JP4419594B2 - 溶銑の精錬方法 - Google Patents

溶銑の精錬方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4419594B2
JP4419594B2 JP2004036428A JP2004036428A JP4419594B2 JP 4419594 B2 JP4419594 B2 JP 4419594B2 JP 2004036428 A JP2004036428 A JP 2004036428A JP 2004036428 A JP2004036428 A JP 2004036428A JP 4419594 B2 JP4419594 B2 JP 4419594B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hot metal
slag
concentration
mass
refining
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Lifetime
Application number
JP2004036428A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005226127A (ja
Inventor
章敏 松井
英寿 松野
良輝 菊地
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP2004036428A priority Critical patent/JP4419594B2/ja
Publication of JP2005226127A publication Critical patent/JP2005226127A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4419594B2 publication Critical patent/JP4419594B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Refinement Of Pig-Iron, Manufacture Of Cast Iron, And Steel Manufacture Other Than In Revolving Furnaces (AREA)

Description

本発明は、溶銑の浴面に酸素ガスを吹き付けて行う溶銑の精錬方法に関し、詳しくは、精錬中の溶銑の上に浮遊するスラグ中の鉄酸化物濃度のトータル鉄濃度換算を所定の範囲に制御することが可能な精錬方法に関するものである。
高炉から出銑される溶銑は、珪素、硫黄、燐、バナジウムなどの不純物を含んでおり、近年、これらの不純物を或る程度除去した後、この溶銑を転炉に装入して転炉で脱炭精錬を実施する製鋼方法が発展してきた。この場合、溶銑中の珪素、燐及びバナジウムの除去方法としては、酸素ガス及び固体の酸化鉄などの酸素源を溶銑に供給し、これらの不純物を酸化させて除去する方法が行われている。
このような、溶銑中の不純物を酸化させて除去する処理工程において、溶銑中の不純物を効率的に酸化させるためには、スラグ中の酸素ポテンシャルを高めること、即ち、スラグ中のFeOなどの鉄酸化物濃度を高めることが非常に重要となる。しかしながら、溶銑中には多量の炭素が含有されており、スラグ中の鉄酸化物は下記の(1)式によって還元されてしまうために、溶銑の上に浮遊するスラグ中の酸化鉄濃度を高めることは極めて困難である。
Figure 0004419594
例えば、特許文献1には、溶銑の脱燐処理において、酸素ガスを上吹きし、スラグ組成を、鉄酸化物濃度が、トータル鉄(以下「T.Fe」と記す)濃度換算で30mass%以上、Al23 濃度が2〜16mass%、SiO2 濃度が12mass%以下となるように制御することにより、弗化物や塩化物を用いずに脱燐する方法が提案されている。尚、T.Feとはスラグ中の全ての鉄酸化物(FeOやFe23 など)の鉄分の合計値である。
しかしながら、特許文献1では、スラグ中のT.Fe濃度を30mass%以上に高める方法については特に明示しておらず、実施例において、鉄鉱石、ミルスケールなどの酸化鉄含有物をFe23 に換算して55〜85mass%になるように、フラックス中に配合するのがよいという記述があるのみである。
このような固体の酸素源を大量に用いたスラグの酸素ポテンシャルの制御方法は、溶銑温度が低下するため、次工程の転炉での脱炭精錬における溶銑配合率の低下や熱余裕の不足などの問題を誘発する。更に、フラックス中に固体酸素源を配合しても、それらが脱珪や脱燐などの目的とする反応に有効に活用される保証はなく、溶銑中の炭素と反応する可能性がある。溶銑の予備処理の段階で溶銑中の炭素濃度を低下させると、次工程の転炉での脱炭精錬の際にMn鉱石やスクラップなどを溶解するための熱余裕が不足してしまう。また、スラグ中のT.Fe濃度を必要以上に高めると、スラグの流動性が高まり、結果としてスラグのフォーミングなどの操業阻害を引き起こす恐れもある。
このように、スラグ中のT.Fe濃度の制御方法については、有効な方法が提案されておらず、様々な問題を抱えていた。
