好ましいとされている。
また、特許文献2及び3には、固体高分子型燃料電池のアノード及びカソード用触媒として、炭化タングステンが開示され、その粒径が1〜30nmであることが好ましく、1.5〜10nmがより好ましいと記載されている。更に導電材は炭素材料等が挙げられ、例えばケッチェンブラック等のカーボンブラック等が開示されている。
また、特許文献4及び5には、X線回折法(Cu−Kα線)による回折角2θが37.6±0.3°、62.0±0.3°及び74.8±0.3°にピークを与える炭化タングステンが、特許文献6及び7には、37.3〜37.9°、61.7〜62.3°及び74.5〜75.1°にピークを与える炭化タングステンが、燃料電池用触媒として用いられることが開示されている。
なお、非特許文献1、2及び3には、炭化タングステンの製造方法として、WOとNHとの反応で生成させたWNを、CHとH流通下で加熱処理することによりWC1−x(立方晶)が生成することが開示されている。
特開2003−117398 特開平6−342666 特開平6−342667 US20030077460A1 US6551569B1 WO0228544A1 WO0228773A1 Studies in Surface Science and Catalysis 130巻 989頁(2000) Chem.Mater.12巻 132頁(2000) Applied Catalysis A:General 183巻 253頁(1999)
しかしながら、上記特許文献1〜7のいずれにも、燃料電池用触媒としての触媒活性の具体的な記載はなく、炭化タングステンを燃料電池用触媒として実用化する技術の実質的な開示はなされていない。
また、非特許文献1〜3には、生成したWC1−xを燃料電池用触媒として用いる点については何ら開示はされていない。
このように、従来、炭化タングステンを燃料電池用触媒として用いることは知られているが、この炭化タングステンにいかに燃料電池用触媒として十分な活性を発現させ、白金等の貴金属触媒に代替しうる燃料電池用触媒とするかという技術は確立されていないのが現状である。
本発明は、安価で、白金等の貴金属触媒に代替しうる、優れた触媒作用を発揮する燃料電池用炭化タングステン触媒と、この燃料電池用触媒を用いた燃料電池用電極及び燃料電池を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記状況に鑑み鋭意検討した結果、特定のタングステン化合物から転化して得られた炭化タングステン粒子が、特定な結晶形態を有し、白金等の貴金属触媒に代替しうる実用性を有する燃料電池用触媒となること、また、更に遷移金属触媒を併用することで、より実用性の高い燃料電池用触媒が得られることを見出した。本発明はこのような知見をもとに完成されたものである。
即ち、本発明は、X線回折法(Cu−Kα線)による回折角2θ(±0.3゜)が、40゜以上60゜以下の領域における最大回折ピークの半値幅が、1.0゜以上、16.5°以下である炭化タングステンを含有する燃料電池用触媒であって、該炭化タングステンは、窒化タングステン、及び硫化タングステンからなる群から選ばれる化合物を、炭化タングステンに転化させてなることを特徴とする燃料電池用触媒、に存する。
更に、本発明は、上記燃料電池用触媒を含有することを特徴とする燃料電池用電極、に存する。
また、本発明は、上記燃料電池用電極を用いた燃料電池、に存する。
更に、本発明は、窒化タングステン、及び硫化タングステンからなる群から選ばれる化合物を、炭素系基体の存在下又は不存在下に、炭化水素或いは炭化水素及び水素を接触させて、炭化タングステンに転化させることを特徴とする上記燃料電池用触媒の製造方法、に存する。
本発明によれば、高価で資源的にも問題のある白金等の貴金属燃料電池用触媒に代替し得る、良好な触媒作用を示し、安価で実用的な燃料電池用触媒と、この燃料電池用触媒を用いた燃料電池用電極及び燃料電池が提供される。
また、本発明に係る炭化タングステンは良好な触媒作用を示すことから、これを単独で用いる他、白金等の貴金属触媒と併用することによっても、結果的に白金等の使用量を減らした安価で実用的な燃料電池用触媒と、この燃料電池用触媒を用いた燃料電池用電極及び燃料電池が提供される。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[燃料電池用触媒]
本発明の燃料電池用触媒は、X線回折法(Cu−Kα線)による回折角2θ(±0.3゜)が40゜以上60゜以下の領域における、最大回折ピークの半値幅が、0.80゜以上である炭化タングステンを含有することを特徴とする。
本発明の燃料電池用触媒はまた、ホウ化タングステン、窒化タングステン、硫化タングステン、リン化タングステン及びケイ化タングステンからなる群から選ばれる化合物を、炭化タングステンに転化させてなることを特徴とする。
<炭化タングステン>
炭化タングステンとは、タングステン(W)原子と炭素(C)原子が、結合を持って化合物として存在する形態を有するものであり、例えば、WC、WC1−x(0<x<1)、WC等が挙げられる。
この炭化タングステンの形態はX線回折(XRD)で確認することができる。即ち、炭化タングステンに対してX線(Cu−Kα線)を照射することによって、回折スペクトルを観察することによって、炭化タングステンに特徴的なピークを与えることで確認することができる。
その測定装置及び測定条件としては、例えば以下のものが挙げられるが、本発明における炭化タングステンのXRD分析手法は、何ら以下の測定装置及び測定条件に限定されるものではない。
(粉末XRD分析)
測定装置
粉末X線解析装置/PANalytical PW1700
測定条件
X線出力(Cu−Kα):40kV,30mA
走査軸:θ/2θ
測定範囲(2θ):3.0°〜70.0°
測定モード:Continuous
読込幅:0.05°
走査速度:3.0°/min
DS,SS,RS:1°,1°,0.20mm
ゴンオメーター半径:173mm
具体的には、WCは、X線回折の2θ(±0.3゜)のピークとして、31.513゜、35.639゜、48.300゜、64.016゜、65.790゜等の特徴的ピークを与えるものである。WC1−xは、X線回折の2θ(±0.3゜)のピークとして、36.977゜、42.887゜、62.027゜、74.198゜、78.227゜等の特徴的ピークを与えるものである。また、WCは、X線回折の2θ(±0.3゜)のピークとして、34.535゜、38.066゜、39.592゜、52.332゜、61.879゜等の特徴的ピークを与えるものである。
本発明の燃料電池用触媒においては、X線回折法(Cu−Kα線)による回折角2θ(±0.3゜)が40゜以上60゜以下の領域(以下「特定領域」と称す場合がある。)の最大回折ピークの半値幅が、0.80゜以上(以下、この条件を「特定のXRD条件」と称す場合がある。)の炭化タングステンを用いる。
X線回折法(Cu−Kα線)による回折角2θ(±0.3゜)が、40゜以上60゜以下の領域は、0.2252〜1.5406nmの結晶面間隔に相当する。この特定領域における半値幅が、0.80゜以上であるということは、炭化タングステンの結晶が11nm以下の大きさに微小化していることを示している。このことが触媒作用に良好に働くメカニズムについては必ずしも明らかではないが、微結晶であるために反応場としての表面積が増大するためと推定される。
この特定領域における最大回析ピークの半値幅は、大きい程好ましく、好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.2以上であるが、あまりに大きいと、炭化タングステンの安定性が低下し、失活しやすいため、この半値幅の上限は通常16.5゜以下程度である。
炭化タングステンの形状としては特に制限はないが、最も一般的なのは粒子状である。粒子状の炭化タングステンは、その平均粒径の上限が通常100μm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、中でも300nm以下で、下限が通常0.5nm以上、好ましくは1.0nm以上、より好ましくは2.0nm以上であることが望ましい。炭化タングステンの粒径がこの下限を下回ると不安定となって、失活しやすくなり、上限を超えると高い活性を得にくくなる。
なお、炭化タングステンの平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)或いは透過型電子顕微鏡(TEM)による測定により、粒径の大きさを測定する方向を統一して、その方向での大きさを測定し、これを平均した値で示される。
この走査型電子顕微鏡法(SEM)による測定では、サンプル表面に電子線をスキャンし、発生する2次電子を検出することによって、サンプル表面を可視化させる。この手法を利用して炭化タングステンの粒径を測定することができる。その測定装置及び測定方法としては、例えば以下のものが挙げられるが、本発明における炭化タングステンの粒径のSEMを用いた測定手法は、何ら以下の測定装置及び測定方法に限定されるものではない。
(SEMによる測定)
測定装置
日立製作所製「S−4100」を使用し、電子線の加速電圧を15kVに制御して観測を実施する。
測定方法
カーボン蒸着したSiウエハー上に、粉体試料を適量ばらまき、メタノールを滴下して乾燥させる。具体的には分散状態は100倍から1000倍で観察した写真調査し、粒径は1万及び10万倍以上の従来の写真から調査する。
本発明に係る炭化タングステンの合成方法については、上記特定のXRD条件を満たすものとなる限りにおいて特に制限はないが、工業的に一般的に用いられている酸化タングステンを炭化タングステンとしたものでは、後述する比較例1に示すように、特定のXRD条件を満たす炭化タングステンが得られない。
従って、本発明に係る炭化タングステンは、触媒の製造方法の項目で後述するように、特定のタングステン化合物から転化して合成することが好ましく、これにより特定のXRD条件を満たす炭化タングステンを得、燃料電池用触媒としての十分な活性を発現させることができる。
特に前述の小さめの平均粒径及び特定のXRD条件の炭化タングステンを合成するには、後述の如く、その製造方法を工夫すれば良く、中でも、後述の原料化合物から窒化タングステン等の炭化タングステンを与える前駆化合物への転化反応、及び窒化タングステン等の前駆化合物から炭化タングステンへの転化反応の際の焼成温度を低めとし、焼成時間を短めにすることによって、結晶成長の状態を制御することが挙げられる。
<基体>
本発明の燃料電池用触媒において、基体は必ずしも必須ではないが、炭化タングステンが基体に被着して用いることが、活性維持の点で好ましく、中でも、炭素系基体を用いることが、高い導電性が得られる点で好適である。
炭素系基体としては種々のものが使用でき、特に制限はないが、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノクラスター、フラーレン、熱分解炭素、活性炭素等であり、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、導電性、入手容易性、価格、の点で総合的に、カーボンブラックが工業的に有利であり、具体的にはカーボンブラックとしては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、等が挙げられる。
基体の形態についても特に制限はないが、最も一般的に用いられるのは、粉体状のものである。
カーボン粉末等の粉体の基体の場合、その比表面積(BET)は、通常数十m/g以上、好ましくは200m/g以上、更に好ましくは500m/g以上で、通常5000m/g以下、好ましくは数千m/g以下である(なお、本発明において、「数千」、「数十」等の「数」は「2〜4」程度をさす。)。この比表面積が小さ過ぎると炭化タングステンの被着有効面積が少なくなることにより、反応場が少なくなって触媒活性が十分に得られなくなる。比表面積が過度に大きいものは高価となり、炭化タングステンを用いることにより安価な燃料電池用触媒を提供するという本発明の目的が損なわれる。
