以下、本発明による充填物押出容器の好適な実施形態について図1〜図44を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図1〜図36は、本発明の第一実施形態を、図37〜図40は、本発明の第二実施形態を、図41及び図42は、本発明の第三実施形態を、図43及び図44は、本発明の第四実施形態を各々示すもので、図1は、本発明の第一実施形態に係る充填物押出容器を示す斜視図、図2〜図8は、充填物押出容器の各状態を示す各縦断面図、図9は、図2のIX-IX矢視図、図10及び図11は、本体筒を示す各図、図12〜図15は、回転部材を示す各図、図16〜図19は、先筒押え部材を示す各図、図20及び図21は、先筒を示す各図、図22〜図25は、移動体を示す各図、図26〜図28は、雌螺子部材を示す各図、図29は、ピストンを示す図、図30〜図32は、充填部材を示す各図、図33及び図34は、充填物押出容器の組立手順を示す各図であり、本実施形態の充填物押出容器は、充填物を収容すると共に適宜使用者の操作により押し出し可能とするものである。
ここでは、充填物として、例えば、リップグロス、リップ、アイカラー、アイライナー、美容液、洗浄液、ネールエナメル、ネールケア溶液、ネールリムーバー、マスカラ、アンチエイジング、ヘアーカラー、頭髪用化粧料、オーラルケア、マッサージオイル、角栓ゆるめ液、ファンデーション、コンシーラー、スキンクリーム、マーキングペン等の筆記用具等のインク、液状の医薬品、泥状物等を始めとした液状や、ゼリー状、ゲル状、ペースト状を含む練り状等の半固体や軟固形状等を用いることが可能である。
図1及び図2に示すように、充填物押出容器100は、容器の後半部を形成する本体筒(本体)1と、容器の前半部を形成し先筒押え部材2を介して本体筒1に相対回転可能に連結された先筒3とを外形構成として具備し、以下、容器内に、図2に示すように、充填物Lが充填される充填領域4xを内部に備えた充填部材4と、この充填部材4を同期回転可能且つ軸線方向離脱不能に連結し本体筒1と先筒3とが相対回転されると前進/後退する雌螺子部材5と、本体筒1と同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合し雌螺子部材5の前進/後退に従い前進/後退する回転部材16と、この回転部材16と同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合すると共に雌螺子部材5の前進/後退に伴い前進/後退し充填部材4が前進限に達し本体筒1と先筒3とがさらに同方向に相対回転されると前進する移動体6と、この移動体6の先端部に装着されて充填領域4xの後端を形成するピストン7と、雌螺子部材5の移動を可能とする第一の螺合部8と、移動体6の移動を可能とする第二の螺合部9とを概略備えている。
本体筒1は、図1、図10及び図11に示すように、有底四角筒状に構成され、図10及び図11に示すように、底部側の内周面に沿って、回転部材16を装着するための突条1fを、複数(本実施形態では八個)備えている。これらの突条1fは、本体筒1の底面から当該本体筒1の軸線方向中程まで延びると共に本体筒1の内周面から軸心に向かって所定長突出し、各々の軸心側の端面が同一円周上に概ね位置するように設けられている。また、この本体筒1は、その先端側の各内面に、軸線方向に凸凹すると共に当該凸凹が周方向に沿って延びる凸凹部1aを備えている。この凸凹部1aは、先筒押え部材2を装着するためのものである。
回転部材16は、図12〜図15に示すように、有底円筒状に構成された本体部16xと、この本体部16xの底部中央に、先端側に向かうように立設された軸体16yと、を備える構成とされている。
本体部16xには、底部に円環状の鍔部16aが設けられ、この鍔部16aの周面には、周方向に沿って凹凸が連続する歯車形状の凹凸部16bが、本体筒1の突条1fに回転方向に係合するものとして設けられている。この本体筒1には、先端から軸線方向中程まで延び内外を連通するスリット16cが、軸線を挟み対向して一対設けられている。このスリット16cは、後述の組立時に機能する。また、本体筒16xのスリット16cにより分けられた略半円筒部各々の先端の内面には、図13及び図14に示すように、周方向に沿って内側(軸心側)に張り出す円弧状の凸部16dが、雌螺子部材5に軸線方向に係止される係止部として設けられている。