特開平11−269522号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、溶銑の浴面に酸素ガスを吹き付けて行う溶銑の精錬において、鉄鉱石などの固体酸素源を使用しなくても、スラグ中のT.Fe濃度を、脱燐反応、脱珪反応、脱バナジウム反応などに最適な範囲に、迅速に調整することができる精錬方法を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく、上吹きランスを備えた精錬設備を用い、上吹きランスから酸素ガスを溶銑湯面に吹き付けて脱燐処理或いは脱珪処理を行う際に、酸素ガス供給量、攪拌用ガス流量、スラグ質量などを種々の条件に変更し、スラグ中のT.Fe濃度に及ぼす影響を調査する試験を実施した。以下に、試験結果を説明する。
酸素ガスを溶銑に吹き付けることにより、下記の(2)式によって酸化鉄が生成する。つまり、酸素ガスの供給速度を増加することで、(2)式の反応はより一層進行しやすくなり、スラグ中の酸化鉄濃度、即ちT.Fe濃度が増加し、酸素ポテンシャルが高くなる。
Figure 0004419594
そこで、スラグ中のT.Fe濃度に及ぼす酸素ガスの供給速度の影響について検討した。しかし、撹拌用ガス流量が多すぎる場合には、溶銑とスラグとが攪拌され、前述した(1)式によって溶銑中の炭素がスラグ中の酸化鉄を還元してしまい、スラグ中のT.Fe濃度は上昇しない恐れがある。つまり、スラグ中のT.Fe濃度を効率良く上昇させるには、(2)式の酸化鉄生成反応を効率的に進行させつつ、(1)式の還元反応が進行しないように、上吹き酸素ガスの供給速度(「送酸速度」ともいう)及び攪拌用ガスの流量を適切な範囲に調整する必要がある。
尚、この試験において、上吹き送酸中にスラグを採取し、採取したスラグの分析値からスラグ中のT.Fe濃度の経時変化を調査したところ、スラグ中のT.Fe濃度の挙動は、送酸開始後2〜4分程度経過した時点までに上昇し、その後の送酸吹錬中はほぼ一定になることが分かった。つまり、送酸開始後2〜4分経過するまでの上吹き送酸速度、攪拌用ガス流量などの設定が、スラグ中のT.Fe濃度の制御において非常に重要であることが明らかとなった。
また、更なる試験を繰り返すうちに、上吹き送酸の溶銑への吹き付け方も重要であることが分かった。つまり、上吹き酸素ガスを溶銑浴面に対して強く吹き付ける、所謂ハードブローと呼ばれる送酸方法を行った場合には、前述した(2)式の酸化反応が余り進行せず、下記の(3)式による、溶銑中の炭素の酸化が優先的に発生することが明らかとなった。
Figure 0004419594
(3)式によって溶銑中の炭素が酸化されると、後工程の転炉での脱炭精錬において熱余裕不足を生じ、製鋼コストの増加を招く。従って、(3)式を進行させずに(2)式を進行させるような上吹き送酸方法が必要である。これは、種々の試験から、溶銑の浴深さ(L0 :mm)に対する、酸素ガス吹錬時の溶銑の浴面に発生する窪み部の深さ(L:mm)の比(L/L0 )を適切な範囲にすることが有効であることが分かった。この窪み部の深さL(mm)は、音波などの反射時間から実測することも可能であるが、下記の(4)式及び(5)式を用いて算出することもできる。但し、(4)式及び(5)式において、hは上吹きランス先端と溶銑浴面との距離(mm)、θは上吹きランスのノズル角度(deg)、nは上吹きランスのノズル孔数、dは上吹きランスのノズル径(mm)、Wは処理する溶銑質量(t)、Fは溶銑トン当たりの上吹きランスからの送酸速度(Nm3 /min・t)である。
Figure 0004419594
Figure 0004419594
また、更なる試験によって送酸開始後2〜4分経過した時点におけるスラグ中のT.Fe濃度を制御するに当たり、送酸開始後2〜4分経過した時点で存在するスラグの質量を制御することが重要であることも分かった。例えば、精錬用フラックスを送酸開始後2〜4分経過するまでの間に大量に添加すると、諸条件を適正化して酸化鉄の生成量を制御しても、結果として酸化鉄濃度が薄まり、スラグ中のT.Fe濃度の制御が困難となる。一方、送酸開始後2〜4分経過した時点におけるスラグの質量が極端に少ないと、逆にスラグ中のT.Fe濃度が高くなるため、これも制御困難である。また、スラグの質量が極端に少ないと、各種精錬処理に影響を及ぼす可能性もある。このように、スラグ中のT.Fe濃度を制御するためには、スラグの質量についても適正な範囲が存在することが明らかとなった。ここでのスラグの質量とは、精錬用フラックスやスクラップなどの副原料及び溶銑成分から計算される質量である。
以上の結果から、本発明者等は、送酸開始後2〜4分経過した時点におけるスラグ中のT.Fe濃度を10〜40mass%に制御するための必要条件を見出すことに成功した。その条件とは、上吹き送酸速度が0.5〜3.0Nm3 /min・t、撹拌用ガス流量が0.01〜0.30Nm3 /min・t、窪み部の深さ(L)と溶銑の浴深さ(L0 )との比(L/L0 )が0.03〜0.30、且つ、送酸開始後2〜4分経過した時点におけるスラグ質量が5〜50kg/tであることである。この条件を全て満たすことにより、スラグ中のT.Fe濃度を10〜40mass%の範囲に制御できることが明らかとなった。
