JP4749170B2 - 光学補償シート、液晶表示装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光学補償シートおよび液晶表示装置に関し、特に一枚のセルロースアシレートフィルムのみからなる光学補償シートおよびそれを用いた偏光板と液晶表示装置とに関する。
セルロースフィルム中でも、セルロースアセテートフィルムは、他のポリマーフィルムと比較して、光学的等方性が高い(レターデーション値が低い)との特徴がある。従って、光学的等方性が要求される用途、例えば偏光板には、セルロースアセテートフィルムを用いることが普通である。一方、液晶表示装置等の光学補償シート(位相差フィルム)には、逆に光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される。従って、光学補償シートとしては、ポリカーボネートフィルムやポリスルホンフィルムのようなレターデーション値が高い合成ポリマーフィルムを用いることが普通であった。
以上のように光学材料の技術分野では、ポリマーフィルムに光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される場合には合成ポリマーフィルムを使用し、光学的等方性(低いレターデーション値)が要求される場合にはセルロースアセテートフィルムを使用することが一般的であった。
しかし近年、光学的異方性が要求される用途にも使用できる高いレターデーション値を有するセルロースアセテートフィルムが要求され、それに対応した技術が提案されている(例えば特許文献1)。該公開発明ではセルローストリアセテートで高いレターデーション値を実現するために、少なくとも2つの芳香環を有する芳香族化合物、中でも1,3,5−トリアジン環を有する化合物を添加し、延伸処理を行っている。
一般にセルローストリアセテートは延伸しにくい高分子素材であり、複屈折率を大きくすることは困難であることが知られているが、上記特許文献1では添加剤を延伸処理で同時に配向させることにより複屈折率を大きくすることを可能にし、高いレターデーション値を実現している。このフィルムは偏光板の保護フィルムを兼ねることができるため、安価で薄膜な液晶表示装置を提供することができる利点がある。
近年、液晶表示装置の軽量化、製造コスト低減、応答速度の高速化のために液晶セルの薄膜化が必須となっている。そのために光学補償シートに必要とされる光学性能はより高いReレターデーション値であって、より低いRthレターデーション値であるフィルムが必要となってきている。
しかしながら、本発明者が特許文献1で開示された方法で鋭意検討した結果、該手法では、前述のReレターデーション値とRthレターデーション値を個々に設定しようとした場合にそれらを両立することができない問題があることが判明した。上記特許文献1以外にも位相差フィルムの光学性能についての技術を開示している特許文献、例えば特許文献2があるが、所望のRe値とRth値を両立する方法については明示されていなかった。
欧州特許出願公開0911656A2号明細書 特開2001−116926号公報
本発明の目的は、1枚のセルロースアシレートフィルムのみからなる液晶セルを光学的に補償する光学補償シートを提供することである。
具体的には、光学的に補償するレターデーションの範囲を拡大することであり、広い範囲のReとRthによる光学補償シートを提供することである。
本発明の別の目的は、構成フィルム要素の数を増加することなく、偏光板に液晶表示装置に最適な光学補償機能が追加された偏光板を提供することである。
本発明のさらなる別の目的は、セルロースアシレートフィルムによって光学的に補償された液晶表示装置を提供することである。
一定の膜厚で考えた場合、フィルムのレターデーションは素材の屈折率と存在量、配向状態によって決まる。前記特許文献1に開示された方法の場合、セルローストリアセテートの3軸の屈折率と配向状態、添加剤である円盤状化合物の屈折率、添加量、配向状態により決まる。
Reレターデーション値およびRthレターデーション値はいずれも3軸方向の屈折率で定義された値であるため、Re/Rth比はレターデーション発現に対する寄与が大きい添加剤によってほぼ決まってしまう。延伸倍率に対するRe/Rth比を調べた結果、その関係は比例関係にあり、延伸倍率が大きくなるとRe/Rth比は大きくなることが分かった。添加量を変えた場合も同様の比例関係となり、添加量を増やすとRe/Rth比は増加する。延伸倍率に対するRe/Rth比の傾きは添加素材によって決まり、上記特許文献1に具体的に記載されている円盤状化合物ではその傾きが小さいことが分かった。
レターデーション値を決めるセルローストリアセテートおよび添加剤の配向状態は延伸方法によっても異なる。一般に、一軸延伸する方法としてロール延伸法やテンター延伸法が知られているが、前者はフィルム幅の収縮が起こるため、Reは発現しやすい。後者は搬送方向が規制されたまま幅方向に延伸されるためReは大きくなりにくく、延伸倍率に対するRe/Rth比は前者に比べて後者は小さくなるが,テンター延伸法は膜厚や光学性能の面内ばらつきを小さくしやすいため、液晶表示装置用の光学補償シートを製造する手法として適している。この手法を前記開示の例に適用すると、Re/Rth比の増加量は延伸倍率1%当たり概ね0.01以下である。Re目標値とRth目標値が近く、Re/Rth比が0.5程度の場合、50%以上の延伸倍率が必要となる。延伸しにくいセルローストリアセテートフィルムにおいてこの倍率を安定的に実現することは事実上困難である。
また、添加量についても実際に可能な添加量の増量では目標光学性能を達成させることが困難であった。
本明細書において、Re、Rthは各々、面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器(株)製)において波長590nmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出される値である。ここで平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値などを使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
本発明者は、前述のような最適なRe、Rth値をテンター延伸法で実現するような場合、延伸倍率に対するRe/Rth制御領域を大きくするために、上記特許文献1に記載されている円盤状化合物と、下記一般式(II)で示される化合物を併用して添加剤として用いることで延伸倍率に対するRe/Rth制御領域を大きくすることができることを見出し、従来の手法では実現できなかった光学性能の光学補償シートを製造できることを見い出し、この知見に基づき本発明をなすに至った。
本発明の目的は、下記の光学補償シート、および下記の液晶表示装置により達成された。
(1)セルロースアシレート100質量部に対してレターデーション制御剤1〜20質量部を含有させたセルロースアシレートフィルムからなる光学補償シートであって、該レターデーション制御剤がRe/Rth比が異なる2種の化合物よりなり、該Re/Rth比が、一方が0.35未満、他方が0.35以上で、Re/Rth比が0.35未満である化合物が、一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする光学補償シート。
Figure 0004749170
(式中、Ar 1 、Ar 2 、Ar 3 はそれぞれ独立にアリール基または芳香族ヘテロ環を表し、L 1 、L 2 はそれぞれ独立に単結合、または2価の連結基を表す。nは3以上の整数を表し、複数のAr 2 、L 2 はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。)
(2)光学補償シートが、3〜100%の延伸倍率で延伸処理したセルロースアシレートフィルムからなることを特徴とする(1)に記載の光学補償シート。
(3)前記レターデーション制御剤に含まれる2種の化合物の含有量が、セルロースアシレート100質量部に対して合計1〜20質量部であることを特徴とする(1)または(2)に記載の光学補償シート。
(4)Re/Rth比が、0.35以上である化合物が、一般式(III)で表される化合物である(1)〜(3)のいずれか1項に記載の光学補償シート。
Figure 0004749170
(式中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、芳香族基であり;L12およびL13は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であり;そして、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。
)セルロースアセテートフィルムの表面エネルギーが55乃至75mN/mであることを特徴とする(1)〜()のいずれか1項に記載の光学補償シート。
