以下、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図12は本発明に係るインクジェットプリンタの第1実施形態を示している。図1は第1実施形態におけるインクジェットプリンタの記録部の斜視図、図2はヘッドユニットの斜視図、図3はヘッドユニットの分解斜視図、図4のうち(a)は上ケースを上方から見た斜視図、(b)は下ケースを上方から見た斜視図、図5のうち(a)は下ケースを下方から見た斜視図、(b)は上ケースを下方から見た斜視図、図6は可撓性膜を除いた状態のヘッドユニットの平面図、図7はヘッドユニットの下面図、図8は図7のXIIIーXIII視側断面図、図9は可撓性膜を取り付けた状態のダンパー装置の平面図、図10は可撓性膜を除いた状態のダンパー装置の下面図、図11は図9のXI−XI視側断面図、図12は図9のXIIーXII視側断面図である。
図1に示すように、本願発明に係るインクジェットプリンタは、本体フレーム(図示せず)の内部に、被記録媒体である用紙Pにインクを吐出して記録する記録部1を備えている。このインクジェットプリンタは、例えば、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能等を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device )のプリンタ機能として適用されるものである。
記録部1は、用紙搬送方向(X方向)と直交するY方向(主走査方向)に延びる横長の板状のガイドレール2,3に跨った状態で往復摺動可能なキャリッジを構成するヘッドユニット4、このヘッドユニット4を往復移動させるためにガイドレール3の上面にこれと平行状に配置されたタイミングベルト8、及び当該タイミングベルト8を駆動するCR(キャリッジ)モータ6等を備えている。
図2及び図3に示すように、ヘッドユニット4には、略箱状の本体部20a及びこの本体部20aから用紙搬送方向下流側(図1の矢印A方向)に突出する連結支持片20bを有するヘッドホルダ20と、当該ヘッドホルダ20における底板20cの下面側(外面側)に固定されたインクジェット式の記録ヘッド21と、底板20cの上面側(内面側)に固定されたインク供給装置としてのダンパー装置10と、当該ダンパー装置10に蓄積されたインク中の気泡を除去するための排気弁手段11と、フレキシブル配線ケーブル24上に設けられた駆動回路61(詳細は後述する)で発生した熱を外部に放出するための放熱部材65とが備えられている。
ダンパー装置10には排気弁手段11が一体的に組み込まれている。また、放熱部材65とダンパー装置10と排気弁手段11との三者は、平面視でY方向(主走査方向)に並ぶように配置されている。
ダンパー装置10には、用紙搬送下流側(図1の矢印A方向)に略水平に延びる連結片13が設けられている。ダンパー装置10をヘッドホルダ20に搭載した状態では、連結片13はヘッドホルダ20の連結支持片20bに重なって支持される。この連結片13に形成された各インク色毎の供給管接続口47a〜47d(詳細は後述する)に対して、可撓性を有するインク供給管14(インクチューブ)の先端部が接続される。なお、ダンパー装置10及び排気弁手段11の上面と、ダンパー装置10の連結片13の上面とは、それぞれ蓋カバー体15,16で覆われている(図1参照)。
インクジェットプリンタには、フルカラー記録のためのインク供給源として、ブラックインク(BK)、シアンインク(C)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)の個別のインクタンク(図示せず)が本体フレーム内に配置されている。インクは、各インクタンクに基端部を接続したインク供給管14から、ダンパー装置10を経由して記録ヘッド21に供給される。
第1実施形態では、インク色がブラックインク(BK)、シアンインク(C)、イエローインク(Y)、マゼンタインク(M)の4色であるため、インク供給管14は4本であるが、インクの種類(色種や艶出し液等)及びインク供給管の数等は、これに限定されるものではない。
記録ヘッド21は、特開2002−67312号公報、特開2001−219560号公報等で公知のものと同様に、上面の一側に各インク色毎のインク供給口81(実施形態では4つ)を有している。ダンパー装置10を経由したインクは、各インク供給口81から延びるインク供給チャンネル(マニホールド)を介してそれぞれ多数の圧力室(図示せず)に分配される。そして、各圧力室に対応するように記録ヘッド21の上面に接合された圧電素子等のアクチュエータ23の駆動により、インクは記録ヘッド21の下面に形成された多数のノズル22から選択的に用紙Pに向けて吐出する。
記録ヘッド21の下面側のノズル22は、X方向(用紙搬送方向、副走査方向)に延びる4列のノズル列22a〜22dとして形成されている。第1実施形態では、図7の左側からブラックインク(BK)用のノズル列22a、シアンインク(C)用のノズル列22b、イエローインク(Y)用のノズル列22c、及びマゼンタインク(M)用のノズル列22dの順に並んでいる。これら各ノズル22は、用紙Pの上面に対向するように下向きに露出している。
図3に示すように、記録ヘッド21上に接合されたアクチュエータ23の上面には、当該アクチュエータ23に電圧を印加するフレキシブル配線ケーブル24が取り付けられている。フレキシブル配線ケーブル24は可撓性を有する帯状のものである。このフレキシブル配線ケーブル24における長手中途部の広巾面には、アクチュエータ23を駆動させるための電気信号を発する熱源としての駆動回路61が取り付けられている。
