以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1ないし図3は、本発明の一実施の形態に係る液状物吐出装置の断面図である。なお、図1ないし図3は、互いに異なる状態を表している。
図1ないし図3に示したように、本実施の形態に係る液状物吐出装置1は、液状物2を貯留する筒状容器3を備えている。筒状容器3は、シリンジ10と、このシリンジ10の先端側(図1ないし図3における下方)の部分に装着されたノズル部材20とを有している。液状物吐出装置1は、更に、筒状容器3内に挿通された軸状部材30と、軸状部材30を軸方向に往復運動させる駆動装置40と、筒状容器3内において軸状部材30の周囲に配置された鞘状部材50と、この鞘状部材50に連結された固定部材60とを備えている。以下の説明では、シリンジ10から見てノズル部材20側を先端側あるいは下方と言い、反対側を後端側あるいは上方と言う。
ノズル部材20は、シリンジ10の先端側の部分に接続される円筒形状の接続部21と、この接続部21の先端側に設けられたノズル22とを含んでいる。ノズル22は、液状物を吐出する吐出側端部22aとその反対側の入口側端部22bとを有している。ノズル部材20は、更に、ノズル22の入口側端部22bに隣接する位置に配置された弁座(バルブシート)23を含んでいる。なお、図1ないし図3には、弁座23を、接続部21およびノズル22を含む部分とは別の部材で構成した例を示しているが、弁座23は接続部21およびノズル22と一体的に形成されていてもよい。
シリンジ10は、一定の内径を有する内径一定部分11と、内径一定部分11よりも弁座23に近い位置に配置され、内径一定部分11の内径よりも小さい内径を有する小径部分12と、内径一定部分11と小径部分12とを連結する連結部分13とを含んでいる。内径一定部分11における小径部分12とは反対側の端部には、開口部11aが形成されている。シリンジ10は、更に、開口部11aの周囲に配置されたフランジ部14を含んでいる。ノズル部材20の接続部21は、小径部分12に接続されている。
連結部分13は、内径一定部分11よりも弁座23に近い位置に配置され、弁座23に近づくに従って内径が徐々に小さくなっている。図1ないし図3には、連結部分13の形状が、円錐台の側面に相当する形状になっている例を示している。しかし、連結部分13の形状は、これに限らず、例えば、外側に突出するように湾曲した曲面形状になっていてもよい。連結部分13は、本発明における内径変化部分に対応する。
軸状部材30は、細長い円柱形状の第1の部分31と、第1の部分31よりも弁座23に近い位置に配置され、第1の部分31よりも小さい径を有する円柱形状の第2の部分32と、第1の部分31と第2の部分32を連結する連結部分33とを含んでいる。連結部分33は、第2の部分32に近づくに従って内径が徐々に小さくなる円錐台形状になっている。軸状部材30における軸方向の一方の端部(先端部)、すなわち第2の部分32の先端部には、円錐形状の弁構成部34が形成されている。弁構成部34は、弁座23と共に、筒状容器3に貯留された液状物2のノズル22への供給と遮断の切り替えを行う弁を構成している。弁構成部34は、軸状部材30が往復運動することによって弁座23に当接する状態と弁座23から乖離した状態とが選択されるようになっている。
弁座23および軸状部材30の材料としては、例えば、ステンレス、工具鋼、硬合金等の金属材料や、セラミック材料を用いることができる。また、弁座23および軸状部材30は、部分的に、クロム系やニッケル系等の金属材料によるめっきや、タングステンカーバイド系材料による溶射等の表面処理が施されたものであってもよい。
鞘状部材50は、円筒形状の第1の部分51と、第1の部分51よりも弁座23に近い位置に配置されたテーパー部分52とを含んでいる。第1の部分51の内径は、軸状部材30における第1の部分31の外径よりも大きく、鞘状部材50における第1の部分51の内周面と軸状部材30における第1の部分31の外周面との間には間隙が形成されている。テーパー部分52は、筒状であるが、その外径は弁座23に近づくに従って徐々に小さくなっている。すなわち、テーパー部分52の外周面の形状は、シリンジ10における連結部分13の内周面の形状に類似している。テーパー部分52の内径は、第1の部分51の内径よりも小さくなっている。また、図1に示したように、テーパー部分52は、弁構成部34が弁座23に当接した状態において、軸状部材30における連結部分33よりも下方に配置されている。テーパー部分52の内周面は、軸状部材30における第2の部分32の外周面に対して、わずかな間隙を介して対向している。