<基体への炭化タングステンの被着>
本発明において、基体上に炭化タングステンが被着されている状態とは、炭化タングステンと基体との間の導電性がとれるように両者が接触している状態を指す。従って、炭化タングステンと基体とを単に混合するのみでも炭化タングステンを基体に被着させることができるが、また、更に、この混合物を焼成しても良い。なお、以下において、基体に混合後焼成して被着させた状態を特に「担持」と称す。
被着の方法としては、担持法、混合法、含浸法、沈殿法、吸着法等の公知の手法を採用することができるが、炭化タングステンの前駆化合物或いは原料化合物を基体と混合した後に炭化タングステンを生成させるための転化反応を行う場合は、通常、炭化タングステンを生成させた後に、焼成処理を施すのが良い。
炭化タングステンの基体への被着比率としては、限定されるものではないが、炭化タングステン/(炭化タングステン+基体)の重量比で、下限として通常0.001以上、好ましくは0.01以上、中でも0.05以上で、上限として通常0.95以下、好ましくは0.4以下、中でも0.3以下であることが望ましい。炭化タングステンの被着比率がこの下限を下回ると所望の活性が得られず、上限を超えると被着による活性の向上効果が出にくくなる。
<その他の触媒成分>
本発明においては、本発明の効果を損なわない限り、遷移金属及び炭化タングステン以外の遷移金属化合物から選ばれる触媒成分(以下「他の触媒成分」と称す場合がある。)を併用することができる。なお、炭化タングステン以外の遷移金属化合物は、炭化タングステン以外のタングステン化合物であっても良い。
遷移金属は、周期律表の3A〜7A族、8族、及び1B族の第4周期から第6周期に属する元素であり、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ランタン(La)、ユウロピウム(Eu)、金(Au)、セリウム(Ce)、タンタル(Ta)、レニウム(Re)、プラセオジウム(Pr)、イリジウム(Ir)、ネオジム(Nd)が例示され、好ましくは下記電気化学平衡式
酸化体+ne=還元体
で示される、水溶液中での標準電極電位E゜(25℃)の値がプラスであるものが望ましい。これは、金属本来の性質として酸化による溶出が起こり難く、それに起因する触媒の劣化が少ないからである。このようなものとしては、具体的には、金、イリジウム、パラジウム、銀、ロジウム、及びルテニウム等が挙げられる。
ただし、より工業的に有利な触媒とするには、上記の中で高価な触媒成分をなるべく少なくする方が良い。このことから、特に好ましいのは、ルテニウムである。
また、遷移金属として白金(Pt)を併用することも当然可能であるが、白金は高価であるため、添加量は所望の触媒活性を考慮しつつ、少量であることが、安価で実用的な燃料電池用触媒を提供する上で望ましい。
なお、以下に主な遷移金属の電気化学平衡式と標準電極電位E°(25℃)を示す。
Figure 0004815823
炭化タングステン以外の遷移金属化合物としては、炭化物、窒化物、ホウ化物等があるが、好ましいのは炭化物である。
炭化タングステン以外のタングステン化合物としては、WN、WN、WB、W1−yMo1−z、NiC、CoC、WP、WP等のタングステン化合物が挙げられる。なお、W1−yMo1−zにおいて、yは0<y≦0.5の範囲、zは0≦z≦0.3の範囲のものが好適に使用される。これらの中でも、W1−yMo1−zが触媒活性の点で好ましい。
これらの他の触媒成分は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
他の触媒成分を共触媒として併用する場合に、他の触媒成分の併用形態としては、次のようなものが挙げられる。
(1) 炭化タングステンと共に他の触媒成分を基体に混合する。
(2) 炭化タングステンと共に他の触媒成分を基体に担持する。
(3) 基体に担持した炭化タングステンを、他の触媒成分と混合する。
(4) 他の基体に担持した他の触媒成分を、炭化タングステンと混合する。
(5) 他の基体に担持した他の触媒成分を、基体に担持した炭化タングステンと混合する。
他の触媒成分を用いる場合、他の触媒成分は、炭化タングステンに対して、他の触媒成分の合計/炭化タングステンの重量比で、下限として通常0.001以上、好ましくは0.01以上、中でも0.05以上で、上限として通常0.5以下、好ましくは0.4以下、中でも0.3以下となるように使用することが好ましい。この下限を下回ると所望の活性が得られず、上限を超えると活性の向上効果が出にくくなる。
この他の触媒成分は粉体状であることが好ましく、この場合の平均粒径は、上限として通常1000nm以下、好ましくは500nm以下、中でも300nm以下で、下限として通常0.5nm以上であることが好ましい。この下限を下回ると不安定となって失活しやすくなり、上限を超えると高い活性を得にくくなる。
なお、本発明の燃料電池用触媒においては、遷移金属元素以外の金属成分が、炭化タングステンの重量を基準に数重量%以下の量で含まれていても、本発明の目的と効果において許容できる。
このような他の触媒成分を併用することにより、とりわけ、他の触媒成分を炭化タングステンと共に基体に担持して用いることにより、触媒活性を高めることができ、好ましい。他の触媒成分の併用、特に、他の触媒成分を炭化タングステンと共に基体に担持させることによる触媒活性の向上効果の作用機構の詳細は必ずしも明らかではないが、他の触媒成分の遷移金属が炭化タングステンの助触媒として機能するために活性が向上するものと推定される。
<製造方法>
(炭化タングステンの製造)
炭化タングステンの製造方法としては、ポーリングの電気陰性度が1.8以上3.0以下の典型非金属元素とタングステンとの間に結合を少なくとも1つ有する、炭化タングステン以外の、タングステン化合物(以下「前駆化合物」と称す場合がある。)を、炭化タングステンに転化させる方法が挙げられる。
[1]前駆化合物
前駆化合物を構成するポーリングの電気陰性度が1.8以上3.0以下の典型非金属元素としては、H(2.1)、B(2.0)、N(3.0)、Si(1.8)、P(2.1)、S(2.5)、Cl(3.0)、As(2.0)Se(2.4)Br(2.8)、Te(2.1)、I(2.5)、At(2.2)が挙げられるが(カッコ内は電気陰性度)、これらの中でも、周期表の第2周期及び第3周期の典型非金属元素からなる群から選ばれるB、N、Si、P、Sの元素が、毒性が低い等の理由から好適である。
本発明で用いる前駆化合物には、特に制限はないが、具体的には、WB、WB、W等のホウ化タングステン、WN、WN、WN、W等の窒化タングステン、WSi、WSi等のケイ化タングステン、WS、WS等の硫化タングステン、WP、WP等のリン化タングステン等が挙げられるが、これらの中でも、窒化タングステン、リン化タングステン、硫化タングステンが、工業的に有利であるため好ましい。これらの化合物はタングステン(W)原子と、ホウ素(B)、窒素(N)、ケイ素(Si)、リン(P)或いは硫黄(S)原子が、直接結合する形態を有するものであり、X線回折(XRD)で確認することができる。
このような前駆化合物を経由して炭化タングステンを製造することにより、燃料電池触媒として優れた触媒活性を有する炭化タングステンを得ることができる理由は定かではないが、次のように推定される。即ち、従来一般的にとられている酸化タングステン(WO)を転化して炭化タングステンを得る場合には、O原子がW原子から全て離れた後、W原子がメタン等の炭化水素と反応してWCを生成し、この反応は約800℃以上の高温条件下でなければ進行しないことが報告されている(Catalysis Letters 44巻 229頁(1997))。これに対して、上記前駆化合物の特定の典型非金属元素は、ポーリングの電気陰性度が低いため、タングステンに対して酸素より弱く結合していることから、酸素の場合よりも低い温度でW原子と結合が解裂し、生成したW原子或いはW化合物が炭化水素と反応してWCを生成することから、得られる炭化タングステンの微結晶が拡大しにくくなり、その結果、燃料電池用触媒として好適な反応場が生成する、触媒活性に優れた炭化タングステンが得られるものと考えられる。
[2]原料化合物
本発明で用いる上記前駆化合物を誘導するタングステン化合物(以下「原料化合物」と称する場合がある。)は、特に制限はないが、具体的には、WO、WO、HWO、(NH101241・5HO等のタングステン酸化物の他、WF、WCl4、WCl6及びWBr等のタングステンハロゲン化物等の無機タングステン化合物や(NHWS等の硫黄原子含有タングステン化合物が挙げられる。その他、有機タングステン化合物としてタングステン錯体が挙げられる。具体的には、エチルボリルエチリデン(ethylborylethylidene)配位子等のホウ素原子配位タングステン錯体、カルボニル配位子やシクロペンタジエニル配位子、アルキル基配位子、オレフィン系配位子等の炭素原子配位タングステン錯体、ピリジン配位子、アセトニトリル配位子等の窒素原子配位タングステン錯体、ホスフィン配位子、ホスファイト配位子等の配位したリン原子配位タングステン錯体、ジエチルカルバモジチオラト配位子等が配位した硫黄原子配位タングステン錯体、が挙げられる。また、これらの配位子を複数個有する錯体であっても良いし、また複数の種類の配位子を有する錯体であっても良い。具体的には、ヒドリド配位子とオレフィン系配位子が配位したタングステン錯体、炭素原子と窒素原子が配位したW(CO)(NCCH、W(CO)(bipyridyl)等のタングステン錯体が挙げられる。
これらの中でも、炭素原子配位タングステン錯体、窒素原子配位タングステン錯体、リン原子配位タングステン錯体等の化合物が、種類が豊富で扱いやすく工業的に有利であり、好ましい。
原料化合物についてはその平均粒径の上限が通常100μm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下、中でも300nm以下、特に100nm以下で、下限が通常0.5nm以上、好ましくは1.0nm以上、より好ましくは2.0nm以上であることが望ましい。原料化合物の粒径がこの下限を下回ると生成する炭化タングステンが不安定となって、失活しやすくなり、上限を超えると高い活性を得にくくなる。
[3]原料化合物から前駆化合物への転化
原料化合物から、前駆化合物への転化反応は、公知の任意の手法を用いることができる。例えば、好ましい前駆化合物である窒化タングステン、硫化タングステン、リン化タングステンの原料化合物からの転化反応は、次のような条件で行える。
(1) 窒化タングステン
前駆化合物としての窒化タングステンの合成方法については特に制限はなく、公知の任意の方法によって行うことができる。
例えば、“Applied Catalysis A:General”183巻、253頁(1999)には、WOをNH流通下、270℃で加熱を開始し、毎時30℃の速度で加熱温度を上昇させ、最終温度560℃で加熱することによりWNが生成すること、更に、1%O/Heガスを室温で流通させて不動態膜を形成することによって安定化させることができることが開示されているが、この方法を採用することもできる。
その他、次のような方法を採用することもできる。
