JP4812462B2 - 炭化硼素質焼結体およびこれを用いた防護部材 - Google Patents

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Description

本発明は、軽量で高い機械的特性を有する炭化硼素質焼結体およびこれを用いた防護部材に関し、特に、銃弾や砲弾等の飛翔体の貫通を防止して人体、車両、船舶、航空機を保護するための防護具に用いられる防護部材に関する。
一般に、炭化硼素質焼結体は、軽量で、高い機械的特性を有する材料として知られている。炭化硼素質焼結体は、この高い機械的特性を活用し、例えば、銃弾等に対する防護部材として使用されている。このような防護部材には銃弾等から大きな圧縮応力がかかるため、圧縮強度が大きいことが求められている。従来の炭化硼素質焼結体としては、例えば、次のようなものが知られている。
特許文献1には、黒鉛を15〜40体積%と、平均粒径が7μmまたは12μmの炭化硼素粉末Xを10体積%以上と、平均粒径が12μmまたは30μmの炭化硼素粉末Yを30体積%以上とを混合した原料を成形型に充填して、温度480〜600℃で加圧成形した後、常圧下2150℃で焼成した炭化硼素質焼結体が記載されている。ここで、炭化硼素粉末Xの平均粒径は、炭化硼素粉末Yの平均粒径の1/2以下とするように、原料粉末XとYの平均粒径のみを限定する旨が記載されている。
また、特許文献2には、炭化硼素(BC)99.5〜70mol%と、窒化アルミニウム(AlN)0.5〜30mol%とからなり、相対密度が95%以上の炭化硼素質焼結体が記載されている。この炭化硼素質焼結体は実施例4で示されているように、例えば次のような製造方法で製造されている。すなわち、平均粒径が0.4μm、最大粒径が2.3μmの炭化硼素粉末に、窒化アルミニウム粉末を10mol%添加し、窒化アルミニウム(AlN)粉末を酸化させにくいメタノール溶媒を用いて原料混合を行い、混合して得られた混合粉体を成形後、焼成炉内の窒素分圧を3.1×10−4MPa以上になるよう窒素ガスを0.006リットル/分以上の流量で継続的に焼成炉に導入する。
また、特許文献3には、炭化硼素(BC)に二硼化クロム(CrB)を10〜25mol%含有し、相対密度が90%以上で、炭化硼素粒子の最大粒子径が100μm以下であり、粒子径5μm以下の炭化硼素粒子に対する10〜100μmの炭化硼素粒子の存在比(面積比)が0.02〜0.6である炭化硼素質焼結体が提案されている。
また、特許文献4には、平均粒径が0.3μm〜1.5μmの炭化硼素粉体を鋳込成形した後に焼結させた炭化硼素質焼結体を構成要素として含む、飛翔体の衝突による衝撃を緩和する防護部材であって、次のような製造方法で得られた炭化硼素質焼結体が提案されている。即ち、平均粒径が0.74μm、比重2.5である炭化硼素粉末(エレクトロシュメルツベルクケンプテン社製)に、所定量のノボラック型フェノール樹脂(比重1.18、昭和高分子(株)製)を添加して、アセトン溶液中で混合した後、アセトンを十分蒸発させてから粉砕して、フェノール樹脂を被覆した炭化硼素粉末を得る。そして、この炭化硼素粉末を25体積%、水75体積%となるように調合し、混合攪拌した後、さらに真空中で撹拌、脱泡して鋳込み成形用のスラリーを得る。このスラリーを石膏型に注入し、排泥鋳込成形を行った後、Arガス中、1200〜2250℃で1時間40分、2250℃で30分保持して焼成する。
特開平6−87654号公報 特開2003−137655号公報 特開2004−26633号公報 特開2002−167278号公報
炭化硼素焼結体の結晶粒径分布は、その機械的特性に大きな影響を及ぼすと考えられる。特に、銃弾等が衝突しても破壊されにくい保護部材として炭化硼素質焼結体を用いる場合には、炭化硼素質焼結体に銃弾等から圧縮応力が加わった際に発生するクラックとその進展を抑制すること、すなわち圧縮強度を大きくすることが求められている。圧縮応力が加わった際に破壊されにくい保護部材とするには、圧縮応力が加わった際に微細な結晶に多数のクラックが発生しても、これらのクラックが進展する際にクラックを大きな結晶で長い距離迂回させて、破壊に至るまでの時間を長くすることで、圧縮強度を大きくする方法が好ましいと考えられる。このため、圧縮強度を大きくするには、焼結体を構成する結晶組織に、微細な結晶と粗大な結晶を適正な割合で混在させて、クラックの進展を抑制することが必要である。
しかしながら、特許文献1〜4に記載された炭化硼素質焼結体は、原料に含まれる炭化硼素粉末の粒径分布は示されておらず、これらの粉末の粒径分布はほぼ均一であるため、得られる炭化硼素質焼結体中の結晶の大きさもほぼ均一となるため、衝撃が加わった際にクラックが進展しやすく、圧縮強度が十分に高いものとすることができないという問題を有している。特に、この炭化硼素質焼結体を防護部材として用いた場合には圧縮強度が十分に高いものとすることができないため、銃弾等のより高い衝撃によりクラックがより生じやすいという問題を有していた。
さらに、特許文献2で提案された炭化硼素質焼結体は、焼成中に窒化アルミニウムが分解しやすいので、緻密な炭化硼素質焼結体を安定して得ることができなかった。
また、特許文献3で提案された炭化硼素質焼結体は、圧縮応力が加わった際にクラックが生じやすい二硼化クロムが粒界に存在するために、特に圧縮強度が小さいという問題があった。
