JP4741738B2 - プローブ担体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は担体上にプローブ担体を製造する方法に関し、特に、不良品の発生の正確なチェックを可能とするプローブ担体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
遺伝子DNAの塩基配列の解析、あるいは、同時に多項目に関し、高信頼性で遺伝子診断などを行う際、目的とする塩基配列を有するDNAを複数種のプローブを用いて選別することが必要となる。この選別作業に利用されるプローブ複数種を提供する手段として、DNAマイクロチップが注目を浴びている。また、薬剤等のハイスループット・スクリーニングやコンビナトリアル・ケミストリーにおいても、対象となるタンパク質や、薬物の溶液を多数(例えば、96種、384種、1536種)を並べ、秩序立ったスクリーニングを行うことが必要となる。その目的で多数種の薬剤を配列するための手法、その状態での自動化されたスクリーニング技術、専用の装置、一連のスクリーニング操作を制御し、また結果を統計的に処理するためのソフトウェア等も開発されてきている。
【0003】
これら並列的なスクリーニング作業は、基本的に、評価すべき物質に対して、選別する手段となる既知のプローブを多数並べてなる、いわゆるプローブ・アレイを利用することで、同じ条件の下、プローブに対する作用、反応などの有無を検出するものである。一般的に、どのようなプローブに対する作用、反応を利用するかは予め決定されており、従って、ひとつのプローブ・アレイに搭載されるプローブ種は、例えば、塩基配列の異なる一群のDNAプローブなど、大きく区分すると一種類の物質である。すなわち、一群のプローブに利用される物質は、例えば、DNA、タンパク質、合成された化学物質(薬剤)などである。多くの場合、一群をなすプローブ複数種からなるプローブ・アレイを用いることが多いが、スクリーニング作業性質によっては、プローブとして、同一の塩基配列を有するDNA、同一のアミノ酸配列を有するタンパク質、同一の化学物質を多数点並べ、アレイ状とした形態を利用することもあり得る。これらは主として薬剤スクリーニング等に用いられる。
【0004】
一群をなすプローブ複数種からなるプローブ・アレイでは、具体的には、異なる塩基配列を有する一群のDNA、異なるアミノ酸配列を有する一群のタンパク質、あるいは異なる化学物質の一群について、その一群を構成する複数種を、所定の配列順序に従って、アレイ状に基板上などに配置する形態をとることが多い。なかでも、DNAプローブ・アレイは、遺伝子DNAの塩基配列の解析や、同時に、多項目について、信頼性の高い遺伝子診断を行う際などに用いられる。
【0005】
この一群をなすプローブ複数種からなるプローブ・アレイにおける課題のひとつは、できるだけ多種類のプローブ、例えば、多種類の塩基配列を有するDNAプローブを一つの基板上に載せることである。換言するならば、如何に高密度にプローブをアレイ状に並べることができるかである。
【0006】
基板上にプローブ複数種をアレイ状に固定する一つの方法として、米国特許USP5,424,186号公報に記載される、光分解性の保護基とフォトリソグラフイーを用いた担体上でのDNAの逐次伸長反応により、互いに異なる塩基配列を有するDNAプローブをアレイ状に作製する手法を挙げることができる。この手法を利用すると、例えば、1cm2当たり10000種類以上の配列が異なるDNAを搭載したDNAプローブ・アレイの製造も可能でなる。なお、この手法では、逐次伸長反応によりDNAを合成する際、4種の塩基(A,T,C,G)毎に、それぞれ専用のフォトマスクを用いてフォトリソグラフイー工程をおこない、アレイの所定箇所に何れかの塩基を選択的に伸長させることで、所望の塩基配列を有する複数種のDNAを所定の配列で基板上に合成する。従って、DNAの鎖長が長くなると、製造に要するコストは高くなり、また、その製造に長時間を要する。加えて、各伸長段階における、ヌクレオチド合成の効率は100%ではないため、設計した塩基配列に欠損を生じたDNAの比率も小さくない。さらに、合成の際、光分解性の保護基を用いる場合、通常の酸分解性の保護基を用いる場合と比べて合成効率が落ちるため、最終的に得られるアレイにおいて、設計した塩基配列通りのDNAの占める割合が小さくなるという問題もある。
【0007】
また、担体上で直接合成した生成物をそのまま使用するものであるため、設計した塩基配列通りのDNAから欠損のある塩基配列を有するDNAを精製分別により取り除くことは勿論不可能である。その他に、最終的に得られるアレイにおいて、基板上に合成されているDNAの塩基配列を確認することができないという問題を秘めている。これは仮に、工程上のミスなどにより、ある伸長段階で所定の塩基の伸長がほとんどなされてなく、全くの不良品であった場合、この不良品プローブ・アレイを用いたスクリーニングは、誤った結果を与えるが、それを未然に防止する術が全くないことを意味している。この塩基配列を確認することができないということが、この手法における最大かつ本質的な問題である。
【0008】
前記の手法とは別な方法として、プローブ用のDNAを予め合成、精製し、場合によってはその塩基長を確認した上で、各DNAをマイクロディスペンサーのようなデバイスにより基板上に供給し、プローブ・アレイを製造する手法も提案されている。PCT公開公報WO95/35505号には、キャピラリーを用いて、DNAをメンブラン上へ供給する手法が記載されている。この手法を適用すると、原理的には、1cm2当たり1000個程度のDNAアレイの製造が可能である。基本的には、各プローブ毎に一本のキヤピラリー状ディスペンス・デバイスでプローブ溶液を基板上の所定位置へ供給し、その作業を繰り返すことで、プローブ・アレイを製造する手法である。各プローブ毎に専用のキヤピラリーを用意すれば、問題はないが、仮に、少数のキヤピラリーを用いて、同じ作業を行おうとすれば、相互汚染を防止するため、プローブ種を入れ替える際、キャピラリーを十分に洗浄する必要がある。また、供給する位置もその度毎に制御する必要がある。従って、多種類のプローブを高密度に配列するアレイの製造に適している手法とはいえない。加えて、プローブ溶液の基板への供給は、キヤピラリー先端を基板にタッピングして行うため、再現性・信頼性も完全とはいえない。
【0009】
また、特に薬剤のハイスループット・スクリーニングに利用される96ウェル、あるいは、384ウェルのマイクロプレートに対して、個々のウェル毎に、異なる薬剤溶液を供給するためマイクロ・ディスペンサー・デバイスも、例えば、Robbins Scientific 社からHYDRATMの商品名で市販されている。これは、基本的には、マイクロシリンジを2次元状に配列したものであり、最少吐出量は100nlである。仮に、これをアレイ形成に適用すると、この最少吐出量によりその密度は制限され、高密度化には限界がある。
【0010】
その他の手法として、基板上においてDNAの固相合成を行う際、各伸長段階毎に、インクジェット法により合成に必要な物質の溶液を基板上に供給する手法も提案されている。例えば、欧州特許公報EP 0 703 825B1号には、DNAの固相合成において利用される、ヌクレオチドモノマー、ならびに、アクティベ−ターをそれぞれ別のピエゾ・ジェット・ノズルより供給することにより、それぞれ所定の塩基配列を有するDNA複数種を固相合成する方法が記載されている。このインクジェット法による供給(塗布)は、上記キャピラリーを用いた溶液の供給(塗布)に比べ、供給量の再現性など信頼性も高く、また、ノズルの構造も微細化が可能なものであり、プローブ・アレイの高密度化には適した特徴を有している。しかしながら、この手法も、基本的には、基板上でのDNAの逐次伸長反応を応用するものなので、先に述べた米国特許(USP)第5,424,186号公報に記載される手法における最大の課題である、基板上に合成されているDNAの塩基配列を確認することができないなどの問題点は依然として残っている。各伸長段階毎に、専用のマスクを用いるフォトリソグラフィーの工程を行うという煩雑さは解消されるものの、プローブ・アレイに不可欠な要件である、各ポイントに所定のプローブが固定されているという点に、若干の問題を含むものである。なお、前記EP0,703,825B1号公報には、単独に形成されたピエゾ・ジェット・ノズルを複数個使用する方法しか記載されておらず、この少数のノズルを用いる際には、前述のキャピラリーを用いる手法と同様に、高密度のプローブ・アレイ製造には必ずしも適しているとはいえない。
