JP4756547B2 - 導電性高分子繊維の製造方法、およびそれにより得られる導電性高分子繊維 - Google Patents

導電性高分子繊維の製造方法、およびそれにより得られる導電性高分子繊維 Download PDF

Info

Publication number
JP4756547B2
JP4756547B2 JP2006172727A JP2006172727A JP4756547B2 JP 4756547 B2 JP4756547 B2 JP 4756547B2 JP 2006172727 A JP2006172727 A JP 2006172727A JP 2006172727 A JP2006172727 A JP 2006172727A JP 4756547 B2 JP4756547 B2 JP 4756547B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
conductive polymer
fiber
polymer fiber
alcohol
conductive
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2006172727A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008002012A (ja
Inventor
宏明 三浦
洋一郎 近藤
秀典 奥崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
University of Yamanashi NUC
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
University of Yamanashi NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nissan Motor Co Ltd, University of Yamanashi NUC filed Critical Nissan Motor Co Ltd
Priority to JP2006172727A priority Critical patent/JP4756547B2/ja
Publication of JP2008002012A publication Critical patent/JP2008002012A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4756547B2 publication Critical patent/JP4756547B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

本発明は、導電性高分子繊維の製造方法、およびそれにより得られる導電性高分子繊維に関する。さらに詳細には、例えばモーターや油圧式、空気圧式アクチュエータのように、電気や他の入力エネルギーを機械的エネルギーに変換して駆動することのできる成分を含んだ導電性高分子繊維に関する。
従来、一般的に用いられている機械式の駆動源として、モーター、油圧・空気圧式アクチュエータなどがあるが、これらは概ね金属からなるものが多く、質量、スペースを大きくとり、また必要な動力源として、多くのものが多大なエネルギーを必要とする。
また、刺激に応答するピロール系高分子を用いた材料の電気変形方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、軽量・省スペースで得られる有機材料を用いたアクチュエータにおいて、特許文献2などに記載の導電性高分子は、電気化学的な酸化還元反応を利用して、有機材料の伸縮を前記課題に適用しようとするものである。しかしながら、これらの2文献で得られた形状は、具体的には、フィルム状であり、細くスリットしたものを用いても、織物や編み物とした際には、しなやかさが得られない。
その他、特許文献3などに記載されているゲルと溶媒との組合せによるアクチュエータの例では、そもそも溶媒中で駆動するゲルアクチュエータを空気中で駆動させるため、溶媒槽ごとシステムとして抱えることになり、電解液漏れや、電気分解による性能の低下が起こる可能性がある。
また、特許文献4などに記載されているゲルアクチュエータの例として、得られた導電性高分子ゲルを2種類の溶媒中に交互に浸漬することによるアクチュエート機能が示されているが、これもゲルであるためにその材料中に溶媒を保持することが必要であり、空気中での駆動には、大掛かりなシステムが必要となる。
特開平11−159443号公報 特開2004−162035号公報 特開2004−188523号公報 特開2005−145987号公報
本発明は、前記の問題点に鑑みて、これらのアクチュエート機能を持つ材料を繊維形状として得る製造方法の工夫をすることにより、従来の繊維が用いられる布帛、織物、編み物などに対し、新たな機能として所望の変形を省スペース・省エネルギーで付与できる導電性高分子繊維を得ることを課題とする。
また、本発明は、従来の有機アクチュエータにおける前記課題に着目してなされたものであって、入力されたエネルギーを機械的な出力に、より効率的に変換し駆動させる導電性高分子繊維を提供することを目的とする。
本発明は、導電性高分子、界面活性剤および/またはアルコールを含む混合溶液を、混合溶液中の溶媒を脱溶媒する脱溶媒液中に押し出すことにより導電性高分子繊維を得る、導電性高分子繊維の製造方法に関する。
また、本発明は、前記製造方法で得られた導電性高分子繊維に関する。
本発明の導電性高分子繊維の製造方法によれば、アクチュエート機能を持った導電性高分子繊維を提供することができる。
前記製造方法により得られた導電性高分子繊維によれば、従来の繊維材料と置き換えることにより、繊維製品に新たなアクチュエート機能、すなわち、従来より大きな導電性能を付与することが可能になる。
(導電性高分子繊維の製造方法)