駆動回路61は、公知のもの(例えば特開2002−160372号公報に記載のドライバIC)と同様に、本体フレーム側に静置された制御装置からシリアル転送された記録データを、ノズル22に対応するパラレル信号に変換し、アクチュエータ23の駆動に適した電圧信号に変換するものであり、ICチップ化されている。
記録ヘッド21の上面には、平面視矩形枠状の補強フレーム83が接着剤により固定され、その記録ヘッド21と補強フレーム83とのユニットは、ヘッドホルダの20の底板20cの下面に接着剤で固定されている。補強フレーム83の下面側には、記録ヘッド21のノズル面との段差を解消するために、平面視略コ字状のフロントフレーム84が取り付けられている。
記録ヘッド21のインク供給口81は、補強フレーム83に上下位置を対応させて形成された開口を介して、ダンパー装置10のヘッド接続口41a〜41d(詳細は後述する)に連通している。なお、記録ヘッド21のインク供給口81とダンパー装置10のヘッド接続口41との間には、インク漏れを防止するために、ゴムパッキン等のシール材82が介挿されている。
次に、図3〜図12を参照しながら、ダンパー装置10の構成について説明する。
ダンパー装置10には、インク色毎に独立した複数のダンパー室30a〜30dを有する本体ケース25が備えられている。本体ケース25は、ヘッドホルダ20における底板20cの上面側(底板20cを挟んで記録ヘッド21よりも上方)に、記録ヘッド21に対して略水平となるように配置される。
本体ケース25内における複数のダンパー室30a〜30dは、主仕切り壁35及びこれと交差する副仕切り壁36,37で区画されている。第1実施形態では、主仕切り壁35の下方に、ブラックインク(BK)用のダンパー室30aの一部である第1室31aが配置されている。主仕切り壁35の上方には、ブラックインク用のダンパー室30aの他の一部である第2室60a、シアンインク(C)用のダンパー室30b、イエローインク(Y)用のダンパー室30c、及びマゼンタインク(M)用のダンパー室30dが配置されている。従って、本体ケース25は、全体として上下に2層状に構成されている。
図3〜図5に示すように、本体ケース25は、平面視略長方形で扁平状の上ケース26と、矩形筒状の側壁を外周に有すると共に上下面を開放した略箱状の下ケース27とにより構成されている。上下両ケース26,27は、いずれも合成樹脂材料で射出成形されたものであり且つ剛性を有している。上下両ケース26,27間の接合部分は、超音波溶着等で液密的に結合される。
上下のケース26,27は、下ケース27の上面を上ケース26で覆うようにして連結固定される。なお、上ケース26の連結片13は、上下両ケース26,27を連結した状態で下ケース27から外向きに突出している。
下ケース27の下面には、その面積の大部分を開放した開口部が形成されている。前述した主仕切り壁35は、下ケース27における下面側の開口部と上面とからそれぞれ平行に間隔をおいた位置に形成されている。下ケース27の下面側の開口部は、ダンパー用の可撓性膜32(合成樹脂製で空気及び液体非透過性のフィルム)で封止されている。
第1実施形態では、前述した開口部の外周を画定する外周壁33の下端面に、可撓性膜32の外周縁が接着又は超音波溶着等により接合されている(図9、図11及び図12参照)。従って、ブラックインク用のダンパー室30aの一部である第1室31aは、可撓性膜32と主仕切り壁35とで扁平状に区画されている。ヘッドホルダ20内に本体ケース25を装着した状態では、可撓性膜32とヘッドホルダ20の底板20cとの間に、可撓性膜32の変形を許容するための隙間が空くように設定されている(図8参照)。
なお、図5、図8及び図10〜図12に示すように、下ケース27の下面における連結片13の突出方向とは反対側の一端部には、記録ヘッド21の各インク供給口81に接続されるヘッド接続口41a〜41dがインク供給口81の並び方向に沿って形成されている。これらヘッド接続口41a〜41dは、可撓性膜32よりも一段下に突出した位置で下向きに開口している。
図5、図10及び図11に示すように、平面視で主仕切り壁35の略対角となる位置には、ブラックインク用の第1室31aへのインク流入口53aと当該第1室31aからのインク流出口42とが形成されている。インク流出口42はインク流入口53aよりも開口面積が大きく形成されている。
主仕切り壁35の上面には、副仕切り壁36、37が、主仕切り壁35と交差して一体的に立ち上がって形成されている。下ケース27内の主仕切り壁35よりも上方の部分は上ケース26と共同して複数のダンパー室30b〜30dを形成している。
第1実施形態では、下ケース27内の主仕切り壁35よりも上方に、2つの副仕切り壁36が、相互に間隔をおいて下ケース27内の全長にわたって延びるように形成されている。これら両副仕切り壁36,36と下ケース27の側壁とにより、シアンインク、イエローインク及びマゼンタインク用の3つのダンパー室30b〜30dが平行に(並列状に)区画されている(図4及び図9参照)。これら3つのダンパー室30b〜30dは、主仕切り壁35の上面から外れた位置においてそれぞれに対応するヘッド接続口41b〜41dに連通している(図8及び図12参照)。
一方、もう1つの副仕切り壁37は、下ケース27におけるブラックインク用のヘッド接続口41aの近傍に位置するコーナ部を側壁と共同して平面視略三角形状に区画するように設けられている。この副仕切り壁37と側壁とにより、ブラックインク用のダンパー室30aの他の一部を構成する第2室60aが区画されている。すなわち、ブラックインク用のダンパー室30aは、主仕切り壁35を境にして上下に配置された第1室31aと第2室60aとで構成されている。
