以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
図1は本発明に係るインクジェットプリンタの主要構成を平面的に示す説明図である。なお、以下の説明では、図1において図面左端側を左方向、右端側を右方向、図面下辺側を前方、図面上辺側を後方とする。また、インクを吐出する側を下面および下方向とし、その反対側を上面および上方向とする。
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、その内部において、2本のガイド軸2,3が前後に平行に設けられ、そのガイド軸2,3に、キャリッジを兼用するヘッドホルダ4が取付けられている。ヘッドホルダ4には、ノズル群からインク液滴を吐出して記録用紙Pに記録を行う記録ヘッド5が保持されている。ヘッドホルダ4は、モータ6により回転駆動する無端ベルト7に連結され、モータ6の駆動により、ガイド軸2,3に沿って往復移動する構成とされている。
また、インクジェットプリンタ1の本体の左右方向中央位置には、インクを種類別に収容する複数のインクタンクが配置されている。つまりブラックインクが収容されたインクタンク8Bと、マゼンタインクが収容されたインクタンク8Mと、イエローインクが収容されたインクタンク8Yと、シアンインクが収容されたインクタンク8Cとが配置されている。各インクタンク8B〜8Cは、それぞれ可撓性のインク供給チューブ9B,9M,9Y,9Cを通じてヘッドホルダ4上のチューブジョイント10に接続され、インク供給源となっている。
(ヘッドホルダの主要構造)
次に、ヘッドホルダ4の主要構造について説明する。添字M,C,B,Yは、それぞれマゼンタインク、シアンインク、ブラックインク、イエローインクに関するものであることを示す。
図2及び図3に示すように、ヘッドホルダ4は、上面を開口しバッファタンク31が収容される箱形状に形成され、その底壁4cの下面に、記録ヘッド5が保持されている。
記録ヘッド5は、図4に示すように、インク色毎に列をなしたノズル13〜16を有するキャビティユニット11と、そのノズルからインクを選択的に吐出する圧力を発生する圧電アクチュエータ(図示せず)とを積層して構成されている。キャビティユニット11は、上面に、インク色毎に2つずつインク流入口21Ma,21Mb,21Ya,21Yb,21Ba,21Bb,21Ca,21Cbを有する。マゼンタインク、ブラックインク及びシアンインクについてのインク流入口21Ma,21Mb,21Ba,21Bb,21Ca,21Cbは2つずつ並んで配置されているが、イエローインクについての2つのインク流入口21Ya,21Ybは、それらの間にインク流入口21Ba,21Bbを挟むことで、間隔をおいて離れて配置されている。
なお、各インク流入口21M〜21Cは、その上面をインク濾過用のフィルタ(図示せず)で覆われ、キャビティユニット11内部の各インク流路11aを経て各列のノズル13〜16にインクを供給する。
(バッファタンク31の主要構成)
ヘッドホルダ4内には、バッファタンク31が収容されている。バッファタンク31は、図3に示すように、上下方向には上側タンク部32と、下側タンク部33とが相互に平行に連結して構成され、前後方向においては、前側から順にインク導入エリアS1、バッファエリアS2およびインク導出エリアS3となっている。
バッファエリアS2において上側タンク部32には、中間壁部34を挟んで、上側にはイエローインクを貯留するインク貯留室41が、下側にはマゼンタインクを貯留するインク貯留室42が隣接してそれぞれ形成されている。下側タンク部33には、中間壁部35を挟んで、上側にはシアンインクを貯留するインク貯留室43が、下側にはブラックインクを貯留するインク貯留室44が隣接してそれぞれ形成されている。これらインク貯留室41〜44は、相互に平行であって上下方向に積層状態で配置され、その上下方向と直交する水平方向にそれぞれ広い面を有する扁平形状で、それぞれの広い面に、後述の可撓性の壁面であるフィルム61〜64を有している。つまり、上下側タンク部32,33の中間壁部34,35の上下に各インク貯留室41〜44に2つずつ分けて形成されている。
これにより、バッファタンク31には、上から順に、インク貯留室41〜44が積層状態で配置され、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの各インクが種類別に貯留される。つまり、インク貯留室41〜44は、インクタンク8B〜8Cから記録ヘッドのノズル群に供給するインクを種類別に一時的に貯留するものである。
インク導出エリアS3には、インク貯留室41〜44に対応するインク導出路51M,51Ya,51B,51Yb,51Cが、バッファエリアS2の後方に記録ヘッド5の走査方向に並べて、つまり記録ヘッド5のインク流入口部21M〜21Cの配列方向に沿ってほぼ一列に配置されている。
