以下、本発明に係る反射型表示装置のいくつかの実施の形態例を図1〜図15を参照しながら説明する。
第1の実施の形態に係る反射型表示装置10Aは、図1に示すように、外光、あるいは図示しない光源からの光、あるいはこれらを組み合わせた光(以下、便宜的に光18と記す)が照射される表示板20と、該表示板20の背面に対向して設けられ、かつ多数のアクチュエータ部22が画素に対応してマトリックス状あるいは千鳥状に配列された駆動部24を有して構成されている。
画素の配列構成は、例えば図2に示すように、垂直方向に並ぶ2つのアクチュエータ部22にて1つのドット26が構成され、水平方向に並ぶ3つのドット26(赤色ドット26R、緑色ドット26G及び青色ドット26B)で1つの画素28が構成されている。更に、この反射型表示装置10Aにおいては、画素28の並びを水平方向に16個(48ドット)乃至32個(96ドット)、垂直方向に16個(16ドット)乃至32個(32ドット)としている。なお、1つのアクチュエータ部22で1つのドット26を構成してもよいし、2以上のアクチュエータ部22にて1つのドット26を構成してもよい。
また、前記反射型表示装置10Aにおいては、図1に示すように、各アクチュエータ部22上に、それぞれ画素構成体30が積層されている。画素構成体30は、表示板20との接触面積を大きくして画素に応じた面積にする機能を有する。
駆動部24は、例えばセラミックスにて構成されたアクチュエータ基板32を有し、該アクチュエータ基板32の各画素28に応じた位置にアクチュエータ部22が配設されている。前記アクチュエータ基板32は、一主面が表示板20の背面に対向するように配置されており、該一主面は連続した面(面一)とされている。アクチュエータ基板32の内部には、各画素28に対応した位置にそれぞれ後述する振動部を形成するための空所34が設けられている。各空所34は、アクチュエータ基板32の他端面に設けられた径の小さい貫通孔36を通じて外部と連通されている。
前記アクチュエータ基板32のうち、空所34の形成されている部分が薄肉とされ、それ以外の部分が厚肉とされている。薄肉の部分は、外部応力に対して振動を受けやすい構造となって振動部38として機能し、空所34以外の部分は厚肉とされて前記振動部38を支持する固定部40として機能するようになっている。
つまり、アクチュエータ基板32は、最下層である基板層32Aと中間層であるスペーサ層32Bと最上層である薄板層32Cの積層体であって、スペーサ層32Bのうち、アクチュエータ部22に対応する箇所に空所34が形成された一体構造体として把握することができる。基板層32Aは、補強用基板として機能するほか、配線用の基板としても機能するようになっている。なお、前記アクチュエータ基板32は、一体焼成であっても、後付けであってもよい。
また、表示板20とアクチュエータ基板32との間には、光吸収体14が充填されている。この例では、光吸収体14として光吸収性の液体を用いた場合を示している。
ここで、アクチュエータ部22と画素構成体30の具体例を図3〜図8に基づいて説明する。なお、図3〜図8の例では、後述する桟42と表示板20との間に光遮蔽層44を設けた場合を示す。
まず、アクチュエータ部22は、図3に示すように、前記振動部38と固定部40のほか、該振動部38上に直接形成された圧電/電歪層や反強誘電体層等の形状保持層46と、該形状保持層46の上面と下面に形成された一対の電極48(ロウ電極48a及びカラム電極48b)とからなるアクチュエータ部本体23を有する。
一対の電極48は、図3に示すように、形状保持層46に対して上下に形成した構造や片側だけに形成した構造でもよいし、形状保持層46の上部のみに一対の電極48を形成するようにしてもよい。
一対の電極48を形状保持層46の上部のみに形成する場合、一対の電極48の平面形状としては、図4に示すように、多数のくし歯が相補的に対峙した形状としてもよく、その他、特開平10−78549号公報にも示されているように、渦巻き状や多枝形状等を採用することができる。
形状保持層46の平面形状を例えば楕円形状とし、一対の電極48をくし歯状に形成した場合は、図5A及び図5Bに示すように、形状保持層46の長軸に沿って一対の電極48のくし歯が配列される形態や、図6A及び図6Bに示すように、形状保持層46の短軸に沿って一対の電極48のくし歯が配列される形態等がある。
そして、図5A及び図6Aに示すように、一対の電極48のくし歯の部分が形状保持層46の平面形状内に含まれる形態や、図5B及び図6Bに示すように、一対の電極48のくし歯の部分が形状保持層46の平面形状からはみ出した形態等がある。図5B及び図6Bに示す形態の方がアクチュエータ部22の屈曲変位において有利である。
