JP4798851B2 - アルコキシシラン化合物及びその組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術的分野】
本発明は、電子部品の絶縁材料や半導体装置におけるパッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜などに用いられる耐熱性樹脂材料のパターンを形成するために用いられる感光性樹脂と基板との接着剤として用いられるアルコキシシラン化合物及びそれを含む感光性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電子部品の絶縁材料や、半導体素子のパッシベーション膜、表面保護膜、層間絶縁膜などには、優れた耐熱性と電気特性、機械特性を併せ持つポリイミド樹脂が用いられている。このポリイミド樹脂は、一般に感光性ポリイミド前駆体組成物の形で供され、これを塗布、活性光線によるパターニング、現像、熱イミド化処理等を施すことにより、微細加工された耐熱性皮膜を容易に形成させることができ、旧来の非感光型ポリイミドを用いる場合に比べて、大幅な工程短縮が可能となる特徴を有している。
【0003】
ところが、その現像工程においては、現像液としてピロリドン類やケトン類などの多量の有機溶剤を用いる必要があり、安全性および近年の環境問題への関心の高まりから、脱有機溶剤対策が求められてきている。これを受け、最近になって、フォトレジストと同様に、希薄アルカリ水溶液で現像可能な耐熱性感光性樹脂材料の提案が各種なされている。
中でもアルカリ水可溶性のポリヒドロキシアミド、例えばポリベンズオキサゾール前駆体を、キノンジアジドなどの光活性成分と混合して用いる方法が、最近注目されている。(特公平1−46862号公報、特開昭63−96162号公報など)これらの方法によると、パターンの形成が容易でかつ保存安定性も良好、またポリイミドと同等の熱硬化膜特性が得られることから、有機溶剤現像型ポリイミド前駆体の有望な代替材料として注目されている。この他、フェノール性水酸基を主鎖に導入したポリマーと光活性成分の組み合わせ(特開平11−106651号公報など)や、側鎖にフェノール性水酸基を導入したポリマーと光活性成分の組み合わせ(特許第2890213号公報など)が提案されている。
【0004】
しかしながら、これらアルカリ現像型の感光性樹脂における、樹脂パターンと基板との接着性には、未だ問題点も多く、溶剤現像型からアルカリ現像型への、世代交代の一つの障害となっている。
これは、上記の如く開示されているアルカリ現像システムの場合、露光、現像によって形成された樹脂パターンが、アルカリ水溶液に対して比較的高い親和性を有するため、現像時にアルカリ水溶液が接着界面に侵入しやすく、その結果、当該接着界面におけるシランカップリング機構が破壊されることに起因するものと考えられる。
【0005】
一般に、感光性樹脂のコーティング膜と基板との接着性を向上させるためには、基板をあらかじめ前処理しておく方法、耐熱性樹脂前駆体組成物の中にシランカップリング剤等の接着剤を添加する方法、有機ケイ素化合物などの、基材との親和性を有するユニットをポリマー中に付加あるいは共重合させる方法等が挙げられる。これらの方法の中では、特にワニス中に接着剤を内部添加する方法が、簡便でありプロセスを簡略化できるので、最近良く用いられている。
【0006】
このような内部添加型の接着剤を用いた方法としては、例えば、反応性の高いイソシアネート基を含有するシランカップリング剤を用いる方法(特開平11−338157号公報、特開2000−122299号公報)、極性の高い基を含有するシランカップリング剤を用いる方法(特開2000−187321号公報)等が挙げられる。
しかし、これら内部添加型の接着剤の場合、基板との接着界面に効率よく接着剤が集まらない点、あるいはワニス組成物中において、耐熱性感光性樹脂前駆体との相溶性が欠けるため、接着剤が凝集析出するという点などで、満足のいく接着性が得られない場合が多い。
【0007】
また、接着効率を向上させるためには、その接着剤構造中に複数のアルコキシシリル基を含有させれば良いことは自明であるが、その場合、組成物中で共存する僅かな水分の影響によって、当該アルコキシシリル基間での脱アルコール縮重合による接着剤の高分子量化が経時的に進行し、樹脂マトリックスとの相溶性の低下(析出)、接着効率の低下が避けられない。
更に、感光システムによっては、接着剤中に含まれる極性基が感度を著しく低下させる場合もある。いずれにしても、アルカリ現像型の感光性樹脂との良好な相溶性を維持しながら良好な接着性を確保し、かつ感度を低下させないような、高性能なアルコキシシラン化合物は、今まで得られていなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、耐熱性樹脂前駆体を含む感光性樹脂組成物の添加成分として、基板との高い接着性を有し、析出等の問題が無く、かつ良好なパターニング性能を発揮しうるような接着剤、そしてこれを利用した耐熱性感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の構造を有するアルコキシシラン化合物を用いたときに、前述の種々の課題を充分に解決できることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち本発明の第一は、下記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物である。
