JP4766505B2 - セラミックスラリー、セラミックグリーンシートおよび積層セラミック電子部品 - Google Patents

セラミックスラリー、セラミックグリーンシートおよび積層セラミック電子部品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系セラミックスラリー、およびそれを成形してなるセラミックグリーンシート、ならびに、このセラミックグリーンシートを用いてなる積層セラミック電子部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、積層セラミック電子部品は、セラミックグリーンシートを複数枚積層した生のセラミック積層体を焼成して作製される。近年、積層セラミック電子部品の小型軽量化・高密度化に伴い、セラミックグリーンシートの厚みを3〜5μm程度にすることが求められている。
【0003】
このようなセラミックグリーンシートを形成するには、まず、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混合し、分散させてセラミックスラリーを得る。ここで、有機ビヒクルは、ポリビニルブチラール樹脂等の有機バインダを、ケトン類、炭化水素類、アルコール、エステル、エーテルアルコール等の有機溶媒中に溶解させたものである。次に、ドクターブレード法、ロールコータ法、グラビアコータ法等により、セラミックスラリーをキャリアテープ上に所定の厚さとなるように塗布する。そして、これを乾燥させることで、有機溶媒を揮発除去してセラミックグリーンシートを成形する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、有機溶媒を取り扱うには、専用の設備を導入する等の準備が必要であった。また、有機溶媒を含むセラミックスラリーは、有機溶媒の蒸発速度が速いため、セラミックスラリーを乾燥させる際に有機溶媒の沸騰や対流が生じる場合がある。このため、乾燥後のセラミックグリーンシートにピンホール等のシート欠陥が発生する恐れがあった。このようなセラミックグリーンシートを複数枚積層・圧着し、焼成してなる積層セラミック電子部品においては、所望の電気的特性が得られなくなる可能性がある。
【0005】
そこで、有機溶媒の代わりに水系溶媒を用い、有機バインダとしてアクリル樹脂やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を含有する水系セラミックスラリーを用いることが検討されている。
【0006】
しかしながら、水の表面自由エネルギーは72mN/mであり、他の有機溶剤に比べて極めて大きい。このため、水系セラミックスラリーは、表面自由エネルギーが比較的小さいキャリアテープに対して、濡れ性が劣ることとなる。したがって、水系のセラミックスラリーをキャリアテープに塗布する際、均一にスラリーを塗布することができず、ピンホール等のシート欠陥が発生する恐れがあった。
【0007】
また、アクリル樹脂やポリビニルアルコール等の水溶性樹脂を用いた場合、有機バインダの分子量を高めることが困難であるため、作製したセラミックグリーンシートの引張り強度や伸びが小さくなる場合があった。このため、特に薄層のセラミックグリーンシート、およびこれを用いた積層セラミック電子部品の製造が困難になるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、キャリアテープに対する濡れ性に優れた水系のセラミックスラリーを提供することを目的とする。また、このようなセラミックスラリーを用いることにより、ピンホール等のシート欠陥がなく、表面粗さが小さく、引張り強度伸びが大きい、極薄の水系セラミックグリーンシートを提供することを目的とする。さらに、このようなセラミックグリーンシートを用いた積層セラミック電子部品を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、本発明のセラミックスラリーにおいては、セラミック粉末と、有機バインダと水系溶媒を含む有機ビヒクルと、分子内に1つ以上の三重結合を有するアセチレングリコール(別称:アルキンジオール)、または、分子内に1つ以上の三重結合を有するアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物を含む界面活性剤と、からなることを特徴とする。
【0010】