ところで、図3に示すように、一対の電極48として、形状保持層46の上面に例えばロウ電極48aを形成し、形状保持層46の下面にカラム電極48bを形成した場合においては、図1に示すように、アクチュエータ部22を表示板20側に凸となるように、他方向に屈曲変位させることも可能であり、図示しないが、アクチュエータ部22を空所34側に凸となるように一方向に屈曲変位させることも可能である。
一方、画素構成体30は、例えば図1に示すように、アクチュエータ部本体23上に形成された変位伝達部としての光反射層50と色フィルタ52の積層体で構成することができる。この例では、光反射層50として白色散乱体を用いた場合を示す。なお、色フィルタ52に代えて有色散乱体を用いてもよい。また、光反射層として有色散乱体を用いてもよい。もちろん、前記色フィルタ52や有色散乱体を形成しない場合は、画素構成体30は、光反射層50にて構成されることになる。
また、この反射型表示装置10Aにおいては、図1に示すように、表示板20とアクチュエータ基板32との間において、画素構成体30以外の部分に形成された桟42を有して構成され、桟42の材質は、熱、圧力に対して変形しないものが好ましい。
桟42は、例えば画素構成体30の四方に形成することができる。ここで、画素構成体30の四方とは、図7に示すように、例えば画素構成体30が平面ほぼ矩形あるいは楕円であれば、各コーナー部に対応した位置等が挙げられ、1つの桟42が隣接する画素構成体30と共有される形態を示す。
桟42の他の例としては、図8に示すように、桟42に少なくとも1つの画素構成体30を囲む窓部42aを有するように構成してもよい。代表的な構成例としては、例えば、桟42自体を板状に形成し、更に画素構成体30に対応した位置に画素構成体30の外形形状に類似した形状の窓部(開口)42aを形成する。これによって、画素構成体30の側面全部が桟42によって囲まれたかたちになり、アクチュエータ基板32と表示板20との固着が更に強固なものとなる。
ここで、反射型表示装置10Aの各構成部材、特に各構成部材の材料等の選定について説明する。
まず、表示板20に照射される光18としては、紫外域、可視域、赤外域のいずれでもよい。図示しない光源としては、白熱電球、重水素放電ランプ、蛍光ランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、トリチウムランプ、発光ダイオード、レーザー、プラズマ光源、熱陰極管(又はそのフィラメント状熱陰極の代わりにカーボンナノチューブ−フィールドエミッタを配置したもの)、冷陰極管等が用いられる。
振動部38は、高耐熱性材料であることが好ましい。その理由は、アクチュエータ部22を有機接着剤等の耐熱性に劣る材料を用いずに、固定部40によって直接振動部38を支持させる構造とする場合、少なくとも形状保持層46の形成時に、振動部38が変質しないようにするため、振動部38は、高耐熱性材料であることが好ましい。
また、振動部38は、アクチュエータ基板32上に形成される一対の電極48におけるロウ電極48aに通じる配線とカラム電極48bに通じる配線(例えばデータ線)との電気的な分離を行うために、電気絶縁材料であることが好ましい。
従って、振動部38は、高耐熱性の金属あるいはその金属表面をガラス等のセラミック材料で被覆したホーロウ等の材料であってもよいが、セラミックスが最適である。
振動部38を構成するセラミックスとしては、例えば安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、スピネル、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、ガラス、これらの混合物等を用いることができる。安定化された酸化ジルコニウムは、振動部38の厚みが薄くても機械的強度が高いこと、靭性が高いこと、形状保持層46及び一対の電極48との化学反応性が小さいこと等のため、特に好ましい。安定化された酸化ジルコニウムとは、安定化酸化ジルコニウム及び部分安定化酸化ジルコニウムを包含する。安定化された酸化ジルコニウムでは、立方晶等の結晶構造をとるため、相転移を起こさない。
一方、酸化ジルコニウムは、1000℃前後で、単斜晶と正方晶とで相転移し、この相転移のときにクラックが発生する場合がある。安定化された酸化ジルコニウムは、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム又は希土類金属の酸化物等の安定化剤を、1〜30モル%含有する。振動部38の機械的強度を高めるために、安定化剤が酸化イットリウムを含有することが好ましい。このとき、酸化イットリウムは、好ましくは1.5〜6モル%含有し、更に好ましくは2〜4モル%含有することであり、更に0.1〜5モル%の酸化アルミニウムが含有されていることが好ましい。