)長手方向に搬送しながら長手方向と直交する方向に延伸し、延伸開始時のセルロースアシレートフィルムの残留溶剤量が2質量%〜50質量%の状態であり、該フィルムの遅相軸が該フィルムの長尺方向に対して直交する方向にあることを特徴とする(1)〜()のいずれか1項に記載の光学補償シートの製造方法。
)セルロースアシレートが、酢化度が59.0〜61.5%であるセルロースアセテートである(1)〜()のいずれか1項に記載の光学補償シートまたは()に記載の光学補償シートの製造方法。
)セルロースアシレートフィルムが、セルロースの水酸基がアセチル基および炭素原子数が3〜22のアシル基で置換されたセルロースアシレートからなり、かつ該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aおよび炭素原子数が3〜22のアシル基の置換度Bが、下記式(III)を満たすことを特徴とする(1)〜()のいずれか1項に記載の光学補償シートまたは()もしくは()に記載の光学補償シートの製造方法。
式(III):2.0≧A+B≧3.0
)セルロースアシレートの炭素原子数が3〜22のアシル基が、ブタノイル基またはプロピオニル基であることを特徴とする()に記載の光学補償シートまたは光学補償シートの製造方法。
10)液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、該偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、該液晶セルと少なくとも一方の偏光膜との間に、(1)〜()のいずれか1項に記載の光学補償シートが配置されており、該セルロースアシレートフィルムの遅相軸とセルロースアシレートフィルムに隣接する偏光膜の透過軸とが実質的に平行になるように配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
11)液晶表示装置のモードがVAモードであることを特徴とする(10)に記載の液晶表示装置。
本発明において、「Re/Rth比の異なる化合物」とは、化合物を含有するドープ作製、流延、延伸したトリアセチルセルロースのRe、Rthの測定値から求められる「Re/Rth比」の値が異なる化合物である。
ここで、Re/Rth比の値は、具体的には、以下の内容で調整したドープを、ガラス板に流延し、70℃で6分乾燥しガラス板から剥離した後さらに100℃で10分、120℃20分乾燥したものを固定端延伸装置で20%延伸したフィルムを作製し、流延したフィルムを乾燥し、KOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器(株)製)において波長590nmの光を用いて測定されたRe、Rthから計算されるRe/Rthの値である。化合物の添加量、延伸倍率によりこれらの値は変化するため、比較には2質量%添加したものを20%延伸したフィルムの値を用いた。
トリアセチルセルロース(酢化度60.9) 100質量部
トリフェニルフォスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロリド 318質量部
メタノール 47質量部
化合物(レターデーション制御剤) 2質量部
本発明の光学補償シートを用いることにより、セルロースアシレートフィルムのみからなる光学補償シートで液晶セルを光学的に補償することができる。また、従来到達できなかったRe・Rthの組合わせの範囲の光学補償シートを得ることができる。
本発明の光学補償シートを偏光板の一方の保護膜として用いると、偏光板の構成要素の数を増加することなく、偏光板に光学補償機能を追加することができる。
上記のセルロースアシレートフィルムのみからなる光学補償シートおよび上記の光学補償シートを保護膜として用いた偏光板は、VAモードおよびOCBモードの液晶表示装置に、特に有利に用いることができる。
本発明では、好ましくはセルロースアシレートフィルムのRe値を60乃至120nmに、そしてRthレターデーション値を100乃至250nmに調節する。
本発明においては、延伸倍率1%あたりのRe/Rthの変化量を0.01乃至0.1とすることが可能である。ここで、延伸倍率1%あたりのRe/Rthの変化量は、延伸倍率5%以上の少なくとも3点の延伸倍率に対するRe/Rth比を一次近似した時の傾きから求めることができる。
なお、セルロースアシレートフィルムの複屈折率(nx−ny)は、0.0002乃至0.0009であることが好ましく、0.00025乃至0.0009が更に好ましく、0.00035乃至0.0009であることが最も好ましい。
また、セルロースアシレートフィルムの厚み方向の複屈折率{(nx+ny)/2−nz}は、0.0006乃至0.005であることが好ましく、0.0008乃至0.005であることが更に好ましく、0.0012乃至0.005であることが最も好ましい。
[セルロースアシレートフィルム]
本発明に用いられるセルロースアシレートの原料綿は、公知の原料を用いることができる(例えば、発明協会公開技法2001−1745)。また、セルロースアシレートの合成も公知の方法で行なうことができる(例えば、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年))。セルロースアシレートの粘度平均重合度は200乃至700が好ましく250乃至500が更に好ましく250乃至350が最も好ましい。また、本発明に使用するセルロースエステルは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは重量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.5乃至5.0であることが好ましく、2.0乃至4.5であることがさらに好ましく、2.0乃至4.0であることが最も好ましい。
該セルロースアシレートフィルムのアシル基は、特に制限は無いが、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基を用いることが好ましく、特にアセチル基が好ましい。全アシル基の置換度は1.5乃至3.0が好ましく、2.7乃至3.0がさらに好ましく、2.8乃至2.95が特に好ましい。本明細書において、アシル基の置換度とは、ASTM D817に従って算出した値である。
アシル基がアセチル基であることが最も好ましく、アシル基がアセチル基であるセルロースアセテートを用いる場合には、酢化度が59.0乃至62.5%が好ましく、59.0乃至61.5%がさらに好ましい。酢化度がこの範囲にあると、流延時の搬送テンションによってReが所望の値より大きくなることもなく、面内ばらつきも少なく、温湿度によってレターデーション値の変化も少ない。
6位のアシル基の置換度は、Re、Rthのばらつきを抑制する観点から、0.9以上が好ましい。
[レターデーション制御剤]
本発明では、延伸による光学異方性の発現性(Re/Rth比)が異なる2種の化合物をセルロースアシレートフィルムに含有させる。用いられるRe/Rth比が異なる2種の化合物は、Re/Rth比の値が0.05以上異なっていることが好ましく、0.10以上異なることがさらに好ましい。本発明においては、化合物を添加したセルローストリアセテートフィルムを延伸したときのRe/Rth比の値が、それぞれ0.35未満、0.35以上である2種の化合物を混合して含有する
Re/Rth比の値が、0.35未満のものとしては、好ましくは一般式(I)及び一般式(II)で示される化合物が挙げられるが、本発明においては一般式(II)で示される化合物を用いる
以下に、一般式(I)で表される化合物について説明する。
Figure 0004749170
式中、X1は、単結合、−NR4−、−O−または−S−であり;X2は、単結合、−NR5−、−O−または−S−であり;X3は、単結合、−NR6−、−O−または−S−であり;R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基であり;そして、R4、R5およびR6は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基である。
ここで、一般式(I)で示される化合物は1,3,5−トリアジン環を有する化合物であり、少なくとも2つの芳香環を有する芳香族化合物を好ましく用いることができる。
また、式(I)で表される化合物は、メラミン化合物であることが特に好ましい。メラミン化合物では、式(I)において、X1、X2およびX3が、それぞれ、−NR4−、−NR5−および−NR6−であるか、あるいは、X1、X2およびX3が単結合であり、かつR1、R2およびR3が窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基である。−X1−R1、−X2−R2および−X3−R3は、同一の置換基であることが好ましい。R1、R2およびR3は、アリール基であることが特に好ましい。R4、R5およびR6は、水素原子であることが特に好ましい。