本発明は、上記試験結果に基づいてなされたものであり、発明に係る溶銑の精錬方法は、精錬用容器内に収容された溶銑の浴面に向けて酸素ガスを上吹きして溶銑を精錬する際に、上吹き酸素ガスの供給速度を0.5〜3.0Nm 3 /min・t、溶銑の攪拌用ガスの流量を0.01〜0.30Nm 3 /min・t、酸素ガスの上吹き時に溶銑浴面に形成される窪み部の深さ(L)と溶銑の浴深さ(L0 )との比(L/L0を0.03〜0.30とし、且つ、酸素ガス供給開始後2〜4分経過した時点における精錬用容器内のスラグの質量を5〜50kg/tとして酸素ガスの上吹き開始後2〜4分経過した時点における前記スラグのT.Fe濃度を10〜40mass%の範囲に制御し、精錬終了までスラグのT.Fe濃度を10〜40mass%の範囲に維持することを特徴とするものである。
本発明によれば、溶銑の浴面に酸素ガスを吹き付けて行う溶銑の精錬において、鉄鉱石などの固体酸素源を使用しなくても、スラグ中のT.Fe濃度を10〜40mass%の範囲に迅速に制御することができるので、脱珪処理や脱燐処理など溶銑中の不純物元素を酸化して除去する精錬を効率的に行うことが可能となる。また、スラグ中のT.Fe濃度が過剰に高くならないので、スラグのフォーミングなどの操業阻害を引き起こす恐れもなく、且つ、溶銑中の炭素を過剰に低下させることもない、更に、固体酸素源を使用しなくてもよいので、固体酸素源を使用した際の溶銑の温度降下を未然に防ぐことができ、次工程の転炉での脱炭精錬における熱余裕を十分に確保することが可能となるなど、工業上有益な効果がもたらされる。
以下、本発明を溶銑鍋における溶銑の脱燐処理に適用した場合を例とし、添付図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明に係る溶銑の精錬方法を実施する際に用いた脱燐処理設備の1例を示す概略断面図、図2は、図1に示す上吹きランスの概略拡大断面図である。
図1において、高炉(図示せず)から出銑された溶銑2を収容した溶銑鍋5が、台車6に搭載されて脱燐処理設備1に搬入されている。脱燐処理設備1には、上吹きランス7とインジェクションランス8とが設置されており、上吹きランス7及びインジェクションランス8は、溶銑鍋5内を上下移動可能となっている。上吹きランス7からは脱燐剤としての酸素ガスを溶銑2に吹き付けることができる。用いる酸素ガスとしては工業用純酸素であり、窒素ガスなどの不純物を体積%で数%程度含んでいてもよい。
インジェクションランス8は貯蔵タンク9及び貯蔵タンク10と接続されており、貯蔵タンク9に収容された鉄鉱石など酸化鉄からなる固体酸素源3、並びに、貯蔵タンク10に収容された脱燐用フラックスとしての生石灰4を、窒素やArガスなどを搬送用ガスとして溶銑2中に吹き込み添加することができる。固体酸素源3は酸素ガスと同様に脱燐剤として機能するものである。但し、固体酸素源3を添加することにより、溶銑2の温度は低下する。生石灰4は脱燐用フラックスであり、脱燐反応により生成された燐酸化物と反応して燐酸化物をスラグ15中に固定すると共に、生成するスラグ15の塩基度を調整するためのものである。この場合に、生石灰4に他のフラックスを混合しても、また、生石灰4の替わりに他のフラックスを使用してもよい。尚、貯蔵タンク9内の固体酸素源3及び貯蔵タンク10内の生石灰4は、それぞれ独立に添加量及び添加時間を制御して吹き込むことができるようになっており、また、インジェクションランス8から窒素ガスやArガスなど不活性ガスのみを吹き込み、溶銑2を攪拌することもできる。
脱燐処理設備1には、更に、ホッパー11,12と、原料搬送装置13と、シュート14とからなる原料供給設備が設置されており、この原料供給設備を用いて、ホッパー11内の固体酸素源3及びホッパー12内の生石灰4を溶銑鍋5内に上置き添加することもできるようになっている。
上吹きランス7は、図2に示すように、円筒状のランス本体16と、このランス本体16の下端に溶接などにより接続されたランスノズル17とで構成されており、ランス本体16は、外管18、中管19、内管20の同心円状の3種の鋼管、即ち三重管で構成され、銅製のランスノズル17には、鉛直下向き方向または鉛直斜め下向き方向にノズル21が設置されている。
外管18と中管19との間隙及び中管19と内管20との間隙は、上吹きランス7を冷却するための冷却水の流路となっており、また、内管20の内部はノズル21への酸素ガスの供給流路となっている。上吹きランス7の上部から内管20内に供給された酸素ガスは、内管20を通り、ノズル21から溶銑2の浴面に向けて噴出される。図2では、ノズル21が複数個設置されているが、1つだけでもよい。また、図2では、ノズル21が、その断面が縮小する部分と拡大する部分の2つの円錐体で構成された、所謂ラバールノズルであるが、断面がストレート状のノズルであってもよい。図2に示すノズルの開き角度θをノズル角度と称し、ノズル21のノズル径(d)とは、横断面が最小の位置における口径のことである。
このような構成の脱燐処理設備1を用いた溶銑2の脱燐処理において、本発明に係る精錬方法を以下のようにして実施する。