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、R1、R2、R1’、R2’は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基であり、mは0〜2の整数を示す。R3、R3’は2価の有機基、R4、R4’は4価の芳香族基、R5は2価の芳香族基を示す。R3とR3’、およびR4とR4’は、それぞれ独立に同じであっても異なっていても良く、nは1〜50の整数を示す。)
一般式(1)において、R1、R1’が炭素数1〜4のアルキル基であり、R2、R2’がメチル基であり、R3、R3’が下記で示される基であることを特徴とするアルコキシシラン化合物は、本発明の好ましい実施態様である。
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、pは1〜4の整数を示す)
また、本発明の第二は、上記のアルコキシシラン化合物、耐熱性樹脂前駆体、重合開始剤、不飽和二重結合を有する化合物、及び希釈溶剤を含有する感光性樹脂組成物である。
【0014】
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明のアルコキシシラン化合物は、例えば、4価の芳香族基(R4、R4')を含むビス−(O−アミノフェノール)類と2価の芳香族基(R5)を含む芳香族ジカルボン酸またはその誘導体を、ビス−(O−アミノフェノール)類の過剰当量条件でアミド重縮合して得られる重合体(A成分)1当量と、イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物(B成分)2当量とを、適当な溶剤中で作用させることにより、定量的に得ることが出来る。
【0015】
(1)A成分
本発明のアルコキシシラン化合物の原料である上述した「A成分」を調製するために用いられる、4価の芳香族基(R4、R4')を含むビス(O−アミノフェノール)類としては、例えば、4,6−ジアミノ−1,3−ジヒドロキシベンゼン、3,3'−ジヒドロキシ−4,4'ジアミノビフェニル、4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジアミノビフェニル、3,4−ジヒドロキシ−3'、4'−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンなどが挙げられる。
【0016】
また、2価の芳香族基(R5)を含む芳香族ジカルボン酸およびその誘導体としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、3,4'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、3,3'−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸、3,4'−ビフェニルジカルボン酸、3,3'−ビフェニルジカルボン酸、4,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,4'−ベンゾフェノンジカルボン酸、3,3'−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4'−ヘキサフルオロイソプロピリデン二安息香酸、3,4'−ヘキサフルオロイソプロピリデン二安息香酸、3,3'−ヘキサフルオロイソプロピリデン二安息香酸、4,4'−ジカルボキシジフェニルアミド、1,4−フェニレンジエタン酸、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)−1−フェニル−2,2,2−トリフルオロエタン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルフィド、ビス(4−カルボキシフェニル)テトラフェニルジシロキサン、ビス(4−カルボキシフェニル)テトラメチルジシロキサン、ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、5−tert−ブチルイソフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2,2−ビス(p−カルボキシフェニル)プロパン、4,4'−(p−フェニレンジオキシ)二安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、およびこれらの誘導体、例えば、酸クロライド体、1−ヒドロキシベンズトリアゾール等との活性エステル体などが挙げられる。
【0017】
また、ここで挙げた例の如きビス(O−アミノフェノール)類、並びに芳香族ジカルボン酸およびその誘導体は、それぞれ単独で反応に供しても良いし、2種以上を混合して用いても良く、種々の要求に応じて決定すれば良い。但し、感光性樹脂組成物中およびそのコーティング膜中での感光性樹脂マトリックスとの相溶性を考慮するならば、その骨格構造、共重合比の選択に当たっては、出来るだけ感光性樹脂マトリックスの骨格構造に類似した形とする方が有利である。
【0018】
以上に示したビス(O−アミノフェノール)類と芳香族ジカルボン酸及びその誘導体とを、ビス(O−アミノフェノール)類の過剰当量条件で、適当な溶媒中で混合し、アミド重縮合させることにより、「A成分」が得られる。
芳香族ジカルボン酸を用いる場合は、ピリジンなどの塩基性触媒の存在下、ジシクロヘキシルカルボジイミドに代表されるような、適当な脱水縮合剤が必要となる。芳香族ジカルボン酸の活性エステル体および酸クロライド体を用いる場合は、そのままでも重縮合が可能である。
【0019】