無機タングステン化合物である(NH101241・5HO等のタングステン酸化物を、有機媒体(例えば、エタノール等のアルコール類、アセトン等のカルボニル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン等の炭化水素類、塩化メチレン等の塩化物類)、或いは水性媒体(例えば、水等)に溶解し、必要であれば完全溶解のためHClを所望の量を添加し、あるいはスラリー状にし、所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)放置した後、溶媒を蒸留等により除去する。必要であれば、アルゴン等の不活性ガス流通下、所定の温度(通常100℃以上、好ましくは200℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱により乾燥する。その後、NHを含む不活性ガス流通下(通常10%以上、好ましくは30%以上、100%以下、或いは90%以下のNH濃度。高濃度であれば焼成時間は短くなるが、安全上濃度を下げても良い。)で所定の温度(通常300℃以上、好ましくは400℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱することにより窒化タングステンを生成させることができる。なお、この加熱においては、所定の温度(通常室温以上、好ましくは100℃以上、通常600℃以下、好ましくは400℃以下)から所定の速度(通常10℃/hr以上、好ましくは20℃/hr以上、通常600℃/hr以下、好ましくは400℃/hr以下)で所定の温度(通常300℃以上、好ましくは400℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下)まで昇温により加熱を行っても良い。更に、低酸素濃度(例えば、5重量%以下、中でも2重量%以下程度の酸素濃度)の不活性ガス雰囲気中で、所定時間(通常数10分以上、好ましくは30分以上、通常10時間以下、中でも5時間以下)で、所定の温度(通常は、室温付近)で処理することにより不動態膜を形成させる不動態化処理を行うことができる。
更に、有機タングステン化合物からも窒化タングステンの合成が可能である。具体的には、W(CO)(CHCN)をNHを含む不活性ガス流通下(通常10%以上、好ましくは30%以上、100%以下、或いは90%以下のNH濃度。高濃度であれば焼成時間は短くなるが、安全上濃度を下げても良い。)で所定の温度(通常200℃以上、好ましくは300℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱することにより窒化タングステンを生成させることができる。なお、この加熱においては、所定の温度(通常室温以上、好ましくは100℃以上、通常600℃以下、好ましくは400℃以下)から所定の速度(通常10℃/hr以上、好ましくは20℃/hr以上、通常600℃/hr以下、好ましくは400℃/hr以下)で所定の温度(通常300℃以上、好ましくは400℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下)まで昇温により加熱を行っても良い。更に、低酸素濃度(例えば、5重量%以下、中でも2重量%以下程度の酸素濃度)の不活性ガス雰囲気中で、所定時間(通常数10分以上、好ましくは30分以上、通常10時間以下、中でも5時間以下)で、所定の温度(通常は、室温付近)で処理することにより不動態膜を形成させる不動態化処理を行うことができる。
(2) 硫化タングステン
前駆化合物としての硫化タングステンの形状は特に制限はなく、特定の構造を持たないものの他、ナノロッド、ナノチューブ、ナノツイスト、ナノクラスター、ナノファイバー等のナノマテリアルやサブマイクロコイルでも良い。またその合成方法についても特に制限はなく、公知の任意の方法によって行うことができる。たとえば“Journal of Materials Chemistry 12巻1450頁(2002)にはW(CO)をジフェニルエタン中で、わずかに過剰のS存在下90℃においてアルゴン雰囲気で超音波処理を行い、得られたアモルファス粉末をアルゴン雰囲気で800℃で加熱することにより、WSナノロッドが生成することが報告されている。
その他、次のような方法を採用することもできる。
W(CO)をSと共に、有機媒体(例えば、エタノール等のアルコール類、アセトン等のカルボニル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の炭化水素類、塩化メチレン等の塩化物類)に溶解或いはスラリー状にし、所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱或いは還流を行い、沈殿物を濾過或いは溶媒を蒸留等により採取し、必要であれば更に未反応のW(CO)を除くために沈殿物を所定量の有機溶媒(例えば、アセトニトリル等の含窒素有機溶媒、エタノール等のアルコール類、アセトン等のカルボニル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の炭化水素類、塩化メチレン等の塩化物類)に溶解、或いはスラリー状にて所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱或いは還流を行い、熱濾過等により沈殿物を採取する。得られた沈殿物をアルゴン等の不活性ガス流通下、所定の温度(通常100℃以上、好ましくは200℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱により乾燥することにより硫化タングステンが得られる。
(3) リン化タングステン
前駆化合物としてのリン化タングステンの合成方法については特に制限はなく、公知の任意の方法によって行うことができる。
例えば、“Studies in Surface Science and Catalysis”143巻、247頁(2002)には、(NH1240・18HOと(HNHPOを、WとPとのモル比が1:1となるように水に溶解させた後、水を留去し、次いで、空気流通条件下で加熱し、その後に水素流通条件下で加熱還元処理を行うことによりWPが得られること、更に、0.5%O/Heガスを室温で流通させて不動態膜を形成することによって安定化させることができることが開示されているが、この方法を採用することもできる。
具体的には、メタタングステン酸等のタングステン供給化合物、及び、リン酸第2アンモニウム等のリン供給化合物を所望のリン化タングステンのモル比に応じた配合比で、有機媒体(例えば、エタノール等のアルコール類、アセトン等のカルボニル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン等の炭化水素類、塩化メチレン等の塩化物類)、或いは水性媒体(例えば、水等)に溶解、或いは分散させ、所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)放置した後、溶媒を蒸留等により除去する。次に、酸素雰囲気ガス流通条件下、所定の温度(通常300℃以上、好ましくは400℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱し、その後、還元雰囲気(例えば、水素ガス流通下)条件下で所定の温度(通常300℃以上、好ましくは400℃以上、通常1000℃以下、好ましくは700℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱することによりWPを得ることができる。更に、低酸素濃度(例えば、5重量%以下、中でも2重量%以下程度の酸素濃度)の不活性ガス雰囲気中で、所定時間(通常数10分以上、好ましくは30分以上、通常10時間以下、中でも5時間以下)で、所定の温度(通常は、室温付近)で処理することにより不動態膜を形成させる不動態化処理を行うことができる。
上記した原料化合物から前駆化合物への転化反応の中でも、タングステン酸化物或いはカルボニル配位子を有するタングステン錯体を原料化合物として用い、この原料化合物から得られた窒化タングステン或いは硫化タングステンを炭化タングステンの前駆化合物として用いることが、原料が安価であること、反応が容易であること等の理由から好適である。
[4]前駆化合物から炭化タングステンへの転化
本発明においては、好ましくはホウ化タングステン、窒化タングステン、硫化タングステン、リン化タングステン、及びケイ化タングステンから選ばれる化合物を前駆化合物とし、これを基体の存在下又は不存在下に、所定の加熱条件下に炭化水素或いはこれに更に水素を接触させて、炭化タングステンに転化させることが好ましい。
基体の存在下に前駆化合物を炭化水素或いは炭化水素及び水素と接触させて炭化タングステンを得る場合、基体は、前述の好適な基体への炭化タングステン被着量となるように用いれば良い。
また、炭化水素としては、通常メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、好ましくはメタン、エタン、エチレン或いはこれらの混合ガスを、通常1mL/min.以上、好ましくは5mL/min.以上、通常500mL/min.以下、好ましくは400mL/min.以下供給するのが好ましい。炭化水素が上記下限より少ないと、炭化反応が進行し難くなり、上記上限よりも多くなると、反応に供しない炭化水素ガスの量が増えるので当該反応にとって好ましくない。水素を併用することにより、炭化タングステン表面に炭素層ができることを防ぐという効果が得られるが、その使用割合は炭化水素と水素との混合ガス中の炭化水素の割合が通常5%以上、好ましくは10%以上、通常90%以下、好ましくは30%以下供給することが好ましい。炭化水素量が上記下限よりも少ないと、炭化反応が進行し難くなり、上記上限よりも多いと、炭化タングステン表面に活性の無い炭素層が付着するので、当該反応にとって好ましくない。
転化反応は、通常500℃以上、好ましくは600℃以上、通常1200℃以下、好ましくは1000℃以下で行われる。この反応温度が上記下限よりも低いと、炭化反応が進行し難くなり、上限よりも高いと活性の高い炭化タングステンが得にくくなる。
反応時間は反応温度によっても異なるが、通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下とされる。この反応時間が上記下限よりも短いと反応が完全には進行し難くなり、上限より長いと活性の高い炭化タングステンが得にくくなる。
この加熱は、所定の温度(通常室温以上、好ましくは100℃以上、通常600℃以下、好ましくは400℃以下)から所定の速度(通常10℃/hr以上、好ましくは20℃/hr以上、通常600℃/hr以下、好ましくは400℃/hr以下)で所定の温度(通常500℃以上、好ましくは600℃以上、通常1200℃以下、好ましくは1000℃以下)まで昇温により行っても良い。炭化タングステンの生成後、更に、低酸素濃度(例えば、5重量%以下、中でも2重量%以下程度の酸素濃度)の不活性ガス雰囲気中で、所定時間(通常数10分以上、好ましくは30分以上、通常10時間以下、中でも5時間以下)で、所定の温度(通常は、室温付近)で処理することにより不動態膜を形成させる不動態化処理を行うことができる。
以下に、窒化タングステン等の前駆化合物から、基体の不存在下に炭化タングステンを生成させる方法についてより具体的に説明するが、本発明は以下の方法に何ら限定されるものではない。
(1) 窒化タングステンから炭化タングステンへの転化
窒化タングステンから本発明で用いる炭化タングステンを与える合成方法については特に制限はなく、公知の任意の方法によって行うことができる。例えば、“Applied Catalysis A:General”183巻、253頁(1999)には、WNをメタンと水素流通下、25℃で加熱を開始し、毎時60℃の速度で加熱温度を上昇させ、最終温度750℃で加熱することによりWC1−xが生成すること、更に、1%O/Heガスを室温で流通させて不動態膜を形成することによって安定化させることができることが開示されているが、この方法を採用することもできる。