特許文献4で提案された炭化硼素質焼結体は、鋳込み成形法を用いて成形していることから大型で複雑な形状の焼結体を得るのには適しているものの、小型で単純な形状の焼結体、例えば、形状が円柱体、円環体、球体等である焼結体を得るには量産性の点から適していなかった。
本発明は、これら問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量で、圧縮強度の高い機械的特性を有する炭化硼素質焼結体およびこれを用いた防護部材を提供することにある。
本発明の炭化硼素質焼結体は、炭化硼素を主結晶相として、少なくともFeおよびCを含有する相対密度が90%以上の炭化硼素質焼結体であり、該炭化硼素質焼結体を断面視した際の観察面積に対し、結晶粒径10μm以下の炭化硼素の結晶の累計面積比率が50面積%以上であるとともに、結晶粒径20μm以上の炭化硼素の結晶の累計面積比率が5面積%以上であることを特徴とする。
また、さらにアルミニウム、珪素およびイットリウムのいずれかを0.05〜10質量%含有することを特徴とする。
本発明の防護部材は、前記炭化硼素質焼結体を用いた防護部材であって、JIS R 1608−2003による圧縮強度が1.5GPa以上であることを特徴とする。
また、前記防護部材が、上面および下面とこれらの周縁部に沿った側周面とによって囲まれる形状からなり、前記上面および下面の少なくとも一方が外方に向かって凸状の曲面を備えたことを特徴とする。
本発明の炭化硼素質焼結体は、炭化硼素を主結晶相として、少なくともFeおよびCを含有する相対密度が90%以上の炭化硼素質焼結体であり、該炭化硼素質焼結体を断面視した際の観察面積に対し、結晶粒径10μm以下の炭化硼素の結晶の累計面積比率が50面積%以上であるととともに、結晶粒径20μm以上の炭化硼素の結晶の累計面積比率が5面積%以上であることにより、20μm以上の粗大な結晶と10μm以下の微細な結晶が適正な割合で混在した多結晶組織とすることができるため、銃弾や砲弾等の飛翔体の衝突により微細な結晶に発生したクラックが粗大な結晶を回避してクラックの進展が抑制されるので、クラックの進展には大きなエネルギーが必要となり、その結果、圧縮強度を向上させるとともに飛翔体の貫通を防止することができる。
また、アルミニウム、珪素およびイットリウムのいずれかを0.05〜10質量%含有することが好ましい。これにより、焼成中のB(硼素)およびC(炭素)の物質移動が促進されて焼結温度を下げることができるとともに、十分に緻密化した焼結体が得られるので機械的強度を高めることができる。
また、前記炭化硼素質焼結体のJIS R 1608−2003による圧縮強度が1.5GPa以上の防護部材とすることにより、さらに飛翔体に対する耐貫通性能を上げることができる。
また、前記防護部材が、上面および下面とこれらの周縁部に沿った側周面とによって囲まれる形状からなり、前記上面および下面の少なくとも一方が外方に向かって凸状の曲面を備えた防護部材とすることにより、銃弾や砲弾等の飛翔体の貫通をさらに十分に防止できる構造を有する防護部材とすることができるので、人体、車両、船舶、航空機を保護するための防護部材に好適である。
本発明の炭化硼素質焼結体(以下、単に焼結体と称す)は、炭化硼素を主結晶相とし少なくともFeおよびCを含有する相対密度が90%以上の炭化硼素質焼結体であり該炭化硼素質焼結体を断面視した際の観察面積に対し、結晶粒径10μm以下の炭化硼素の結晶の累計面積比率が50面積%以上であるととともに、結晶粒径20μm以上の炭化硼素の結晶の累計面積比率が5面積%以上であることを特徴とするものである。
これにより、20μm以上の粗大な結晶と10μm以下の微細な結晶が適正な割合で混在した多結晶組織とすることができるため、衝撃によりクラックが発生しても、微細な結晶に発生したクラックが粗大な結晶を回避してクラックの進展が抑制されるため、クラックの進展には大きなエネルギーが必要となり、その結果、圧縮強度の高い焼結体とすることができる。特に、この焼結体を、銃弾や砲弾等から防護する防護部材として用いた際、
銃弾や砲弾等の飛翔体の衝突により微細な結晶に発生したクラックが粗大な結晶を回避してクラックの進展が抑制されるので、クラックの進展には大きなエネルギーが必要となり、その結果、圧縮応力を向上させるとともに飛翔体の貫通を防止することができる。この理由は次のように推測される。
一般的に、圧縮応力下では、焼結体中に不規則な方向に存在するクラックの先端から多数の小さなクラックが安定成長し、初めのクラックの進展方向から逸れて圧縮軸と略平行方向に伝播し、多数のクラックがゆっくりと広がって破砕帯を形成した後で破壊が起こる。これに対し、引張応力下では、引張方向と垂直方向に一つのクラックが不安定成長してある瞬間にクラック進展速度が急増して、瞬間的に破壊に至る。したがって、引張応力下では一つの大きなクラックが破壊の進行を律速するのに対して、圧縮応力下では小さな多数のクラックが連結して破壊に至るため、多数のクラックの平均長さとそれらの進展速度が破壊の進行を律速する。
そこで、本発明の焼結体では、圧縮強度を向上させるためには、次のように結晶組織を制御することが重要であることを見出した。即ち、クラックの進展速度が引張応力下のように急速に増大してしまうと、クラックの進展速度を制御することは困難であるが、圧縮応力下においては微細な結晶と粗大な結晶の組み合わせにより、クラック進展を迂回させる効果が引張応力下以上に高くなるので、クラック進展速度をさらに遅くする(クラック進展に要する時間を長くする)効果を有効に得ることができることがわかった。