インジェクションランス8から攪拌用ガスとして窒素ガスやArガスなどの不活性ガスを吹き込むと共に、脱燐用フラックスとして生石灰4を、シュート14を介して溶銑2に上置きするか或いはインジェクションランス8を介して溶銑2中に吹き込みながら、溶銑鍋5内に収容された溶銑2に向けて上吹きランス7から酸素ガスを連続的に吹き付け、溶銑2の脱燐処理を開始する。
その際に、上吹きランス7からの酸素ガスの送酸速度を0.5〜3.0Nm3 /min・tの範囲内に調整し、インジェクションランス8からの撹拌用ガス流量を0.01〜0.30Nm3 /min・tの範囲内に調整し、酸素ガスの上吹き時に溶銑浴面に形成される窪み部の深さ(L)と溶銑2の浴深さ(L0 )との比(L/L0 )を0.03〜0.30の範囲内に調整し、更に、送酸開始後2〜4分経過した時点において生成されるスラグ15の質量を5〜50kg/tの範囲内に調整する。
この場合、酸素ガスの送酸速度及び撹拌用ガスの流量の調整は、それぞれ流量計(図示せず)の開度を調整することによって行うことができる。比(L/L0 )の調整は、溶銑2の浴面を観察しながら、上吹きランス7の先端と溶銑浴面との距離(h)を調整することによって行うことができるが、前述した(4)式及び(5)式を用いて調整することが好ましい。
具体的には、使用している上吹きランス7のノズル孔数(n)、ノズル径(d)、送酸速度(F)及び処理する溶銑質量(W)を(4)式に代入してLh を定め、定めたLh 、上吹きランス7のノズル角度(θ)、及び、上吹きランス7の先端と溶銑浴面との距離(h)を(4)式に代入することで、窪み部の深さ(L)を算出することができる。一方、溶銑質量(W)と溶銑鍋5の内径とから溶銑2の浴深さ(L0 )を求めることができるので、これらから比(L/L0 )を算出することができる。(4)式及び(5)式において、オンラインで容易に変更することができる因子は距離(h)であるので、距離(h)を調整することによって比(L/L0 )を調整する。酸素ガスの送酸速度(F)を変更することによっても、比(L/L0 )は変化するので、送酸速度(F)が0.5〜3.0Nm3 /min・tの範囲内であるならば、送酸速度(F)の調整によって比(L/L0 )を調整してもよい。また、上吹きランス7を、ノズル21の形状の異なる上吹きランスに交換し、比(L/L0 )を調整してもよい。
スラグ15の質量の調整は、溶銑2中の酸化し易い成分(例えば珪素)からのスラグ発生量、及び、装入したスクラップなどの副原料からのスラグ発生量を考慮し、脱燐用フラックスである生石灰4の添加量を調整することで行うことができる。
尚、用いる溶銑2としてはどのような組成であっても処理することができ、また、溶銑の温度は1250〜1450℃の範囲であれば問題なくスラグ中のT.Feを制御することができる。更に、酸素源として、酸素ガスのみならず、固体酸素源3も、添加する固体酸素源3の酸素ガス体積換算量が全酸素源の20%以下の範囲であるならば、スラグ中のT.Fe濃度の制御に不都合を生ずることなく、使用することができる。但し、熱ロスを低減する観点からは、やはり固体酸素源3は使用せず、酸素ガスのみでT.Fe濃度を制御することが好ましい。
このようにして溶銑2を脱燐処理することにより、固体酸素源3を使用しなくても、スラグ中のT.Fe濃度を10〜40mass%の範囲に迅速に制御することができるので、脱燐処理を効率的に行うことが可能となる。また、スラグ中のT.Fe濃度が過剰に高くならないので、スラグ15のフォーミングなどの操業阻害を引き起こす恐れもなく、且つ、溶銑中の炭素を過剰に低下させることもない、更に、固体酸素源3を使用しなくてもよいので、固体酸素源3を使用した際の溶銑2の温度降下を未然に防ぐことができ、次工程の転炉での脱炭精錬における熱余裕を十分に確保することが可能となる。
尚、上記説明は溶銑の脱燐処理の例で説明したが、本発明は、溶銑の脱燐処理に限るものではなく、溶銑の脱珪処理のみならず、精錬用容器内に収容された溶銑に酸素ガスを上吹きして溶銑を酸化精錬する場合に全て適用することができる。また、脱燐処理も上記説明の溶銑鍋に限るものではなく、例えばインジェクションランス8に代わって底吹き羽口を有する溶銑鍋やトーピードカー、或いは上底吹きの転炉型の精錬用容器であっても、本発明を実施することができる。
図1に示す脱燐処理設備を用いて溶銑を脱燐処理する際に、本発明を適用した試験操業を実施した。試験操業は、高炉から出銑された約150トンの溶銑を収容した溶銑鍋を、図1に示す脱燐処理設備に搬送し、上吹きランスを介して酸素ガスを溶銑浴面に吹き付けると共に、インジェクションランスを介して窒素ガスを攪拌用ガスとして溶銑中に吹き込んで実施した。スラグの質量は、脱燐用フラックスとして添加する生石灰の投入量を調整して変更した。また、比(L/L0 )は、窪み部の深さ(L)を前述した(4)式及び(5)式から求めると共に溶銑鍋の内径と溶銑の密度とから溶銑の浴深さ(L0 )を求めて比(L/L0 )を算出し、比(L/L0 )を0.03〜0.30の範囲に調整した。酸素吹錬中、溶銑鍋内からスラグ試料を採取し、このスラグ試料を分析してスラグ中のT.Fe濃度を調査した。