鞘状部材50の材料としては、例えば、ステンレス、銅、アルミニウム等の金属材料や、使用する液状物2に対して耐性のある樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂あるいはウレタンを用いることができる。上記の金属材料や樹脂材料のチューブは、市販されており、容易に入手することができる。そこで、このようなチューブを用いて鞘状部材50を形成してもよい。例えば、肉厚が0.5mm程度のステンレス製のチューブを切削加工して鞘状部材50を形成してもよい。この場合、鞘状部材50となるチューブと固定部材60となる肉厚部分とが一体化された物を加工して、鞘状部材50と固定部材60とが一体化された物を形成してもよい。鞘状部材50におけるテーパー部分52は、例えば、鞘状部材50となるチューブに対して、スエージ加工や、切削加工や、あるいはこれら両方の加工を施すことによって形成することができる。
固定部材60は、鞘状部材50の後端部に接続された第1の部分61と、第1の部分61の後端側に設けられた第2の部分62とを含んでいる。第1の部分61の外径は、鞘状部材50における第1の部分51の外径よりも大きい。第2の部分62の外径は、第1の部分61の外径よりも大きい。第1の部分61は、シリンジ10における内径一定部分11の開口部11aから内径一定部分11内に挿入されている。第2の部分62は、シリンジ10におけるフランジ部14の上に配置されている。第1の部分61の外周面にはOリング63が装着されている。このOリング63は、内径一定部分11の内周面に接している。また、固定部材60には、鞘状部材50における第1の部分51の内径と等しい内径を有し、軸状部材30を挿通させる孔60aが設けられている。
駆動装置40は、例えばソレノイドを用いたものになっている。この駆動装置40は、ケース41と、このケース41内に収納された励磁コイル42と、この励磁コイル42の中心部分に挿通された鉄芯43およびスプリング44と、調整ねじ45とを有している。ケース41には、鞘状部材50における第1の部分51の内径と等しい内径を有し、軸状部材30を挿通させる孔41aが設けられている。ケース41において孔41aを構成する面と軸状部材30における第1の部分31の外周面との間にはOリング46が設けられている。
軸状部材30における第1の部分31の後端部は、鉄芯43に接続されている。鉄芯43は、ケース41内において、軸状部材30における軸方向に移動可能になっている。スプリング44は、鉄芯43に対して押し下げる方向の力を付与している。励磁コイル42に通電していない状態では、スプリング44によって鉄芯43が押し下げられる。一方、励磁コイル42に通電している状態では、スプリング44の力に抗して鉄芯43が上方に移動する。このように鉄芯43が上下方向に移動することにより、鉄芯43に接続された軸状部材30が軸方向に往復運動するようになっている。調整ねじ45は、鉄芯43のストローク、すなわち軸状部材30のストロークを調整するものである。なお、駆動装置40は、ソレノイドを用いたものに限らず、軸状部材30を往復運動させることができるものであればよく、例えばエアアクチュエータであってもよい。駆動装置40としては、高速且つ正確に、応答性よく、軸状部材30を往復運動させることができるものが望ましい。
ケース41は、シリンジ10のフランジ部14と、固定部材60の第2の部分62とを挟み込んで、シリンジ10、固定部材60およびケース41を互いに固定する固定部41bを有している。この固定部41bによって固定部材60がシリンジ10に固定されることによって、鞘状部材50は筒状容器3に対して固定されている。このようにして、鞘状部材50は、筒状容器3内において、軸状部材30に連動しないように軸状部材30の周囲に配置されている。そして、鞘状部材50は、弁構成部34が弁座23に当接した状態と弁構成部34が弁座23から乖離した状態のいずれにおいても、筒状容器3に貯留された液状物2と軸状部材30の外周面の少なくとも一部とを隔てるようになっている。なお、軸状部材30の外周面とは、軸状部材30の外面のうち、軸方向の両端面を除いた面を言う。