上記アルキル基は、環状アルキル基よりも鎖状アルキル基である方が好ましい。分岐を有する鎖状アルキル基よりも、直鎖状アルキル基の方が好ましい。
アルキル基の炭素原子数は、1乃至30であることが好ましく、1乃至20であることがより好ましく、1乃至10であることがさらに好ましく、1乃至8であることがさらにまた好ましく、1乃至6であることが最も好ましい。アルキル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、エポキシエチルオキシ)およびアシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ)が含まれる。上記アルケニル基は、環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基である方が好ましい。分岐を有する鎖状アルケニル基よりも、直鎖状アルケニル基の方が好ましい。アルケニル基の炭素原子数は、2乃至30であることが好ましく、2乃至20であることがより好ましく、2乃至10であることがさらに好ましく、2乃至8であることがさらにまた好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。アルケニル基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、エポキシエチルオキシ)およびアシルオキシ基(例、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ)が含まれる。
上記アリール基は、フェニルまたはナフチルであることが好ましく、フェニルであることが特に好ましい。アリール基は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、カルボキシル、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルホンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基およびアシル基が含まれる。上記アルキル基は、前述したアルキル基と同様の定義を有する。アルコキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキル置換スルファモイル基、スルホンアミド基、アルキル置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基とアシル基のアルキル部分も、前述したアルキル基と同様である。
上記アルケニル基は、前述したアルケニル基と同様の定義を有する。アルケニルオキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシカルボニル基、アルケニル置換スルファモイル基、スルホンアミド基、アルケニル置換カルバモイル基、アミド基、アルケニルチオ基およびアシル基のアルケニル部分も、前述したアルケニル基と同様である。上記アリール基の例には、フェニル、α−ナフチル、β−ナフチル、4−メトキシフェニル、3,4−ジエトキシフェニル、4−オクチルオキシフェニルおよび4−ドデシルオキシフェニルが含まれる。アリールオキシ基、アシルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリール置換スルファモイル基、スルホンアミド基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アリールチオ基およびアシル基の部分の例は、上記アリール基の例と同様である。
1、X2またはX3が−NR4−、−NR5−、または−NR6−である場合のR4、R5およびR6が表す複素環基は、芳香族性を有することが好ましい。芳香族性を有する複素環は、一般に不飽和複素環であり、好ましくは最多の二重結合を有する複素環である。複素環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、6員環であることが最も好ましい。複素環のヘテロ原子は、N、SまたはOであることが好ましく、Nであることが特に好ましい。芳香族性を有する複素環としては、ピリジン環(複素環基としては、2−ピリジルまたは4−ピリジル)が特に好ましい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。X1、X2またはX3が単結合である場合の複素環基は、窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基であることが好ましい。窒素原子に遊離原子価をもつ複素環基は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましく、5員環であることが最も好ましい。複素環基は、複数の窒素原子を有していてもよい。また、複素環基は、窒素原子以外のヘテロ原子(例、O、S)を有していてもよい。複素環基は、置換基を有していてもよい。複素環基の置換基の例は、上記アリール部分の置換基の例と同様である。
以下に、一般式(I)で表される化合物の好ましい例を示す。
Figure 0004749170
一般式(I)で表される化合物は、例えば特開2003−344655号公報に記載の合成法に準じて合成することができる。
次に、一般式(II)で表される化合物について説明する。
Figure 0004749170
一般式(II)中、Ar1、Ar2、Ar3はそれぞれ独立にアリール基または芳香族ヘテロ環を表し、L1、L2はそれぞれ独立に単結合、または2価の連結基を表す。nは3以上の整数を表し、複数のAr2、L2はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。
Ar1、Ar2、Ar3はアリール基または芳香族ヘテロ環を表し、Ar1、Ar2、Ar3で表されるアリール基として好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、単環であってもよいし、さらに他の環と縮合環を形成してもよい。また、可能な場合には置換基を有してもよく、置換基としては後述の置換基Tが適用できる。
一般式(II)中、Ar1、Ar2、Ar3で表されるアリール基としてより好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
一般式(II)中、Ar1、Ar2、Ar3で表される芳香族ヘテロ環としては酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環であればいずれのヘテロ環でもよいが、好ましくは5ないし6員環の酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含む芳香族ヘテロ環である。また、可能な場合にはさらに置換基を有してもよい。置換基としては後述の置換基Tが適用できる。
以下に前述の置換基Tについて説明する。
置換基Tとしては例えばアルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる。)、置換又は未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる。)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる。)、
スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。
また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(II)中、Ar1、Ar2、Ar3で表される芳香族ヘテロ環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアゾール、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン、ピロロトリアゾール、ピラゾロトリアゾールなどが挙げられる。芳香族ヘテロ環として好ましくは、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾールである。
一般式(II)中、L1、L2は単結合、または2価の連結基を表し、2価の連結基の例として好ましくは、−NR7−(R7は水素原子、置換基を有していても良いアルキル基またはアリール基を表す)で表される基、−SO2−、−CO−、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−S−、−SO−およびこれらの2価基を2つ以上組み合わせて得られる基であり、その内より好ましいものは−O−、−CO−、−SO2NR7−、−NR7SO2−、−CONR7−、−NR7CO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基であり、最も好ましくは−CONR7−、−NR7CO−、−COO−、および−OCO−、アルキニレン基である。