このような界面活性剤を含有することによって、水系のセラミックスラリーをキャリアテープ等のフィルム上に塗布する際の接触角が減少し、濡れ性が向上する。なお、アセチレングリコールの一例として、例えば、図1(a)の化学式で示されるものが挙げられる。また、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物を含む界面活性剤の一例として、図1(b)の化学式で示されるものが挙げられる。
【0011】
また、本発明のセラミックスラリーにおいては、有機バインダは、平均粒径が120nm以下のポリウレタン樹脂粒子からなることを特徴とする。
【0012】
ここで、一般に、セラミックスラリーにおける有機バインダの含有量を変えずに、有機バインダの粒径を小さくすると、セラミックスラリーを成形してなるセラミックグリーンシートの相対密度、引張り強度、伸びは高くなる。特に、有機バインダの平均粒径が120nm以下であれば、相対密度、引張り強度、伸びが飛躍的に向上し、ピンホール等のシート欠陥の発生率が低下する。本発明における有機バインダの平均粒径は、さらに、50μm以下であることが好ましい。
【0013】
また、本発明のセラミックスラリーにおいては、ポリウレタン樹脂粒子が水系溶媒中に微粒子状に分散したエマルジョンからなる有機ビヒクルを含有することを特徴とする。
【0014】
このようなエマルジョンが好ましい理由として、以下の3点が挙げられる。
【0015】
第1に、ポリウレタン樹脂はウレタン結合構造を有し、ウレタン結合部のN−HとC=Oの間、および、ウレタン結合部のN−Hとポリオール部のOの間で水素結合するため、分子凝集力が優れる。
【0016】
第2に、ポリウレタン樹脂はセグメント構造を有し、ハードセグメント部で強度を発現し、ソフトセグメント部で柔軟性を発現している。したがって、十分な強度と伸びを有するセラミックグリーンシートが得られる。
【0017】
第3に、エマルジョンは分子量が大きく、溶液型の有機バインダよりも造膜性に優れ、粘度も低く分散性に優れる。したがって、水系セラミックスラリー中の有機バインダの含有量が少量であっても、十分な強度と伸びを備え、加工性に富むセラミックグリーンシートが得られる。
【0018】
なお、本発明において、エマルジョンとは、液体の中に、それに溶けない別の液体が細かい滴になって分散したもの全般をさすものと定義し、いわゆるコロイダルディスパーションを含むものとする。
【0019】
また、本発明のセラミックスラリーにおいては、界面活性剤の含有量が、セラミック粉末100重量部に対して1.0重量部以上であることを特徴とする。
【0020】
セラミックスラリー中に界面活性剤を1.0重量部以上含有することによって、スラリー塗工時の、いわゆる弾きの発生が抑制される。なお、界面活性剤の含有量の上限は、セラミック粉末100重量部に対して2.0重量部以下であることが好ましい。これは、界面活性剤の含有量が過剰になると、セラミックスラリーを成形してなるセラミックグリーンシートの伸び率が過度に大きくなり、セラミックグリーンシートを積層する際に、積みズレが生じる恐れがあるためである。
【0021】
また、本発明のセラミックスラリーにおいては、有機バインダの含有量が、セラミック粉末100重量部に対して5〜20重量部の範囲内であることを特徴とする。
【0022】
セラミックスラリーにおける有機バインダの含有量が、5〜20重量部の範囲内であれば、積層セラミック電子部品として利用可能な程度に十分に大きな引張り強度、伸び、密度を備えたセラミックグリーンシートが得られる。また、得られたセラミックグリーンシートをハンドリングする際、破損する恐れがなくなる。さらに、セラミックグリーンシートを積層圧着した際に、十分な密着性が得られる。さらにまた、生のセラミック積層体を焼成する際、脱バインダによる残炭量が少なくなる。なお、本発明のセラミックスラリーにおける有機バインダの含有量として、より好ましいのは6〜10重量部であり、さらに好ましくは8〜10重量部である。
【0023】
本発明のセラミックスラリーをシート状に成形してなるセラミックグリーンシートによれば、厚み4.0μmの極薄のセラミックグリーンシートを得ることができる。
【0024】
さらに、上述のセラミックグリーンシートを用いることにより、電気的特性の安定した積層セラミック電子部品を得ることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
