JP4756738B2 - 紫外線遮蔽用酸化亜鉛微粒子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分散性に優れた紫外線遮蔽用酸化亜鉛微粒子に係り、詳しくは分散性が顕著に向上した酸化亜鉛微粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
酸化亜鉛は、従来より紫外線を遮蔽する材料として知られていたが、近年オゾンホール拡大やオゾン層破壊に伴う紫外線トラブルという環境問題がメデア等で大きくとりあげられるようになり、また紫外線が人体に及ぼす予想以上の悪影響が明らかになるとともに、人体を有害な紫外線から保護するための最も代表的な材料の一つとして期待され、精力的に研究が行われ、かつ、広範囲の用途に用いられるようになっている。そして、このような人体(皮膚)への悪影響に対処するためのものとして、紫外線遮蔽剤として酸化亜鉛を配合した日焼け止め化粧品が注目されている。
【0003】
このように、近年、酸化亜鉛粒子を化粧品に配合する用途が増加するにつれて、有害な紫外線の遮蔽機能が優れていることはもちろん、同時に、配合された粒子が女性の肌を覆う創美製品である化粧品本来の自然な化粧仕上がりの作用を妨害しないため、可視光線に対しては、出来るだけ透明な材料であることが強く望まれるようになった。従って、そのために、酸化亜鉛をより微細粒子化し、可視光線に対しては、実質的に透明にすることが必須となっている。
【0004】
しかして、無機系化合物である酸化亜鉛系紫外線遮蔽剤は、近紫外線をも吸収・散乱することから、近紫外線を含む巾広い領域に渡って紫外線を遮蔽するという長所があり、また酸化亜鉛は、無機化合物であるので皮膚にアレルギーを引き起こしにくく、化粧品中に多量に配合することが可能となる。従って、特に日焼け止め化粧品に配合されて最大限に効果を発揮するものである。
【0005】
そして酸化亜鉛は、その粒子径を0.03μm以下の超微粒子に調整すれば、可視光線の波長よりずっと小さくなるので、理論的には可視光線はほとんど吸収されず、従って化粧品の透明感を阻害することは全くないことになる。
【0006】
このように微粒子化された酸化亜鉛は、紫外線遮蔽領域の広さ、透明感、皮膚に対する安全性、紫外線遮蔽効果の持続性などの点で、従来の紫外線遮蔽材料、すなわち有機紫外線吸収剤や酸化チタンに比べて、より優れた特徴を有するものであるといってよい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このよう優れた特徴を有する微粒子状酸化亜鉛にあっても、これを紫外線遮蔽剤として用いた場合には、以下に述べる問題点があることを本発明者らは見いだした。
【0008】
すなわち、酸化亜鉛粒子はもともと凝集力が強いものであるが、上記のように微粒子化した場合は、その比表面積が大きいことから、その凝集力も極めて大きなものとなっている。そして、このような酸化亜鉛微粒子を化粧料等に配合する場合には、通常他の有機系の基剤と混合して用いるところ、上述したように、酸化亜鉛微粒子は凝集力が強くそれ自身で凝集してしまうため、その粒子は、当該有機系基剤中に十分に分散しない。すなわち、このように凝集した酸化亜鉛粒子は、化粧品本来の透明性を阻害するおそれがあった。
【0009】
また、このような微粒子状酸化亜鉛を化粧品に配合した場合、これらが強く凝集しているため化粧料の本来有する微妙な滑らかさを低下させ、感触(肌触り)の悪化を招くという大きな問題があった。
