以下、本発明に係るアクチュエータ装置の実施の形態例を図1〜図51を参照しながら説明する。
先ず、第1の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Aは、図1に示すように、基板12上に複数のアクチュエータ14が平面的に配列された駆動部16と、駆動部16における複数のアクチュエータ14の駆動力が伝達される1つの第1の板部材18とを有する。
第1の板部材18と基板12との間には、複数のスペーサ24が形成され、これらスペーサ24によってm個のセル15が形成されている。そして、各セル15毎にn個のアクチュエータ14が割り当てられている。各セル15は、それぞれ同じ大きさでもよいし(この場合、単位セルとなる)、異なった大きさでもよい。
ここで、アクチュエータ14は、基板12に形成された空所64と振動部66と固定部68とを有する。すなわち、基板32のうち、空所64の形成されている部分が肉薄とされ、それ以外の部分が厚肉とされている。肉薄の部分は、外部応力に対して振動を受けやすい構造となって振動部66として機能し、空所64以外の部分は肉厚とされて前記振動部66を支持する固定部68として機能するようになっている。アクチュエータ14と第1の板部材18間にはアクチュエータ14の変位を第1の板部材18に伝達する変位伝達部76が介在されている。
アクチュエータ14の1つの構成例を図2に基づいて説明すると、アクチュエータ14は、振動部66と固定部68のほか、該振動部66上に直接形成された圧電/電歪層72と、該圧電/電歪層72の上面と下面に形成された一対の電極74a及び74bとからなるアクチュエータ本体75を有する。
一対の電極74a及び74bは、図2に示すように、圧電/電歪層72に対して上下に形成した構造や片側だけに形成した構造でもよいし、圧電/電歪層72の上部のみに一対の電極74a及び74bを形成するようにしてもよい。
一対の電極74a及び74bを圧電/電歪層72の上部のみに形成する場合、一対の電極74a及び74bの平面形状としては、多数のくし歯が相補的に対峙した形状のほか、特開平10−78549号公報や特開2001−324961号公報にも示されているように、渦巻き状や多枝形状などを採用してもよい。
なお、図1、図3〜図34では、図面の複雑化を避けるために、アクチュエータ14のアクチュエータ本体75を省略して示す。
この第1の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Aにおいて、第1の板部材18は、平面的に配列された複数のアクチュエータ14からの駆動力が伝達されることになるが、各アクチュエータ14は垂直方向に変位することから、第1の板部材18は、その板面に対してほぼ垂直な方向に変位することになる。
アクチュエータ14の駆動力の発生源としては、圧電素子、静電気力、磁力、電磁気力、ばね、ワイヤ等を用いることができる。
アクチュエータ14の駆動力の発生源として圧電素子を用いた場合は、ユニモルフ構造、バイモルフ構造、モノモルフ構造、振動部66上に圧電アクチュエータを形成した構造、振動部66と固定部68にかけて圧電アクチュエータを形成した構造等を採用することができる。
アクチュエータ14の駆動力の発生源として静電気力を用いた態様では、振動部66のうち、固定部68に対向する面と、固定部68のうち、振動部66に対向する面にそれぞれ電極を設けて、これら電極間に電圧を加えることで、静電気力を発生させ、振動部66を変位させてもよい(図9参照)。むろん、振動部66の表面に電極が形成されていてもよいし、異なる電極同士が接触して短絡しないように、異なる電極間に絶縁体を介在させてもよいし、電極表面を絶縁体で被覆してもよい。
次に、第2の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Bは、図3に示すように、上述した第1の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Aとほぼ同様の構成を有するが、第1の板部材18がm個のセル15に合わせて分離されている点で異なる。
ここで、第1及び第2の実施の形態に係るアクチュエータ装置10A及び10Bの好ましい態様について図4〜図24を参照しながら説明する。
まず、第1の板部材18の剛性は、アクチュエータ14の振動部66の剛性よりも大きいことが好ましい。
このことについて、図4〜図6の模式図を参照しながら説明する。図4は、2つのアクチュエータ(第1のアクチュエータ14a及び第2のアクチュエータ14b)上に1つの第1の板部材18がそれぞれ変位伝達部76を介して接続された構成を示す。なお、図6に示すように、固定部68のうち、隣接するセル15の変位伝達部76間に対応する箇所に孔170を設けるようにしてもよい。
図5は、第2のアクチュエータ14bが故障となっている状態において、第1のアクチュエータ14aが変位して第1の板部材18が下方に変位している状態を示す。すなわち、第1のアクチュエータ14aが下方に距離w0だけ変位することによって第1の板部材18が第2のアクチュエータ14bを下方へ押し下げようとするが、第2のアクチュエータ14bの振動部66での反力で、距離w1だけ戻された状態を示す。これにより、第1の板部材18は、距離w1だけ撓み、第2のアクチュエータ14bの振動部66は距離w2=w0−w1だけ撓むこととなる。
計算を簡単にするために、アクチュエータ14a及び14bの振動部66の中心と変位伝達部76の中心は等しく、振動部66の中心に対して集中荷重が加わると仮定する。また、この集中荷重による変位伝達部76の変形は無視できるものとする。
そして、図5に示すように、変位伝達部76間の距離をL1、第2のアクチュエータ14bの振動部66の幅をL2、第1の板部材18の曲げ剛性をE1I1、振動部66の曲げ剛性をE2I2とすると、第2のアクチュエータ14bにおける振動部の中心での力(P)がつりあっているので、
w1=PL1 3/(3E1I1)………………(1)片持ち梁
W2=PL2 3/(48E2I2)……………(2)両持ち梁
となり、W1とW2の比は、
w1/w2=16×(L1/L2)3×(E2I2/E1I1)………(3)
となる。
この比W1/W2が小さいほど故障状態の第2のアクチュエータ14bの変位を補償できることとなる。つまり、第1の板部材18の曲げ剛性E1I1が第1及び第2のアクチュエータ14a及び14bの振動部66の曲げ剛性E2I2よりも大きいほど、前記比W1/W2が小さくなり、第2のアクチュエータ14bの変位を補償することができる。
また、図7及び図8に示すように、振動部66を、固定部68から空所64に向けて片持ち梁状に延在させた構造としてもよい。ここで、第2のアクチュエータ14b上の変位伝達部76の中心(m)での集中荷重を考えると、
w1=PL1 3/(3E1I1)………………(4)片持ち梁
W2=PL2 3/(3E2I2)………………(5)片持ち梁
となり、W1とW2の比は、
w1/w2=(L1/L2)3×(E2I2/E1I1)………(6)
となる。
この図7及び図8の構成では、L1/L2を小さくすることが可能な構造であるため、比w1/w2をより小さくすることができる利点がある。
なお、図7及び図8の構成を採用する場合は、例えば図9に示すように、第1のアクチュエータ14aにおける振動部66の下面に電極172を形成し、第2のアクチュエータ14bにおける振動部66の下面に電極174を形成し、空所64の底部に前記電極172及び電極174に対向する電極176を形成することで、静電気力によって第1及び第2のアクチュエータ14a及び14bに変位動作を行わせることができる。すなわち、例えば第2のアクチュエータ14bが故障状態において、電極172と電極176間に電圧を印加することによって、第1のアクチュエータ14aが下方に変位し、これに伴って、第1の板部材18並びに第2のアクチュエータ14bを下方に変位させることができる。
第1の板部材18の曲げ剛性を大きくする手法としては、図10及び図11に示すように、第1の板部材18の下面に複数の溝178を設けることが挙げられる。溝178の形成方向(溝178が延在する方向)は、アクチュエータ14が配列される方向であり、溝178の深さは、第1の板部材18の厚みの10%以上、より好ましくは30%以上である。これにより、第1の板部材18の断面二次モーメントが増加し、該第1の板部材18の曲げ剛性を大きくすることができる。
また、第1の板部材18の曲げ剛性を大きくする手法としては、図12に示すように、複数の凹部180や凸部182をマトリックス状や千鳥状に配列するようにしてもよい。これは、アクチュエータ14の変位方向をz軸方向とし、第1の板部材18の面方向をxy平面方向としたとき、x軸方向及びy軸方向にそれぞれに2つ以上のアクチュエータ14を配列する場合の第1の板部材18の曲げ剛性を大きくする上で好適となる。つまり、図12の構成を採用することによって、x軸方向及びy軸方向の断面二次モーメントが増加し、あらゆる方向についての曲げ剛性が大きくなるからである。なお、凹部180の深さ、凸部182の高さは、第1の板部材18の厚みの10%以上、より好ましくは30%以上である。また、凹部180や凸部182の形状としては、平面から見た形状が、X字状、円形状、格子状、ストライプ状、櫛歯状等であったり、断面から見た形状が、ディンプル状、鋸歯状、山型状、楔状、四角状等でもよい。もちろん、凹部180や凸部182は、第1の板部材18の両面に形成されてもよいし、片面だけに形成されていてもよい。また、第1の板部材18自体が例えば波状に曲げられてもよい。