そこで、このような焼結体の結晶構造として、焼結体を断面視した際の観察面積に対し結晶径10μm以下の炭化硼素の結晶の累計面積比率が50面積%以上であり、結晶粒径20μm以上の炭化硼素の結晶の累計面積比率が5面積%以上であることが重要であることを見出し、焼結体中に存在する初期のクラック長さは結晶の粒径に比例するため、10μm以下の微細な結晶を50面積%以上とすることで、初期の平均クラック長さを十分短くすることが可能となり、同時に、圧縮応力下で進展するクラックを5面積%以上有する20μm以上の粗大な結晶で迂回させることによって進展距離を長くして破壊強度を向上させることが可能となる。
なお、焼結体の結晶粒径は次のようにして測定する。
まず、炭化硼素質焼結体の断面を0.3μm以下のダイヤモンドパウダーで鏡面状態に仕上げた試料を準備する。るつぼにNaOHとKNOの質量比1:1混合物を入れて、るつぼをガスバーナーで加熱してNaOHとKNOを溶解し、この溶解した液に試料を1分以内で浸漬して、試料の粒界をエッチング処理する。エッチング処理した試料を光学顕微鏡で倍率100〜1000倍で観察し、例えば面積50000〜500000μmの鏡面に観察される1000個以上の炭化硼素の結晶粒子の粒径をインターセプト法で測定することによって結晶粒径の分布を求めることができる。例えば、エッチング処理した鏡面の10000μm×800μmの範囲に観察される1000個以上の炭化硼素の結晶粒子の大きさを測定する。また、インターセプト法により測定する結晶粒子は無作為に選定する。
ここで、インターセプト法で測定した焼結体中の炭化硼素の結晶の粒径(μm)の累積面積比率(%)を求めた例を図1に示す。
図1は、2000個の結晶の粒径をインターセプト法で測定し、2000個の結晶の粒径(μm)の和を100%とする。測定した結晶の粒径を小さい順から並べる。すなわち、最小の結晶の粒径をD、次に大きな結晶の粒径をD、さらに次に大きな結晶の粒径をDとし、これを続けてD2000まで順番に表に並べる。ここで、同じ粒径の結晶がある場合は、どの結晶を先に並べてもよい。2000個の結晶の粒径の和(D(n=1〜2000)の和)を100%とした場合の累積面積比率(%)を縦軸、インターセプト法で求めた粒径(μm)を横軸としてグラフにプロットする。グラフにプロットした各点を結ぶことで図1に示すような累積面積比率の曲線が得られる。図1において、結晶粒径10μm以下の炭化硼素の結晶の累計面積比率は71面積%、結晶粒径20μm以上の炭化硼素の結晶の累計面積比率は16面積%である。なお、図1は後述する実施例の試料No.43の累積面積比率を表したものである。
インターセプト法について補足説明する。インターセプト法は、コード法(Chord法)とも呼ばれ、その方法は例えば、Robert H. Gassner, "Decarburizarion and its Evaluation by the Chord Method", Metal Progress, vol.113, No.3, 59-63(1978).や、J.S.Reed, Introduction to the Principles of Ceramic Processing, 2nd ed. Wiley, New York(1995).等に記載されている。本発明では、エッチングした鏡面の写真に直線を引き、この直線が写真上の結晶を横切る場合、結晶を横切る距離をそれぞれの結晶の粒径とみなす。このように測定した結晶の粒径を前記のように累積すると、断面視した面における結晶粒径の分布曲線が得られるので、この分布曲線から前記のように累計面積比率(%)を求めることとしたものである。
焼結体にアルミニウム、珪素、イットリウムおよび鉄などが含まれる場合には、光学顕微鏡では炭化硼素粒子の特定が困難であるため、次のような方法で炭化硼素粒子の粒径を測定することができる。例えば、SEM(走査型電子顕微鏡)の反射電子像により軽元素からなる炭化硼素粒子がアルミニウム、珪素、イットリウムおよび鉄より黒く観察される原理を利用して炭化硼素の結晶粒子を特定して、炭化硼素の結晶粒径を求めてもよい。また、同様にEPMA(波長分散型X線マイクロアナライザー)を用いて硼素(B)と炭素(C)からなる炭化硼素の結晶粒子を特定して、炭化硼素の結晶粒径とその分布を求めてもよい。
また、本発明の炭化硼素質焼結体は、アルミニウム、珪素およびイットリウムのいずれかを0.05〜10質量%含んでいることが好ましい。これにより、焼成中のB(硼素)およびC(炭素)の物質移動が促進されて十分に緻密化した焼結体が得られるので圧縮強度を高めることができる。これらの元素の含有量が0.05質量%未満であると焼成中のBおよびCの物質移動を十分に促進することができないので、圧縮強度を十分に高めることができない。10質量%を超えると前記金属元素が炭化硼素結晶粒子の粒界に多量に存在することになるので、低硬度、低圧縮強度となり、飛翔体が貫通しやすくなるおそれがある。なお、アルミニウム、珪素およびイットリウムのいずれかを0.05〜10質量%含んでいることによって、焼結温度を下げることができる場合があるので、この場合は製造コストを低下させることができる。