また、結晶相は、立方晶+単斜晶の混合相、正方晶+単斜晶の混合相、立方晶+正方晶+単斜晶の混合相等であってもよいが、中でも主たる結晶相が、正方晶、又は正方晶+立方晶の混合相としたものが、強度、靭性、耐久性の観点から最も好ましい。
振動部38がセラミックスからなるとき、多数の結晶粒が振動部38を構成するが、振動部38の機械的強度を高めるため、結晶粒の平均粒径は、0.05〜2μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることが更に好ましい。
固定部40は、セラミックスからなることが好ましいが、振動部38の材料と同一のセラミックスでもよいし、異なっていてもよい。固定部40を構成するセラミックスとしては、振動部38の材料と同様に、例えば、安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、スピネル、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、ガラス、これらの混合物等を用いることができる。
特に、この反射型表示装置10Aで用いられるアクチュエータ基板32は、酸化ジルコニウムを主成分とする材料、酸化アルミニウムを主成分とする材料、又はこれらの混合物を主成分とする材料等が好適に採用される。その中でも、酸化ジルコニウムを主成分としたものが更に好ましい。
なお、焼結助剤として粘土等を加えることもあるが、酸化珪素、酸化ホウ素等のガラス化しやすいものが過剰に含まれないように、助剤成分を調節する必要がある。なぜなら、これらガラス化しやすい材料は、アクチュエータ基板32と形状保持層46とを接合させる上で有利ではあるものの、アクチュエータ基板32と形状保持層46との反応を促進し、所定の形状保持層46の組成を維持することが困難となり、その結果、素子特性を低下させる原因となるからである。
即ち、アクチュエータ基板32中の酸化珪素等は重量比で3%以下、更に好ましくは1%以下となるように制限するとよい。ここで、主成分とは、重量比で50%以上の割合で存在する成分をいう。
形状保持層46は、上述したように、圧電/電歪層や反強誘電体層等を用いることができるが、形状保持層46として圧電/電歪層を用いる場合、該圧電/電歪層としては、例えば、ジルコン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、マグネシウムタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛等、又はこれらの何れかの組合せを含有するセラミックスが挙げられる。
主成分がこれらの化合物を50重量%以上含有するものであってもよいことはいうまでもない。また、前記セラミックスのうち、ジルコン酸鉛を含有するセラミックスは、形状保持層46を構成する圧電/電歪層の構成材料として最も使用頻度が高い。
また、圧電/電歪層をセラミックスにて構成する場合、前記セラミックスに、更に、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン等の酸化物、若しくはこれらの何れかの組合せ、又は他の化合物を、適宜、添加したセラミックスを用いてもよい。
例えば、マグネシウムニオブ酸鉛とジルコン酸鉛及びチタン酸鉛とからなる成分を主成分とし、更にランタンやストロンチウムを含有するセラミックスを用いることが好ましい。
圧電/電歪層は、緻密であっても、多孔質であってもよく、多孔質の場合、その気孔率は40%以下であることが好ましい。
形状保持層46として反強誘電体層を用いる場合、該反強誘電体層としては、ジルコン酸鉛を主成分とするもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分を主成分とするもの、更にはジルコン酸鉛に酸化ランタンを添加したもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分に対してジルコン酸鉛やニオブ酸鉛を添加したものが望ましい。
特に、下記の組成のようにジルコン酸鉛とスズ酸鉛からなる成分を含む反強誘電体膜をアクチュエータ部22のような膜型素子として適用する場合、比較的低電圧で駆動することができるため、特に好ましい。
Pb0.99Nb0.02[(ZrxSn1-x)1-yTiy]0.98O3
但し、0.5 <x< 0.6,0.05<y< 0.063,0.01<Nb< 0.03
また、この反強誘電体膜は、多孔質であってもよく、多孔質の場合には気孔率30%以下であることが望ましい。