[実施例1]
本発明にかかる積層セラミック電子部品として積層コンデンサを例にとり、図2を用いて説明する。
【0026】
積層コンデンサ1は、セラミック積層体2を備える。セラミック積層体2内のセラミック層2a間には内部電極3が形成され、セラミック積層体2の両端部には外部電極4が形成され、さらに外部電極4の上にめっき膜5が形成されている。
【0027】
ここで、積層コンデンサ1の製造においては、まず、BaTiO3粉末を主成分とする誘電体セラミック粉末を用いてセラミックスラリーを調製する。このセラミックスラリーを成形し、複数のセラミックグリーンシートを得る。次に、セラミックグリーンシートの表面に、所定のパターンを形成するように導電性ペーストを印刷する。このように導電性ペーストを印刷した複数のセラミックグリーンシートを積層し、生セラミック積層体を形成し、この生セラミック積層体を焼成する。生セラミック積層体の焼成時に、セラミックグリーンシートに印刷されていた導電性ペーストが焼結し、内部電極3が形成される。次に、セラミック積層体2の端面に露出した内部電極3の端縁に接続するように、導電性ペーストを塗布し、焼付けることにより、外部電極4を形成する。さらに、Sn、Ni等の無電解めっき、または、はんだめっきを外部電極4の上に施すことにより、めっき膜5を形成する。
【0028】
次に、上述のセラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートの製造について、詳細に説明する。
【0029】
まず、BaTiO3粉末を主成分とするセラミック材料、有機ビヒクル、分散剤、消泡剤を用意した。
【0030】
このうち、有機ビヒクルとしては、平均粒径の異なる試料1〜4を用意した。試料1〜4は、それぞれ重量平均分子量が200000程度のポリウレタン樹脂粒子40重量%と、水60重量%とからなるポリウレタン樹脂エマルジョンである。平均粒径は、試料1が20nm,試料2が50nm,試料3が120nm,試料4が190nmである。
【0031】
次いで、上述のセラミック材料100重量部、水系溶媒20重量部、分散剤0.5重量部、消泡剤0.3重量部の混合物を調製した。そして、図1(b)に示すアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの付加量:アセチレン1モル当り4モル)を含む界面活性剤1.0重量部を、上述の混合物に配合した。その後、これをボールミルを用いて2時間混合し、セラミック粉末を充分に分散させ、分散液を得た。
【0032】
次いで、この分散液に、有機ビヒクルとして上述の試料1を添加したもの、試料2を添加したもの、試料3を添加したもの、試料4を添加したものをそれぞれ調製した。これらをボールミルを用いて、それぞれ16時間混合して、試料1〜4の水系セラミックスラリーを得た。なお、試料1〜4の有機ビヒクルの添加量は、いずれも25重量部である。
【0033】
次いで、これらを減圧脱気により脱泡した後、グラビアコーターを用いてシート成形し、乾燥させ、厚み4.0μmの試料1〜4のセラミックグリーンシートを作製した。なお、脱泡後のセラミックスラリーの粘度は、0.10〜0.12Pa・sであった。
【0034】
また、試料1〜4とは別に、試料5のセラミックグリーンシートを作製した。試料5のセラミックグリーンシートは、試料1〜4と同じセラミック材料100重量部と、混合溶媒38重量部と、有機ビヒクル65重量部と、フタル酸エステル系可塑剤3重量部と、分散剤0.5重量部とを配合、混合して得た有機系セラミックスラリーを、厚み4.0μmに成形したものである。なお、混合溶媒は、トルエンおよびエタノールを50重量%ずつ混合したものである。また、有機ビヒクルは、ポリビニルブチラール樹脂からなる有機バインダ8重量部と、トルエンおよびエタノールを50重量%ずつ混合した混合溶媒57重量部とを混練したものである。
【0035】
試料1〜5のセラミックグリーンシートについて、ピンホール数、表面粗さ(Ra)、相対密度(%)、引張り強度(MPa)、伸び率(%)を測定し、これらを表1にまとめた。このうち、ピンホール数は、セラミックグリーンシートの面積が45cm2であるときのピンホールの数である。
【0036】
また、相対密度は、シート打ち抜き機を用いて、セラミックグリーンシートを76.0×58.4mmに打ち抜いたものについて、下記の計算式に基づいて求めた理論値である。
【0037】