なお、焼結体に含有するアルミニウム、珪素、イットリウムおよび鉄等の金属元素は、ICP発光分光分析法によりその含有量を測定でき、また相対密度は、アルキメデス法により測定した密度を理論密度で割った値を100倍したもので表される。理論密度は、炭化硼素成分と、焼結助剤として添加した成分との密度およびこれらの成分比率から求めることができる。ここでフェノール樹脂を添加する場合は、焼成後にグラファイトに変化すると仮定して求めることができる。
特に、本発明の焼結体は、銃弾や砲弾等の飛翔体から防護するための防護部材として好適に用いることができる。これは、銃弾や砲弾等の飛翔体の衝突により圧縮応力が加わって多数のクラックが発生しても、クラックが粗大な結晶を回避してそれらの進展が抑制されるので、クラックの進展には大きなエネルギーが必要となり、このエネルギーが飛翔体の衝突エネルギーの多くを消費させ、その結果、圧縮応力に対して破壊されにくい焼結体とすることができるので、飛翔体の貫通を防止することができるためである。
詳細には、上述のように焼結体を断面視した際の観察面積に対し、結晶粒径10μm以下の炭化硼素の結晶の累計面積比率が50面積%未満であると、初期の平均クラック長さが長くなり、圧縮強度が低下し、結晶粒径20μm以上の炭化硼素の結晶の累計面積比率が5面積%未満であると、クラックの迂回効果が小さくなり、圧縮強度は低下する。このため、飛翔体の貫通を防止することが困難な炭化硼素質焼結体となる。
また、焼結体を防護部材として用いた場合の飛翔体の貫通は次の第1、第2の過程を経て進行すると考えられ、本発明の焼結体を用いた場合には特に第2の過程において、耐破壊性を向上させる効果があると考えられる。
第1の過程として、先ず、高速の飛翔体の衝突直後に、焼結体と飛翔体の両者の変形が生じ、飛翔体の衝突エネルギーの一部が、両者を変形させることで費やされる。焼結体の硬度が高い場合は、衝突した飛翔体が大きく潰れて変形し、その結果、焼結体は広い面積で飛翔体の衝突エネルギーを受けることとなり、焼結体にクラックが発生しにくくなる。焼結体の硬度が低い場合は飛翔体衝突直後に飛翔体が変形しにくくなる結果、衝突エネルギーを減少させることができないだけでなく、飛翔体との衝突面積が小さいままなので焼結体に局部的な応力が発生し、焼結体にクラックが生成しやすくなる。衝突した飛翔体を十分に変形させることができる望ましい焼結体の硬度は、JIS R 1601−2003によるHK1硬度で測定した場合25GPa以上である。また、ボイドを少なくすることで硬度を高めるためには焼結体を緻密にすることが好ましい
第2の過程として、減少した飛翔体の衝突エネルギーは、焼結体に圧縮応力を生じさせる。圧縮応力下では、上述したように本発明の焼結体は、焼結体を断面視した際の観察面積に対し、結晶粒径10μm以下の微細な炭化硼素の結晶の累計面積比率が50面積%以上であることにより、初期の平均クラック長さを十分小さくすることが可能となり、さらに圧縮応力下で進展するクラックを5面積%以上存在する結晶粒径20μm以上の粗大な炭化硼素の結晶で迂回させることによって進展距離を長くして破壊強度を向上させることが可能となり、防護部材として好適に用いることができる。
また、本発明の防護部材は、その圧縮強度が1.5GPa以上であることが好ましい。圧縮強度は、炭化硼素質の衝突部に対して応力を発生させることができるため、防護部材としての性能評価に適しており、この圧縮強度が1.5GPa以上であると、マイクロクラックの発生およびその進展を特に抑制できるため、飛翔体に対する優れた耐貫通性能を有する保護部材とすることができる。一方、圧縮強度が1.5GPa未満であると、クラックの発生、進展の抵抗力が弱くなるため、耐貫通性能が低下する。さらには、圧縮強度は2GPa以上であることがより好ましい。
また、防護部材として用いられる焼結体は、図2(a)、に示すような円柱体や、同図(b)に示すような円柱体の上面が外方に向かって凸状の曲面となったもの等が用いられ、これら円柱体を例えば、図3に示すように、ポリブチラール・フェノール系の繊維強化プラスチックからなる繊維強化物質2を、バックプレートとしてウレタン系接着剤からなる樹脂3で加圧しながら硬化させて接着し、炭化硼素質焼結体4をバックプレートの中心部に最密充填するよう配置して防護板とすることができる。この防護部材は、図3に示すように、上面および下面とこれらの周縁部に沿った側周面とによって囲まれる形状からなり、前記上面および下面のうち少なくとも一方が外部に向かって凸状の曲面を有するものであることが好ましく、外方に向かって凸状の曲面に飛翔体を衝突させることができることから、飛翔体の飛来方向と防護部材表面の法線との接触角が90°となる確率が大幅に減少することとなり、その結果、飛翔体が防護部材表面を滑るようにしながら衝突し、衝撃エネルギーが緩和され、防護部材にクラックを生じさせにくくすることができる。したがって、銃弾や砲弾等の飛翔体の貫通を十分に防止できる構造を有し、人体、車両、船舶、航空機を十分に保護できる防護部材とすることができる。
なお、防護部材を成す焼結体の圧縮強度は、JIS R 1608−2003に準拠した測定方法、例えば外径(d)=5±0.1mm、高さ(h)=12.5±0.1mmの円柱形状、または、h/dが2.5の円柱形状に加工した後、上面と底面に加圧板を接触させて、加重を負荷し、破壊に至ったときの最大荷重(P)を断面積で除した値(P/(πd/4))で算出することができる。
ここで、本発明の炭化硼素質焼結体の製造方法について説明する。本発明の炭化硼素質焼結体は、少なくとも次の3つの工程を有する製造方法で製造されることが重要である。
