しかしながら、特許文献1に開示のように、リモート型の衝突検出センサを用いて、画像認識方式や三角測距方式により低身長歩行者か高身長歩行者かを推定する場合には、衝突対象の格好が歩行者と似ている障害物を歩行者と誤って推定される恐れがあり、十分な推定精度を得ることが困難である。
また、検出した車速及び衝突衝撃力から衝撃対象の質量を計算して低身長歩行者か高身長歩行者かを推定する場合も、衝突対象の質量が歩行者と同じような障害物の場合には、これを歩行者と誤って推定される恐れがあり、やはり十分な推定精度を得ることが困難である。
このため、特許文献1に開示の歩行者保護対策バンパ装置にあっては、衝突対象が歩行者でないにも拘わらず、低位バンパの高さ調整が行われたり、衝突対象が低身長歩行者でないにも拘わらず、ストローク型衝撃吸収部材の移動抵抗が弱められたりする誤作動が生じる場合があり、装置の信頼性が損なわれることが懸念される。
また、上記の推定方法を採用して、上述した車両用二次衝突対策装置の駆動を制御しようとすると、衝突対象が歩行者でないにも拘わらず、車両用二次衝突対策装置が作動する場合があり、やはり装置の信頼性が損なわれることが懸念される。
したがって、かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、衝突対象が低身長歩行者か高身長歩行者かを高精度且つ迅速に推定でき、歩行者保護対策バンパ装置や車両用二次衝突対策装置等の歩行者保護装置に採用して、その装置の信頼性を向上できる車両用衝突対象推定方法及び装置を提供することにある。
上記目的を達成する請求項1に記載の発明は、車両が衝突した衝突対象の種類を推定する車両用衝突対象推定方法において、車両前部のバンパービームを覆うバンパフェイスのバンパビームとほぼ同じ高さ位置に第1センサを配置してその出力から車両前部の衝突対象への接触を監視し、車両前部のバンパビームよりも下方位置に第2センサを配置してその出力から車両前部の衝突対象への衝突に伴う衝撃加速度を監視し、更に、車両に車速センサを配置してその出力から車両の車速を監視し、第1センサが衝突対象の接触を検出すると共に、第2センサから出力される衝撃加速度信号波形が、予め設定した大小関係を満たす複数のピーク値を有し、且つ第1センサによる衝突対象の接触検出時点から所定番目のピーク値の発生時点までの時間が、ピーク値数と第1センサによる衝突対象の接触検出時点における車速とに応じて予め設定した歩行者体格種類推定用閾値以下のときは、衝突対象を低身長歩行者と推定し、歩行者体格種類推定用閾値を超えるときは、衝突対象を高身長歩行者と推定することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の車両用衝突対象推定方法において、車両前部のバンパビームとほぼ同じ高さ位置に第3センサを配置してその出力から車両前部の衝突対象への衝突に伴う衝撃加速度を監視し、第2センサのみが衝撃加速度を検出したときは、衝突対象を第1センサの設置高さよりも高さの低い小障害物と推定し、第2センサが衝撃加速度を検出すると共に、第1センサが衝突対象の接触を検出し、且つ第2センサから検出される初期衝撃加速度が、第1センサによる衝突対象の接触検出時点における車速と第3センサにより検出した初期衝撃加速度とに応じて予め設定した歩行者推定用閾値を超えるときは、衝突対象を低重心障害物と推定し、歩行者推定用閾値以下のときは、第2センサから出力される衝撃加速度信号波形のピーク値数及びその大小関係、並びに歩行者体格種類推定用閾値に基づいて、衝突対象が低身長歩行者か高身長歩行者かを推定することを特徴とする。
更に、上記目的を達成する請求項3に記載の発明は、車両が衝突した衝突対象の種類を推定する車両用衝突対象推定装置において、車両前部のバンパビームを覆うバンパフェイスのバンパビームとほぼ同じ高さ位置に配置されてバンパフェイスの衝突対象への接触を検出する第1センサと、バンパビームよりも下方位置に配置されて車両前部の衝突対象への衝突に伴う衝撃加速度を検出する第2センサと、車両の車速を検出する車速センサと、第2センサから出力される衝撃加速度信号波形のピーク値数と車速センサの出力から検出される車速とに応じて予め設定した歩行者体格種類推定用閾値を格納する記憶手段と、第1センサ、第2センサ及び車速センサの出力を監視し、第1センサが衝突対象の接触を検出すると共に、第2センサから出力される衝撃加速度信号波形が、予め設定した大小関係を満たす複数のピーク値を有し、且つ第1センサによる衝突対象の接触検出時点から所定番目のピーク値の発生時点までの時間が、ピーク値数と第1センサによる衝突対象の接触検出時点における車速とに応じて記憶手段に記憶された歩行者体格種類推定用閾値以下のときは、衝突対象を低身長歩行者と推定し、歩行者体格種類推定用閾値を超えるときは、衝突対象を高身長歩行者と推定する推定手段とを有することを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3の車両用衝突対象推定装置において、車両前部のバンパビームとほぼ同じ高さ位置に配置されて車両前部の衝突対象への衝突に伴う衝撃加速度を検出する第3センサを有し、記憶手段には、更に車速センサで検出される車速と第3センサで検出される初期衝撃加速度とに応じて設定された歩行者推定用閾値を予め格納し、推定手段は、第2センサのみが衝撃加速度を検出したときは、衝突対象を第1センサの設置高さよりも高さの低い小障害物と推定し、第2センサが衝撃加速度を検出すると共に、第1センサが衝突対象の接触を検出し、且つ第2センサから検出される初期衝撃加速度が、第1センサによる衝突対象の接触検出時点における車速と第3センサから検出される初期衝撃加速度とに応じて記憶手段に記憶された歩行者推定用閾値を超えるときは、衝突対象を低重心障害物と推定し、歩行者推定用閾値以下のときは、第2センサから出力される衝撃加速度信号波形のピーク値数及びその大小関係、並びに記憶手段に記憶された歩行者体格種類推定用閾値に基づいて、衝突対象が低身長歩行者か高身長歩行者かを推定することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4の車両用衝突対象推定装置において、推定手段の推定結果に基づいて推定信号を出力する推定信号出力手段を有することを特徴とする。
請求項1の発明によると、バンパフェイスのバンパビームとほぼ同じ高さ位置に設けられた第1センサによって車両前部の衝突対象への接触を監視し、バンパビームよりも下方位置に設けられた第2センサにより車両前部の衝突対象への衝突に伴う衝撃加速度を監視し、更に、車速センサで車両の車速を監視し、第1センサが車両前部の衝突対象への接触を検出すると共に、車両前部の衝突対象への衝突により第2センサから出力される衝撃加速度信号波形が、予め設定した大小関係を満たす複数のピーク値を有する場合に、衝突時点からの所定番目のピーク値の発生時点までの時間が、上記ピーク値数と衝突時の車速とに応じて予め設定した歩行者体格種類推定用閾値以下のときは衝突対象を低身長歩行者と推定し、歩行者体格種類推定用閾値を超えるときは衝突対象を高身長歩行者と推定する。
これによれば、第2センサがバンパビームよりも下方位置に設けられているので、例えば衝突対象が例えば子供等のように脚部がバンパビームよりも下方に位置する低身長歩行者であっても、車両前部の脚部への衝突に伴う衝撃加速度を検出することができ、予め設定された大小関係を満たす複数のピーク値を有する衝撃加速度信号波形を確実に得ることができる。
そして、低身長歩行者は高身長歩行者と比較して左右の脚部の間隔が狭いので、第2センサから出力される衝撃加速度信号波形は、ピーク値が3つある場合又は2つある場合のいずれの場合においても、衝突時の車速が同じであれば、衝突時点から最後のピーク値が発生する時点までの時間は、高身長歩行者の場合のほうが長くなる。したがって、衝突時点から最後のピーク値が発生するまでの時間を歩行者体格種類推定用閾値として第2センサから出力される衝撃加速度信号波形のピーク値数と車速とに応じて予め設定し、実際に第1センサが衝突対象Sの接触を検出した時点から第2センサより出力される衝撃加速度信号波形の最後のピーク値の発生時点までの時間と比較することによって、かかる時間が歩行者体格種類推定用閾値以下のときは低身長歩行者と推定し、歩行者体格種類推定用閾値を超えるときは長身長歩行者と推定することができる。したがって、衝突対象が低身長歩行者か高身長歩行者かの推定を高精度かつ迅速に行うことができ、例えば歩行者保護対策バンパ装置や車両用二次衝突対策装置等の歩行者保護装置に採用した場合に、その装置の信頼性を向上することができる。
請求項2の発明は、車両前部のバンパビームとほぼ同じ高さ位置に配置された第3センサにより車両前部の衝突対象への衝突に伴う衝撃加速度の監視を追加したものである。
これによれば、衝突対象がバンパビームよりも高さの低い小障害物の場合には、衝突対象は車体前部のバンパビームとほぼ同じ高さ位置に衝突することなく、バンパビームよりも下方に位置する車両前部の下部に衝突し、結果として車両の下方に巻き込まれることになり、第1センサにより車両前部の衝突対象への接触が検出されることはない。よって、第1センサにより車両前部の衝突対象への接触を検出することなく、第2センサが衝撃加速度を検出したときは、衝突対象を第1センサの設置高さよりも高さの低い小障害物と推定することができる。
そして、衝突対象が第1センサの設置高さよりも高く且つ重心が低い低重心障害物の場合には、衝突対象はバンパビームとほぼ同じ高さ位置で車両前部に衝突した後、倒れ込んで車両の下方に巻き込まれることになる。したがって、第1センサによって車両前部の衝突対象への接触が検出されると共に、第2センサ及び第3センサからはそれぞれ車両前部の衝突対象への衝撃に伴う衝撃加速度信号波形が出力され、特に第2センサから出力される衝撃加速度信号波形の初期衝撃加速度は比較的大きくなる。
一方、衝突対象が歩行者の場合には、衝突対象はバンパビームとほぼ同じ高さ位置の車両前部に衝突した後に、跳ね上げられて車両のフードの上に乗り上げることになる。したがって、第1センサによって車両前部の衝突対象への接触が検出されると共に、第2センサと第3センサからはそれぞれ車両前部の衝突対象への衝突に伴う衝撃加速度信号波形が出力され、特に第2センサから出力される衝撃加速度信号波形の初期衝撃加速度は比較的小さくなる。
よって、第2センサが衝撃加速度を検出すると共に、第1センサが衝突対象の接触を検出し、かつ第2センサから検出される初期衝撃加速度が、第1センサによる衝突対象の接触検出時点における車速と、第3センサにより検出した初期衝撃加速度とに応じて予め設定した歩行者推定用閾値を超えるときは、衝突対象を低重心障害物と推定することができ、歩行者推定用閾値以下のときは、衝突対象を歩行者と推定することができる。