そして、振動部38の上に形状保持層46を形成する方法としては、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、電気泳動法等の各種厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD)、めっき等の各種薄膜形成法を用いることができる。
この実施の形態においては、振動部38上に前記形状保持層46を形成するにあたっては、スクリーン印刷法やディッピング法、塗布法、電気泳動法等による厚膜形成法が好適に採用される。
これらの手法は、平均粒径0.01〜5μm、好ましくは0.05〜3μmの圧電セラミックスの粒子を主成分とするペーストやスラリー、又はサスペンション、エマルジョン、ゾル等を用いて形成することができ、良好な圧電作動特性が得られるからである。
特に、電気泳動法は、膜を高い密度で、かつ、高い形状精度で形成することができることをはじめ、「電気化学および工業物理化学 Vol.53,No.1(1985),p63〜68 安斎和夫著」あるいは「第1回電気泳動法によるセラミックスの高次成形法 研究討論会 予稿集(1998),p5〜6,p23〜24」等の技術文献に記載されるような特徴を有する。従って、要求精度や信頼性等を考慮して、適宜、手法を選択して用いるとよい。
また、前記振動部38の厚みと形状保持層46の厚みは、同次元の厚みであることが好ましい。なぜなら、振動部38の厚みが極端に形状保持層46の厚みより厚くなると(1桁以上異なると)、形状保持層46の焼成収縮に対して、振動部38がその収縮を妨げるように働くため、形状保持層46とアクチュエータ基板32界面での応力が大きくなり、はがれ易くなる。反対に、厚みの次元が同程度であれば、形状保持層46の焼成収縮にアクチュエータ基板32(振動部38)が追従し易くなるため、一体化には好適である。具体的には、振動部38の厚みは、1〜100μmであることが好ましく、3〜50μmが更に好ましく、5〜20μmが更になお好ましい。一方、形状保持層46は、その厚みとして5〜100μmが好ましく、5〜50μmが更に好ましく、5〜30μmが更になお好ましい。
前記形状保持層46の上面及び下面に形成されるロウ電極48a及びカラム電極48b、あるいは形状保持層46上に形成される一対の電極48は、用途に応じて適宜な厚さとするが、0.01〜50μmの厚さであることが好ましく、0.1〜5μmが更に好ましい。また、前記ロウ電極48a及びカラム電極48bは、室温で固体であって、導電性の金属で構成されていることが好ましい。例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛等を含有する金属単体又は合金が挙げられる。これらの元素を任意の組合せで含有していてもよいことはいうまでもない。
表示板20の材質は透明性があれば制限されないが、具体的には、例えばガラス、石英、アクリル等の透光性プラスチック、透光性セラミックス等、あるいは異なる屈折率を有する材料の複数層構造体、又は表面にコーティング層を設けたもの等が一般的なものとして挙げられる。
画素構成体30に含まれる色フィルタ52や有色散乱体等の着色層とは、特定の波長領域の光だけを取り出すために用いられる層であり、例えば特定の波長の光を吸収、透過、反射、散乱させることで発色させるものや、入射した光を別の波長のものに変換させるもの等がある。透明体、半透明体及び不透明体を単独、もしくは組み合わせて用いることができる。
構成は、例えば染料、顔料、イオン等の色素や蛍光体を、ゴム、有機樹脂、透光性セラミックス、ガラス、液体等の内部に分散、溶解したものや、それらの表面に塗布したもの、更には上述の色素や蛍光体等の粉末を焼結させたり、プレスして固めたもの等がある。材質及び構造については、これらを単独で用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。
色フィルタ52と有色散乱体との違いは、表示板20に対して画素構成体30を接近する方向に変位させて発光状態にしたときに、着色層のみでの反射、散乱による漏れ光の輝度値が、画素構成体30及びアクチュエータ部22を含めた全構成体の反射、散乱による漏れ光の輝度値の0.5倍以上であれば、その着色層は有色散乱体であると定義し、0.5倍未満であればその着色層は色フィルタ52であると定義する。
測定法の具体例を挙げると、光18が照射された表示板20の背面に、前記着色層単体を接触させたとき、該着色層から該表示板20を通過し、前面に漏れ出した光の正面輝度がA(nt)であり、また、該着色層の表示板20と接する反対側の面に更に画素構成体30を接触させたとき、前面に漏れ出した光の正面輝度がB(nt)であったとすると、A≧0.5×Bを満たすときは、前記着色層は有色散乱体であり、A<0.5×Bを満たすときは色フィルタ52である。