本発明に係る導電性高分子繊維の製造方法は、導電性高分子、界面活性剤および/またはアルコールを含む混合溶液を、混合溶液中の溶媒を脱溶媒する脱溶媒液中に押し出すことにより導電性高分子繊維を得ることを特徴としている。
本発明で用いる導電性高分子、界面活性剤および/またはアルコールを含む混合溶液は、前記溶質を、例えば水あるいは有機溶剤などに溶解または分散したものである。
本発明で用いる混合溶液は、導電性高分子溶液に、添加物として界面活性剤および/またはアルコールを加え、およそ5〜15分撹拌した溶液を用いる。この溶液を紡糸して繊維化された導電性高分子は、3次元的なネットワークを形成するので、従来の繊維に比較して、非常に良好な導電性を示す導電性高分子繊維が安定して得られる。また、導電性が向上することにより、アクチュエート性能も合わせて大きく向上する。
前記製造方法に用いる混合溶液中の導電性高分子は、導電性を示す高分子であれば特に制限されることはないが、例えば、アセチレン系、複素5員環系(モンマーとして、ピロールの他、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−ドデシルピロールなどの3−アルキルピロール;3,4−ジメチルピロール、3−メチル−4−ドデシルピロールなどの3,4−ジアルキルピロール;N−メチルピロール、N−ドデシルピロールなどのN−アルキルピロール;N−メチル−3−メチルピロール、N−エチル−3−ドデシルピロールなどのN−アルキル−3−アルキルピロール;3−カルボキシピロールなどを重合して得られたピロール系高分子、チオフェン系高分子、イソチアナフテン系高分子など)、フェニレン系、アニリン系の各導電性高分子やこれらの共重合体、誘導体から選択された少なくとも1つが挙げられる(図1:アセチレン系導電性高分子、図2:ピロール系導電性高分子、図3:チオフェン系導電性高分子、図4:フェニレン系導電性高分子、図5:アニリン系導電性高分子)。なかでも、安定性や信頼性が高く、入手も容易であることから、ピロール系高分子またはチオフェン系高分子が好適に用いられる。
これらの高分子材料のうち、特に繊維として得やすい材料としては、チオフェン系高分子のポリ3,4−エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)にポリ4−スチレンサルフォネート(PSS)をドープしたPEDOT/PSS(Bayer社、Baytron P(登録))が挙げられる。
さらに導電性高分子において、その導電性にドーパントが劇的な効果をもたらす。ここで用いられるドーパントとしては、塩化物イオン、臭化物イオンなどのハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロ硼酸イオン、六フッ化ヒ酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、チオシアン酸イオン、六フッ化ケイ酸イオン、燐酸イオン、フェニル燐酸イオン、六フッ化燐酸イオンなどの燐酸系イオン、トリフルオロ酢酸イオン、トシレートイオン、エチルベンゼンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオンなどのアルキルベンゼンスルホン酸イオン、メチルスルホン酸イオン、エチルスルホン酸イオンなどのアルキルスルホン酸イオン、ポリアクリル酸イオン、ポリビニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸イオン、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)イオンなどの高分子イオンのうち、少なくとも一種のイオンが使用される。なかでも、高い導電性を容易に調整できることから、ポリスチレンスルホン酸イオンが好ましい。ドーパントの添加量は、導電性に効果を与える量であれば特に制限はされないが、通常、導電性高分子100質量部に対し、3〜50質量部、好ましくは10〜30質量部の範囲である。
本発明で用いる界面活性剤としては、特に限定されるものではなく、公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を挙げることができる。界面活性剤は、これらの2種以上の混合物から選択された少なくとも1つの界面活性剤を用いることができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば第4級アルキルアンモニウム塩、ハロゲン化アルキルピリジニウムなどを挙げることができる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸またはそのエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸またはその塩、アルキルベンゼンスルホン酸またはその塩、アルキルナフタレンスルホン酸またはその塩、アルキルスルホコハク酸またはその塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸またはその塩、脂肪酸またはその塩、ナフタレンスルホン酸またはそのホルマリン縮合物などを挙げることができる。なかでも、化学的安定性から、アルキルベンゼンスルホン酸が好ましい。
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、アミンオキサイド、加水分解コラ−ゲンなどを挙げることができる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、あるいはこれらの誘導体などを挙げることができる。
これらの界面活性剤の中でも、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸が、導電性高分子繊維中の3次元的なネットワーク形成が向上するため特に好ましく使用できる。
