JP4780910B2 - 溶銑の脱りん方法 - Google Patents
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Description
一般に、前記トピードカーによる溶銑脱りん処理において重要なことは、脱りん速度をいかにして向上させるかということである。つまり、フリーボードが小さい従来のトピードカーによる処理において、内部の溶銑の吹き出しを回避しながら、同時に脱りん剤の反応効率を高めるためには、脱りん剤の供給速度を速くして、脱りん速度を上げることが必要である。ところが、従来の複数ランスを用いた吹き込み技術の場合、このような観点から脱りん反応を考えたものではない。また、特許文献7では、脱Si反応により生成した低塩基度スラグを系外に排出し乍ら操業する方法を開示しているが、脱りん剤の吹き込み速度を低下させることなく、予備処理で、スラグのみを合理的に排出する方法までは開示していない。
0.5H<HL<0.9H (1)
50≦Qp/Qg (2)
0.10L≦W≦0.50L (3)
HL:静止湯面からのランス浸漬深さ(m)
H:溶銑バス深さ(m)
Qp:灰分を含んだ焼結鉱、ダストまたは圧延スケールである酸化鉄粉の吹込み速度(kg/min)
Qg:搬送ガス流量(m3(標準状態)/min)
W:2本の浸漬ランス先端間距離(m)
L:トピードカー長手方向最大距離(m)
2[P]+5[O]+3(CaO)=3CaO・P2O5 (1)
ここで、[P]:溶銑中のりん、[O]:溶銑中酸素(酸素ガス,あるいは酸化鉄から)(P2O5)、(CaO):スラグ中のP2O5、スラグもしくはフラックス中CaO
この実験は、400tトピードカーを用い、図1に示す態様で、表1に示す条件(溶銑・脱りん剤)にて、とくに溶銑中に吹込むCaO粉を、処理初期に溶銑(Si)より生成するSiO2に対して重量比で2倍(スラグ塩基度2.0目標)になるまで吹込み、その後は焼結粉のみを吹込んだ。この実験においてはまず、適正な焼結粉の吹込み条件を見出すために、1本の浸漬ランスによる脱りん処理実験を行った。また、この実験水準を表2に示した。いずれの条件においてもCaOの供給速度は一定とした。
即ち、0.5H<HL<0.9Hという上記(1)式の関係が成立する。
即ち、50≦Qp/Qgという上記(2)式の関係が成立する。
ここで、この実験条件である焼結粉の供給速度=1.25 kg/min/tにおいて、粉体輸送が可能な条件としての固気比の上限は120 kg/min/m3(標準状態)程度であった。その固気比は焼結粉の供給速度や粉体輸送配管、圧力など種々の要因により上限値が変化する。しかし、焼結粉供給速度増加による固気比上限の増加は、溶銑中での焼結粉の凝集を促進して、反応界面積が減少するため、1.25 kg/min/t程度が妥当である。
なお、図5には、1本ランス(水準3)での実験結果も併せて示した。この図5に示すとおり、浸漬ランスを1本使用するものに比べ、浸漬ランスを2本(水準4)で吹き込むときの方が、ランス先端間距離の如何にかかわらず脱P酸素効率が明らかに良好である。しかも、それは、水準4(2本ランス)で行う限り、ランス先端間距離を≦0.7Lのどの範囲においても同様に効果が得られる。これは細長いトピードカーの形状の混合特性に起因するものと考えられる。
(1)表3は水準A(ランス浸漬深さ)を検証するための実施例である。表中、比較例のランス浸漬深さは、0.4H、0.9Hのもの、参考例のランス浸漬深さは0.5H、0.6Hものを用いた。この実施例の結果を表4に示す。参考法に適合するランス浸漬深さを0.5Hおよび0.6Hの場合において、処理後[%P]の低いものが得られた。
(2)表5は水準B(固気比)を検証するための実施例である。この実施例では、比較例として固気比30kg/m3(標準状態)のものを用い、参考例として50kg/m3(標準状態)、60kg/m3(標準状態)、100kg/m3(標準状態)のものを用いた。その結果を表6に示すが、参考法に適合する固気比>50kg/m3(標準状態)の場合において、処理後[%P]が低下することがわかった。
(3)表7に水準C(2本ランス)を検証するための実施例を示す。この実施例では、比較例1として、1本ランスで同一の焼結粉吹込み速度で吹込んだ場合、比較例2として2本ランスでランス間距離が0.05Lとした場合、比較例3として2本ランスでランス間距離が0.6Lとした場合とした。一方、本発明例として、2本ランスでランス間距離を0.1L、0.5Lとしたものを用いた。その結果を表8に示すが、2本ランスでランス間距離を0.1L〜0.5Lとした場合に、処理後[%P]が低下することがわかった。
(4)表9に水準D(傾転角度)を検証するための実施例を示す。この実施例では、比較例1は傾転なし、比較例2は傾転12°、一方、本発明法は傾転5°として実施した例である。その結果を表10に示すが、本発明法では脱りん剤吹込み中の溶銑流出がなく、傾転流滓により低塩基度スラグが排出されることによって、処理後のスラグ塩基度が増加した結果、処理後[%P]が低下した。とくに、2本ランスで吹き込み条件を適正にすることにより、焼結粉の供給速度を溶銑吹き出しを生じることなく、かつ高い反応効率の条件で増加でき、処理速度が大きくなった。さらにトピード傾転によるスラグ排出によりスラグの塩基性が高まり、反応を促進することが可能になることもわかった。
2 トピードカー
3 溶銑
4 スラグ
5 脱りん剤
6 キャリアガス
Claims (2)
- 混銑車内に充填された溶銑中に、浸漬ランスを介して酸素ガスや、灰分を含んだ焼結鉱、ダストまたは圧延スケールである酸化鉄粉、CaO系フラックスなどからなる脱りん剤をキャリアガスとともに吹き込むことにより、脱りんする溶銑の脱りん方法において、処理初期にCaO粉を吹き込み、その後は、灰分を含んだ焼結鉱、ダストまたは圧延スケールである酸化鉄粉を吹き込むとともに、混銑車内の長手方向を指向して挿入される2本の上記浸漬ランス先端部を、相反する向きにして溶銑中に浸漬し、かつこれらのランスからは下記(1)〜(3)式を満たすような条件で上記脱りん剤の吹込みを行うことを特徴とする溶銑の脱りん方法。
0.5H<HL<0.9H (1)
50≦Qp/Qg (2)
0.10L≦W≦0.50L (3)
HL:静止湯面からのランス浸漬深さ(m)
H:溶銑バス深さ(m)
Qp:灰分を含んだ焼結鉱、ダストまたは圧延スケールである酸化鉄粉の吹込み速度(kg/min)
Qg:搬送ガス流量(m3(標準状態)/min)
W:2本の浸漬ランス先端間距離(m)
L:トピードカー長手方向最大距離(m) - 前記浸漬ランスによる灰分を含んだ焼結鉱、ダストまたは圧延スケールである酸化鉄粉の吹き込み時に、混銑車を回転軸を中心として3〜10°傾けることにより、脱Si処理時に発生した低塩基度スラグを流出させることを特徴とする請求項1に記載の溶銑の脱りん方法。
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