そして、請求項1の発明と同様に、第2センサから出力される衝撃加速度信号波形のピーク値数及びその大小関係、並びに上記歩行者体格種類推定用閾値に基づいて、上記衝突対象が低身長歩行者か高身長歩行者かを推定することができる。
したがって、衝突した歩行者が低身長歩行者か高身長歩行者かの推定の他に、小障害物と低重心障害物とを、高精度に区別して推定することが可能となる。
請求項3の発明によると、バンパフェイスのバンパビームとほぼ同じ高さ位置に設けられた第1センサによって車両前部の衝突対象への接触を監視し、バンパビームよりも下方位置に設けられた第2センサにより車両前部の衝突対象への衝突に伴う衝撃加速度を監視し、更に、車速センサで車両の車速を監視し、第1センサが車両前部の衝突対象への接触を検出すると共に、車両前部の衝突対象への衝突により第2センサから出力される衝撃加速度信号波形が、予め設定した大小関係を満たす複数のピーク値を有する場合に、第1センサによる衝突対象への接触検出時点である衝突時点から所定番目のピーク値の発生時点までの時間が、ピーク値数と衝突時点における車速とに応じて記憶手段に記憶された歩行者体格種類推定用閾値以下のときは、衝突対象を低身長歩行者と推定し、歩行者体格種類推定用閾値を超えるときは、衝突対象を高身長歩行者と推定する。
これによれば、第2センサがバンパビームよりも下方位置に設けられているので、例えば衝突対象が例えば子供等のように脚部がバンパビームよりも下方に位置する低身長歩行者であっても、車両前部の脚部への衝突に伴う衝撃加速度を検出することができ、予め設定された大小関係を満たす複数のピーク値を有する衝撃加速度信号波形を確実に得ることができる。
そして、低身長歩行者は高身長歩行者と比較して左右の脚部の間隔が狭いので、第2センサから出力される衝撃加速度信号波形は、ピーク値が3つある場合又は2つある場合のいずれの場合においても、衝突時の車速が同じであれば、衝突時点から最後のピーク値が発生する時点までの時間は、高身長歩行者の場合のほうが長くなる。したがって、衝突時点から最後のピーク値が発生するまでの時間を歩行者体格種類推定用閾値として第2センサから出力される衝撃加速度信号波形のピーク値数と車速とに応じて予め設定し、実際に第1センサが衝突対象Sの接触を検出した時点から第2センサより出力される衝撃加速度信号波形の最後のピーク値の発生時点までの時間と比較することによって、かかる時間が歩行者体格種類推定用閾値以下のときは低身長歩行者と推定し、歩行者体格種類推定用閾値を超えるときは長身長歩行者と推定することができる。したがって、衝突対象が低身長歩行者か高身長歩行者かの推定を高精度かつ迅速に行うことができ、例えば歩行者保護対策バンパ装置や車両用二次衝突対策装置等の歩行者保護装置に採用した場合に、その装置の信頼性を向上することができる。
請求項4の発明は、車両前部の衝突対象への衝突に伴う衝撃加速度の監視する第3センサを車両前部のバンパビームとほぼ同じ高さ位置に追加したものである。
これによれば、衝突対象がバンパビームよりも高さの低い小障害物の場合には、衝突対象は車体前部のバンパビームとほぼ同じ高さ位置に衝突することなく、バンパビームよりも下方に位置する車両前部の下部に衝突し、結果として車両の下方に巻き込まれることになり、第1センサにより車両前部の衝突対象への接触が検出されることはない。よって、第1センサにより車両前部の衝突対象への接触を検出することなく、第2センサが衝撃加速度を検出したときは、衝突対象を第1センサの設置高さよりも高さの低い小障害物と推定することができる。
そして、衝突対象が第1センサの設置高さよりも高く且つ重心が低い低重心障害物の場合には、衝突対象はバンパビームとほぼ同じ高さ位置で車両前部に衝突した後、倒れ込んで車両の下方に巻き込まれることになる。したがって、第1センサによって車両前部の衝突対象への接触が検出されると共に、第2センサ及び第3センサからはそれぞれ車両前部の衝突対象への衝撃に伴う衝撃加速度信号波形が出力され、特に第2センサから出力される衝撃加速度信号波形の初期衝撃加速度は比較的大きくなる。
一方、衝突対象が歩行者の場合には、衝突対象はバンパビームとほぼ同じ高さ位置の車両前部に衝突した後に、跳ね上げられて車両のフードの上に乗り上げることになる。したがって、第1センサによって車両前部の衝突対象への接触が検出されると共に、第2センサと第3センサからはそれぞれ車両前部の衝突対象への衝突に伴う衝撃加速度信号波形が出力され、特に第2センサから出力される衝撃加速度信号波形の初期衝撃加速度は比較的小さくなる。
よって、第2センサが衝撃加速度を検出すると共に、第1センサが衝突対象の接触を検出し、かつ第2センサから検出される初期衝撃加速度が、第1センサによる衝突対象の接触検出時点における車速と、第3センサにより検出した初期衝撃加速度とに応じて予め設定した歩行者推定用閾値を超えるときは、衝突対象を低重心障害物と推定することができ、歩行者推定用閾値以下のときは、衝突対象を歩行者と推定することができる。
そして、請求項1の発明と同様に、第2センサから出力される衝撃加速度信号波形のピーク値数及びその大小関係、並びに上記歩行者体格種類推定用閾値に基づいて、上記衝突対象が低身長歩行者か高身長歩行者かを推定することができる。
したがって、衝突した歩行者が低身長歩行者か高身長歩行者かの推定の他に、小障害物と低重心障害物とを、高精度に区別して推定することが可能となる。