スラグ中のT.Fe濃度の経時変化について調査した代表例の2つを図3に示す。図3に示すように、酸素吹錬下におけるスラグ中のT.Fe濃度の挙動は、送酸開始後2〜4分程度経過した時点までにおいて上昇し、その後はほぼ一定値を推移することが分かった。従って、スラグ中の酸素ポテンシャルを高めるためには、送酸開始後2〜4分経過するまでの期間の精錬条件が極めて重要であることが分かった。
表1に、本発明例における試験条件及び試験結果を示す。尚、表1中の時間とは、送酸開始からの経過時間を表しており、表1中のT.Feは、その時間において採取したスラグ試料の分析値である。また、スラグ質量は、その時間までに投入した脱燐用フラックスと、溶銑の成分値から計算によって求めたスラグ発生量とを加えて求めたものである。
Figure 0004419594
表1の本発明例が示すように、送酸速度が0.5〜3.0Nm3 /min・t、撹拌用ガス流量が0.01〜0.30Nm3 /min・t、比(L/L0 )が0.03〜0.30で、且つ、送酸開始後2〜4分経過した時点におけるスラグ質量が5〜50kg/tの範囲内であれば、送酸開始後2〜4分経過した時点におけるスラグ中のT.Fe濃度を10〜40mass%の範囲に制御できることが分かった。
一方、これら4つの条件が必須か否かを検証するために行った比較例1〜4の試験条件及び試験結果を前述した表1に併せて示す。
比較例1は、送酸速度、比(L/L0 )及びスラグ質量は適正範囲にあるが、攪拌用ガス流量が適正範囲外にある場合である。攪拌用ガス流量が0.003Nm3 /min・tと適正範囲よりも非常に少ない試験No.10においては、スラグ中のT.Fe濃度は非常に高い値となった。これは攪拌用ガス流量が少なく、攪拌力が弱いために溶銑とスラグとが攪拌されず、溶銑中の炭素による酸化鉄の還元が起こらなかったためと考えられる。前述したように、スラグ中のT.Fe濃度を必要以上に高めることは好ましくなく、試験No.10においては激しいスラグのフォーミングが確認された。一方、攪拌用ガス流量が0.40Nm3 /min・tと適正範囲よりも多い試験No.11においては、スラグ中のT.Fe濃度は非常に少なくなった。これは、攪拌が強いために、酸化鉄が溶銑中の炭素によって還元されたためと考えられる。
比較例2は、攪拌用ガス流量、比(L/L0 )及びスラグ質量は適正範囲にあるが、送酸速度が適正範囲外にある場合である。送酸速度が0.30Nm3 /min・tと適正範囲よりも少ない試験No.12においては、スラグ中のT.Fe濃度は低い値となった。これは、酸化鉄を生成するための送酸能力が不足したものと考えられる。一方、送酸速度が3.20Nm3 /min・tと適正範囲を超えた試験No.13においては、スラグ中のT.Fe濃度が必要以上に高くなってしまい、10〜40mass%の範囲に制御できなかった。
比較例3は、送酸速度、攪拌用ガス流量及びスラグ質量は適正範囲にあるが、比(L/L0 )が適正範囲外にある場合である。比(L/L0 )が適正範囲よりも小さい0.02である試験No.14においては、スラグ中のT.Fe濃度は低い値となった。これは、上吹きランス先端と溶銑浴面との距離(h)を大きくしてソフトブローを指向したものの、ランス先端と溶銑浴面との距離(h)を大きくしすぎたため、上吹き酸素ガスが溶銑浴面に十分に到達しなかったためと考えられる。また、比(L/L0 )が適正範囲よりも大きい0.35である試験No.15においても、スラグ中のT.Fe濃度は低い値となった。これは、ハードブローのために、鉄の酸化よりも溶銑中炭素の酸化が優先して起こったためと考えられる。
比較例4は、送酸速度、攪拌用ガス流量及び比(L/L0 )は適正範囲にあるが、スラグ質量が適正範囲外にある場合である。スラグ質量が適正範囲よりも少ない3kg/tである試験No.16においては、スラグ中のT.Fe濃度は高くなり、10〜40mass%の範囲に制御することは不可能であった。一方、スラグ質量が適正範囲よりも多い61kg/tである試験No.17においては、生成した酸化鉄が薄まり、結果としてスラグ中のT.Fe濃度は低くなってしまった。
以上、本発明例及び比較例1〜4の結果から、送酸開始後2〜4分経過した時点におけるスラグのT.Fe濃度を10〜40mass%の範囲に制御し、酸素吹錬の終了までその濃度を維持するためには、上吹き酸素ガスの送酸速度を0.5〜3.0Nm3 /min・t、溶銑の撹拌用ガス流量を0.01〜0.30Nm3 /min・t、比(L/L0 )を0.03〜0.30とし、且つ、送酸開始後2〜4分経過した時点におけるスラグ質量を5〜50kg/tの範囲内に調整する必要があることが分かった。また、この条件下で脱燐処理することにより、脱燐反応が効率的に行われることが確認できた。
本発明に係る溶銑の精錬方法を実施する際に用いた脱燐処理設備を示す概略断面図である。 図1に示す上吹きランスの概略拡大断面図である。 スラグ中のT.Fe濃度の経時変化について調査した結果を示す図である。
符号の説明
1 脱燐処理設備
2 溶銑
3 固体酸素源
4 生石灰
5 溶銑鍋
6 台車
7 上吹きランス
8 インジェクションランス
9 貯蔵タンク
10 貯蔵タンク
11 ホッパー
12 ホッパー
13 原料搬送装置
14 シュート
15 スラグ
16 ランス本体
17 ランスノズル
18 外管
19 中管
20 内管
21 ノズル