【0011】
また、特開平11-187900号公報には、プローブを含む液体を液滴の吐出を熱によって行うサーマルインクジェットヘッドにより液滴として固相に付着させて、プローブを含むスポットを固相上に形成する方法が開示されている。この方法では、液体吐出のためのユニットとして一般のプリンタ用のインクジェットヘッドが使用されているが、このプリンタ用のインクジェットヘッドの構造は、プローブ・アレイの製造に最適なものでない場合がある。
【0012】
プリント用のインクジェットヘッドは、文字や画像の印刷のために開発されたものである。従って、使われる液体はモノクロ(一般的には黒)印刷の場合には一色(黒)のインク、カラー印刷の場合には、一般的に、色の三原色、すなわち、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)の3色のインクとなる。カラー印刷の場合には必要により、黒、または、Y、M、C、の濃淡インクを使用する場合があるが、多くても10種類以上のインクを使用することはない。
【0013】
また、紙面への印刷には多量のインクを用いるため、従来のインクジェット・プリンティング用のヘッドには、プリント用として十分な容量を有するインクを充填するためのタンク(リザーバー)と、インクをノズルへ導く流路と、インクを吐出するためのノズルが具備されている。
【0014】
これに対し、プローブ・アレイ製造時に液体を吐出させるために用いられる液体吐出装置は、これまで説明したように、出来るだけ多くの種類の液体を吐出させることが望まれる。そこで、プローブ溶液を収納する収納部をプローブ・アレイの製造に必要とされる多数種のプローブに対応する個数備え、各収納部に対応する吐出口を配置した液体吐出装置が望ましい。
【0015】
また、プローブ・アレイ製造用の液体吐出装置によるプローブ・アレイの製造では、従来の一般的なプリンティング用のインクジェットヘッドにより紙面に印字する場合ほど液体を消費するわけではないので、液体吐出装置のリザーバーの容積も比較的小さなもので十分である。
【0016】
さらに、一般的なプリンティング用のインクジェットヘッドでは、文字や画像の形成のために、紙面上の所望の位置に所望のインクを吐出する必要があり、そのため各ノズルを独立に任意のタイミングで選択出来るヘッド構成をとっている。その結果ヘッドは複雑な構成となっている。
【0017】
これに対し、プローブ・アレイ製造時に液体を吐出させるために用いられる液体吐出装置では、各ノズルを独立に任意のタイミングで選択出来る構成が必ずしも必要なわけではない。
【0018】
前記したように、従来の一般的なプリンティング用のインクジェットヘッドでは、各ノズルを独立に任意のタイミングで選択出来るヘッド構成を採っているが、この時、所望のノズルからインクを吐出させるために必要なパワートランジスタや、論理回路は、ヘッドの外部に設けても、ヘッドの内部に設けても良い。
【0019】
ところで、液体を吐出させる方式としては、ヒータから発生する熱エネルギーにより液体の吐出を行うバブルジェットジェット方式と、ピエゾ素子に電圧を印加して生じる素子の変形により液体の吐出を行うピエゾジェット方式がある。これらのうち、バブルジェット方式はピエゾジェット方式と比較して構造が簡単であり、ヘッドの小型化や多ノズル化に向いている。この点からは、プローブ・アレイ製造用の液体吐出ユニットにより多くのノズル数が望まれる場合は、サーマルジェット方式が適していると考えられる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、液体を液滴として噴射するインクジェットヘッドを用いてプローブアレイを製造する方法は、微少なプローブ液滴量を高密度に基板上に配列する、という点において優れている。
【0021】
DNAマイクロチップなどの固定化プローブチップは、学術的な研究や医療現場における各種のスクリーニングなどに用いられるものであり、各種検査における高度な測定感度が求められる場合が多い。そのような場合には、プローブ・アレイの製造中にプローブの配列ミスやプローブスポットの欠損が生じたものは不良品として使用できなくなる。このような不良品の発生を抑え、かつ発生した場合でも、それを正確にチェックできる技術が必要となる。
【0022】
例えば、100種を超えるプローブ溶液を使用する場合、溶液の取り違えや、プログラムミスによるプローブの配置違いが生じる可能性が皆無ではなく、医療現場におけるスクリーニングや診断に利用している場合には、医療ミスの発生の一因となって、人命に関わるケースもあり得る。
【0023】
本発明はこのような課題を解決するもので、その目的は、液滴としてプローブ溶液を吐出させる方式における多数スポットの形成の高速化と基固相板上での高密度化などを達成できるといった利点を維持し、かつ、得られたプローブ・アレイにおける配列ミスの正確な検査によって医療ミス等につながる不良プローブ・アレイの出荷を未然に防止することを可能とするプローブ・アレイの製造方法を提供することにある。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題の解決をはかるべく、鋭意研究を進めた結果、インクジェット方式を応用した液体吐出装置によってプローブ液滴のスポットを形成する際に、同一種のプローブ液滴によるスポットを少なくとも2つ形成し、それらのスポットを品質検査用と、ユーザーで利用される製品用とに区分し、品質検査用のスポットを用いてプローブ・アレイの品質を検査する品質検査工程を設けることで、スポットの抜けや配列ミスを正確にチェックすることができ、プローブ・アレイの製造歩留まりを格段に向上させることができることを見出した。
【0025】
すなわち、本発明のプローブ担体の製造方法は、プローブを含むプローブ溶液を液体吐出装置から担体上に吐出することで複数種のプローブが担体上に配置されたプローブ担体を製造する方法であって、
液体吐出装置に、少なくとも前記複数種のプローブ溶液に対応する数の液体吐出部を設け、各液体吐出部からこれら複数種のプローブの溶液を吐出させて固定し、これらの複数種のプローブのスポットが配置され、かつ該複数種のプローブの少なくとも1種について2以上のスポットを形成する工程と、
前記同一プローブの2以上のスポットを、品質検査用と製品用とに区分し、品質検査用のスポットに対して品質検査用の試薬を更に付与して品質検査を行う品質検査工程と
を有することを特徴とするプローブ担体の製造方法である。
【0026】
本発明のプローブ担体の製造方法には、担体上に複数種のプローブを配置したプローブ担体の製造に用いる液体吐出装置であって、前記プローブを含むプローブ溶液を収納するための液体収納部と、該液体収納部から供給されたプローブ溶液を吐出するための吐出口と、該液体収納部と該吐出口を共通に連通させる液路と、これらの吐出口からのプローブ溶液の吐出を可能とする吐出エネルギー発生手段と、を有する液体吐出部を備え、前記担体上に前記複数種のプローブの少なくとも1種について2以上のスポットが形成されるようにしたことを特徴とする液体吐出装置を用いることができる。
【0027】
