JP4773653B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動パワーステアリング装置として、ハウジングに支持されたボールねじを有するラック軸と、ボールねじに螺合し、かつハウジングに軸受を介して回転可能に支持されるナットと、ナットに操舵アシスト力を付与する電動モータとを有し、電動モータの操舵アシスト力を減速ギヤ列を介してナットに伝えるものがある。この電動パワーステアリング装置では、通常使用される常用域で、電動モータの回転の始動時や電動モータの回転の反転時に、ナットとボールねじの噛み合い部や、ステアリングホィールが結合された入力軸のピニオンとラック軸のラックの噛み合い部が、それらの存在するバックラッシュ分の遊動により衝突し、叩き音を生ずることがある。
【0003】
従来技術では、特開平2-254057に記載の如く、上述の叩き音を低減するため、ナットと軸受を一体で軸方向に移動可能としておき、軸受とハウジングの間にラック軸の推力を吸収する弾性体を設けるものを開示している。これにより、電動モータ又はラック軸に加わる衝撃力を、ナット及び軸受が弾性体を圧縮して軸方向移動することにより吸収する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術には以下の問題点がある。
▲1▼電動モータ又はラック軸に加わる衝撃力に基づいて移動して弾性体を圧縮する可動部が、ナット以外に軸受も含むものであり、可動部の慣性質量が大きくなるから、弾性体を大型にする必要がある。
【0005】
▲2▼電動モータの回転力をナットに伝える減速ギヤ列が、電動モータの出力軸に固定の小歯車とナットに固定の大歯車との噛み合いからなっており、ナットの軸方向移動による衝撃力の吸収時に、大歯車と小歯車の伝達トルクに比例して増大する歯面摺動の抵抗力を生ずる。従って、この歯面摺動の抵抗力は電動モータの回転力の変動に伴なって変化してしまい、弾性体による衝撃力の吸収特性が不安定になる。
【0006】
本発明の課題は、電動パワーステアリング装置において、電動モータのトルク伝達経路における衝撃力を、コンパクトな弾性体の構成により吸収することにある。
【0007】
本発明の他の課題は、弾性による衝撃力の吸収特性の安定化を図ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、ハウジングに支持されたボールねじを有するラック軸と、ボールねじに螺合し、かつハウジングに固定された軸受を介して回転可能に支持されるナットと、ナットに操舵アシスト力を付与する電動モータとを有する電動パワーステアリング装置において、電動モータのロータの内周に一体化されたスリーブを上記ナットに同軸配置するとともに、該ナットにトルクリミッタを介して結合し、ロータの一方に突出するスリーブの一端延長部がハウジングに設けた軸受に対し軸方向に摺動可能に支持され、ロータの他方に突出するスリーブの他端延長部に結合される上記ナットがハウジングに設けた軸受に対し軸方向に摺動可能に支持され、ナットと、該ナットを支持する上記軸受の軸方向で相対する両端面との間に、ラック軸からの衝撃力を吸収する弾性体を設けたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において更に、前記軸受の一端面に設けた弾性体がナットに設けた段差部と軸受の一端部との間に、該軸受の他端面に設けた弾性体が該軸受の他端部との間に、それぞれ予圧縮されて介装され、ロックナットの締込位置の調整により、それらの弾性体の予圧縮荷重を調整できるようにしたものである。
【0010】
【作用】
▲1▼弾性体を圧縮する可動部が、ナット以外の軸受を含むところがない。従って、可動部の慣性質量を小さくし、応答性を向上させ、この慣性力を含む衝撃力を吸収するための弾性体を小型化できる。
【0011】
▲2▼電動パワーステアリング装置の常用域で、ナットの軸方向移動による衝撃力の吸収時に、減速ギヤ列の歯面摺動の抵抗力の変化を生ずることがなく、弾性体による衝撃力の吸収特性の安定を図ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は電動パワーステアリング装置を一部破断して示す正面図、図2は図1の要部断面図、図3は図2の拡大断面図である。