Claims (1)

  1. 精錬用容器内に収容された溶銑の浴面に向けて酸素ガスを上吹きして溶銑を精錬する際に、上吹き酸素ガスの供給速度を0.5〜3.0Nm 3 /min・t、溶銑の攪拌用ガスの流量を0.01〜0.30Nm 3 /min・t、酸素ガスの上吹き時に溶銑浴面に形成される窪み部の深さ(L)と溶銑の浴深さ(L0 )との比(L/L0を0.03〜0.30とし、且つ、酸素ガス供給開始後2〜4分経過した時点における精錬用容器内のスラグの質量を5〜50kg/tとして酸素ガスの上吹き開始後2〜4分経過した時点における前記スラグのT.Fe濃度を10〜40mass%の範囲に制御し、精錬終了までスラグのT.Fe濃度を10〜40mass%の範囲に維持することを特徴とする、溶銑の精錬方法。
JP2004036428A 2004-02-13 2004-02-13 溶銑の精錬方法 Expired - Lifetime JP4419594B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004036428A JP4419594B2 (ja) 2004-02-13 2004-02-13 溶銑の精錬方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004036428A JP4419594B2 (ja) 2004-02-13 2004-02-13 溶銑の精錬方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005226127A JP2005226127A (ja) 2005-08-25
JP4419594B2 true JP4419594B2 (ja) 2010-02-24