本発明の一般式(II)で表される化合物において、Ar2はL1およびL2と結合するがAr2がフェニレン基である場合、L1−Ar2−L2、およびL2−Ar2−L2は互いにパラ位(1,4−位)の関係にあることが最も好ましい。
nは3以上の整数を表し、好ましくは3ないし7であり、より好ましくは3ないし5である。
以下に、一般式(II)で表される化合物の具体例を示す。
Figure 0004749170
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Figure 0004749170
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Figure 0004749170
一般式(II)で表される化合物は、公知の方法で合成することができ、例えば例示化合物(II−41)について以下に説明するが、これらに限定されない。
[合成例1:例示化合物(II−41)の合成]
下記スキームに従い、例示化合物(II−41)を合成した。
Figure 0004749170
[中間体(S1)の合成]
2,4−ジヒドロキシ安息香酸メチル67.3g、2−エチルヘキシルブロミド85.3ml、炭酸カリウム137.5gをDMF500mlに添加し、90℃の湯浴上で6時間加熱攪拌した。その後、硫酸ジメチル75.9ml、炭酸カリウム137gを添加し、加熱攪拌を10時間続けた。反応終了後、酢酸エチル500mlを添加し、無機塩を減圧濾過にて濾別した。濾液に水を添加し、酢酸エチルで有機層を二度抽出した。有機層は、1N塩酸水、水、飽和食塩水で順次洗浄した後、炭酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、酢酸エチル/n−ヘキサン=1/10)にて精製し、中間体であるメチルエステル体を油状物70g(収率59%)として得た。このメチルエステル体をメタノール150ml、5N水酸化カリウム水溶液143mlに溶解させ、2時間加熱還流した。その後、水500ml、12N塩酸水59.3mlの混合液中に添加し、ついで酢酸エチル500mlを添加し、有機層を分取した。有機層は水、飽和食塩水で順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥したのち、溶媒を減圧留去した。こうして中間体(S1)を油状物として66g得た。
[中間体(S3)の合成]
中間体(S1)28g、トルエン100ml、ジメチルホルムアミド0.1mlを70℃に加熱した後、塩化チオニル8.03mlをゆっくりと滴下し、滴下後70℃で1時間加熱攪拌した。その後、反応液に4−ヒドロキシ安息香酸(S2)13.81gをジメチルホルムアミド20mlに溶解させた溶液を加え、さらに70℃で2時間反応させた。反応後、室温まで冷却したのち、酢酸エチル、水を加えて、有機層を分取した。有機層は、1N塩酸水、水、飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒、塩化メチレン/メタノール=20/1)にて精製し、n−ヘキサンで分散、減圧濾過することで中間体(S3)を白色固体として21.8g得た。
[例示化合物(II−41)の合成]
中間体(S3)19.22g、4、4’−ビフェノール3.72g、ジメチルアミノピリジン0.98g、を塩化メチレン75ml、THF25mlに溶解させ、ここに、ジシクロヘキシルカルボジイミド10.73gをゆっくりと添加し、続いて、この溶液3時間加熱還流させた。その後、反応液を室温まで冷却し、析出した結晶(ジシクロヘキシルウレア)をろ別し、ろ液に水を添加して、有機層を分取した。得られた有機層は1N塩酸水、水、飽和食塩水で順次洗浄したのち、硫酸マグネシウムで乾燥、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、さらに、塩化メチレン/メタノールから再結晶をおこなうことで、例示化合物(II−41)を白色固体として6.4g得た。
また化合物の同定は1H−NMR(400MHz)により行った。
1H−NMR(CDCl3):δ0.89(m,12H),1.28−1.60(m,16H),1.76(m,2H),3.92(m,10H),6.55(m,4H),7.29(d,4H),7.38(d,4H),7.64(d,4H),8.08(d,2H),8.29(d,4H)
得られた化合物の融点は94℃であった。
Re/Rth比の値が、0.35以上のものとしては、好ましくは一般式(III)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0004749170
式中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、芳香族基であり;L12およびL13は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であり;そして、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。
式(III)において、L12およびL13は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基である。アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、1乃至8であることがより好ましく、1乃至6であることがさらに好ましく、1乃至4であることがさらにまた好ましく、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。L12およびL13は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
式(III)において、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。Xは、好ましくは1,4−シクロへキシレンである。
Ar11およびAr12は、それぞれ独立に芳香族基を表わす。本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基を含む。アリール基および置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子がさらに好ましい。芳香族性へテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、および1,3,5−トリアジン環が含まれる。芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ、エチルアミノ、ブチルアミノ、ジメチルアミノ)、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基(例、N−メチルカルバモイル、N−エチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル)、スルファモイル、アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル、N−エチルスルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル)、ウレイド、アルキルウレイド基(例、N−メチルウレイド、N,N−ジメチルウレイド、N,N,N’−トリメチルウレイド)、アルキル基(例、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘプチル、オクチル、イソプロピル、s−ブチル、t−アミル、シクロヘキシル、シクロペンチル)、アルケニル基(例、ビニル、アリル、ヘキセニル)、アルキニル基(例、エチニル、ブチニル)、アシル基(例、ホルミル、アセチル、ブチリル、ヘキサノイル、ラウリル)、アシルオキシ基(例、アセトキシ、ブチリルオキシ、ヘキサノイルオキシ、ラウリルオキシ)、アルコキシ基(例、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ)、アリールオキシ基(例、フェノキシ)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニルアミノ基(例、ブトキシカルボニルアミノ、ヘキシルオキシカルボニルアミノ)、アルキルチオ基(例、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオ、ペンチルチオ、ヘプチルチオ、オクチルチオ)、アリールチオ基(例、フェニルチオ)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、ヘプチルスルホニル、オクチルスルホニル)、アミド基(例、アセトアミド、ブチルアミド基、ヘキシルアミド、ラウリルアミド)および非芳香族性複素環基(例、モルホリル、ピラジニル)が含まれる。