この液体吐出装置と、担体を保持する保持手段と、液体吐出装置の担体に対する相対的な位置を合せるための位置合せ手段とを用いてプローブ担体の製造装置を得ることができる。
【0028】
本発明によれば、品質検査が必要と思われるプローブスポットについて、品質検査用と製品用の2種のスポットが形成され、品質検査用のスポットを用いることで、得られたプローブ・アレイ等のプローブ担体の品質検査を正確に行うことができる。
【0029】
また、この品質検査工程における試薬の滴下も液体吐出方式により行うことで、複数のスポットのうちの品質検査用のスポットのみを狙って試薬を滴下することが可能であり、基板面積を拡大すること無く、品質検査を正確に行うことが可能となる。
【0030】
本発明の方法に用いる液体吐出装置は、複数種のプローブ溶液に対応した個数の液体吐出部を少なくとも有して形成されてたものである。この液体吐出部としては、液体を収納する液体収納部と、液体を吐出するための吐出口と、該液体収納部から供給された液体を吐出させるための吐出エネルギー発生手段とを有する構成のものを好適に利用することができる。このような構成における液体吐出装置は、各液体吐出部の有する複数の吐出口が一次元または二次元アレイ状に配置されているものが好ましい。
【0031】
更に、この液体吐出部としては、同一液体収納部に対して複数の吐出口が設けられ、同時に複数個の同一プローブ溶液からなるスポットを担体上に形成する構成を有するものを用いることができる。このように、一つの液体収納部に対応して設けられた複数個の吐出口により複数のスポットを同時に形成する構成を用いることで、液体吐出装置と担体との相対移動なしに検査用スポットと製品スポットの両方を一度に形成することができ、相対移動に関わる誤作動の可能性を排除し、プローブ・アレイ等のプローブ担体を用いた各種試験や検査の信頼性をほぼ100%にすることができる。また、品質検査用のスポット径を製品用スポットの径に対して小さく設定することも可能であり、これによってプローブ溶液の使用量を必要最小限とすることができる。
【0032】
更に、液体吐出装置は、複数の液体吐出部が同一基板上に設けられたチップとして構成されたものが好ましい。このような構成は、基板上の所定位置に、ヒータ素子と、これに対応する位置に設けられたプローブ溶液の流路と、流路と連通し流路から供給されたプローブ溶液をヒータ素子の発熱により吐出するための吐出口とを形成し、更に、基板の裏面側に、流路と連通した液体収納部を形成することにより得ることができる。この構成では、吐出口、流路及び液体収納部が、基板を貫通する経路を構成している。なお、各ヒータ素子は互いに絶縁された第一と第二の配線にその両端が接続され、これらの第一と第二の配線を介して印可された電気信号により駆動される構成とすることができる。
【0033】
更に、このようなチップの複数を併設して1つの液体吐出装置を構成することができる。
【0034】
また、液体吐出部の構成としては、流路中にヒータ素子からの加熱により気泡を発生させることで吐出口から液体を吐出させるもので、この吐出動作中に気泡が吐出口を介して外気と連通する構成を好適に利用することができる。
【0035】
このようなチップ状に液体吐出装置を形成した場合には、吐出口からの液体吐出方向は、一次元または二次元アレイ状に配置されている吐出口がなす平面と垂直方向とされ、この吐出口が形成されている側と反対の側に、各吐出口に対応して液体収納部が設けられている液体吐出装置を好適に用いることができる。
【0036】
更に、液体収納部を用いる構成においては、液体収納部に接続される増量用の液体収納部をアレイ状に一体型に成形したプレートとし、このプレートを、平板チップ状に形成した液体吐出装置の液体収納部が設けられた裏面に重ね合わせて、それぞれが対応する液体収納部と増量用収納部とを接続した液体吐出装置を用いることができる。
【0037】
また、該液体吐出装置に於いてヒータ素子を駆動させるための構成は、ヒータに電圧を印加するためのアルミニウム等の配線、液体吐出装置と外部とを接続するパッドだけから構成される、簡便なものが好ましい。
【0038】
本発明では、複数種のプローブの内の少なくとも1種について、複数の同一のプローブからならスポットを形成する。この同一プローブのスポットは、その一部を品質検査用として利用できるものである。この品質検査用として区分されたスポットに対して品質検査用の試薬を付与して品質検査を行うことができる。この品質検査用の試薬の付与にも、試薬吐出用の液体吐出装置が好適に利用できる。
【0039】
【発明の実施の形態】
本発明にかかるプローブ担体の製造方法においては、複数種のプローブのスポットを含む二次元プローブ・アレイ等のプローブ担体の製造に際し、予め別途に作製したプローブを溶液として、所定の配列でアレイ状に吐出口を配置した液体吐出装置を用いて、各プローブ溶液を担体上に所望の液量で吐出させ、そこに付与することで、ドット状のプローブ溶液のスポットが形成される。この各プローブ溶液のスポット中のプローブが担体に固定されて、プローブ・アレイ等のプローブ担体が得られる。本発明の方法によれば、プローブ・アレイ等のプローブ担体におけるプローブの多種高密度化が達成される。
【0040】
以下に、本発明のプローブ担体の製造方法、ならびに製造装置に関して、より詳しく説明する。特に、ヒータ素子を用いて液滴の吐出を行う、いわゆるサーマルジェット方式の液体吐出装置によって各プローブ溶液を所望の液量ずつ担体上に吐出、塗布する工程を有するプローブ・アレイの製造方法を中心に説明する。
【0041】
一度に一個の吐出口から吐出されるプローブ溶液の量は、プローブ溶液の粘度、プローブ溶液と担体の親和性、プローブと担体との反応性などの様々の要素を考慮の上で、形成されるプローブ・アレイを構成する各ドット状スポットのサイズや形状に応じて、適宜選択されるものである。プローブ溶液は水性溶媒を用いることが一般的であり、本発明の方法においては、各吐出口から一度に吐出されるプローブ溶液は、一般的に、その液量を0.1ピコリットルから100ピコリットルの範囲に選択し、その液量に合わせて吐出口径などを設計・調整することが好ましい。
【0042】
このプローブ溶液が付与されるアレイ単位(一つのスポットが形成される単位領域)の占める面積は、0.01(例えば0.1μm×0.1μ)μm2から40000(例えば200μm×200μm)μm2が一般的であるが、これは、アレイ自体の大きさ、アレイ・マトリクスの密度により決まる。
【0043】
液体収納部を用いる場合のそのサイズや容量も、吐出口から一度に吐出するプローブ溶液の量、また、作製を予定するアレイ枚数によって適宜選択されるものである。なお、吐出口径の設定により、それから一度に吐出するプローブ溶液の量は自ずから一定の範囲となるので、液体吐出装置の複数の液体吐出部をシリコン等の半導体やガラスなどからなる基板を加工して一体型のチップ状に形成する際には、後述するように吐出口に対向する基板の裏面に液体収納部を一体成形できるサイズで十分な場合もある(図4及び5参照)。
【0044】
一方、一度に吐出口から吐出するプローブ溶液の量が比較的多く、また、製造する必要なアレイ枚数が多い場合には、プローブ溶液を基板に一体成形した液体収納部にその都度追加することにより、全アレイ枚数を製造する際に必要となる溶液量を賄う方法を用いることができる。それとは別に、基板の裏側に配置する液体収納部に、さらに増量用の液体収納部を接続可能な構成としてもよい。その際、プローブ溶液の追加は、増量用の液体収納部を介して行われ、必要に応じて基板側の液体収納部の形状自体は、プローブ溶液の供給が容易に行えるものにしておくことができる。
【0045】