第1実施形態では、シアンインク、イエローインク及びマゼンタインク用の3つのダンパー室30b〜30dと、ブラックインク用の第2室60aとが、複数の副仕切り壁36,36,37を介して平行に区画されている(図4参照)。従って、これら3つのダンパー室30b〜30d及びブラックインク用の第2室60aが請求項に記載した供給路に相当する。
図11に示すように、ブラックインク用の第2室60aには、主仕切り壁35から外れた位置に形成されたヘッド接続口41aと、主仕切り壁35に形成されたインク流出口42とが連通している。また、ブラックインク用の第2室60aは、インク流出口42を介して主仕切り壁35の下面側の第1室31aに連通している。
第2室60aの内部には、インク流出口42から流れ込んできたインクが一旦溜まると共に、インクから分離浮上した気泡が、第2室60aの天井面を画定する上ケース26の対応箇所側に徐々に蓄積される。上ケース26における第2室60aの対応箇所(天井面)には、上ケース26を貫通する排気口56aが形成されている。
上ケース26には、その上下面に複数の凹部が形成されると共に、連結片13よりの箇所に下ケース27に向けて突出する矩形環状の3つのリブ38が一体的に形成されている。このリブ38によって3つの独立した領域が囲み形成されている。
図4〜図6、図8、図9、図11及び図12に示すように、リブ38で囲まれた3つの領域は平面視略矩形状で上下に開口している。上下両ケース26,27を連結した状態では、これら3つの領域は、それぞれに対応する下ケース27のダンパー室30b〜30dの内面側に収容される。リブ38の垂下長さは、主仕切り壁35に達しない長さに設定されている。従って、前記各領域を対応するダンパー室30b〜30d内に収容した状態では、リブ38の先端と各ダンパー室30b〜30dの底部(主仕切り壁35)との間に隙間が形成される。
前記3つの領域は、ブラックインク以外のインク用の各ダンパー室30b〜30dにおいて、インクジェットプリンタの使用開始前から一定量の空気を貯留しておくための第1室31b〜31d(空気溜り室)となっている。
前記3つの領域の上方開放面を共通に封止するため、下ケース27の下面側の開口部と同様に、1枚のダンパー用の可撓性膜43(合成樹脂製で空気及び液体非透過性のフィルム)が前記領域の外周を画定する外周壁の上端面に、接着又は超音波溶着等により接合されている。この可撓性膜43は請求項に記載した蓋部材に相当するものである。
各第1室31b〜31dに貯留された空気と可撓性膜43とは、ブラックインク以外のインク用の各ダンパー室30b〜30d内でのインクの動圧を協働して吸収するためのものである。各第1室31b〜31d内の空気は、リブ38により周囲から分離されているので、後述する排気口56b〜56dから排出されることなく、そのまま一定量(リブ38の垂下長さで規定される量)が確実に貯留され続ける。
また、ブラックインク以外のインク用のダンパー室30b〜30dでは、第1室31b〜31dの下流側(ヘッド接続口41b〜41dに近い側)の領域が、インクから分離浮上した気泡を徐々に蓄積する第2室60b〜60d(気泡トラップ室)となっている。これら各第2室60b〜60dの天井面を画定する上ケース26の対応箇所には、上ケース26を貫通する排気口56b〜56dが形成されている(図5、図8、図9及び図12参照)。
図2、図6、図9及び図10〜図12に示すように、上ケース26における連結片13の上面側には、各インク色毎の供給管接続口47a〜47dがX方向(用紙搬送方向)に沿って並ぶように形成されている。各供給管接続口47a〜47dには、各インク色毎の流路を有するジョイント部材45及びパッキン等のシール材(図示せず)を介して、インク供給管14の先端部がそれぞれ接続される。各供給管接続口47a〜47dは、上下のケース26,27に形成されたインク流通路を介して、対応するダンパー室30a〜30dに連通している(図4及び図5参照)。
図4、図5及び図9〜図11に示すように、ブラックインク用のインク流通路として、上ケース26には、供給管接続口47aを一端に有し且つ連結片13の下面に下向き開口の直線状に形成された第1凹通路48aと、この第1凹通路48aの他端で連結片13の上下面に貫通形成された第1連通孔49aと、当該第1連通孔49aを一端に有し且つ上ケース26の上面に上向き開口のL字状に形成された第2凹通路50aと、この第2凹通路50aの他端で上ケース26の上下面に貫通形成された第2連通孔51aとが形成されている。
一方、下ケース27には、マゼンタインク用のダンパー室30dに隣接し且つヘッド接続口41dから遠い側のコーナ部に、第3連通孔52が貫通形成されている(図4及び図11参照)。第3連通孔52の下端開口部は主仕切り壁35に形成されている。この開口がブラックインク用の第1室31aへのインク流入口53aとなっている。
上下両ケース26,27を連結するに際しては、第3連通孔52の上端面と第2連通孔51aの下端面とは密着状態で接合される。これにより、ブラックインク用の供給管接続口47aは第1室31a(ダンパー室30a)に連通する。
ブラックインク以外のインク用のインク流通路として、上ケース26には、供給管接続口47b〜47dをそれぞれ一端に有し且つ連結片13の下面に下向き開口のL字状に形成された第1凹通路48b〜48dと、この第1凹通路48b〜48dの他端で連結片13の上下面に貫通形成された第1連通孔49b〜49dと、当該第1連通孔49b〜49dをそれぞれ一端に有し且つ上ケース26の上面に上向き開口状に形成された第2凹通路50b〜50dと、この第2凹通路50b〜50dのそれぞれの他端で上ケース26の上下面に貫通形成された第2連通孔51b〜51dとが形成されている(図4、図5、図8〜図10及び図12参照)。