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、カルボキシル、ヒドロキシル、アミノ、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキル基が好ましい。アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分およびアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基および非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分およびアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシ基が好ましい。
以下に、式(III)で表される化合物の具体例を示す。
Figure 0004749170
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Figure 0004749170
Figure 0004749170
Figure 0004749170
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Figure 0004749170
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Re/Rth比の値が0.35未満または0.35以上である化合物としては下記一般式(IV)で表される化合物が挙げられる。
参考として、以下に一般式(IV)で表される化合物について説明する。
一般式(IV)中、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。
4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々表される置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルキニル基であり、例えば、プロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12のアリール基であり、例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、置換もしくは無置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のアミノ基であり、例えば、無置換アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、アニリノ基などが挙げられる)、
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアルコキシ基であり、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜40、より好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20のアリールオキシ基であり、例えば、フェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のアシル基であり、例えば、アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基であり、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニル基であり、例えば、フェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルオキシ基であり、例えば、アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアシルアミノ基であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜40、より好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20のアルコキシカルボニルアミノ基であり、例えば、メトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜40、より好ましくは炭素数7〜30、特に好ましくは炭素数7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニルアミノ基であり、例えば、メタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜40、より好ましくは炭素数0〜30、特に好ましくは炭素数0〜20のスルファモイル基であり、例えば、スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のカルバモイル基であり、例えば、無置換のカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20であり、例えば、フェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルホニル基であり、例えば、メシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のスルフィニル基であり、例えば、メタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のウレイド基であり、例えば、無置換のウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜40、より好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20のリン酸アミド基であり、例えば、ジエチルリン酸アミド基、フェニルリン酸アミド基などが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12のヘテロ環基であり、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有するヘテロ環基であり、例えば、イミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、1,3,5−トリアジル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24のシリル基であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基はさらにこれらの置換基によって置換されていてもよい。また、置換基が二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成していてもよい。
4、R5、R6、R7、R8及びR9各々表される置換基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基又はハロゲン原子である。
参考として、以下に一般式(IV)で表される化合物の具体例を挙げる。
Figure 0004749170
Figure 0004749170
これらの化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01乃至20質量部、好ましくは1〜10質量部の範囲で使用する。
またRe/Rth比が0.35未満の化合物と0.35以上の化合物を、0.35未満の化合物:0.35以上の化合物の質量比で表した場合、好ましくは1:9〜9:1、さらに好ましくは2:8〜8:2の混合比率で用いるものである。
ただし、本発明においてはRe/Rth比が0.35未満の化合物として一般式(II)で示される化合物を用いる。
一般式(IV)で表される化合物は、例えば特開2005−134884号公報に記載の合成法に準じて合成することができる。
[セルロースアセテートフィルムの製造]
ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
有機溶媒は、炭素原子数が3乃至12のエーテル、炭素数が1乃至6のアルコール、炭素原子数が3乃至12のケトン、炭素原子数が3乃至12のエステルおよび炭素原子数が1乃至6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
炭素原子数が3乃至12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが含まれる。
炭素数が1乃至6のアルコールの例には、メタノール,エタノール、2−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなどが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3乃至12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが含まれる。