また、材質や厚みの面から第1の板部材18の曲げ剛性を振動部66の曲げ剛性よりも大きくするようにしてもよい。例えば振動部66の材質を酸化ジルコニウムとした場合、縦弾性係数は245.2GPaであり、第1の板部材18の材質をステンレス(例えばSUS304)とした場合、縦弾性係数は193.0GPaである。断面が長方形の場合、断面二次モーメントは厚みの3乗に比例するから、振動部66の厚みを例えば10μm、第1の板部材18の厚みを例えば50μmとすれば、第1の板部材18と振動部66の曲げ剛性の比は、193.0×503/245.2×103=98.3となり、第1の板部材18の曲げ剛性は、振動部66の曲げ剛性よりも大きくなる。
次の好ましい態様としては、アクチュエータ14のうち、変位伝達部76と接続される部分の幅が、振動部66の幅よりも小さいことである。この態様の具体的構成例としては、例えば図13あるいは図14に示すような構成が挙げられる。
すなわち、図13において、変位伝達部76は、少なくとも2つのアクチュエータ14a及び14bにわたって連続して延在して形成され、その上面はほぼ平坦とされ、下面はそれぞれアクチュエータ14a及び14bに対応して凸部184が形成された構成を有する。そして、少なくとも2つのアクチュエータ14a及び14bの中心に沿う断面を考えたとき、第1の板部材18に対する変位伝達部76の1つの接触幅をd1、変位伝達部76のアクチュエータ(振動部66)に対する1つの接触幅をd2、振動部66の幅をd3としたとき、d1>d3>d2を満足する。なお、ここでの幅とは、振動部66を梁とみたときの梁の長さに相当する値である。
図14において、変位伝達部76は、それぞれアクチュエータ14a及び14bに対応して分離して形成されている。そして、少なくとも2つのアクチュエータ14a及び14bの中心に沿う断面を考えたとき、第1の板部材18に対する変位伝達部76の1つの接触幅をd1、変位伝達部76のアクチュエータ(振動部66)に対する1つの接触幅をd2、振動部66の幅をd3としたとき、d3>d2=d1を満足する。
次の好ましい態様としては、第1の板部材18のうち、変位伝達部76と接続される部分の幅が、振動部66の幅よりも小さいことである。この態様の具体的構成例としては、例えば上述した図14あるいは図15に示すような構成が挙げられる。
図15において、変位伝達部76は、少なくとも2つのアクチュエータ14a及び14bにわたって連続して延在して形成され、その下面はほぼ平坦とされ、上面はそれぞれアクチュエータ14a及び14bに対応して凸部186が形成された構成を有する。そして、少なくとも2つのアクチュエータ14a及び14bの中心に沿う断面を考えたとき、第1の板部材18に対する変位伝達部76の1つの接触幅をd1、変位伝達部76のアクチュエータ(振動部66)に対する1つの接触幅をd2、振動部66の幅をd3としたとき、d1<d3=d2を満足する。なお、図10の構成については上述したので、ここではその説明を省略する。
図15に示す構成の場合、図16に示すように、第1のアクチュエータ14aを下方に変位させることによって、故障状態の第2のアクチュエータ14bも変位させることができる。
このように、第1及び第2の実施の形態に係るアクチュエータ装置10A及び10Bにおいては、複数のアクチュエータ14のうち、いくつかのアクチュエータ14が不良となったとしても、正常なアクチュエータ14で変位を補償することができ、歩留まりを向上させることができる。また、アクチュエータ14によって変位する部分の面積、すなわち、有効面積を大きくとることができる。
特に、第1の板部材18の剛性を、アクチュエータ14の振動部66の剛性よりも大きくしたので、1つのアクチュエータ14が亀裂、断線などで故障しても、別のアクチュエータ14が変位することで第1の板部材18が変位し、その力で故障したアクチュエータ14の振動部66をも変位させることができる。これによって、1つのアクチュエータ14が故障しても、第1の板部材18全体の変位は影響を受けないので、故障箇所を補償することができる。また、アクチュエータ14が振動部66を有することで、故障したアクチュエータ14を外力によって容易に変位させることが可能となる。振動部66を持たない例えば積層型のアクチュエータではこのような欠陥補償を行うことができない。
第1の板部材18の曲げ剛性は、振動部66の曲げ剛性の10倍以上が好ましい。これにより、第1の板部材18の撓み量がより小さくなる。この場合、アクチュエータ14間の距離、変位伝達部76の大きさなどの製造上のばらつきに左右され難い構造とすることができる。
また、第1の板部材18に溝178、凹部180、凸部182を設けるようにしたので、第1の板部材18の断面二次モーメントを大きくすることができ、第1の板部材18の曲げ剛性を高めることができる。この場合、少量の材料で剛性を高めることができることから、軽量化を図る上で有利になる。その上、慣性質量が小さくなることから、アクチュエータの応答速度が向上する効果も得られる。
また、アクチュエータ14の変位過程において、振動部66と第1の板部材18との間の距離がほとんど変化しないことが好ましい。例えば振動部66と第1の板部材18との間に変位伝達部76が介在している場合には、該変位伝達部76の厚み(高さ)がアクチュエータ14の変位動作によってほとんど変形しない(圧縮変形、引張変形や座屈による変形等をしない)のが好ましい。この場合、変位伝達部76にフィラーを添加する等で圧縮、引っ張りに対する変形を抑制することができる。
また、アクチュエータ14のうち、変位伝達部76と接続される部分の幅が、振動部66の幅よりも小さくしたので、振動部66の変位と発生力を、変位伝達部76によって、第1の板部材18により確実に伝達することができる。特に、図13〜図15の態様では、変位伝達部76での変位を阻害しない構成とすることができ、また、図13及び図14の態様では、変位伝達部76が固定部68に重ならない構成にすることができる。これらの場合、振動部66と第1の板部材18とを確実に固定するために、変位伝達部76は振動部66に対して小さくなり過ぎないようにすることが好ましい。この場合、振動部66の場所によって変位や発生力は異なるので、たとえ振動部66と変位伝達部76との接続部分が、振動部66のうち、変位が最も大きい部分を含まなくても、発生力と必要な変位量から最適な値を取り得る。すなわち、変位伝達部76の幅は、振動部66の幅の5%〜99%、より好ましくは、30%〜90%がよい。面積でみた場合は、変位伝達部76の横断面積は、振動部66の横断面積の0.5%〜99%、より好ましくは、10%〜90%がよい。また、変位伝達部76の高さと幅との比、すなわち、変位伝達部76のアスペクト比は、1より小、より好ましくは0.2より小がよい。
なお、第1の板部材18の剛性よりも振動部66の剛性が高いと、第1の板部材18は、故障したアクチュエータ14の振動部66を変位させることができずに撓んでしまい、第1の板部材18の中で変位する箇所と変位しない箇所が形成されてしまうので好ましくない。
図4に示す態様では、振動部66を平坦としたが、振動部66は、図17Aに示すように、アーチ形状であってもよいし、図18に示すように、波形状であってもよい。図17A及び図18の例では、振動部66が第1の板部材18に向かって凸とされた形状とした場合を示している。この場合、振動部66が凸形状でない場合(例えば平坦な状態)と比べ、アクチュエータ14の応答性を向上させる効果があり、なお且つ、アクチュエータ14が故障しても隣接するアクチュエータ14で変位を補償することができる。
その理由は、第1の板部材18を配置することによって、振動部66はより大きな質量を変位させなければならず、第1の板部材18がない場合に比べて負荷が大きい。振動部66が凸形状を有することで、駆動力がより強力になり、応答性が高く保たれると考えられる。また、剛性が高まることで、第1の板部材18の質量が加わってもそれを十分支えられると考えられる。
一方で、アクチュエータ14が故障した場合には、隣接したアクチュエータ14によって駆動された第1の板部材18が振動部66を変位させることになるが、その際に、振動部66からの反力は小さい方が望ましい。凸形状は駆動力を高めながら、第1の板部材18によって変位させられるときの反力が大きくならないという特徴をもっているものと考えられる。
そして、振動部66を凸形状とする構造においては、振動部66の両端が固定部68につながっている構成や、振動部66の周辺が固定部68につながっている構成で、特に好ましく用いられる。振動部66下に空所が存在する場合、該空所に液体を充填して使用する場合などが考えられるが、このような場合、液体が漏れることのないように、振動部66の周辺が固定部68につながっている必要がある。
また、故障したアクチュエータ14に対し、正常なアクチュエータ14によって第1の板部材18が変位し、変位伝達部76を介して故障したアクチュエータ14の振動部66が押し下げられる状態において、周辺が固定部68につながった振動部66が平坦な断面形状をしていると、ピンと張った振動部66の張力で前記変位を阻害する力が大きくなるおそれがある。つまり、前記変位をするには、振動部66がその長さ方向に伸びることになるためである。それに対して、振動部66がアーチ形状や波形状を有していると、固定部68間を結ぶ最短距離よりも振動部66自体の長さが長くなっているため、図19に示すように、変位伝達部76から力を受けたとき、変位を阻害する力が比較的弱くなる。
振動部66がアーチ形状を有する場合、駆動力を受けてアクチュエータ14が変位する方向が第1の板部材18から離間する方向のときには第1の板部材18に向かって凸のアーチ形状を有することが好ましく、変位する方向が第1の板部材18に向かう方向のときには第1の板部材18に向かって凹のアーチ形状を有することがより好ましい。