請求項5の発明によると、推定信号出力手段から衝突した歩行者が低身長歩行者か高身長歩行者かの推定結果に応じた推定信号を出力することができるので、その推定信号に基づいて車両用二次衝突対策装置や歩行者保護対策バンパ装置等の歩行者保護装置を適切に作動させて、歩行者を確実に保護することが可能となる。
以下、本発明による車両用衝突対象推定方法及び装置の実施の形態について、図を参照して説明する。
(第1実施の形態)
図1乃至図8は本発明の第1実施の形態を示すもので、図1は車両用歩行者推定装置を備える車両用二次衝突対策装置の概略構成を示す概念図、図2は衝突対象が小障害物の場合に得られる衝撃加速度信号を示す波形図、図3は衝突対象が低重心障害物の場合に得られる衝撃加速度信号を示す波形図、図4は衝突対象が子供等の低身長歩行者の場合の車両衝突態様を示す図、図5は衝突対象が子供等の低身長歩行者の場合に得られる衝撃加速度信号を示す波形図、図6は衝突対象が大人等の高身長歩行者の場合の車両衝突態様を示す図、図7は衝突対象が大人等の高身長歩行者の場合に得られる衝撃加速度信号を示す波形図、図8は図1に示す車両用歩行者推定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図1において、車両11には、前部にエンジンルーム12が設けられており、このエンジンルーム12の上部開口を開閉自在に塞ぐように前開き形式のフード13が設けられている。また、車両11の前部には、バンパビーム15が設けられていると共に、このバンパビーム15を覆うようにバンパフェイス16が設けられている。
バンパフェイス16は、例えば樹脂製品からなり、車両11が衝突対象Sに当たったときの衝撃力に応じて変形するようになっている。そして、バンパフェイス16のバンパ上部16aのほうがバンパ下部16bよりも車両前方に突出する寸法形状を有している。また、バンパフェイス16のバンパ上部16aとバンパビーム15との間、及びバンパフェイス16のバンパ下部16bとラジエータパネルロア(以下、このラジエータパネルロア17を略称してラジパネロアと言う)17との間にはそれぞれ発泡体等の衝撃吸収部材が介在され、歩行者保護対策構造が構成されている。
車両用二次衝突対策装置20は、フード13の後部に互いに左右に離間して設けられたフード保持機構21と、これら左右のフード保持機構21を介してフード13の後部を、衝突対象が子供等の低身長歩行者か大人等の高身長歩行者かに応じてそれぞれ所定量だけ跳ね上げる左右のアクチュエータ22とを有している。なお、図1では、左側のフード保持機構21及びアクチュエータ22のみを示している。
フード保持機構21は、通常時はフード13の開閉を行うヒンジ作用を果たし、フード13の後部を跳ね上げる際は、伸張したリンクでフード13の後部の最上昇位置を決める連結リンク機構兼用のヒンジとなっている。また、アクチュエータ22は、後述する車両用衝突対象推定装置30からの推定信号である駆動指令信号を受けて、図示しない点火装置によりガス発生剤に点火して、そのガスの急激な昇圧によりピストン23を衝突対象が低身長歩行者か高身長歩行者かに応じてそれぞれ所定ストロークだけ上昇させて、フード13の後部を跳ね上げるようになっている。
本実施の形態の車両用衝突対象推定装置30は、第1センサ31と、第2センサ32と、車速センサ34と、制御部35とを有している。
第1センサ31は、バンパビーム15の前方に位置するバンパフェイス16の裏側で、バンパビーム15の高さ位置とほぼ同じ高さ位置に取り付けられており、バンパフェイス16の変形や変位により衝突対象Sの接触を検出する、例えば感圧センサからなっている。
第2センサ32は、車両11の車両前部でバンパビーム15よりも下方に位置するラジパネロア17の前面に取付固定されており、バンパ下部16bの衝突対象Sへの衝突に伴う衝撃加速度を検出するもので、例えば加速度センサからなっている。車速センサ34は、例えば車軸に設けられて、車両11の車速を検出するようになっている。
また、制御部35は、第1センサ31、第2センサ32及び車速センサ34の各出力を入力して、衝突対象Sが歩行者か歩行者以外か、更に、歩行者の場合にはその体格種類、即ち子供等の低身長歩行者か大人等の高身長歩行者かを推定し、低身長歩行者または高身長歩行者と推定した際には、推定信号としてアクチュエータ22に低身長歩行者または高身長歩行者に応じた駆動指令信号を出力するようになっている。
この制御部35は、例えばマイクロコンピュータからなり、衝突対象Sを推定する推定手段である推定回路36と、所定の閾値を格納する記憶手段であるメモリ37と、推定回路36による推定結果に基づいて車両用二次衝突対策装置20のアクチュエータ22に対して推定信号として駆動指令信号を出力する推定信号出力手段である駆動指令信号発生回路38とを有しており、推定回路36において、第1センサ31、第2センサ32及び車速センサ34の出力と、メモリ37に格納されている所定の閾値とに基づいて、所定のプログラムに従って車両11に衝突した衝突対象Sが歩行者か歩行者以外か、且つ歩行者の場合には低身長歩行者か高身長歩行者かを推定し、低身長歩行者または高身長歩行者と推定した際に駆動指令信号発生回路38からアクチュエータ22に、低身長歩行者または高身長歩行者に対応する駆動指令信号を出力するようになっている。