一般式(1)中のn値に相当する、「A成分」の繰り返し単位数は、用いるビス(O−アミノフェノール)類と芳香族ジカルボン酸およびその誘導体の種類や組み合わせにもよるが、1〜50であることが好ましく、より好ましくは、1〜20である。この繰り返し単位数(分子量)も、種々の要求に応じて、その骨格構造の選択との兼ね合いの中で、決定すればよい。
この繰り返し単位数nの値を正確かつ簡便に決定することは難しい。しかしながら、得られたA成分のポリスチレン換算GPC数平均分子量から、一般式(1)中の4価の芳香族基(R4')を含むビス(O−アミノフェノール)類部分に相当する分子量を減じた値を、A成分の繰り返し単位の計算分子量値で除した値であれば、概略ではあるが、n値の平均値に近似しているものと思われ、この値をもって繰り返し単位数n値の指標とすればよいと考える。
【0020】
この繰り返し単位数は、用いるビス(O−アミノフェノール)類と芳香族ジカルボン酸およびその誘導体の反応当量比によって容易に制御可能であるが、「A成分」としては、その分子鎖の両末端が、ビス(O−アミノフェノール)類由来のアミノ基である必要がある。よってその当量比は、少なくともビス(O−アミノフェノール)類の過剰当量条件である必要があり、芳香族ジカルボン酸およびその誘導体の使用量を1とすると、ビス(O−アミノフェノール)類は、概略その1.1〜2.0倍モル用いて反応させれば良い。
【0021】
以上の点に考慮しつつ合成された「A成分」は、適宜イオン交換、再沈精製等を施した後、以下の「B成分」との反応に供され、本発明のアルコキシシラン化合物となる。
(2)B成分
本発明のアルコキシシラン化合物のもう一つの原料である「B成分」として用いられる、イソシアネート基を有するアルコキシシラン化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0022】
【化5】
【0023】
(式中、R1、R2は各々独立に炭素数1〜10のアルキル基であり、mは0〜2の整数を示し、R3は2価の有機基である。)
このうち、特に好ましい化合物としては、次のものが挙げられる。
【0024】
【化6】
【0025】
A成分とB成分を用いて、本発明のアルコキシシラン化合物を合成する際に用いられる溶剤としては、A成分およびB成分を、共に溶解するものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチルウレア、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N,N' −ジメチルイミダゾリジノン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等を挙げることが出来る。
【0026】
また、本発明のアルコキシシラン化合物を合成する際に、反応を加速するために、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテートのような錫化合物を触媒として用いることも出来る。
このようにして合成された本発明のアルコキシシラン化合物は、蒸留あるいは再結晶等の方法で単離するか、反応溶液をそのまま、または溶剤で希釈して、感光性樹脂組成物に添加することにより用いることが出来る。
【0027】
また、本発明の第二は、本発明のアルコキシシラン化合物、耐熱性樹脂前駆体、重合開始剤、不飽和二重結合を有する化合物、及び希釈溶剤などを含有する感光性樹脂組成物である。
ここで用いられる耐熱性樹脂前駆体としては、アルカリ現像できるという観点から、アルカリ可溶性ポリマーが好適である。
このようなアルカリ可溶性ポリマーとしては、ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸および/またはその全部あるいは一部エステル体や、ポリベンズオキサゾールの前駆体であるヒドロキシポリアミド等が挙げられる。後者については、特にフェノール性水酸基を有し、それが部分的に不飽和二重結合を含有する基で置き換えられた次に示すような構造を持つものが好ましい。
【0028】
【化7】
【0029】
(式中R6は2価の芳香族基、R7は4価の芳香族基である。qは2ないし150の整数である。R8、R9は水素原子、および/または下記一般式(3)で表される不飽和二重結合を有する一価の有機基であり、R8,R9はそれぞれ同一であっても、異なっていてもよく、R8+R9=100mol%とした場合、R8,R9のうち、少なくとも10モル%以上、50モル%以下が、下記一般式(3)で表される、不飽和二重結合を有する一価の有機基である。)
【0030】
【化8】
【0031】
(式中、R10は水素原子および/または炭素数1〜3の脂肪族基であり、R11、R12はそれぞれ独立に水素またはアルキル基である。rは2〜10の整数である)
【0032】
また、本発明の感光性樹脂組成物の成分として用いられる不飽和二重結合を有する化合物としては、光重合開始剤により重合可能な(メタ)アクリル化合物が好ましく、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート(各エチレングリコールユニットの数2〜20)、ポリエチレングリコールジメタクリレート(各エチレングリコールユニットの数2〜20)、ポリ(1,2−プロピレングリコール)ジアクリレート、ポリ(1,2-プロピレングリコール)ジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、メチレンビスアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、エチレングリコールジグリシジルエーテル-メタクリル酸付加物、グリセロールジグリシジルエーテル−アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル−アクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル−メタクリル酸付加物、N,N'−ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)尿素などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの使用にあたっては、単独でも2種以上の混合物でもかまわない。