図2は、軸状部材30のストロークを最も短く設定した場合において、弁構成部34が最も弁座23から離れた状態を示している。図3は、軸状部材30のストロークを最も長く設定した場合において、弁構成部34が最も弁座23から離れた状態を示している。軸状部材30のストロークの最小値は、弁構成部34が最も弁座23から離れた状態において弁構成部34と弁座23との間に液状物2の通過を妨げない程度の間隙が形成されるように設定される。
ケース41および固定部材60には、貫通する通気路70が形成されている。通気路70の一端部は、シリンジ10における内径一定部分11の開口部11aの近傍に配置され、内径一定部分11内の空間に連通している。通気路70の他端部は、ケース41の側面に配置されている。通気路70の他端部には、エア配管71が接続されている。
液状物吐出装置1は、更に、シリンジ10の内径一定部分11内において、液状物2の上に配置されるプランジャ80を備えている。プランジャ80における液状物2に接する面は、シリンジ10の連結部分13の内周面に対して平行な斜面になっている。プランジャ80には、鞘状部材50における第1の部分51の外径よりも若干大きな内径を有する孔が設けられている。これにより、プランジャ80は、液状物2の液面、すなわち液状物2の開口部11a側の表面の位置に応じて、内径一定部分11内を移動可能になっている。
液状物吐出装置1は、更に、ノズル部材20の周囲に配置され、ノズル部材20を加温するヒータ90を備えている。
液状物吐出装置1を用いて吐出する液状物2としては、例えば、接着剤や封止剤やコーティング剤がある。液状物2としての接着剤としては、例えば、熱または電磁波によって硬化する樹脂であって、電子部品を被実装物に実装する際に、電子部品と被実装物とを接着するために電子部品と被実装物との間に介在されるものがある。なお、液状物2は、液体に限らず、全体として流動するものであれば、微細な固体を含んでいてもよい。
ここで、図1ないし図3を参照して、筒状容器3、軸状部材30および鞘状部材50の位置関係について説明する。筒状容器3では、シリンジ10において、液状物2の液面、すなわち液状物2の開口部11a側の表面の位置に関して、最も開口部11aに近い限界位置が規定されている。図1ないし図3は、液状物2の液面が限界位置にある状態を示している。鞘状部材50の開口部11a側の端部すなわち後端部は、限界位置よりも弁座23から遠い位置に配置されていることが好ましい。この場合には、鞘状部材50の後端部が、常に、液状物2の液面よりも上方にあるため、鞘状部材50の後端部よりも上方の位置で、軸状部材30が液状物2に接することがない。鞘状部材50の後端部は、開口部11aと上記限界位置との間の領域内に配置されていてもよい。
鞘状部材50のノズル22側の端部は、弁座23よりも開口部11aに近い位置に配置されている。図2に示したように、鞘状部材50のノズル22側の端部は、弁構成部34が最も弁座23から離れた状態にあるときの弁構成部34よりも開口部に近い位置に配置されていてもよい。この場合には、鞘状部材50は、弁構成部34が弁座23に当接した状態と弁構成部34が弁座23から乖離した状態のいずれにおいても、筒状容器3内において液状物2と軸状部材30の外周面の一部とを隔てる。
あるいは、図3に示したように、鞘状部材50のノズル22側の端部は、弁構成部34が最も弁座23から離れた状態にあるときの弁構成部34と軸方向に関して同じ位置またはその位置よりも若干、弁座23に近い位置に配置されていてもよい。この場合には、鞘状部材50は、弁構成部34が弁座23に当接した状態では、筒状容器3内において液状物2と軸状部材30の外周面の一部とを隔て、弁構成部34が最も弁座23から離れた状態では、筒状容器3内において液状物2と軸状部材30の外周面の全体とを隔てる。
また、鞘状部材50のノズル22側の端部は、シリンジ10における小径部分12よりも開口部11aに近い領域内に配置されていてもよい。この場合、鞘状部材50のノズル22側の端部は、シリンジ10における連結部分13の内側に配置されていてもよい。なお、鞘状部材50のノズル22側の端部が、小径部分12の開口部11a側の端部と同じ高さの位置に配置される場合も、鞘状部材50のノズル22側の端部が上記の領域内に配置される場合に含まれる。