図12〜図15に示すように、軸体16yは、非円形の外形を有する構成とされている。具体的には、軸体16yは、円柱体の外周面に、周方向に沿って六等配の位置に半径方向外方に突出するように配置されて軸線方向に延びる突条16eを備える横断面非円形形状とされている。この突条16eが、回り止め部(回り止め機構)50の一方を構成する回り止めとされる。
また、本体部16xは、図13〜図15に示すように、その底面で軸体16yの周縁に、先端側に短尺に突出し、移動体6の最大後退時において当該移動体6に回転方向に係合するための突部16gを備えている。この突部16gが、軸体16yの捩切れを防止する軸体捩切れ防止機構の一方を構成するもので、軸体16yの各突条16eの後端部に連ねて設けられている。
このような構成を有する回転部材16の本体部16xの内面は、当該内面に対応する外面を有する中型(成形型)により成形される。この中型は、樹脂成形時の樹脂硬化後に軸線方向先端側に引き抜かれ凸部16dが邪魔になる所謂無理抜きとなるが、この無理抜きの際に、スリット16c,16cにより、回転部材16の本体部16xの先端側が径方向外側に開き、凸部16dに損傷を与えること無く中型が容易に引き抜かれるようになっている。このように、回転部材16は、中型の無理抜きを可能とする構成のため、一体成形が可能であり、二部品で製造すること無く製造コストの低減が図られている。
そして、これらの本体部16x及び軸体16yを備える回転部材16は、図2及び図9に示すように、本体筒1に内挿され、その凹凸部16bの凹部に本体筒1の突条1fが進入し回転方向に係合することで、本体筒1に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。そして、回転部材16の後端面は本体筒1の底面に当接した状態とされている。
先筒3は、図1、図20及び図21に示すように、円筒形状に構成されると共に、図20及び図21に示すように、後端部に鍔部3aを備える構成とされている。この先筒3の内周面には、その軸線方向略中央から後端に亘って、第一の螺合部(螺合機構)8の一方を構成する雌螺子としての螺合溝3bが設けられている。この螺合溝3bは、本実施形態では、八条螺子とされている。そして、先筒3の螺合溝3bの先端3fが、後述の螺合突起5eの前進限とされ、充填部材4の前進限に対応するものとされている。
この先筒3は、図2に示すように、その後半部が本体筒1に内挿され、その鍔部3aの後端面が本体筒1の突条1fの先端面に突き当てられている。
先筒押え部材2は、樹脂による射出成形品とされ、図16〜図18に示すように、後部側のバネ部2dと、このバネ部2dより前側の本体部2xと、を備えている。本体部2xは、図16及び図19に示すように、外形が四角形状を成すと共に内形が円形形状を成す筒状に構成され、バネ部2dは、図16〜図18に示すように、円筒形状に構成され、本体部2xとバネ部2dの内周面が軸線方向に面一を成す構成とされている。
本体部2xは、軸線方向中程の外面が径方向に拡大した鍔部2aを具備し、この鍔部2aより後側の各外面(四面)に、軸線方向に凹凸すると共に当該凹凸が周方向に沿って延びる凹凸部2bを、本体筒1の凸凹部1aに軸線方向に係合するものとして備えている。また、図1、図16〜図19に示すように、本体部2xの鍔部2aより前側の外面の対向する二面には、図2に示すキャップ10を着脱可能に軸線方向に係止するための突部(所謂ダボ)2eが、周方向に沿って延びるようにして設けられている。
バネ部2dは、本体部2xの後側に一体的に連設され、軸線方向に伸縮可能とされている所謂樹脂バネである。
これらの本体部2x及びバネ部2dを備える先筒押え部材2は、図2に示すように、その鍔部2aより後側の部分(外形が四角形状且つ内形が円形形状の部分及び円筒形状のバネ部2d)が四角筒形状の本体筒1に内挿されると共に円筒形状の先筒3に外挿され、鍔部2aの後端面が本体筒1の先端面に突き当てられ、その凹凸部2bが本体筒1の凸凹部1aに軸線方向に係合することで、本体筒1に同期回転可能且つ軸線方向移動不能に装着されている。