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、良好な透明性を有し、紫外線遮蔽効果が高く、しかも保存性がよく十分な滑らかさを有する化粧料等を得るのに適した酸化亜鉛を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に従えば、比表面積から計算された平均1次粒子径が0.03μm以下である酸化亜鉛微粒子であって、当該粒子内部にも、Al あるいはSiの酸化物若しくは水酸化物の1種ないしは2種以上を、酸化亜鉛に対し質量比で0.1〜20%含み、かつ、嵩密度が0.25g/ml以下であることを特徴とする実質的に酸化亜鉛からなる、分散性に優れた紫外線遮蔽用酸化亜鉛微粒子が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の酸化亜鉛微粒子は、比表面積から計算された平均1次粒子径が0.03μm以下に微粒子化されているものである。
【0013】
ここで比表面積から計算された平均1次粒子径とは、所謂BET法により比表面積を測定し、得られた値を次式(1)により計算して得られた値である。
d=1.06/S (1)
[式中d:平均1次粒子径(単位μm) 、S:比表面積(単位 m2/g)]
【0014】
酸化亜鉛粒子の平均1次粒子径が0.03μmを越えた場合は、基本的に可視光線の透明性が阻害され好ましくない。
【0015】
本発明における酸化亜鉛粒子は、このように微細粒子化されているとともに、当該粒子内部に、更にAl あるいはSiの酸化物若しくは水酸化物の内、1種ないしは2種を、酸化亜鉛に対し質量比で0.1〜20%有していることを特徴とする。
【0016】
本発明におけるAlやSiの酸化物又は水酸化物(以下、Alの酸化物等と称することがある。)は、酸化亜鉛粒子の分散性を向上させる機能を有するものである。しかして、これらAlの酸化物等は、酸化亜鉛粒子の表面だけではなく粒子内部にも導入されていることが重要であり、単に粒子表面に被着又は被覆されているだけでは不十分である。その理由は、(i)酸化亜鉛を使用するに当たっては撹拌機やニーダー等によりシェア(剪断力)を印加して媒体に分散させるが、当該分散作業においては、必然的に粒子にかなり強いシェアが掛かるので、単に粒子表面を被覆しているだけのAlの酸化物等は、容易に粒子から剥離してしまうからである。(ii)また、シェアが掛かったときに凝集粒子や融着粒子が割れる等により、新たな表面が露出し、この新たな粒子表面は、活性が高く、またAlの酸化物等が存在しないので、分散後に容易に再凝集を起こすことになる。以上のごとく、分散前の酸化亜鉛粒子表面だけをAlの酸化物等で被覆したものでは、その分散効果が十分に発揮できないのである。
【0017】
本発明においては、これに対し、Alの酸化物等の分散性向上物質は、酸化亜鉛粒子内部にも導入されているので、上記のような剥離の問題もなく、また粒子が割れた場合にも、新たな露出面にAlの酸化物等が存在し再凝集も防止され、常に安定的に分散したものが得られるのである。
【0018】
本発明においては、Al等は、酸化物若しくは水酸化物の形態でその1種又は2種以上が含有されるが、その含有量は、Al又はSiの酸化物又は水酸化物として酸化亜鉛に対し質量比で0.1〜20%、好ましくは0.1〜10%である。Alの酸化物等の含有量があまり少なく0.1%未満では、その分散性向上効果が充分に得られず、また添加量があまり過大で20%を越えて添加しても、その効果がさらに大きくなることはなく、逆に酸化亜鉛の有効量が少なくなるため酸化亜鉛本来の紫外線遮蔽効果が低下することになり好ましくない。なお、この含有量は、AlとSiを併用する場合は、その合計量として計算した値である。
【0019】
本発明の酸化亜鉛微粒子は、また、嵩密度が0.25g/ml以下である。
ここで嵩密度は、JIS K5101に基づき測定された値であるが、この値が0.25g/ml以下と、きわめて低い値であることは、酸化亜鉛の真密度(5.6)を考慮すると、その空間占有率がわずか4.4%以下と非常に小さいことを意味する。すなわち、本発明の酸化亜鉛微細粒子は、ミクロのレベルで考察すると、空間を極めて疎な状態で占拠していることを意味し、いわば空間中にバラバラの状態で存在していると言えるのである。このため、本発明の酸化亜鉛粒子は、きわめて分散し易い状態であることにより特徴づけられるのである。
【0020】
更に本発明の粒子は、実質的に酸化亜鉛であることにより特定される。