上述の正面輝度とは、輝度を測定する輝度計と前記着色層とを結ぶ線が、前記表示板20の前記着色層と接する面に対して垂直であるように輝度計を配置(輝度計の検出面は表示板20の板面に平行)して計測した輝度である。
有色散乱体の利点は、層の厚みにより色調や輝度が変化しにくいことであり、そのための層形成法として、層厚の厳密な制御は難しいが、コストが安いスクリーン印刷等、多種の適用が可能である。
また、有色散乱体が変位伝達部を兼ねることにより、層形成プロセスを簡略化できるほか、それら全体の層厚を薄くできるため、反射型表示装置10A全体の厚みを薄くすることが可能であり、また、アクチュエータ部22の変位量低下の防止及び応答速度の向上が可能である。
色フィルタ52の利点は、表示板20がフラットで表面平滑性が高いため、表示板20側に層を形成するときには、層形成が容易になり、プロセスの選択の幅が広がり、安価になるだけでなく、色調、輝度に影響を及ぼす層厚の制御が容易になる。
なお、光反射層50や色フィルタ52、並びに有色散乱体等の膜形成法としては、特に制限はなく、公知の各種の膜形成法を適用することができる。例えば表示板20やアクチュエータ部22の面上に、チップ状、フィルム状の着色層を直接貼り付けるフィルム貼着法のほか、色フィルタ52や光反射層50(この例では白色散乱体)等の原材料となる粉末、ペースト、液体、気体、イオン等を、スクリーン印刷、フォトリソグラフィ法、スプレー・ディッピング、塗布等の厚膜形成手法や、イオンビーム、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング、CVD、めっき等の薄膜形成手法により成膜し、光反射層50や色フィルタ52を形成する方法がある。
また、前記画素構成体30としてその全部あるいは一部に発光層を設けるようにしてもよい。この発光層としては蛍光体層が挙げられる。この蛍光体層は、不可視光(紫外線や赤外線)によって励起され、可視光を発光するものや、可視光によって励起されて可視光を発光するものがあるが、いずれでもよい。
また、前記発光層として、蛍光顔料も用いることができる。この蛍光顔料を用いると、顔料自体の色、即ち、反射色にほぼ一致する波長の蛍光が加わるものは、それだけ色刺激が大きく、鮮やかに発光するため、表示素子やディスプレイの高輝度化に対してより好ましく用いられ、一般的な昼光蛍光顔料が好ましく用いられる。
また、発光層として、輝尽性蛍光体や、燐光体、あるいは蓄光顔料も用いられる。これらの材料は、有機材料、無機材料のいずれでもよい。
そして、上述した発光材料を単独で用いて発光層を形成したもの、これらの発光材料を樹脂に分散させたものを用いて発光層を形成したもの、あるいはこれらの発光材料を樹脂に溶解させたもので発光層を形成したものが好ましく用いられる。
発光材料の残光時間としては、1秒以下が好ましく、より好ましくは30m秒がよい。更に好ましくは数m秒以下がよい。
そして、画素構成体30の全部あるいはその一部として前記発光層を用いた場合は、図示しない光源として、前記発光層を励起する波長の光を含み、励起に十分なエネルギー密度を有していれば、特に制限はない。例えば、冷陰極管、熱陰極管(又はそのフィラメント状熱陰極の代わりにカーボンナノチューブ−フィールドエミッタを配置したもの)、メタルハライドランプ、キセノンランプ、赤外線レーザを含むレーザ、ブラックライト、ハロゲンランプ、白熱電球、重水素放電ランプ、蛍光ランプ、水銀ランプ、トリチウムランプ、発光ダイオード、プラズマ光源等が用いられる。
次に、反射型表示装置10Aの動作を図1を参照しながら簡単に説明する。まず、光18が表示板20に照射される。
この例において、全てのアクチュエータ部22の自然状態においては、アクチュエータ部はオフ状態であり、画素構成体30の端面が表示板20の背面から離間している。
そのため、全ての画素構成体30の端面と表示板20の背面との間には、光吸収体14(光吸収性の液体)が存在することとなる。その結果、表示板20に照射された光18は該光吸収体14(光吸収性の液体)にて吸収されることになり、前記オフ状態が消光というかたちで具現される。即ち、反射型表示装置10Aの画面からは黒色が表示されることになる。
この状態から、あるドット26に対応するアクチュエータ部22にオン信号が印加されると、当該アクチュエータ部22が図1に示すように、表示板20側に凸となるように屈曲変位、即ち、一方向に屈曲変位して、画素構成体30の端面が表示板20の背面に接触することとなる。このとき、当該画素構成体30の端面の上部に存していた光吸収性の液体14が画素構成体30の外方(周り)に押し退けられて、画素構成体30の端面が直接表示板20の背面に接触することになる。