相対密度(%)=(シート重量/(金型寸法×シート厚み))×(セラミック材料粉末の重量)/(セラミック材料粉末の重量+有機バインダ等不揮発成分の全添加剤重量))/理論密度(なお、理論密度は、粉末真比重5.83g/cm3
また、引張り強度および伸び率は、シート打ち抜き機を用いて、セラミックグリーンシートを36.6×57.6mm□に打ち抜いたものについて、今田製作所製の引張り強度試験機を用いて測定した。なお、試験時のクロスヘッド速度は13mm/min、測定温度は室温25℃とした。
【0038】
なお、試料5の有機バインダとして用いたポリビニルブチラール樹脂は、溶解型の樹脂であり、粒径は実測困難である。このため、表1において、試料5のポリウレタン樹脂の平均粒径は表示していない。
【0039】
また、試料1と試料5のセラミックグリーンシートに斜光を照射して、光学顕微鏡で200倍に拡大した写真を、それぞれ図3,図4に示した。
【0040】
【表1】
Figure 0004766505
【0041】
表1から明らかなように、平均粒径が120nm以下のポリウレタン樹脂を含むエマルジョンを有機バインダとして用いた試料1〜3のセラミックグリーンシートでは、ピンホール数が0個であり、表面粗さが0.10〜0.14,相対密度が58.1〜60.9%,引張り強度が7.0〜9.5MPa,伸び率が11〜14%であった。
【0042】
また、有機バインダとしてポリビニルブチラール樹脂を用い、溶媒としてトルエンとエタノールの混合液を用いた試料5の有機系セラミックグリーンシートと比較して、試料1〜3の水系セラミックグリーンシートは、引張り強度と伸び率がほぼ同等であった。また、相対密度については、試料5より試料1〜3の方が高かった。また、試料1〜3については、フィルム上に水系セラミックグリーンシートを塗布する際の、いわゆる弾きは観察されず、満足できる濡れ性を示すものであった。
【0043】
また、図3と図4とを比較すると、図4(試料5)と比較して、図3(試料1)のセラミックグリーンシートは、表面の凹凸が少なく、視覚的にも表面粗さが小さく優れていることがわかる。
【0044】
一方、有機バインダとして平均粒径が190nmであるポリウレタン樹脂を含むエマルジョンを用いた試料4のセラミックグリーンシートは、ピンホール数が17個であった。
[実施例2]
次に、本発明にかかるセラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートの他の実施例について説明する。
【0045】
本実施例においては、試料1a〜1f,試料2a〜2f,試料3a〜3fの有機ビヒクルを用意した。これらの有機ビヒクルは、それぞれポリウレタン樹脂40重量%と、水60重量%とからなるポリウレタン樹脂エマルジョンである。
【0046】
そして、試料1a〜1fの有機ビヒクルは、ポリウレタン樹脂の平均粒径がそれぞれ同じ20nmであり、ポリウレタン樹脂の含有量が互いに異なり、試料1aが20重量部、試料1bが15重量部、試料1cが10重量部、試料1dが8重量部、試料1eが6重量部、試料1fが5重量部である。
【0047】
また、試料2a〜2fの有機ビヒクルは、ポリウレタン樹脂の平均粒径がそれぞれ同じ50nmであり、試料1a〜1fと同様に、ポリウレタン樹脂の含有量が互いに異なる。
【0048】
さらに、試料3a〜3fの有機ビヒクルは、ポリウレタン樹脂の平均粒径がそれぞれ同じ120nmであり、試料1a〜1fと同様に、ポリウレタン樹脂の含有量が互いに異なる。
【0049】
また、試料1a〜1f,試料2a〜2f,試料3a〜3fのそれぞれについて、実施例1の試料と同様の方法により、水系セラミックスラリーを調整し、セラミックグリーンシートを作製した。
【0050】
試料1a〜1f,試料2a〜2f,試料3a〜3fのセラミックグリーンシートについて、ピンホール数、表面粗さ(Ra)、相対密度(%)、引張り強度(MPa)、伸び率(%)を測定し、これらを表2にまとめた。
【0051】
【表2】
Figure 0004766505
【0052】
表2から明らかなように、有機バインダとして用いたポリウレタン樹脂の粒径に関わらず、セラミック材料100重量部に対する有機バインダの含有量が6〜10重量部である試料1c,1d,1e,2c,2d,2e,3c,3d,3eは、それぞれピンホール数、表面粗さ、相対密度、引張り強度、伸び率の何れにおいても優れた値を示した。その中でも、セラミック材料100重量部に対する有機バインダの含有量が8または10重量部である試料1c,1d,2c,2d,3c,3dは、引張り強度または伸び率が特に高かった。