鞘状部材50の厚みは小さいほど好ましい。なお、鞘状部材50として市販のチューブを使用する場合には、鞘状部材50の厚みは0.2mm以上であることが好ましい。ただし、チューブを切削加工して鞘状部材50を形成する場合には、鞘状部材50の厚みが小さすぎると加工が困難になることから、鞘状部材50の厚みは0.5mm以上とすることが好ましい。鞘状部材50と軸状部材30との間の間隙の大きさは、鞘状部材50によって軸状部材30の往復運動が妨げられない程度であればよく、0.01〜1.0mmであることが好ましい。鞘状部材50における第1の部分51の外径は、大きくなるほど筒状部材3内に貯留可能な液状物2の容積が減少するので、大きすぎることは好ましくない。これらのことから、鞘状部材50における第1の部分51の外径は、軸状部材30における第1の部分31の外径よりも、0.5〜3.0mmだけ大きいことが好ましい。
次に、シリンジ10、軸状部材30および鞘状部材50の径の関係について説明する。ここでは、一例として、液状物2に対する容量が10ccのシリンジ10を用いる場合を例にとって説明する。この場合のシリンジ10における内径一定部分11の内径は約15mmである。軸状部材30における第1の部分31の外径は、例えば1.0〜5.0mmの範囲内である。従って、第1の部分31の外径と内径一定部分11の内径との比である[第1の部分31の外径]/[内径一定部分11の内径]の値は、例えば1.0/15〜5.0/15の範囲内である。
鞘状部材50における第1の部分51の外径は、軸状部材30における第1の部分31の外径よりも、例えば0.5〜3.0mmだけ大きい。すなわち、第1の部分51の外径は、例えば1.5〜8.0mmの範囲内である。従って、第1の部分51の外径と内径一定部分11の内径との比である[第1の部分51の外径]/[内径一定部分11の内径]の値は、例えば1.5/15〜8.0/15の範囲内である。
次に、本実施の形態に係る液状物吐出装置1の作用について説明する。シリンジ10およびノズル部材20を含む筒状容器3内には、液状物吐出装置1によって吐出すべき液状物2が貯留される。シリンジ10における内径一定部分11内において、液状物2の上にはプランジャ80が配置される。内径一定部分11内において、プランジャ80の上方の空間には、エア配管71および通気路70を通して高圧エアが適宜供給され、これにより大気圧以上の一定圧力が加えられる。
軸状部材30は、駆動装置40によって駆動されて、軸方向に往復運動する。図1に示したように、軸状部材30が最も下方に位置する状態では、弁構成部34が弁座23に当接し、液状物2のノズル22への供給は遮断される。そのため、この状態では、ノズル22の吐出側端部22aから液状物2は吐出されない。一方、図2または図3に示したように、軸状部材30が図1に示した位置よりも上方にあるときには、弁構成部34が弁座23から乖離し、前述のプランジャ80の上方の空間に加えられる圧力によって、液状物2がノズル22へ供給され、吐出側端部22aから吐出される。
次に、本実施の形態に係る液状物吐出装置1の効果について説明する。本実施の形態に係る液状物吐出装置1では、弁構成部34が弁座23に当接した状態と弁構成部34が弁座23から乖離した状態のいずれにおいても、鞘状部材50によって、筒状容器3に貯留された液状物2と軸状部材30の外周面の少なくとも一部とが隔てられる。そのため、本実施の形態によれば、鞘状部材50がない場合に比べて、軸状部材30の外周面と液状物2とが接触する領域の面積が減少する。その結果、本実施の形態によれば、往復運動する軸状部材30と液状物2とが接触することに起因した不具合が緩和される。
具体的には、まず、本実施の形態によれば、軸状部材30が受ける液状物2による粘性抵抗が低減される。これにより、本実施の形態によれば、軸状部材30の往復運動を高速化したり、液状物2の吐出の精度を向上させたりすることが可能になる。
次に、特にチキソ性の高い液状物2を用いた場合における本実施の形態に係る液状物吐出装置1の効果について説明する。鞘状部材50がない場合には、図13を参照して説明したように、液状物がシリンジの内周面の近傍に残って、シリンジ内に液状物が残っていながら液状物の吐出が不能になるという問題が発生する。これに対し、本実施の形態によれば、鞘状部材50がない場合に比べて、軸状部材30の外周面と液状物2とが接触する領域の面積が減少することから、上記の問題の発生を防止することができる。