インク導出路51M〜51Cは、それぞれほぼ同じ長さでインク貯留室41〜44の積層方向に延びて形成されている。つまり、インク導出路51M〜51Cは、図8に示すように、上下側タンク部32,33にそれぞれ対応して形成された筒状壁部40a,40b内を仕切壁部40c,40dによってインク毎に分割して形成されている。各インク導出路51M〜51Cの配列方向中央のインク導出路51Bは、下端に、記録ヘッド5の中央の2つのインク流入口部21Ba,21Bbと対向する2つのインク供給口部39Ba、39Bbを開口している。配列方向の一方の端のインク導出路51Cは、下端に、記録ヘッド5の同側の2つのインク流入口部21Ca,21Cbと対向する2つのインク供給口部39Ca、39Cbを開口している。配列方向の他方の端のインク導出路51Mは、下端に、記録ヘッド5の同側の2つのインク流入口部21Ma,21Mbと対向する2つのインク供給口部39Ma、39Mbを開口している。
一方の端と中央のインク導出路51C,51B間に挟まれたインク導出路51Ybは、記録ヘッド5の1つのインク流入口部21Ybと対向する1つのインク供給口部39Ybを開口している。他方の端と中央のインク導出路51M,51B間に挟まれたインク導出路51Yaは、記録ヘッド5の1つのインク流入口部21Yaと対向する1つのインク供給口部39Yaを開口している。つまり、イエローインクについての2つのインク導出路51Ya,51Ybは、記録ヘッド5のインク流入口部21Ya,21Ybに対応して、それらの間にインク導出路51Bを挟むことで、間隔をおいて離れて配置されている。
その2つのインク導出路51Ya,51Ybの上端部は、インク案内通路部48Y(連通部)を通じて相互に連通されている。このインク案内通路部48Yは、ブラックインクについてのインク導出路51Bを、インク貯留室41〜44側で迂回して設けられている。このインク案内通路部48Yの、インク導出路51Ya側に、後述するインク貯留室41のインク出口41cが開口している。また、このインク出口41cに近い側のインク導出路51Ya側には、インク導出路51Ya側へのエアの流れを抑制する突出リブ49が垂下して形成されている。その突出リブ49の下端は、上側タンク部32の下端よりも長く、下側タンク部33内まで侵入する長さとされ、下側タンク部33に形成されるインク案内通路部48Yの底面との間に、インクの流通を許容する隙間が設けられている。つまり、突出リブ49は、インク導出路51Ya側へのエアの流れを抑制するが、下部においてインクの流通を許容する隙間をあけて位置することになる。
インク導出路51M〜51Cはそれぞれ上下方向に延びていることから、後述するように各インク貯留室41〜44から記録ヘッド5のインク流入口21M〜21Cへ流入しようとするインクから良好にエアを分離し、インク導出路51M〜51Cの上部空間にエアを蓄積する。つまり、インク導出路51M〜51Cの上部空間が、インクに含まれ分離したエアが蓄積されるエアトラップ領域として機能する。
このようにしてインク導出路51M〜51Cの上部空間に蓄積されたエアは、各インク導出路51M〜51Cの上端に形成されたエア排出口46M,46Ya,46B,46Yb,46Cを通じて排気通路71M〜71Bに排出される。
インク導出路51M〜51Cを形成する筒状壁部40a,40b及び仕切壁部40c,40dは、上下側タンク部32,33にそれぞれ対応して上下に分割して形成されている。つまり、下側タンク部33には、インク貯留室41〜44の一側にインク導出路51M〜51Cの下側部分を内部に形成する第1の筒状部40b及び仕切壁部40dが設けられている。一方、上側タンク部32には筒状部40b及び仕切壁部40dの上端に重なってインク導出路51M〜51Cの上端部分を形成する延出部分である筒状部40a及び仕切壁部40cが設けられている。この筒状部40aにおいて、インク導出路51M〜51Cの上端が、インクに含まれていたエアを排出するエア排出口46M〜46Bとして排気通路71M〜71Bに開口されている。
両タンク部32,33の筒状部40a,40bおよび仕切壁部40c,40dを一致させ、その状態で超音波溶着、接着などの接合手段を用いて接合することにより、インク導出路51M〜51Cの上部側部分と下部側部分とが接合され、各インク導出路51M〜51Cが、上下側タンク部32,33にわたって連続して形成される。このとき、インク案内通路部48Yの周囲も接合される。これと同時に、上下側タンク部32,33が相互に結合されて一体化される。また、その状態で、前述したようにインク貯留室41〜44が積層状態として形成される。
インク導入エリアS1は、バッファエリアS2からその前方に延びる延長部40eを備えている。延長部40eは、図3に示すように、ヘッドホルダ4の前端から前方向かつ水平方向に延びる取付腕部4a上に重ねられ支持されている。延長部40eの前方の上面には、チューブジョイント10が取付けられている。チューブジョイント10には、インク供給チューブ9B〜9Cが接続され、各インク供給チューブ9B〜9Cは、延長部40eの上面に開口したインク流路開口52B〜52Cに一対一に対応して連通している。
延長部40eの下面には、図7に示すように、インク流路開口52B〜52Cにそれぞれ上流端が接続されたインク流入路53B,53M,53Y,53Cが形成されている。各インク流入路53B〜53Cは、それぞれ前後方向に延びる凹溝として形成され、延長部40eの下面において左右方向に並んで配置されている。
インク流入路53B〜53Cの下面の長手方向の各開口面は、フィルム54(図3参照)で封止されている。そのフィルム54が各インク流入路53B〜53Cの底面の役割を果たしており、凹溝の内面(上面及び左右側面)およびフィルム54によって各インク流入路53B〜53Cが形成されている。