二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1または2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25乃至75モル%であることが好ましく、30乃至70モル%であることがより好ましく、35乃至65モル%であることがさらに好ましく、40乃至60モル%であることが最も好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよく、本発明の好ましい溶剤としては、メチレンクロリドとメタノール混合溶媒が挙げられる。
本発明のセルロースアシレートは、有機溶媒に濃度10〜30質量%で溶解していることが好ましいが、より好ましくは濃度13〜27質量%であり、特に濃度15〜25質量%溶解しているセルロースアシレート溶液であることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法で本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
本発明ではセルロースアシレート溶液を同一組成の有機溶媒で0.1〜5質量%にした希釈溶液のセルロースアシレートの会合体分子量が15万〜1500万であることが好ましい。さらに好ましくは、会合分子量が18万〜900万である。この会合分子量は静的光散乱法で求めることができる。その際に同時に求められる慣性自乗半径は10〜200nmになるように溶解することが好ましい。さらに好ましい慣性自乗半径は20〜200nmである。さらにまた、第2ビリアル係数が−2×10-4〜4×10-4となるように溶解することが好ましく、より好ましくは第2ビリアル係数が−2×10-4〜2×10-4である。ここで、本発明での会合分子量、さらに慣性自乗半径および第2ビリアル係数の定義について述べる。
これらは下記方法に従って、静的光散乱法を用いて測定したものである。測定は装置の都合上希薄領域で測定したが、これらの測定値は本発明の高濃度域でのドープの挙動を反映するものである。まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶剤に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製した。なお、秤量は吸湿を防ぐためセルロースアシレートは120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃,10%RHで行った。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施した。
続いてこれらの溶液、および溶剤を0.2μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過した。そして、ろ過した溶液を静的光散乱を、光散乱測定装置(DLS−700、商品名、大塚電子(株)製)を用い、25℃に於いて30度から140度まで10度間隔で測定した。得られたデータをBERRYプロット法にて解析した。なお、この解析に必要な屈折率はアッベ屈折系で求めた溶剤の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計(DRM−1021、商品名、大塚電子(株)製)を用い、光散乱測定に用いた溶剤、溶液を用いて測定した。
次に本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301、特開昭61−106628、特開昭58−127737、特開平9−95544、特開平10−95854、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463、特開平04−259511、特開2000−273184、特開平11−323017、特開平11−302388などにセルロースアシレート溶液の調製法、が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。
これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
[セルロース誘導体フィルム]
次に、本発明の光学補償シート(以下、本発明のセルロースアシレートフィルムともいう)の製造方法について述べる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。
得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離,延伸などに分類される。
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜50℃であることが好ましい。さらには−30〜40℃であることが好ましく、特には−20〜30℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できるものである。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の湿度は0〜70%RHが好ましく、さらには0〜50%RHが好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度が−50〜130℃であり、好ましくは−30〜25℃であり、さらには−20〜15℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
本発明においてその各層の内容と流延については、特に以下の構成が好ましい。すなわち、セルロースアシレート溶液が25℃において、少なくとも一種の液体又は固体の可塑剤をセルロースアシレートに対して0.1〜20質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、及び/又は少なくとも一種の液体又は固体の紫外線吸収剤をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、及び/又は少なくとも一種の固体でその平均粒径が5〜3000nmである微粒子粉体をセルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、及び/又は少なくとも一種のフッ素系界面活性剤をセルロースアシレートに対して0.001〜2質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、及び/又は少なくとも一種の剥離剤をセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、及び/又は少なくとも一種の劣化防止剤をセルロースアシレートに対して0.0001〜2質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、及び/又は少なくとも一種の光学異方性コントロール剤をセルロースアシレートに対して0.1〜15質量%含有していること、及び/又は少なくとも一種の赤外吸収剤をセルロースアシレートに対して0.1〜5質量%含有しているセルロースアシレート溶液であること、を特徴とするセルロースアシレート溶液およびそれから作製されるセルロースアシレートフィルムが好ましい。
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延しても良い。2層以上からなる流延工程を有する場合は、作製されるセルロースアシレート溶液及びセルロースアシレートフィルムにおいて、各層の塩素系溶媒の組成が同一であるか異なる組成のどちらか一方であること、各層の添加剤が一種類であるかあるいは2種類以上の混合物のどちらか一方であること、各層への添加剤の添加位置が同一層であるか異なる層のどちらか一方であること、添加剤の溶液中の濃度が各層とも同一濃度であるかあるいは異なる濃度のどちらか一方であること、各層の会合体分子量が同一であるかあるいは異なる会合体分子量のどちらか一方であること、各層の溶液の温度が同一であるか異なる温度のどちらか一方であること、また各層の塗布量が同一か異なる塗布量のどちらか一方であること、各層の粘度が同一であるか異なる粘度のどちらか一方であること、各層の乾燥後の膜厚が同一であるか異なる厚さのどちらか一方であること、さらに各層に存在する素材が同一状態あるいは分布であるか異なる状態あるいは分布であること、各層の物性が同一であるかあるいは異なる物性のどちらか一方であること、各層の物性が均一であるか異なる物性の分布のどちらか一方であること、を特徴とするセルロースアシレート溶液及びその溶液から作製されるセルロースアシレートフィルムであることも好ましい。
セルロースアシレートフィルムには、機械的物性を改良するため、または乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルフォスフェート(TCP)が含まれる。