なお、シリンジ10における小径部分12の内側では、軸状部材30の外周面の一部が液状物2に接触する。そのため、小径部分12の内側では液状物2の粘度の低下が起こり得る。しかし、小径部分12の内径が内径一定部分11の内径よりも小さいことから、小径部分12の内側における液状物2の粘度の低下は、小径部分12の内周面の近傍でも起こり得る。そのため、粘度の高い液状物2が小径部分12の内周面の近傍に残るという問題は発生し難い。
以上のことから、本実施の形態に係る液状物吐出装置1によれば、微少量の液状物2を安定して高精度に吐出することが可能になると共に、シリンジ10内に液状物2が残っていながら液状物2の吐出が不能になることを防止することができる。
ところで、鞘状部材50のノズル22側の端部がシリンジ10における小径部分12の内側に配置されていると、鞘状部材50の外周面と小径部分12の内周面との間に形成される液状物2の通路が狭くなりすぎる可能性がある。そこで、図1ないし図3に示したように、鞘状部材50のノズル22側の端部を、小径部分12よりも開口部11aに近い領域内に配置することにより、鞘状部材50によって小径部分12における液状物2の通路が狭くなることを防止することができる。特に、鞘状部材50のノズル22側の端部を、連結部分13の内側に配置することにより、小径部分12における液状物2の通路を狭めることなく、鞘状部材50によって、できるだけ長い領域にわたって軸状部材30の外周面を液状物2から隔てることが可能になる。
また、鞘状部材50のノズル22側の端部近傍にテーパー部分52を設け、テーパー部分52の外周面の形状を、シリンジ10における連結部分13の内周面の形状に類似した形状とすることにより、液状物2の通路を狭めることなく、鞘状部材50によって、できるだけ長い領域にわたって軸状部材30の外周面を液状物2から隔てることが可能になる。
次に、図4ないし図7を参照して、本実施の形態に係る液状物吐出装置1の第1ないし第4の変形例について説明する。本実施の形態において、鞘状部材50は、筒状容器3内において、液状物2と軸状部材30の外周面の少なくとも一部とを隔てるものである。そのため、鞘状部材50と軸状部材30との間の間隙への液状物2の浸入を防止する必要がある。特に液状物2の粘度が高い場合には、テーパー部分52の内周面と軸状部材30における第2の部分32の外周面との間の間隙の大きさを適当に設定することにより、鞘状部材50と軸状部材30との間の間隙への液状物2の浸入を防止することが可能である。
鞘状部材50と軸状部材30との間の間隙への液状物2の浸入をより確実に防止するために、シール部材を設けてもよい。第1ないし第3の変形例は、それぞれ異なるシール部材を設けた例である。
図4は、第1の変形例におけるシール部材の近傍を示す断面図である。図4において、記号L1で示す線は、弁構成部34が弁座23に当接した状態における軸状部材30の先端の位置を表している。また、記号L2で示す線は、弁構成部34が最も弁座23から離れた状態における軸状部材30の先端の位置を表している。第1の変形例では、鞘状部材50はテーパー部分52を有しておらず、鞘状部材50は一定の内径および一定の外径を有している。軸状部材30における第1の部分31の外周面には、シール部材としてのOリング53が装着されている。Oリング53は、鞘状部材50の内周面に接する。
図5は、第2の変形例におけるシール部材の近傍を示す側面図である。図5中の記号L1,L2で示す各線の意味は前述の通りである。第2の変形例においても、鞘状部材50はテーパー部分52を有しておらず、鞘状部材50は一定の内径および一定の外径を有している。第2の変形例では、シール部材として、伸縮可能なベローズ(蛇腹)状のカバー54が設けられている。カバー54の一端部は、鞘状部材50のノズル22側の端部近傍における外周面に固定されている。カバー54の他端部は、軸状部材30における第2の部分32の外周面に固定されている。カバー54は、使用する液状物2に対して劣化や溶解が生じない材料によって形成される。
図6は、第3の変形例におけるシール部材の近傍を示す側面図である。図6中の記号L1,L2で示す各線の意味は前述の通りである。第3の変形例においても、鞘状部材50はテーパー部分52を有しておらず、鞘状部材50は一定の内径および一定の外径を有している。第3の変形例では、シール部材として、伸縮可能な管状のカバー55が設けられている。カバー55の一端部は、鞘状部材50のノズル22側の端部近傍における外周面に固定されている。カバー55の他端部は、軸状部材30における第2の部分32の外周面に固定されている。カバー55は、使用する液状物2に対して劣化や溶解が生じない材料であって、柔軟性のある材料によって形成される。カバー55の材料としては、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマーを用いることができる。また、カバー55としては、柔軟性のある熱収縮チューブを用いてもよい。