この段階においては、光18は、画素構成体30における光反射層50の表面で反射し、散乱光62となる。この散乱光62は、一部は再度表示板20の中で反射するが、散乱光62の大部分は表示板20で反射されることなく、表示板20の前面(表面)を透過することになる。
これによって、オン信号が印加された前記アクチュエータ部22がオン状態となり、そのオン状態が発光というかたちで具現され、しかも、その発光色は画素構成体30に含まれる色フィルタ52の色に対応したものとなる。
つまり、この反射型表示装置10Aは、画素構成体30の表示板20への接近方向あるいは離間方向の変位動作により、表示板20と画素構成体30との間における光吸収性の液体14の光透過性を制御することができる。
特に、この反射型表示装置10Aでは、表示板20に対して画素構成体30を接近・離隔方向に変位動作させる1つの単位を垂直方向に並べたものを1ドットとし、このドットが水平方向に3つ並んだもの(赤色ドット26R、緑色ドット26G及び青色ドット26B)を1画素とし、この画素を多数マトリクス状、あるいは各行に関し千鳥状に配列するようにしているため、入力される画像信号の属性に応じて各画素での変位動作を制御することにより、陰極線管や液晶表示装置並びにプラズマディスプレイと同様に、表示板20の前面、即ち、表示面に画像信号に応じたカラー映像(文字や図形等)を表示させることができる。
このように、第1の実施の形態に係る反射型表示装置10Aにおいては、外光や光源からの光18を表示板20内で全反射させるように導入するのではなく、外光や光源からの光18を単純に表示板20に対して当てればよいため、外光や光源からの光18を導入するための構成を大幅に簡略化させることができる。
しかも、アクチュエータ部22のオフ時においては、該アクチュエータ部22に対応する画素構成体30の端面と表示板20との間に光吸収体14(光吸収性の液体)が存在することになるため、確実に消光させることができ、表示上のクロストークもほとんどなくなり、輝度の向上、コントラストの向上並びに表示画像の画質の向上を図ることができる。
上述の例では、アクチュエータ部22の自然状態において、画素構成体30の端面が表示板20から離間し、オン信号の印加によって画素構成体30の端面が表示板20に接触する形態を示したが、その他、図9の第1の変形例に係る反射型表示装置10Aaに示すように、アクチュエータ部22の自然状態において、画素構成体30の端面が表示板20に接触し、オフ信号の印加によって画素構成体30の端面が表示板20から離間する形態を採用するようにしてもよい。
また、図10の第2の変形例に係る反射型表示装置10Abに示すように、アクチュエータ基板32を構成するスペーサ層32Bの厚みを薄くするようにしてもよい。
具体的には、スペーサ層32Bは、アクチュエータ基板32に空所34を構成するものとして存在していればよく、その厚みは特に制限されるものではない。しかし一方で、空所34の利用目的に応じてその厚みを決定してもよく、その中でもアクチュエータ部22が機能する上で必要以上の厚みを有さず、例えば図10に示すように、薄い状態で構成されていることが好ましい。即ち、スペーサ層32Bの厚みは、利用するアクチュエータ部22の変位の大きさ程度であることが好ましい。なお、薄板層32Cの厚みとしては、アクチュエータ部22を大きく変位させるために、通常50μm以下とされ、好ましくは3〜20μm程度とされる。
このような構成により、薄肉の部分(振動部38の部分)の撓みが、その撓み方向に近接する基板層32Aにより制限され、意図しない外力の印加に対して、前記薄肉部分の破壊を防止するという効果が得られる。なお、基板層32Aによる撓みの制限効果を利用して、アクチュエータ部22の変位を特定値に安定させることも可能である。
また、スペーサ層32Bを薄くすることで、アクチュエータ基板32自体の厚みが低減し、曲げ剛性を小さくすることができるため、例えばアクチュエータ基板32を別体に接着・固定するにあたって、相手方(例えば表示板20)に対し、自分自身(この場合、アクチュエータ基板32)の反り等が効果的に矯正され、接着・固定の信頼性の向上を図ることができる。
加えて、アクチュエータ基板32が全体として薄く構成されるため、アクチュエータ基板32の製造にあたっての原材料使用量を低減することができ、製造コストの観点からも有利な構造である。従って、スペーサ層32Bの具体的な厚みとしては、3〜5μmとすることが好ましく、中でも3〜20μmとすることが好ましい。