実質的に酸化亜鉛であるとは、その粉末のX線回折による主たるピークが、酸化亜鉛のものであればよいことを示し、酸化亜鉛の他に、合成時に混入した不純物、原料に含まれる不純物等を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の酸化亜鉛微粒子は、その分散性が極めて優れたものであるが、分散性の評価方法としては、次に示す測定方法が用いられる。
【0022】
1.試料の酸化亜鉛1.5gを精秤し、10%PVA/0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム溶液50gに加え、ホモジナイザー(日本精機製作所社製、エースホモジナイザーAM−7型)で10分(×15000rpm)分散し、酸化亜鉛粒子の分散液を得る。
【0023】
2. オートアプリケーター(井元製作所社製)上に50μmのアプリケーターをセットし、PETフィルム(厚さ100μm)をセットする。適量の上記酸化亜鉛粒子の分散液を、当該PETフィルム上にのせ、オートアプリケーターのスイッチを入れ塗布を開始する。送り速度は、目盛20に設定する。かくしてフィルムの端まで分散液を塗布したら、スイッチを切る。
【0024】
3. 塗膜を1日乾燥させた後、その厚さをマイクロメーターで測定する。膜の厚さ(約5〜10μm)が揃っていて、一定な部分を切り出し、分光器(日本分光社製、V−570 ST型)内の積分球の入射光が入る部分に試験片を貼り付け、透過率を測定する。
【0025】
以上のごとくして測定された透過率においては、可視光透過率が高く、紫外光透過率が低いものほど酸化亜鉛粒子が細かく分散されていることを示す。
【0026】
本発明の酸化亜鉛微粒子は、上記のごとくして評価される粒子の分散性がきわめて良好である。この分散性向上のメカニズムは、現在のところ完全には明確ではないが、本発明者らは、一応以下のようであろうと推察している。すなわち、酸化亜鉛粒子にAl あるいはSiの酸化物若しくは水酸化物が含まれることにより、当該粒子表面が不活性となり、粒子同士の凝集性が減少するとともに、媒体との親和性が向上するためではないかと推察している。
【0027】
本発明に係わる酸化亜鉛の製造方法としては、特に限定するものではないが、例えば以下の方法が採用される。すなわち、酸化亜鉛を含む水スラリーに二酸化炭素ガスを吹込み、塩基性炭酸亜鉛を合成する際に、水分散性のアルミニウム水酸化物、アルミニウム酸化物若しくは水分散性のケイ素水酸化物、ケイ素酸化物を添加し、得られた当該塩基性炭酸亜鉛スラリーを、流動層乾燥、媒体流動層乾燥、気流乾燥及又は噴霧乾燥した後、加熱分解することにより酸化亜鉛を製造する方法が好ましい。
【0028】
原料として用いられる酸化亜鉛としては、所謂酸化亜鉛であればどのようなものであってもよく、例えば、亜鉛を溶融・蒸発させ気相で酸化するフランス法、亜鉛鉱石を仮焼・コークス還元・酸化するアメリカ法、亜鉛塩溶液にソーダ灰を加えて塩基性炭酸亜鉛を沈殿させ、乾燥・焼成する湿式法(加熱分解法)等のいずれで製造したものでもよいが、高純度の酸化亜鉛微粒子を得るためには、純度の高い酸化亜鉛を用いることが好ましい。
【0029】
この原料酸化亜鉛を懸濁させてスラリーとする水としては、特に限定するものではなく、製品である酸化亜鉛の要求純度に応じて鉄錆等の不純物粒子を除いた上水道水、イオン交換した純水、又は蒸留水の何れを用いてもかまわない。また、導入する二酸化炭素ガスは、純粋なガスとしてそのまま使用してもよいが、場合によっては、空気や窒素等の希釈ガスにより適当な濃度に希釈して使用することも可能である。
【0030】
塩基性炭酸亜鉛生成反応を行うための装置としては、特に限定するものではないが、例えば撹拌手段、加熱手段、ガス導入・分散手段、及びAlの酸化物等の導入手段を備え、酸化亜鉛粒子を沈殿させることなく浮遊させてスラリー状態に保持し、この中へ二酸化炭素ガス及びAlの酸化物等を導入して、Alの酸化物等の粒子の存在下に酸化亜鉛粒子と二酸化炭素ガスと充分接触せしめて反応を遂行しうる形式の撹拌槽型の反応装置が好ましい。