本発明で用いるアルコールは、特に限定されるものではなく、公知の1価アルコールおよび多価アルコールを挙げることができる。アルコールは、単独であるいはこれらの2種以上の混合物として用いることができる。
1価アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどの分枝状あるいは直鎖状アルコール、環状アルコール、ポリマー状アルコールあるいはこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビト−ルなどの鎖状多価アルコール、グルコース、スクロールなどの環状多価アルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールなどのポリマー状多価アルコールあるいはこれらの2種以上の混合物を挙げることができる。
これらのアルコールの中でも、特に炭素数3以上の1価アルコールもしくは、多価アルコールであることが好ましく、さらに、1価のアルコールとしては、炭素数3〜5のものが、多価アルコールとしては、価数が2〜3の範囲のものが望ましい。その具体例としては、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましく使用できるが、なかでも多価アルコールであるエチレングリコールやポリエチレングリコールは次の理由から好適である。エチレングリコールは低濃度でも、導電性高分子の3次元的なネットワークを形成させる効果があり、また、揮発性がないため特に好ましく使用できる。また、ポリエチレングリコールの分子量は特に限定されないが、分子量400のものより分子量1000のものの方が、添加量が少なくても3次元的なネットワークを形成する能力が高いので好ましい。なお、ポリエチレングリコールとは、モノマーの価数として2価にあたり、ポリエチレングリコール自体は、さらに多数になるが効果は発現するものである。
本発明において、界面活性剤とアルコールは、単独で使用することができるが、両者を任意の割合で組み合わせて使用することもできる。界面活性剤とアルコールを併用する場合の両者の比率は、特に限定されるものではない。
次に、これらの界面活性剤および/またはアルコールは、前記混合溶液中の組成で、導電性高分子に対し質量比で、60:1〜1:60であることが好ましい。混合溶液の組成をこの範囲とすることで、抵抗を下げるため繊維径を太くさせたり、他の導電材などを導電性能、アクチュエート性能を飛躍的に向上させたりすることができる。添加物の量がこの範囲より小さくなると、もはや3次元ネットワークを形成するための分子鎖拡張効果は得られない。また、この範囲より大きくなると、今度は混合溶液のゲル化が起こり始めるため、繊維化することが困難になる。さらには、ゲル化せずに紡糸できたとしても、今度は脱溶媒時に、これらの添加物の脱離痕が、空孔として残り、結果として導電性能を低下させることになる。
次に、前記混合溶液の溶媒として、水またはアセトンなどの有機溶媒を主成分とすることにより、紡糸工程で導電性高分子繊維を容易に得ることができる。これは、導電性高分子、界面活性剤および/またはアルコールを含む混合溶液から脱溶媒をする際に、溶媒が水であることで、界面活性剤および/またはアルコールが導電性高分子の分子鎖を広げる効果が、より大きく得られるためである。分子鎖の広がりが大きくなりすぎると、今度はゲル化が起こってしまうため、溶媒を水とした場合には、特に前述の混合溶液の組成範囲とすることが好ましくなる。
本発明の製造方法では、前記の混合溶液を湿式紡糸に用いることで、導電性高分子繊維を得ることができる。
なお、これらの添加物は、本製造方法中で繊維中に留まることで、導電性能を向上させるものではなく、繊維中に残留すると、逆に導電性能の悪化を招く。
本発明の導電性高分子繊維中には、この製造方法で用いる添加物の痕跡を熱重量分析により、確認することができる。
例えば、エチレングリコールを用いた場合には、導電性高分子繊維とその中に残留している添加物の合計質量に対し、100〜250℃付近にエチレングリコール(沸点198℃)の蒸発による15質量%程度の質量の減少が確認される。これは導電性高分子繊維の中からエチレングリコールが蒸発、脱離することで15%程度の質量減少が起こることを示している。すなわち、導電性高分子繊維中のエチレングリコールが全部脱離したこと、いいかえれば導電性高分子繊維中に15質量%程度の残留添加物があったこと(添加物残量が15質量%程度であったこと)を意味し、残りの85質量%程度の残量は導電性高分子繊維の質量を表すものである。
このとき、添加物の残量は、導電性高分子繊維とその中に残留している添加物の合計質量に対し、20質量%以下となっていることが好ましい。添加物は、導電性能としては、不純物として働き、導電率を下げる要因となるため、残量を、導電性高分子繊維とその中に残留している添加物の合計質量に対し、20質量%以下とすることで、より性能を向上させることができる。
この意味からも、前記製造方法で得られた繊維を脱溶媒液中から引上げ、真空乾燥を行なうことは、これらの添加物を導電性高分子繊維中から除去するために好ましく、この真空乾燥工程により、導電性能およびアクチュエート性能は、より向上する。
例えば、得られた導電性高分子繊維を100〜200℃の真空乾燥炉中で、1〜5時間程度加熱、乾燥することで、添加物の残量を減らすことができる。たとえば、エチレングリコールを用いた場合では、140℃で1時間乾燥すると、残量は、12質量%から2質量%となる。
以下、図面に基づいて導電性高分子繊維の製造方法を説明する。
図6は、本発明に係わる湿式紡糸装置の模式図である。図6に示される湿式紡糸装置20おいて、例えば、PEDOT/PSSの水分散液(Bayer社Baytron P(登録))を湿式紡糸用シリンジ21から口金25を通じて押し出し、押し出された混合溶液10をアセトンなどの脱溶媒液が入った脱溶媒槽22を通過させる。該混合溶液10は、該脱溶媒槽22中で溶媒が除かれ、溶質である導電性高分子の凝集が起こり、繊維化が起こり導電性高分子11を得る。脱溶媒槽22を通過させた後、繊維送り器23を経て乾燥され、繊維巻き取り器24で巻き取って最終的な導電性高分子繊維11を得る。