また、窒化タングステンを所定の炭化水素ガス(通常はメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、好ましくはメタン、エタン、エチレン)或いはそれらの混合ガスと水素ガス流通下(通常、混合ガス中の炭化水素ガスの混合割合は通常5%以上、好ましくは10%以上、通常90%以下、好ましくは30%以下)、所定の温度(通常500℃以上、好ましくは600℃以上、通常1000℃以下、好ましくは900℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱することにより炭化タングステンを生成させることができる。なお、この加熱においては、上記のように所定の温度(通常室温以上、好ましくは100℃以上、通常600℃以下、好ましくは400℃以下)から所定の速度(通常10℃/hr以上、好ましくは20℃/hr以上、通常600℃/hr以下、好ましくは400℃/hr以下)で所定の温度(通常500℃以上、好ましくは600℃以上、通常1000℃以下、好ましくは900℃以下)まで昇温により加熱を行っても良い。更に、低酸素濃度(例えば、5重量%以下、中でも2重量%以下程度の酸素濃度)の不活性ガス雰囲気中で、所定時間(通常数10分以上、好ましくは30分以上、通常10時間以下、中でも5時間以下)で、所定の温度(通常は、室温付近)で処理することにより不動態膜を形成させる不動態化処理を行うことができる。
(2) 硫化タングステンから炭化タングステンへの転化
硫化タングステンから本発明で用いる炭化タングステンを与える合成方法については特に制限はなく、任意の方法によって行うことができる。
具体的には、硫化タングステンを所定の炭化水素ガス(通常はメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、好ましくはメタン、エタン、エチレン)或いはそれらの混合ガスと水素ガス流通下(通常、混合ガス中の炭化水素ガスの混合割合は通常5%以上、好ましくは10%以上、通常90%以下、好ましくは30%以下)、所定の温度(通常550℃以上、好ましくは650℃以上、通常1100℃以下、好ましくは1000℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱することにより炭化タングステンを生成させることができる。なお、この加熱においては、上記のように所定の温度(通常室温以上、好ましくは100℃以上、通常600℃以下、好ましくは400℃以下)から所定の速度(通常10℃/hr以上、好ましくは20℃/hr以上、通常600℃/hr以下、好ましくは400℃/hr以下)で所定の温度(通常550℃以上、好ましくは650℃以上、通常1100℃以下、好ましくは1000℃以下)まで昇温により加熱を行っても良い。更に、低酸素濃度(例えば、5重量%以下、中でも2重量%以下程度の酸素濃度)の不活性ガス雰囲気中で、所定時間(通常数10分以上、好ましくは30分以上、通常10時間以下、中でも5時間以下)で、所定の温度(通常は、室温付近)で処理することにより不動態膜を形成させる不動態化処理を行うことができる。
(3) リン化タングステンから炭化タングステンへの転化
リン化タングステンから本発明で用いる炭化タングステンを与える合成方法については特に制限はなく、任意の方法によって行うことができ、例えば、上述の硫化タングステンから炭化タングステンへの転化反応と同様な反応条件で、炭化タングステンを得ることができる。
[5]炭化タングステン/基体被着触媒の製造
基体に炭化タングステンが被着してなる本発明の燃料電池用触媒を製造する場合、炭化タングステンの合成過程において基体を付与するタイミングは任意であるが、例えば、次のような方法が挙げられる。
(1) 原料化合物に基体を混合した後、原料化合物の前駆化合物への転化反応を行い、その後更に前駆化合物の炭化タングステンへの転化反応を行う。
(2) 前駆化合物に基体を混合した後、前駆化合物の炭化タングステンへの転化反応を行う。
(3) 炭化タングステンを調製した後にこれに基体を混合した後、所望により更に焼成処理などを施す。
上記(1)の場合、例えば、前記原料化合物を水溶液等の溶媒で溶解した後、基体と共に水溶液等の溶媒に溶解或いは分散させ、溶媒を除去した後、必要であれば、不活性ガス流通下、所望の温度と時間で加熱することにより乾燥させ、その後NH流通下で加熱することにより基体に担持させたWNを得ることができる。更に、炭化水素ガスと水素流通下、所望の温度と時間で加熱することにより本発明で開示する炭化タングステンが基体に被着されてなる燃料電池用触媒が生成する。更に、所望の低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中で、所定の温度と時間で(通常は、室温付近)で処理することにより不動態膜を形成させる不動態化処理を行っても良い。
具体的には、(NH101241・5HOを、有機媒体(例えば、エタノール等のアルコール類、アセトン等のカルボニル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン等の炭化水素類、塩化メチレン等の塩化物類)、或いは水性媒体(例えば、水等)に溶解し、必要であれば完全溶解のためHClを所望の量を添加し、あるいはスラリー状にし、これにカーボンブラック等の基体を所定量混合し、所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)放置した後、溶媒を蒸留等により除去する。必要であれば、アルゴン等の不活性ガス流通下、所定の温度(通常100℃以上、好ましくは200℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱により乾燥する。その後、NHを含む不活性ガス流通下(通常10%以上、好ましくは30%以上、100%以下、或いは90%以下のNH濃度。高濃度であれば焼成時間は短くなるが、安全上濃度を下げても良い。)で所定の温度(通常300℃以上、好ましくは400℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱することにより窒化タングステンを生成させると共に基体に担持させることができる。なお、この加熱においては、所定の温度(通常室温以上、好ましくは100℃以上、通常600℃以下、好ましくは400℃以下)から所定の速度(通常10℃/hr以上、好ましくは20℃/hr以上、通常600℃/hr以下、好ましくは400℃/hr以下)で所定の温度(通常300℃以上、好ましくは400℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下)まで昇温により加熱を行っても良い。
次に、窒化タングステンを所定の炭化水素ガス(通常はメタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、好ましくはメタン、エタン、エチレン)或いはそれらの混合ガスと水素ガス流通下(通常、混合ガス中の炭化水素ガスの混合割合は通常5%以上、好ましくは10%以上、通常90%以下、好ましくは30%以下)、所定の温度(通常500℃以上、好ましくは600℃以上、通常1000℃以下、好ましくは900℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱することにより、炭化タングステンが基体に被着されてなる燃料電池用触媒が生成する。なお、この加熱においては、上記のように所定の温度(通常室温以上、好ましくは100℃以上、通常600℃以下、好ましくは400℃以下)から所定の速度(通常10℃/hr以上、好ましくは20℃/hr以上、通常600℃/hr以下、好ましくは400℃/hr以下)で所定の温度(通常500℃以上、好ましくは600℃以上、通常1000℃以下、好ましくは900℃以下)まで昇温により加熱を行っても良い。更に、低酸素濃度(例えば、5重量%以下、中でも2重量%以下程度の酸素濃度)の不活性ガス雰囲気中で、所定時間(通常数10分以上、好ましくは30分以上、通常10時間以下、中でも5時間以下)で、所定の温度(通常は、室温付近)で処理することにより不動態膜を形成させる不動態化処理を行うことができる。
また、WO、その他のタングステン化合物をカーボンブラック等の担体と所定量物理混合し、必要な場合、酸素含有ガス流通条件下、所定の温度(通常100℃以上、好ましくは200℃以上、通常1500℃以下、好ましくは1000℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱した後、上記と同様に、NHを含む不活性ガス流通下で加熱することにより窒化タングステンを生成させると共に基体に担持させることができる。この加熱は、昇温により行っても良い。次に、上記と同様に、炭化水素ガスと水素流通下、所定の温度と所定の時間で加熱することにより炭化タングステンが基体に被着されてなる燃料電池用触媒が生成する。この加熱は、昇温により行っても良い。更に、所望の低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中で、所定の温度と時間で(通常は、室温付近)で処理することにより不動態膜を形成させる不動態化処理を行っても良い。
[6]他の触媒成分を含む触媒の製造
他の触媒成分を含む本発明の燃料電池用触媒を製造する場合、炭化タングステンの合成過程において他の触媒成分或いは他の触媒成分を生成する物質(以下「他の触媒成分源」と称す。)を付与するタイミングについては特に制限はないが、通常は、次のような方法が採用される。
(1) 原料化合物或いは原料化合物と基体との混合物に他の触媒成分又は他の触媒成分源を混合した後、原料化合物の前駆化合物への転化反応を行い、その後更に前駆化合物の炭化タングステンへの転化反応を行う。更に必要に応じて基体との混合を行う。
(2) 前駆化合物或いは前駆化合物と基体との混合物に他の触媒成分又は他の触媒成分源を混合した後、前駆化合物の炭化タングステンへの転化反応を行う。更に必要に応じて基体との混合を行う。
(3) 炭化タングステン或いは炭化タングステンが基体に被着したものを調製した後に、これに他の触媒成分又は他の触媒成分源を混合した後、所望により更に焼成処理などを施す。
これらの中で、(3)の方法が他の触媒成分が触媒表面に被着する量が多いと期待されるため好適である。
なお、他の触媒成分源としては、前述の遷移金属の酸化物の他、硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩等の無機酸塩、酢酸塩等の有機酸塩、ハロゲン化物、水素化物、カルボニル化合物、アミン化合物、オレフィン配位化合物、ホスフィン配位化合物又はホスファイト配位化合物等が挙げられる。好ましくはハロゲン元素や窒素元素を含まない酸化物、炭酸塩、有機酸塩、カルボニル化合物、オレフィン配位化合物である。
上記(3)の方法を実施する場合、例えば、前記原料化合物を水溶液等の溶媒で溶解した後、基体と共に水溶液等の溶媒に溶解或いは分散させ、溶媒を除去した後、必要であれば、不活性ガス流通下、所望の温度と時間で加熱することにより乾燥させ、その後NH流通下で加熱することにより基体に担持させたWNを得ることができる。更に、炭化水素ガスと水素流通下、所望の温度と時間で加熱することにより炭化タングステンが基体に被着された触媒が生成する。次に得られた触媒を、他の触媒成分源である遷移金属の塩化物等が溶解或いは分散した水溶液等の溶液に加え、所望の時間放置し、溶媒を除去した後、必要であれば、不活性ガス流通下、所望の温度と時間で加熱することにより乾燥させ、その後水素流通下、所望の温度と時間で加熱することにより、他の触媒成分源と炭化タングステンが基体に被着された触媒が生成する。更に、所望の低酸素濃度の不活性ガス雰囲気中で、所定の温度と時間で(通常は、室温付近)で処理することにより不動態膜を形成させる不動態化処理を行っても良い。