この状態で、先筒3は、その鍔部3aの前側の面が先筒押え部材2の後端面に押し当てられて当該先筒押え部材2のバネ部2dにより後側に付勢され、その鍔部3aが先筒押え部材2と本体筒1の突条1fとの間に挟まれるようにして、本体筒1に対し先筒押え部材2を介して相対回転可能に装着されている。この先筒押え部材2のバネ部2dの付勢力により、先筒3と本体筒1には、より良い回転抵抗が発生する。
移動体6は、図22〜図25に示すように、内形が略円形形状を成す長尺な筒状に構成されている。この移動体6は、先端側の外面に鍔部6aを有し、この鍔部6aより後側の部分6xの外形が、図22及び図25に示すように、円形形状の外周に二平面部6xxを対向して設けた形状とされている。この移動体6の鍔部6aより後側の部分6xの二平面部6xxを除く部分の外面には、第二の螺合部(螺合機構)9の一方を構成する雄螺子6bが軸線方向に沿って設けられている。すなわち、移動体6の鍔部6aより後側の部分6xには、軸線方向に沿って間欠的に雄螺子6bが設けられている。この雄螺子6bの前側の近傍に位置する鍔部6aの外形は、当該鍔部6aより後側の部分6xの外形と同様に、図22、図24及び図25に示すように、円形形状の外周に二平面部6aaを対向して設けた形状とされている。
また、図22〜図24に示すように、移動体6の鍔部6aより前側の部分6yの外形は円形形状に構成され、その外周面には、ピストン7を装着するための環状突部6cが形成されている。
また、図23〜図25に示すように、移動体6の先端近傍から後端に亘る内周面には、周方向に沿って六等配の位置に、放射状に内側に突出するように配置され軸線方向に延びる突条6dが設けられている。すなわち、移動体6は、非円形の内形を有する構成とされている。この突条6dが、回り止め部(回り止め機構)50の他方を構成する回り止めとされている。
また、図22〜図25に示すように、移動体6は、後端面の周方向に沿って六等配の位置で且つ突条6dが設けられていない部分に、先端側に短尺に凹み移動体6の内外を連通する溝6fを備えている。これらの溝6fは、軸体捩切れ防止機構の他方を構成するもので、移動体6の最大後退時において回転部材16の突部16gに進入し回転方向に係合するためのものである。
この移動体6は、図2に示すように、回転部材16の軸体16yに外挿され、図2、図6及び図9に示すように、その突条6dが回転部材16の軸体16yの突条16e,16e間に進入し回転方向に係合することで、回転部材16に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に装着されている。また、移動体6は、溝6fが回転部材16の突部16gに進入し回転方向に係合した状態にある。
ピストン7は、例えばプラスチック等の樹脂より成り、図29に示すように、先端に向けて先細りとされた釣り鐘形状を呈し、後端面から先端側に向けて外面に倣うように凹設された凹部7aを備えている。このピストン7の内面の軸線方向の中程には、後方に向かって短尺に延びる円筒部7dが設けられ、この円筒部7dの内周面に、移動体6の環状突部6cに軸線方向に係合するための環状溝部7bが設けられている。また、ピストン7には、その後端部の外周面に、充填部材4の内周面に密着し水密性を確保するための環状突部7cが設けられている。
このピストン7は、図2に示すように、移動体6に外挿され、その円筒部7dの後端面が移動体6の鍔部6aの前側の面に当接し、その環状溝部7bが、移動体6の環状突部6cに軸線方向に係合することで、移動体6に回転可能(同期回転可能でも可)且つ軸線方向離脱不能に装着されている。この状態で、ピストン7の凹部7aの前側には、凹部7aに進入した回転部材16の軸体16yの先端部を収容するための空間7eが画成されている。なお、移動体6とピストン7は一体に成形し一つの棒状とすることも可能である。
雌螺子部材5は、図26〜図28に示すように、先端の外径小径部5a、この外径小径部5aの後端に続く外径大径部5bを備える段付き円筒形状に構成されている。外径大径部5bの軸線方向中程には鍔部5cが設けられ、この鍔部5cの外周面には、周方向に沿って四等配の位置に、第一の螺合部(螺合機構)8の他方を構成する雄螺子としての螺合突起5eが設けられている。これらの螺合突起5eは四条螺子に対応するものである。