なお、第1センサ31及び第2センサ32は、それぞれ1個でも良いし、車幅方向にそれぞれ複数個配置して、制御部35においてそれぞれ複数の検出信号の平均値を算出したり、最大の検出信号を選択したりして、アクチュエータ22を制御するようにしてもよい。
また、メモリ37には、衝突対象Sが歩行者の場合に、低身長歩行者か高身長歩行者かを推定するため、歩行者体格種類推定用閾値として、第1センサ31が衝突対象Sの接触を検出した衝突時点から第2センサ32より出力される衝撃加速度信号波形の最後のピーク値の発生時点までの時間を、衝撃加速度信号波形に現れるピーク値数及び車速に応じてマップ化して格納しておく。
以上のように、バンパフェイス16のバンパ上部16aの裏側でバンパビーム15の高さ位置とほぼ同じ高さ位置に第1センサ31を配置すると共に、バンパビーム15よりも低位置にあるラジパネロア17に第2センサ32を配置すると、衝突対象Sが例えばパイロンなどの標識板や車線分離帯のようなバンパビーム15よりも高さの低い小障害物の場合には、衝突対象Sはバンパフェイス16のバンパ上部16aに衝突することなく、バンパ下部16bに衝突し、結果として車両11の下方に巻き込まれることになるため、第1センサ31により衝突対象Sの接触が検出されることはない。これに対し、第2センサ32からは、図2に実線で示すような初期衝撃加速度の大きな衝撃加速度信号が出力される。
また、衝突対象Sが例えば内部に荷を収容したダンボール箱やゴミ箱等のようなバンパビーム15よりも高さが高く且つ重心が低い低重心障害物の場合には、衝突対象Sはバンパフェイス16のバンパ上部16aに衝突した後、倒れこんで車両11の下方に巻き込まれることになるため、第1センサ31により衝突対象Sの接触が検出されると共に、第2センサ32からは、図3に実線で示すような初期衝撃加速度の大きな衝撃加速度信号が出力される。
一方、衝突対象Sが子供等の低身長歩行者であり、図4に示すように車両前方を横切る方向を向いている場合には、バンパフェイス16のバンパ上部16aが低身長歩行者の左(右)大腿部のあたりに衝突するので、第1センサ31により衝突対象Sの接触が検出される。
そして、衝突時点における低身長歩行者の左右の脚部が車両進行方向に並んで揃っている場合には、車両11は、バンパフェイス16のバンパ上部16aが左(右)脚部の大腿部に衝突した後、その進行に伴って左(右)脚部の大腿部を移動させて左(右)脚部の膝部を右(左)脚部の膝部に干渉させ、その後、バンパ上部16aが右(左)脚部の大腿部に衝突して、低身長歩行者を跳ね上げることになる。したがって、第2センサ32から出力される衝撃加速度信号は、図5に実線で示すように、バンパフェイス16のバンパ下部16bが最初に左(右)脚部の膝下部に衝突した時点と、次に、左右の脚部の両膝部が干渉した時点と、その後、バンパ下部16bが反対側の右(左)脚部の膝下部に衝突した時点との3つの時点に顕著なピーク値R1,R2,R3を有する波形となり、左右の膝部が干渉した時点の2番目のピーク値R2が1番目のピーク値R1及び3番目のピーク値R3よりも小さくなると共に、2番目のピーク値R2及び3番目のピーク値R3の発生時刻は、車速に比例して早くなる。
また、衝突時点における低身長歩行者の左右の脚部が歩行者の歩行方向前後方向に開いている場合、換言すると、左右の脚部が車両の車幅方向に開いている場合には、バンパフェイス16のバンパ上部16aが左(右)脚部の大腿部に衝突した後に、右(左)脚部の大腿部に衝突して跳ね上げることになり、左右の脚部の両膝部は互いに干渉しない。したがって、第2センサ32から出力される衝撃加速度信号は、バンパフェイス16のバンパ下部16bが最初に左(右)脚部の膝下部に衝突した時点と、その後、反対側の右(左)脚部の膝下部に衝突した時点との2つの時点に顕著なピーク値R1,R2を有する波形となり、2番目のピーク値R2が1番目のピーク値R1よりも大きくなると共に、この2番目のピーク値R2の発生時刻も、車速に比例して早くなる。
他方、衝突対象Sが大人等の高身長歩行者であり、図6に示すように車両前方を横切る方向を向いている場合には、バンパフェイス16のバンパ上部16aが高身長歩行者の左(右)脚部の膝部のあたりに衝突するので、第1センサ31により衝突対象Sの接触が検出される。
そして、衝突時点における高身長歩行者の左右の脚部が車両進行方向に並んで揃っている場合には、車両11は、バンパフェイス16のバンパ上部16aが大人の左(右)脚部の膝下部に衝突した後、その進行に伴って左(右)脚部の膝部を移動させて反対側の右(左)脚部の膝部に干渉させ、その後、右(左)脚部の膝下部に衝突して、高身長歩行者を跳ね上げることになる。したがって、この場合、第2センサ32から出力される衝撃加速度信号は、低身長歩行者の場合と同様に、図7に実線で示すように、バンパフェイス16のバンパ下部16bが最初に左(右)脚部の膝下部に衝突した時点と、次に、左右の脚部の両膝部が干渉した時点と、その後、バンパ下部16bが反対側の右(左)脚部の膝下部に衝突した時点との3つの時点に顕著なピーク値R1,R2,R3を有する波形となり、左右の脚部の両膝部が干渉した時点の2番目のピーク値R2が1番目のピーク値R1及び3番目のピーク値R3よりも小さくなると共に、2番目のピーク値R2及び3番目のピーク値R3の発生時刻は、車速に比例して早くなる。