【0033】
また、本発明の感光性樹脂組成物の成分として用いられる光重合開始剤としては、例えば、
(a)ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノンなどのベンゾフェノン誘導体
(b)2,2'−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン誘導体
(c)チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントンなどのチオキサントン誘導体
【0034】
(d)ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタールなどのベンジル誘導体
(e)ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルなどのベンゾイン誘導体
(f)1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(o-メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニルプロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシプロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシムなどのオキシム類、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの使用にあたっては、単独でも2種以上の混合物でもかまわない。
上記した光重合開始剤の中では、特に光感度の点で、(f)のオキシム類が、より好ましい。
【0035】
本発明の感光性組成物には、所望に応じ光感度向上のための増感剤を添加することができる。このような増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5−ビス(4'−ジエチルアミノベンジリデン)シクロペンタノン、2,6−ビス(4'−ジエチルアミノベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4'−ジメチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2,6−ビス(4'−ジエチルアミノベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4'−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4'−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、2−(4'−ジメチルアミノシンナミリデン)インダノン、2−(4'−ジメチルアミノベンジリデン)インダノン、2−(p−4'−ジメチルアミノビフェニル)ベンゾチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンジリデン)アセトン、1,3−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデン)アセトン、3,3'−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−アセチル−7−ジメチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンジロキシカルボニル−7−ジメチルアミノクマリン、3−メトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、3−エトキシカルボニル−7−ジエチルアミノクマリン、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、N−p−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、4−モルホリノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2−メルカプトベンズイミダゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1,2,3,4−テトラゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2−p)チアゾール、2−(p−ジメチルアミノベンゾイル)スチレンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、使用にあたっては、単独でも2種以上の混合物でもかまわない。
【0036】