一方、基板層32Aの厚みとしては、上述したスペーサ層32Bを薄く構成することから、アクチュエータ基板32全体の補強目的として、一般に50μm、好ましくは80〜300μm程度とされる。
次に、第2の実施の形態に係る反射型表示装置10Bについて図11を参照しながら説明する。なお、図1と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
この第2の実施の形態に係る反射型表示装置10Bは、図11に示すように、上述した第1の実施の形態に係る反射型表示装置10Aとほぼ同様の構成を有するが、画素構成体30が、アクチュエータ部本体23上に形成された光反射層50で構成されている点と、表示板20の表面に色フィルタ52が形成されている点で異なる。各色フィルタ52の間には表示上のクロストークの低減やコントラストの向上を目的とした光遮蔽層44が形成されている。
この第2の実施の形態に係る反射型表示装置10Bにおいても、上述の第1の実施の形態に係る反射型表示装置10Aと同様に、外光や光源からの光を導入するための構成の簡略化、輝度の向上、コントラストの向上並びに表示画像の画質の向上を図ることができる。
また、図12の変形例に係る反射型表示装置10Baに示すように、アクチュエータ部22の自然状態において、画素構成体30の端面が表示板20に接触し、オフ信号の印加によって画素構成体30の端面が表示板20から離間する形態を採用するようにしてもよい。
上述の例では、画素構成体30の形状、特に色フィルタ52や光反射層50の端面の形状を面一とした例を示したが、その他、図13や図14に示すように、画素構成体30の例えば光反射層50の上部をパラボラ状や円錐状、あるいは鋸歯状やドーム状としてもよい。これらの場合、表面にアルミニウム等の第2の光反射層102と色フィルタ52を積層し、更に、端面が面一とされた透明層104を充填することが好ましい。
なお、図では、光吸収体14がアクチュエータ基板32と表示板20との間の全体にわたって充填されている例を示したが、表示板20の背面近傍や画素構成体30の上面に局在していてもよい。
次に、第3の実施の形態に係る反射型表示装置10Cについて図15を参照しながら説明する。
この第3の実施の形態に係る反射型表示装置10Cは、図15に示すように、上述した第2の実施の形態に係る反射型表示装置10Bとほぼ同様の構成を有するが、画素構成体30が、アクチュエータ部本体23上に形成された光吸収層110と、表示板20の表面に形成された色フィルタ52で構成され、表示板20とアクチュエータ基板32との間に光反射体112が充填されている点で異なる。この例では、光反射体112として光反射性の液体を用いた場合を示している。
この場合、第2の実施の形態に係る反射型表示装置10Bとは逆に、画素構成体30の端面が表示板20から離間しているドットについては、表示板20の背面に光反射体112が接していることから、光18は、光反射体112の表面で反射し、散乱光62となる。この散乱光62の大部分は表示板20で反射されることなく、表示板20の前面(表面)を透過し、発光状態となる。
一方、画素構成体30の端面が表示板20の背面に接触しているドットについては、表示板20の背面に光吸収層110が接するかたちとなるため、光18は、光吸収層110において吸収され、消光状態となる。
この第3の実施の形態に係る反射型表示装置10Cにおいても、上述の第1の実施の形態に係る反射型表示装置10Aと同様に、外光や光源からの光18を導入するための構成の簡略化、輝度の向上、コントラストの向上並びに表示画像の画質の向上を図ることができる。
また、光反射体112として例えば青色の光反射体を用いてもよい。この場合、例えば青色の背景に黒色表示を行うことができる。
ここで、第1〜第3の実施の形態に係る反射型表示装置10A、10B及び10Cにおける好ましい態様について説明する。
まず、第1及び第2の実施の形態に係る反射型表示装置10A及び10Bにおける光吸収体14は、黒色に限定されるわけではない。例えば青色の光吸収体を用いてもよい。この場合、例えば色フィルタ52を用いない場合を想定したとき、青色の背景に白点が表示されるようにすることができる。また、赤色の色フィルタを併用すれば、青色の背景に赤点を表示することができる。このようにして、色フィルタ52と光吸収体14の色の組合せで、任意の背景色や表示色を選択することができる。
同様に、第3の実施の形態に係る反射型表示装置10Cのように、画素構成体30の構成要素として光吸収層110を形成する場合においては、例えば青色の背景に黒色表示を行うことができる。
前記光吸収体14としては、黒色あるいは着色された液体や溶液・ゲル・柔軟性のある樹脂材料等を用いることができる。また、前記液体をスポンジ等に含浸させたもの等も用いることができる。