図6及び図9に示すように、平面視略L字状に形成されたブラックインク用の第2凹通路50aと、他の第2凹通路50b〜50dとの間には、互いに隔てるための溝状の空隙部90が凹み形成されている。この空隙部90は上面側だけでなくその一端も外向きに開放されている。
第2連通孔51b〜51dは、ブラックインク以外のインク用の第1室31b〜31dを区画するリブ38に一体的に形成されている。また、これら第2連通孔51b〜51dは、リブ38の垂下長さよりもわずかに長く下方に突出している(図5、図8及び図12参照)。第2連通孔51b〜51dの下端開口部はそれぞれダンパー室30b〜30dへのインク流入口53b〜53dとなっている。これにより、ブラックインク以外のインク用の各供給管接続口47b〜47dは、それぞれ対応するダンパー室30b〜30dに連通する。
なお、連結片13の下面に形成された第1凹通路48a〜48dは、その外周を画定する外周壁の下端に接着又は超音波溶着等により接合された1枚のフィルム材44で共通に覆われ、それぞれインク流通路として形成される。また、第2凹通路50a〜50d及び後述する排気通路57a〜57dは、蓋部材としてのダンパー用の可撓性膜43の延長部分により、同様の手法で共通に覆われ、それぞれインク流通路として形成される。この場合、ブラックインク用の第2凹通路50aと他の第2凹通路50b〜50dとの間の空隙部90も可撓性膜43の延長部分で覆われるが、当該空隙部90はその一端の外向き開口部から大気に連通している。
図4、図6及び図9に示すように、上ケース26に貫通形成された各排気口56a〜56dの上端は、上ケース26の上面に互いに独立して溝状に凹み形成された複数の排気通路57a〜57dにそれぞれ接続されている。当該各排気通路57a〜57dは、上ケース26の上面における排気口56a〜56dとリブ38で囲まれた開口(第1室31b〜31dの開口)との間の部位において、ブラックインク以外のインク用のダンパー室30b〜30dの並び方向(Y方向)に略沿うように屈曲しながら延びている。各排気通路57a〜57dの他端は排気弁手段11に接続されている。これら排気通路57a〜57dは請求項に記載した通路に相当する。
第1実施形態では、排気口56a〜56dのうち排気弁手段11から最も遠い排気口56dに連通するマゼンタインク用の排気通路57dが、上ケース26における第1室31b〜31dの開口に最も近い位置に配置されている。これにより、他の排気通路57a〜57cもブラックインク以外のインク用のダンパー室30b〜30dの並び方向(Y方向)に略沿うように延出させることができ、複数の排気通路の配置について省スペース化を図ることができる。
図6及び図9に示すように、マゼンタインク用の排気通路57dとシアンインク用の第1室31bとの間には、これら両者を隔てるための溝状の空隙部91が凹み形成されている。この空隙部91も、ブラックインク用の第2凹通路50aと他の第2凹通路50b〜50dとの間の空隙部90と同様に、上面側だけでなくその一端も外向きに開放されている。これにより、空隙部91は上ケース26の上面を可撓性膜43で塞いだ状態でも大気に連通することになる。
図4〜図6、図9及び図10に示すように、排気弁手段11は、下ケース27におけるシアンインク用のダンパー室30bやブラックインク用の第2室60aに隣接する側部(ダンパー室30b〜30dの並び方向の側部)に一体的に形成された収納部70を備えている。この収納部70内には、インク色毎の4つの通路孔71がダンパー室30b〜30dの並び方向と直交する方向に並び、それぞれ上下方向に長く且つ上下に開口するように形成されている。
一方、上ケース26におけるシアンインク用の第1室31bに隣接する側縁は、収納部70の上端を覆う位置まで延出している。各排気通路57a〜57dの他端に形成された開口部58(図4及び図5参照)は、下ケース27側の各通路孔71の上端にそれぞれ個別に連通している。
各通路孔71の内部には、後述する第2実施例と同様の弁体(図示せず)が開閉駆動可能に収納されている。第1実施形態では、インクジェットプリンタにおけるメンテナンスユニット(図示せず)の位置にヘッドユニット4を移動させると、弁体の駆動により4つの通路孔71の下端開口部が開放され、且つ各下端開口部に吸引ポンプが接続される。そして、当該下端開口部から排気口56a〜56d及び排気通路57a〜57dを通じて、各ダンパー室30a〜30d内に蓄積された気泡が一斉に吸引され、外部に排出される。
以上の構成において、ブラックインクは、供給管接続口47aから上ケース26の第1凹通路48a及び第2凹通路50aを通過して、インク流入口53aから主仕切り壁35の下面側の第1室31aに流入する(図11参照)。第1室31aに発生したインクの動圧は、下ケース27における広い面積の下面開口部を塞ぐ可撓性膜32で確実に吸収(ダンピング)される。
ブラックインクは、広い開口面積のインク流出口42から主仕切り壁35の上面側に位置する第2室60aに向けて、気泡と共に速やかに送られる。第2室60aでは、ブラックインクが一旦溜め込まれ、当該ブラックインクから分離浮上した気泡が天井側に徐々に蓄積される。第2室60a内で気泡を除去されたブラックインクは、ヘッド接続口41aから記録ヘッド21におけるブラックインク用のインク供給口81へ供給される。
一方、シアンインク、イエローインク及びマゼンタインクは、各供給管接続口47b〜47dから第1凹通路48b〜48d及び第2凹通路50b〜50dを通過して、インク流入口53b〜53dからダンパー室30b〜30dに流入する(図12参照)。