Family

ID=35001075

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004036428A Expired - Lifetime JP4419594B2 (ja) 2004-02-13 2004-02-13 溶銑の精錬方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4419594B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010280942A (ja) * 2009-06-03 2010-12-16 Nippon Yakin Kogyo Co Ltd 低燐ステンレス鋼の製造方法
JP5493911B2 (ja) * 2010-01-25 2014-05-14 新日鐵住金株式会社 溶銑の脱燐処理方法
JP6011248B2 (ja) * 2011-11-29 2016-10-19 Jfeスチール株式会社 転炉における溶銑の予備処理方法
CN103014236B (zh) * 2012-12-14 2014-07-30 邢台钢铁有限责任公司 在铁水罐内施行的双模式脱磷方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005226127A (ja) 2005-08-25

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4735169B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP4715384B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法及び脱燐処理用上吹きランス
JP4487812B2 (ja) 低燐溶銑の製造方法
JPWO2015011910A1 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP2006348331A (ja) 溶融金属精錬用上吹きランス及び溶融金属の吹錬方法
EP0328677B1 (en) PROCESS FOR MELT REDUCTION OF Cr STARTING MATERIAL AND MELT REDUCTION FURNACE
JP4419594B2 (ja) 溶銑の精錬方法
JP2006249569A (ja) 低燐溶銑の製造方法
TWI685577B (zh) 高錳鋼的冶煉方法
JP7001148B2 (ja) 溶銑の脱りん方法
JP5915568B2 (ja) 転炉型精錬炉における溶銑の精錬方法
WO2020152945A1 (ja) 低炭素フェロマンガンの製造方法
JP5358975B2 (ja) 溶銑の精錬方法
JP2011084789A (ja) 転炉吹錬方法
JP2020125541A (ja) 転炉精錬方法
JP3333339B2 (ja) 脱炭滓をリサイクルする転炉製鋼法
JP4513340B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP2019218580A (ja) 溶鋼の脱燐処理方法
JP2002285215A (ja) 溶銑の脱燐方法
JP3668172B2 (ja) 溶銑の精錬方法
JP4686873B2 (ja) 溶銑の脱燐方法
JP4857830B2 (ja) 転炉製鋼方法
JP3825733B2 (ja) 溶銑の精錬方法
JP4423927B2 (ja) 溶銑の脱燐処理方法
JP6760237B2 (ja) 溶銑の脱珪処理方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060824

RD01 Notification of change of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7421

Effective date: 20060921

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20090219

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090310

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090511

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20091110

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20091123

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121211

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4419594

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121211

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131211

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

EXPY Cancellation because of completion of term