【0031】
原料酸化亜鉛のスラリー濃度としては、少なくとも0.1〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%の比較的薄い濃度とすることが望ましい。スラリー濃度がこの範囲を超える場合は、大粒径の塩基性炭酸亜鉛が生成したり、凝集粒子が生成しやすくなり、本発明で目的とする分散性の良い微粒子とすることが困難になる。一方スラリー濃度がこれよりあまり薄い場合は、以後の乾燥工程等において除去すべき水の量が過大となり製造効率が低下しエネルギー的にも好ましくない。
【0032】
二酸化炭素ガスの導入方法としては、スラリーとガスが効果的に接触しうるものであればいかなる方法も用いられ、特に限定するものではないが、例えば反応槽底部に多孔板や散気管のごときガス分散器(スパージャ)を設置し、このスパージャを通じて二酸化炭素ガスを液中に吹き込み、さらに好ましくは撹拌羽根によりこれを細分化し、二酸化炭素ガスを微小気泡群としてスラリー中全体に、分散化して導入する方法;反応槽として密閉容器を使用し、加圧した二酸化炭素ガスを導入し、スラリー上部の自由表面からガスを吸収させる方法等の手段が採用できる。後者の場合は、撹拌によりボルテックスを形成し、当該スラリー液面の表面更新を強制的に行いガス吸収を促進することがより好ましい。
【0033】
二酸化炭素を吹き込んで塩基性炭酸亜鉛を生成させる際に、Al又はSiの酸化物若しくは水酸化物の内、1種ないしは2種を、当該酸化亜鉛に対し質量比で0.1〜20%、好ましくは0.1〜10%有するように、当該酸化物若しくは水酸化物の原料を添加し塩基性炭酸亜鉛中に含有させる。原料として特に好ましい例としては、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ等の微細粒子ゾルが挙げられ、これらを、滴下装置のごとき導入手段により反応液中に導入する。なお、その他、二酸化炭素ガスを吹込む事によりAl、Siの酸化物若しくは水酸化物を生じるものであればいかなる化合物を用いても良い。これらのコロイダルシリカ等は、二酸化炭素ガスの供給速度に合わせて、滴下等の手段でほぼ連続的に導入することが好ましい。かくして、塩基性炭酸亜鉛の粒子が生成・成長する近傍には、Alの酸化物等の微細ゾル粒子が常に存在するので、当該粒子成長は、Alの酸化物等の微細粒子を取り込むように行われ、かくして形成される塩基性炭酸亜鉛粒子内部にはAlの酸化物等が存在することになると考えられる。
【0034】
撹拌手段としては、通常の撹拌機、例えば櫂型撹拌機、プロペラ型撹拌機、タービン型撹拌機等のいずれもが好適に使用される。
【0035】
本発明の塩基性炭酸亜鉛生成反応は、実際には種々の方式によって実施することができるが、例えば、反応槽にまず酸化亜鉛スラリーを仕込んでおき、これに二酸化炭素ガスを連続的に供給して塩基性炭酸亜鉛スラリーを生成させる半連続法(半回分法);酸化亜鉛スラリーと二酸化炭素ガスの両者を連続的に反応槽に供給して塩基性炭酸亜鉛スラリーを生成させ、当該生成した塩基性炭酸亜鉛スラリーを連続的に反応槽から溢流させる等して抜き出す連続法等の方法が好ましく採用される。
【0036】
塩基性炭酸亜鉛生成反応の反応温度としては、特に限定するものではないが、10〜80℃、好ましくは20〜60℃である。反応自体は、温度が高い程高速で進行するが、二酸化炭素ガスの水に対する溶解度は、温度が高くなると減少し、液中のガス濃度は低下する。従って、反応温度は、上記した温度範囲より低くても、 高くても、総括的な反応速度が遅くなり好ましくない。また、反応時間(連続法の場合は、反応槽における平均滞留時間)は、反応温度、導入される二酸化炭素濃度等により変わりうるが、通常10分〜10時間、好ましくは30分〜5時間程度である。なお、温度保持のため、反応器は、加熱手段や保温手段及び温度制御手段を備えることも好ましい。
【0037】