また、感光性樹脂組成物のワニスを形成させるために、希釈溶剤が用いられるが、このような溶剤成分として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、ピリジン、ガンマーブチロラクトン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。使用にあたっては、単独でも2種以上の混合物でもかまわない。
【0037】
本発明の感光性組成物には、所望に応じ保存時の組成物溶液の粘度や光感度の安定性を向上させるために重合禁止剤を添加することができる。このような重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、N−ニトロソジフェニルアミン、p−tert−ブチルカテコール、フェノチアジン、N−フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6−ジ−tert−ブチル−p−メチルフェノール、5−ニトロソ−8−ヒドロキシキノリン、1−ニトロソ−2−ナフトール、2−ニトロソ−1−ナフトール、2−ニトロソ−5−(N−エチル−N−スルフォプロピルアミノ)フェノール、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシアミンアンモニウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N−ニトロソ−N−(1−ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−tert−ブチルフェニルメタンなどが用いられる。
【0038】
また、染料や塗膜平滑性付与剤などをはじめ、本発明の感光性樹脂組成物の諸特性を特に阻害するものでない限り、必要に応じて、種々の添加剤を適宜配合することが出来る。
【0039】
本発明のアルコキシシラン化合物を含有する感光性樹脂組成物の使用例を以下に示す。
まず該組成物を適当な基材、例えばシリコンウェハー、セラミック、アルミ基板などに塗布する。この塗布方法はスピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等で行う。次に80〜120℃でプリベークして塗膜を乾燥後、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー等の露光装置を用いて化学線照射する。
【0040】
化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線などが使用できるが、200〜500nmの波長のものが好ましい。パターンの解像度及び取扱い性の点で、その光源波長はi線(UV365nm)が好ましく、露光装置としてはステッパーが好ましい。
この後、光感度の向上などの目的で、必要に応じて、任意の温度、時間の組み合わせ(好ましくは温度40℃〜120℃、時間10秒〜240秒)による露光後ベーク(PEB)や、現像前ベークを施しても良い。
【0041】
次に現像が行われるが、浸漬法、パドル法、回転スプレー法等の方法から選択して行うことが出来る。現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩類等の水溶液、および必要に応じメタノール、エタノール、等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を使用することが出来る。
【0042】
現像後、リンス液により洗浄を行い現像液を除去することにより、パターニングフィルムを得ることができる。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を単独または組み合わせて用いることができる。
このようにして得られたポリイミドあるいはポリベンズオキサゾール等の耐熱性樹脂の前駆体組成物からなるパターニングフィルムを、300℃以上に加熱し、環化反応を進行させることにより、ポリイミドあるいはポリベンズオキサゾール等に変換させる。このような加熱変換は、ホットプレート、オーブン、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることにより行うことが出来る。加熱変換させる際の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。
【0043】
本発明のアルコキシシラン化合物を用い、上記方法によって得られるパターニングフィルムと基板との接着性を、顕微鏡等の観察により評価すると、現像後および加熱硬化後いずれの場合にも優れた接着性が観察される。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明の実施形態の例を詳細に説明する。
【0045】
【実施例1】
(1)重合体A1成分の合成
容量1Lのセパラブルフラスコに、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)146.51g(0.4mol)、N、N−ジメチルアセトアミド(DMAc)512gを入れ、攪拌溶解させた。これに、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボニルジクロリド(DEDC)59.02g(0.2mol)をジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)177gに溶解させたものを、室温(24℃)雰囲気下、滴下漏斗よりゆっくりと滴下し、滴下終了後も室温下で3時間撹拌を続けた。
【0046】
その後、この反応液を3Lのイオン交換水に強撹拌下で滴下し、重合体「A1成分」を析出させ、吸引濾過、適宜水洗の後、50℃で24時間の真空乾燥を施した。