また、雌螺子部材5の外径大径部5bの先端部の外周面には、周方向に沿って六等配の位置に、突条5fが軸線方向に所定長延びるように形成されていると共に、外径大径部5bの突条5fと鍔部5cとの間の外周面には、軸線方向に凸凹し周方向に沿って環状に延びる環状凸凹部5gが形成されている。これらの突条5f及び環状凸凹部5gは、充填部材4を装着するためのものである。突条5fは、図26及び図27に示すように、その先端部が、充填部材4の後述のローレット4eに容易に係合するように、全て一方向に傾斜する傾斜部に構成されている。
また、図26〜図28に示すように、雌螺子部材5の外径大径部5bの後端部の外周面には、回転部材16の円弧状の凸部16dを軸線方向に係止するための環状突部(係止部)5kが設けられている。
また、雌螺子部材5には、その外径小径部5aの先端から外径大径部5bの先端部まで延び内外を連通するスリット5nが、軸線を挟んだ両側に一対設けられていると共に、このスリット5nの根元部分に周方向に所定長延びる長孔5dが連設されている。これらのスリット5n及び長孔5dの機能については後述する。
図28に示すように、雌螺子部材5の外径小径部5aの内径は外径大径部5bの内径に比して小とされ、この外径小径部5aの前半部の内面に、第二の螺合部(螺合機構)9の他方を構成する雌螺子5jが、スリット5n,5nを横切り半円弧状を成すようにして設けられている。
また、雌螺子部材5には、図26及び図28に示すように、雌螺子5jの外周側である外径小径部5aにおける先端側の外周面に、図2に示すOリング(弾性体)11を装着するための溝部5mが、スリット5n,5nを横切るようにして周方向に沿って半円弧状を成すようにして形成されている。
このような構成を有する雌螺子部材5の雌螺子5jは、雌螺子5jを形成する螺子部を外周面に有するコアピン(成形型)により成形される。このコアピンは、樹脂成形時の樹脂硬化後に軸線方向先端側に引き抜かれる所謂無理抜きとなるが、この無理抜きの際に、スリット5n,5nにより、雌螺子部材5の外径小径部5aが径方向外側に開き、雌螺子5jに損傷を与えること無くコアピンが容易に引き抜かれるようになっている。また、外径小径部5aが径方向外側に開く際に、スリット5n,5nの根元部分に作用する応力が、長孔5d,5dにより分散され、雌螺子部材5に損傷を与えることが防止されている。このように、雌螺子部材5は、コアピンを回し抜きしたりするのでは無く無理抜きを可能とする構成のため、迅速な成形が可能であり、製造コストの低減が図られている。
そして、この雌螺子部材5は、図2に示すように、移動体6に外挿されると共に先筒3の後部に内挿され、さらに外径大径部5bの鍔部5cより後側の部分が回転部材16に内挿され、その雌螺子5jが移動体6の雄螺子6bに螺合した状態で、その外径小径部5aの先端面が移動体6の鍔部6aの後端面に突き当てられると共にその鍔部5cの後端面が回転部材16の本体部16x(凸部16d)の先端面に突き当てられ、その螺合突起5eが先筒3の螺合溝3bに螺合した状態とされている。この状態(雌螺子部材5が後退限にある状態)で、雌螺子部材5の環状突部(係止部)5kは、回転部材16の凸部16d(係止部)に対して軸線方向後方に離間し当該凸部16dに対して非係合の状態とされている。
また、雌螺子部材5の溝部5mにはOリング11が嵌着され、このOリング11の弾性力によって、スリット5n,5nにより割られている雌螺子部材5の外径小径部5aが締め付けられ、これにより、雌螺子部材5の雌螺子5j及び移動体6の雄螺子6bより構成された第二の螺合部9の作動抵抗が上げられ、雌螺子部材5の螺合突起5e及び先筒3の螺合溝3bより構成された第一の螺合部8の作動抵抗に比して高くされている。
なお、ここでは、Oリング11を用いているが、他のリング状の弾性体として、例えばCリング等を用いても良い。また、雌螺子部材5の雌螺子5jに移動体6の雄螺子6bを挿入すると、スリット5nにより雌螺子5jの内径が広がり螺合が可能となる構成とすれば、当該雌螺子5j及びスリット5nを有する外径小径部5aが、第二の螺合部9に弾性力を付与する弾性部となり、この場合には、リング状の弾性体は無くても良い。