このプローブ・アレイの製造に用いられるプローブ毎に、対をなす液体収納部と吐出口を対応させて液体吐出部を形成し、複数の液体吐出部に配置された吐出口を、好ましくは一次元または二次元アレイ状に配置して吐出口面を形成する。従って、対をなす液体収納部と吐出口とを備えた液体吐出部の数は、特に限定されるものではなく、必要とされるアレイのプローブ種に応じて選択されるものである。なお、ドット状スポットの径、スポット数、その密度、あるいは、アレイ全体としての配列パターン形状、更には液体吐出部の総数は、基本的には必要とされるプローブ種の数により決定される。
【0046】
本発明の方法において、一般に、基板上に二次元アレイ状に配置するプローブは、大きな意味における種類は同じ種類とする。
【0047】
なお、担体に固定されるプローブは、特定のターゲット(標的)によって特異的に認識され得るもので、しばしばリガンドと呼ばれるものである。更に、このプローブには、特定の標的によって認識され得るオリゴヌクレオチドやポリヌクレオチド、あるいはその他のポリマーなどが含まれる。用語「プローブ」は、個々のポリヌクレオチド分子などのプローブ機能を有するプローブ分子そのものを意味する場合と、分散した状態等で担体表面に固定された同じ配列のポリヌクレオチドなどの同じプローブ機能を有するプローブ分子の集団を意味する場合がある。また、プローブは、リガンド−抗リガンド対の一部として標的と結合し得るか、または結合するようになり得るものである。本発明におけるプローブ及び標的は、天然において見出されるような塩基、またはそのアナログを含み得る。
【0048】
なお、本発明の方法により製造されるプローブ担体に採用されるプローブは、その使用目的に応じて、適宜選択されるものであるが、本発明の方法を好適に実施する上では、プローブとしては、DNA、RNA、cDNA(コンプリメンタリーDNA)、PNA、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、その他の核酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、タンパク質、酵素、酵素に対する基質、抗体、抗体に対するエピトープ、抗原、ホルモン、ホルモンレセプター、リガンド、リガンドレセプター、オリゴ糖、ポリ糖のいずれかであることが好ましく、必要に応じてこれらの2種以上を組合せて用いることができる。
【0049】
本発明においては、これらのプローブの複数種を、それぞれ独立した領域、例えばドット状スポットとして担体表面に固定したものをプローブ担体といい、プローブのスポットの多数が平面状に配列された、すなわち二次元アレイ状に配列されたものをプローブ・アレイという。このプローブ担体には、DNAマクロアレイ、DNAチップ、プローブ・アレイと一般的に呼ばれている検査用のプレートやチップが含まれる。
【0050】
一方、本発明の方法では、プローブは担体表面に結合可能な構造を有しており、担体上へのプローブの固定がこの結合可能な構造を介して行われていることが望ましい。その際、プローブが有する担体表面に結合可能な構造は、アミノ基、スルフィドリル基、カルボキシル基、水酸基、酸ハライド化物(ハロホルミル基;−COX)、ハライド化物(−X)、アジリジン、マレイミド基、スクシイミド、イソチオシアネート、スルフォニルクロリド(−SO2Cl)、アルデヒド(ホルミル基;−CHO)、ヒドラジン、ヨウ化アセトアミドなどの有機官能基を導入する処理により形成されたものであることが好ましい。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、ここに示す実施例は、本発明における好ましい実施形態の一例ではあるものの、本発明は、これら実施例により限定されるものではない。
【0052】
先ず、プローブ溶液の吐出工程に用いる吐出口が二次元アレイ状に配列され、液体の吐出に熱エネルギーを用いる液体吐出装置を用いたプローブ・アレイの製造装置について説明する。
【0053】
(プローブ溶液吐出用液体吐出装置の構造)
(実施例1)
図1は、液体吐出装置の一例の吐出口形成面の構造を示すための模式的平面図である。この液体吐出装置は、シリコンからなる基板に多数の液体吐出部を配列したチップからなる構造を有する。後に詳しく説明するが、本実施例ではこのチップを複数個用いて1つの液体吐出装置とし、これをプローブ・アレイの製造装置の液体吐出手段(液体吐出ユニット)として用いる。なお、この液体吐出装置の機能の大部分はチップの構成に依存する。
【0054】
図1は、本発明に用いる液体吐出装置の基本的な構成を説明するためのもので、便宜上各液体吐出部が1つの吐出口(ノズル)を有する構成を示している。本発明に用いる液体吐出装置では、図2のノズル近傍部の拡大図(図1中の丸印で囲んだ部分に相当する)に示すような、1つの液体収納部(リザーバー)に対して、1つのヒータ素子と1つのノズルからなる組を2組配置した構成が好適に利用される。
【0055】
図1及び2において、1はシリコンからなる基板、2はTaN、TaSiN、TaAl等から成るヒータ素子、3はアルミニウム等からなる第一の配線、4はアルミニウム等からなる第二の配線、5はユニットと外部との電気的接触をとるためのパッド、6はノズル、8は基板裏面に設けられ、基板表面側のノズルに供給するためのプローブ溶液を貯留する部分を構成する供給口である。供給口は、液体リザーバーとして機能するもので、後述するが、シリコンの異方性エッチングにより作成される。その際、この供給口8は、基板1の裏面では、その縁部が9(点線部)で示した部分まで広がった四角錐状の開口部を有している。この構成では、供給口、流路(後述する図3、4参照)、ヒータ素子及びノズルが個々に独立した液体吐出部を形成している。
【0056】
図1で白抜き矢印で示した方向は、後に詳しく説明するが、液体吐出装置を液体吐出ユニットとしてプローブ・アレイ製造装置に装着した際にこのユニットが移動する方向であり、以後、主走査方向と記述する。
【0057】
図2に示す様に、本実施例では、同一液体吐出部内で、一つの供給口に対して2個のノズルおよびヒータ素子が対応している。この同一液体吐出部内で隣合う一対のノズルおよびヒータ素子からなる2つの部分は隔壁で分離されており、1.27mm(20dpi)の間隔で並んでいる。それぞれのヒータ素子は一組の第一の配線および第二の配線と結合しており、2本の配線が基板端の2つのパッド(省略)を介して外部と接続している。
【0058】
チップは、図1の構成では、その横方向における隣接ノズル間隔が1.27mm(20dpi相当)で配置された8個のノズルからなる一次元状(直線状)のノズル列を5列並列に図1における縦方向に100dpiのオフセット(横方向でのズレ)で配列されている。図1の上下方向で隣接するノズル群の間隔も100dpiに設定されている。一つのノズル列における各ヒータ素子は、その両端を一対の第一および第二の配線と共通して接続されている。
【0059】
図2に示す構成における各ノズル間隔、各ノズル列間隔も、図1の態様に準じて設定されている。なお、図2の構成をとる場合における図1の上下方向で隣接するノズル列間の間隔は、例えば同一液体吐出部内で上下に近接して設けられた2つのノズル間の中心位置を基準として設定することができる。
【0060】
この図2における構成においても、一組のノズル列に含まれる16個のヒータ素子の各々は、一対の第一の配線および第二の配線に共通して接続されている。チップの長辺方向の長さは約12mm、短辺方向の長さは約7mmである。1つのチップでのノズル数は80個である。
【0061】
図3は、図2のA―A’線での断面図を示す。図4は、図2のB―B’線での断面図を示す。図5は、チップの裏面の模式図を示す(図1に示された半導体チップの裏面に相当)。図3、図4において図1、図2で用いたものと同一番号のものは同一の物を示す。また、10は絶縁膜、11は保護膜、12はノズル材、13はTa等から成る耐キャビテーション膜である。絶縁膜10は、シリコン基板を熱酸化して作成される熱酸化膜、CVDにより作成される、酸化膜、窒化膜、等いずれの膜でもよい。保護膜11は、CVDにより作成される、酸化膜、窒化膜、等いずれの膜でもよい。ノズル6及び流路7は、予めノズルおよび流路など有したノズル材を基板に貼り付けても、フォトリソグラフィー技術を用い半導体プロセスの延長で基板上に形成しても良い。