こうして得られた「A1成分」は、ポリスチレン換算GPC数平均分子量(THF溶媒)が1800であった。6FAPの分子量は約366、「A1成分」の繰り返し単位の分子量は約588であることから、その繰り返し単位数n値は、概略、平均で、(1800−366)/588=2.4程度と推定される。また、得られた「A1成分」中の残溶媒量は10.0重量%、収率は53.4%であった。
【0047】
(2)アルコキシシラン化合物C1の合成
容量500mlの3口フラスコに、上記で得られたA1成分を22.22g(残溶媒率から計算して、A1成分の純分として20.0g)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を58.5g投入し、撹拌溶解した。
ここに、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン(IPS)10.68g(0.043mol)とNMP60.72gの混合液体を室温(24℃)雰囲気で滴下漏斗を用いてゆっくりと滴下し、滴下終了後も室温で撹拌を3時間続けた。
【0048】
その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で反応の進行を確認したところ、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランは検出されず、また以下の比色定量法により算出される、A1成分由来のアミン末端基の残存率から導かれる当該反応率も、撹拌1時間後で95.6%、同3時間後で98.7%と、良好な反応性であった。
【0049】
(反応率の算出)
芳香族第一アミンのUV比色定量法[百瀬:“有機分析”,p201(1985),(廣川書店)に準拠。]により算出する。
i)反応液を0.1g分取し、これにメタノールを5g加え、良く撹拌する。
ii)反応液と同等程度の濃度となるように「A1成分」とNMPの溶液を別途調製し、これを0.1g分取し、メタノール5gを加え、良く撹拌する。(反応前ブランクの調製)
iii)上記i)、ii)で得られた溶液をそれぞれ1ml分取し、これに5−(p−ジメチルアミノフェニル)−2,4−ペンタジエナールの0.1%メタノール溶液を1ml、トリクロロ酢酸の50%メタノール溶液を1ml加え、さらにメタノール10mlで希釈して良く撹拌し、10分間静置する。
iv)メタノールをリファレンスとして、石英セル法により、UV630nmの吸光度をそれぞれ測定する。
【0050】
v)各吸光度を、計量誤差などの濃度差に対して補正した後、下式に代入してアミノ基残存率、並びに反応率を算出する。
アミノ基残存率=(反応後の吸光度/反応前ブランクの吸光度)×100 (%)
アミノ基反応率=100−(アミノ基残存率) (%)
【0051】
【実施例2】
(1)重合体A2成分の合成
容量1Lのセパラブルフラスコに、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン(BSDA)112.12g(0.4mol)、DMAc400gを入れ、攪拌溶解させた。これに、DEDC59.02g(0.2mol)をDMDG177gに溶解させたものを、室温(24℃)雰囲気下、滴下漏斗よりゆっくりと滴下し、滴下終了後も室温下で3時間撹拌を続けた。
その後、この反応液を3Lのイオン交換水に強撹拌下で滴下し、重合体「A2成分」を析出させ、吸引濾過、適宜水洗の後、50℃で24時間の真空乾燥を施した。
こうして得られた「A2成分」は、ポリスチレン換算GPC数平均分子量(THF溶媒)が2200であった。BSDAの分子量は約280、「A2成分」の繰り返し単位の分子量は約503であることから、その繰り返し単位数n値は、概略、平均で(2200−280)/503=3.8程度と推定される。また、得られた「A2成分」中の残溶媒量は9.2重量%、収率は61.2%であった。
【0052】
(2)アルコキシシラン化合物C2の合成
容量500mlの3口フラスコに、上記で得られたA2成分を21.84g(残溶媒率から計算して、A2成分の純分として20.0g)、NMPを63.4g投入し、撹拌溶解した。
ここに、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン13.02g(0.053mol)とNMP65.3gの混合液体を室温(24℃)雰囲気で滴下漏斗を用いてゆっくりと滴下し、滴下終了後も室温で3時間撹拌を続けた。
その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で反応の進行を確認したところ、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランは検出されず、また実施例1で示した比色定量法により算出される、A2成分由来のアミン末端基の残存率から導かれる当該反応率も、撹拌1時間後で97.1%、同3時間後で99.2%と、良好な反応性であった。
【0053】
上記実施例で得られたアルコキシシラン化合物を用いた、感光性樹脂組成物の接着性の評価についての実施例を、以下に示す。
【0054】
【参考例1】
(ベースポリマーBP1の合成)
容量2Lのセパラブルフラスラスコ中で、DMAc436g、ピリジン13.45g(0.17mol)、6FAP124.53g(0.34mol)を室温(24℃)で混合攪拌、溶解させた。これに、別途DMDG248g中にDEDC82.63g(0.28mol)を溶解させたものを、滴下漏斗より滴下した。この際、セパラブルフラスコは15〜20℃の水浴で冷却した。滴下に要した時間は20分、反応液温は最大で30℃であった。滴下終了から1時間撹拌放置し、その後、反応液を5Lの水に高速攪拌下で滴下し重合体を分散析出させ、これを回収し、適宜水洗、脱水の後に真空乾燥を施し、アミノ基を末端に有するヒドロキシポリアミドを得た。ポリスチレン換算GPC重量平均分子量(THF溶媒)は10300、残溶媒率は13.95%、収率は86.51%であった。