より具体的には、前記方法により合成された、基体に担持させたWN触媒を、RuClが溶解或いはスラリー状になっている有機媒体(例えば、エタノール等のアルコール類、アセトン等のカルボニル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン等の炭化水素類、塩化メチレン等の塩化物類)、或いは水性媒体(例えば、水等)に、所定量混合し、所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)放置した後、溶媒を蒸留等により除去する。必要であれば、アルゴン等の不活性ガス流通下、所定の温度(通常100℃以上、好ましくは200℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱により乾燥する。次に、水素ガス流通下、所定の温度(通常100℃以上、好ましくは200℃以上、通常1000℃以下、好ましくは900℃以下)で所定の時間(通常10分以上、好ましくは30分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下)加熱することにより、炭化タングステン及びRuが基体に被着された燃料電池用触媒が生成する。なお、この水素流通による還元過程においては、所定の温度(通常室温以上、好ましくは100℃以上、通常600℃以下、好ましくは400℃以下)から所定の速度(通常10℃/hr以上、好ましくは20℃/hr以上、通常600℃/hr以下、好ましくは400℃/hr以下)で所定の温度(通常200℃以上、好ましくは300℃以上、通常1000℃以下、好ましくは900℃以下)まで昇温により加熱を行っても良い。更に、低酸素濃度(例えば、5重量%以下、中でも2重量%以下程度の酸素濃度)の不活性ガス雰囲気中で、所定時間(通常数10分以上、好ましくは30分以上、通常10時間以下、中でも5時間以下)で、所定の温度(通常は、室温付近)で処理することにより不動態膜を形成させる不動態化処理を行うことができる。
また、Pdを併用する場合にはRuClの替わりにPdClを用い、またPtを併用する場合にはHPtClを用い、前記方法により合成された、基体に担持させたWN触媒を、PdCl或いはHPtClが溶解或いはスラリー状になっている有機媒体(例えば、エタノール等のアルコール類、アセトン等のカルボニル類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、トルエン等の炭化水素類、塩化メチレン等の塩化物類)、或いは水性媒体(例えば、水等)に、所定量混合し、以下、Ruの場合と同様の方法によりPd或いはPtを含む触媒を調製することができる。
[7]触媒の表面処理
本発明の触媒を水素流通下で加熱して還元処理を行うことにより、触媒活性を更に向上させることができる。これは触媒表面に付着した活性の無い炭素層がCH等として除去され、活性なWC表面が露出すること等に因る。
流通させる水素は、水素のみで流通させても良いし、アルゴン或いは窒素等の不活性ガスと共に流通させても良い。流通させる水素は通常1mL/min.以上、好ましくは5mL/min.以上、通常500mL/min.以下、好ましくは400mL/min.以下供給するのが好ましい。流通させる水素が上記下限より少ないと、触媒表面に付着した活性の無い炭素層の除去が進行し難くなり、上記上限より高いと反応に供しない水素ガスの量が増えるので当該処理にとっては好ましくない。
処理温度は、触媒の粒径や、付着した炭素層の性質に依るが、通常100℃以上、好ましくは200℃以上、通常1200℃以下、好ましくは1000℃以下とされる。この処理温度が上記下限より低いと、触媒表面に付着した活性の無い炭素層の除去が進行し難くなり、上記上限より高いと触媒であるWC自体からの炭素の脱離が進行し、触媒活性が低下する。
処理時間は処理温度によっても異なるが、通常5分以上、好ましくは10分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下とされる。この処理時間が上記下限よりも短いと反応が完全には進行し難くなり、上限より長いと活性の高い触媒が得にくくなる。
また、本発明の触媒を水酸化ナトリウム水溶液やアンモニア水等のアルカリ溶液と接触させることにより、触媒活性を向上させることもできる。これは触媒表面に存在する不活性なWO層が減少すること等に因る。
このアルカリ処理は、触媒をアルカリ溶液に投入して還流条件下に保持することにより行うことが好ましく、その処理時間は用いたアルカリの種類等によっても異なるが、通常5分以上、好ましくは10分以上、通常50時間以下、好ましくは30時間以下とされる。この処理時間が上記下限よりも短いと反応が完全には進行し難くなり、上限より長いと活性の高い触媒が得にくくなる。
更に、上記還元処理と、このアルカリ処理とを組み合わせて行うことにより、より高活性なWC触媒を得ることができる。
[燃料電池用電極及び燃料電池]
本発明の燃料電池用電極は、上記した本発明の燃料電池用触媒を含有することを特徴とする。また、本発明の燃料電池は、このような本発明の燃料電池用電極を用いたことを特徴とする。
本発明に係る燃料電池とは、前述の如くアノードに燃料、カソードに酸化剤を供給しアノードとカソード間の電位差を電圧として取り出し、負荷に供給する発電装置であり、アノード極とカソード極とその間に挟まれた電解質で構成され、固体高分子型燃料電池においては、電解質としてイオン交換膜が用いられている。即ち、電解質としてのイオン交換膜の両面に触媒層が形成され、該触媒層の外側にそれぞれアノードガス拡散層及びカソードガス・燃料拡散層が一体に形成されてなる電解質膜/電極接合体とされている。電解質膜/電極接合体はその拡散層側に隔壁板が配置され、この隔壁板、電解質膜/電極接合体及び隔壁板の単位セルが、用途に応じた所望の電圧になるまで、数十セルから数百セル積層されて燃料電池が構成されている。
本発明においては、この電解質膜/電極接合体の触媒層を形成する触媒として、前述の本発明の燃料電池用触媒を用いる。
電解質としてのイオン交換膜は、カチオン交換能があれば良いが、実用上、燃料電池の使用温度である80〜100℃程度での酸化還元雰囲気に長期に耐えることが望まれることから、パーフルオロアルキルスルホン酸樹脂がもっぱら用いられている。具体的には、ナフィオン(デュポン社製登録商標)、フレミオン(旭硝子社製登録商標)、Aciplex(旭化成社製登録商標)等のパーフルオロアルキルスルホン酸樹脂膜が挙げられる。
イオン交換膜の厚みとしては、10μm程度以上、数100μm程度以下のものが用いられるが、電気抵抗を下げるためにはより薄くすることが望ましい。ナフィオンを例に取ると、厚み120μm程度のナフィオン115がよく使用されるが、補強材を入れて30〜50μmの電解質が開発され始めており、これらのものも同様に用いることができる。
拡散層の構成材料としては、アノードでは水素、カソードでは、空気を供給すると共に、発生した電圧を取り出すための集電体としての機能も併せ持つものであるため、優れた電子伝導体でかつ水素、空気の両ガスが通流し、かつ使用雰囲気に耐える材料が選択される。アノード燃料拡散層及びカソードガス・燃料拡散層を構成する材料としては、厚みが、通常100〜500μm、好ましくは100〜200μm程度の、カーボンペーパー、カーボンクロス等のカーボン多孔体が用いられる。
電解質膜/電極接合体を燃料電池に用いる際には、その背後に水素と空気が混合しないように、通常、カーボン、場合によってはステンレス、チタン等の材料でできた隔壁板が配置されるが、この隔壁板には、水素と空気の均一かつ安定供給を目的とした溝を形成したものを用いることが一般的である。
本発明の燃料電池用触媒を用いて触媒層を形成することにより燃料電池の電解質膜/電極接合体を作製する方法としては特に制限はないが、例えば次のような方法が挙げられる。
カソード側触媒層及びアノード側触媒層を作製する方法については、特に制限はないが、例えば、下記のようにして作製できる。まず、炭化タングステンを基体に被着させてなる本発明の燃料電池用触媒を、適当な容器に入れ、アルコール、水等の媒体に分散させ触媒スラリーを調製する。この際に分散を良好に進行させるために、超音波振動をかける方がより好ましい。この触媒スラリー中の本発明の燃料電池用触媒濃度は、所望の分散性を得るために、1〜50g/L程度であるのが好ましい。また、撥水性を持たせたい、触媒層の剥がれを防ぎたい、等の目的でポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のバインダーをスラリー中に3〜30重量%程度の範囲で加えることは勿論可能である。また、内容物を凝集させて、ペースト化したい場合、エタノール、イソプロピルアルコールといった炭素数2〜5、好ましくは炭素数2〜4程度の低級アルコールを水に対して0.25〜1.0の比になるように加えて凝集させることもできる。
このようにして得られる触媒スラリーを乾燥して電解質膜/電極接合体のカソード側触媒層及びアノード側触媒層を形成すれば良いが、その方法としては、例えば、触媒層をイオン交換膜上に形成してからガス・燃料拡散層材と積層する方法と、触媒層をガス・燃料拡散層材上に形成してからイオン交換膜と積層する方法が挙げられる。
カソード側触媒層及びアノード側触媒層は具体的には、それぞれ次のような方法でイオン交換膜上、又は、ガス拡散電極材上に形成される。
(1) 用いるイオン交換膜に吹き付けて乾燥する。
(2) カーボンペーパー等のガス拡散電極材に触媒スラリーを吹き付けて乾燥する。
(3) テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)フィルム等の転写用フィルム材上に触媒スラリーを吹き付けて(展開処理)乾燥し、転写用フィルム面と反対側の面をナフィオン等の所望のイオン交換膜上に適宜圧接して触媒層を転写する。
(4) (3)におけるのと同様に、FEPフィルム上に触媒スラリーを展開処理した後、スラリー上にカーボンペーパー等のガス拡散電極材を被せて乾燥する。
カソード側触媒層及びアノード側触媒層は共に、炭化タングステン付着量(目付量)として、通常0.5mg/cm以上、好ましくは1mg/cm以上、数g/cm以下、好ましくは1g/cm以下程度の量となるように形成するのが好ましい。この炭化タングステン付着量が上記下限よりも少ないと充分な触媒活性を得ることができず、上記上限よりも多いと電解質膜/電極接合体が形成し難くなる。
上記カソード側触媒層及びアノード側触媒層の各形成工程後、予備的な加圧成型を適宜行った後、最終的な電解質膜/電極接合体、即ち、イオン交換膜の片側の面に上記したカソード側触媒層が形成され、該イオン交換膜の反対側の面に、アノード側触媒層を、更に、両触媒層の外側にそれぞれアノード及びカソードを構成するガス・燃料拡散層が積層されるように、プレス機を用いて加圧加熱成形して、電解質膜/電極接合体が作製される。
なお、予備的な加圧成形の条件としては、触媒層の崩壊を防げる範囲で後に行う本成形の条件より温度、圧力は低く、時間は短く設定するのが好ましい。それは、触媒粒子、ガス・燃料拡散層用多孔体の圧縮破壊を起こさないためである。
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例において、作製したアノード電極の性能(触媒活性)は、下記のサイクリックボルタンメトリー(CV)測定により行った。
[CV測定]
サイクリックボルタンメトリー(CV)測定は、電解槽に密封性を保ち得る栓を用い、電解液中に窒素又は水素をバブリングしつつ、水素は供給律速になっていない条件で行った。なお、測定に先立ち不動態化処理されているWC等の触媒成分の表面酸素を除去すべく、−0.99Vで1000秒間印加処理を行った。測定条件は以下の通りである。