【0062】
特に、チップがより大きな面積で作製される必要がある場合、ノズルおよび流路を有したノズル材を半導体基板に貼り付ける方法では、ノズル材が大面積になるため貼り付け時のしわ、そり、位置ズレなどの問題が発生する場合があるので、フォトリソグラフィー技術を用いて基板上にノズル材料を積層して加工する製法が望まれる。フォトリソグラフィーを用いてノズルを形成する方法としては、例えば、特開昭62-264957号公報に記載される方法がある。
【0063】
供給口8は、例えばTMAH溶液を用いたシリコンの異方性エッチングにより作製され、図3に示したように、基板の裏面の水平面に対して、54.7度の角度で開口する。供給口8の形状は図6に示したように四角錐台の形状になる。本実施例では、基板表面での供給口の幅を図3に示したように100μmと設定し、またシリコン基板の1の厚さは625μmであるため、供給口の裏面での幅は約1mmとなる。
【0064】
従来のプリンティング用のインクジェットヘッドでは基板裏面に接続されたインクタンクとの接続部からヒータ部へインクを導くことが供給口の主目的であるが、前記したようにプローブ・アレイ製造用の装置では、液体の吐出量の総量が少ないため供給口を液体のリザーバーとして用いることが可能である。
【0065】
前記寸法の供給口では、液体リザーバーとして使用できる部分の体積は約0.23μlであり、本実施例では2個のノズルからの吐出量の合計は24plであるので、この体積は約9600枚のプローブ・アレイを作製できる量に相当する。チップを裏面から見た場合、供給口8は図5に示した形状になる。液体は基板裏面から図4に示したように、供給口8から基板表面に導かれ、流路7を通ってノズル6まで導かれる。すなわち、供給口(液体リザーバー)、流路及びノズルによって基板を貫通する経路が形成されている。
【0066】
ヒータの両端に電圧が印可されると、ヒータ近傍の液体が過熱され膜発泡を起こし、液体は図7に示したように吐出する。ノズルから吐出される液体の量は12plとした。この液滴量を得るためヒータは28μm×28μm、ノズルは22μmφとした。
【0067】
安定に液体を吐出させるためには、安定に膜発泡を起こすことが必須である。安定な膜発泡を起こすためには、ヒータに0.1ないし5μsの電圧パルスが印可されることが望ましい。また、プローブ・アレイに含まれる各プローブの量を精密にコントロールするためには、ノズルから吐出される液滴量が安定である、特開平4-10940号公報や特開平4-10941号公報、特開平4-10942号公報に記載されているような、ヒータにより加熱されることで発生した気泡が吐出口を介して外気と連通する方式が好ましい。
【0068】
更に、図8にチップを複数並列した液体吐出装置の模式図を示す。図8において、21はチップを25枚並列配置した部分を有する液体吐出装置であり、22は図1ないし図7で説明したチップ、23はノズルである。図8中チップ22は、論点を明確にするためノズル23のみを示している。この液体吐出装置では、チップ22は5行5列に配置され、1チップで80個のノズルを有しているため、1つのユニットが合計2000個のノズルを有する。
【0069】
図9に、複数のチップを並列配置する場合の構成の一例について示す。図9に示すように、アルミナ、樹脂等からなり、開口部25が形成された窓枠状の固定用の枠体24を用い、各開口部にチップ22を勘合挿入して固定することで多数のチップを並列した液体吐出装置を得ることができる。各チップのパッドは、枠体24に配置されたフレキシブル配線基板(不図示)により電気的にヘッド外部と接続されている。溶液は、供給口8に注入される。
【0070】
(プローブ・アレイ製造装置の構造)
図10に、液体吐出装置を液体吐出ユニットとして用いたプローブ・アレイ製造装置の一例の主要部の構造の模式図を示す。図10中、22は、液体吐出ユニット31はその移動を略平行に案内するシャフト、32はプローブ・アレイ製造用の担体が固定されるステージ、33はプローブ・アレイが形成される担体(本例ではガラス基板を使用)である。
【0071】
ユニットは図10中X方向を移動し、ステージはY方向を移動し、これらの動作によってユニットはステージに対して相対的に2次元状に移動できる。図10では複数のプローブ・アレイとなるガラス基板を固定し、プローブを付与する場合の構造を示したが、1枚の大きなプローブ・アレイとなるガラス基板上にプローブ・アレイを製造し、その後、該ガラス基板を切断してプローブ・アレイを得ても良い。
【0072】
(液体吐出ユニットを用いたプローブ溶液の付与法)
次にプローブ・アレイ製造法に関して説明する。図11にプローブ・アレイ製造装置を用いたプローブ溶液の付与法を説明するための模式図を示す。図11中41ないし42はチップ、33はプローブ・アレイである。図11では、プローブ・アレイの表面を表向きとして描いているので、チップのノズルの配置及び、主走査方向は、図8で示した物とは左右が逆になる。
【0073】
図11中41は、図8中で「1」で示したチップであり、42は図8中「2」で示したチップである。チップの構成は図1に示したように、8つのノズル群から構成される、ノズル群がオフセットされて配置されている。1つのノズル群内の各ヒータは前記したように1対の第一及び第二のアルミ配線に共通して接続されているため、これらの配線に接続されている1組のパッド間に電圧パルスを印可することにより、同一ノズル群内の全てのノズルから液体の吐出を起こすことができる。すなわち、吐出は16のノズルで同時に起こる。
【0074】
図8ないし図11で、チップに隣接して表示されている1、2、3、4、5の数字およびA、B、C、D、E,F、G、Hはノズル群の区別を示すために表示された物である。各ノズル群には図2に示す二つのノズルが含まれる。
【0075】
ます初めに、第一のノズル群の先頭によって、図11中、1A、1B、1C,1D,1E,1F,1G,1Hで示された8組16個のスポット(図中黒丸と白丸で示す)が形成される。次に、ヘッドが主走査方向に1.27mm(20dpi相当)移動したタイミングで第二のノズル群の16個のノズルから順次、吐出を行い、図11中、2A、2B、2C,2D,2E,2F,2G,2Hで示された8組16個のスポットを、プローブ・アレイ上で2列に並ぶように配列する。引き続き同様な操作で、第3ないし第5のノズル群から順次吐出を行い、プローブ・アレイ33の、第1列のプローブ群、80個が(図11中黒丸と白丸で示す)が配置される。この時、隣接したプローブの中心―中心間の距離は254μm(100dpi相当)である。つまり、第一のチップから吐出される40種類の液体は、プローブ・アレイ中の第一列のプローブ群を形成する。この様子を図11中43で模式的に示した。(40スポット中、1Aないし5Aの5スポットのみ示してある。)
次に、同様な操作で第二のチップから液体の吐出を行い、プローブ・アレイの第二列(図11中白丸で示した)のプローブを配置した。この際、第一のチップから作製される、第一列のプローブ群と、第二のチップから作製される、第二列のプローブ群と、の中心―中心間の距離は254μm(100dpi相当)となるように、駆動タイミングを調節した。
【0076】
更に、同様な操作により第3ないし第25のチップから液滴の吐出を行い、プローブ・アレイを作製した。(図11中、点線で囲まれたスポット)