図7は、第4の変形例における液状物吐出装置1を示す断面図である。第4の変形例では、シリンジ10の連結部分13における液状物2に接する面13aは、筒状容器3における軸方向に対して直交するように配置されている。第4の変形例において、鞘状部材50によって小径部分12における液状物2の通路が狭められないように、鞘状部材50のノズル22側の端部は、小径部分12よりも開口部11aに近い領域内に配置されていることが好ましい。また、第4の変形例では、プランジャ80における液状物2に接する面は、連結部分13における液状物2に接する面13aに対して平行な面、すなわち筒状容器3における軸方向に対して直交する面になっている。
次に、本実施の形態において用いる液状物2の好ましい性質について説明する。本実施の形態において用いる液状物2については、極端な高粘度では吐出に限度があることに加え、その製造においても原料の混練が困難であったり、攪拌の際に液状物2に取り込まれたエアの脱泡が困難であったりする等の弊害があることから、好ましい粘度範囲が存在する。具体的には、本実施の形態において用いる液状物2は、雰囲気温度23℃、相対湿度50%の環境下においてE型粘度計によって測定される、回転数1RPMにおける粘度が50〜1000Pa・secの範囲内の値になる性質(以下、第1の性質という。)を有していることが好ましい。また、本実施の形態において用いる液状物2は、雰囲気温度23℃、相対湿度50%の環境下においてE型粘度計によって測定される粘度に関して、回転数1RPMにおける粘度を回転数5RPMにおける粘度で除した値(以下、粘度比という。)が1.1〜6.0の範囲内の値になる性質(第2の性質という。)を有していることが好ましい。本実施の形態において用いる液状物2は、上記の第1の性質と第2の性質の両方を有していることがより好ましい。
また、本実施の形態において用いる液状物2は、雰囲気温度23℃、相対湿度50%の環境下においてE型粘度計によって測定される、回転数1RPMにおける粘度が100〜700Pa・secの範囲内の値になる性質(以下、第3の性質という。)を有していることがより好ましい。また、本実施の形態において用いる液状物2は、粘度比が1.5〜4.0の範囲内の値になる性質(第4の性質という。)を有していることがより好ましい。本実施の形態において用いる液状物2は、上記の第3の性質と第4の性質の両方を有していることがより好ましい。
次に、本実施の形態に係る液状物吐出装置1の効果を確認するために行った実験の結果について説明する。この実験では、本実施の形態における実施例の液状物吐出装置1と比較例の液状物吐出装置とを用いて、互いに異なる特性の3種類の液状物A〜Cに対する吐出状況を調べた。実施例の液状物吐出装置1において、鞘状部材50はステンレスチューブを用いて形成されている。また、実施例の液状物吐出装置1は、図6に示したように、シール部材として、ゴム製チューブよりなるカバー55を備えている。比較例の液状物吐出装置は、実施例の液状物吐出装置1から鞘状部材50およびカバー55を除いたものである。
液状物A〜Cは、いずれも、エポキシ樹脂、硬化剤および無機フィラーからなる熱硬化性接着剤である。雰囲気温度23℃、相対湿度50%の環境下においてE型粘度計によって測定される、回転数1RPMにおける粘度は、液状物Aでは80Pa・sec、液状物Bでは200Pa・sec、液状物Cでは400Pa・secである。また、粘度比は、液状物Aでは1、液状物Bでは2.5、液状物Cでは3.6である。
吐出状況は、液状物の吐出を繰り返し行ったときに、シリンジ10内の軸状部材30の周囲において液状物の陥没が発生したか否かで判定した。軸状部材30の周囲における液状物の陥没の度合いが小さいほど、吐出が良好に行われ、吐出不能となった時点でシリンジ10内に残留する液状物が少なくなる。下記の表1に、実験の結果を示す。なお、表1中の“粘度”とは、雰囲気温度23℃、相対湿度50%の環境下においてE型粘度計によって測定される、回転数1RPMにおける粘度である。また、表1中の“O”は、軸状部材30の周囲において液状物の陥没が発生しなかったことを表し、“×”は、軸状部材30の周囲において液状物の陥没が発生したことを表している。