このような雌螺子部材5の螺合突起5e及び先筒3の螺合溝3bより構成された第一の螺合部8、雌螺子部材5の雌螺子5j及び移動体6の雄螺子6bより構成された第二の螺合部9にあっては、図21及び図28に示すように、第二の螺合部9のリードに比して第一の螺合部8のリードが大きくされている。ここで、リードとは、螺子を一回転した時に軸方向に進む距離のことである。
そして、このような第一、第二の螺合部8,9、移動体6の突条6d及び回転部材16の軸体16yの突条16eより構成された回り止め部50を備える押出機構、雌螺子部材5、移動体6、ピストン7、回転部材16が、本体筒1、先筒押え部材2及び先筒3から成る本体側筒体に内蔵され本体側組立体40が構成されている(図33参照)。
充填部材4は、図2に示すように、内部の充填領域4xに充填物Lを充填するためのものであると共に、当該充填物Lを使用者による操作に従って先端部から吐出するためのものである。この充填部材4の材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリプロピレン(PP)等の射出成形されたプラスチックであることが好ましく、充填物Lの色調や充填状況を確認できるように透明材や充填物Lの色を施した着色材を用いるのが好ましい。
この充填部材4は、図30〜図32に示すように、円筒形状を成すと共に先端が先細りして閉じられる形状とされ、その先端部の外面4aが、所定の方向に傾斜する傾斜面とされている。また、この充填部材4の先端部には、図32に示すように、その外面4aの裏面に、外面4aに対して一定の肉厚を隔てて傾斜面とされる内面4bが形成されていると共に、当該内面4bと外面4aとを連通する吐出口4cが設けられている。この吐出口4cは、図30及び図31に示すように、本実施形態では三個設けられている。そして、先端部の傾斜する外面4aが、吐出口4cを通して吐出される充填物Lを被塗布部に塗布するための塗布部とされている。この塗布部としての外面4aは、例えば皮膚等の被塗布部等に対する塗布に好適な傾斜面とされている。なお、吐出口4cの個数は、一個であっても、三個以外の複数であっても良い。
また、図32に示すように、充填部材4の後端部の内周面には、軸線方向に凹凸し周方向に沿って環状に延びる環状凹凸部4gが、雌螺子部材5の環状凸凹部5gに軸線方向に係合するものとして設けられている。また、充填部材4の内周面で環状凹凸部4gの前側の近傍には、軸線方向先端側へ所定長に亘って延び円周方向に沿って凹凸が密に並設されるローレット4eが、雌螺子部材5の突条5fに回転方向に係合するものとして設けられている。このローレット4eを構成する凸部の後端部は、雌螺子部材5の突条5fに容易に係合するように、全て一方向に傾斜する傾斜部に構成されている。
これらの充填部材4のローレット4e及び雌螺子部材5の突条5fの傾斜方向は、回転部材16及び移動体6並びに雌螺子部材5が図33に示す後退限に位置し当該雌螺子部材5が繰り戻し方向にそれ以上回らない状態で、充填部材4を雌螺子部材5に組み込む場合に、充填部材4のローレット4eが雌螺子部材5の突条5fに当接しローレット4eの傾斜に倣って雌螺子部材5が繰り出し方向に若干回り、ローレット4eと突条5fとの係合を容易とする傾斜方向とされている(詳しくは後述)。
そして、図30〜図32に示すように、充填部材4はさらに、軸線方向中程の外周面に、後述の組立治具を先端側から外挿して突き当てるための外周段差面4hを備えている。
この充填部材4は、図2に示すように、先筒3に内挿されると共に、その後部が雌螺子部材5に外挿され、その環状凹凸部4gが、雌螺子部材5の環状凸凹部5gに軸線方向に係合すると共に、そのローレット4eに雌螺子部材5の突条5fが回転方向に係合することで、雌螺子部材5に同期回転可能且つ軸線方向離脱不能に装着されて当該雌螺子部材5と一体化され、この状態で、先筒3内に収容されている。そして、キャップ10が先筒押え部材2の突部2eに着脱可能に係合することで、充填部材4を収容した先筒3が覆われ保護されている。
このような構成を有する充填物押出容器100を組み立てる場合には、雌螺子部材5に移動体6を螺子込み、次いで、雌螺子部材5にOリング11を装着し、次いで、回転部材16の軸体16yを移動体6に係合させながら回転部材16の凸部16dを雌螺子部材6の環状突部5kに係止させ、次いで、移動体6にピストン7を装着し、次いで、先筒押え部材2を外挿した先筒3に、先ほど組み立てた雌螺子部材5を螺子込み装着し、次いで、本体筒1を、回転部材16の凹凸部16bと当該本体筒1の突条1fとを回転方向に係合させながら、先ほど組み立てた先筒押え部材2に装着することで、図33に示す本体側組立体40が得られる。