この場合、ダンパー室30b〜30dの上流側には、リブ38と可撓性膜43とで区画された第1室31b〜31d(空気溜り室)を備えているので、ダンパー室30b〜30dに発生したインクの動圧は、可撓性膜43と各第1室31b〜31d内の貯留空気との協働作用により、確実に吸収(ダンピング)される。各ダンパー室30b〜30dに溜まったインクから分離浮上した気泡は、下流側の第2室60b〜60d(気泡トラップ室)に徐々に蓄積される。各第2室60b〜60d内で気泡を除去されたシアンインク、イエローインク及びマゼンタインクは、ヘッド接続口41b〜41dからそれぞれ記録ヘッド21へ供給される。
その後、ヘッドユニット4をメンテナンスユニットの位置に移動させ、排気弁手段11が吸引ポンプに接続されると、弁体の開放駆動により、インク色毎の第2室60a〜60dに蓄積された気泡が、それぞれの排気口56a〜56dから排気通路57a〜57d及び排気弁手段11を経由して外部に排出される。
次に、ダンパー装置10におけるリーク検査の態様の一例について説明する。
まず、ダンパー装置10におけるインク色毎のインク流通路について、第1室31a〜31dや排気通路57a〜57dの開口が互いに隣接しないもの同士をリーク検査に際しての1組とするようにグループ分けする。第1実施形態では、シアン及びマゼンタインク用のインク流通路の組と、ブラック及びイエローインク用のインク流通路の組とにグループ分けされ、組単位でリーク検査が行われる。
シアン及びマゼンタインク用のインク流通路の組についてリーク検査をする場合は、それぞれのヘッド接続口41b,41dを仮密閉した状態で、双方の供給管接続口47b,47dから流体としての圧縮空気を同時に送り込むか又は真空引きすることにより、シアン用及びマゼンタインク用の両インク流路中に一定の圧力を付与する。ここで、各インク流通路に連通する排気弁手段11の通路孔71は弁体により密閉されている。
そして、この状態で各供給管接続口47b、47d側において内部の空気圧を測定することにより、上ケース26の上面と可撓性膜との接合部分、及び上ケース26における連結片13の下面とフィルム材44との接合部分にリーク(密閉漏れ)があるか否かを検査するのである。
マゼンタインク用のインク流通路において、排気通路57dの外周壁の上端面と可撓性膜43との接着が不完全でリーク通路が形成されている場合は、排気通路57d内の空気は、隣接するイエローインク用の第1室31c、排気通路57c若しくは空隙部91に漏れて外部に逃げるか、又は直接外部に漏れることになる。
また、第1室31dの外周壁の上端面と可撓性膜43との接着が不完全な場合は、第1室31d内の空気は、隣接するイエローインク用の第1室31c若しくはブラックインク用の第2凹通路50aに漏れて外部に逃げるか、又は直接外部に漏れる。
さらに、第2凹通路50dの外周壁の上端面と可撓性膜43との接着が不完全な場合は、第2凹通路50d内の空気は、隣接するイエローインク用の第1室31c、第2凹通路50c、ブラックインク用の第2凹通路50a若しくは空隙部90に漏れて外部に逃げるか、又は直接外部に漏れる。なお、マゼンタインク用の第1室31dと第2凹通路50dとの間の封止部分にリークが発生することもあるが、この場合は、同色のマゼンタインクが流れているので、記録品質に与える影響は極めて少ない。
一方、シアンインク用のインク流通路において、排気通路57bの外周壁の上端面と可撓性膜43との接着が不完全でリーク通路が形成されている場合は、排気通路57b内の空気は、隣接するイエローインク用の排気通路57c、ブラックインク用の排気通路57aに漏れて外部に逃げるか、又は直接外部に漏れる。
また、第1室31bの外周壁の上端面と可撓性膜43との接着が不完全な場合は、第1室31b内の空気は、隣接するイエローインク用の第1室31c、第2凹通路50c若しくは空隙部91に漏れて外部に逃げるか、又は直接外部に漏れる。
さらに、第2凹通路50bの外周壁の上端面と可撓性膜43との接着が不完全な場合は、第2凹通路50b内の空気は、隣接するイエローインク用の第2凹通路50c若しくは空隙部90に漏れて外部に逃げるか、又は直接外部に漏れる。なお、シアンインク用の第1室31bと第2凹通路50bとの間の封止部分にリークが発生した場合も、マゼンタインクの場合と同様に、記録品質に与える影響は極めて少ない。
従って、各供給管接続口47b,47d側での圧力変化を検出することにより、シアンインク用の排気通路57b、第1室31b及び第2凹通路50b周りでのリークの有無と、マゼンタインク用の排気通路57d、第1室31d及び第2凹通路50d周りでのリークの有無とを同時に検査することができる。
ブラック及びイエローインク用のインク流通路の組についてのリーク検査の手順は、前述したシアン及びマゼンタインク用のインク流通路の組についてのリーク検査の場合と略同様である。
以上のことから、本発明のインクジェットプリンタの構成によると、ブラックインク用の第2凹通路50aと他の第2凹通路50b〜50dとの間、及びマゼンタインク用の排気通路57dとシアンインク用の第1室31bとの間に、外部に連通する溝状の空隙部90,91が形成されているので、同じ組に属するインク流通路同士の間では、第1室31a〜31dの開口に代表される可撓性膜43による封止部分が全く隣接しない。
従って、このような関係にあるインク流通路の組単位でリーク検査を行うことができるから、1つのダンパー装置10におけるリーク検査は組数(グループ数)と同じ回数だけ行えば足りることになり、複数のダンパー室30a〜30dや排気通路57a〜57d等のインク流通路の集積化及び省スペース化により、ダンパー装置10全体の小型化を図ったものでありながら、ダンパー装置10のリーク検査作業が容易になると共に、当該リーク検査に要する時間を大幅に短縮することができる。