第1の工程は、炭化硼素粉末を構成する粒子の累積粒径分布曲線における50体積%相当の粒径をD50、90体積%相当の粒径をD90とするとき、D90/D50が2以上、D90が2μm以上の炭化硼素粉末を準備する工程である。この粉末は、例えば微細な粒子からなる炭化硼素粉末と、粗大な炭化硼素粉末とを混合することで作製することができる。
第2の工程は、前記炭化硼素粉末を成形し、得られる成形体をアルゴンガス中またはHeガス中のいずれか、もしくは真空中で、1800℃以上2200℃未満の範囲内で15分〜10時間保持する工程である。これにより、成形体に含まれる2μm以上の炭化硼素の粒子が次の第3の工程(緻密化工程)で生じる20μm以上の結晶の累積面積比率を5面積%以上とするための粒成長の核となる。1800℃以上2200℃未満の範囲内で1
5分〜10時間保持しないと次のような問題が発生する。保持温度が1800℃未満の場合や、1800℃以上2200℃未満の範囲内での保持時間が15分未満の場合は、成形体に含まれる2μm以上の炭化硼素粒子が、核となって粒成長しないので粗大な結晶が生成せず、その結果、20μm以上の結晶の累積面積比率を5面積%以上にすることができない。保持温度が2200℃よりも高い場合や、1800℃以上2200℃未満の範囲内で保持時間が10時間よりも長い場合は、得られる焼結体の結晶粒径がほぼ揃ったものとなるので、10μm以下の結晶と20μm以上の結晶の累積面積比率をそれぞれ50面積%以上、5面積%以上とすることができない。
第3の工程(緻密化工程)は、前記第2の工程の後、さらに2200℃を超えて2350℃以下で10分〜20時間保持する工程である。これにより、成形体が緻密化するとともに、粗大な粒子が成長して、結晶粒径20μm以上の炭化硼素の結晶の累計面積比率が5面積%以上となる。前記D90/D50が2未満の場合は、得られる焼結体の結晶粒径がほぼ揃ったものとなるので、10μm以下の結晶と20μm以上の結晶の累積面積比率をそれぞれ50面積%以上、5面積%以上とすることができない。また、前記D90が2μm未満であれば20μm以上の結晶の累積面積比率が5面積%未満となる。保持温度が2200℃以下の場合や、2200℃を超えて2350℃以下での保持時間が10分未満の場合は、緻密化が阻害されて硬度が低くなり、例えばHK1硬度が25GPa未満の炭化硼素質焼結体となる。保持温度が2350℃よりも高い場合や、2200℃を超えて2350℃以下での保持時間が20時間よりも長い場合は、粒成長が過度に促進される結果、10μm以下の結晶が50面積%未満となる。ここで、焼結体が緻密であるとは相対密度が90%以上であることをいう。なお、2000℃以上で保持する場合には炭化硼素、添加物成分の分解が生じるので、アルゴンガスまたはHeガス中で保持することが望ましい。
前記第2、第3の工程で成形体を機械的に加圧しながら焼成してもよい。このように加圧しながら焼成する場合は、前記第2および第3の温度範囲を例えば次のように変更してもよい。すなわち、加圧する圧力が10〜50MPaの場合は、前記第2の工程における保持温度は1800〜2100℃、前記第2の工程における保持温度は2100〜2300℃となる。
また、本発明の炭化硼素質焼結体の製造方法のさらに好ましい方法について説明する。第1に、主たる出発原料粉末である炭化硼素粉末を準備する。準備する炭化硼素粉末は、BとCのモル比(B/C比)が化学量論比の4の粉末すなわちBCの組成からなる粒子で構成される粉末の他に、次のような粉末を用いることができる。すなわち、炭化硼素(BC)は、BとCに対して広い固溶領域を有しているため、市販の炭化硼素粉末にはBとCのモル比(B/C比)が化学量論比の4の粉末だけでなく、B/C比が3.5以上4未満、またはB/C比が4よりも大きく10以下の範囲の粉末、例えばB13等の混入した粉末や、フリーカーボン、硼酸(B(OH))、無水硼酸(B)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)などが混入した粉末も存在するため、これらの炭化硼素粉末を準備してもよい。これらの粉末を用いた場合、焼結助剤を添加することや、焼成中に機械的圧力を印可しながら焼成することで、焼結させることが可能である。炭化硼素粉末は、平均粒径2μm以下の微細な粉末であることが望ましいが、平均粒径が例えば20μm程度と大きな粒径の粉末や、この粉末を予備粉砕した炭化硼素粉末も使用可能である。ここで、予備粉砕は、粉砕メディアを使用しないジェットミル等による乾式粉砕であることが、不純物の混入を少なくするために好ましい。
次に、準備した炭化硼素粉末をD90/D50が2以上、D90が2μm以上となるように調整する(すでにこれらを満たす粉末は除く)。この調整方法としては、例えば微細な炭化硼素粉末と粗大な炭化硼素粉末を混合する方法がある。
結助剤として炭素(C)を含む物質を添加する。また、焼結助剤としてさらに、珪素(Si)、アルミニウム(Al)、イットリウム(Y)のいずれかを含む物質を添加することができる。例えば、Cを含む物質としては、非晶質カーボン、グラファイト、フェノール樹脂(高温で炭化して炭素となる。)などがある。また、Siを含む物質としては、炭化珪素(SiC)、窒化珪素(Si)、珪素(Si)、Alを含む物質としては、酸化アルミニウム(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、Yを含む物質としては、酸化イットリウム(Y)などがあり、これらの物質で構成される各種粉末、水溶液等を添加する。さらには、硼酸(B(OH))、無水硼酸(B)、金属硼素(B)、硼化ジルコニウム(ZrB)、硼化チタン(TiB)、硼化クロム(CrB)などの硼化物を添加して焼結を促進してもよい。