ここで、回転部材16を移動体6及び雌螺子部材5に装着すべく、回転部材16の本体部16xを雌螺子部材5の外径大径部5bに外挿するにあたっては、雌螺子部材5の外径大径部5bの環状突部5kが回転部材16の本体部16xの凸部16dに突き当たるが、回転部材16のスリット16c(図14参照)により、回転部材16の先端側が半径方向外側に開き、雌螺子部材5の環状突部5kは、回転部材16の凸部16dを越えて後部側に進入し、容易な組み立てが可能とされている。また、本体側組立体40が得られた後にあっては、回転部材16の先端側の外周面は先筒3の後端部の内周面に近接し規制されるため、回転部材16の先端側が径方向外側へ開くことは無く、雌螺子部材5の環状突部5kと回転部材16の凸部16dとが軸線方向に係止しての後述の作用を支障なく行うことが可能とされている。
一方、充填部材4にあっては、図33に示すように、吐出口4cをシール12で塞ぎ逆さにした状態で、充填領域4xに所定量の充填物Lを充填し満たして充填部材4の先端内に空間が無い状態とする。そして、この充填物Lが充填された充填部材4を、本体側組立体40の先端側に内挿し雌螺子部材5に装着する。
ここで、充填部材4と本体側組立体40との具体的な組み立ての一例を述べると、図34に示すように、下部治具13の円筒状立設部13aを先筒3に内挿すると共に充填部材4に外挿し、この円筒状立設部13aの上端面を充填部材4の外周段差面4hに当接させると共に、上部治具14の下端面を本体筒1の後端面に当接させ、上部治具14を所定に下降又は下部治具13を所定に上昇させる。すると、充填部材4の環状凹凸部4gが、雌螺子部材5の環状凸凹部5gに軸線方向に係合すると共に、充填部材4のローレット4eに雌螺子部材5の突条5fが回転方向に係合して、雌螺子部材5と充填部材4とが一体化される。
この時、充填部材4は、その内周面が、ピストン7の水密性を確保するための環状突部7cに摺接しながら、雌螺子部材5に係合される。また、前述したように、充填部材4のローレット4e及び雌螺子部材5の突条5fの傾斜が、雌螺子部材5が繰り出し方向に回る傾斜とされているため、充填部材4が雌螺子部材5に容易に装着される。なお、充填部材4の内周面に、ピストン7の環状突部7cを横切るように軸線方向に所定長延びるエアー抜き溝を設け、充填部材4を装着する際に、充填物L側のエアーをエアー抜き溝を介して後方側へ抜くようにしても良い。
そして、治具13,14を取り外し、最後にシール12を剥がせば、図2に示す初期状態の充填物押出容器100が得られる。このシール12は、使用者(消費者)が購入してから剥がすと衛生的である。この初期状態の充填物押出容器100にあっては、先筒3内に充填部材4が収容されていると共に、回転部材16の後端面が本体筒1の底面に当接した状態にある。
このように構成された充填物押出容器100によれば、図33に示すように、充填物Lが充填された充填部材4が、本体側組立体40の先端側に挿入されて装着される構成のため、充填物Lを充填部材4に充填後の組み立てが容易であると共に、この充填物Lが、充填部材4の先端の内側と本体側組立体40のピストン7との間の充填領域4xに、十分に(一杯に)満たされた状態とされている。
そして、図1に示す初期状態の充填物押出容器100にあっては、使用者によりキャップ10が取り外されて本体筒1と先筒3とが繰り出し方向に相対回転されると、第二の螺合部9の作動抵抗が第一の螺合部8の作動抵抗に比して高いため、第一の螺合部8の螺合作用が作動する。
この繰り出し方向の相対回転が続けられると、本体筒1に同期回転可能に係合する回転部材16の軸体16yの突条16e及び移動体6の突条6dにより構成される回り止め部50との協働により、雌螺子部材5及び充填部材4と共に移動体6及びピストン7が前進し、吐出口4cを有する充填部材4の先端部4aが先筒3の先端の開口から出現する。