延長部40eは、上側タンク部32の中間壁部34(図3参照)に連接して一体的に形成されており、インク流入路53B〜53Cの後端は、図6に示すように、延長部40eを上下に貫通したインク導入孔55B,55M,55Y,55Cを介して、延長部40eの上面に形成されたインク導入路56B,56M,56Y,56Cにそれぞれ接続されている。
左右端のインク導入路56C,56Bは、後述するようにそれぞれインク連絡路58C,58Bを介して下側タンク部33のインク貯留室44,43に接続され、2つの中央のインク導入路56Y,56Mは、それぞれに上側タンク部32のインク貯留室41,42に接続されている。
上下側タンク部32,33の対向面の、左右端のインク導入路56C,56Bの後端と平面視において重なる位置には、第2の筒状部57a,57bが突設され、その筒状部57a,57bを貫通するインク連絡路58C,58Bの上端が、インク導入路56C,56Bの後端と接続されている。第2の筒状部57a,57bは、インク貯留室41〜44の前縁側に沿ってほぼ一列に、かつそのインク貯留室の左右方向両端付近に相互に間隔を置いて配置され、筒状部40a,40b(インク導出路51M〜51C)の左右両端に位置するインク導出路51M,51Cと前後方向において対応して配置されている。
筒状部57a,57bは、上側タンク部32側の突出部分57aa,57abと下側タンク部33側の突出部分57ba,57bbとが相互に接合されて形成される。よって、筒状部57a,57bの突出部分57aa,57ab,57ba,57bbどうしが超音波溶着、接着などの接合手段でと前後方向において相互に接合されることで、上側タンク部32のインク導入路56C,56Bと下側タンク部33のインク貯留室43,44とがインク連絡路58C,58Bを介して接続される。なお、筒状壁部57a,57bは、上側タンク部32または下側タンク部33の一方のみから突出して形成されてもよい。
また、両筒状部57a,57bの突出部分57aa,57ab,57ba,57bbどうしを接合すること同時に、前述した筒状部40a,40bも接合することで、上下側タンク部32,33が相互に連結され一体化される。
なお、筒状部57a,57bの近傍において、上側タンク部32に突出形成された係合部32aが、下側タンク部33に突出形成された被係合部33aに、下側タンク部33に対する上側タンク部32の相対回転を規制する方向に当接係合している。これにより、上下側タンク部32,33の左右方向の幅が広い場合でもその両者の接合を安定的に行うことができる。
(各インク貯留室41〜44の主要構造)
次に、各インク貯留室41〜44の主要構造について図を参照して説明する。
−イエローインクのインク貯留室41の構造−
インク貯留室41について、図6及び図10を参照して説明する。
バッファエリアS2において上側タンク部32の中間壁部34の周囲上面には、平面視が略四角形状である周回壁部41aが設けられ、その周回壁部41aに囲まれる内部空間の上部開口が変形可能な可撓性の壁面としてのフィルム61に閉塞されて、扁平な空間からなるイエローインクのインク貯留室41が形成されている。このフィルム61の可撓性は、インク貯留室41内のインクに生じた圧力変化によって撓み得る可撓性を意味する。
このインク貯留室41には、周回壁部41aの前側部分のほぼ中央部分付近に、インク導入路56Yの下流端がインク入口41bとして開口し、インクタンク8Yからのインクが流入するようになっている。また、周回壁部41aの後側部分の左右方向の中央からやや左寄りであって、インク貯留室41の後方左角部から右方向へ変位した箇所であり、かつ、周回壁部41aの後側部分から後方へ少し突出した箇所には、インク貯留室41内のイエローインクが流出するインク出口41cが形成され、記録ヘッド5のノズルにインクを流出するようになっている。
そして、イエローインクのインク入口41bとインク出口41cとは、インク貯留室41の略対角位置に設けられている。換言すると、インク貯留室41内の大部分の空間を挟んで互いにほぼ最も離れた位置にそれぞれ形成されている。
よって、インク貯留室41は、インク入口41bからインク出口41cへ向かうインクの流れ方向と平行でかつ対向する一対の壁面(中間壁部34の上面、フィルム61の下面)と、その一対の壁面間の空間の周囲を囲む周回壁部41aとを備える。
インク出口41cは、インク貯留室41の底面から上側タンク部32の中間壁部34を下方へ貫通して、連通部となるインク案内通路部48Yの上方に開口し、そのインク案内通路部48Yを通じて2つのインク導出路51Ya,51Ybへ接続され、さらに各インク導出路51Ya,51Ybから記録ヘッド5のインク流入口部21Ya,21Ybに接続されている。
つまり、イエローインクについての2つのインク流入口21Ya,21Ybに対応する2つのインク導出路51Ya,51Ybの間に、ブラックインクについてのインク導出路51Bが配置されることで、それらが離れて配置されるので、ブラックインクについてのインク導出路51Bを迂回して、イエローインクについてのインク導出路51Ya,51Ybの上部同士がインク案内通路部48Yを通じて相互に連通されている。