【0055】
(感光基導入ポリマーP1の合成)
上記により得られた乾燥ヒドロキシポリアミド100gを容量1Lのセパラブルフラスラスコに入れ、ガンマーブチロラクトン(GBL)400gを加えてポリマーを再溶解し、ジブチルスズジラウレート0.85gを加え、オイルバスにて50℃に加温した。これに、別途GBL50.8gに2−イソシアナトエチルメタクリレート16.94g(0.109mol。これは、ベースポリマーBP1の収率および当該反応への使用量から算出して、BP1ポリマーの全ヒドロキシル基の35mol%に相当する)を溶解したものを15分かけて滴下した。滴下終了後、50℃にて4時間撹拌した。4時間後、この反応液をイオン交換水4Lに滴下し、その際析出する重合体を分離、洗浄した後、50℃にて24時間真空乾燥を施すことにより、感光性ポリベンズオキサゾール前駆体(P1)を得た。
【0056】
この反応では、イソシアネートはポリマー末端のアミノ基と優勢に反応しつつも、ポリマー骨格中の水酸基とも反応するため、ポリマー末端部ではウレア結合、骨格中の水酸基部分の一部ではウレタン結合を介してメタクリレート基が導入された構造になっている。
このポリマーの1H−NMRスペクトルを測定し、骨格の繰り返し単位部分のプロトンに由来する積分強度の和と、導入されたメタクリレート基の炭素−炭素二重結合の先端部分のプロトン2個に由来する積分強度との比率より、骨格全体に対するメタクリレート基の導入率を算出することが出来る。本例の場合、メタクリレート基の導入率は、骨格中の全水酸基に対して28.6%と算出された。
【0057】
【参考例2】
(ベースポリマーBP2の合成)
容量2Lのセパラブルフラスラスコ中で、DMAc432g、BSDA123.33g(0.44mol)を室温(24℃)で混合攪拌、溶解させた。これに、別途DMDG354g中にDEDC118.05g(0.40mol)を溶解させたものを、滴下漏斗より滴下した。この際、セパラブルフラスコは0〜5℃の氷水浴で冷却した。
【0058】
滴下に要した時間は20分、反応液温は最大で11.9℃であった。滴下終了から1時間撹拌放置し、その後、反応液を5Lの水に高速攪拌下で滴下し重合体を分散析出させ、これを回収し、適宜水洗、脱水の後に真空乾燥を施し、アミノ基を末端に有するヒドロキシポリアミドを得た。ポリスチレン換算GPC重量平均分子量(DMF溶媒)は37000、残溶媒率は13.08%、収率は80.59%であった。
【0059】
(感光基導入ポリマーP2の合成)
上記により得られた乾燥ヒドロキシポリアミド50gを容量1Lのセパラブルフラスラスコに入れ、NMP400gを加えてポリマーを再溶解し、ジブチルスズジラウレート0.70gを加え、オイルバスにて50℃に加温した。これに、別途NMP42gに2−イソシアナトエチルメタクリレート13.96g(0.09mol(これは、ベースポリマーBP2の収率および当該反応への使用量から算出して、BP2ポリマーの全ヒドロキシル基の50モル%に相当する)を溶解したものを15分かけて滴下した。
【0060】
滴下終了後、50℃にて4時間撹拌した。4時間後、この反応液をイオン交換水4Lに滴下し、その際析出するポリマーを分離、洗浄した後、50℃にて24時間真空乾燥を施すことにより、感光性ポリベンズオキサゾール前駆体(P2)を得た。
参考例1と同様の手法により、このP2ポリマーに対するメタクリレート基の導入率を算出したところ、40.6%であった。
【0061】
【参考例3】
(2官能型アルコキシシラン化合物C3の合成)
容量500mlの3口フラスコに、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル10.01g(0.05mol)、NMP69.5gを投入し、撹拌溶解した。
ここに、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン25.23g(0.102mol)とNMP63.4gの混合液体を室温(24℃)雰囲気で滴下漏斗を用いてゆっくりと滴下し、滴下終了後も室温で3時間撹拌を続けた。
【0062】
その後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で反応の進行を確認したところ、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランは検出されず、生成した2官能型アルコキシシラン化合物C3の単一ピークが観察された。
(感光性樹脂組成物の調製)
【0063】
【実施例3】
感光性ポリベンズオキサゾール前駆体(P1)100重量部に、テトラエチレングリコールジメタクリレート20重量部、N,N'−ジ(2−メタクリルオキシエチル)尿素20重量部、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム6重量部、ミヒラーズケトン2重量部、N−ニトロソジフェニルアミン0.1重量部を加えて、さらに実施例1で得られたアルコキシシラン化合物の溶液(C1)を30重量部加えた後、NMP220重量部に溶解させ、ワニス状の感光性樹脂組成物(V1)を得た。
【0064】
【実施例4】