本発明においては、以上の塩基性炭酸亜鉛生成反応により得られた塩基性炭酸亜鉛を含むスラリーを流動層乾燥、媒体流動層乾燥、気流乾燥及又は噴霧乾燥等により乾燥し、水分を除去して乾燥粉末とする。
【0038】
この場合、塩基性炭酸亜鉛を含むスラリーのスラリー濃度は、かなり低いので、これをそのまま乾燥するのは熱エネルギー経済上望ましくない。従って、好ましくは、予め当該スラリーを濃縮、特に機械的手段により濃縮することが望ましい。
【0039】
スラリーの濃縮度については、当該濃縮スラリーが流動性を保持し、流動層乾燥器等に微粒化して供給・処理される範囲であれば特に制限はないが、一般的にはスラリー濃度として20〜50質量%、好ましくは20〜45質量%、さらに好ましくは25〜40質量%の範囲であることが取扱い上及び経済性の点から望ましい。
【0040】
濃縮のための機械的手段としては、特に限定するものではないが、シックナー等を用いる沈殿濃縮、遠心沈降機を用いる遠心沈降、液体サイクロンを用いる遠心分級等が好ましく使用され、所望の濃縮度や処理量等に応じて最適な装置を採用することができる。
【0041】
本発明においては、塩基性炭酸亜鉛スラリーは、以上のごとく、好ましくは予め濃縮され、流動層乾燥器、媒体流動層乾燥器、気流乾燥器及又は噴霧乾燥器等のごとき乾燥装置に供給され乾燥される。供給されたスラリーは、かかる乾燥装置内で、微細粒子を含む液滴となり、これが乾燥用の熱風により流動層を形成し、浮遊しながら乾燥されるか(流動層乾燥、媒体流動層乾燥)、又は熱風により搬送されながら極めて短時間で乾燥され(気流乾燥及又は噴霧乾燥)、塩基性炭酸亜鉛の乾燥粉末が得られる。
【0042】
乾燥装置としては、最も分散された塩基性炭酸亜鉛の乾燥微粒子が得られる点で噴霧乾燥器が特に好ましい。噴霧乾燥器を使用する場合の噴霧機としては、回転円板、二流体ノズル、加圧ノズル等が適宜採用でき、また乾燥用熱風温度は、入口で200〜300℃、出口で100〜150℃程度にすることが好ましい。
【0043】
最後に当該乾燥された塩基性炭酸亜鉛を加熱分解(焼成)し酸化亜鉛とする。
加熱分解温度は、塩基性炭酸亜鉛を分散性の良い微粒子状の酸化亜鉛に分解する温度で、200〜1000℃、好ましくは200〜500℃、さらに好ましくは250〜350℃の温度が望ましい。これよりあまり温度が低いと分解が不十分になり、またこれよりあまり温度が高すぎると凝集や焼結により粒子が成長しすぎることなり、何れも分散性が悪くなるため好ましくない。加熱分解時間は、処理量、加熱温度、加熱炉の型等によっても異なりうるが通常30分〜20時間、好ましくは1〜10時間程度である。
【0044】
加熱分解は、空気等の酸化性雰囲気下で、塩基性炭酸亜鉛粒子を上記温度に加熱しうる炉により行われる。加熱炉としては、特に限定するものではなく、例えば箱形炉、回転炉(ロータリーキルン)、移動層炉、流動層炉、電気炉、ガス加熱炉、赤外線加熱炉等が好適に用いられる。
【0045】
加熱分解後の酸化亜鉛粒微粒子は、分散性に優れており、そのまま本発明の化粧品等の紫外線遮蔽用に使用することができる。なお、所望により、ボールミル、ロッドミル、アトリションミル、ジェットミル、ミクロンミル等の微粉砕機により更に粉砕処理してから使用することもできる。これらの微粉砕機は、配合する化粧品等や塗料などに応じて適宜選択される。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。ただし、これらは単なる実施の態様の一例であり、本発明の技術的範囲がこれらによりなんら限定されるものではない。
【0047】
(実施例1)
(1)フランス法によって得たJIS K1410 1種酸化亜鉛と、イオン交換水を用いて62.5g/Lの酸化亜鉛スラリーを調製した。このスラリーを、内容積10Lの、底部に散気管を装備し、撹拌機、スラリー供給手段及び保温機構のついた反応容器に5.6L仕込み、温度を30℃に保ち撹拌下に、5L/分で二酸化炭素ガスを吹込んだ。このガスを吹込む間コロイダルシリカ溶液(濃度12.5g-SiO2/L)1.4Lを2時間かけて連続して滴下供給した。2時間後に吹き込みを終了し、生成物をXRD分析して塩基性炭酸亜鉛が生成していることを確認した。