表1に示した結果から分かるように、チキソ性がほとんど無く、且つ比較的低粘度の液状物Aに対しては、実施例の液状物吐出装置1でも比較例の液状物吐出装置でも、軸状部材30の周囲における液状物の陥没が発生せず、良好な吐出が行われた。一方、高粘度で、且つチキソ性を有する液状物B,Cに対しては、比較例の液状物吐出装置では、液状物のうち軸状部材30の近傍の部分が選択的にノズル22に供給される傾向が顕著に現れ、軸状部材30の周囲における液状物の陥没が発生した。その結果、液状物B,Cに対しては、比較例の液状物吐出装置では、吐出不能となった時点で、シリンジ10内に、当初の半分以上の液状物が残留した。これに対して、実施例の液状物吐出装置1では、液状物B,Cに対しても、軸状部材30の周囲における液状物の陥没が発生せず、良好な吐出が行われた。
上記の実験の結果から分かるように、本実施の形態に係る液状物吐出装置1は、特に、停止状態または停止に近い流動状態において粘度が高く、且つチキソ性が高いという性質を有する液状物2を用いる場合に顕著な効果を発揮する。上記の液状物2の性質は、特に、電子部品を配線基板や半導体装置等の被実装物に実装する際に、電子部品と被実装物とを接着するための樹脂に適した性質である。それは、上記の性質を有する液状物2は、液状物吐出装置1によって吐出する際には粘度が低くなるため吐出が容易になり、塗布された後には粘度が高くなって所望の位置から流れて拡がることなく、一定の形状を保つためである。本実施の形態に係る液状物吐出装置1によれば、上記の性質を有する液状物2を、被塗布物における微小面積の目標箇所に、安定して精度よく塗布することが可能になる。そのため、本実施の形態に係る液状物吐出装置1を用いることにより、高密度の実装や微小部品の実装を効率よく行うことが可能になる。
次に、本実施の形態に係る液状物吐出装置1を用いた液状物の塗布方法について説明する。この液状物の塗布方法は、本実施の形態に係る液状物吐出装置1を用いて、筒状容器3に貯留された液状物2を吐出し、吐出された液状物2を被塗布物に塗布する方法である。この液状物の塗布方法において使用される液状物2としては、前述の第1の性質と第2の性質の少なくとも一方を有しているものが好ましく、前述の第3の性質と第4の性質の少なくとも一方を有しているものがより好ましい。この液状物の塗布方法によれば、前述のように、被塗布物における微小面積の目標箇所に、安定して精度よく塗布することが可能になる。この液状物の塗布方法は、後述する電子装置の製造方法に用いることができる他、例えば、液晶ガラスや樹脂よりなる基板同士を接着および封止するための接着剤の塗布や、自動車のフロントガラスを車体に接着するための接着剤の塗布にも用いることができる。
次に、本実施の形態に係る液状物吐出装置1を用いた電子装置の製造方法について説明する。この電子装置の製造方法は、電子部品を被実装物に実装することによって、電子部品と被実装物とを含む電子装置を製造する方法である。この電子装置の製造方法は、熱または電磁波によって硬化する接着用樹脂を、電子部品と被実装物とを接着するために電子部品と被実装物との間に介在させる工程と、電子部品と被実装物との間に接着用樹脂を介在させた状態で、接着用樹脂に熱または電磁波を付与して、接着用樹脂を硬化させる工程とを備えている。接着用樹脂を電子部品と被実装物との間に介在させる工程は、本実施の形態に係る液状物吐出装置1を用いて、電子部品と被実装物の少なくとも一方に、液状物2としての接着用樹脂を塗布する工程を含んでいる。
上記の電子装置の製造方法において、被実装物は、例えば配線基板や半導体装置である。また、電子部品は、被実装物としての配線基板とは別の配線基板であってもよい。従って、電子装置の製造方法は、配線基板同士を接続して電子装置を製造する場合を含む。
次に、図8および図9を参照して、上記の電子装置の製造方法の具体的な一例について説明する。図8および図9は、それぞれ電子装置の製造方法の一例を説明するための斜視図である。この電子装置の製造方法は、電子部品120を回路基板110に実装することによって、電子部品120と回路基板110とを含む電子装置を製造する方法である。