特に限定されるものではないが、前記混合溶液10の脱溶媒槽22への押し出しに用いる口金25は、内径が50μm〜1000μm程度のものを用いる。
また、前記混合溶液の押し出し速度は、口金25からの吐出口1ヶ所あたり、0.1μL/min.〜100μL/min.で吐出することで導電性高分子繊維11を得ることができる。
(導電性高分子繊維)
本発明の導電性高分子繊維は前記製造方法で得られる。
一般的な繊維材料においては、図7に示すような、均一な材料からできているものや、断面で見て芯鞘構造のようなもの(図8)、サイドバイサイド構造のようなもの(図9)、海島(多芯)構造のようなもの(図10)、断面が円形ではない変形断面形状(図11、12)、中空構造(図13)などがある。これらは、繊維の機能化の一つの手段として、繊維自体が自然によじれた形状になり、風合いを変え、繊維の表面積を大きくして軽量化・断熱性を狙うなどに用いられる。
本発明の意図するところは、これらの繊維の静的特性を変化させるための工夫ではなく、導電性能、アクチュエーションなどの動的な性能の向上を狙って、繊維の製造方法の工夫により、前記性能の向上を実現することにある。
本発明において繊維とは、一般に繊維製品に用いられる程度の太さのものであり、概ね1〜500μm程度の直径を持つものをいう。太さが数mmに及ぶものでは、このような機能を持つものも見受けられるが、これらの原理や製品を、編物、織物などに用いることができない。
本発明の導電性高分子を用いて繊維変位体を構成することができる。繊維変位体では、従来は難しかった編物、織物などにもアクチュエーション機能を付与できる。もちろん、数mmの太さでは用いることができないような細い空間での駆動も、本導電性高分子繊維では可能である。
また、特に限定されるものではないが、得られた導電性高分子繊維に、塗布またはコーティングなどの公知の方法で、導電性高分子繊維の表面に導電性高分子と異なる樹脂材料などを連続的に積層し図8〜10、14〜16のような断面形状とすることも導電性高分子繊維をアクチュエータとして用いる際に、所望の方向へ動かす手段として好適である。
導電性高分子と異なる樹脂材料としては、特に制限はされないが、例えば、繊維を形成するための樹脂材料、さらには熱可塑性樹脂であることが好ましい。これは、導電成分として主に高分子材料を用いることもあり、より似た材質のものと組み合わせることで、導電性高分子の機能をできるだけ阻害すること無く、繊維形状であることが可能になるからである。さらに、これを熱可塑性樹脂とすることで、その後、何がしかの製品化して用いる際に、容易にその所望の形状に成形して用いることができるからである。具体例として、ナイロン6,ナイロン66などのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、共重合成分を含むポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、アクリルエマルジョン、ポリエステルエマルジョンなどを単独あるいは混合して用いることもできる。
導電性高分子繊維がこれらの積層構造をとった場合、導電成分である導電性高分子などに通電した際、これらの高分子が縮むことにより、繊維の表面に積層された材料との長さの差が生じることで、この繊維をマクロ的に見た際に、ある方向に曲がる挙動(アクチュエーション)を示す。
これらの導電性高分子繊維のアクチュエーション挙動の一例としては、1本当たりの直径10μm、長さ5〜10cm程度の繊維を1000本程度束ねたもので、一般に用いられている電圧(1〜20V程度)で、収縮および伸び(およそ元の位置に戻る)を繰返し行わせることができる。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
(実施例1)
導電性高分子成分としてPEDOT/PSS(スタルク製Baytron P(登録)、溶質量1.3質量%、残部は水)を100g、添加物としてエチレングリコール(関東化学製:製品番号14114−01)1.3gをサンプル瓶に取り、スターラー上で10分間撹拌を行って混合溶液を得た。
前述の湿式紡糸法で脱溶媒槽のアセトン(和光純薬製:製品番号019−00353)中に混合溶液を、0.5mL/hの速度でマイクロシリンジ(伊藤製作所製、MS−GLL100、針部内径260μm)から押し出すことで、直径約10μmの導電性高分子繊維を得た。
熱重量分析により、得られた繊維中の添加物の痕跡を確認すると、100〜230℃の間で12質量%の減量が確認された。
(実施例2)
添加物量を、3.9gとした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例3)
添加物量を、6.5gとした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例4)
添加物量を、13.0gとした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例5)
添加物量を、78.0gとした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例6)
添加物量を、0.26gとした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例7)
添加物量を、0.13gとした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例8)
添加物量を、0.02gとした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例9)
実施例1と同様に得た導電性高分子繊維を、160℃の真空乾燥炉に1時間投入し、導電性高分子繊維を得た。