電解液:1.0M HSO水溶液
走査速度:10mV/秒
走査範囲:0〜900mV
カウンター電極:Pt
比較電極:標準水素電極(SHE)
電極の電位を標準水素電極に対して貴にすると、作用電極とPt対極の間に
=2H+2e
による水素の酸化電流が流れるのが認められる。貴の方向に走査した時に450mV(SHE基準)の時に流れる電流値を測定し、測定された電流値を触媒に含まれるWC或いはWCとRuの単位重量(1g)当たりの電流値に換算したもので触媒活性を評価した。
[実施例1]
<WCの合成>
キシダ化学製WO1.0gを石英製焼成管に入れ、NHガス30ml/min.の気流下、300〜630℃まで7hrかけて49℃/hrの昇温速度で昇温し、更に630℃で0.5hr保持して還元、窒化してWNの黒色粉末を得た。このようにして得られたWN1.0gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、777℃で6hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
なお、用いた原料化合物のWOの粒径(平均粒径)はおよそ250nmであった。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.649゜、35.801゜、48.251゜、65.598゜にピークを与えた)。また、48.251゜のピークの半値幅は1.888゜であった。
<アノード電極の作成>
得られたα−WC粉末20mgとカーボンブラック(VULCAN XC−72R(Cabot社製、比表面積(BET)254m/g))80mgを乳鉢で混合し、その42.41mgをエタノール5mLに混合し、超音波洗浄器で充分撹拌した後、マイクロシリンジでα−WCが0.30mg/cmとなるように作用電極であるグラッシーカーボン電極に滴下し、放置により乾燥した。次に、デュポン社のナフィオン膜を溶媒に溶解した市販のナフィオン液を滴下し、放置により乾燥し、その後更に真空下で乾燥することによりアノード電極とした。
このアノード電極についてCV測定を行い、触媒活性の評価結果を表2に示した。
[実施例2]
実施例1で用いたものと同一のα−WC粉末135mgと、同一のカーボンブラック15mgを乳鉢で混合し、その47.1mgをエタノール5mLに混合した他は実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.30mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例3]
<WCの表面処理>
実施例1で用いたものと同一のα−WC粉末500mgを石英製焼成管に入れ、Hガスの50ml/min.の気流下、400℃で3hr還元処理を行った。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.649゜、35.801゜、48.251゜、65.598゜にピークを与えた)。また、48.251゜のピークの半値幅は1.888゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記表面処理を行ったα−WC粉末を用いた他は、実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.30mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例4]
<WCの表面処理>
実施例1で用いたものと同一のα−WC粉末500mgを1N NaOH水溶液25mlに加え、3時間還流処理を行った。次に、処理したα−WC粉末を石英製焼成管に入れ、水素ガスの50ml/min.の気流下、400℃で2hr還元処理を行った。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.404゜、35.699゜、48.400゜、65.550゜にピークを与えた)。また、48.400゜のピークの半値幅は1.799゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記表面処理を行ったα−WC粉末を用いた他は、実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.30mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例5]
<WCの合成>
キシダ化学製WO1.0gを石英製焼成管に入れ、NHガス30ml/min.の気流下、300〜680℃まで7hrかけて54℃/hrの昇温速度で昇温し、更に680度で0.5hr保持して還元、窒化してWNの黒色粉末を得た。このようにして得られたWN1.0gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、777℃で6hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.552゜、35.699゜、48.400゜、65.157゜にピークを与えた)。また、48.400゜のピークの半値幅は1.912゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例2において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例2と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が3.00mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例6]
<WCの合成>
アルドリッチ社製のWO1.0g(カタログ番号23,278−5)を石英製焼成管に入れ、NHガス30ml/min.の気流下、300〜680℃まで7hrかけて54℃/hrの昇温速度で昇温し、更に680度で0.5hr保持して還元、窒化してWNの黒色粉末を得た。このようにして得られたWN1.0gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、777℃で2hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.548゜、35.848゜、48.498゜、65.247゜にピークを与えた)。また、48.498゜のピークの半値幅は1.722゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.30mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例7]
<WCの合成>
アルドリッチ社製のWO1.0g(カタログ番号23,278−5)を石英製焼成管に入れ、アルゴン80ml/min.、H2 20ml/min.、HSガス20ml/min.の気流下、昇温して850℃で2.0hr処理した。このようにして得られたWS0.3gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、840℃で13hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.356゜、35.552゜、48.202゜、63.944゜にピークを与えた)。また、48.202゜のピークの半値幅は1.493゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.30mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例8]
<WCの合成>
アルドリッチ社製のWO0.5g(nanopowder、カタログ番号55,008−6)を石英製焼成管に入れ、NHガス30ml/min.の気流下、300〜680℃まで7hrかけて54℃/hrの昇温速度で昇温し、更に680℃で0.5hr保持して還元、窒化してWNの黒色粉末を得た。このようにして得られたWN0.5gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、777℃で6hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
なお、用いた原料化合物のWOの粒径(平均粒径)はおよそ50nmであった。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.452゜、35.602゜、48.201゜、65.098゜にピークを与えた)。また、48.201゜のピークの半値幅は1.569゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.30mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例9]
<WCの合成>
アルドリッチ社製のWO0.6g(nanopowder、カタログ番号55,008−6)を石英製焼成管に入れ、アルゴン80ml/min.、HSガス20ml/min.の気流下、昇温して800℃で2.5hr焼成した。このようにして得られたWS0.3gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、840℃で17hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.550゜、35.502゜、48.301゜、63.945゜にピークを与えた)。また、48.301゜のピークの半値幅は1.846゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.30mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例10]
<WCの合成>
アルドリッチ社製のWO1.0g(nanopowder、カタログ番号55,008−6)を石英製焼成管に入れ、アルゴン80ml/min.、Hガス20ml/min.、HSガス20ml/min.の気流下、昇温して850℃で2.0hr処理した。このようにして得られたWS0.3gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、840℃で8hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.451゜、35.647゜、48.199゜、64.389゜にピークを与えた)。また、48.199゜のピークの半値幅は1.507゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.30mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例11]
<WCの合成>
ガラス製コルベにアルドリッチ製W(CO)4.22g、キシダ製S0.832g、溶媒としてキシレン80mlを入れ、撹拌しながら4時間還流したところ、黒色の粒子が沈殿してきた。反応終了後、沈殿物を濾過により採取し、更に未反応のW(CO)を除くために沈殿物を60mlのCHCNで2時間還流した後、熱濾過を行った。得られた沈殿物を最終的にアルゴン気流下、350℃で3時間加熱処理を行いWSを取得した。このようにして得られたWS0.3gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、810℃で24hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.499゜、35.654゜、48.252゜、65.101゜にピークを与えた)。また、48.252゜のピークの半値幅は1.187゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.30mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例12]