感光性ポリベンズオキサゾール前駆体(P2)100重量部に、テトラエチレングリコールジメタクリレート20重量部、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム6重量部、ミヒラーズケトン2重量部、N−ニトロソジフェニルアミン0.1重量部を加えて、さらに実施例2で得られたアルコキシシラン化合物の溶液(C2)を35重量部加えた後、NMP220重量部に溶解させ、ワニス状の感光性樹脂組成物(V2)を得た。
【0065】
【比較例1】
アルコキシシラン化合物としてγ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン1.5重量部を用いた以外は、実施例3と同様の調合を行い、ワニス状の感光性樹脂組成物(V3)を得た。
【0066】
【比較例2】
アルコキシシラン化合物としてγ−ユレイドプロピルトリエトキシシラン(50%メタノール溶液)2.7重量部を加えた以外は、実施例3と同様の調合を行い、ワニス状の感光性樹脂組成物(V4)を得た。
【0067】
【比較例3】
アルコキシシラン化合物として、参考例3で得られたアルコキシシラン化合物(C3)溶液を9重量部加えた以外は、実施例3と同様の調合を行い、ワニス状の感光性樹脂組成物(V5)を得た。
【0068】
<感光性樹脂組成物の評価>
これら得られたワニス状組成物を5インチシリコンウェハー上にスピンコーター(東京エレクトロン社製クリーントラックMark7)により塗布し、100℃で3分間乾燥し、15μmの膜厚の塗膜を得た。
この塗膜に、i線ステッパー露光機NSR1755i7B(ニコン社製)により、レチクルを通して露光量を段階的に変化させて露光し、このウェハーを2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(クラリアントジャパン社製AZ300MIF)により未露光部が完全に溶解するまで現像した後、純水でリンスし、ネガ型のパターンを得た。
【0069】
パターンが得られる必要最低露光量(必要最低露光量)、必要最低露光量照射時における限界解像度(限界解像度)、現像時間、400mJ/cm2での現像前と現像後の膜厚の比率(現像残膜率)、現像後の接着性の尺度として剥離せずに残っているラインアンドスペース(L/S)パターンの最小サイズ、凝集析出分の有無などを光学顕微鏡下で観察した。
【0070】
また、上記の各ワニス状溶液をシリコンウェハー上に塗布、乾燥した後、イナートオーブン中で、窒素雰囲気下、350℃、2時間熱処理して、膜厚10μmのポリベンズオキサゾールの加熱硬化フィルムを形成した。この硬化フィルム形成後のサンプルをプレッシャークッカー(131℃、3.0気圧)で100時間処理を行った後、碁盤目テープ剥離試験(JIS K5400)にて、1mm角の正方形100個ができるようにカッターナイフで傷をつけ、上からセロハンテープを貼り付けた後剥離し、セロハンテープに付着せず基板上に残った正方形の数を数えることにより、耐水接着性を評価した。
【0071】
以上の評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
本発明のアルコキシシラン化合物を用いた組成物である実施例3,4の場合、当該アルコキシシラン化合物が重合性を有する2官能型であるにもかかわらず、感光性樹脂マトリクスと類似構造ゆえの相溶性の高さに起因して、凝集析出分が全く観察されない。同時に、リソグラフィー特性と基材密着性が高いレベルで両立されており、実用性は極めて高いといえる。
【0074】
一方、比較例1、2は公知の単官能型アルコキシシラン化合物を用いた場合である。単官能型ゆえに凝集析出こそ観察されないものの、基材密着性が不充分であり、本発明の実施例には遠く及ばない。
【0075】
また、比較例3は2官能型アルコキシシラン化合物の一例を用いた場合であるが、アルコキシシリル基の含有濃度に関して本発明の実施例3、4と同等であるにもかかわらず、ワニス中、塗膜中で激しい凝集析出が観察された。
【0076】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のアルコキシシラン化合物は、電子部品の絶縁材料や半導体装置におけるパッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜などに用いられる耐熱性樹脂材料のパターンを形成するために用いられる感光性樹脂と基板との接着剤として好適であり、これを耐熱性樹脂前駆体を含む感光性樹脂組成物に添加することにより、現像時のパターン形成において基板との優れた接着性が得られ、析出等の問題が無く、また同パターンの加熱硬化後においても、基板との耐水接着性に優れた性能を発揮し、耐熱性樹脂の良好な微細パターンを安定に得ることができる。
Claims (4)
- 下記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物からなり、感光性樹脂組成物の添加成分となる接着性向上剤。
- 一般式(1)において、R1、R1’が炭素数1〜4のアルキル基であり、R2、R2’がメチル基であることを特徴とする請求項1に記載のアルコキシシラン化合物からなり、感光性樹脂組成物の添加成分となる接着性向上剤。
- 請求項1に記載のアルコキシシラン化合物からなる接着性向上剤、耐熱性樹脂前駆体、重合開始剤、不飽和二重結合を有する化合物、及び希釈溶剤を含有する感光性樹脂組成物。
- 前記耐熱性樹脂前駆体が、下記一般式(4)で表されるヒドロキシポリアミドであることを特徴とする請求項3に記載の感光性樹脂組成物。
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