この繊維の添加物の痕跡を熱重量分析により確認すると、100〜230℃の間で1質量%の原料が確認された。
(実施例10)
導電性高分子としてポリピロール(シグマアルドリッチジャパン社、製品番号48225−2)とし、添加物であるエチレングリコールの質量を15gとした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例11)
導電性高分子としてポリアニリン(シグマアルドリッチジャパン社、製品番号52328−3)とし、添加物であるエチレングリコールの質量を15gとした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例12)
添加物をエタノール(関東化学製、14034−01)とした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例13)
添加物をイソプロピルアルコール(関東化学製、32435−01)とした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例14)
添加物をポリエチレングリコール(分子量1000、関東化学製、製品番号19225−1A)とした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例15)
添加物をドデシルベンゼンスルホン酸(関東化学製、製品番号24023−02)とした以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(実施例16)
導電性高分子成分としてPEDOT/PSS(スタルク製Baytron P(登録商標)、溶質量1.3質量%)100gに、アセトン10gを添加し、モレキュラーシーブにより脱水する工程を10回繰返し、100gのアセトン分散液を得た。この分散液を水中に押出した以外は、実施例1と同様に導電性高分子繊維を得た。
(比較例1)
PET長繊維(繊維径10μm)を比較例として用いた。
(比較例2)
実施例1の添加物を用いない溶液を湿式紡糸に用い、添加物を用いない導電性高分子繊維を得た。
(比較例3)
実施例10の添加物を用いない溶液を湿式紡糸に用い、添加物を用いない導電性高分子繊維を得た。
(比較例4)
実施例11の添加物を用いない溶液を湿式紡糸に用い、添加物を用いない導電性高分子繊維を得た。
〔評価試験1〕変位量試験
図17(評価方法1の平面図)および18(評価方法1の側面図)に示される装置を用いて評価した。
実施例1〜16および比較例1〜4によって得られた導電性高分子繊維1.0gを15cmに長さを揃えて束ね、該導電性高分子繊維11の一端をフリー41、他端を端部固定42とし、電源40と結線した直径0.025mmの銅線44(ニラコ製CU−111086)を導電ペースト(藤倉化成製D−500)でつなぎ、方眼紙上で通電試験(電圧一定10V、印加時間1分)を行った。なお、端部フリー41に結線した銅線は空中に持ち上げた。この時に動いた方向、変位量を図17、18に示す方向に対して測定した。
試料は、評価方向X軸に平行に置き、変位の最大値を表1に記載する。なお、X軸方向の変位は、試料の収縮方向(図17において、上から下)を正の値とした。
〔評価試験2〕電導度試験
実施例1〜15および比較例1〜4によって得られた導電性高分子繊維を、JIS K 7194 「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に準じて試験を行った。得られた結果の逆数を電導度(S/cm)とし、この結果を表1に示す。
Figure 0004756547
表1から、次のことがわかる。
1.電圧を印加すると、導電性高分子繊維が収縮した。
2.比較例1では、いずれの方向にも、収縮しなかった。
3.比較例2〜4では、収縮量が微量だった。
4.実施例では、導電性高分子繊維は大きく収縮した。
〔評価試験3〕繰返し通電駆動試験
実施例1で得られた導電性高分子繊維に、評価試験1の条件下で繰返しの通電試験を行なった。電圧を1分印加、4分解除の5分を1サイクルとして繰り返し印加すると、図19に示すように収縮および伸び(およそ元の位置に戻る)の挙動を繰返し示し、本導電性高分子繊維は繰返しのアクチュエート挙動を示す材料であることが認められた。
アセチレン系導電性高分子の化学式の一例である。 ピロール系導電性高分子の化学式の一例である。 チオフェン系導電性高分子の化学式の一例である。 フェニレン系導電性高分子の化学式の一例である。 アニリン系導電性高分子の化学式の一例である。 本発明に係わる湿式紡糸装置の模式図である。 従来の繊維の形状例を示す模式図である。 従来の芯鞘型繊維の形状例を示す模式図である。 従来のサイドバイサイド型繊維の形状例を示す模式図である。 従来の海島型繊維の形状例を示す模式図である。 従来の異型(三角)断面繊維の形状例を示す模式図である。 従来の異型(星形)断面繊維の形状例を示す模式図である。 従来の中空繊維の形状例を示す模式図である。 塗布またはコーティングによって得られる繊維の断面形状の一例を示す模式図である。 塗布またはコーティングによって得られる繊維の断面形状の別の例を示す模式図である。 塗布またはコーティングによって得られる繊維の断面形状のその他の例を示す模式図である。 本発明に係わる評価方法1の概略平面図である。 本発明に係わる評価方法1の概略側面図である。 本発明に係わる評価方法3の変形量を示す図である。
符号の説明
1 従来品の繊維
2a 芯鞘繊維の鞘成分
2b 芯鞘繊維の芯成分
3a サイドバイサイド型繊維の1成分
3b サイドバイサイド型繊維の3aと異なる材料からなる成分
4a 海島型繊維の海成分
4b 海島型繊維の島成分
5a 中空繊維の繊維成分
5b 中空繊維の中空部
10 混合溶液
11 導電性高分子繊維
20 湿式紡糸装置
21 湿式紡糸用シリンジ
22 脱溶媒槽
23 繊維送り器
24 繊維巻き取り器
25 口金
40 電源
41 端部フリー
42 端部固定
43 試験台
44 銅線。