光反射体112としては、白色、銀色あるいは着色された液体や溶液・ゲル・スポンジ、柔軟性のある樹脂材料、又は水銀等を用いることができる。前記液体をスポンジ等に含浸させたもの等も用いられる。
光吸収体14あるいは光反射体112の光透過性の制御方法としては、アクチュエータ部の変位動作によって、光吸収体14あるいは光反射体112の厚み(表示板20と画素構成体30間の距離)を変化させることが好ましく用いられる。厚みの値やその変化量は、特に限定されるものではないが、それらが0.1μm以上、10μm以下が特に好ましく用いられる。
また、画素構成体30のうち、光吸収体14あるいは光反射体112に面する部分に凹凸を設けてもよい。光吸収体14及び/又は光反射体112が流体の場合には、この凹凸が流路を形成するため、発光/消光の応答性を向上させる効果がある。また、凸型であることも好ましい。
また、画素構成体30のうち、光吸収体14あるいは光反射体112に面する部分に透明層を設けることも好ましく用いられる。この透明層は、画素構成体30の高さを合わせて、例えばアクチュエータ部22が自然状態における表示板20と画素構成体30間の光吸収体14及び/又は光反射体112の厚みを均一になるようにする働きをもつ。もちろん、前記透明層に前記凹凸や凸面形状を形成してもよい。
また、光源からの光を表示板20に照射することで、発光輝度やコントラストを向上させることができ、視認性を高めることができる。なお、階調表現方式は、面積階調、時間階調、電圧階調のいずれか又はこれらの組合せが好ましく用いられる。
ところで、第1〜第3の実施の形態に係る反射型表示装置10A〜10Cは、超薄型、低電力のディスプレイを有利に構成できる特徴を持っている。従って、例えば反射型表示装置10A〜10Cを縦方向及び横方向にそれぞれ複数個配列することによって構成される大画面ディスプレイに有効である。プロジェクタと比較して、投射スペースが不要であり、狭いスペースでも設置が可能である。
しかも、反射型表示装置10A〜10Cの配列個数等を任意に変更することで、通常の長方形のディスプレイのほかにも、横長あるいは縦長、円形状等、様々な形状の画面を形成することができる。また、湾曲させて配列すれば、曲面ディスプレイを形成することもできる。
この大画面ディスプレイの用途としては、薄型、大画面、広視野角の特徴を生かし、駅、病院、空港、図書館、百貨店、ホテル、結婚式場等の待合室やロビー、通路等での公衆向けディスプレイが挙げられる。また、シネマコンプレックスのスクリーン、カラオケボックス、ミニシアターでの利用も挙げられる。また、屋内のみならず、屋外で使用してもよい。
また、上述の例では、色フィルタ52等の着色層を、画素構成体30を構成する光反射層50の上部や表示板20の表面に形成した例を示したが、その他、表示板20の裏面に形成するようにしてもよい。特に、図示しない大型の表示板や枠(格子枠を含む)に、第1〜第3の実施の形態に係る反射型表示装置10A〜10Cを多数配列して大画面ディスプレイを構成する場合においては、前記大型の表示板の表面や裏面に着色層を形成するようにしてもよい。また、着色層を有する板やフィルム等を表示板20や大型の表示板に設けるようにしてもよい。なお、表示板20や大型の表示板に着色層を設ける場合は、色フィルタ52であることが好ましい。この場合、画素構成体30の方は、着色層として白色散乱体、有色散乱体、色フィルタ52のいずれを使用してもよいが、特に白色散乱体が好ましい。
そして、第1〜第3の実施の形態に係る反射型表示装置10A〜10Cにて表示を行うために、これら反射型表示装置10A〜10Cに電圧を供給するには、アクチュエータ基板32の端部付近や裏面に配された電極に、リード線やコネクタ、プリント基板、フレキシブルプリント基板等を接続することで実現することができる。また、アクチュエータ基板32の表面や裏面に、回路要素を形成したり、部品を実装してもよい。例えば、アクチュエータ基板32の背面側(表示面の反対側)に対向して、例えばコネクタやドライバIC等が実装された配線板を、導電性接着剤等を介して電気的及び機械的に接続することが挙げられる。
配線板としては、プリント基板、フレキシブルプリント基板、ビルドアップ基板、セラミック配線板等が好ましく用いられる。配線板は、単層であっても多層であってもよい。電気的接続方法としては、導電性接着剤のほかにも、半田付け、異方性導電フィルム、導電ゴム、ワイヤボンディング、リードフレーム、ピン、ばね、圧着等の方法を適用してもよい。
なお、この発明に係る反射型表示装置は、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。