振動部66が第1の板部材18に向かって凸とされたアクチュエータ14をさらに第1の板部材18に向かって変位させるのは、より振動部66の長さを長くさせることになり、その変位を阻害する力が大きくなるためである。振動部66が第1の板部材18に向かって凸とされたアクチュエータ14が変位伝達部76を介して第1の板部材18から離間する方向に力を受けた場合には、振動部66が撓むことで変位を受けることになる。
このように、振動部66を固定部68に対して両端固定した場合や周辺固定にした場合でも、振動部66の剛性が高くなりすぎないため、故障を補償する機能を満足させるための効果が高い。また、設計の自由度も高くなる。もちろん、振動部66を固定部68に対して、片端固定しても構わない。
振動部66がアーチ形状あるいは波形状である場合に、第1の板部材18に向かって凸(又は凹)の高さ(又は深さ)は、振動部66の厚み分の高さ(又は深さ)よりも大きいことが好ましい。
なお、アクチュエータ14の応答性を確保する上で、振動部66の剛性が小さくなりすぎないようにする必要があるのはいうまでもなく、振動部66の厚みや幅、梁の長さ、形状、材質等を考慮して選定されるのは当然のことである。また、凸形状を構成する凸や凹は、振動部66の中央部分に形成されなくてもよい。
振動部66の凸形状は、図17Aや図18に示すように、梁の長さ方向に形作られていてもよいし、図20に示すように、振動部66と固定部68の継ぎ目に平行な方向に形作られていてもよい。特に、梁の長さにわたってウィング形状(W形状)をしていることが効果的で好ましい。なお、図20において、矢印Aは、凸状に変形していることを示す。ウィング形状を有する場合、凸形状の幅、すなわち、谷と谷との距離は梁の長さの1/3以上であることが好ましい。また、第1の板部材18に向かって凸とした場合、凸の頂点は固定部68の高さより第1の板部材18側に突出していることがより好ましい。
また、図21及び図22に示すように、例えばマトリックス状に配列された4つのアクチュエータ14に対して1つの第1の板部材18を配置してもよい。この場合、第1の板部材18の四隅にそれぞれアクチュエータ14が配置されることが好ましい。これにより、少ない数及び小さい面積のアクチュエータ14で大面積を有する第1の板部材18の変位を制御することが可能となり、しかも、アクチュエータ14によって変位する部分の面積、すなわち、有効面積(表示装置に適用した場合の開口率等)を大きくとることができる。これは、低消費電力並びに基板12の剛性の向上につながり、平面形状の安定化も図ることができる。
さらに、図23に示すように、第1の板部材18の四隅にそれぞれアクチュエータ14を配置すると共に、第1の板部材18の対角線上の位置で、且つ、各アクチュエータ14に近接する位置にそれぞれ欠陥補償のためのアクチュエータ14eを配置してもよい。これにより、信頼性を大幅に向上させることができる。
また、第1及び第2の実施の形態に係るアクチュエータ装置10A及び10Bは、平面的に配列された複数のセル15を有するが、特に、第1の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Aの第1の板部材は、図24や図25に示すように、各セル15に対応する部分が相互に接続されている。この場合、セル15同士を相互に接続する継手部190の全部又は一部の剛性が、第1の板部材18のセル15に対応する部分192(以下、セル部分と記す)の剛性より小さく設定されている。
第1の板部材18の継手部190の全部又は一部の剛性をセル部分192の剛性よりも小さくする手法としては、図26Aに示すように、継手部190にスリット194等を設けて継手部190の幅(2×D2)をセル部分192の幅D1よりも小さくすることや、図26Bに示すように、例えば継手部190の一部196をセル部分192よりも肉薄にすること等が挙げられる。
図24の例では、第1の板部材18のうち、スペーサ24に対応する部分(スペーサ部分220)間にスリット194が設けられ、セル部分192とスペーサ部分220とが幅の狭いアーム部222でつながれた形となっている。
図25の例では、第1の板部材18のうち、スペーサ24の配列に沿って縦方向及び横方向に延びる複数の縦罫部分224と複数の横罫部分226とがそれぞれスペーサ部分220にて結合された形を有し、さらに、例えば横罫部分226とセル部分192とが幅の狭いアーム部222でつながれた形となっている。つまり、この例では、縦罫部分224に沿ったスリット194Aと、横罫部分226に沿ったスリット194Bとが形成された形となっている。
具体的な手法としては、例えば図27に示すように、第1の板部材18の一方の面(例えば下面)からのハーフエッチングにより、第1の板部材18の厚みの半分の深さまで、各セル部分192に複数の凹部180を形成する。このとき、セル部分192間の継手部190及びスリットが形成される部分においてもハーフエッチングを行って凹部198を形成する。次に、反対の面(例えば上面)のうち、スリットが形成される部分をエッチングする。これにより、スリットが形成される部分に孔があき、スリット194が形成される。
これにより、第1の板部材18のうち、各セル部分192は、複数の凹部180により、断面二次モーメントが大きくなっているため、曲げ剛性が高くなる。継手部190は、凹部198の形成によって厚みがほぼ半分になっており、しかも、スリット194の形成によって、幅が狭くなっていることから、各セル部分192に比べ、曲げ剛性が小さくなっている。
また、第1の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Aにおいては、例えば図24に示すように、第1の板部材18の継手部190と固定部68(図1参照)とをスペーサ24を介して接合するようにしたので、第1の板部材18のうち、各セル部分192と固定部68間の距離を精密、かつ、確実に設定することができる。
特に、基板12と第1の板部材18の継手部190との間にスペーサ24が存在することにより、以下のような効果を奏する。
すなわち、基板12の高さが場所によって異なるような場合、例えば1つの基板12上に複数のアクチュエータ14を形成する場合において、基板12にうねりがある場合(製造上、不可避であることが多い)には、第1の板部材18を基板12上に配するときに、場所によって第1の板部材18と基板12との距離が変わり、アクチュエータ14と第1の板部材18が直接当たる状態になることもある。このような場合、第1の板部材18の一部に歪が生じてしまい、アクチュエータ14の動作によって第1の板部材18を所望する通りに動作させることができなくなるおそれがある。
しかし、基板12と第1の板部材18の継手部190間にスペーサ24が存在すると、第1の板部材18と基板12との距離をスペーサ24によって確保できるので、基板12にうねりがあっても、上述のような不具合は生じない。
また、アクチュエータ14は、第1の板部材18と接続することによって、該アクチュエータ14の変位特性は影響を受けるが、スペーサ24によって第1の板部材18と基板12との距離が規定されていると、アクチュエータ14の変位特性の変化の程度が場所によらず均等となり、ばらつきの発生を抑制するのに効果が大きい。例えばアクチュエータ14と第1の板部材18とを接続するための接続部材(例えば変位伝達部76)の厚みが均等にできるので、各アクチュエータの変位特性に与える影響を均等にすることができる。
さらに、スペーサ24がない場合には、アクチュエータ14と第1の板部材18とが部分的にかなり接近した場合に、例えば変位伝達部76がアクチュエータ14のサイズよりも大きく広がってしまい、その結果、アクチュエータ14の動作を阻害するおそれがあるが、スペーサ24を設けることでこのような不具合を回避することができる。
スペーサ24の高さが必要以上に高い場合には、スペーサ24自体の膨張、収縮や、アクチュエータ14の負荷が大きくなることによる特性変化等の不具合を生ずることになる。従って、スペーサ24を適切な高さに設定することで、上述したスペーサ24による効果を十分に発揮させることができる。
スペーサ24の配置は、図24に示すように、セル15毎にスペーサ24を設けることが好ましい。緊密な固定が得られ、各セル部分192と固定部68間の距離を精密、且つ、確実に設定できるからである。また、セル15毎にスペーサ24を設けた場合に、各セル部分192の実効面積が減少するようであれば、実効面積効率を高める目的等で、例えば図28に示すように、連続する4つのセル15を1つの大セル200とし、この大セル200単位にスペーサ24を設けるようにしてもよい。もちろん、アクチュエータ装置10Aの外周のみにスペーサ24を設けるようにしてもよい。
スペーサ24は、図29に示すように、セル15を取り囲むように格子状に形成するようにしてもよいし、図30及び図31に示すように、セル15の互いに対向する辺に沿ってストライプ状に形成するようにしてもよい。もちろん、図24に示すように、セル15の四隅に柱状のスペーサ24を配置するようにしてもよいし、図32に示すように、セル15の4辺に柱状のスペーサ24を配置するようにしてもよい。
次に、第3の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Cは、図33に示すように、上述した第1の実施の形態に係るアクチュエータ装置とほぼ同様の構成を有するが、第1の板部材18に対向して配された1つの第2の板部材20を有する点で異なる。
第1の板部材18と第2の板部材20との間には、複数のスペーサ22が形成され、この場合も、これらスペーサ22によって例えばm個のセル15が形成されている。