なお、インク案内通路部48Yは、イエローインクについてのインク導出路51Ya,51Ybの上部同士を相互に連通しているが、少なくとも上部同士が連通されていればよく、上部につながる中間部も相互に連通する構成とすることも可能である。
フィルム61は、周回壁部41aの上部開口だけでなく、インク導入路56M〜56Y、後述する接続導出路65M、インク通路部70Bおよび排気通路71M〜71Bの上方に開放している部分も、封止している。つまり、インク導入路56M〜56Y、後述する接続導出路65M、インク通路部70Bおよび排気通路71M〜71Bの外周を確定する側壁の上面は、インク貯留室41周囲の周回壁部41aの上面と同じ平面上に形成されており、フィルム61がその上面に接着、熱溶着などの接合手段により接合される。それにより、インク貯留室41、インク導入路56M〜56Y、接続導出路65M、インク通路部70Bおよび排気通路71M〜71Bがそれぞれ区画されている。
また、インク貯留室41の平坦底面(中間壁部34の上面)には、イエローインクのインク入口41bとインク出口41cとを結ぶ線の両側に間隔をおいて、フィルム61に向け突出しかつそのフィルム61と間隔をあけて前記インクの流れ方向と平行に延びる一対の整流リブ41d,41eがそれぞれ立ち上がって一体に形成されている。また、一対の整流リブ41d,41eは、その両整流リブ41d,41eの互いの対向方向の外側に周回壁部41aと、平面視三角形状の空間をあけて位置している。一対の整流リブ41d,41eの前記インク流れ方向の端部は、その延長方向において前記周回壁部41aの内壁面と間隔41da,41db,41ea,41ebをあけている。これにより、間隔41da,41db,41ea,41ebを通して一対の整流リブ41d,41e間の空間(インク流路となる空間)と、その外側の周回壁部41aとの間の空間とを接続している。なお、前記間隔41da,41db,41ea,41ebは、1〜2mm程度の長さに設定されている。
この一対の整流リブ41d,41eは、インク入口41bからインク出口41cへインクが速やかに流れるのをガイドするためのものである。加えて、屈曲部を有する小片からなる案内リブ41fが、整流リブ41dと整流リブ41eとの間であって、屈曲している整流リブ41dに沿ってインク出口41cへ向けインクの流れを案内するように形成されている。
これら整流リブ41d,41e及び案内リブ41fは、それぞれ縦断面が四角形状であり、ともにインク貯留室41の深さ(フィルム61から前記底面までの距離)の半分程度の高さに形成され、フィルム61と間隔を置き、フィルム61の動きを制限しないように設けられている。
−マゼンタインクのインク貯留室42−
インク貯留室42について、図7及び図11を参照して説明する。なお、図7は上側タンク部32を下方から見た図であるので、図中の左方向が「右方向」、図中の右方向が「左方向」となる。
上側タンク部32の中間壁部34の下面には、平面視が略四角形状であり、下面が同形状に開口した扁平な空間からなるマゼンタインクのインク貯留室42が形成されている。インク貯留室42は、周囲が周回壁部42aにより区画されており、図10〜図13に示すように、中間壁部34を介してインク貯留室41と隣接して下側に設けられている。
マゼンタインクのインク貯留室42のインク入口42bは、丸穴状で、インク貯留室42内の右前方の角部近傍の底面に開口されており、上側タンク部32を貫通してインク導入路56M(図6参照)の下流端に接続されている。
インク貯留室42のインク出口42cは、矩形穴状で、インク入口42bと対角の位置になる左後方の角部近傍の底面に開口され、上側タンク部32を貫通している。上側タンク部32の上面には、インク出口42cと対応する位置であってインク貯留室41の外の位置に接続導出路65Mが形成されている。接続導出路65Mの一端は、上側タンク部32を貫通したインク出口42cと接続され、他端は、上側タンク部32を上面から下面へ貫通する開口65Maを通じてインク導出路51Mに接続されている。インク導出路51Mの底部には2つのインク供給口39Ma,39Mbが設けられている。
マゼンタインクのインク入口42bとインク出口42cとは、インク貯留室42の略対角位置に設けられている。換言すると、インク貯留室42内の大部分の空間を挟んで互いにほぼ最も離れた位置にそれぞれ形成されている。つまり、マゼンタインクのインク入口42bとインク出口42cとは、インク貯留室42内のインクが流れる大部分の空間を挟んで互いにほぼ最も離れた位置にそれぞれ形成されている。
また、イエローインクのインク貯留室41とマゼンタインクのインク貯留室42とは、上側タンク部32の中間壁部34を挟んで上下に隣接する関係にあり、イエローインクのインク入口41bおよびインク出口41cと、マゼンタインクのインク入口42bおよびインク出口42cとが、中間壁部34に沿って相互に異なる位置に配置されている。つまり、上側タンク部32を平面視したとき、イエローインクのインク入口41bとインク出口41cとを結ぶ線と、マゼンタインクのインク入口42bとインク出口42cとを結ぶ線とは異なる方向に延び、互いに対角線のように交差している。