Claims (8)

  1. 導電性高分子、界面活性剤および/またはアルコールを含む混合溶液を、混合溶液中の溶媒を脱溶媒する脱溶媒液中に押し出すことで、前記導電性高分子が凝集、繊維化して導電性高分子繊維を形成することを特徴とする導電性高分子繊維の製造方法。
  2. 前記導電性高分子が、アセチレン系、複素5員環系、フェニレン系、アニリン系の各導電性高分子及びこれらの共重合体、誘導体から選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項1記載の導電性高分子繊維の製造方法。
  3. 前記複素5員環系導電性高分子が、ピロール系、チオフェン系、イソチアナフテン系の各導電性高分子及びこれらの共重合体、誘導体から選択された少なくとも1つであることを特徴とする請求項2記載の導電性高分子繊維の製造方法。
  4. 前記アルコールは、多価アルコールまたは炭素数3以上の1価アルコールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性高分子繊維の製造方法。
  5. 前記界面活性剤および/またはアルコールの量は、前記導電性高分子に対し、質量比で、60:1〜1:60の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性高分子繊維の製造方法。
  6. 前記製造方法で得られた繊維を、脱溶媒液中から引上げた後に、真空乾燥を行なうことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の導電性高分子繊維の製造方法。
  7. 前記混合溶液は、水を主成分とし、前記導電性高分子、前記界面活性剤および/またはアルコールを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性高分子繊維の製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法で得られた導電性高分子繊維。
JP2006172727A 2006-06-22 2006-06-22 導電性高分子繊維の製造方法、およびそれにより得られる導電性高分子繊維 Expired - Fee Related JP4756547B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006172727A JP4756547B2 (ja) 2006-06-22 2006-06-22 導電性高分子繊維の製造方法、およびそれにより得られる導電性高分子繊維