【0053】
また、セラミック材料100重量部に対する有機バインダの含有量が15または20重量部である試料1a,1b,2a,2b,3a,3bは、引張り強度および伸び率において、特に優れた値を示した。その反面、表面粗さおよび相対密度については、上述した他の試料と比較してやや劣るが、何れも実用上許容できる範囲内の値である。また、試料1a,1b,2a,2b,3a,3bのピンホール数は0個であり、ピンホール発生の抑制という効果は充分に得られた。
【0054】
また、セラミック材料100重量部に対する有機バインダの含有量が5重量部ある試料1f,2f,3fは、表面粗さが低く、相対密度が高かった。その反面、引張り強度が比較的弱く、伸び率が比較的低く、上述した他の試料と比較してやや劣っていた。しかしながら、ピンホール数は0ないし1個であり、実施例1の試料5と比較して少なく、ピンホール発生の抑制という効果は充分に得られた。
[実施例3]
本実施例では、実施例2における試料2cのセラミックスラリーについて、界面活性剤の含有量をそれぞれ、0重量部、0.5重量部、1.0重量部、1.5重量部とした試料2c1〜2c4を用意した。また、試料2c3のセラミックスラリーに対して、界面活性剤として、オレフィン・マレイン酸共重合物ナトリウム塩を1.0重量部添加した試料2c5を用意した。これらの試料2c1〜2c5のそれぞれについて、実施例2の各試料と同様の方法により、水系セラミックスラリーを調整し、セラミックグリーンシートを作製した。
【0055】
試料2c1〜2c5のセラミックグリーンシートについて、引張り強度(MPa)、伸び率(%)、キャリアフィルム上における接触角(度)、スラリー塗工時の弾きの有無を測定し、これらを表3にまとめた。
【0056】
なお、引張り強度と伸び率の測定方法は、実施例2と同様の方法による。また、キャリアフィルム上における接触角は、表面張力が34mN/mのフィルム上における水系セラミックスラリーの接触角を、エルマゴニオメータ式接触角測定機(共和界面科学製、FA Contact AngleMeter CA−Z)を用いて計測した。また、弾きの有無は、表面張力が34mN/mのフィルム上にセラミックスラリーを塗工した際の弾きの有無を目視観察したものである。
【0057】
【表3】
Figure 0004766505
【0058】
表3から明らかなように、界面活性剤の添加量が多くなるのに伴い、引張り強度は低下するが、伸び率は増加し、接触角は小さくなり、スラリー塗工時の弾きはなくなる傾向がある。
【0059】
また、セラミック粉末100重量部に対する界面活性剤の含有量が1.0重量部である試料2c3と、1.5重量部である試料2c4においては、スラリー塗工時の弾きが見られなかった。また、界面活性剤の含有量が、セラミック粉末100重量部に対して1.0重量部未満(0.5重量部)である試料2c2においては、スラリー塗工時の弾きが発生したが、伸び率の改善効果が見られ、また引張り強度の低下も僅かであることから、許容範囲内の特性を有するといえる。
【0060】
また、試料2c5は、界面活性剤としてオレフィン・マレイン酸共重合物ナトリウム塩を用いており、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物を用いた試料2c3と異なるが、界面活性剤の含有量そのものは、試料2c3と同じ1.0重量部である。試料2c5と試料2c3を比較すると、試料2c3の方が、引張り強度が高く、接触角が小さかった。しかも、試料2c3においては、スラリー塗工時の弾きも発生していない。このように、試料2c3は、試料2c5より優れた特性を有するものであると言える。
【0061】
なお、本発明のセラミックスラリーの材料は、上述のBaTiO3粉末を主成分とする誘電体セラミック粉末に限定されることはなく、例えば、PbZrO3粉末等でもよい。また、絶縁体材料、磁性体材料、圧電体材料、半導体材料の何れを用いてもよい。
【0062】
【発明の効果】
本発明においては、セラミック粉末と、有機バインダおよび水系溶媒を含む有機ビヒクルと、分子内に1つ以上の三重結合を有するアセチレングリコール、または、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物を含む界面活性剤と、を含むセラミックスラリーを用いて、セラミックグリーンシートを形成するものである。このセラミックスラリーは、水系のスラリーであるにもかかわらず、キャリアテープ等のフィルム上に塗布する際の接触角が少なく、濡れ性が良い。したがって、信頼性の高い極薄のセラミックグリーンシートを得ることができる。