第4の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Dは、図34に示すように、上述した第2の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Bとほぼ同様の構成を有するが、第1の板部材18がm個のセル15に合わせて分離されている点で異なる。なお、第2の板部材20と基板12との間に、隣接する第1の板部材18間の隙間を通して複数のスペーサ26が介在されている。
上述した第1〜第4の実施の形態に係るアクチュエータ装置10A〜10Dは、表示装置として適用させることができ、また、可変コンデンサや光変調器等にも適用させることができる。
ここで、第3及び第4の実施の形態に係るアクチュエータ装置10C及び10Dを表示装置として適用した第1及び第2の具体例に係る表示装置30A及び30Bについて図35〜図44を参照しながら説明する。
先ず、第1の具体例に係る表示装置30Aは、図35に示すように、1つのアクチュエータ基板32上に複数のアクチュエータ34が平面的(例えばマトリックス状や千鳥状)に配列された駆動部36と、アクチュエータ基板32に対向して配され、かつ、光源からの光33が端面から導入される1つの光導波板38と、アクチュエータ基板32と光導波板38との間に配され、かつ、駆動部36における複数のアクチュエータ34の駆動力が伝達される1つの連結板40とを有する。
アクチュエータ基板32と連結板40との間には、図36に示すように、それぞれ画素が形成されるセル50(画素形成区画)を囲むように複数のスペーサ42が形成され、連結板40と光導波板38との間にも、それぞれセル50を囲むように複数のスペーサ44が形成されている。
各セル50は、複数のスペーサ42及び44によってそれぞれ例えば矩形状に仕切られ、例えば6つのアクチュエータ34(2行3列のアクチュエータ)を包含する領域を有する。また、各セル50に対応して連結板40上に1つの画素構成体52が形成されている。つまり、この実施の形態では、アクチュエータ基板32上の6つのアクチュエータ34に対して、連結板40上の1つの画素構成体52が割り当てられた構成を有する。
そして、この第1の具体例に係る表示装置30Aは、複数個用意されて、図37に示すように、1つの導光板60の背面に、複数個の表示装置30Aが例えばマトリックス状に配列されることによって、1つの大画面表示装置62が構成されるようになっている。
この大画面表示装置62は、例えばVGA(Video Graphics Array)の規格に準拠すべく、水平方向に640画素が並び、垂直方向に480画素が並ぶように、導光板60の背面に、表示装置30Aを水平方向に5個、垂直方向に4個配列させるようにしている。
導光板60は、ガラス板やアクリル板等の可視光領域での光透過率が大であって、かつ、均一なものが使用され、各表示装置30A間は、ワイヤボンディングや半田付け、端面コネクタ、裏面コネクタ等で接続することにより相互間の信号供給が行えるようになっている。
なお、前記導光板60と各表示装置30Aの光導波板38は、屈折率が類似したものが好ましく、導光板60と光導波板38とを貼り合わせる場合には、透明な接着剤や液体を用いてもよい。この接着剤や液体は、導光板60や光導波板38と同様に、可視光領域において均一で、かつ、高い光透過率を有することが好ましく、また、屈折率も導光板60や光導波板38と近いものに設定することが、画面の明るさを確保する上で望ましい。
上記の例では、表示装置30Aの光導波板38側の面を導光板60に貼り合せるようにして大画面表示装置62を構成するようにしたが、その他、図37において括弧内に示すように、光導波板38を省略し、スペーサ44(図35参照)の端面を導光板60に直接貼り合わせて大画面表示装置62を構成するようにしてもよい。
一方、表示装置30Aにおけるアクチュエータ基板32の内部には、各アクチュエータ34に対応した位置にそれぞれ後述する振動部66を形成するための空所64が設けられている。各空所64は、アクチュエータ基板32の他端面に設けられた径の小さい貫通孔(図示せず)を通じて外部と連通されている。
前記アクチュエータ基板32のうち、空所64の形成されている部分が肉薄とされ、それ以外の部分が肉厚とされている。肉薄の部分は、外部応力に対して振動を受けやすい構造となって振動部66として機能し、空所64以外の部分は肉厚とされて前記振動部66を支持する固定部68として機能するようになっている。
つまり、アクチュエータ基板32は、図38に示すように、最下層である基板層32Aと中間層であるスペーサ層32Bと最上層である薄板層32Cとの積層体であって、スペーサ層32Bのうち、アクチュエータ34に対応する箇所に空所64が形成された一体構造体として把握することができる。基板層32Aは、補強用基板として機能するほか、配線用の基板としても機能するようになっている。なお、前記アクチュエータ基板32は、一体焼成であっても、後付けであってもよい。
基板層32A、スペーサ層32B及び薄板層32Cの構成材料としては、例えば、安定化酸化ジルコニウム、部分安定化酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、スピネル及びムライト等の高耐熱性、高強度及び高靭性を兼ね備えるものが好適に採用される。なお、基板層32A、スペーサ層32B及び薄板層32Cは、全て同一材料としてもよく、それぞれ別の材料としてもよい。
そして、薄板層32Cの厚みとしては、アクチュエータ34を大きく変位させるために、50μm以下とされ、好ましくは3〜20μm程度とされる。
スペーサ層32Bは、アクチュエータ基板32に空所64を構成するものとして存在していればよく、その厚みは特に制限されるものではない。しかし一方で、空所64の利用目的に応じてその厚みを決定してもよく、その中でもアクチュエータ34が機能する上で必要以上の厚みを有さず、薄い状態で構成されていることが好ましい。すなわち、スペーサ層32Bの厚みは、利用するアクチュエータ34の変位の大きさ程度であることが好ましい。
このような構成により、薄肉の部分(振動部66の部分)の撓みが、その撓み方向に近接する基板層32Aにより制限され、意図しない外力の印加に対して、前記薄肉の部分の破壊を防止するという効果が得られる。なお、基板層32Aによる撓みの制限効果を利用して、アクチュエータ34の変位を特定値に安定させることも可能である。
また、スペーサ層32Bを薄くすることで、アクチュエータ基板32自体の厚みが低減し、曲げ剛性を小さくすることができるため、例えばアクチュエータ基板32を別体に接着・固定するにあたって、相手方(例えば光導波板38や連結板40)に対し、自分自身(この場合、アクチュエータ基板32)の反り等が効果的に矯正され、接着・固定の信頼性の向上を図ることができる。
加えて、アクチュエータ基板32が全体として薄く構成されるため、アクチュエータ基板32を製造する際に、原材料の使用量を低減することができ、製造コストの観点からも有利な構造である。従って、スペーサ層32Bの具体的な厚みとしては、3〜50μmとすることが好ましく、中でも3〜20μmとすることが好ましい。
一方、基板層32Aの厚みとしては、上述したスペーサ層32Bを薄く構成することから、アクチュエータ基板32全体の補強目的として、50μm以上、好ましくは80〜300μm程度とされる。
ここで、アクチュエータ34と画素構成体52の具体例を図35及び図38に基づいて説明する。なお、図35は、光導波板38と連結板40との間に介在されたスペーサ44と光導波板38との間に光遮蔽層70を設けた場合を示す。
先ず、アクチュエータ34は、図38に示すように、振動部66と固定部68のほか、該振動部66上に直接形成された圧電/電歪層72と、該圧電/電歪層72の上面と下面に形成された一対の電極74a及び74bとからなるアクチュエータ本体75を有する。
一対の電極74a及び74bは、図38に示すように、圧電/電歪層72に対して上下に形成した構造や片側だけに形成した構造でもよいし、圧電/電歪層72の上部のみに一対の電極74a及び74bを形成するようにしてもよい。
一対の電極74a及び74bを圧電/電歪層72の上部のみに形成する場合、一対の電極74a及び74bの平面形状としては、多数のくし歯が相補的に対峙した形状のほか、特開平10−78549号公報や特開2001−324961号公報にも示されているように、渦巻き状や多枝形状などを採用してもよい。
また、一対の電極74a及び74bは、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、パラジウム、ロジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛等の各金属、あるいはこれらのうちの2種類以上を構成成分とする合金、また、これら金属単体及び合金に酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化銅等の金属酸化物を添加したもの、更には金属単体及び合金に対して前述したアクチュエータ基板32の構成材料、及び/又は後述の圧電/電歪材料と同じ材料を分散させたサーメットとしたもの等の導電材料を用いることができる。
アクチュエータ基板32上に一対の電極74a及び74bを形成する方法としては、フォトリソグラフィ法、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、電気泳動法、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長(CVD)法、あるいはめっき等の膜形成法が挙げられる。