また、昨今のカラー化等の要請で、ダンパー装置10におけるインク流通路の数が更に増加したとしても、リーク検査の迅速化を図ることができるのである。
なお、2箇所の空隙部90,91を密閉状に構成した場合も、同じ組に属するインク流通路同士における可撓性膜43による封止部分(開口部分)が直接的に隣接するのを阻止できるが、仮に各空隙部90,91を介して同じ組のインク流通路同士を繋ぐようにリークした場合は、インクジェットプリンタの使用時に混色を引き起こすおそれがある。そこで、第1実施形態のように、空隙部90,91の一端を外向きに開放させる構成を採用すると、インク流通路から空隙部90,91に向かうリークが存在する限り、インク流通路内の空気圧は大気圧と同等の状態に変化することになるので、このようなリーク(接合不良)を確実に発見することができるのである。
図13〜図18はダンパー装置の別例である第2実施形態を示している。図13は第2実施形態における可撓性膜を除いた状態のダンパー装置の平面図、図14は可撓性膜を除いた状態のダンパー装置の下面図、図15は下ケースの平面図、図16は上ケースの下面図、図17は上ケースの平断面図、図18のうち(a)は図13のXVIIIa−XVIIIa視側断面図、(b)は図13の XVIIIb−XVIIIb視側断面図、(c)は図14のXVIIIc−XVIIIc視側断面図である。なお、第2実施形態において構成及び作用が第1実施形態と変わらないものは、第1実施形態のものと同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
第2実施形態におけるダンパー装置10′は、インク色毎に独立した複数のダンパー室30a′〜30d′を、主仕切り壁35′を挟んで且つ主仕切り壁35′と交差する副仕切り壁36′,37′によって区画して備えている。
第2実施形態では、主仕切り壁35′の下にブラックインク(BK)用のダンパー室30a′の一部が配置され、主仕切り壁35′の上にシアンインク(C)用のダンパー室30b′、イエローインク(Y)用のダンパー室30c′及びマゼンタインク(M)用のダンパー室30d′が副仕切り壁36′,37′によって区画されて配置され、全体として上下に2層状に構成されている。
具体的には、ダンパー装置10′における本体ケース25′は、矩形筒状の側壁を外周として有し、上下面を開放した箱状の下ケース27′と、その下ケース27′の上面を覆って固定された上ケース26′とから構成される。上ケース26′及び下ケース27′は共に合成樹脂材料にて射出成形されたものであり、超音波溶着等にて液密的に結合されている。
図18(a)〜(c)に示すように、下ケース27′の下面には、当該下面の面積の大部分を開放した開口部が設けられ、その開口部及び上方の開放面からそれぞれ平行に間隔を置いた位置に主仕切り壁35′が形成されている。そして、その開口部はダンパー用の可撓性膜32′で封止されている。具体的には、開口部の外周を画定する外周壁33′の下端面に、可撓性膜32′の外周縁を接着又は超音波溶着等により接合する。可撓性膜32′と主仕切り壁35′との間に、ブラックインク用のダンパー室30a′を構成する第1室31a′が形成されている(図14参照)。
主仕切り壁35′の上面には、これと交差して一体的に立ち上がった副仕切り壁36′が形成され、下ケース27′内の主仕切り壁35′よりも上方の部分は上ケース26′と共同して複数のダンパー室30b′〜30d′を形成している。
第2実施形態では、2つの副仕切り壁36′が相互に間隔を置いて配置され、下ケース27′の側壁と共同して、シアン、イエロー及びマゼンタインク用の3つのダンパー室30b′〜30d′(詳細には第2室60b′〜60d′)が並列状に区画されている(図14及ぶ図15参照)。
図15に示すように、各副仕切り壁36′は、下ケース27′内を全長にわたって延びて形成され、主仕切り壁35′の上面から外れた位置においてダンパー室30b′〜30d′(詳細には第2室60b′〜60d′)をインク色毎のヘッド接続口41b′〜41d′に連通させている。
一方、もう1つの副仕切り壁37′は、ヘッド接続口41b′〜41d近傍の主仕切り壁35′の上面から外れた位置へ延びて形成され、当該副仕切り壁37′と下ケース27′の側壁との間に、ブラックインク用のダンパー室30a′の他部を構成する第2室60a′が形成されている。すなわち、第2実施形態におけるブラックインク用のダンパー室30a′も、主仕切り壁35′を境にして上下に配置された第1室31a′と第2室60a′とで構成されている。第2室60a′の下端はヘッド接続口41a′に連通している(図15及び図18(c)参照)。第2実施形態の場合も、ブラックインク以外のインク用の3つのダンパー室30b′〜30d′及びブラックインク用の第2室60a′が請求項に記載した供給路に相当する。
図14、図15及び図18(c)に示すように、ブラックインク用の第1室31a′は、第2室60a′に対して、副仕切り壁37′に沿って形成した円筒部内を上下方向に貫通する絞り通路42′を介して連通している。
上ケース26′は、上面に複数の凹部を備えた扁平形状に形成されている。上ケース26′の上面には、ブラックインク用の第1室31a′とほぼ対応する上方位置に、矩形環状の3つのリブ38′で囲み形成されたシアン、イエロー及びマゼンタインク用の3つのダンパー室30b′〜30d′の第1室31b′〜31d′が上向きに開口するように形成されている(図13参照)。
各第1室31b′〜31d′の長手方向に沿う矩形環状のリブ38′の直線部分は下ケース27′の副仕切り壁36′の立上がり方向の延長上に位置し、第1室31b′〜31d′の底壁には多数個の通路孔92′が上下に貫通形成されている。これら各第1室31b′〜31d′は、それぞれに対応する下方の第2室60b′〜60d′と個別に連通している。