第2に、準備した炭化硼素粉末、焼結助剤を公知の方法、例えば回転ミル、振動ミル、ビーズミルなどのミルに投入し、水、アセトン、IPAのうち少なくとも一種ともに湿式混合し、スラリーを作製する。粉砕用メディアは、表面にイミド樹脂を被覆したメディア、窒化硼素質、炭化珪素質、窒化珪素質、ジルコニア質、アルミナ質のメディアが使用可能であるが、不純物として混入の影響の少ない材質である窒化硼素質のメディア、または表面にイミド樹脂を被覆したメディアが好ましい。また、得られるスラリー粘度を下げる目的で粉砕前に分散剤を添加してもよい。
第3に、得られたスラリーを乾燥して乾燥粉体を作製する。この乾燥の前に、スラリーを目開きが#200よりも小さいメッシュに通して粗大なゴミ等を除去することが好ましい。また、スラリーにパラフィンワックスやPVA(ポリビニルアルコール)、PEG(ポリエチレングリコール)、PEO(ポリエチレンオキサイド)、アクリル系樹脂などの有機バインダーをスラリー中の粉末100質量部に対して1〜10質量部添加、混合することが、後述する成形の際に、成形体のクラックや割れ等の発生を抑制できるので好ましい。スラリーの乾燥方法としては、スラリーを容器に入れて加熱、乾燥させてもよいし、スプレードライヤーで乾燥させても良く、または他の方法で乾燥させても何ら問題ない。
第4に、乾燥粉体を公知の成形方法、例えば金型を用いた粉末加圧成形法、静水圧を利用した等方加圧成形法を用いて、相対密度45〜70%の所望の形状とする。銃弾や砲弾等の飛翔体の貫通をさらに十分に防止できる構造を有する防護部材を作製するためには、成形体の形状を、上面および下面とこれらの周縁部に沿った側周面とによって囲まれる形状からなり、前記上面および下面のうち少なくとも一方が外部に向かって凸状の曲面を有するものとすることが好ましい。
第5に、成形体が有機バインダーを含む場合には、有機バインダーを脱脂する。脱脂は、温度500〜900℃で窒素ガスをフローしながら行うことが好ましい。
第6に、成形体または脱脂体(以下、これらを総称して成形体と記す。)を次のように焼成炉を用いて焼成する。焼成炉として黒鉛性の抵抗発熱体により加熱する焼成炉等を用い、この焼成炉中に成形体を載置する。好ましくは、成形体全体を囲うことのできる焼成用容器中(以下、これらを焼成用治具と記す。)に載置する。これは、焼成炉内の雰囲気中等から成形体に付着する可能性のある異物(例えば黒鉛製発熱体や炭素製断熱材から飛散する炭素片や、焼成炉中に組み込まれている他の無機材質製の断熱材の小片等)の付着を防止するためであり、さらには成形体からの揮発成分の飛散を防止するためである。焼成用治具の材質は黒鉛質のものが望ましく、炭化珪素質またはこれらの複合物などの材質としてもよく、さらには成形体全体を焼成用治具で囲うことが好ましい。
第7に、焼成用治具に載置した成形体を焼成炉内に配置し、前述したようにアルゴンガス中またはHeガス中のいずれか、もしくは真空中で、1800℃以上2200℃未満の温度域で1分〜10時間保持(前記第1の工程)した後、2200℃を超えて2350℃以下の温度で10分〜20時間保持(前記第2の工程)して、相対密度90%以上に緻密化させる。昇温速度は1〜30℃/分が好ましい。また、上記前記第1、第2の工程でいう保持とは、所定の温度範囲内に滞在した時間の合計を意味し、例えば一定温度で保持する時間や、昇温時間、降温時間が保持時間に含まれる。なお、2000℃以上で保持する場合には炭化硼素、添加物成分の分解が生じるので、アルゴンガスまたはHeガス中で保持することが望ましい。
また、緻密化をより促進するために、開気孔率が5%以下となった段階で、さらに高圧のガスで加圧してもよい。この加圧方法としては、高圧GPS(Gas Pressure Sintering)法や熱間等方加圧(HIP:hot isostatic press)法により、ガス圧1〜300MPaで加圧する方法を用いることが好ましく、これによって相対密度を特に95%以上に高めることができる。また、前述のようにホットプレス法やSPS(Spark Plasma Sintering)法のように機械的圧力を印可する方法で焼結しても構わない。
上述のようにして作製される炭化硼素質焼結体は、焼結体断面視した際の観察面積に
対し、結晶粒径が10μm以下の炭化硼素の結晶の累計面積比率が50面積%以上、粒径が20μm以上の炭化硼素の結晶の累計面積比率が5面積%以上含有するものとなる。この焼結体は緻密で相対密度が90%以上であり、硬度はJIS R 1610−2003によるHK1硬度で25GPa以上となる。この炭化硼素質焼結体は、軽量な防護部材とすることができる。
(実施例1)
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
炭化硼素粉末としてFeを0.2質量%含有し、D90/D50=2以上、D90=2μm以上を満たす、同じ粉末と、焼結助剤としてNovolaque型フェノール樹脂水溶液を準備し、窒化硼素質の粉砕用メディアと共に回転ミルに投入してアセトン中で12時間混合し、スラリーを作製した。フェノール樹脂水溶液は、炭化硼素質焼結体における炭素成分(C)が3質量%となるように、炭素の含有量が18質量%のフェノール樹脂水溶液を添加した。得られたスラリーを目開き#200のナイロン製メッシュに通して粗大なゴミ等を除去後、120℃で乾燥後、目開き#40のナイロン製メッシュで整粒して、混合粉体を作製した。