圧電/電歪層の構成材料の好適な例としては、ジルコン酸鉛、マンガンタングステン酸鉛、チタン酸ナトリウムビスマス、鉄酸ビスマス、ニオブ酸カリウムナトリウム、タンタル酸ストロンチウムビスマス、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、銅タングステン酸バリウム、マグネシウムタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛、あるいはこれらのうちの2種以上からなる複合酸化物を挙げることができる。また、これらの圧電/電歪体材料には、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン、セリウム、カドミウム、クロム、コバルト、アンチモン、鉄、イットリウム、タンタル、リチウム、ビスマス、スズ、銅等の酸化物が固溶されていてもよい。
なお、圧電/電歪層72の代わりに反強誘電体層を用いてもよい。この場合、ジルコン酸鉛、ジルコン酸鉛及びスズ酸鉛の複合酸化物、ジルコン酸鉛、スズ酸鉛及びニオブ酸鉛の複合酸化物等を挙げることができる。これらの反強誘電体材料も、上記したような各元素が固溶されていてもよい。
また、前記材料等に、ビスマス酸リチウム、ゲルマン酸鉛等を添加した材料、例えばジルコン酸鉛、チタン酸鉛およびマグネシウムニオブ酸鉛の複合酸化物にビスマス酸リチウムないしゲルマン酸鉛を添加した材料は、圧電/電歪層72の低温焼成を実現しつつ高い材料特性を発現できるので好ましい。なお、低温焼成化はガラスの添加(例えば珪酸塩ガラス、硼酸塩ガラス、燐酸塩ガラス、ゲルマン酸塩ガラス、又はそれらの混合物)によっても実現させることができる。ただ、過剰な添加は、材料特性の劣化を招くため、要求特性に応じて添加量を決めることが望ましい。
ところで、図38に示すように、一対の電極74a及び74bとして、圧電/電歪層72の下面に電極74aを形成し、圧電/電歪層72の上面に電極74bを形成した場合においては、図35に示すように、アクチュエータ34を空所64側に凸となるように一方向に屈曲変位させることも可能であり、その他、アクチュエータ34を連結板40側に凸となるように、他方向に屈曲変位させることも可能である。
ここで、空所64の開口幅(面積)は、アクチュエータ本体75の幅(面積)よりも大きいことが好ましいが、空所64の開口幅(面積)は、アクチュエータ本体75の幅(面積)と同等でもよいし、わずかに小さくてもよい。
アクチュエータ34の上部には、該アクチュエータ34の変位を連結板40に伝えるための変位伝達部76が形成される。この変位伝達部76は、例えば接着剤を用いることができる。もちろん、フィラー含有接着剤を用いてもよい。この場合、連結板40と変位伝達部76の端面は、固着(接合)されていてもよいし、単に接触していてもよい。従って、以下の説明は、これら「固着」及び「接触」を包含する意味で「接続」という文言を使用する。つまり、アクチュエータ34と連結板40は変位伝達部76を介して接続されることになる。
変位伝達部76は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、吸湿硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等を好適な例として挙げることができる。
具体的には、アクリル系樹脂、変性アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、シアノアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、メタクリル系樹脂、変性メタクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、特殊シリコーン変性ポリマー、ポリカーボネート系樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が例示される。
特に、ビニルブチラール系樹脂、アクリル系樹脂、変性アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、あるいはこれらの2種以上の混合物は接着強度に優れるので好適であり、とりわけ、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、あるいはこれらの混合物が好適である。
連結板40は、変位不良のアクチュエータ(欠陥アクチュエータ)があった場合でも、連結板40に接続された正常のアクチュエータ34の変位によって、前記欠陥アクチュエータの変位を補償するために、最適な剛性が得られるような材質、厚みに選定されている。
すなわち、連結板40は、金属、セラミックス、ガラス、有機樹脂などが利用でき、上記機能を満たすものなら、特に限定されるものではない。一例を挙げれば、SUS304(ヤング率:193GPa、線膨張係数:17.3×10-6/℃)、SUS403(ヤング率:200GPa、線膨張係数:10.4×10-6/℃)、酸化ジルコニウム(ヤング率:245.2GPa、線膨張係数:9.2×10-6/℃)、ガラス(例えばコーニング0211、ヤング率:74.4GPa、線膨張係数:7.38×10-6/℃)等が好ましく用いられる。この実施の形態では、SUS板を用いた。この場合、SUS板の厚みとしては、好ましくは10μm〜300μmである。
スペーサ42及び44の構成材料としては、熱、圧力に対して変形しないものが好ましい。例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、光硬化性樹脂、吸湿硬化性樹脂、常温硬化性樹脂等を硬化させたもの等が挙げられる。
もちろん、スペーサ42及び44にフィラーを含有させるようにしてもよい。フィラーを含有しない場合と比して硬度が高く、かつ耐熱性や強度、寸法安定性が高い。また、フィラーが含有されていないスペーサに比して、表示装置30Aの内部温度上昇に伴う変形量が著しく小さい。換言すれば、フィラーを含有させることによって、樹脂硬化物の硬度や耐熱性、強度を向上させることができ、かつ、熱による膨張・収縮量を著しく減少させることができる。
画素構成体52は、例えば図35に示すように、連結板40上に形成された光散乱層78と透明層80との積層体で構成することができる。
さらに、前記積層体の他に、(1)透明層80と光散乱層78の間に色フィルタあるいは有色散乱体を介在させた場合、(2)光散乱層78の下層に光反射層を積層した場合、(3)有色散乱層と透明層80の積層体で構成した場合、等の種々の組み合わせが考えられる。
なお、アクチュエータ基板32への電極74a及び74b、圧電/電歪層72及びスペーサ42等の膜の形成、並びに連結板40への画素構成体52及びスペーサ44等の膜の形成は、特に制限はなく、公知の各種の膜形成法を適用することができる。
例えばアクチュエータ基板32や連結板40の面上に成膜する方法としては、チップ状、フィルム状の膜を直接貼り付けるフィルム貼着法ほか、膜の原材料となる粉末、ペースト、液体、気体、イオン等を、スクリーン印刷法、フォトリソグラフィ法、スプレー・ディッピング法、塗布等の厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相成長(CVD)法、めっき等の薄膜形成法等が挙げられる。
ここで、表示装置30Aの動作を図35及び図38を参照しながら簡単に説明する。先ず、光導波板38の例えば端部から光33が導入される。この場合、画素構成体52が光導波板38に接触していない状態で、光導波板38の屈折率の大きさを調節することにより、全ての光33を光導波板38の前面及び背面において透過することなく内部で全反射させるようにする。光導波板38の屈折率としては、1.3〜1.8が望ましく、1.4〜1.7がより望ましい。
この例においては、アクチュエータ34の自然状態において、画素構成体52の端面が光導波板38の背面に対して光33の波長以下の距離で接触しているため、光33は、画素構成体52の表面で反射し、散乱光82となる。この散乱光82は、一部は再度光導波板38の中で反射するが、散乱光82の大部分は光導波板38で反射されることなく、光導波板38の前面(表面)を透過することになる。これによって、全てのアクチュエータ34がオン状態となり、そのオン状態が発光というかたちで具現され、しかも、その発光色は画素構成体52に含まれる色フィルタや光散乱層78の色に対応したものとなる。この場合、全てのアクチュエータ34に対応する画素がオン状態となっているため、表示装置30Aの画面からは白色が表示されることになる。
また、更には、アクチュエータ34の電極74bと電極74aとの間に低レベル電圧(例えば−10V)が駆動電圧として印加されることにより、画素構成体52の端面が光導波板38の背面に対して押し付けられる状態で接触し、より確実なオン状態を作り出すことが可能となり、安定した表示が可能となる。
この状態から、ある画素に対応する6つのアクチュエータ34の電極74bと電極74aとの間に高レベルの駆動電圧(例えば50V)が印加されると、当該画素に対応する6つのアクチュエータ34が図35に示すように、空所64側に凸となるように屈曲変位、すなわち、下方に屈曲変位することから、この駆動変位が変位伝達部76及び連結板40を通じて画素構成体52に伝わり、これによって、画素構成体52の端面が光導波板38から離隔し、当該画素構成体52に対応する画素がオフ状態となり、そのオフ状態が消光というかたちで具現される。
つまり、この表示装置30Aは、画素構成体52の光導波板38への接触の有無により、光導波板38の前面における光の発光(散乱光82)の有無を制御することができる。