以上説明したように、図8に示したヘッドから、100dpiの40行、25列(1000組、2000スポット)のプローブ・アレイを作製できる。このとき、各組の2つのスポットは同じリザーバーにつながっているので同じプローブ溶液を吐出していることが保証され、どちらかのスポット(例えば図11の黒丸)を品質検査用のスポットとして用いて、他方(例えば図11の白丸)を製品用として用いることができる。また、2つのスポットの距離は液体噴射装置上のノズルの間隔で決定されるため、基板の移動誤差などを含まず、非常に精度が良い。このため、二つのスポットが重なり合わない程度に近づいて配置することが可能であり、プローブ・アレイの大きさを小さくできる。
【0077】
このようにして形成された品質検査用のスポットを利用して、プローブ・アレイを製造した後に、品質検査工程を設けることができる。すなわち、前記の品質検査用スポットに対し試薬を滴下し、反応を観察することにより、所望の位置に所望のプローブが形成されていることが確認できる。この場合、目的のスポットにのみ試薬を滴下し、他のスポットには試薬が接触しないようにするためには、精密な位置制御と試薬量の制御が必要であり、この工程にも液体吐出方式を用いることが好ましい。この場合の試薬滴下装置の構成は図10に類似したものが好ましい。ただし、プローブ数と同数のノズル群、リザーバー群を持つ必要はなく、例えば複数のプローブに対して反応する試薬を用いれば液体吐出ユニットを簡略化でき、好ましくはチップ22が1つないし2つで構成された液体吐出ユニットを用いることも可能である。
【0078】
また、品質検査用スポットは一つに限る必要は無く、二つ以上の検査用スポットを設けてそれぞれに対して異なる試薬を適用することにより、少ない種類の試薬で確実に検査を行うことができる。本例では2つのノズルによって2つのスポットを形成したが、3以上のノズルを1つの液体リザーバーに対して設置してもよい。
【0079】
また、一つのノズルによって二つのスポットを形成してそれぞれ品質検査用、製品用とすることも可能である。ただし、2つのスポットを形成する間に基板の移動が行われるため、移動誤差を考えてスポット間の距離を離す必要があり、基板が大きくなってしまう場合がある。従って、より高密度でのスポット配置を達成する場合には、1つの液体リザーバーに対して予め複数のノズルを設けておくことで、ユニットを担体に対して走査する場合における制御系をより簡単なものとすることが出来るので好ましい。
【0080】
ユニットを構成するチップとして、シリコンを用いる場合に関してこれまで説明してきたが、上記したように、本発明ではヒータとヒータに接続された配線からなる簡便な構造であるため、シリコン基板を必ずしも用いる必要はなく、ガラス基板等、より安価な基板を用いて液体吐出ユニットの作製を行なうこともできる。
【0081】
本実施例では、80個のノズルを有す半導体チップを5行5列に配置してヘッドを作成する場合について述べたが、ノズル数や、配置の配列は実施例に示した構成に限られることはなく、自由に選ぶことができる。しかしながら、上述のように、半導体チップを用い1行25列のような一次元配列の液体吐出ユニットを作製した場合、主走査のみでプローブ・アレイが作成できるため、プローブ・アレイ製造装置の構造は、図10で示した構造より簡便なものとすることができる。
【0082】
(実施例2)
図12に本発明による液体吐出ユニットを構成する半導体チップの他の例の模式図を示す。図12はノズル近傍の拡大図であり、図2に対応するものであり、同じ番号は同じ部品を示す。
【0083】
図12に示す様に、本実施例では一つの供給口に対して2個のノズルおよびヒータが、供給口の両側に配置されている。二組のノズルおよびヒータの大きさは互いに異なっており、ヒータ36μm×36μm、吐出口26μmφおよびヒータ29μm×29μm、吐出口14μmφの組み合わせとなっている。前者は24plの液滴を吐出し、後者は8plの液滴を吐出するよう設計されている。ヒータサイズが異なることにより適切な駆動条件(電圧、パルス幅)が異なることから、それぞれのヒータは互いに異なる一組の第一の配線および第二の配線と結合しており、計2組の配線が基板端の2組のパッド(省略)を介して外部と接続している。チップは図1に示したように、図1において横方向に、隣接ノズル群間隔が1.27mm(20dpi相当)に配列された8個のノズル群からなる、1組のノズルグループが図1において5列、100dpiオフセットされて配列されている。また、隣接するノズル群の間隔も100dpiに設定されている。
【0084】
供給口の形状は図6に示したように四角錐台の形状になる。今回の試作では、基板表面での供給口の幅を図3に示したように100μmと設定し、またシリコン基板の1の厚さは625μmであるため、供給口の裏面での幅は約1mmとなる。チップの長辺方向の長さは約12mm、短辺方向の長さは約7mmである。
【0085】
(液体吐出ユニットを用いたプローブ溶液の付与法)
この液体吐出ユニットを用いて実施例1と同様にプローブ・アレイを製造した。異なる点は形成されたスポットが90μmφと60μmφと、大きさの異なる組み合わせとなることである。この60μmφのスポットに対して先ほどと同様に試薬を滴下して観察したところ、反応を確認することができた。これにより、プローブの使用量を48pl(24+24)から32pl(24+8)に減らすことができた。また、品質検査用と製品用のスポットの大きさが異なることから、医療現場での判定の際に混乱することがないことが期待される。
【0086】
(実施例3)
図13に本発明による液体吐出ユニットを構成する半導体チップの他の例の模式図を示す。図13はノズル近傍の拡大図であり、図2に対応するものであり、同じ番号は同じ部品を示す。
【0087】
図13に示す様に、本実施例では一つの供給口に対して11個のノズルおよびヒータが、供給口を挟んで片側に1個、反対側に10個配置されている。隣り合うノズルおよびヒータは隔壁(図示せず)で分離されており42.5μm(600dpi)の間隔で並んでいる。それぞれのヒータは互いに異なる一組の第一の配線および第二の配線と結合しており、計11組の配線が基板端の11組のパッド(省略)を介して外部と接続している。チップは図1に示したように、図1において横方向に、隣接ノズル群間隔が1.27mm(20dpi相当)に配列された8個のノズル群からなる、1組のノズルグループが図1において5列、100dpiオフセットされて配列されている。また、隣接するノズル群の間隔も100dpiに設定されている。
【0088】
供給口の形状は図6に示したように四角錐台の形状になる。今回の試作では、基板表面での供給口の幅を図3に示したように100μmと設定し、またシリコン基板の1の厚さは625μmであるため、供給口の裏面での幅は約1mmとなる。また、図13から解るように供給口の長辺は42.5×10=425μmとなり、結果として、チップの長辺方向の長さは約12mm、短辺方向の長さは約9mmとなる。
【0089】
(液体吐出ユニットを用いたプローブ溶液の付与法)
この液体吐出ユニットを用いた場合、まず、2列の先頭の1ノズルが吐出した後、主走査方向に液体噴射装置を移動させながら、移動速度に同期しながら残りの9個のノズルから、吐出した液滴が基盤上で最初の液滴に完全に重なるように吐出を行うことにより、基板上に、左側のノズル列の1個のノズルから吐出した溶液により形成したスポットと、右側の10個のノズルから吐出した溶液により形成したスポットと、の大きさの異なる2つのスポットを得ることができる。本例では24×24μmのヒータと11μmφの吐出口を用いて2.4plの液滴を吐出することにより、40μmと90μmの2つのサイズのスポットを得た。これによって、さらに品質検査用のプローブ量を減らし、効率アップとなった。
【0090】
この方法の利点は、ノズル数を変えることにより、異なるスポット径を容易に得ることができるだけでなく、製品用のスポットを複数のノズルから吐出された液滴の総合で形成するため、たとえ、一つのノズルの吐出が不整であっても影響が少ないことがある。本例では検査用のスポットは一つのノズルを使って形成したが、もちろん複数のノズルを用いることにより、不整吐出に備えても良い。また、複数のノズルから同時に吐出させることにより、大きさの異なる3個以上のスポットを形成することも可能である。
