JP4788856B2 - 車両の操舵装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、いわゆるステアバイワイヤシステムを採用した車両の操舵装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ステアバイワイヤシステムを採用した車両においては、ステアリングホイールを模した操作部材を車輪に機械的に連結することなく、その操作部材の回転に応じて駆動される操舵用アクチュエータの動きを、その動きに応じて舵角が変化するように車輪に伝達している。そのため、車輪と路面との間の摩擦に基づく操舵抵抗やセルフアライニングトルクは、その操作部材には伝達されない。
【0003】
そこで、その操作部材を直進位置に戻す方向の反力を作用させる操作用アクチュエータを設けることで、ステアリングホイールが車輪に機械的に連結された通常の車両と同様に、ドライバーに操舵フィーリングを与え、また、操作部材を直進位置に復帰させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ステアバイワイヤシステムを採用した車両において、据え切り操舵を連続して行ったり、スラローム走行や急操舵を頻繁に行う場合、操舵用アクチュエータの負荷が増大し、また、操舵用アクチュエータの電力制御用スイッチング素子等の電子部品の発熱量が増大する。そこで、通常の車両の電動パワーステアリング装置における操舵補助力発生用モータの過負荷防止対策と同様に、操舵用アクチュエータの連続駆動時間や通電電流の積算値等の負荷に対応する変量が設定値に至ったならば、その操舵用アクチュエータの出力の上限値を制限することが考えられる。
【0005】
しかし、ステアバイワイヤシステムを採用した車両においては、操舵用アクチュエータの出力を過負荷防止のために制限しても、車輪と操作部材とは機械的に連結されていないので、操作部材の操作は制限されない。そのため、操作部材の操作に対する車両の舵角変化の応答性が低下し、円滑な操舵を行うことができず車両の操縦性能が低下する。また、その応答性の低下原因である操舵用アクチュエータの出力制限をドライバーが把握するのは困難であるため、ドライバーは違和感を感じる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の車両の操舵装置は、操作部材と、その操作部材の回転に応じて駆動される操舵用アクチュエータと、その操作部材を車輪に機械的に連結することなく、その操舵用アクチュエータの動きに応じて舵角が変化するように、その動きを車輪に伝達する機構と、その操舵用アクチュエータの出力の上限値を、操舵用アクチュエータの過負荷を防止できるように予め設定した制限条件に従って制限する手段と、その操作部材を直進位置に復帰させる方向に作用する反力を発生可能な操作用アクチュエータと、その操舵用アクチュエータの出力の上限値の制限程度と、その反力の大きさとの間の予め定められた対応関係を記憶する手段と、その対応関係に基づき、その制限程度に応じて反力の大きさが変化するように、その操作用アクチュエータを制御する手段とを備える。
本発明の構成によれば、過負荷防止のために操舵用アクチュエータの出力の上限値が制限される時、操作用アクチュエータの発生反力が大きくなるので、操作部材の操作に対する車輪の舵角変化の応答性が低下するのを防止できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1に示す車両の操舵装置は、ステアリングホイールを模した操作部材1と、その操作部材1の回転に応じて駆動される操舵用アクチュエータ2と、その操作部材1を車輪4に機械的に連結することなく、その操舵用アクチュエータ2の動きに応じて舵角が変化するように、その動きを車輪4に伝達するステアリングギヤ3と、その操作部材1を直進位置に復帰させる方向に作用する反力を発生可能な操作用アクチュエータ19とを備える。
【0008】
その操舵用アクチュエータ2は、例えば公知のブラシレスモータ等の電動モータにより構成できる。そのステアリングギヤ3は、その操舵用アクチュエータ2の出力シャフトの回転運動をステアリングロッド7の直線運動に変換する例えばボールねじ機構等の運動変換機構により構成されている。そのステアリングロッド7の動きがタイロッド8とナックルアーム9を介して車輪4に伝達され、その車輪4のトー角が変化する。そのステアリングギヤ3は、公知のものを用いることができ、操舵用アクチュエータ2の動きを舵角が変化するように車輪4に伝達できれば構成は限定されない。なお、操舵用アクチュエータ2が駆動されていない状態では、車輪4はセルフアライニングトルクにより直進位置に復帰できるようにホイールアラインメントが設定されている。
【0009】