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006172727A JP4756547B2 (ja) 2006-06-22 2006-06-22 導電性高分子繊維の製造方法、およびそれにより得られる導電性高分子繊維

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008002012A JP2008002012A (ja) 2008-01-10
JP4756547B2 true JP4756547B2 (ja) 2011-08-24

Family

ID=39006627

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006172727A Expired - Fee Related JP4756547B2 (ja) 2006-06-22 2006-06-22 導電性高分子繊維の製造方法、およびそれにより得られる導電性高分子繊維

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4756547B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100858924B1 (ko) * 2006-11-13 2008-09-17 고려대학교 산학협력단 액화천연가스의 수증기 개질반응에 의한 수소가스 제조용담지 촉매, 그 제조방법 및 상기 담지 촉매를 이용한수소가스 제조방법
JP5515089B2 (ja) * 2008-06-05 2014-06-11 日産自動車株式会社 導電性高分子繊維およびその製造方法
JP5131930B2 (ja) * 2009-02-24 2013-01-30 日産自動車株式会社 導電性高分子繊維、及びその製造方法

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01306608A (ja) * 1988-06-06 1989-12-11 Toray Ind Inc 導電性繊維の製法
JP2002212829A (ja) * 2000-11-15 2002-07-31 Kuraray Co Ltd 導電性ポリビニルアルコール系繊維及びその製造方法
US7125502B2 (en) * 2001-07-06 2006-10-24 William Marsh Rice University Fibers of aligned single-wall carbon nanotubes and process for making the same

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008002012A (ja) 2008-01-10

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Zhu et al. Effective treatment methods on PEDOT: PSS to enhance its thermoelectric performance
Bhandari Polyaniline: Structure and properties relationship
Ma et al. Morphology-dependent electrochemical supercapacitors in multi-dimensional polyaniline nanostructures
Tao Handbook of smart textiles
Palaniappan et al. Polyaniline materials by emulsion polymerization pathway
EP1918326B1 (en) Conductive composition
KR100586659B1 (ko) 유기 전극 코팅용 조성물 및 이를 이용한 고투명성 유기전극의 제조방법
JP5458264B2 (ja) 導電性ハイドロゲル、導電性乾燥ゲル、および導電性ハイドロゲルの製造方法
JP2019048982A (ja) 炭素電極を用いたアクチュエータ素子
JP4756547B2 (ja) 導電性高分子繊維の製造方法、およびそれにより得られる導電性高分子繊維
KR20130089207A (ko) 전도성 고분자 블랜드 조성물 및 이의 제조 방법
Eslah et al. Synthesis and characterization of tungsten trioxide/polyaniline/polyacrylonitrile composite nanofibers for application as a counter electrode of DSSCs
JP2017130276A (ja) 導電性薄膜、積層体、アクチュエータ素子及びその製造方法
Lapkin et al. Hybrid polyaniline/polyamide-6 fibers and nonwoven materials for assembling organic memristive elements
Ismail et al. A nanofibrous hydrogel templated electrochemical actuator: from single mat to a rolled-up structure
JP5131930B2 (ja) 導電性高分子繊維、及びその製造方法
JP4760056B2 (ja) 繊維アクチュエータ
Li et al. Recent development in flexible organic thermoelectric fibers for wearable devices
KR101397265B1 (ko) 고효율의 열전 성능을 갖는 디도핑된 전도성 필름 및 그 제조방법
JP2014199837A (ja) 熱電変換材料、熱電変換素子用組成物、熱電変換膜およびそれらを用いた熱電変換素子
KR101738136B1 (ko) 전도성 고분자 물질의 제조 방법
KR101365014B1 (ko) 유기술폰산계 화합물, 이를 포함하는 도판트, 및 상기 도판트를 포함하는 전도성 고분자 복합체
KR100586660B1 (ko) 유기 전극 코팅용 조성물 및 이를 이용한 고투명성 유기전극의 제조방법
JP6230093B2 (ja) 芯鞘型導電繊維
KR101520571B1 (ko) 투명하고 유연한 슈퍼 커패시터용 전극, 이의 제조방법 및 이를 포함하는 슈퍼 커패시터

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090428

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110118

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110125

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110317

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20110322

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110420

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110517

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110525

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4756547

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140610

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees