JP5255918B2 - セルロース誘導体、セルロース誘導体フィルム、及びその用途 - Google Patents
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Description
近年、セルロースアシレートフィルムに位相差を付与し、偏光板保護フィルムとしての機能に加えて、光学補償機能も併せ持たせる方法が提案されている。例えば、特許文献1には、平面性の高いトリアジン型化合物をセルロースアシレートに添加し、レターデーションを発現させる方法が開示されている。
また、特許文献2及び3には、2種類以上の異なる置換基を有するセルロース混合エステルを含有する所定の光学特性を満足する光学フィルムがそれぞれ開示され、その光学フィルムの製造方法として、所定の条件で延伸処理する方法が開示されている。
また、本発明は、製膜性が良好で、フィルムの作製に有用な新規なセルロース誘導体を提供することを課題とする。
[1] 下記一般式(1)で表される重合単位を少なくとも有し、且つ下記数式(I)を満たすセルロース誘導体を含有することを特徴とするフィルム。
(I) DSB≧DSC
[式中、DSBは、上記単位中にR2、R3及びR6としてそれぞれ存在する脂肪族基の数であり、DSCは、同単位中にR2、R3及びR6としてそれぞれ存在する脂肪族カルバメート基の数であり、DSc>0であり、且つDSB+DSC≦3である。]
(II) 0≦DSA≦1.2
[式中、DSAは、上記単位中にR2、R3及びR6として存在する水素原子の数であり、DSA+DSB+DSC=3である。]
[3] 前記セルロース誘導体が、下記数式(III)〜(V)を満足することを特徴とする[1]又は[2]のフィルム。
(III) 1.6≦DSB≦2.8
(IV) 0.1≦DSC≦1.2
(V) 0≦DSA≦0.5
[4] 前記脂肪族基が、メチル基又はエチル基であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかのフィルム。
[5] [1]〜[4]のいずれかのフィルムからなる、又は該フィルムを含むことを特徴とする光学補償シート。
[6] 偏光子と、[1]〜[4]のいずれかのフィルムとを少なくとも有することを特徴とする偏光板。
[7] [1]〜[4]のいずれかのフィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
[8] 下記一般式(1)で表される重合単位を少なくとも有し、且つ下記数式(I)及び(II)を満足するセルロース誘導体。
(I) DSB≧DSC
(II) 0≦DSA≦1.2
[式中、DSAは、上記単位中にR2、R3及びR6として存在する水素原子の数であり、DSBは、同単位中にR2、R3及びR6としてそれぞれ存在する脂肪族基の数であり、及びDSCは、同単位中にR2、R3及びR6としてそれぞれ存在する脂肪族カルバメート基の数であり、DSc>0であり、且つDSA+DSB+DSC=3である。]
(III) 1.6≦DSB≦2.8
(IV) 0.1≦DSC≦1.2
(V) 0≦DSA≦0.5
[10] 前記脂肪族基が、メチル基又はエチル基であることを特徴とする[8]又は[9]のセルロース誘導体。
従って、本発明のセルロース誘導体を用いることによって、液晶表示装置用光学フィルムとして、特に光学補償シートとして用いるのに好適な、レターデーション発現性が高いフィルムを提供することができる。
また、本発明のフィルムを偏光板の保護膜として用いることにより、偏光板の構成要素の数を増加することなく、偏光板に光学補償機能を追加することができる。
また、本発明の光学補償シート及び本発明の光学補償シートを保護膜として用いた偏光板は、液晶表示装置、特にVAモード及びOCBモードの液晶表示装置に有用であり、本発明によれば、コントラストが高く、視角による色味変化の小さい液晶表示装置を提供することができる。
本発明は、セルロースの構成単位であるβ−グルコース環の2位、3位及び6位の水酸基の水素原子が、脂肪族基及び脂肪族カルバメート基で置換されたセルロース誘導体を含有するフィルムに関する。具体的には、下記一般式(1)で表される脂肪族基及び脂肪族カルバメート基を有する重合単位を少なくとも有するセルロース誘導体を含有するフィルムに関する。
(I) DSB≧DSC
式(I)中、DSBは、同単位中にR2、R3及びR6としてそれぞれ存在する脂肪族基の数であり、及びDSCは、同単位中にR2、R3及びR6としてそれぞれ存在する脂肪族カルバメート基の数である。即ち、DSBは、2位、3位及び6位の水酸基に対する脂肪族基の置換度であり、及びDSCは、2位、3位及び6位の水酸基に対する脂肪族カルバメート基の置換度である。本発明に用いる前記セルロース誘導体は、セルロースの構成単位であるβ−グルコース環の2位、3位及び6位の水酸基の水素原子の少なくとも一部が、脂肪族基及び脂肪族カルバメート基で置換されているので、従って、DSB>0及びDSC>0を満足し、並びにDSB+DSCは3以下になる。
(II) 0≦DSA≦1.2
式(II)中、DSAは、上記単位中にR2、R3及びR6として存在する水素原子の数であり、即ち、DSAは、2位、3位及び6位の水酸基が無置換である割合である。従って、DSA+DSB+DSCは3になる。
(III) 1.6≦DSB≦2.8
(IV) 0.1≦DSC≦1.2
(V) 0≦DSA≦0.5
また、前記セルロース誘導体のより好ましい例は、下記式(III)’〜(V)’を満足するセルロース誘導体である。
(III)’1.8≦DSB≦2.7
(IV)’0.3≦DSC≦1.2
(V)’0≦DSA≦0.2
上記式(III)〜(V)及び上記式(III)’〜(V)’を満足するセルロース誘導体は製膜性及び光学特性の発現性の観点で好ましい。
置換基群T:
アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)。
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
(可塑剤)
本発明のフィルムには、機械的物性を改良するため、又は乾燥速度を向上するために、可塑剤を添加することができる。可塑剤としては、リン酸エステル又はカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)及びトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)及びジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)及びO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEP及びDPPが特に好ましい。
可塑剤の添加量は、セルロース誘導体の量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることがよりさらに好ましい。
本発明のフィルムは、紫外線吸収剤を含有していてもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。本発明のフィルムを、偏光板の保護フィルムとして用いる場合、紫外線吸収剤としては、偏光子や液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロース誘導体に対して0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.5〜5.0質量%であることがさらに好ましい。
本発明のフィルムには、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)を添加してもよい。劣化防止剤については、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号の各公報に記載がある。劣化防止剤の添加量は、劣化防止剤添加による効果が発現し、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)を抑制する観点から、調製する溶液(ドープ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、トリベンジルアミン(TBA)を挙げることができる。
本発明のフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。前記微粒子としては、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。これらの微粒子の中ではケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、1次平均粒子サイズが1nm〜20nmであり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径は1nm〜20nmであることが好ましく、5nm〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができて、より好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットルが好ましく、100〜200g/リットルがさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
本発明のフィルムは、種々の方法で製造することができる。その一例は、ソルベントキャスト法である。ソルベントキャスト法では、セルロース誘導体を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムを製造する。
ドープの調製に用いる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒を含むことが好ましい。
エーテル、ケトン及びエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトン及びエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記した好ましい炭素原子数範囲内であることが好ましい。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが含まれる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテートが含まれる。
ハロゲン化炭化水素の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%であることが好ましく、30〜70モル%であることがより好ましく、35〜65モル%であることがさらに好ましく、40〜60モル%であることがよりさらに好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃であり、さらに好ましくは80〜110℃である。
本発明のフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸は、フィルム搬送方向(長手方向)、及び/あるいはこれと垂直な方向(幅方向)に行うことができる。
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。長手方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
Re発現性とRth発現性をともに向上させるためには、搬送方向及び幅方向の双方に延伸することが特に好ましい。
本発明のフィルムは、種々の用途に応じて、その特性が好ましい範囲となるように、製造される。以下に、本発明のフィルムを、液晶表示装置の部材として用いるのに好ましい特性について説明する。
(フィルムの厚み)
本発明のセルロース誘導体フィルムの厚みは、30μm〜200μmが好ましい。さらに好ましくは40μm〜150μmであり、よりさらに好ましくは40μm〜100μmである。
本発明のセルロース誘導体フィルムは、レターデーション、特に厚み方向のレターデーション、の発現性が高い。具体的には、波長589nmにおける厚み方向のレターデーションRth(589)が、50nm〜400nm程度を達成可能であり、100nm〜300nm程度を達成可能である。
一方、本発明のセルロース誘導体フィルムの波長589nmにおける面内レターデーションRe(589)は、0nm〜200nm程度を達成可能であり、0nm〜100nm程度を達成可能である。
これらの範囲の光学特性を示すフィルムは、種々の用途において有用である。
本発明のセルロース誘導体フィルムは、例えば、ヘイズ計(1001DP型、商品名、日本電色工業(株)製)を用いて測定した値が0.1〜0.8であることが好ましい。さらに好ましくは、0.1〜0.7であり、よりさらに好ましくは0.1〜0.60である。前記範囲にヘイズを制御することにより、光学補償シートとして液晶表示装置に組み込んだ際に高コントラストの画像が得られる。
セルロース誘導体フィルムの吸水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は一定温湿度に24時間放置した後、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料質量(g)で除して算出したものである。
本発明のセルロース誘導体フィルムの25℃80%RHにおける平衡含水率が5.0質量%以下であることが好ましい。さらに好ましくは4.5質量%以下であり、よりさらに好ましくは4.0質量%以下である。
フィルムの平衡含水率を上記範囲にすることにより、フィルムのレターデーション変化小さくすることができる。
本発明のセルロース誘導体フィルムは環境湿度による変化レターデーション変化が小さいことが好ましく、Re及びRthは下記式(7)及び(8)の関係を満たすことが好ましい。
本発明のフィルムは、弾性率、破断伸度、及び破断応力が以下の範囲を達成可能であり、これらの特性は、フィルムとして十分な力学的強度であると言える。
・弾性率
フィルムの弾性率は、JIS K 7162に従って測定することができる。本発明のフィルムは、1.0〜4.0GPaの弾性率を達成可能である。本発明のフィルムの弾性率は1.0〜3.0GPaであるのが好ましい。
・破断伸度
フィルムの破断伸度は、JIS K 7162に従って測定することができる。本発明のフィルムは、1〜100%の破断伸度を達成可能である。本発明のフィルムの破断伸度は2〜80%であるのが好ましい。
・破断応力
フィルムの破断応力は、JIS K 7162に従って測定することができる。本発明のフィルムは、20〜100MPaの破断応力を達成可能である。本発明のフィルムの破断応力は20〜80MPaであるのが好ましい。
本発明のセルロース誘導体フィルムは、例えば、セルロース誘導体フィルムをサンプリングし、得られたフィルムの両端部30cm幅、長さ1m上に存在する30μm以上の異物あるいは凝集物の数を数えて求めた値が0〜50であることが好ましい。さらに好ましくは0〜40、特に好ましくは0〜30である。
セルロース誘導体フィルムに、表面処理を施してもよい。表面処理の例として、ケン化処理、プラズマ処理、火炎処理、及び紫外線照射処理が挙げられる。ケン化処理には、酸ケン化処理及びアルカリケン化処理が含まれる。プラズマ処理にはコロナ放電処理及びグロー放電処理が含まれる。フィルムの平面性を保つために、これらの表面処理においては、セルロース誘導体フィルムの温度をガラス転移温度(Tg)以下、具体的には150℃以下とすることが好ましい。これらの表面処理後のセルロース誘導体フィルムの表面エネルギーは55〜75mN/mであることが好ましい。
グロー放電処理は、10-3〜20Torr(0.133Pa〜2.67kPa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体は、上記のような条件においてプラズマ励起される気体であり、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロース誘導体フィルムの表面処理としては極めて有効である。
〔光学補償シート〕
本発明のセルロース誘導体フィルムは、光学補償シートとして用いることができる。
本発明のセルロース誘導体フィルムは、偏光板の一部材として用いることができる。偏光板は、偏光膜及びその両側に配置された二枚の透明保護膜からなる。一方の保護膜として、上記のセルロース誘導体フィルムを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルムを用いてもよい。
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。
本発明のセルロース誘導体フィルムの遅相軸と偏光膜の透過軸とは、実質的に平行になるように配置するのが好ましい。
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される透明保護膜には反射防止層を設けることが好ましい。反射防止層の一例は、(1)透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層、及び他の例は、(2)透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層である。
本発明のセルロース誘導体フィルムは、液晶表示装置の光学部材として利用することができる。例えば、偏光フィルムと貼り合せ、偏光板の一部材として、液晶表示装置に用いることができる。本発明のフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、OCBモード又はVAモードに好ましく用いることができる。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
OCBモード及びVAモードの液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に二枚の偏光板を配置してもよいし、VAモードの場合、偏光板をセルのバックライト側に配置してもよい。液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
実施例、比較例で用いた原料はいずれも市販品を購入し、そのまま使用した。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた3Lの三ツ口フラスコにメチルセルロース(メトキシ置換度1.8)10g、ピリジン200mLを量り取り、室温で攪拌した。ここにエチルイソシアネート18mLをゆっくりと滴下し、60℃にて5時間攪拌した。反応後、室温に戻し、氷冷下、メタノール10mLを加えてクエンチした。反応溶液をアセトン200mLで希釈した後、ヘキサン2Lへ激しく攪拌しながら投入すると、黄色無定形固体が沈殿した。デカンテーションにより溶媒を除去した後、大量のヘキサンで3回洗浄を行った。得られた黄色無定形固体を100℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体(P−1)を黄色無定形固体として得た(12.5g)。
得られたセルロース誘導体については、1HNMRにより同定し、及びDSA、DSB及びDSCは前述の方法で求めた。以下のいずれの化合物についても同様である。
合成例1においてエチルイソシアネートをブチルイソシアネートに変更した以外は同様にして、目的のセルロース誘導体(P−2)を黄白色固体として得た(11.1g)。
合成例1においてエチルイソシアネートをオクチルイソシアネートに変更した以外は同様にして、目的のセルロース誘導体(P−3)を黄白色固体として得た(12.7g)。
合成例1においてエチルイソシアネートをオクチルイソシアネートに変更し、反応時間を1時間に変更した以外は同様にして、目的のセルロース誘導体(P−4)を黄白色固体として得た(11.3g)。
合成例1においてエチルイソシアネートをtert-オクチルイソシアネートに変更した以外は同様にして、目的のセルロース誘導体(P−5)を白色固体として得た(9.6g)。
合成例1においてエチルイソシアネートをシクロヘキシルイソシアネートに変更した以外は同様にして、目的のセルロース誘導体(P−6)を白色固体として得た(3.6g)。
合成例1においてメチルセルロース(メトキシ置換度1.8)をメチルセルロース(メトキシ置換度2.2)に変更した以外は同様にして、目的のセルロース誘導体(P−7)を白色固体として得た(11.7g)。
合成例1においてメチルセルロース(メトキシ置換度1.8)をエチルセルロース(エトキシ置換度2.6)に、エチルイソシアネートをヘキシルイソシアネートに変更した以外は同様にして目的のセルロース誘導体(P−8)を白色粉体として得た(3.2g)。
合成例1においてメチルセルロース(メトキシ置換度1.8)をエチルセルロース(エトキシ置換度2.6)に、エチルイソシアネートをオクチルイソシアネートに変更した以外は同様にして目的のセルロース誘導体(P−9)を白色粉体として得た(5.4g)。
合成例1においてメチルセルロース(メトキシ置換度1.8)をエチルセルロース(エトキシ置換度2.6)に、エチルイソシアネートをベンジルイソシアネートに変更した以外は同様にして目的のセルロース誘導体(P−10)を白桃色粉体として得た(6.0g)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた3Lの三ツ口フラスコにKC−フロック10g、DMAc200mLを量り取り、室温で攪拌・分散した。ここにエチルイソシアネート44mLをゆっくりと滴下した後、ジブチルスズジラウレート0.5mLを添加し、80℃にて5時間攪拌した。反応後、室温に戻し、メタノール10mLを加えてクエンチした。反応溶液をアセトン200mLで希釈した後、ヘキサン2Lへ激しく攪拌しながら投入すると、無定形固体が沈殿した。デカンテーションにより溶媒を除去した後、大量のヘキサンで3回洗浄を行った。得られた無定形固体を100℃で6時間真空乾燥することにより目的の比較化合物セルロースエチルカルバメート(CTC−1)を無定形固体として得た(15.6g)。