雌螺子部材5が所定量、具体的には、当該雌螺子部材5の環状突部5kと回転部材16の凸部16dとの間の軸線方向の離間長前進すると、雌螺子部材5の環状突部5kが回転部材16の凸部16dを軸線方向に係止し、続けて本体筒1と先筒3とが繰り出し方向へ相対回転されると、環状突部5kと凸部16dとの係止により雌螺子部材5が回転部材16を伴って前進し、充填部材4の先端部4aの先筒3からの突出量が増えながら、充填部材4は、図3に示すように、雌螺子部材5の螺合突起5eが先筒3の螺合溝3bの先端3fに位置する前進限まで前進する。この時、回転部材16の凹凸部16bの前側の面は、先筒3の鍔部3aの後端面に接する、又は、鍔部3aの後端面の近傍に位置する状態とされる。
この充填部材4(雌螺子部材5)の前進時にあっては、第二の螺合部9のリードに比して第一の螺合部8のリードが大きくされているため、充填部材4は、第一の螺合部8の大きいリードに従い素早く前進限である使用位置に達する。そして、雌螺子部材5の螺合突起5eは、先筒3の螺合溝3bの先端3fに達すると前進が阻止され、第一の螺合部8の螺合作用が停止する。
続けて本体筒1と先筒3とが繰り出し方向へ相対回転されると、第一の螺合部8の螺合作用が停止しているため、第二の螺合部9の螺合作用が働き、回り止め部50との協働により、図4に示すように、移動体6及びピストン7が前進する。
この時、第一の螺合部8のリードに比して第二の螺合部9のリードが小さくされているため、ピストン7は第二の螺合部9の小さいリードに従いゆっくりと繰り出され充填物Lが適度に充填部材4の吐出口4cから吐出して使用状態にされる。
また、前述したように、充填物Lが、充填部材4の先端の内側とピストン7との間の充填領域4xに、十分に満たされた状態とされているため、相対回転を必要以上に繰り返すこと無く迅速に(直ちに)、図4に示すように、充填物Lが吐出口4cから吐出される。
使用後にあって、本体筒1と先筒3とが繰り戻し方向(繰り出し方向とは逆方向)へ相対回転されると、前述したように、第一の螺合部8の作動抵抗に比して第二の螺合部9の作動抵抗が高くされているため、先に第一の螺合部8の螺合作用が働き、回り止め部50との協働により、図5に示すように、雌螺子部材5及び充填部材4と共に移動体6及びピストン7が後退する。この時、回転部材16は自重により雌螺子部材5と共に後退するようにしても良く、後退する雌螺子部材5の鍔部5cに当接し当該鍔部5cにより後退するようにしても良い。
そして、充填部材4の後退に従い、吐出口4cを有する充填部材4の先端部4aは、先筒3の先端の開口から没入し(図6参照)、回転部材16の後端面が本体筒1の底面に当接すると共に雌螺子部材5の鍔部5cの後端面が回転部材16の本体部16x(凸部16d)の先端面に当接して充填部材4が後退限に達する。
この充填部材4の後退時にあっては、第二の螺合部9のリードに比して第一の螺合部8のリードが大きくされているため、充填部材4は、第一の螺合部8の大きいリードに従い素早く繰り戻される。そして、充填部材4が後退限に達すると、雌螺子部材5の螺合突起5eのそれ以上の後退が阻止され、第一の螺合部8の螺合作用が停止する。
ここで、さらに本体筒1と先筒3とが繰り戻し方向へ相対回転されると、第一の螺合部8の螺合作用が停止しているため、第二の螺合部9の螺合作用が働き、回り止め部50との協働により、図6に示すように、移動体6及びピストン7が後退する。
この時、ピストン7の後退により、充填部材4の吐出口4cから充填物Lが充填領域4xに吸引されると共に、充填部材4の吐出口4cより内側に所定の空間Aが形成される。従って、充填部材4の先端部の外面4aに残る充填物Lが少なくされて経済的であると共に、充填領域4xに充填された充填物L及び当該充填物Lに混入する空気が、温度変化や気圧の変化により膨張しても、上記吐出口4cより内側に設けられた所定の空間Aにより、充填物Lの吐出口4cからの漏出が防止される。
そして、本体筒1と先筒3との繰り戻し方向への相対回転により、移動体6が後退限まで後退し、最大後退位置にある移動体6にそれ以上後退させようとする相対回転力がさらに使用者により付与されると、上記移動体6の溝6f及び回転部材16の突部16gより構成される軸体捩切れ防止機構が無い場合には、移動体6の後端面と回転部材16の底面とが圧接し、移動体6に回転方向に係合する回転部材16の軸体16yが回転部材16の底面において捩切れる虞がある。