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロースエステルの量の0.1乃至25質量%であることが好ましく、1乃至20質量%であることがさらに好ましく、3乃至15質量%であることが最も好ましい。
セルロースアセテートフィルムには、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、劣化防止剤添加による効果が発現し、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)を抑制する観点から、調製する溶液(ドープ)の0.01乃至1質量%であることが好ましく、0.01乃至0.2質量%であることがさらに好ましい。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
[セルロースアシレートフィルムの延伸処理]
セルロースアセテートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することができる。延伸倍率は、3乃至100%であることが好ましい。延伸方法は請求の範囲を逸脱しない範囲で既存の方法を用いることができるが、面内の均一性の観点から特にテンター延伸が好ましく用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは少なくとも100cm以上の幅であることが好ましく、全幅のRe値のばらつきが±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また、Rth値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理しても良い。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、延伸開始時の残留溶剤量が2乃至50%であることが好ましい。延伸開始時の残留溶剤量とは、テンター延伸であれば、ウェブ(生乾きのドープ)の両端をクリップで掴み始めた時の残留溶剤量のことであり、5乃至50%で延伸を開始することがさらに好ましく、10乃至45%で延伸を開始することが特に好ましい。なお、残留溶剤量は下記式で計算する。
(残留溶剤量)=100×{(ウェブ中の溶剤量)/(ウェブの全体量)}
また、この際、フィルムを長手方向に搬送しながら長手方向と直交する方向に延伸して該フィルムの遅相軸が該フィルムの長尺方向に対して直交するようにすることが好ましい。
延伸温度は延伸時の残留溶剤量と膜厚によって適当な条件を選ぶことができる。
残留溶剤を含む状態で延伸した場合には、延伸後に乾燥させることが好ましい。乾燥方法は前記フィルムの製膜に記載の方法に準じて行うことができる。
延伸後のセルロースアセテートフィルムの厚さは、110μm以下、好ましくは40乃至110μmであり、より好ましくは60乃至110μmであり、80乃至110μmであることが最も好ましい。この膜厚は本発明の光学補償シートの膜厚に相当する。
[セルロースアシレートフィルムの波長分散]
光学補償シートに必要な性能として、Reレターデーション値、Rthレターデーション値の波長分散形状が挙げられる。光学補償シートはネガティブリターダーとして働き、ポジティブリターダーである液晶を補償するため、可視光の全波長域で偏光を補償するには、光学補償シートのRthレターデーション値波長分散形状が液晶の波長分散形状と類似していることが必要である。現在、液晶セルに封入している液晶の波長分散形状はほとんどが順分散であることが知られているので、光学補償シートのReレターデーション値、Rthレターデーション値波長分散形状も、順分散形状であること、すなわち、700nmでのReレターデーション値(Re700)と400nmでのReレターデーション値(Re400)の差(Re700−Re400)が−25nm乃至10nmであることが好ましく、−25nm乃至5nmであることがさらに好ましい。また、700nmでのRthレターデーション値(Rth700)と400nmでのRthレターデーションの値(Rth400)の差(Rth700−Rth400)が−50nm乃至20nmであることが好ましく、さらにはRth700−Rth400が−50nm乃至10nmであることが特に好ましい。
[Reレターデーション値、Rthレターデーション値の湿度依存性]
Reレターデーション値、Rthレターデーション値は、環境湿度による変化が小さいことが望まれる。
25℃10%RH環境下で測定したReレターデーション値、Rthレターデーション値と25℃80%RH環境下で測定したReレターデーション値の差異(Re10%−Re80%(25℃))、Rthレターデーション値の差異(Rth10%−Rth80%(25℃))も小さいことが好ましく、それぞれ25nm以内、70nm以内であることが好ましい。また、さらにはRe10%−Re80%(25℃)が15nm以内、Rth10%−Rth80%(25℃)が50nm以内であることが好ましく、特には、Re10%−Re80%(25℃)が10nm以内、Rth10%−Rth80%(25℃)が40nm以内であることが好ましい。
[透湿度]
本発明において、試料70mmφを25℃90%RHで24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、商品名、東洋精機(株)製)にてJIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)し、
透湿度=調湿後質量−調湿前質量
で求めた、25℃90%RHでの透湿度は20g/m2・24hr乃至250g/m2・24hrであることが好ましく、20g/m2・24hr乃至230g/m2・24hrであることが特に好ましい。
[寸度変化率]
本発明において、試料の縦方向、横方向より、30mm幅×120mm長さの試験片を各3枚採取し、試験片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔に開け、これを23±3℃、相対湿度65±5%の室内で2時間以上調湿し、自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いてパンチ間隔の原寸(L1)を最小目盛り/1000mmまで測定し、次に試験片を90℃±1℃の恒温器に吊して24時間熱処理し、23±3℃、相対湿度65±5%の室内で2時間以上調湿した後、自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定し、以下の式
寸度変化率=(L1−L2/L1)×100
により算出した、寸度変化率は好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。
[高湿寸度変化率]
本発明において、試料の縦方向、横方向より、30mm幅×120mm長さの試験片を各3枚採取し、試験片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔に開け、これを23±3℃、相対湿度65±5%の室内で2時間以上調湿し、自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いてパンチ間隔の原寸(L1)を最小目盛り/1000mmまで測定し、次に試験片を60℃±1℃、相対湿度90±5%の恒温恒湿器に吊して24時間熱処理し、23±3℃、相対湿度65±5%の室内で2時間以上調湿した後、自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法(L3)を測定し、そして以下の式
寸度変化率=(L1−L3/L1)×100
により算出した90℃Dry、60℃90%での寸度変化はともに小さいことが望まれ、それぞれ−0.2%以内であることが好ましく、さらには−0.15%以内であることが好ましい。
[セルロースアセテートフィルムの表面処理]
セルロースアセテートフィルムの表面エネルギーを55乃至75mN/mとするには、表面処理を施すことが好ましい。表面処理の例として、ケン化処理、プラズマ処理、火炎処理、および紫外線照射処理が挙げられる。ケン化処理には、酸ケン化処理およびアルカリケン化処理が含まれる。プラズマ処理にはコロナ放電処理およびグロー放電処理が含まれる。フィルムの平面性を保つために、これらの表面処理においては、セルロースアセテートフィルムの温度をガラス転移温度(Tg)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。これらの表面処理後のセルロースアセテートフィルムの表面エネルギーは55乃至75mN/mであることが好ましくい。
グロー放電処理は、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体は、上記のような条件においてプラズマ励起される気体であり、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法または鹸化液をセルロースアシレートフィルム塗布する方法で実施することが好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。