合成例11においてKC−フロックをメチルセルロース(メトキシ置換度1.6)に変更した以外は同様にして目的の比較化合物(P−11)を白色固体として得た(4.0g)。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた3Lの三ツ口フラスコにKC−フロック10g、DMAc200mLを量り取り、室温で攪拌・分散した。ここに粉末水酸化ナトリウム14.8gを添加し、60℃で1時間攪拌し、室温に戻した後、ヨウ化メチル52.5gをゆっくりと滴下し、50℃で3時間攪拌した。さらに、ここにエチルイソシアネート44mLをゆっくりと滴下した後、ジブチルスズジラウレート0.5mLを添加し、80℃にて5時間攪拌した。反応後、室温に戻し、メタノール10mLを加えてクエンチした。反応溶液をアセトン200mLで希釈した後、ヘキサン2Lへ激しく攪拌しながら投入すると、無定形固体が沈殿した。デカンテーションにより溶媒を除去した後、大量のヘキサンで3回洗浄を行った。得られた無定形固体を100℃で6時間真空乾燥することにより目的の比較化合物(MCEC−1)を無定形固体として得た(9.6g)。
上記で得られた各セルロース誘導体(P−1〜P−11) 4gを、塩化メチレン/メタノール/ブタノール(53g/14g/4g)混合溶媒に溶解し、これを加圧ろ過した。得られたドープをA3大の疎水性ガラス板上でアプリケーターを用いて、流延製膜した。これを25℃密閉系で1分間レベリングし、続いて45℃の送風乾燥機中で8分間乾燥した。ガラス板からフィルムを剥ぎ取り、ステンレス製の枠に挟み、これを100℃の乾燥機中で10分間、140℃の乾燥機中で30分間乾燥を行い、フィルムF−1〜F−11をそれぞれ作製した。
また、同様にして、セルロースエチルカルバメート(CTC−1)、メチルセルロース(MC、メトキシ置換度1.8)、エチルセルロース(EC、エトキシ置換度2.6)、及び上記合成例13にて合成したメチルセルロースエチルカルバメート(MCEC−1)をそれぞれ製膜し、フィルムF−12〜F−15をそれぞれ作製した。
作製した各フィルムの面状を、官能的に下記のとおり評価した。結果を下記表1に示す。
(面状)○:透明で均一な状態
△:白濁した状態
×:製膜できない
一方、脂肪族カルバメート基のみからなるCTC−1を用いて作製した、比較例1のフィルムF−12は、製膜適性が悪く、製膜できなかった。
また、メチルセルロース及びエチルセルロールは、フィルム成形性が悪く、それらを用いて作製した比較例2及び3のフィルムF−13及び14は、力学強度及び面状が悪く、光学特性評価に至らなかった。
エーテル及びカルバメートの双方の置換基を有するものの、DSB<DSCであるMCEC−1は、比較例2及び3と同様、フィルム成形性が悪く、それを形成した比較例4のフィルムF−15は、力学強度及び面状が悪く、光学特性評価に至らなかった。
即ち、セルロース中の水酸基の水素原子を、脂肪族基及び脂肪族カルバメート基の双方で置換することで、製膜性(適度な力学強度)と所定の光学特性(大きなRth)の発現という予期せぬ効果が得られたことが理解できる。
よって、エーテル及びカルバメートの双方の置換基を有するとともに、所定の関係式を満足するセルロース誘導体によって、本発明の効果が得られることが理解できる。
上記作製したフィルムF−1とセルロースアシレートフィルム(富士フイルム(株)社製、フジTAC)を60℃の水酸化ナトリウム1.5N水溶液中で2分間浸漬した。この後、0.1Nの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、水洗浴を通し、鹸化処理したF−1とフジTACを得た。
VA型液晶セルを使用した26インチ及び40インチの液晶表示装置(シャープ(株)製)に液晶層を挟んで設置されている2対の偏光板のうち、観察者側の片面の偏光板を剥がし、粘着剤を用い、代わりに上記偏光板Pol−1を貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置して、液晶表示装置を作製した。得られた液晶表示装置の色ムラを観察した。本発明の偏光板Pol−1を組み込んだ液晶表示装置は色ムラが無く、非常に優れたものであった。
Claims (5)
- 下記一般式(1)で表される重合単位を少なくとも有し、且つ下記数式(I)及び(III)〜(V)を満たすセルロース誘導体を含有することを特徴とするフィルム。
(I) DSB≧DSC
(III) 1.6≦DS B ≦2.8
(IV) 0.1≦DS C ≦1.2
(V) 0≦DS A ≦0.5
[式中、DS A は、上記単位中にR 2 、R 3 及びR 6 として存在する水素原子の数であり、DSBは、上記単位中にR2、R3及びR6としてそれぞれ存在するメチル基またはエチル基の数であり、DSCは、同単位中にR2、R3及びR6としてそれぞれ存在する脂肪族カルバメート基の数であり、DSc>0であり、且つDSB+DSC≦3である。また、DS A +DS B +DS C =3である。] - 請求項1に記載のフィルムからなる、又は該フィルムを含むことを特徴とする光学補償シート。
- 偏光子と、請求項1に記載のフィルムとを少なくとも有することを特徴とする偏光板。
- 請求項1に記載のフィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
- 下記一般式(1)で表される重合単位を少なくとも有し、且つ下記数式(I)及び(III)〜(V)を満足するセルロース誘導体。
(I) DSB≧DSC
(III) 1.6≦DS B ≦2.8
(IV) 0.1≦DS C ≦1.2
(V) 0≦DS A ≦0.5
[式中、DS A は、上記単位中にR 2 、R 3 及びR 6 として存在する水素原子の数であり、DSBは、上記単位中にR2、R3及びR6としてそれぞれ存在するメチル基またはエチル基の数であり、DSCは、同単位中にR2、R3及びR6としてそれぞれ存在する脂肪族カルバメート基の数であり、DSc>0であり、且つDSB+DSC≦3である。また、DS A +DS B +DS C =3である。]
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