【0091】
(液体吐出ユニットを用いたプローブ溶液の付与法)
この液体吐出ユニットを用いた場合、まず、主走査および副走査を同時に行い、基板とヘッド間の相対運動において、ノズル配置と同じ円運動を行わせることにより、円周上のノズルから順次吐出されるプローブ溶液が基板上の同一地点に着弾するように駆動する。この後、主走査方向に1.27mm移動して円運動を繰り返すことにより、プローブ・アレイが完成する。
【0092】
参考例
(液体吐出ユニットを用いたDNAアレイの製造)
25.4mm×25.4mm×0.5mmtの溶融石英基板を1%の超音波洗剤GP−III(ブランソン)中で20分間超音波洗浄した後、水道水で超音波洗浄、流水洗浄を適宜行った。次に、80℃の1N NaCl中に20分間浸漬し、流水(水道水)洗浄、超純水超音波洗浄、流水(超純水)洗浄した。
【0093】
減圧蒸留して精製した、下記式(I):
【0094】
【化1】
【0095】
のアミノシランカップリング剤(KBM−603:化合物I 信越化学工業株式会社製)を1%の濃度で含む水溶液を室温下、1時間攪拌し、メトキシ基部分を加水分解させた。次に、上記基板を洗浄後速やかに前記シランカップリング剤水溶液に浸し、室温下、1時間浸漬した。その後、流水(超純水)洗浄し、窒素ガスを吹きつけて乾燥させ、次いで、120℃のオーブン中で1時間加熱定着させた。
【0096】
冷却後、下記式(II):
【0097】
【化2】
【0098】
のN−(6−マレイミドカプロキシ)スクシイミド(EMCS;化合物II)の0.3%溶液(エタノール:ジメチルスルホキシド=1:1)に基板を室温下、2時間浸漬し、 EMCSをアミノシランカップリング剤のアミノ基に反応させた。反応終了後、エタノール:ジメチルスルホキシド=1:1で1回、エタノールで3回洗浄し、窒素ガスを吹きつけて乾燥させた。
5’−ATGAACCGGAGGCCCATC−3’ ▲1▼(配列番号:1)
3’−TACTTGGCCTCCGGGTAG−5’ ▲2▼(配列番号:2)
上記する▲1▼の塩基配列に相補的な塩基配列である▲2▼の塩基配列を有し、かつ、5’末端にリンカーを介して上記基板表面に最終的に精製したマレイミド基と反応結合可能なメルカプト基(SH基:スルフィドリル基ともいう)を有するオリゴヌクレオチド(化合物III ベックス株式会社)を本実施例の検証に用いるプローブに利用した。式(III):
【0099】
【化3】
【0100】
のメルカプト基を導入したオリゴヌクレオチド(化合物III)を、液体吐出ユニットで吐出するための溶媒、すなわち、グリセリン7.5質量%、尿素7.5質量%、チオジグリコール7.5質量%、一般式(IV):
【0101】
【化4】
【0102】
で示されるアセチレンアルコール(例えば、商品名:アセチレノールEH 川研ファインケミカル株式会社)1質量%を含む水溶液に、吸光度が1.0になるように溶解させた。このオリゴヌクレオチド溶液を、実施例1で作製した液体吐出ユニットの液体リザーバーにマイクロディスペンサーを用いて供給した。なお、最終的なオリゴヌクレオチド溶液の充填を行う前に、作製した液体吐出ユニットに対して、溶媒と馴染ませる目的で、各液体リザーバー、ノズルは予め上記組成の溶媒による洗浄、ならびに必要に応じてオリゴヌクレオチド溶液で洗浄を行い、真空吸引による液体の除去を適宜繰り返した。
【0103】
その後、上記のマレイミド基を導入する処理を施した基板上にオリゴヌクレオチド溶液を吐出した。実施例1において作製したヘッドの設計仕様は、吐出される液滴1滴当たりの液量は24plであり、この吐出条件では、基板上に付与される液滴1滴の占めるドットの直径は、用いる溶液の粘度によって、70〜100μmの範囲となる。
【0104】
また、上記組成の溶媒は保湿性が高く、液体リザーバー内における乾燥、濃縮、ならびに、基板上に付与したオリゴヌクレオチド溶液の液滴が、次ぎ工程において、基板表面との反応による固定をなす前に、乾燥・固化を起こすことを防ぐことができる。
【0105】
この式(III)のオリゴヌクレオチド(化合物III)溶液を二次元アレイ状に付与した基板を、湿度100%の保湿チヤンバー内に室温下で1時間保持し、オリゴヌクレオチドのメルカプト基と基板上のマレイミド基との反応を行わせた。取り出した後、未反応のオリゴヌクレオチドを除去するため、基板を流水(超純水)中で約30秒洗浄した。
【0106】
次いで、上記オリゴヌクレオチドを固定するドットを二次元アレイ状に形成した基板について、ドット以外の表面にブロッキング処理を施すため、50mMリン酸緩衝液(pH=7.0、1MNaClを含む)にBSA(牛血清アルブミンシグマアルドリッチジャパン)を2%の濃度で溶解したブロッキング用溶液に1時間浸漬した後、前記50mMリン酸緩衝液で適宜洗浄し、この50mMリン酸緩衝液中で保存し、DNAアレイとした。
【0107】
(ハイブリダイゼーション反応によるDNAアレイのドット形状評価)
モデル標的DNAとして、式(V):
【0108】
【化5】
【0109】
のDNA分子、すなわち、実施例2に示す▲1▼の配列を有し、蛍光標識としてテトラメチルローダミンを5’末端に結合した化合物V(べックス株式会社より購入)を用いて調製された二次元アレイ上のプローブとのハイブリダイゼーション反応を行った。
【0110】
このハイブリダイゼーション反応は、調製したDNAアレイと、化合物Vを5nMの濃度で含むリン酸緩衝液(10mMリン酸緩衝液pH=7.0、50mMのNaClを含む)2mlとを用い、ハイブリパック中で行った。DNAアレイをモデル標的DNA溶液とともにハイブリパック中に封じ、恒温槽内で70℃まで加熱し、その後、50℃まで冷却し、その状態で10時間放置した。
【0111】
次に、DNAアレイをハイブリパックから取り出し、未反応の標的DNAを除去する目的で、ハイブリダイゼーション用の緩衝液で洗浄する。洗浄後、緩衝液で覆われた状態でスライドグラス上に基板を置き、カバーガラスで覆って、蛍光標識からの蛍光を観察した。この観察に使用した蛍光顕微鏡は、ECLIPSE E800(株式会社ニコン)に20倍対物レンズ(プランアポクロマート)と蛍光フイルタ(Y−2E/C)をセットしたものである。また、蛍光顕微鏡で観測される画像は、イメージインテンシファイヤー付きCCDカメラ(C2400−87 浜松ホトニクス株式会社)と画像処理装置(Argus50 浜松ホトニクス株式会社)を用いて、採り込みを行った。
【0112】
収録された画像に基づき、基板上に二次元アレイ状に形成した、化合物Vを固定したドット全てについて、蛍光が観察された。なお、その蛍光強度の平均値は、上記の測定装置の光強度指標で1750であった。また、その蛍光を発する各領域から、ドットの直径の平均値を算出したところ、約100μmであった。
【0113】
(256種のDNAプローブからなるDNAアレイの調製)
5’−ATGAACCGGAGGCCCATC−3’ ▲3▼(配列番号:1)
3’−TACTTGGCCTCCGGGTAG−5’ ▲4▼(配列番号:2)
▲3▼は実施例2の配列番号:1の塩基配列と同一であるが、実際は、発癌関連遺伝子p53のヌクレオチドの変異頻度が高い、二つのアミノ酸をコードする計4個の塩基部分(アンダーラインで示した)を含む18ヌクレオチドの領域である。▲3▼の塩基配列に完全に相補的な塩基配列が▲4▼であり(すなわち実施例2の配列番号:2の配列と同一)、▲3▼のアンダーラインで示した塩基に対応する部分をアンダーラインで示している。
5’−GATGGGN1N2TCN3N4GTTCAT−3’ ▲5▼(配列番号:3)
▲5▼は、▲4▼のアンダーラインで示した位置の塩基を、N1、N2、N3、N4で表したものである。これらN1、N2、N3、N4が、それぞれATGCの塩基の何れかに置換し、かつ、5’末端にメルカプト基を結合した計256種のオリゴヌクレオチド・プローブを合成した。これを、実施例1で作製したZBJヘッドを用いて、ガラス基板上に吐出し、反応結合することにより、256種のDNAプローブからなる二次元状のDNAプローブ・アレイを調製した。
【0114】
(ハイブリダイゼーションによる標的DNAの選別特性の評価)
調製した256種のDNAプローブ・アレイを用いて、ハイブリダイゼーション反応を行い、目的とする塩基配列を有する標的DNAの選別特性を検証した。
【0115】
モデル標的DNAとして、以下の塩基配列を有し、かつ、蛍光標識としてテトラメチルローダミンを5’末端に結合した4種のDNAを合成した。
5’−ATGAACCGGAGGCCCATC−3’ ▲3▼(配列番号:1)
5’−ATGAACGGGAGGCCCATC−3’ ▲6▼
(配列番号:4) C→G
5’−ATGAACGCGAGGCCCATC−3’ ▲7▼
(配列番号:5) C→G、G→C
5’−ATGAACGCGAAGCCCATC−3’ ▲8▼
(配列番号:6) C→G、G→C、G→A
上述のように▲3▼はp53遺伝子の正常配列に対して完全に相補的であり、▲6▼、▲7▼、▲8▼はそれに対して、塩基配列中に下線を付した塩基への置き換えが起こっている変異体のモデルである。
【0116】
この▲3▼、▲6▼、▲7▼、▲8▼の4種の配列をそれぞれ有する標的DNAについて、それぞれ個別にハイブリダイゼーションを行ったところ、調製したDNAアレイの各ドットのうち、それぞれの標的DNAに完全に相補的塩基配列を有するプローブのドットからのみ蛍光が観察され、他のドットからは蛍光は観察されなかった。それぞれ、蛍光が観察されたドットにおいて、観測される蛍光強度は、標的DNA▲3▼においては1830、標的DNA▲6▼においては1270、標的DNA▲7▼においては1520、標的DNA▲8▼においては1940であった。
【0117】
若干のバラツキはあるものの、標的DNA▲3▼における1830は、上記、DNAアレイのドット形状評価における平均値1750と統計誤差内で一致しており、その他の3種についても、概ね、その蛍光強度の差異は、有意なものとは言えない範囲である。従って、本発明の製造方法に従って、アレイ状の液体吐出装置を用いて、並列的にプローブ溶液を基板上に付与して調製したDNAアレイは、標的DNAの定量的な検出に十分に使用できる程度に均一性と再現性を有するプローブ量の固定がなされていることがわかる。
【0118】
【発明の効果】
以上説明したように、プローブ担体の製造において、ノズル群を二次元に配置した液体吐出装置を用い、さらに1種のプローブ溶液を複数のノズルから吐出して基板上に二つのスポットを形成することにより、各プローブに対して検査が可能になり、プローブ溶液の注入ミスや装置の誤作動による間違った配列のプローブ・アレイの出荷を未然に防ぐことができる。
【0119】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】液体吐出装置を構成するチップの模式図である。
【図2】本発明にかかる液体吐出装置の第1の実施例におけるノズル近傍部の拡大図である。
【図3】図2のA―A'線での断面図である。
【図4】図2のB―B' 線での断面図である。
【図5】液体吐出装置を構成するチップの裏面の模式図(図1に示されたチップの裏面に相当)である。
【図6】液体吐出装置を構成するチップの液体供給口(リザーバー)の形状を説明するための模式図である。
【図7】液体吐出装置での液体の吐出を説明するための模式図である。
【図8】液体吐出装置の模式図である。
【図9】液体吐出装置の模式図である。
【図10】液体吐出装置を液体吐出ユニットとして有するプローブ・アレイ調製用の装置の模式図である。
【図11】プローブ・アレイ調製方法の模式図である。
【図12】液体吐出装置の第2の実施例の模式図である。
【図13】液体吐出装置の第3の実施例の模式図である。
Claims (13)
- プローブを含むプローブ溶液を液体吐出装置から担体上に吐出することで複数種のプローブが担体上に配置されたプローブ担体を製造する方法であって、
液体吐出装置に、少なくとも前記複数種のプローブ溶液に対応する数の液体吐出部を設け、各液体吐出部からこれら複数種のプローブの溶液を吐出させて固定し、これらの複数種のプローブのスポットが配置され、かつ該複数種のプローブの少なくとも1種について2以上のスポットを形成する工程と、
前記同一プローブの2以上のスポットを、品質検査用と製品用とに区分し、品質検査用のスポットに対して品質検査用の試薬を更に付与して品質検査を行う品質検査工程と
を有することを特徴とするプローブ担体の製造方法。 - 前記液体吐出部の各々が、液体を収納する液体収納部と、液滴を吐出するための吐出口と、該液体収納部から供給された液体を該吐出口から吐出させるための液体吐出エネルギー発生手段とを有する請求項1に記載のプローブ担体の製造方法。
- 前記同一プローブ溶液からの2以上のスポットは互いに隣接して形成される請求項1または2に記載のプローブ担体の製造方法。
- 前記同一プローブ溶液の2以上のスポットは、直径の異なる2以上のスポットを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のプローブ担体の製造方法。
- 前記直径の異なる同一プローブ溶液からの2以上のスポットは、前記担体に前記吐出口から付与されるプローブ溶液の液滴数の違いによってこれらの直径が異なるものである請求項4に記載のプローブ担体の製造方法。
- 前記直径の異なる同一プローブ溶液からの2以上のスポットは、前記吐出口から前記担体に付与される1スポット形成のためのプローブ溶液の容量の違いによってこれらの直径が異なるものである請求項4に記載のプローブ担体の製造方法。
- 前記吐出口は前記液体吐出装置の表側の面に一次元または二次元アレイ状に配列された吐出口からなる吐出口群を形成している請求項2〜6のいずれか1項に記載のプローブ担体の製造方法。
- 前記吐出口群は、平行に配置された複数の吐出口の列からなる請求項7に記載のプローブ担体の製造方法。
- 前記液体吐出部の各々が有する前記液体吐出エネルギー発生手段が、熱エネルギーを発生するヒータ素子である請求項2〜8のいずれか1項に記載のプローブ担体の製造方法。
- 前記液体吐出部の各々が、前記ヒータ素子が設けられた基板と、該ヒータ素子に対応する位置に設けられたプローブ溶液の流路と、該流路と連通し該流路から供給されたプローブ溶液を該ヒータ素子の発熱により吐出するための吐出口と、該流路と連通した液体リザーバーと、を有し、
前記ヒータ素子は前記基板の表側の面に設けられており、前記液体リザーバーは前記基板の裏面側に設けられており、
これらの吐出口、流路及び液体リザーバーが前記基板を貫通する経路を形成したチップ中に構成され、
該ヒータ素子は互いに絶縁された第一と第二の配線にその両端が接続され、これらの第一と第二の配線を介して印可された電気信号により駆動される請求項9に記載のプローブ担体の製造方法。 - 前記液体吐出部は、前記ヒータ素子の駆動により前記吐出口からプローブ溶液を吐出させる際に前記流路中のプローブ溶液に気泡が発生し、該気泡が該吐出口を介して外気と連通する構造を有する請求項10に記載のプローブ担体の製造方法。
- 前記品質検査用の試薬の付与が、該試薬吐出用の液体吐出装置から行われる請求項1〜11のいずれか1項に記載のプローブ担体の製造方法。
- 前記プローブが標的物質を特異的に認識する物質である請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
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