その操作部材1は、車体側により回転可能に支持される回転シャフト10に連結されている。その回転シャフト10に操作用アクチュエータ19の出力シャフトが一体化されている。その操作用アクチュエータ19はブラシレスモータ等の電動モータにより構成できる。
【0010】
その操作部材1の直進位置からの回転量を求める手段として、その操作部材1の直進位置からの回転角度δhを検出する角度センサ11が設けられている。車両の舵角δを検出する手段として、ステアリングロッド7の作動量を検出するポテンショメータにより構成される舵角センサ13が設けられている。車速Vを検出する速度センサ14が設けられている。その角度センサ11、舵角センサ13、速度センサ14は、コンピュータにより構成される制御装置20に接続されている。また、その制御装置20に、操舵用アクチュエータ2の電流値を検出する電流検出センサ25と、操作用アクチュエータ19の電流値を検出する電流検出センサ26とが接続されている。
【0011】
その制御装置20は、駆動回路22を介して操舵用アクチュエータ2を制御する。例えば、その操作部材1の回転角度δhと車速Vと目標舵角との間の関係を予め定めて記憶し、その目標舵角と検出した舵角δとの偏差をなくすように駆動回路22を介して操舵用アクチュエータ2の駆動信号を出力する。その回転角度δhと車速Vと目標舵角との間の関係は、車速Vが大きくなる程に回転角度δhに対応する目標舵角を小さくすることで、低速での旋回性能の向上と高速での走行安定性とを図ることができる。なお、このような操舵用アクチュエータ2の制御方法は特に限定されず、操作部材1の回転に応じて操舵用アクチュエータ2が駆動されるものであれば良く、例えば、車両のヨーレートセンサを設け、操作部材1の回転角度δhと目標ヨーレートとの間の関係を予め定めて記憶し、検出ヨーレートと目標ヨーレートとの偏差をなくすように駆動回路22を介して操舵用アクチュエータ2の駆動信号を出力してもよい。
【0012】
その制御装置20は、その操舵用アクチュエータ2の出力の上限値の予め設定した制限条件を記憶し、その制限条件に従って操舵用アクチュエータ2の出力の上限値を制限する。その制限条件は、操舵用アクチュエータ2の負荷に対応する変量が設定値に至ったならば充足するものとされる。本実施形態では、その負荷に対応する変量として操舵用アクチュエータ2の通電電流の積算値を電流検出センサ25の検出値に基づき制御装置20が演算する。図2に示すように、その積算値が予め定めた第1設定値eに至って制限条件が充足されることにより、操舵用アクチュエータ2の出力に対応する指示電流の上限値を最大値Imaxから最小値Iminまで低減することが開始され、その上限値と積算値との関係が制御装置20に記憶される。その積算値が予め定めた第2設定値fに至った時に、その上限値は最小値Iminになるものとされている。
【0013】
その制御装置20は、操作部材1の車両直進位置からの回転角度δhと反力の大きさとの間の予め定められた対応関係として、図3に示す関係を記憶する。その図3は、その回転角度δhと反力に対応する操作用アクチュエータ19の目標電流I* との関係の一例を示し、回転角度δhと目標電流I* は操作部材1が直進位置よりも左右一方に位置する時は正、左右他方に位置する時は負とされ、直進位置近傍において操作部材1の遊びを確保するために回転角度δhの大きさが設定値(図示例では10度)以下では目標電流I* を零にし、その設定値を超えると回転角度δhの大きさの増減に目標電流I* が比例して増減するものとされている。その記憶した回転角度δhと目標電流I* との間の対応関係に基づき制御装置20により操作用アクチュエータ19を制御することで、求めた回転角度δhに対応する反力が発生する。
【0014】
その制御装置20は、その操舵用アクチュエータ2の出力の上限値の制限程度と、上記操作用アクチュエータ19により発生する反力の大きさとの間の予め定められた対応関係を記憶し、その対応関係に基づき、その制限程度に応じて反力の大きさが変化するように、その操作用アクチュエータ19を制御する。例えば、その操舵用アクチュエータ2の出力が制限されていない状態、すなわち、その上限値が最大値Imaxであって、図2において操舵用アクチュエータ2の通電電流の積算値が第1設定値eに至るまでは、図3において実線Eで示す関係に従って回転角度δhに応じた反力が発生する。また、操舵用アクチュエータ2の通電電流の積算値が第2設定値fに至り、その上限値が最小値Iminである時は、図3において二点鎖線Fで示す関係に従って回転角度δhに応じた反力が発生し、その上限値が最大値Imaxから最小値Iminまで低減する途中や最小値Iminから最大値Imaxまで増大させる途中の値である時は、その値に応じて定められた図3において一点鎖線Gで示す関係に従って回転角度δhに応じた反力が発生するものとされている。これにより、その操舵用アクチュエータ2の出力に対応する指示電流の上限値の制限程度が大きい程に、操作部材1の回転角度δhに対する目標電流I* の増加割合が大きくなって反力が大きくされる。すなわち、操作部材1の回転角度δhと、上限値に応じた操作用アクチュエータ19の目標電流I* との間の関係を制御装置20は記憶する。
【0015】
上記制御装置20による操作用アクチュエータ19の制御手順を図4のフローチャートを参照して説明する。
まず、操作部材1の回転角度δhと、電流検出センサ26により検出した操作用アクチュエータ19の通電電流Iの値を読み込み(ステップ101)、その回転角度δhと、操舵用アクチュエータ2の指示電流の上限値とに対応する操作用アクチュエータ19の目標電流I* を、その回転角度δhと上限値に応じた目標電流I* との間の記憶した関係に基づき演算する(ステップ102)。その目標電流I* と操作用アクチュエータ19の通電電流Iとの偏差をなくすように駆動回路23を介して操作用アクチュエータ19の駆動信号を出力し(ステップ103)、ステップ101に戻る。
【0016】
上記構成によれば、過負荷防止のために操舵用アクチュエータ2の出力の上限値が制限される時、操作用アクチュエータ19の発生反力が大きくなる。また、操舵用アクチュエータ2の出力の上限値を制限する程に操作用アクチュエータ19の発生反力が大きくなる。これにより、操舵用アクチュエータ2の出力の上限値が制限される時に、操作部材1の操作に対する舵角変化の応答性が低下するのを防止できる。
【0017】
本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、反力の大きさは操作部材の回転角度に応じて変化するものに限定されず、操作部材の回転速度や回転加速度といった他の運転条件に応じて変化してもよいし、また、その反力は一定であってもよい。さらに、操作用アクチュエータにより反力だけでなく、操作部材を直進位置に復帰させる方向と反対方向に作用する復帰抵抗力を作用させるようにし、その復帰抵抗力の大きさを操舵用アクチュエータの出力の上限値の制限程度に対応させて変化させてもよい。また、操舵用アクチュエータの出力の上限値の制限条件は、操舵用アクチュエータの過負荷を防止できるように定められているものであればよく、例えば、操舵用アクチュエータの連続駆動時間が設定値になった時に設定された低減速度でその上限値を低減するようにしてもよいし、温度センサにより検出した操舵用アクチュエータの雰囲気温度が低い程に制限条件を緩和するようにしてもよい。
【0018】
【発明の効果】
本発明によれば、ステアバイワイヤシステムを採用した車両において、過負荷防止のために操舵用アクチュエータの出力の上限値を制限する時に、ドライバーが違和感を感じることなく操縦性能が低下するのを防止できる車両の操舵装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の車両の操舵装置の構成説明図
【図2】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操舵用アクチュエータの通電電流積算値と指示電流上限値との関係の一例を示す図
【図3】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操作部材の回転角度と操作用アクチュエータの目標電流との関係の一例を示す図
【図4】本発明の実施形態の車両の操舵装置における操作用アクチュエータの制御手順を示すフローチャート
【符号の説明】
1 操作部材
2 操舵用アクチュエータ
3 ステアリングギヤ
4 車輪
19 操作用アクチュエータ
20 制御装置
Claims (2)
- 操作部材と、
その操作部材の回転に応じて駆動される操舵用アクチュエータと、
その操作部材を車輪に機械的に連結することなく、その操舵用アクチュエータの動きに応じて舵角が変化するように、その動きを車輪に伝達する機構と、
その操舵用アクチュエータの出力の上限値を、操舵用アクチュエータの過負荷を防止できるように予め設定した制限条件に従って制限する手段と、
その操作部材を直進位置に復帰させる方向に作用する反力を発生可能な操作用アクチュエータと、
その操舵用アクチュエータの出力の上限値の制限程度と、その反力の大きさとの間の予め定められた対応関係を記憶する手段と、
その対応関係に基づき、その制限程度に応じて反力の大きさが変化するように、その操作用アクチュエータを制御する手段とを備える車両の操舵装置。 - 前記制限条件は、前記操舵用アクチュエータの負荷に対応する変量が所定値に至ることで充足される請求項1に記載の車両の操舵装置。
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