これに対し、衝突時点における高身長歩行者の左右の脚部が歩行者の歩行方向前後方向に開いている場合には、バンパフェイス16のバンパ上部16bが左(右)脚部の膝部に衝突した後に、反対側の右(左)脚部の膝部に衝突して跳ね上げることになり、左右の脚部の両膝部は互いに干渉しない。したがって、第2センサ32から出力される衝撃加速度信号は、バンパフェイス16のバンパ下部16bが最初に左(右)脚部の膝部に衝突した時点と、その後、反対側の右(左)脚部の膝部に衝突した時点との2つの時点に顕著なピーク値R1,R2を有する波形となり、2番目のピーク値R2が1番目のピーク値R1よりも大きくなると共に、この2番目のピーク値R2の発生時刻も、車速に比例して早くなる。
なお、衝突対象Sが高身長歩行者や低身長歩行者の場合で、第2センサ32から得られる衝撃加速度信号波形が3つのピーク値を有する場合でも、2つのピーク値を有する場合でも、衝突初期における初期衝撃加速度(1番目のピーク値R1)は、図3に示した低重心障害物の場合と比較して、小さなものとなる。
ここで、衝突対象Sが低身長歩行者の場合と高身長歩行者の場合とで、第2センサ32から出力される衝撃加速度信号を比較すると、通常、高身長歩行者の方が低身長歩行者よりも左右の脚部の間隔が広いので、ピーク値が3つある場合又は2つある場合のいずれの場合においても、衝突時の車速が同じであれば、衝突時点から最後のピーク値が発生する時点までの時間は、高身長歩行者の場合のほうが長くなる。
したがって、この低身長歩行者と高身長歩行者とを区別する衝突時点から最後のピーク値が発生するまでの時間を、ダミーを使用した各種実験によって第2センサ32から得られる衝撃加速度信号のピーク値数及び車速毎にマップ化して、歩行者体格種類推定用閾値として予めメモリ37に格納しておけば、実際の衝突時に第2センサ32から得られる衝撃加速度信号波形が、予め設定した大小関係を満たす3つ又は2つのピーク値数を有する場合、即ち衝突対象Sが歩行者の場合には、第1センサ31による衝突対象Sの接触検出時点から最後のピーク値の発生時点までの時間と、メモリ37に格納されているピーク値数及び車速に対応する歩行者体格種類推定用閾値とを比較することにより、歩行者が子供等の低身長歩行者か大人等の高身長歩行者かを推定することが可能となる。
特に、第2センサ32をバンパビーム15よりも下方位置に設けたので、例えば衝突対象が子供等のように脚部がバンパビームよりも下方に位置する低身長歩行者であっても、バンパ下部16bの脚部への衝突に伴う衝撃加速度を検出することができ、予め設定された大小関係を満たす複数のピーク値を有する衝撃加速度信号波形を確実に得ることができる。したがって、衝突対象が低身長歩行者か高身長歩行者かの推定を高精度かつ迅速に行うことができる。
なお、図2、図3、図5及び図7は、それぞれ車両11が速度40km/hで衝突対象Sに衝突した場合の衝撃加速度信号波形で、縦軸が加速度(G)、横軸が時間(ms)を示しており、図2及び図3は衝突対象Sが箱状の場合、図5は衝突対象Sが6歳児ダミー(低身長歩行者である子供)の場合、図7は衝突対象SがAM50%ダミー(高身長歩行者である大人)の場合をそれぞれ示している。
以下、本実施の形態による車両用衝突対象推定装置30の動作について、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
制御部35の推定回路36では、第1センサ31及び第2センサ32のそれぞれの出力を監視すると共に、車速センサ34からの車速信号を監視しながら、先ず、第1センサ31の出力がオンになったか否か、即ち衝突対象Sがバンパフェイス16に衝突したか否かを判断し(ステップS1)、第1センサ31がオンになったら、その時点から第2センサ32から出力される衝撃加速度信号を処理して、その衝撃加速度信号波形に3つの顕著なピーク値があるか否かを判断する(ステップS2)。
その結果、3つのピーク値がある場合には(ステップS2でYes)、次に、3つのピーク値のうち2番目のピーク値が最小か否か、即ち衝突対象Sが歩行者か否かを判断する(ステップS3)。
その結果、2番目のピーク値が最小であると判断した場合には(ステップS3でYes)、衝突対象Sが歩行者であると判断する。そして次に、3つのピーク値数と第1センサ31の出力がオンになった時点の車速センサ34による車速とに対応する歩行者体格種類推定用閾値をメモリ37から読み出して、第1センサ31の出力がオンになった衝突時点から第2センサ32により実際に得られた衝撃加速度信号の最後のピーク値(この場合、3番目のピーク値)の発生時点までの時間が、読み出した歩行者体格種類推定用閾値以下か否かを判断する(ステップS4)。
その結果、歩行者体格種類推定用閾値以下であると判断した場合には(ステップS4でYes)、歩行者は子供等の低身長歩行者であると推定して、直ちに駆動指令信号発生回路38から車両用二次衝突対策装置20のアクチュエータ22に対して低身長歩行者に対応する駆動指令信号を出力して(ステップS5)、処理を終了する。これにより、アクチュエータ22が作動して、フード13の後部が仮想線で示すように低身長歩行者に対応して跳ね上げられて、フード13とエンジンルーム12との間に所定の空間部が形成され、低身長歩行者がフード13上に跳ね上げられて倒れ込む場合の二次衝突による衝撃が吸収緩和される。