【0048】
(2)このスラリーを2時間静置した後、上澄液を捨て、スラリー濃度20%の塩基性炭酸亜鉛スラリーを得た。上澄液を分析してシリカ分のないことを確認した。すなわち供給したシリカ分は、すべて塩基性炭酸亜鉛中に導入されたことが確認された。このスラリーを入口ガス温度250℃、出口ガス温度130℃に調整されたスプレードライヤーにフィードし、塩基性炭酸亜鉛粒子を得た。この粒子の粒子径は約100μmであった。
【0049】
(3)この粒子を250℃に加熱した箱型炉に装入し5時間加熱分解し、酸化亜鉛微細粒子を得た。
【0050】
得られた酸化亜鉛の比表面積をBET法によって測定し、50m2/gの値を得た。この比表面積から計算される粒子径は0.02μmである。また、酸化亜鉛中のシリカ分を分析し4.8%のシリカ分を含むことを確認した。JIS K5101に基づいて測定した嵩密度は、0.20g/mlであった。
【0051】
次にこの得られた酸化亜鉛微細粒子の分散性を評価するために、上述の分散性評価試験を行ない、透過率を測定した。結果を表1に示す。表から明らかなように、本発明の酸化亜鉛は、可視光透過率、紫外線遮蔽能が高く分散性に優れていることが分かる。
【0052】
(比較例1)
(1)フランス法によって得たJIS K1401 1種酸化亜鉛、イオン交換水を用いて50g/Lの酸化亜鉛スラリーを準備した。このスラリーを、内容積10Lの撹拌機と底部に散気管を装備した反応容器に7L仕込み、撹拌下5L/分で二酸化炭素ガスを吹込んだ。2時間後に吹き込みを止め、生成物をXRD分析して塩基性炭酸亜鉛が生成していることを確認した。
【0053】
(2)このスラリーを2時間静置した後、上澄液を除き、スラリー濃度20%の塩基性炭酸亜鉛スラリーを得た。このスラリーを入口ガス温度250℃、出口ガス温度130℃に調整されたスプレードライヤーにフィードし、塩基性炭酸亜鉛粒子を得た。この粒子の粒子径は、約110μmであった。
【0054】
(3)この粒子を250℃に加熱した箱型炉に装入し5時間加熱分解し、酸化亜鉛微細粒子を得た。
【0055】
得られた酸化亜鉛の比表面積をBET法によって測定し47m2/gの値を得た。この比表面積から計算される粒子径は0.02μmである。JIS K5101に基づいて測定した嵩密度は0.30g/mlであった。次にこの得られた酸化亜鉛微細粒子の分散性を測定するために、上述の分散性評価試験を行ない透過率を測定した。結果を下表1に示す。表から明らかなように、従来の方法を用いて製造した酸化亜鉛は、AlやSiの酸化物等を含有せず、また嵩密度も高いため実施例1に比べ可視光透過率は高いが、紫外線遮蔽能が低く、分散性に劣ることが分かる。
【0056】
(比較例2)
比較例1で得られた酸化亜鉛を用い、シリカ被覆量が5質量%となる計算量のケイ酸ナトリウム水溶液に加え、この溶液を強く撹拌してスラリー状態にした後塩酸を徐々に加えてpH7まで下げケイ素酸化物を析出させた。この液を1晩静置後濾過洗浄、乾燥して表面をケイ素酸化物で被覆した酸化亜鉛粉末を得た。この酸化亜鉛粉末の分散性評価試験を行い、透過率を測定した。結果を下表1に示す。表から分かるように酸化亜鉛の表面のみをシリカで被覆したものは、実施例1に比べ可視光透過率は高いが、紫外線遮蔽能が低く、分散性に劣ることが分かる。
【0057】
(参考例1)(1)フランス法によって得たJIS K1410 3種酸化亜鉛、実施例1で得られた上澄液及び純水を用いて50g/Lの酸化亜鉛スラリーを調製した。このスラリーを内容積10Lの、底部に散気管を装備し、撹拌機、スラリー供給手段及び保温機構のついた反応容器に5.6L仕込み、温度を40℃に保ち撹拌下10L/分で二酸化炭素ガスを吹込んだ。このガスを吹込む間コロイダルアルミナ溶液(濃度12.5g-Al2O3/L) 1.4Lを2時間かけて連続して供給した。2時間後に吹き込みを終了し生成物をXRD分析して塩基性炭酸亜鉛が生成している事を確認した。