<WCの合成>
ガラス製コルベにアルドリッチ製W(CO)4.22g、キシダ製S0.832g、溶媒としてキシレン80mlを入れ、撹拌しながら4時間還流したところ、黒色の粒子が沈殿してきた。反応終了後、沈殿物を濾過により採取し、更に未反応のW(CO)を除くために沈殿物を60mlのCHCNで2時間還流した後、熱濾過を行った。得られた沈殿物を最終的にアルゴン気流下、350℃で3時間加熱処理を行いWSを取得した。このようにして得られたWS0.5gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、840℃で11hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.613゜、35.525゜、48.186゜、63.854゜にピークを与えた)。また、48.186゜のピークの半値幅は2.205゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例2において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例2と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が3.00mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例13]
<WCの合成>
ガラス製コルベにアルドリッチ製W(CO)4.22g、キシダ製S0.832g、溶媒としてキシレン80mlを入れ、撹拌しながら4時間還流したところ、黒色の粒子が沈殿してきた。反応終了後、沈殿物を濾過により採取し、更に未反応のW(CO)を除くために沈殿物を60mlのCHCNで2時間還流した後、熱濾過を行った。得られた沈殿物を最終的にアルゴン気流下、350℃で3時間加熱処理を行いWSを取得した。このようにして得られたWS0.5gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、900℃で7hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.500゜、35.501゜、48.200゜、63.849゜にピークを与えた)。また、48.200゜のピークの半値幅は1.912゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例2において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例2と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.75mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例14]
<WCの合成>
アルドリッチ製W(CO)(CHCN)0.6gを石英製焼成管に入れ、NHガスの30ml/min.の気流下、200〜500℃まで5hrかけて60℃/hrの昇温速度で昇温し、更に500℃で2hr保持して還元、窒化してWNの黒色粉末を得た。このようにして得られたWN0.3gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスを70ml/min.の気流下、777℃で6hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.401゜、35.551゜、48.248゜、62.027゜、64.761゜にピークを与えた)。また、48.248゜のピークの半値幅は1.760゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末20mg、同一カーボンブラック80mgを乳鉢で混合し、その35.3mgをエタノール5mLに混合し、他は実施例1におけると同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.10mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例15]
<WCの合成>
キシダ化学製WCl0.7gを石英製焼成管に入れ、NHガス30ml/min.の気流下、300〜630℃まで5hrかけて66℃/hrの昇温速度で昇温し、更に630℃で0.5hr保持して還元、窒化してWNの黒色粉末を得た。このようにして得られたWN0.3gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、777℃で2hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.643゜、35.649゜、48.246゜、64.725゜にピークを与えた)。また、48.246゜のピークの半値幅は1.876゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.30mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表2に示した。
[実施例16]
<WCの合成>
アルドリッチ製(NHWS0.5gを石英製焼成管に入れ、チオフェンを充填したガラス反応管に25ml/min.のHガスをバブルしながら、チオフェンを同伴させて焼成管にHガスを導入しながら600℃、0.5hr反応させた。得られたWSを石英焼成管に入れCH/H(2/8)のガス70ml/min.気流中、840℃、8hr焼成炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.405゜、35.548゜、48.298゜、63.906゜にピークを与えた)。また、48.298゜のピークの半値幅は2.105゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.30mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[実施例17]
<WC−Ruの合成>
実施例1で得られたWC0.4gに、NEケムキャト製RuCl1.04gを10mlの脱塩水に溶解して調製した触媒液を1ml及び5mlの脱塩水を加え一昼夜放置した後、エバポレータで水を除去した。乾固物をアルゴン気流下200℃で、3hr乾燥した。室温に冷却後、アルゴンから水素に切り替え350℃で1.5hr還元した。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.499゜、35.652゜、48.348゜、64.511゜、65.500゜にピークを与えた)。また、48.348゜のピークの半値幅は1.761゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたRuを被着したα−WC粉末20mg、同一カーボンブラック80mgを乳鉢で混合し、その35.3mgをエタノール5mLに混合し、他は実施例1におけると同様な方法により、電極へのRuが被着したα−WC担持量が0.10mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[実施例18]
<WC−Pdの合成>
実施例1で得られたWC0.4gに、NEケムキャト製PdCl0.89gを10mlの脱塩水に溶解して調製した触媒液を1ml及び5mlの脱塩水を加え一昼夜放置した後、エバポレータで水を除去した。乾固物をアルゴン気流下200℃で、3hr乾燥した。室温に冷却後、アルゴンから水素に切り替え350℃で1.5hr還元した。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.595゜、35.895゜、40.151゜(Pd)、46.702°(Pd)、48.303°、65.097゜、68.202°(Pd)にピークを与えた)。また、48.303゜のピークの半値幅は1.722゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたPdを被着したα−WC粉末10mgと同一のカーボンブラック90mgを乳鉢で混合し、得られた混合物10mgと同一のカーボンブラック90mgを再度乳鉢で混合し、その28.3mgをエタノール5mLに混合し、他は実施例1におけると同様な方法により、電極へのPdが被着したα−WC担持量が0.01mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[実施例19]
<WC−Ptの合成>
実施例1で得られたWC0.4gに、NEケムキャト製HPtCl1.70gを10mlの脱塩水に溶解して調製した触媒液を1ml及び5mlの脱塩水を加え一昼夜放置した後、エバポレータで水を除去した。乾固物をアルゴン気流下200℃で、3hr乾燥した。室温に冷却後、アルゴンから水素に切り替え350℃で1.5hr還元した。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.502゜、35.750゜、39.801゜(Pt)、46.349°(Pt)、48.204°、65.251゜、67.511°(Pt)にピークを与えた)。また、48.204゜のピークの半値幅は1.800゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1において用いたα−WC粉末の替わりに、上記合成方法で得られたPtを被着したα−WC粉末10mgと同一カーボンブラック90mgとを乳鉢で混合し、得られた混合物10mgと同一のカーボンブラック90mgを再度乳鉢で混合し、その28.3mgをエタノール5mLに混合し、他は実施例1におけると同様な方法により、電極へのPtが被着したα−WC担持量が0.01mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[実施例20]
<WC−Ruの合成>
実施例1で合成されたα−WCの代わりに、実施例13で合成されたα−WCを用いた他は、実施例17と同様な方法によりRuを被着したα−WCを得た。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.649゜、35.600゜、48.199゜、63.753゜にピークを与えた)。また、48.199゜のピークの半値幅は1.876゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例17において用いたRuを被着したα−WCの代わりに、上記合成方法で得られたRuを被着したα−WCを用いた他は、実施例17と同様な方法により、電極へのRuが被着したα−WC担持量が0.10mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[実施例21]
<WC−Pdの合成>
実施例1で合成されたα−WCの代わりに、実施例13で合成されたα−WCを用いた他は、実施例18と同様な方法によりPdを被着したα−WCを得た。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.404゜、35.449゜、40.153゜(Pd)、46.802°(Pd)、48.250°、65.555゜、68.157°(Pd)にピークを与えた)。また、48.250゜のピークの半値幅は2.220゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例18において用いたPdを被着したα−WCの代わりに、上記合成方法で得られたPdを被着したα−WCを用いた他は、実施例18と同様な方法により、電極へのPdが被着したα−WC担持量が0.01mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[実施例22]