これに対し、第1センサ31の出力がオンになった時点から第2センサ32による最後のピーク値の発生時点までの時間が、読み出した歩行者体格種類推定用閾値よりも長いと判断した場合には(ステップS4での判断結果がNo)、歩行者は大人等の高身長歩行者と推定して、直ちに駆動指令信号発生回路38から車両用二次衝突対策装置20のアクチュエータ22に対して高身長歩行者に対応する駆動指令信号を出力して(ステップS6)、処理を終了する。これにより、アクチュエータ22が作動して、フード13の後部が高身長歩行者に対応して跳ね上げられて、フード13とエンジンルーム12との間に所定の空間部が形成され、高身長歩行者がフード13上に跳ね上げられて倒れ込む場合の二次衝突による衝撃が吸収緩和される。
一方、ステップS2での判断結果がNoの場合、即ち第2センサ32から出力される衝撃加速度信号波形に3つの顕著なピーク値がない場合には、次に、2つの顕著なピーク値を有しかつ2番目のピーク値が最初のピーク値よりも大きいか否かを判断する(ステップS7)。
その結果、Noの場合、即ち2つのピーク値がない場合や、2つのピーク値があっても2番目のピーク値が最初のピーク値よりも小さい場合には、衝突対象Sは歩行者以外と推定して、駆動指令信号発生回路38から車両用二次衝突対策装置20のアクチュエータ22に対して駆動指令信号を出力することなく、処理を終了する。
これに対し、ステップS7での判断結果がYesの場合には、衝突対象Sが歩行者と判断して、ステップS4に移行し、低身長歩行者か高身長歩行者かを推定して、その推定結果に応じて上記のステップS5又はステップS6と同様に処理する。
ただし、この場合のステップS4での低身長歩行者又は高身長歩行者の推定処理では、第2センサ32から出力された衝撃加速度信号波形のピーク値数が2つであるので、メモリ37からは、2つのピーク値数と第1センサ31の出力がオンになった時点の車速センサ34による車速とに対応する歩行者体格種類推定用閾値を読み出して、第1センサ31の出力がオンになった時点から第2センサ32により実際に得られた最後のピーク値(この場合、2番目のピーク値)の発生時点までの時間が、読み出した歩行者体格種類推定用閾値以下か否かを判断して、低身長歩行者か高身長歩行者かを推定する。
また、ステップS3での判断結果がNoの場合、即ちステップS2で第2センサ32からの衝撃加速度信号波形に3つのピーク値があったと判断されたが、その2番目のピーク値が最小でない場合には、衝突対象Sは歩行者以外と推定して、駆動指令信号発生回路38から車両用二次衝突対策装置20のアクチュエータ22に対して駆動指令信号を出力することなく、処理を終了する。
以上のように、本実施の形態では、バンパフェイス16の裏面側にバンパビーム15とほぼ同じ高さ位置にバンパフェイス16の衝突対象Sへの接触を検出する第1センサ31を設け、バンパビーム15よりも下方に位置するラジパネロア17にバンパ下部16bの衝突対象Sへの衝突に伴う衝撃加速度を検出する第2センサ32を設け、第1センサ31が衝突対象Sの接触を検出し、且つ第2センサ32から出力される衝撃加速度信号波形が、3つの顕著なピーク値を有して2番目のピーク値が最小の場合、或いは2つの顕著なピーク値を有して2番目のピーク値が最初のピーク値よりも大きい場合に、衝突対象Sは歩行者と判断して、衝突時点からの最後のピーク値の発生時刻が、第2センサ32から得られる衝撃加速度信号波形のピーク値数及び衝突時点の車速に対応して予め設定した歩行者体格種類推定用閾値以下のときは、歩行者は低身長歩行者と推定し、歩行者体格種類推定用閾値を超えるときは、歩行者は高身長歩行者と推定するようにしたので、簡単且つ安価な構成で、衝突対象Sが低身長歩行者か高身長歩行者かを高精度且つ迅速に推定することができる。しかも、低身長歩行者又は高身長歩行者と推定したときは、駆動指令信号発生回路38から車両用二次衝突対策装置20のアクチュエータ22に対して低身長歩行者又は高身長歩行者に対応した駆動指令信号を出力するようにしたので、歩行者がフード13上に跳ね上げられて倒れ込む場合の二次衝突による衝撃を、低身長歩行者又は高身長歩行者に応じて確実に吸収緩和することができ、車両用二次衝突対策装置20の信頼性を向上することができる。
(第2実施の形態)
図9及び図10は本発明の第2実施の形態を示すもので、図9は車両用衝突対象推定装置を備える車両用二次衝突対策装置の概略構成を示す概念図であり、図10は図9に示す車両用衝突対象推定装置の動作を説明するためのフローチャートである。
本実施の形態は、第1実施の形態において、バンパビーム15上にバンパビーム15の衝撃加速度を検出する例えば加速度センサからなる第3センサ33を付加して、衝突対象Sが、バンパビーム15よりも低い小障害物か、バンパビーム15よりも高く且つ重心が低い低重心障害物か、低身長歩行者か、高身長歩行者かを推定するようにしたものである。
このように、第3センサ33を設けると、該第3センサ33からは、衝突対象Sが小障害物か、低重心障害物か、低身長歩行者か、高身長歩行者かに応じて、図2、図3、図5、図7にそれぞれ破線で示すような衝撃加速度信号波形が得られる。
ここで、第3センサ33から得られる衝撃加速度信号は、衝突対象Sが小障害物の場合には、衝突対象Sがバンパビーム15に衝突しないため、図2に示したように、その変化は緩やかであるが、衝突対象Sがバンパビーム15に衝突する低重心障害物や、低身長歩行者や、高身長歩行者の場合には、図3、図5、図7に示したように、その変化は急峻となる。しかも、衝突対象Sが低身長歩行者や高身長歩行者の場合には、第2センサ32から出力される初期衝撃加速度(1番目のピーク値R1)の直前に、第3センサ33から得られる衝撃加速度信号のピーク値Bが、1番目のピーク値R1よりも大きいのに対して、衝突対象Sが低重心障害物の場合には、その大小関係が逆となる。