図8は、電子装置の製造方法における一工程を示している。この工程では、回路基板110上の目標箇所に、本実施の形態に係る液状物吐出装置1を用いて接着用樹脂113を塗布する。接着用樹脂113は、熱または特定波長域の電磁波によって硬化する樹脂である。
図9は、次の工程を示している。この工程では、コレット(吸着保持具)140によって保持した電子部品120を、接着用樹脂113を介して回路基板110と対向する位置に配置する。次に、コレット140によって、電子部品120と回路基板110を、それらが互いに密着するように加圧すると共に、接着用樹脂113に熱または特定波長域の電磁波を付与して接着用樹脂113を硬化させる。これにより、電子部品120が回路基板110に実装され、電子装置が完成する。
以下、図10および図11を参照して、図8および図9に示した電子装置の製造方法について更に詳しく説明する。図10は、コレット140によって保持した電子部品120を、接着用樹脂113を介して回路基板110と対向する位置に配置する工程を示す断面図である。図10に示したように、回路基板110は、一方の面110aと、その反対側の面110bとを有している。また、回路基板110は、貫通する開口部111を有している。基板110は、更に、一方の面110aにおいて露出する複数の導体層112を有している。
電子部品120は、一方の面120aと、その反対側の面120bとを有している。また、電子部品120は、一方の面120aに配置された機能面121を有している。電子部品120は、例えば固体撮像素子であり、この場合、機能面121は受光面である。電子部品120は、更に、面120aにおいて、機能面121の周辺に配置された複数の電極122を有している。電極122は、例えばバンプである。前述の回路基板110の開口部111は、機能面121を露出させるためのものである。また、回路基板110の導体層112は、電子部品120の電極122に接続されるようになっている。
電子装置の製造方法において、回路基板110は、一方の面110aが上を向き、反対側の面110bが支持台130の上面に接するようにして、支持台130の上に載置される。支持台130は、回路基板110を吸着するための吸着孔131を有している。支持台130は、吸着孔131より回路基板110を吸引し保持する。この状態で、図8に示したように、回路基板110上の目標箇所に、本実施の形態に係る液状物吐出装置1を用いて接着用樹脂113を塗布する。回路基板110上の目標箇所とは、導体層112のうち電子部品120の電極122に接続される部分を含む箇所である。
次に、図10に示したように、コレット140によって、面120aが下を向くように電子部品120を保持する。コレット140は、電子部品120を吸着するための吸着孔141を有している。コレット140は、吸着孔141より電子部品120を吸引し保持する。また、コレット140は、温度調節可能なヒータを内蔵している。更に、コレット140は、垂直および水平方向に移動可能で、且つ保持した電子部品120に対して荷重を加えることができるようになっている。
次に、図11に示したように、コレット140を下降させて、機能面121が回路基板110の開口部111に対向し、且つ電極122が回路基板110の導体層112に対向するように、電子部品120を回路基板110上に配置する。
次に、回路基板110と電子部品120との間に接着用樹脂113を介在させた状態で、電極122と導体層112とを接触させ、接着用樹脂113に熱または特定波長域の電磁波を付与すると共に、電極122および導体層112を、それらが互いに密着するように加圧する。接着用樹脂113に熱を付与する場合には、例えばコレット140によって電子部品120を加熱する。この工程により、接着用樹脂113は硬化して、回路基板110と電子部品120とを接着すると共に、電極122と導体層112との接続部分の周囲を封止する。以上の一連の工程により、電子部品120が回路基板110に実装され、電子装置が完成する。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明の液状物吐出装置は、実施の形態で挙げた性質の液状物に限らず、種々の液状物を吐出するために使用することができる。
1…液状物吐出装置、2…液状物、3…筒状容器、10…シリンジ、20…ノズル部材、22…ノズル、23…弁座、30…軸状部材、34…弁構成部、40…駆動装置、50…鞘状部材、60…固定部材。