ブラックインク以外のインク用の第1室31b′〜31d′の上方開放面は、1枚のダンパー用の可撓性膜43′で共通に封止されている。具体的には、各第1室31b′〜31d′の外周を画定するリブ38′の上端面に、可撓性膜43′が接着又は超音波溶着等で接合されている。
図14に示すように、各ヘッド接続口41a′〜41d′は、下ケース27′の下面に並んで位置し、且つブラックインク用の第1室31a′を覆う可撓性膜32′よりも下方に突出した位置で下向きに開口している。
図13に示すように、下ケース27′におけるヘッド接続口41a′〜41d′と反対側の側面から外向きに突出したフランジ部13′には、各インク色毎の供給管接続口47a′〜47d′が形成されている。これら供給管接続口47a′〜47d′に対して、可撓性を有するインク供給管14の先端部が接続される。
ブラックインク用の供給管接続口47a′は、下ケース27′の下面に下向き開放状に形成された凹通路48a′を介して対応する第1室31a′に接続されている。他の供給管接続口47b′〜47d′の各々は、下ケース27′の下面に下向き開放状に形成された凹通路48b′〜48d′、下ケース27′の一側壁内に上下に延びるように形成された連通路49b′〜49d′、及び上ケース26′に上下に貫通する連通路50b′〜50d′を介して対応するダンパー室30b′〜30d′の第1室31b′〜31d′に接続されている(図13〜図17及び図18(b)参照)。供給管接続口47a′〜47d′及び凹通路48a′〜48d′の開放下面は、可撓性膜32′を延長した部分で封止されている(図18(b)(c)参照)。
また、上ケース26′の上面には、ヘッド接続口41a′〜41d′近傍の各第2室60a′〜60d′とそれぞれ対応する位置に、各ダンパー室30a′〜30d′の第3室80a′〜80d′が互いに独立して凹み形成されている。
各第3室80a′〜80d′は、上ケース26′に貫通形成された空気孔54a′〜54d′により、対応する第2室60a′〜60d′にそれぞれ連通している。すなわち、インク色毎のダンパー室30a′〜30d′は、それぞれ第1室から第3室までの3つの室から構成されている。
さらに、上ケース26′には、それぞれ第1室と第3室との間において各第2室60a′〜60d′の上部に連通する排気口56a′〜56d′が貫通形成されている。
図13及び図17に示すように、各排気口56a′〜56d′の上端は、上ケース26′の上面に互いに独立して溝状に凹み形成された複数の排気通路57a′〜57d′にそれぞれ接続されている。
当該各排気通路57a′〜57d′は、上ケース26′の上面における排気口56a′〜56d′とリブ38′で囲まれた開口(第1室31b′〜31d′の開口)との間の部位において、ブラックインク以外のインク用のダンパー室30b′〜30d′の並び方向(Y方向)に略沿うように平面視略く字状に延出されている。各排気通路57a′〜57d′の他端は、下ケース27′におけるダンパー室30b′〜30d′の並び方向の一側部に設けられた排気弁手段11′の各通気孔71′に個別に接続されている。第2実施形態でも、排気通路57a′〜57d′が請求項に記載した通路に相当する。
第2実施形態では、排気口56a′〜56d′のうち排気弁手段11′から最も遠い排気口56d′に連通するマゼンタインク用の排気通路57d′が、上ケース26′における第1室31b′〜31d′の開口に最も近い位置に配置されている。これにより、第1実施形態の場合と同様に、他の排気通路57a′〜57c′もブラックインク以外のインク用のダンパー室30b′〜30d′の並び方向(Y方向)に略沿うように延出させることができ、複数の排気通路の配置を省スペース化することができる。
図13及び図17に示すように、マゼンタインク用の排気通路57d′とシアンインク用の第1室31b′との間には、これら両者を隔てるための溝状の空隙部91′が凹み形成されている。この空隙部91′は、第1実施形態の場合と同様に、上面側だけでなくその一端も外向きに開放されている。
各ダンパー室30a′〜30d′の第3室80a′〜80d′及び排気通路57a′〜57d′は、その開放上面を可撓性膜43′を延長した部分で覆われ、その各室及び通路が画定されている。この場合、マゼンタインク用の排気通路57d′とシアンインク用の第1室31b′との間の空隙部91′も可撓性膜43′の延長部分で覆われるが、当該空隙部91′はその一端の外向き開口部から大気に連通している。
図13〜図18に示すように、排気弁手段11′は、下ケース27′におけるシアンインク用のダンパー室30b′に隣接する側部(ダンパー室30b′〜30d′の並び方向の一側部)に一体的に形成された収納部70′を備えている。この収納部70′内には、インク色毎の4つの通路孔71′が上下方向に長く且つ上下に開口するように形成されている。
一方、上ケース26′におけるシアンインク用の第1室31b′に隣接する側縁は、収納部70′の上端を覆う位置まで延出している。各排気通路57a′〜57d′の他端は下ケース27′側の各通路孔71′の上端開口部にそれぞれ個別に連通している。
図18(a)に示すように、各通路孔71′は上半の大径部71a′と下半の小径部71b′とからなる。各通路孔71′の内部には、上端側が大径で下端側が小径の段付き状に形成された弁体72′が収納されている。弁体72′における下端側のバルブロッド73′には略環状の弾性材製のシール部材74′が被嵌されている。
また、大径部71a′の内部には、シール部材74′及び弁体72′に加えて、小径部71b′を閉塞する方向に弁体72′を付勢するばね手段75′(コイルバネ等)も挿入されている。バルブロッド73′は小径部71b′に挿入され、このバルブロッド73′の下端は小径部71b′の下端開口部近傍まで延びている。