そして、画像信号における1フレーム(1/60sec)を3つの時間帯(第1フィールド〜第3フィールド)に分け、各フィールドで3色の光源を切り換えるようにする。例えば第1フィールドで赤色光源(R光源)からの光を導入し、第2フィールドで緑色光源(G光源)からの光を導入し、第3フィールドで青色光源(B光源)からの光を導入することで、モノクロ対応の画素配列でもカラー表示が実現でき、この場合、1つの画素構成体52で1つの画素を構成することができるため、高解像度を実現させることができる。
上述では、第1の具体例に係る表示装置30Aの主要な構成部材の材料について説明したが、その他の構成部材(光33、アクチュエータ基板32、光導波板38)の材料について以下に説明する。
先ず、光導波板38に入射される光33としては、紫外域、可視域、赤外域のいずれでもよい。光源としては、白熱電球、重水素放電ランプ、蛍光ランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、トリチウムランプ、発光ダイオード、レーザ、プラズマ光源、熱陰極管、冷陰極管などが用いられる。
振動部66は、高耐熱性材料であることが好ましい。その理由は、アクチュエータ34を有機接着剤等の耐熱性に劣る材料を用いずに、固定部68によって直接振動部66を支持させる構造とする場合、少なくとも圧電/電歪層72の形成時に、振動部66が変質しないようにするため、振動部66は、高耐熱性材料であることが好ましい。
また、振動部66は、アクチュエータ基板32上に形成される一対の電極74a及び74bにおける一方の電極74aに通じる配線(例えば行選択線)と他方の電極74bに通じる配線(例えば信号線)との電気的な分離を行うために、電気絶縁材料であることが好ましい。
従って、振動部66は、高耐熱性の金属あるいはその金属表面をガラス等のセラミック材料で被覆したホーロー等の材料であってもよいが、セラミックスが最適である。
振動部66を構成するセラミックスとしては、例えば安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、スピネル、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、ガラス、これらの混合物等を用いることができる。安定化された酸化ジルコニウムは、振動部66の厚みが薄くても機械的強度が高いこと、靭性が高いこと、圧電/電歪層72並びに一対の電極74a及び74bとの化学反応性が小さいこと等のため、特に好ましい。安定化された酸化ジルコニウムとは、安定化酸化ジルコニウム及び部分安定化酸化ジルコニウムを包含する。安定化された酸化ジルコニウムでは、立方晶等の結晶構造をとるため、相転移を起こさない。
一方、酸化ジルコニウムは、1000℃前後で、単斜晶と正方晶とで相転移し、この相転移のときにクラックが発生する場合がある。安定化された酸化ジルコニウムは、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、酸化ナトリウム又は希土類金属の酸化物等の安定化剤を、1〜30モル%含有する。振動部66の機械的強度を高めるために、安定化剤が酸化イットリウムを含有することが好ましい。このとき、酸化イットリウムは、好ましくは1.5〜6モル%含有され、更に好ましくは2〜4モル%含有され、更に0.1〜5モル%の酸化アルミニウムが含有されていることが好ましい。
また、結晶相は、立方晶+単斜晶の混合相、正方晶+単斜晶の混合相、立方晶+正方晶+単斜晶の混合相などであってもよいが、中でも主たる結晶相が、正方晶、又は正方晶+立方晶の混合相としたものが、強度、靭性、耐久性の観点から最も好ましい。
振動部66がセラミックスからなるとき、多数の結晶粒が振動部66を構成するが、振動部66の機械的強度を高めるため、結晶粒の平均粒径は、0.05〜2μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることが更に好ましい。
固定部68は、セラミックスからなることが好ましいが、振動部66の材料と同一のセラミックスでもよいし、異なっていてもよい。固定部68を構成するセラミックスとしては、振動部66の材料と同様に、例えば、安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、スピネル、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、ガラス、これらの混合物等を用いることができる。
特に、この第1の具体例に係る表示装置30Aで用いられるアクチュエータ基板32は、酸化ジルコニウムを主成分とする材料、酸化アルミニウムを主成分とする材料、又はこれらの混合物を主成分とする材料等が好適に採用される。その中でも、酸化ジルコニウムを主成分としたものが更に好ましい。
なお、焼結助剤として粘土等を加えることもあるが、酸化珪素、酸化ホウ素等のガラス化しやすいものが過剰に含まれないように、助剤成分を調節する必要がある。なぜなら、これらガラス化しやすい材料は、アクチュエータ基板32と圧電/電歪層72とを接合させる上で有利ではあるものの、アクチュエータ基板32と圧電/電歪層72との反応を促進し、所定の圧電/電歪層72の組成を維持することが困難となり、その結果、素子特性を低下させる原因となるからである。
すなわち、アクチュエータ基板32中の酸化珪素等は重量比で3%以下、更に好ましくは1%以下となるように制限することが好ましい。ここで、主成分とは、重量比で50%以上の割合で存在する成分をいう。
光導波板38は、その内部に導入された光33が前面及び背面において光導波板38の外部に透過せずに全反射するような光屈折率を有するものであり、導入される光33の波長領域での透過率が均一で、かつ高いものであることが必要である。このような特性を具備するものであれば、特にその材質は制限されないが、具体的には、例えばガラス、石英、アクリル等の透光性プラスチック、透光性セラミックスなど、あるいは異なる屈折率を有する材料の複数層構造体、又は表面にコーティング層を設けたものなどが一般的なものとして挙げられる。
次に、第1の具体例に係る表示装置30Aの作用効果を実施例と比較例との比較において図39A〜図42を参照しながら説明する。
実施例は、第1の具体例に係る表示装置30Aと同様の構成を有し、比較例は、図52に示す従来例に係る表示装置300と同様の構成を有する。
先ず、1画素についての開口率の違いについて説明する。比較例は、図39Bに示すように、1つのセル50を考えた場合、図52に示すアクチュエータ基板308上の各アクチュエータ306上にそれぞれ形成された例えば6つの画素構成体310の接触面積にて開口率が決定される。この場合、各画素構成体310の面積が、それぞれ対応するアクチュエータ306の面積に制約されることと、隣接する画素構成体310間には隙間が存在することから、画素構成体310の端面が発光領域90(図39Bにおいて斜線で示す領域)、画素構成体310間の隙間が非発光領域92となる。つまり、発光領域90は、非発光領域92にて囲まれた6つのドット状の領域にて規定されることになる。
一方、実施例は、図39Aに示すように、1つのセル50を考えた場合、図35に示す連結板40上に形成された1つの画素構成体52の接触面積にて開口率が決定される。この場合、画素構成体52の端面が発光領域90、それ以外の部分が非発光領域92となる。つまり、発光領域90は、アクチュエータ基板32のアクチュエータ34や変位伝達部76の面積に関わりなく、自由に設定することができ、比較例で非発光領域92であった領域も発光領域90として含めることが可能となる。もちろん、発光領域90をセル50に近接する範囲まで広げることも可能である。
従って、実施例では、開口率を、比較例の開口率と比して大幅に増加させることができる。
次に、1画素についてのアクチュエータの変位量の違いについて見てみる。比較例は、図40に示すように、アクチュエータ306に印加する電圧を制御して、画素構成体310の変位量を変化させることで、画素構成体310を光導波板304に接触させた状態(発光状態)と、光導波板304から離隔した状態(消光状態)とを得るようにしている。
比較例では、アクチュエータ306上に直接形成された画素構成体310を光導波板304に接触、離隔させるようにしているため、アクチュエータ306の振動部314の形状が画素構成体310の上面にある程度反映される。そのため、画素構成体310を光導波板304から離隔させたとき、画素構成体310の上面は、光導波板304に対して凹状とされた形状、すなわち、凹部316となる。従って、アクチュエータ306に電圧を印加して画素構成体310を光導波板304から離隔する方向に変位させても、その変位量が不十分であれば、画素構成体310の上端が光導波板304に接触した状態のままとなり、完全な消光状態を得ることができない。
つまり、画素構成体310を光導波板304から離隔させる方向に変位させたとき、画素構成体310における端面の中央部分は、アクチュエータ306の最大変位量が得られる部位に対応しているため、大きく変位するが、画素構成体310の周縁部分は、アクチュエータ306のうち、変位量が少ない部位に対応しているため、小さく変位する。例えば、画素構成体310の中央部分においてある変位量を得るための電圧をV1、画素構成体310の周縁部分において同じ変位量を得るための電圧をV2としたとき、V2>V1となる。上述の部位による変位量の差は、画素の開口率を向上させる目的で画素構成体310の端面面積を広くした場合に顕著となる。
そして、画素構成体310を光導波板304から完全に離隔させるために、光導波板304と画素構成体310の上端との間隔を距離d以上にしなければならないのであれば、画素構成体310の周縁部分の変位量を距離d以上にする必要がある。つまり、アクチュエータ306に印加する電圧は、アクチュエータ306のうち、画素構成体310の周縁部分に対応する部位の変位を考慮して設定しなければならない。