インク貯留室42の下方に開放している面は、可撓性を有するフィルム62で封止されている。フィルム62は、インク貯留室42の周回壁部42a上に接着、熱溶着などの接合手段により接合され、それにより、インク貯留室42が区画されている。
インク貯留室42の底面には、整流リブ42d,42eが立設されている。整流リブ42d、42eは、マゼンタインクのインク入口42bとインク出口42cとを結ぶ対角線を挟んで、対角線からの距離がほぼ等しくなるように平行に設けられている。また、整流リブ42d,42eは、それぞれ縦断面が四角形状であり、ともにインク貯留室42の深さ(フィルム62から前記底面までの距離)の半分程度の高さに形成され、フィルム62と間隔をおいて、フィルム62の動きを制限しないように設けられている。整流リブ42d,42eは、インク入口42bからインク出口42cへインクが速やかに流れるのをガイドするためのものである。この整流リブ42d,42eの前記インク流れ方向の端部も、その延長方向において前記周回壁部42aの内壁面と間隔42da,42db,42ea,42ebをあけている。
−シアンインクのインク貯留室43−
インク貯留室43について、図8及び図12を参照して説明する。
下側タンク部33の中間壁部35の上側には、マゼンタインクのインク貯留室42と対応する位置に同形状のシアンインクのインク貯留室43が、周回壁部43aにより区画されて、上方に開口されている。インク貯留室43の底面には、整流リブ42d,42e(図7参照)と同形状の整流リブ43d,43eが設けられている。この整流リブ43d,43eの前記インク流れ方向の端部も、その延長方向において前記周回壁部43aの内壁面と間隔43da,43db,43ea,43ebをあけている。
シアンインクのインク貯留室43の開口面は、マゼンタインクのインク貯留室42と同様に、略長方形の可撓性を有するフィルム63により封止されている。これにより、マゼンタインクのインク貯留室42のフィルム62とシアンインクのインク貯留室43のフィルム63とが間隔をおいて平行に対向している。
シアンインクのインク入口43bは、インク貯留室43内の左前方の角部近傍の底面に開口されており、下側タンク部33の中間壁部35を厚さ方向に貫通して、中間壁部35の下面に形成されている連通路66の一端に接続されている。連通路66は、ブラックインクのインク貯留室44の外においてその左前方の角部に形成されており、他端が下側タンク部33を厚さ方向に貫通したインク連絡路58Cの下端と接続されている。
つまり、上側タンク部32を中間壁部34の上面に形成されているインク導入路56Cは、上下側タンク部32,33の積層方向に貫通するインク連絡路58Cおよび連通路66を介して、シアンインク貯留室43のシアンインクのインク入口43bに連通されている。
インク貯留室43のインク出口43cは、インク貯留室43内の右後方の角部近傍の底面に開口されており、下側タンク部33の中間壁部35を厚さ方向に貫通して下側タンク部33の下面に形成されている接続導出路65Cと接続されている。図9に示すように、接続導出路65Cは、ブラックインクのインク貯留室44の外においてその右後方の角部に横断面矩形状に形成されている。この接続導出路65Cの下流端部分は、インク導出路51Cと平面視において重なって位置しており、下側タンク部33を下から上へ貫通する開口65Caを通じてインク導出路51Cの上端よりも下の位置へ接続している(図12参照)。
−ブラックインクのインク貯留室44−
インク貯留室44について、図9及び図13を参照して説明する。なお、図9は下方から見た図であるので、図中の上方向が「前方向」、図中の下方向が「後方向」となる。
下側タンク部33の中間壁部35の下面には、平面視が略四角形状であり、下面が同形状に開口した扁平な空間からなるブラックインクのインク貯留室44が形成されている。インク貯留室44は、周囲が周回壁部44aにより区画されており、図10〜図13に示すように、中間壁部35を介してシアンインクのインク貯留室43と上下方向において隣接して設けられている。
また、インク貯留室44の左前方の角部に隣接してシアンインクのための連通路66が、右後方の角部に隣接して接続導出路65Cがそれぞれ区画されて設けられている。
インク貯留室44の前方部分は、インク連絡路58Bと平面視において重なって位置しており、インク連絡路58Bは、下側タンク部33を上下方向に貫通し、インク貯留室44内の右前方の角部近傍の底面に開口している。つまり、インク連絡路58Bの下端開口は、インク貯留室44のインク入口44bとなっている。
インク貯留室44内のブラックインクを流出させるブラックインクのインク出口44cは、インク貯留室44内の左後方の角部近傍の底面に開口されている。このインク出口44cは、上下側タンク部32,33を上下方向において貫通する貫通路69Bの下端となっており、この貫通路69Bの上端は上側タンク部32の中間壁部34の上面側でインク通路部70Bの一端に開口し、このインク通路部70Bを経て上側タンク部32を上下方向に貫通するインク通路部70Bの他端開口70Baからインク導出路51Bの上部へ接続している。
ブラックインクのインク入口44bとインク出口44cとは、インク貯留室44の略対角位置に設けられている。換言すると、インク貯留室44内の大部分の空間を挟んで互いにほぼ最も離れた位置にそれぞれ形成されている。