弁体72′は、ばね手段75′によって常時下向きに押圧されており、シール部材74′が弁体72′と大径部71a′の底面との間で押圧挟持された状態が弁閉止状態となる。一方、バルブロッド73′を後述する小キャップ部材77′の突起部77a′によって上方に押し上げた状態が弁開放状態となる。
メンテナンスユニット40′は、記録ヘッド21のノズル22の開口面を開閉可能に覆うキャップ部材76′と、排気弁手段11′の下端面すなわち各小径部71b′の開口面を個別に開閉可能に覆う複数の小キャップ部材77′とを備える。両キャップ部材76′,77′は、公知のメンテナンスユニットと同様の上下移動機構78′により、キャリッジ5が待機位置(メンテナンス位置)に移動したときに、ノズル22の開口面及び排気弁手段11′の下端面に密着するように上昇し、他の位置ではそれらの面から離隔するように下降する。また、キャップ部材76′は、公知のメンテナンスユニットと同様に吸引ポンプ79′に接続され、吸引ポンプ79′の駆動によりノズル22から増粘したインクや異物が吸引除去される。
各小キャップ部材77′は、その小キャップ部材77′よりも突出した突起部77a′をそれぞれ有し、排気弁手段11′の下端面に密着したとき、突起部77a′によりバルブロッド73′をばね手段75′の付勢力に抗して押し上げ、シール部材74′を大径部71a′の内底部から離し、弁開放状態にする。また、各小キャップ部材77′は共通の流路を介して吸引ポンプ79′に接続され、吸引ポンプ79′の駆動により各ダンパー室の第2室60a′〜60d′内に蓄積した気泡が一括して吸引排出される。これは、インク供給源からインク供給管14を通して供給されるインクを第2室60a′〜60d′内に一旦貯留することで、インク中から気泡を分離浮上させ、第2室60a′〜60d′の上部に蓄積した気泡を、上記のように、吸引ポンプ79′により排出させるのである。
キャップ部材76′と小キャップ部材77′は、切替弁85′により択一的に吸引ポンプ79′に接続される。キャップ部材76′と小キャップ部材77′は、上下移動機構78′により、同時にノズル22の開口面及び排気弁手段11′の下端面に密着するが、好適には、まず小キャップ部材77′をとおして第2室60a′〜60d′の上部に蓄積した気泡を排出し、その後、キャップ部材76′をとおしてノズル22からインクを排出する。仮にキャップ部材76′のみで第2室60a′〜60d′の気泡を排出しようとすると、多量のインクを排出しなければならないが、上記のようにすることで、少ないインク排出量で、気泡の排出及び記録ヘッドの回復処理を行うことができる。
また、ノズル22からのインク吸引のみ、又は第2室60a′〜60d′の気泡の排出のみをそれぞれ単独に行うこともできる。
以上の構成においても、ダンパー装置10′におけるリーク検査をするに際しては、第1実施形態の場合と同様の手順で実行することができる。
すなわち、マゼンタインク用の排気通路57d′とシアンインク用の第1室31b′との間に、外部に連通する溝状の空隙部91′が形成されていることにより、同じ組に属するインク流通路同士の間で、第1室31a′〜31d′の開口に代表される可撓性膜43′による封止部分が全く隣接しないから、このような配置関係にあるインク流通路の組単位で、流体を送り込むか又は真空引きすることによるリーク検査を同時に実行することができる。
従って、第1実施形態の場合と同様に、複数のダンパー室30a′〜30d′や排気通路57a′〜57d′等のインク流通路の集積化及び省スペース化により、ダンパー装置10′全体の小型化を図ったものでありながら、ダンパー装置10′のリーク検査作業が容易になると共に、当該リーク検査に要する時間を大幅に短縮することができる。
図19は、第2実施形態の参考例を示すもので、図13相当の平面図である。第2実施形態において、マゼンタインク用の排気通路57d′とシアンインク用の第1室31b′との間に空隙部91′を設けずに、図19のようにリブ38′を介して両者が直接隣接していると、その隣接部分で接着が不完全であった場合、マゼンタインクとシアンインクとの両インク流路に同時にリーク検査用の空気圧を加えたとき、圧力変化を生じない。つまり、接着不完全を検出できない。この図19の構成では、マゼンタインクのインク流路とシアンインクのインク流路とは、別々に検査しなければならず、工数が増える。
従って、上記第1及び第2の実施形態のように構成することで、マゼンタインクとシアンインクとの両インク流路を同時に検査することができるようになったのである。
本発明は、図示の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、請求項に記載した通路は前述した実施形態の排気通路に限るものではなく、本発明は、供給路としてのダンパー室とこれよりも上流側のインク流路との関係において適用してもよい。
例えば、特許文献1に示すように、インクを循環させるものにおいて、上記実施形態の排気通路をインクの戻り通路として使用することもできる。
また、ダンパー装置におけるインク色毎のインク流通路をグループ分けするに際して、同じ組に属する供給路等のインク流通路の間には、別の組の供給路等のインク流通路を1つだけでなく複数個を挟む構成を採用することもできる。ダンパー装置のリーク検査に使用する流体は空気に限らず、液体であってもよい。蓋部材としては、フィルム状の可撓性膜に限らず、ダンパー機能を用いない場合には剛性のある素材であってもよい。さらに、本発明は、様々な種類のインクジェットプリンタに適用できることはいうまでもない。