また、画素構成体310の上端と光導波板304との間隔がd以上となったとき、画素構成体310の端面の中央部分の変位量は前記距離dよりも大きい距離Dとなる。このようなことから、次に、画素構成体310を光導波板304に接触させるとき、前記凹部316の底が接触するまでに時間がかかり、応答性の向上に限界が生じるおそれがある。
一方、実施例は、図41に示すように、アクチュエータ34に印加する電圧を制御して、その変位を変位伝達部76及び連結板40に伝達させて画素構成体52の変位量を変化させることで、画素構成体52を光導波板38に接触させた状態(発光状態)と、光導波板38から離隔した状態(消光状態)とを得るようにしている。
この場合、連結板40に形成された画素構成体52はアクチュエータ34における振動部66の形状に関わらず、その端面は平坦となる。しかも、画素の開口率は、アクチュエータ34上に形成された変位伝達部76の横断面積に関係なく、連結板40上に形成された画素構成体52にて決定されるため、変位伝達部76を細く設定することができる。このことから、変位伝達部76を、アクチュエータ34のうち、最大変位量が得られる中央部分に設置することができ、変位伝達部76の変位量をほぼアクチュエータ34の最大変位量に近い量に設定することができる。
そのため、画素構成体52を光導波板38から完全に離隔させるために、光導波板38と画素構成体52の上端との間隔を距離d以上にする場合、アクチュエータ34に印加する電圧は、アクチュエータ34のうち、最大変位量が得られる部位の変位を考慮して設定すればよく、比較例と比して前記電圧を大幅に低減させることができる。この結果、消費電力の低減、駆動用ドライバ回路の低電圧化・低コスト化、信頼性の向上などの効果を得ることができる。
次に、欠陥アクチュエータがあった場合の明るさの変化について図39A〜図42を参照しながら説明する。
比較例は、図39Bに示すように、1つのセル50を考えたとき、アクチュエータ基板308(図32参照)上の各アクチュエータ306上にそれぞれ形成された例えば6つの画素構成体210によって1つの画素が形成される。
実施例は、図39Aに示すように、同じく1つのセル50を考えたとき、連結板40(図41参照)上に形成された1つの画素構成体52によって1つの画素が形成される。連結板40の下には、6つのアクチュエータ34が存在する。
図39A及び図39Bに表示された番号1、2、3・・・6は、欠陥アクチュエータの増加の順番を連番で示している。
図42は、アクチュエータ206又は34の欠陥率(欠陥アクチュエータの数/1画素を構成するアクチュエータの数)に対する画素のオン/オフ動作時の輝度変化を示す。
そして、比較例において、図39に示す順番で欠陥アクチュエータが増加した場合、比較例の輝度変化は、図42の実線Aに示すように、欠陥アクチュエータの増加に伴って比例的に低下する。
一方、実施例の輝度変化は、図42の破線Bに示すように、アクチュエータ34の欠陥率が2/6以下の場合は、ほとんど輝度変化の低下は起こらず、欠陥率3/6の場合は、5%程度の輝度変化の低下であった。つまり、実施例においては、比較例に比べ、欠陥アクチュエータが存在しても、輝度変化を大きく保つことが可能である。
なお、実施例と同様の構成において、4つのアクチュエータ34で1つの画素を形成する場合は、欠陥率1/4以下の場合であれば輝度変化の低下は起こらない。3つのアクチュエータ34で1つの画素を形成する場合は、欠陥率1/3以下の場合であれば輝度変化の低下は起こらない。
また、比較例と同様の構成において、2つのアクチュエータで1つの画素を形成する場合は、欠陥率1/2での輝度変化の低下はほぼ50%であったが、実施例と同様の構成において、2つのアクチュエータで1つの画素を形成する場合は、欠陥率1/2での輝度変化の低下は、25%以内に抑えられる。
このように、一部のアクチュエータ34に欠陥があっても、不良となる率が減り、良品率を高めることができ、歩留まりの向上、製品コストの低廉化を有効に図ることができる。
また、正常なアクチュエータ34の変位によって、連結板40を下方へ変位させようとする力が働いたとき、欠陥アクチュエータ34の部分では、振動部66が下方へ撓む。このため、欠陥アクチュエータ34があっても、連結板40は、正常なアクチュエータ34の変位に従って変位し(欠陥アクチュエータ34に対応した部分も変位し)、画素構成体52は正常に動作することになる。
上述した第1の具体例に係る表示装置30Aにおいては、光導波板38とアクチュエータ基板32との間に1つの連結板40を配置し、アクチュエータ基板32と連結板40との間、並びに光導波板38と連結板40との間に、それぞれセル50に合わせて複数のスペーサ44を形成するようにしたため、連結板40のうち、スペーサ42及び44に近接する部分では、連結板40の張力により(剛性が高くなる)、連結板40自体の変位が低下するおそれがある。しかし、図43に示すように、連結板40におけるセル50間の継手部190のうち、スペーサ42に近接する部分にスリット110を形成するようにすれば、前記部分(継手部190の一部)での剛性を低下させることができるため、上述のような変位低下を回避することができ、しかも、熱応力や機械的応力を緩和する効果もある。
連結板40にスリット110を形成することで、連結板40のうち、スリット110によって細められた部分、すなわち、連結板40のうち、セル50の境界部分(固定領域でもある)と画素構成体52に対応した部分(可動領域でもある)とをつなぐ部分(以下、単にアーム部111と記す)が形成されることになる。
連結板40のうち、画素構成体52に対応した部分の変位を確保しながら、製造プロセスでの連結板40の取り扱いを容易にするために、アーム部111に適度な剛性を持たせることは言うまでもなく、その形状や厚み、構造を最適にすることが好ましい。より好ましくは、前記可動領域は、欠陥アクチュエータの変位を補償するために曲げ剛性を高くし、アーム部111は曲げ剛性を低くすることである。
連結板40にスリット110を形成しつつ、アーム部111の厚みを周囲より薄くする方法としては、ハーフエッチング法やサンドブラスト法などが好ましく用いられる。また、前記固定領域をクランプし、その状態で前記可動領域を厚み方向に押し下げることで、アーム部111を延伸し、次に、可動領域を逆方向に押し上げることによって、アーム部111の側面形状を例えばアーチ状に形成することもできる。これにより、アーム部111の張力による変位低下をさらに抑制することができる。アーム部111の平面形状は、図43に示した直線状以外にも、L字状や渦巻状、蛇腹状等にしてアーム部111の長さを大きくとるようにしてもよい。
次に、第2の具体例に係る表示装置30Bについて図44を参照しながら説明する。なお、図35と対応するものについては同じ符号を付してその重複説明を省略する。
この第2の具体例に係る表示装置30Bは、図44に示すように、上述した第1の具体例に係る表示装置30Aとほぼ同様の構成を有するが、連結板40がセル50に合わせて分離されている点で異なる。すなわち、光導波板38とアクチュエータ基板32との間に複数の連結板40が平面的に配されている。
その関係で、光導波板38とアクチュエータ基板32との間には、複数のスペーサ112が形成され、これらスペーサ112は、隣接する連結板40間の隙間を通して、光導波板38とアクチュエータ基板32との間に介在されている。
この第2の具体例に係る表示装置30Bにおいては、連結板40がそれぞれセル50に合わせて分離されていることから、各連結板40は、変位駆動の際において、隣接する連結板40の張力やスペーサ112等に干渉されることがない。
欠陥アクチュエータがあった場合、連結板40は、前記欠陥アクチュエータによる変位低下の影響を幾分受けることになるが、1つの画素構成体52に対して例えば6つのアクチュエータ34が割り当てられている場合、アクチュエータ34の欠陥率に対する輝度変化は、欠陥率1/6で0%、欠陥率2/6で3%程度、欠陥率3/6で5%程度であり、第1の実施の形態に係る表示装置30Aとほぼ同等の性能を有する。
次に、第4の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Dを表示以外の他の用途に応用した例について図45〜図48Cを参照しながら説明する。
先ず、図45に示す具体例に係る可変コンデンサ120は、アクチュエータ基板32上に複数のアクチュエータ34が平面的に配列された駆動部36と、該駆動部36に対向して配された1つの金属板による固定電極122と、アクチュエータ基板32と固定電極122との間に配され、駆動部36における複数のアクチュエータ34の駆動力が変位伝達部76を介して伝達される1つの金属板による可動電極124とを有する。固定電極122は、該固定電極122とアクチュエータ基板32間に介在するスペーサ112によってアクチュエータ基板32に固定されている。
この可変コンデンサ120においては、複数のアクチュエータ34の駆動によって可動電極124が固定電極122に対して接近又は離間することになる。すなわち、固定電極122と可動電極124間の距離daが複数のアクチュエータ34によって精密に変化し、両電極122及び124間の静電容量を任意に変化させることができる。
また、固定電極122と可動電極124の対向面積を大きくすることで、静電容量のダイナミックレンジを広くすることができる。1つの可動電極124について複数のアクチュエータ34が割り当てられることから、固定電極122と可動電極124間の距離を広い面積にわたって精密に制御することができる。