【0013】
電動パワーステアリング装置10は、図1に示す如く、ハウジング11にステアリング入力軸12を支持し、入力軸12にトーションバー13を介して出力軸14(不図示)を連結し、この出力軸14にピニオンを設け、このピニオンに噛み合うラックを備えたラック軸15をハウジング11に左右動可能に支持している。入力軸12と出力軸14の間には操舵トルクセンサ16(不図示)を設けている。操舵トルクセンサ16は、ステアリングホィールに加えた操舵トルクが出力軸14に付与され、トーションバー13の弾性ねじり変形により、入力軸12と出力軸14の間に生ずる相対回転変位に基づき、操舵トルクを検出する。
【0014】
電動パワーステアリング装置10は、ラック軸15の両端部をハウジング11の両側に突出し、それらの端部にタイロッド17A、17Bを連結し、ラック軸15の左右動によりタイロッド17A、17Bを介して左右の車輪を転蛇可能とする。尚、ラック軸15の一端はラックガイド(不図示)により、他端は後述する軸受25によりハウジング11に支持される。
【0015】
電動パワーステアリング装置10は、ハウジング11内で、ラック軸15の周囲に電動モータ20を設けている。電動モータ20は、ハウジング11の内周に固定されるステータ21と、ラック軸15の外周に間隙をおいて配置され、後述するナット32に回転力を伝えるロータ22とを有する。ロータ22の内周に一体化されたスリーブ23は、ラック軸15の外周に間隙をおいてラック軸15と同軸配置され、ロータ22の一方に突出する一端延長部を軸受24により、他方に突出する他端延長部を後述するナット32を介して軸受25により支持される。
【0016】
尚、電動モータ20にあっては、ハウジング11の内部にブラシ26を保持し、このブラシ26をロータ22の端面のコンミテータ27に接触している。電動モータ20は、ブラシ26、コンミテータ27を通じてロータ22に給電されると、ロータ22の磁力線がステータ21の磁界を切ることにより、ロータ22を回転駆動する。
【0017】
電動パワーステアリング装置10は、ラック軸15にボールねじ30を設けてあり、ボールねじ30にボール31を介して噛み合うナット32と前述のスリーブ23を同軸配置し、スリーブ23の前述した延長部の外周にトルクリミッタ40を介してこのナット32を結合し、ナット32を前述の軸受25を介してハウジング11に回転可能に支持している。尚、スリーブ23とナット32は軸方向には一体不動に接続される。軸受25はハウジング11に螺着したロックナット33により、ハウジング11の内周段差部に対しワッシャ34を介して押付けられて保持される。
【0018】
トルクリミッタ40は、ナット32の内周に設けた差し込み孔に、スリーブ23の延長部の外周面を嵌合し、スリーブ23のこの外周面に設けたリング溝に波板状等の弾性リング41を組込んで構成される。電動パワーステアリング装置10の常用域のトルク(リミットトルクより小なるトルク)では、弾性リング41の弾発力によりスリーブ23とナット32を滑りなく結合し続け、電動モータ20の発生トルクを伝達する。他方、タイヤが操舵中に縁石に乗り上げる等により、ラック軸15のストロークが急停止せしめられ、ボールねじ30のリードの比率で高速回転していた電動モータ20の慣性力がボールねじ30のねじ溝に大きな衝撃力を及ぼすことに起因する、その弾性リング41の弾発力を超える衝撃トルク(リミットトルク)に対しては、スリーブ23とナット32の間に滑りを生じさせ、この衝撃トルクを伝達させないようにし、ボールねじ30のねじ溝の損傷等を防止可能とする。
【0019】
以下、電動パワーステアリング装置10の動作について説明する。
(1)操舵トルクセンサ16が検出した操舵トルクが所定値より低いとき、操舵アシスト力は不要であり、電動モータ20は駆動されない。
【0020】
(2)操舵トルクセンサ16が検出した操舵トルクが所定値を越えるとき、操舵アシスト力を必要とするから、電動モータ20が駆動される。電動モータ20の発生トルクがロータ22からスリーブ23を介してナット32に操舵アシスト力として付与され、ナット32の回転をボールねじ30によりラック軸15の直線運動に変換し、ラック軸15に連動する車輪を転蛇する。
【0021】