<WC−Ptの合成>
実施例1で合成されたα−WCの代わりに、実施例13で合成されたα−WCを用いた他は、実施例19と同様な方法によりPtを被着したα−WCを得た。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.551゜、35.452゜、39.899゜(Pt)、46.400°(Pt)、48.150°、63.703゜、67.555°(Pt)にピークを与えた)。また、48.150゜のピークの半値幅は2.105゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例19において用いたPtを被着したα−WCの代わりに、上記合成方法で得られたPtを被着したα−WCを用いた他は、実施例19と同様な方法により、電極へのPtが被着したα−WC担持量が0.01mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[実施例23]
<WC−Ruの合成>
実施例1で合成されたα−WCの代わりに、実施例16で合成されたα−WCを用いた他は、実施例17と同様な方法によりRuを被着したα−WCを得た。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.405゜、35.548゜、48.298゜、63.906゜にピークを与えた)。また、48.298゜のピークの半値幅は2.105゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例17において用いたRuを被着したα−WCの代わりに、上記合成方法で得られたRuを被着したα−WCを用いた他は、実施例17と同様な方法により、電極へのRuが被着したα−WC担持量が0.10mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[実施例24]
<WC−Ptの合成>
実施例1で合成されたα−WCの代わりに、実施例16で合成されたα−WCを用いた他は、実施例19と同様な方法によりPtを被着したα−WCを得た。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.405゜、35.548゜、48.298゜、63.906゜にピークを与えた)。また、48.298゜のピークの半値幅は2.105゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例19において用いたPtを被着したα−WCの代わりに、上記合成方法で得られたPtを被着したα−WCを用いた他は、実施例19と同様な方法により、電極へのPtが被着したα−WC担持量が0.01mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[比較例1]
<WCの合成>
キシダ化学製WO1.2gを石英製焼成管に入れ、CH/H(混合比2/8)の混合ガスの70ml/min.の気流下、877℃で6hr還元、炭化してα−WCの黒色粉末を得た。室温に冷却後、アルゴンガスに焼成管内を置換後2%O−98%N混合ガスで1.5hr不動態化して空気中に取り出した。
この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.404゜、35.652゜、48.254゜、64.278゜にピークを与えた)。また、48.254゜のピークの半値幅は0.570゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例1で用いたα−WC粉末の代わりに上記合成方法で得られたα−WC粉末を用いた他は、実施例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.75mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[比較例2]
比較例1と同一のα−WC粉末135mgと同一のカーボンブラック15mgを乳鉢で混合し、その47.1mgをエタノール5mLに混合し、他は比較例1と同様な方法により、電極へのα−WC担持量が0.75mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[比較例3]
<WC−Ruの合成>
実施例1で合成されたα−WCの代わりに、比較例1で合成されたα−WCを用いた他は、実施例17と同様な方法によりRuを被着したα−WCを得た。この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.400゜、35.648゜、40.311゜、48.299゜、63.777゜、64.153゜にピークを与えた)。また、48.299゜のピークの半値幅は0.624゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例17において用いたRuを被着したα−WCの代わりに、上記合成方法で得られたRuを被着したα−WCを用いた他は、実施例17と同様な方法により、電極へのRuが被着したα−WC担持量が0.10mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[比較例4]
<WC−Pdの合成>
実施例1で合成されたα−WCの代わりに、比較例1で合成されたα−WCを用いた他は、実施例18と同様な方法によりPdを被着したα−WCを得た。この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.400゜、35.649゜、40.305゜(Pd)、46.608゜(Pd)、48.254゜、58.349゜、64.297°、65.393°、68.376°(Pd)にピークを与えた)。また、48.254゜のピークの半値幅は0.562゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例18において用いたPdを被着したα−WCの代わりに、上記合成方法で得られたPdを被着したα−WCを用いた他は、実施例18と同様な方法により、電極へのPdが被着したα−WC担持量が0.01mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
[比較例5]
<WC−Ptの合成>
実施例1で合成されたα−WCの代わりに、比較例1で合成されたα−WCを用いた他は、実施例19と同様な方法によりPtを被着したα−WCを得た。この化合物はXRD分析により、α−WC構造を有していることを確認した(2θの値は31.401゜、35.605゜、39.800゜(Pt)、40.342゜、46.253゜(Pt)、48.254゜、58.311°、64.350°、67.690°(Pt)にピークを与えた)。また、48.254゜のピークの半値幅は0.566゜であった。
<アノード電極の作成>
実施例19において用いたPtを被着したα−WCの代わりに、上記合成方法で得られたPtを被着したα−WCを用いた他は、実施例19と同様な方法により、電極へのPtが被着したα−WC担持量が0.01mg/cmとなるようにアノード電極を作成し、同様に評価を行って結果を表3に示した。
Figure 0004815823
Figure 0004815823
表2,3より明らかなように、各実施例のうち、WNを経由して合成された実施例1〜6、8、14,15のWC、WSを経由して合成された実施例7,9〜13、16のWCは、WOから合成された比較例1,2のWCに比べて、48.186゜〜48.498゜のピークの半値幅が広く、また、明らかに高い触媒活性を示している。また、WNから合成したWCにRuを更に担持した実施例17、WSから合成したWCにRuを更に担持した実施例20、23のWCの半値幅は、WOから合成したWCにRuを担持した比較例3のWCの半値幅よりも広く、触媒活性も明らかに向上している。また、WNから合成したWCにPd或いはPtをそれぞれ更に担持した実施例18及び19並びにWSから合成したWCにPd或いはPtをそれぞれ更に担持した実施例21及び22、24のWCの半幅値は、WOから合成したWCにPd或いはPtをそれぞれ担持した比較例4,5のWCの半幅値よりも広く、触媒活性も明らかに向上している。
実施例1〜24より、WN、WS等を経由して合成された特定のXRD条件を満たすWCを用いる本発明の燃料電池用触媒によれば、高い触媒活性が得られることが分かる。
更に、実施例17〜24より、Ru、Pd或いはPt等の他の触媒成分を併用することにより、触媒活性をより一層高めることができることが分かる。
実施例1と実施例3を比較することにより、水素ガス気流下で加熱することにより還元処理を行うと活性が向上することが分かる。また実施例3と実施例4を比較することにより、当該還元処理に加えてNaOH水溶液に接触させることにより、活性が更に向上することが分かる。
実施例1と実施例8を比較することにより、粒径がおよそ50nmの原料化合物WOを用いて調整したWCの方が、粒径がおよそ250nmの原料化合物WOを用いて調整したWCより活性が高いことが分かる。
本発明によれば、安価な燃料電池用触媒を用いた燃料電池が提供されるため、燃料自動車等の燃料電池の用途の拡大と実用化が促進される。

Claims (9)

  1. X線回折法(Cu−Kα線)による回折角2θ(±0.3゜)が40゜以上60゜以下の領域における最大回折ピークの半値幅が、1.0゜以上、16.5°以下である炭化タングステンを含有する燃料電池用触媒であって、
    該炭化タングステンは、窒化タングステン、及び硫化タングステンからなる群から選ばれる化合物を、炭化タングステンに転化させてなることを特徴とする燃料電池用触媒。
  2. 請求項1に記載の燃料電池用触媒において、該炭化タングステンが基体に被着されてなることを特徴とする燃料電池用触媒。
  3. 請求項1又は2に記載の燃料電池用触媒において、該炭化タングステンの平均粒径が、0.1nm以上1000nm以下であることを特徴とする燃料電池用触媒。
  4. 請求項又はに記載の燃料電池用触媒において、該基体が炭素系基体であることを特徴とする燃料電池用触媒。
  5. 請求項に記載の燃料電池用触媒において、該炭素系基体の比表面積が200m/g以上、5000m/g以下であることを特徴とする燃料電池用触媒。
  6. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の燃料電池用触媒において、更に、遷移金属と炭化タングステン以外の遷移金属化合物とからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする燃料電池用触媒。
  7. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の燃料電池用触媒を含有することを特徴とする燃料電池用電極。
  8. 請求項に記載の燃料電池用電極を用いたことを特徴とする燃料電池。
  9. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の炭化タングステンを含有する燃料電池用触媒を製造する方法において、窒化タングステン、及び硫化タングステンからなる群から選ばれる化合物を、炭素系基体の存在下又は不存在下に、炭化水素或いは炭化水素及び水素と接触させて、炭化タングステンに転化させることを特徴とする燃料電池用触媒の製造方法。
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