これらの方法で得られた固体の表面エネルギーは「ぬれの基礎と応用」(リアライズ社1989.12.10発行)に記載のように接触角法、湿潤熱法、および吸着法により求めることができる。本発明のセルロースアセテートフィルムの場合、接触角法を用いることが好ましい。具体的には、表面エネルギーが既知である2種類の溶液をセルロースアセテートフィルムに滴下し、液滴の表面とフィルム表面との交点において、液滴に引いた接線とフィルム表面のなす角で、液滴を含む方の角を接触角と定義し、計算によりフィルムの表面エネルギーを算出できる。
セルロースアセテートフィルムに上記の表面処理を実施することにより、フィルムの表面エネルギーが55乃至75mN/mであるセルロースアセテートフィルムを得ることができる。このセルロースアセテートフィルムを偏光板の透明保護膜とすることにより、偏光膜とセルロースアセテートフィルムの接着性を向上させることができる。また、本発明のセルロースアセテートフィルムをOCBモードの液晶表示装置に用いる場合、本発明の光学補償シートは、セルロースアセテートフィルム上に配向膜を形成し、その上に円盤状化合物もしくは棒状液晶化合物を含む光学異方性層を設けても良い。光学異方性層は、配向膜上に円盤状化合物(もしくは棒状液晶化合物)を配向させ、その配向状態を固定することにより形成する。このようにセルロースアセテートフィルム上に光学異方性層を設ける場合、従来ではセルロースアセテートフィルムと配向膜との接着性を確保するために、両者の間にゼラチン下塗り層を設ける必要があったが、本発明の、表面エネルギーが55乃至75mN/mであるセルロースアセテートフィルムを用いることにより、ゼラチン下塗り層を不要とすることができる。
[偏光板]
偏光板は、偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。一方の保護膜として、上記のセルロースアシレートフィルムからなる光学補償シートを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
セルロースアシレートフィルムからなる光学補償シートの遅相軸と偏光膜の透過軸とは、実質的に平行になるように配置することが好ましい。
[反射防止層]
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される透明保護膜には反射防止層を設けることが好ましい。特に本発明では透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層又は透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。
[液晶表示装置]
本発明の光学補償シートを用いた偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。本発明の偏光板は、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、OCBモードまたはVAモードに好ましく用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
実施例1
[セルロースアシレートフィルムの作成]
下記組成比で各成分をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
(セルロースアセテート溶液組成)
酢化度60.9のセルロースアセテート 100質量部
トリフェニルフォスフェート(可塑剤) 7.8質量部
ビフェニルジフェニルフォスフェート(可塑剤) 3.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 318質量部
メタノール(第2溶媒) 47質量部
シリカ(粒径0.2μm) 0.1質量部
別のミキシングタンクに、表2に記載のレターデーション制御剤A、レターデーション制御剤Bを、メチレンクロライド87質量部およびメタノール13質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション制御剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液にレターデーション制御剤溶液を混合し、充分に攪拌してドープを調製した。セルロースアセテート100質量部に対してのレターデーション調整剤A、Bの添加量は表2に示す。また、上記の方法で測定したレターデーション調整剤のRe/Rth比を表1に示す。
得られたドープを、バンド流延機を用いて流延し、延伸開始時の残留溶剤量が32質量%のフィルムを、130℃の条件で、テンターを用いて26%の延伸倍率で横延伸して、さらに130℃で20分乾燥し、セルロースアセテートフィルム(厚さ:92μm)を作製した。作製したセルロースアセテートフィルムについて、KOBRA 21ADH(商品名、王子計測機器(株)製)を用いて、波長590nmにおけるReレターデーション値およびRthレターデーション値を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0004749170
Figure 0004749170
表2からわかるように、一般式(I)、(II)のような化合物は、単独で用いた場合Re大きくすること出来るが、同時にRthも増加してしまう。また一般式(III)のような化合物を単独で用いた場合、Rthは大きくならないもののReの大きなものは得られず、Re、Rthの範囲を任意に得ることは出来なかった。これに対し本発明では、Re/Rth比の異なる化合物を組合わせて用いることにより所望のRe(60〜90nm)かつRth(128〜190nm)の光学補償フィルムを得ることができた。
また一般式(IV)には、一般式(I)、(II)同様の挙動を示す(IV−1)、一般式(III)と同様の挙動を示す(IV−4)があり、上記と同様に単独ではRe、Rthの調整が不十分であるが、組合わせて用いることによりRe、Rthを好ましい範囲に調整した光学補償フィルムが得られる。
さらに、これらのフィルムを偏光板に加工、光学補償にもちいることにより、幅広い方式の液晶表示装置の光学補償が容易にできた。

Claims (5)

  1. セルロースアシレート100質量部に対してレターデーション制御剤1〜20質量部を含有させたセルロースアシレートフィルムからなる光学補償シートであって、該レターデーション制御剤がRe/Rth比が異なる2種の化合物よりなり、該Re/Rth比が、一方が0.35未満、他方が0.35以上で、Re/Rth比が0.35未満である化合物が、一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする光学補償シート。
    Figure 0004749170
    (式中、Ar 1 、Ar 2 、Ar 3 はそれぞれ独立にアリール基または芳香族ヘテロ環を表し、L 1 、L 2 はそれぞれ独立に単結合、または2価の連結基を表す。nは3以上の整数を表し、複数のAr 2 、L 2 はそれぞれ同一であっても異なっていても良い。)
  2. 光学補償シートが、3〜100%の延伸倍率で延伸処理したセルロースアシレートフィルムからなることを特徴とする請求項1に記載の光学補償シート。
  3. 前記レターデーション制御剤に含まれる2種の化合物の含有量が、セルロースアシレート100質量部に対して合計1〜20質量部であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学補償シート。
  4. Re/Rth比が0.35以上である化合物が、一般式(III)で表される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学補償シート。
    Figure 0004749170
    (式中、Ar11およびAr12は、それぞれ独立に、芳香族基であり;L12およびL13は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であり;そして、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。)
  5. 液晶セルおよびその両側に配置された二枚の偏光板からなり、該偏光板が偏光膜およびその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる液晶表示装置であって、該液晶セルと少なくとも一方の偏光膜との間に、請求項1〜のいずれか1項に記載の光学補償シートが配置されており、該セルロースアシレートフィルムの遅相軸とセルロースアシレートフィルムに隣接する偏光膜の透過軸とが実質的に平行になるように配置されていることを特徴とする液晶表示装置。
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