また、インク貯留室44とインク貯留室43とは、下側タンク部33の中間壁部35を介して上下に隣接する関係にあり、ブラックインクのインク入口44bおよびインク出口44cと、シアンインクのインク入口43bおよびインク出口43cとが、中間壁部35に沿って相互に異なる位置に配置されている。
つまり、下側タンク部33を平面視したとき、シアンインクのインク入口43bとインク出口43cとを結ぶ線と、ブラックインクのインク入口44bとインク出口44cとを結ぶ線とは異なる方向に延び、互いに対角線のように交差している。
ブラックインクのインク貯留室44、連通路66、および接続導出路65Cの下方に開放している面は、可撓性を有するフィルム64で封止されている。連通路66、接続導出路65Cおよびインク貯留室44を画定する周回壁部44aの下面は同じ平面上に形成されており、フィルム64がその面に接着、熱溶着などの接合手段により接合される。それにより、ブラックインクのインク貯留室44、連通路66、および接続導出路65Cがそれぞれ区画されている。
インク貯留室44の底面には、インク入口41bとインク出口41cとを結ぶ線の両側に間隔をおいて整流リブ44d,44eが立設されている。整流リブ44d,44eは、それぞれ縦断面が四角形状であり、ともにインク貯留室44の深さ(フィルム64から前記底面までの距離)の半分程度の高さに形成され、フィルム64と間隔を置き、フィルム64の動きを制限しないように位置している。整流リブ44d,44eは、インク入口44bからインク出口44cへインクが速やかに流れるのをガイドするためのもので、それらの端部は周回壁部44aの内壁面に接続されている。
なお、図3および図9に示すように、バッファタンク31は、ヘッドホルダ4の底壁4cの下面に固定された記録ヘッド5に対して3本のねじ23で固定されている。具体的には、一列に配置されるインク供給口39M〜39Cの両端外側および中間部外側に貫通孔部24a,24b,24cが設けられ、この貫通孔部24a〜24cそれぞれにねじ23が挿通されている。インク供給口39M〜39Cとインク流入口21M〜21Cとの間にシールゴム材(図示しない)が挟まれ、ねじ23でバッファタンク31が記録ヘッド5に固定される。インク供給口部39M〜39Cの周囲には、前記シールゴム材の外周に沿ってそのシールゴム材の倒れ防止リブ25が設けられ、そのリブ25の一部に連続して中央の貫通孔部24cが設けられ、両端の貫通孔24a,24bは、前記シールゴム材の水平方向の荷重中心軸L2から互いに反対方向に1〜2mm程度ずらせて設けられている。
(各インクの流れ方)
イエローインクは、図6及び図7に示すように、インク流路開口52Yからインク流入路53Y,56Yを経て、インク入口41bからインク貯留室41に導入される。インク貯留室41に導入されたイエローインクは、インク入口41bからインク出口41cに向かってインク貯留室41内の大部分の空間を横切って流れる。
インク貯留室41のインク出口41cから流出したイエローインクは、図10に示すように、インク導出路51Bを迂回して設けられるインク案内通路部48Yを経て、互いに離れて配置されているインク導出路51Ya,51Ybに至り、インク供給口39Ya,39Ybから記録ヘッド5のインク流入口21Ya,21Ybに供給される。
マゼンタインクは、図6及び図7に示すように、インク流路開口52Mからインク流入路53M,56Mを経て、インク入口42bから上側タンク部32の下側のインク貯留室42に導入される。インク貯留室42に導入されたマゼンタインクは、インク入口42bからインク出口42cに向かって流れる。
インク貯留室42のインク出口42cから流出したマゼンタインクは、図11に示すように、接続導出路65Mを経て、インク導出路51Mに至り、インク供給口39Ma,39Mbから記録ヘッド5のインク流入口21Ma,21Mbへ供給される。
シアンインクは、図6、図7及び図8に示すように、インク流路開口52Cからインク流入路53C,56Cを経て、上下側タンク部32,33を積層方向に貫通するインク連絡路58Cを経て、下側タンク部33下面側の連通路66へ流入した後、インク入口43bから上面側のインク貯留室43に導入される。インク貯留室43に導入されたシアンインクは、インク入口43bからインク出口43cに向かって流れる。
インク貯留室43のインク出口43cから流出したインクは、図12に示すように、接続導出路65Cを経てインク導出路51Cに至り、インク供給口39Ca,39Cbから記録ヘッド5のインク流入口21Ca,21Cbへ供給される。
ブラックインクは、図6、図7及び図11に示すように、インク流路開口52Bからインク流入路53B,56Bを経て、上下側タンク部32,33を積層方向に貫通するインク連絡路58Bを経て、下側タンク部33の下面側のインク貯留室44にインク入口44b(インク連絡通路58Bの下端開口)から導入される。インク貯留室44に導入されたブラックインクは、インク入口44bからインク出口44cに向かって流れる。
インク貯留室44から流出したブラックインクは、図13に示すように、貫通路69Bを通じて上側タンク部32の中間壁部34の上面側まで一旦上昇し、インク通路部70Bを経てインク導出路51Bに至り、インク供給口39Ba,39Bbから記録ヘッド5のインク流入口21Ba,21Bbへ供給される。