得られた混合粉体を用いて各試料分の成形体を成形した。具体的には、金型を用いた粉末加圧成形法を用いて、相対密度58%になるように、外径6mm、高さ15mmの円柱状成形体を成形し、成形体に含まれる有機成分を600℃で窒素ガスをフローしながら脱脂した。
脱脂後の成形体を、黒鉛性の抵抗発熱体により加熱する焼成炉等を用い、グラファイト質の焼成用容器に成形体を載置し、焼成炉内で、1600℃未満まで真空中にて、1600℃以上を110kPaのアルゴンガス中で表1に示す保持1の条件で焼成した後、保持2の条件で焼成して、外径5mm、高さ12.5mmの圧縮試験用試料を11個ずつ作製した。昇温速度は20℃/分とした。ここで保持1,2は、所定の温度範囲内に滞在した時間の合計を意味し、一定温度で保持する時間、昇温時間の合計を保持時間として含むものであるので、保持1に必要な温度域1800℃以上2200℃未満は昇温に20分を要すため、保持1の温度で一定に保った時間は正味20分を差し引いた時間である。また、表1の試料No.7,8は保持1における一定温度保持を設けず、試料No.7は1800℃以上2200℃未満の温度域のみを8分間で通過(50℃/分の昇温速度)させた試料であり、試料No.8は1800℃以上2200℃未満の温度域のみを15分間で通過(26℃/分の昇温速度)させた試料である。
得られた試料を前述したアルキメデス法を用いて相対密度として算出し、表1に11個測定の平均値を示した。また、JIS R 1608−2003に準拠して各試料の圧縮強度を測定し、表1に10個測定の平均値を示した。さらに、前述のように鏡面をエッチングして、インターセプト法により、試料1個の中心部断面における2000個の結晶粒径の測定を、観察面積225000μm(250μm×180μmの視野を5箇所)で行い、粒径分布を求めた。
表1から分かるように、保持1における保持温度が1800℃以上2200℃未満15分〜10時間保持し、保持2における保持温度が22℃を超えて2350℃以下で10分〜20時間保持した試料No.2〜5、8〜10、13〜15、18〜22は、焼結体を断面視した際の観察面積に対し、結晶径10μm以下の炭化硼素の結晶の累積面積比率50面積%以上であるとともに結晶粒径20μm以上の炭化硼素の結晶の累積面積比率面積%以上であることによって、圧縮強度がいずれも1.5GPa以上と高かった。
比較例として、保持1,2の条件を変えた他は実施例1と同様にして、本発明の範囲外の試料を作製し、実施例と同様にして評価した。
その結果、保持1における保持温度が低い試料No.1、保持時間が短い試料No.7は、結晶粒径20μm以上の炭化硼素の結晶の累積面積比率が5面積%未満となり、また、保持温度が高い試料No.6、保持時間が長い試料No.11は、結晶粒径10μm以下の炭化硼素の結晶の累積面積比率が50面積%未満となり、いずれも圧縮強度が低いものであった。また、保持2における保持温度が低い試料No.12、保持時間が短い試料No.17は、結晶粒径が20μm以上の炭化硼素の結晶の累積面積比率が5面積%未満で、かつ相対密度が低く、また、保持温度が高い試料No.16、保持時間が長い試料No.23は、結晶粒径が10μm以下の炭化硼素の結晶の累積面積比率が50面積%未満であり、いずれも圧縮強度が低いものであった。
Figure 0004812462
(実施例2)
炭化硼素粉末として、Fe含有量0.42質量%、D50=0.79μm、D90=1.63μm(D90/D50=2.1)の粉末Aと、Fe含有量0.77質量%、D50=1.90μm、D90=3.05μm(D90/D50=1.6)の粉末Bとを表に示す質量比率で混合した試料No.31〜34、Fe含有量1.1質量%、D50=1.90μm、D90=6.82μm(D90/D50=3.6で粒度分布曲線が2山形状に分布)の粉末Cのみの試料No.35を準備した。これらの粉末のそれぞれに、焼結助剤として、平均粒径0.8μmのグラファイト粉末が7質量%となるように、イミド樹脂製の粉砕用メディアと共に回転ミルに投入して純水中で5時間混合し、スラリーを作製した。得られたスラリーを目開き#200のナイロン製メッシュに通して粗大なゴミ等を除去後、有機バインダーとしてPVAをスラリー中の原料粉末100質量部に対して5質量部添加、混合した。以上のスラリーをスプレードライヤーで乾燥、造粒した。
得られた乾燥粉体は、実施例1と同様の方法で、成形、脱脂、焼成した。焼成時の保持温度は、保持1;2100℃で1時間保持、保持2;2300℃で2時間保持とした。得られた試料は、実施例1と同様の評価内容とした。
その結果、表2から明らかなように、炭化硼素粉末のD90/D50が2以上、D90が2μm以上の試料No.32、33、35は、結晶粒径10μm以下の炭化硼素の結晶の累積面積比率が50面積%以上であるとともに結晶粒径20μm以上の炭化硼素の結晶の累積面積比率が5面積%以上であることによって、いずれも1.5GPa以上と高圧縮強度であった。