また、動作しない欠陥アクチュエータがあったとしても、この可変コンデンサ120の特性、すなわち、該可変コンデンサ120に供給される制御信号のレベルに対する静電容量値の変化特性はほとんど変動しない。従って、特性の安定した可変コンデンサ120の歩留まりの向上を図ることができる。
上述の例では、固定電極122と可動電極124をそれぞれ金属板で構成した場合を示したが、その他、図46に示す変形例に係る可変コンデンサ120aのように、固定電極122を、ガラスやセラミックス、樹脂フィルム等、任意の材料を用いた板部材125上に導電膜126を形成することによって構成し、可動電極124を、ガラスやセラミックス、樹脂フィルム等、任意の材料を用いた板部材127上に導電膜128を形成することによって構成するようにしてもよい。
次に、図47に示す具体例に係る干渉型光変調器130は、アクチュエータ基板32上に複数のアクチュエータ34が平面的に配列された駆動部36と、該駆動部36に対向して配された1つの透明板132と、アクチュエータ基板32と透明板132との間に配され、かつ、駆動部36における複数のアクチュエータ34の駆動力が変位伝達部76を介して伝達される1つのミラー部材134とを有する。透明板132は、該透明板132とアクチュエータ基板32との間に介在するスペーサ112によってアクチュエータ基板32に固定されている。
この干渉型光変調器130においては、入力光Liを透明板132を通してミラー部材134に入射させることで、透明板132の裏面(ミラー部材134と対向する面)と空間との境界で反射した光(第1の反射光L1)と、ミラー部材134の表面で反射した光(第2の反射光L2)が出力光Loとして出射される。このとき、第1の反射光L1と第2の反射光L2との干渉により、出力光Loのスペクトル分布は、透明板132とミラー部材134との距離dbによって決定される。従って、複数のアクチュエータ34の駆動によってミラー部材134を透明板132に対して接近又は離間させることで、透明板132とミラー部材134間の距離dbを変化させることにより、出力光Loのスペクトル分布を任意に制御することができる。この干渉型光変調器130は、カラーディスプレイ装置、カラーフィルタ、光スイッチ等として利用することができる。特に、干渉部(ミラー部材134)に連結板を用いることから、光の入力面に平坦性を確保することができることと、広い面積にわたって干渉部を設けることができる。しかも、一部のアクチュエータに欠陥があっても干渉部の変位動作への影響はほとんどない。上述の例では、干渉部の上面を平坦にした例を示したが、その他、必要に応じて干渉部の上部に傾斜をつけたり、凹凸をつけたりしてもよい。
ミラー部材134は、図48Aに示すように、例えば金属板135のうち、少なくとも透明板132(図47参照)と対向する面135aを鏡面化させることによって構成するようにしてもよいし、図48Bに示すように、任意の板部材136のうち、透明板132と対向する面の一部に直接光反射膜137を形成して構成するようにしてもよい。あるいは、図48Cに示すように、任意の板部材136のうち、透明板132と対向する面の一部に下地層138を介して光反射膜137を形成して構成するようにしてもよい。なお、図48B及び図48Cの例において、板部材136の表面を光吸収面とすれば不要な散乱光が発生しないため、好ましい。
上述した第1〜第4の実施の形態に係るアクチュエータ装置10A〜10Dでは、基板12を用いた例を示したが、その他、基板12を用いない構成も好ましく採用することができる。
以下、基板12を用いない第5の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Eについて図49を参照しながら説明する。
この第5の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Eは、図49に示すように、基板12の代わりに振動板層152と圧電機能層154が積層された積層体156を用いる点で特徴を有する。
圧電機能層154は、振動板層152上に形成された複数の下部電極74aと、該下部電極74aを含む振動板層152の全面に形成された圧電/電歪層72と、該圧電/電歪層72上に形成された複数の上部電極74bとを有する。振動板層152は、圧電/電歪層72での変位量を増幅させる機能を有する。つまり、この積層体156は、複数のアクチュエータ14が配列された構成を有し、積層体156自体で駆動部16が構成されることになる。なお、振動板層152は、圧電機能層154の圧電/電歪層72と同じ材料で構成してもよいし、あるいは異なった成分系の材料で構成してもよい。また、積層体156は、セラミックグリーンシートの積層にて作製することができ、上部電極74b及び下部電極74aは、スクリーン印刷等によって容易に形成することができる。
そして、この第5の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Eは、前記駆動部16と、該駆動部16における複数のアクチュエータ14の駆動力が伝達される1つの第1の板部材18と、該第1の板部材18に対向して配された1つの第2の板部材20とを有する。
この場合も、第1の板部材18と第2の板部材20との間には、複数のスペーサ22が形成され、これらスペーサ22によって例えばm個のセル15が形成されている。第1の板部材18と積層体156との間にも、複数のスペーサ24が形成され、これらスペーサ24によってm個のセル15が形成されている。そして、各セル15毎にn個のアクチュエータ14が割り当てられている。各アクチュエータ14上には、各アクチュエータ14の駆動力を第1の板部材18に伝えるための変位伝達部76が形成されている。
一方、積層体156における上部電極74bは、例えば各セル15単位に分離された電極パターンあるいは行単位に分離された電極パターンを有し、下部電極74aは、アクチュエータ14単位に分離された電極パターンを有する。これらの電極74a及び74dは、上下反対でもよい。
また、積層体156は、固定板158上に複数のスペーサ160及び162を介して配置された形態となっている。固定板158上のスペーサ160及び162は、例えば第1の板部材18と積層体156との間に形成されたスペーサ24と位置的に対応させて形成された複数の第1のスペーサ160と、各セル15内において、アクチュエータ14を除く部分に形成された複数の第2のスペーサ162とを有する。
この第5の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Eにおいては、固定板158上に形成された第1及び第2のスペーサ160及び162とによって振動板層152の一部(位置的にアクチュエータ14と対応しない部分)が固定されることから、固定板158、第1及び第2のスペーサ160及び162並びに振動板層152にて囲まれた空間が、疑似的に図35等で示すアクチュエータ基板32の空所64と同等の機能を有することになり、容易にアクチュエータ14の変位方向を確定させることができる。
また、積層体156を固定板158上に第1及び第2のスペーサ160及び162で支持するようにしたので、アクチュエータ14間並びにセル15間のクロストーク(変位の影響)を低減させることができる。しかも、スイッチング(第1の板部材18の変位動作)の応答性も上がるという利点がある。また、固定板158を設けることで、アクチュエータ装置10E自体の機械強度が上がり、運搬時や製造時等のハンドリングが容易になる。
なお、複数の圧電機能層154を積層させることで、各アクチュエータ14の変位量、発生力を大きくすることができる。各スペーサ22、24、160及び162の設置位置を変更するだけで、任意の変位態様を得ることができる。上部電極74bや下部電極74aの電極パターンを任意に変更することで、所望の変位を得ることができる。
この第5の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Eを表示装置として適用する場合には、第2の板部材20を光導波板38とし、第2の板部材20とスペーサ22との間に光遮蔽層70(二点鎖線で示す)を形成し、第1の板部材18上に画素構成体52(二点鎖線で示す)を形成することによって容易に実現させることができる。
なお、第5の実施の形態に係るアクチュエータ装置10Eの変形例としては、例えば図50の第1の変形例に係るアクチュエータ装置10Eaのように、第2の板部材20がなくてもよいし、図51の第2の変形例に係るアクチュエータ装置10Ebのように、第2の板部材20及び固定板158がなくてもよい。固定板158がない場合においても、下部電極74aは、アクチュエータ14単位に分離された電極パターンを有しているので、下部電極74aのない部分は屈曲変位をせず、且つ、スペーサ24の存在する部分とつながっている。従って、下部電極74aのない部分がスペーサ24のある部分と同じ高さで固定されたまま、各アクチュエータ14が屈曲変位することになる。
上述した第5の実施の形態に係るアクチュエータ装置(各種変形例を含む)のように、圧電機能層を有する構成は、基板12を有する構成と比して、下部電極や上部電極の電極パターンで屈曲変位の大きさや変位させる形態を任意に変えることができるため、設計変更に柔軟に、且つ、容易に対応できる利点がある。また、欠陥アクチュエータの発生も少なくなる利点があり、これは、圧電機能層がセラミックグリーンシートで一様に形成されていることによる効果である。
なお、本発明に係るアクチュエータ装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。