このように、インク貯留室41〜44から流出した各インクは、上下方向に延びるインク導出路51M〜51Cに流れ込み貯留されるむので、各インク導出路51M〜51Cにおいてインクから良好にエアを分離し、および記録ヘッド5の各インク流入口21M〜21Cに設けたフィルタで捕捉したエアを浮上させ、インク導出路51M〜51Cの上部空間にエアを蓄積し、エア排出口46M〜46Bを通じて排気通路71M〜71Bに排出することができる。
前述した記録ヘッド5の各インク流入口21M〜21Cへの各インクの供給は、インク貯留室41〜44および記録ヘッド5を記録媒体に対して走査しながら行われ、インク圧力の変動などの影響を受けやすいが、インク貯留室41〜44の上下壁面の一方を可撓性の壁面であるフィルム61〜64としているので、インク圧力の変動等をフィルム61〜64の変形により効果的に抑えて高品質の記録を行うことができる。とくに、インク貯留室41〜44を画定する相互に平行な壁面としてフィルム61〜64を備えるので、その積層方向の高さを抑えながら可撓性の壁面の面積を大きくとることができ、インク圧力の変動等を抑える上で有利である。
(排気通路71M〜71Bの構造)
インク供給口39M〜39Cの上方に位置するインク導出路51M〜51Cの上端部は、図7及び図8に示すように、上側タンク部32の上面に形成されるエア排出口46M〜46Cに接続され、上側タンク部32の上面に沿って、凹溝として形成された排気通路71M,71Y,71B,71Cを介して、バッファエリアS2の一側部に配置された排気装置部45の、各インク色毎の、各排気装置(ブラックインクについての排気装置45Bのみ図示、図14参照)の上端にそれぞれ接続されている。各排気装置は、それの排気弁の軸線方向が、インク導出路51M〜51Cの長手方向と平行になるように配置されている。このようにして、インク導出路51M〜51Cの上端に位置するエア排出口46M〜46Cと排気装置部45の各排気装置の上端とが上側タンク部32の上面に形成した排気通路71M〜71Cで相互に接続される。なお、各排気通路71M〜71Cは、それらの開放上面を、インク貯留室41の上面となる可撓性のフィルム61を延長して覆うことで画定されている。
各排気通路71M〜71Cは、図6に示すように、上側タンク部32の上面において、イエローインクのインク貯留室41の側縁部に沿って、インク導出路51M〜51Cの上端から一旦右方向に曲がり、それから前方に延びて排気装置部45の各排気装置の上端に接続されている。
各排気装置を駆動制御して排気弁を適宜開放動作させることにより、各インク導出路51M〜51Cの上部空間に蓄積されるエアが、排気通路71M〜71Cを通じて外部に排出される。
(排気装置部及びメンテナンスユニットの概略構造)
排気装置部45の排気装置は、インク導出路51M〜51Cの数に対応して複数個設けられ、それらが、インク導出エリアS3からバッファエリアS2を経てインク導入エリアS1に向かって、筒状部40a,40b、インク貯留室41〜44及び筒状部57a,57bがなす列とほぼ平行に一列に配置されている。
排気装置部45の各排気装置は、上下側タンク部32,33からそれぞれアーム部81(81A,81B)を介して延長して設けられ、インク貯留室41〜44の、インク導出路51M〜51Cが列状に設けられている後側部とは異なる右側部に配置されている。
各排気装置の排気弁箱82の下側部分82Bは、後述する排気弁102(弁手段)を収容する第3の筒状部45bを上下方向に延びた状態で備え、アーム部81の下側部分81Bを介して下側タンク部33に結合されている。
一方、排気弁箱82の上側部分82Aは、上側タンク部32において、第3の筒状部45bの上端に重なって各排気装置の上端部を形成する第2の延出部分である筒状部45aを備え、アーム部81の上側部分81Aを介して上側タンク部に結合されている。このアーム部81の上側部分81Aの上面側に排気通路71M〜71Bの中間部分が設けられている。排気通路71M〜71Bの下流端部は、筒状部45a上に延び、筒状部45aの内部空間を経て筒状部45bの内に連通している。
このように、筒状部45aを含む排気弁箱82の上側部分82Aを上側タンク部32が一体に備え、筒状部45bを含む排気弁箱82の下側部分82Bを下側タンク部33が一体に備え、前述のとおり上下側タンク部32,33を接合したとき、筒状部45a,45bも同時に接合されて排気弁箱82が形成される。
また、排気弁箱82の下側部分82Bにおいて、排気装置部45の各排気装置の配列方向両端において筒状部45a付近に係止部33bが形成される一方、上側部分82Aにおいて、係止部33bに係脱可能に係止される被係止孔部32bが筒状部45b付近に形成されている。これらが係合された状態で、筒状部45a,45bどうしの接合が行われる。これにより、係止部33bと係止孔部32bとの係合部分を結ぶ線L1(図6参照)上に、各排気装置のコイルスプリング(例えばブラックインクの排気装置45Bについてのコイルスプリング103、図14参照)の軸線が並ぶが、上下側部分82A,82Bを係止した際に上側部分82Aが前記コイルスプリングのスプリング力によって傾くことをなくし、超音波溶着などによる接合の際に、上側部分82Aと下側部分82Bとの間に接合ずれを生ずるのを回避するようにしている。