比較例として、表2に示す他は実施例2と同様にして試料を作製し、実施例2と同様に評価した。その結果、D90/D50を2未満として作製した試料No.34、D90を2μm未満として作製した試料No.31は、結晶粒径が20μm以上の炭化硼素の結晶の累積面積比率が5面積%未満であり、いずれも圧縮強度が低いものであった。
Figure 0004812462
(実施例3)
炭化硼素粉末として実施例2で使用した粉末Cを使用し、平均粒径1.2μmのグラファイト粉末7質量部と、表3に示す質量部相当の添加物(平均粒径は0.2〜1μm)を添加して、実施例1と同じ方法に従って本発明の試料を作製した。なお、焼成時の保持温度は、保持1を1900℃で1時間保持、保持2を2230℃で2時間保持として焼結させた。得られた試料は、実施例1、2と同様にして評価した。なお、焼結体にアルミニウム、珪素、イットリウムおよび鉄などが含まれることから、前記のように、SEM(走査型電子顕微鏡)の反射電子像により軽元素からなる炭化硼素粒子がアルミニウム、珪素、イットリウムおよび鉄より黒く観察される原理を利用して炭化硼素の結晶粒子を特定して、炭化硼素の結晶粒径を求めた。表3においてGr.はグラファイトを示す。
表3から分かるように、本発明の試料は、焼結体断面視した際の観察面積に対し、結晶径10μm以下の炭化硼素の結晶の累計面積比率が50面積%以上であるとともに結晶径20μm以上の炭化硼素の結晶の累計面積比率が5面積%以上であることによって、圧縮強度が1.6GPa以上と高く優れていた。
Figure 0004812462
(実施例4)
次のように炭化硼素質焼結体の材質として2種類のそれぞれを、形状としてA,Bの2種類で作製したもの計4種類の試料を準備した。すなわち、材質として、実施例1の製造方法に従って試料No.10、および実施例3の製造方法に従って試料No.43の2種類の炭化硼素質焼結体を作製し、形状として図2(a)に示す外径10mm、厚み10mmの円柱状(形状A)の炭化硼素質焼結体4と、外径10mm、図2(b)に示す中心部の厚みが10mmであって外周部に向かって曲率半径10mmでなだらかに薄くなっている凸型円柱(形状B)の炭化硼素質焼結体4の2種類である。これらの4種類の炭化硼素質焼結体からなる試料をそれぞれ110個作製した。110個の背面に、図3に示すように、東レデュポン社製全芳香族ポリアミド繊維「ケブラー」(登録商標)で強化したポリブチラール・フェノール系の繊維強化プラスチックからなる繊維強化物質2(外寸140mm×140mm、厚み9mm)を、バックプレートとしてウレタン系接着剤からなる樹脂3で加圧(1MPa)しながら70℃で30分間硬化させて接着した。炭化硼素質焼結体4は図3のようにバックプレート概中心部に最密充填するよう10個×11列配置して、防護板を作製した。なお、前記のように図1は、試料No.43の累積面積比率を示す図である。
次に、防護板の外周から約20mmまでの部分(この部分は炭化硼素質焼結体の未接着部とした。)をテーブルに強固に挟んで固定し、炭化硼素質焼結体を前面側とし、中心部が100C6鋼材、外周がアルミニウム、最表面が真鍮製からなる重量10gの飛翔体を、15m離れた場所から高速飛翔体発射装置にて、発射速度約330m/秒で概中心部に衝突させた。その結果、本発明の試料No.10、43からなる材質を用いた場合には、形状A,B共に飛翔体が防護板を貫通しなかった。
さらに、発射速度を約830m/秒として、同様に概中心部に衝突させた。その結果、試料No.10、43の円柱状(形状A)の試料は飛翔体が防護板を貫通したのに対し、凸型円柱状(形状B)の試料は炭化硼素質焼結体の平均厚みは薄くなっているにもかかわらず、飛翔体が防護板を貫通しておらず、本発明の有効性が確認された。
比較例として、本発明の範囲外の試料No.7を用いた他は実施例4と同様にして防護板を作製し、実施例4と同様にして評価した。その結果、円柱状(形状A)、凸型円柱状(形状B)を用いた場合、発射速度約330m/秒、約830m/秒いずれの場合も飛翔体が防護板を貫通した。
本発明の炭化硼素質焼結体を断面視したときの粒径の累積面積比率を示す図である。 (a)、(b)は本発明の炭化硼素質焼結体からなる防護部材の種々の実施形態を示す斜視図である。 (a)は本発明の防護部材を用いた防護板の斜視図であり、(b)は同図(a)の平面図である。
符号の説明
2:繊維強化物質
3:樹脂
4:炭化硼素質焼結体

Claims (4)

  1. 炭化硼素を主結晶相として、FeおよびCを含有する相対密度が90%以上の炭化硼素質焼結体であり、該炭化硼素質焼結体を断面視した際の観察面積に対し、結晶粒径10μm以下の炭化硼素の結晶の累計面積比率が50面積%以上であるととともに、結晶粒径20μm以上の炭化硼素の結晶の累計面積比率が5面積%以上であることを特徴とする炭化硼素質焼結体。
  2. アルミニウム、珪素およびイットリウムのいずれかを0.05〜10質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の炭化硼素質焼結体。
  3. 請求項1または請求項2に記載の炭化硼素質焼結体を用いた防護部材であって、その圧縮強度が1.5GPa以上であることを特徴とする防護部材。
  4. 上面および下面とこれらの周縁部に沿った側周面とによって囲まれる形状からなり、前記上面および下面の少なくとも一方が外方に向かって凸状の曲面を備えたことを特徴とする請求項3に記載の防護部材。
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