そこで、本実施の形態では、メモリ37に、第1実施の形態で説明した歩行者体格種類推定用閾値の他に、衝突対象Sが低身長歩行者や高身長歩行者か、低重心障害物かを区別するために、第2センサ32から得られる初期衝撃加速度に対する閾値として、速度毎にマップ化して第3センサ33の出力に関連付けた歩行者推定用閾値を予め格納しておく。
以下、本実施の形態による車両用衝突対象推定装置30の動作について、図10に示すフローチャートを参照して説明する。
制御部35の推定回路36では、第1センサ31、第2センサ32、第3センサ33のそれぞれの出力を監視すると共に、車速センサ34からの車速信号を監視しながら、先ず、第2センサ32が衝撃加速度を検出したか否かを判断する(ステップS11)。
その結果、第2センサ32が衝撃加速度を検出した場合には(ステップS11でYes)、次に、第1センサ31の出力がオンになっているか否かを判断する(ステップS12)。
ここで、第1センサ31の出力がオフになっている場合には(ステップS12でNo)、衝突対象Sがバンパビーム15よりも高さの低い小障害物と推定し(ステップS13)、駆動指令信号発生回路38から車両用二次衝突対策装置20のアクチュエータ22に対して駆動指令信号を出力することなく、処理を終了する。
これに対し、第1センサ31の出力がオンになっている場合には(ステップS12でYes)、次に、第1センサ31の出力がオンになった時点の車速センサ34による車速と、第3センサ33の出力とに基づいて、対応する歩行者推定用閾値をメモリ37から読み出し、第2センサ32で検出された初期衝撃加速度が、読み出した歩行者推定用閾値よりも小さいか否かを判断する(ステップS14)。
その結果、第2センサ32で検出された初期衝撃加速度が歩行者推定用閾値を超えると判断された場合には(ステップS14でNo)、衝突対象Sが低重心障害物と推定して(ステップS15)、駆動指令信号発生回路38から車両用二次衝突対策装置20のアクチュエータ22に対して駆動指令信号を出力することなく、処理を終了する。
これに対し、第2センサ32で検出された初期衝撃加速度が歩行者推定用閾値以下と判断された場合には(ステップS14でYes)、衝突対象Sが歩行者と推定する(ステップS16)。
その後は、ステップS17〜S22において、第1実施の形態におけるステップS2〜ステップS7と同様の処理を行って、歩行者が低身長歩行者か高身長歩行者かを推定すると共に、その推定結果に応じて駆動指令信号発生回路38から車両用二次衝突対策装置20のアクチュエータ22に対して低身長歩行者又は高身長歩行者に対応した駆動指令信号を出力して処理を終了する。なお、図10のステップS17は図8のステップS2に対応し、図10のステップS18は図8のステップS3に対応し、図10のステップS19は図8のステップS4に対応し、図10のステップS20は図8のステップS5に対応し、図10のステップS21は図8のステップS6に対応し、図10のステップS22は図8のステップS7に対応している。
このように、本実施の形態によれば、第1実施の形態の構成に第3センサ33を付加する簡単な構成で、衝突対象Sが、バンパビーム15よりも低い小障害物か、バンパビーム15よりも高い低重心障害物か、子供等の低身長歩行者か、大人等の高身長歩行者かを区別して、高精度且つ迅速に推定することができると共に、低身長歩行者又は高身長歩行者と推定された場合には、第1実施の形態と同様に、駆動指令信号発生回路38から車両用二次衝突対策装置20のアクチュエータ22に対して低身長歩行者又は高身長歩行者に対応した駆動指令信号を出力するようにしたので、歩行者がフード13上に跳ね上げられて倒れ込む場合の二次衝突による衝撃を、低身長歩行者又は高身長歩行者に応じて確実に吸収緩和することができ、車両用二次衝突対策装置20の信頼性を向上することができる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第2センサは、ラジパネロア17に設ける場合に限らず、車両11の前部でバンパビーム15よりも下方に位置して、歩行者との衝突や、障害物の巻き込みによって衝撃荷重を受ける他の車両部材に設けて取り付けたりすることもできる。また、第2センサ32から3つのピーク値を有する衝撃加速度信号波形が得られる場合において、衝突対象Sが低身長歩行者か高身長歩行者かを判断するための歩行者体格種類推定用閾値は、第1センサ31の出力がオンになった時点から第2センサ32による出力の2番目のピーク値の発生時点までの時間に関連して設定することもできる。更に、フード13を跳ね上げる車両用二次衝突対策装置20は、衝突した歩行者が低身長歩行者か高身長歩行者かに応じて、フードの跳ね上げ量を制御する場合に限らず、フード13の跳ね上げ開始のタイミングやフード13の跳ね上げ作動速度を制御するようにすることもできる。また、本発明は、特許文献1に開示されているような歩行者保護対策バンパ装置に適用して、衝突対象が低身長歩行者か高身長歩行者かに応じて、二段バンパ構造の低位バンパの高さを制御したり、低位バンパを進退させるストローク型衝撃吸収部材の移動抵抗を制御したりすることもできるし、その他の歩行者保護装置にも有効に適用することができる。