ここで、電動パワーステアリング装置10にあっては、ナット32を軸受25に対し軸方向に摺動可能とし、かつスリーブ23を軸受24に対し軸方向に摺動可能としている。そして、ナット32と軸受25の間に、ラック軸15からの衝撃力を吸収する弾性体51、52を設けている。弾性体51は、ナット32に設けた段差部53と軸受25の内輪の一端部との間に、弾性体52は、ナット32に螺着したロックナット54と軸受25の内輪の他端部との間に、それぞれ余圧縮されて介装される。ロックナット54の締込位置の調整により、弾性体51、52の予圧縮荷重を調整できる。
【0022】
弾性体51、52は、電動パワーステアリング装置10の常用域で、電動モータ20の回転の始動時や電動モータ20の回転の反転時等に、トルクリミッタ40のリミットトルクより比較的小さな衝撃トルク(歯面当たり等の衝撃力)が電動モータ20又はラック軸15に作用したときに、弾性的に圧縮変形してナット32を軸方向に可動とし、このナット32の慣性力を含む衝撃力を吸収する。
【0023】
尚、弾性体51、52は皿ばね等の板ばねの他、ゴム、樹脂ブロック等でも良い。
【0024】
本実施形態によれば以下の作用がある。
▲1▼電動モータ20又はラック軸15に加わるトルクリミット荷重よりも小さな衝撃力に基づいて移動して弾性体51、52を圧縮する可動部が、ナット32以外の軸受25を含むところがない。従って、可動部の慣性質量を小さくし応答性を向上させ、この慣性力を含む衝撃力を吸収するための弾性体51、52を小型化できる。
【0025】
▲2▼電動モータ20のロータ側部材であるスリーブ23とナット32の間にトルクリミッタ40を介装するものの、減速ギヤ列は介さない。従って、電動パワーステアリング装置10の常用域で、ナット32の軸方向移動による衝撃力の吸収時に、減速ギヤ列の歯面摺動の抵抗力を伴なうことがなく、弾性体51、52による衝撃力の吸収特性の安定化を図ることができる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態を図面により記述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、電動パワーステアリング装置において、電動モータのトルク伝達経路における衝撃力を、コンパクトな弾性体の構成により吸収することができる。
【0028】
また、本発明によれば、弾性による衝撃力の吸収特性の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は電動パワーステアリング装置を一部破断して示す正面図である。
【図2】 図2は図1の要部断面図である。
【図3】 図3は図2の拡大断面図である。
【符号の説明】
10 電動パワーステアリング装置
11 ハウジング
15 ラック軸
20 電動モータ
23 スリーブ
24 軸受
25 軸受
30 ボールねじ
32 ナット
40 トルクリミッタ
51、52 弾性体
Claims (2)
- ハウジングに支持されたボールねじを有するラック軸と、ボールねじに螺合し、かつハウジングに固定された軸受を介して回転可能に支持されるナットと、ナットに操舵アシスト力を付与する電動モータとを有する電動パワーステアリング装置において、
電動モータのロータの内周に一体化されたスリーブを上記ナットに同軸配置するとともに、該ナットにトルクリミッタを介して結合し、ロータの一方に突出するスリーブの一端延長部がハウジングに設けた軸受に対し軸方向に摺動可能に支持され、ロータの他方に突出するスリーブの他端延長部に結合される上記ナットがハウジングに設けた軸受に対し軸方向に摺動可能に支持され、
ナットと、該ナットを支持する上記軸受の軸方向で相対する両端面との間に、ラック軸からの衝撃力を吸収する弾性体を設けたことを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記軸受の一端面に設けた弾性体がナットに設けた段差部と軸受の一端部との間に、該軸受の他端面に設けた弾性体が該軸受の他端部との間に、それぞれ予圧縮されて介装され、ロックナットの締込位置の調整により、それらの弾性体の予圧縮荷重を調整できる請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
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