各排気通路71M〜71B毎に、各排気通路71M〜71Bの下流側部分には排気通路を開閉する弁手段を有する4つの排気装置を含む排気装置部45が設けられているが、各排気装置はいずれも同じ構成であるので、以下、図14を参照して、ブラックインクについての排気装置45Bについて説明する。
排気通路71Bに連通する排気孔101は、図14に示すように、上下方向に長くかつ上下に開口するもので、排気入口部101aと排気出口部101bとを有し排気弁102が摺動可能である弁室として機能する。排気孔101は、上側の大径孔部101Aと、下側に位置する小径孔部101Bとを有し、それらが排気出口部101bを通じて連通している。
排気弁102は、大径の弁部102aと、その下端に一体に連接した小径のバルブロッド102bと、このバルブロッド102bに嵌合されたリング状のシール材104とを備える。弁部102aは、バルブロッド102bよりも大径とされ、シール材104がその弁部102aに接触するようにバルブロッド102bに設けられている。また、弁部102aは、シール材104を介して、大径孔部101Aの底面であり小径孔部101Bの上端開口部である排気出口部101bの周囲の開口端面101C(弁座面)と対向する。そして、排気孔101の大径孔部101Aには大径の弁部102aが、小径孔部101Bにはバルブロッド102bが、それぞれ空気(気体)の流通を可能にする隙間を残して挿入されることで、排気弁102がその中心軸線方向において排気孔101(弁室)内に摺動可能に支持されている。バルブロッド102bは、後述するように弁開放時に、メンテナンスユニットに設けられた突出軸部121によって押し上げられるため、それの下端が(弁閉止状態で)小径孔部101Bの下端開口部近傍に位置するようになっている。
大気に連通する排気出口部101b周囲の開口端面101Cが弁座面となり、この開口端面101Cと弁部102aとの間にシール材104が配置される。
また、大径孔部101Aの内部には、排気出口部101bを閉塞する方向に排気弁102(弁部102a)を付勢する付勢手段として、コイルスプリング103が挿入されている。つまり、コイルスプリング103の上端部は、排気弁箱82の上側部分82Aの係合凸部82Aaの外側に嵌合され、下端部は弁部102a上側凹部内に嵌挿されている。係合凸部82Aaの周囲には排気入口部101aが形成され、コイルスプリング103の外側に、排気入口部101aから排気出口部101bへの排気(空気)の流路が形成されていることになる。
このように、コイルスプリング103によって、シール材104が開口端面101Cに当接する方向に弁部102aが常時付勢されているので、突出軸部121による押し上げ力が排気弁102に作用しない通常時は、排気弁102の弁部102aが排気出口部101bを閉じる弁閉止状態となる。
排気弁102のバルブロッド102bには、複数の溝部102dが全長に亘って形成されている。このバルブロッド102bに形成された溝部102dが、弁部102aとシール材104とが離れたとき、バルブロッド102bとシール材104との間に空気の流れを確実に許容する隙間(排気の流路)として機能する。
また、記録ヘッド5のノズル面のクリーニング、色毎にインクを選択的に吸引するための回復処理、およびバッファタンク31内に滞留されたエアを除去する除去処理を行うメンテナンスユニットとして、記録ヘッド5のノズル35〜38の開口面を開閉可能に覆う第1のキャップ部材122(図3参照)と、排気弁箱82の下端面(すなわち各小径孔部101bの下端開口面)を個別に開閉可能に覆う複数の第2のキャップ部材123とを備える。キャップ部材122,123は、公知のメンテナンスユニットと同様の上下移動機構により、上下移動可能に支持される。記録ヘッド5が、記録を行わない待機位置に移動したときに、ノズル開口面および排気弁箱82の下端面に密着する上昇位置にキャップ部材122,123が移動し、他の位置ではそれらの面から離隔するように下降位置に移動する。また、第1のキャップ部材122は、公知のメンテナンスユニットと同様に吸引ポンプ(図示せず)に接続され、この吸引ポンプの駆動によりノズル35〜38から増粘したインクや異物を吸引除去する構成とされる。
各第2のキャップ部材123は、そのキャップ部材123よりも突出した突出軸部121をそれぞれ有し、排気弁箱82の下端面に密着したとき、突出軸部121により、排気弁102をコイルスプリング103の付勢力に抗して押し上げ、シール材104を大径孔部101Aの開口端面101Cから離し、排気出口部101bを開放する弁開放状態にする。
各第2のキャップ部材123は排気流路124を介して前記吸引ポンプに接続され、前記吸引ポンプの駆動により各インク導出路51M〜51Cの上部空間内に蓄積したエアが一括して吸引され大気に排出される。このようにして各インク導出路51M〜51Cの上部空間に蓄積したエアを外部に排出することができる。
なお、第1のキャップ部材122と、第2のキャップ部材123とは、図示しない切替弁により前記吸引ポンプに択一的に接続される。
前記実施の形態では、排気装置部45の各排気装置をアーム部81を介してバッファタンク31と一体に形成しているが、排気通路をエアパイプで構成することで、排気装置部の各排気装置を別体として構成することも可能である。