【0058】
(2)このスラリーを2時間静置した後、上澄液を捨て、スラリー濃度27%の塩基性炭酸亜鉛スラリーを得た。このスラリーを入口ガス温度250℃、出口ガス温度130℃に調整されたスプレードライヤーにフィードし、塩基性炭酸亜鉛粒子を得た。この粒子の粒子径は約400μmであった。
【0059】
(3)当該粒子を300℃に加熱したレトルト炉(レトルトは10rpmで回転させた)に装入し5時間加熱分解し、酸化亜鉛微細粒子を得た。得られた酸化亜鉛の比表面積をBET法によって測定し43m2/gの値を得た。この比表面積から計算される粒子径は0.02μmである。また、酸化亜鉛中のアルミナ分を分析し0.9%のアルミナを含むことを確認した。JIS K5105に基づいて測定した嵩密度は0.3g/mlであった。
【0060】
次にこの得られた酸化亜鉛微細粒子の分散性を評価するために上述の分散性評価試験を行ない透過率を測定した。結果を下表1に示す。表から明らかなように本発明の酸化亜鉛は、可視光透過率、紫外線遮蔽能が高く分散性に優れていることが分かる。
【0061】
(実施例2)(1)フランス法によって得たJIS K1410 1種酸化亜鉛、イオン交換水を用いて62.5g/Lの酸化亜鉛スラリーを調製した。このスラリーを内容積10Lの底部に散気管を装備し、撹拌機、スラリー供給手段及び保温機構のついた反応容器に5.6L仕込み、温度を30℃に保ち撹拌下5L/分で二酸化炭素ガスを吹込んだ。このガスを吹込む間コロイダルシリカ溶液(濃度25g-SiO2/L)1.4Lを2時間かけて連続して供給した。2時間後に吹き込みを終了し生成物をXRD分析して塩基性炭酸亜鉛が生成していることを確認した。
【0062】
(2)このスラリーを2時間静置した後、上澄液を捨て、スラリー濃度20%の塩基性炭酸亜鉛スラリーを得た。上澄液を分析してシリカ分のないことを確認した。このスラリーを入口ガス温度250℃、出口ガス温度130℃に調整されたスプレードライヤーにフィードし、塩基性炭酸亜鉛粒子を得た。この粒子の粒子径は約100μmであった。
【0063】
(3)この粒子を250℃に加熱した箱型炉に装入し5時間加熱分解し、酸化亜鉛微細粒子を得た。得られた酸化亜鉛の比表面積をBET法によって測定し55m2/gの値を得た。この比表面積から計算される粒子径は0.02μmである。また、酸化亜鉛中のシリカ分を分析し9%のシリカ分を含むことを確認した。JIS K5105に基づいて測定した嵩密度は0.20g/mlであった。
【0064】
次にこの得られた酸化亜鉛微細粒子の分散性を測るために上述の分散性評価試験を行ない透過率を測定した。結果を下表1に示す。表から明らかなように本発明の酸化亜鉛は、可視光透過率、紫外線遮蔽能が高く分散性に優れていることがわかる。
【0065】
【表1】
【0066】
【発明の効果】
表から明らかなように本発明の酸化亜鉛微粒子は、可視光透過率、紫外線遮蔽能が高く分散性に優れており、分散性に優れた紫外線遮蔽用の酸化亜鉛微粒子であることがわかる。従って化粧品や塗料などの紫外線遮蔽と同時に透明性が必要な各種用途に好適に用いられる。
Claims (1)
- 比表面積から計算された平均1次粒子径が0.03μm以下である酸化亜鉛微粒子であって、当該粒子内部にも、Al あるいはSiの酸化物若しくは水酸化物の微細粒子の1種ないしは2種以上を、酸化亜鉛に対し質量比で0.1〜20%含み、かつ、嵩密度が0.25g/ml以下である、塩基性炭酸亜鉛を熱分解して得られた実質的に酸化亜鉛微粒子からなり、当該酸化亜鉛微粒子は、酸化亜鉛水スラリーに二酸化炭素を吹き込んで当該塩基性炭酸亜鉛を生成させる際に、Al あるいはSiの酸化物若しくは水酸化物の微細ゾル粒子の存在下に塩基性炭酸亜鉛を生成・成長させ、当該微細粒子を取り込ませてなることを特徴とする、分散性に優れた紫外線遮蔽用酸化亜鉛微粒子。
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