【0063】
そして、特に、有機バインダとしての平均粒径120nm以下のポリウレタン樹脂が、水系溶媒中に微粒子状に分散したエマルジョンからなる有機ビヒクルを含むセラミックスラリー用いることにより、ピンホール等のシート欠陥がなく、表面粗さが小さく、引張り強度および伸び率が大きい、極薄の水系セラミックグリーンシートを得ることができる。
【0064】
また、セラミックスラリー中の界面活性剤の含有量を、セラミック粉末100重量部に対して1.0重量部以上とすることで、セラミックスラリーをキャリアテープ等のフィルム上に塗布する際の接触角が減少し、濡れ性が向上する。
【0065】
さらに、セラミックスラリー中の有機バインダの含有量を、セラミック粉末100重量部に対して5〜20重量部の範囲内とすることで、ピンホールがなく、表面粗さ、相対密度、引張り強度および伸び率の優れたセラミックグリーンシートを得ることができる。
【0066】
そして、上述のセラミックグリーンシートを用いることにより、電気的特性の安定した積層セラミック電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかるセラミックグリーンシートの形成に用いる界面活性剤の化学式であり、(a)はアセチレングリコールの化学式であり、(b)はアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物を含む界面活性剤の化学式である。
【図2】本発明の一実施例にかかる積層セラミック電子部品(積層コンデンサ)の断面図である。
【図3】本発明の一実施例にかかるセラミックグリーンシートの表面状態を示す顕微鏡写真である。
【図4】本発明の範囲外のセラミックグリーンシートの表面状態を示す顕微鏡写真である。
【符号の説明】
1 積層コンデンサ(積層セラミック電子部品)
2 セラミック積層体
3 内部電極
4 外部電極

Claims (4)

  1. BaTiO 3 を主成分とするセラミック粉末と、
    平均粒径が120nm以下のポリウレタン樹脂粒子からなる有機バインダおよび水系溶媒を含む有機ビヒクルと、
    分子内に1つ以上の三重結合を有するアセチレングリコール、または、分子内に1つ以上の三重結合を有するアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物からなる界面活性剤と、
    からなり、
    前記有機バインダの含有量は、前記セラミック粉末100重量部に対して8〜10重量部の範囲内であり、
    前記界面活性剤の含有量は、前記セラミック粉末100重量部に対して1.0重量部以上2.0重量部以下であることを特徴とするセラミックスラリー。
  2. 前記有機ビヒクルは、ポリウレタン樹脂粒子が前記水系溶媒中に微粒子状に分散したエマルジョンからなることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスラリー。
  3. BaTiO 3 を主成分とするセラミック粉末と、
    平均粒径が120nm以下のポリウレタン樹脂粒子からなる有機バインダおよび水系溶媒を含む有機ビヒクルと、
    分子内に1つ以上の三重結合を有するアセチレングリコール、または、分子内に1つ以上の三重結合を有するアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物からなる界面活性剤と、からなるセラミックスラリーが成形されてなり、
    前記セラミックスラリーにおける前記有機バインダの含有量は、前記セラミック粉末100重量部に対して8〜10重量部の範囲内であり、
    前記セラミックスラリーにおける前記界面活性剤の含有量は、前記セラミック粉末100重量部に対して1.0重量部以上2.0重量部以下であることを特徴とするセラミックグリーンシート。
  4. 前記有機ビヒクルは、ポリウレタン樹脂粒子が前記水系溶媒中に微粒子状に分散したエマルジョンからなることを特徴とする請求項3に記載のセラミックグリーンシート。
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