しかしながら、本実施形態にあっては、移動体6が後退限まで後退すると、移動体6の溝6fが回転部材16の突部16gに進入して回転方向に係合し、この状態で、本体筒1と先筒3とが繰り戻し方向へさらに相対回転されても、軸体16yに作用するそれ以上移動体6を後退させようとする回転力は、移動体6の溝6fを介して回転部材16の突部16gにも与えられて分散され、軸体16yの捩切れが防止されるようになっている。
なお、軸体16yの捩切れを防止するための移動体6の溝6fに代えて凹部を設け、当該凹部が回転部材16の突部16gに回転方向に係合する構成としても良く、また、軸体捩切れ防止機構の他の例として、上記の軸体捩切れ防止機構とは逆に、移動体6の後端面に、後方に突出する凸部を周方向に沿って複数箇所設け、回転部材16の底面で軸体16yの周縁に、移動体6の最大後退時において当該移動体6の凸部が進入し回転方向に係合する凹部を複数設けるようにしても良い。
そして、図6に示すように、充填部材4xに充填物Lが残っている場合には、この充填物Lを使用状態とすべく、使用者により再度本体筒1と先筒3とが繰り出し方向に相対回転され、以降は上記と同様な動作となり、このような動作が繰り返される。
また、図7に示すように、本体筒1と先筒3との繰り出し方向への相対回転により、ピストン7が最大に前進すると、当該ピストン7が充填部材4の先端部の内面4bに当接し、充填領域4xの充填物Lが殆ど使い切られる。
そして、充填物Lが殆ど使い切られ、図7に示す状態から本体筒1と先筒3とが繰り戻し方向に相対回転されると、第一の螺合部8の螺合作用により、吐出口4cを有する充填部材4の先端部4aは先筒3の先端の開口から没入し、図8に示す状態とされる。
このように、本実施形態の充填物押出容器100によれば、本体筒1と先筒3とが繰り出し方向に相対回転されると先に第一の螺合部8の螺合作用が働き、移動体6を含む充填部材4が前進して充填部材4の先端部4aが先筒3内から出現し、充填部材4が前進限に達すると第一の螺合部8の螺合作用が停止し、この螺合作用の停止の状態で本体筒1と先筒3とが繰り出し方向にさらに相対回転されると今度は第二の螺合部9の螺合作用が働き、移動体6が前進して充填物Lが使用状態にされ、使用後に本体筒1と先筒3とが繰り戻し方向に相対回転されると先に第一の螺合部8の螺合作用が働き、移動体6を含む充填部材4が後退して充填部材4の先端部4aが先筒3内に没入して所定位置に繰り戻され、このように、例えば皮膚等の被塗布部等に接触する充填部材4の先端部4aが使用時には先筒3内から出現し使用後には先筒3内に没入し収容されるため、衛生面の向上及び充填物Lの先筒3による保護並びに充填物Lの充填部材4による保護が図られると共に、使用後には全長が短くされコンパクト化される一方で使用時には適度な全長とされ取扱性及び使用性(使いやすさ)が向上され、加えて、例えば口紅等の棒状化粧料容器と同じ感覚での使用が可能とされ使用感が向上されている。
また、本体筒1に内蔵され移動体6の回り止めとして機能する回転部材16が、本体筒1と軸線方向移動可能に係合するため、第一の螺合部8の螺合作用による移動体6を含む充填部材4の前進/後退に従い前進/後退可能とされ、この回転部材16が、移動体6と軸線方向移動可能に係合するため、第二の螺合部9の螺合作用による移動体6の前進/後退を支障無く行うことが可能とされ、このように、移動体6の回り止めとして機能する回転部材16の軸線方向の移動が可能とされているため、第一の螺合部8の螺合作用による移動体6を含む充填部材4の移動距離や、第二の螺合部9の螺合作用による移動体6の移動距離が、移動体6の回り止めが軸線方向に移動しない場合に比して延ばすことが可能とされ、使用位置に繰り出される充填部材4の先端部4aを十分に露出させることや、充填物Lの使用量を増やすことが可能とされている。
特に、本実施形態においては、雌螺子部材5が後退限にある状態で、雌螺子部材5の係止部である環状突部5kが、回転部材16の係止部である凸部16dに対して軸線方向に離間しているため、この状態で、本体筒1と先筒3とが繰り出し方向に相対回転されると、第一の螺合部8の螺合作用が働き雌螺子部材5が軸線方向に所定量前進してから回転部材16を軸線方向に係止し、本体筒1と先筒3とが繰り出し方向にさらに相対回転されると、雌螺子部材5が係止部5k,16dの係止により回転部材16を伴って軸線方向に所定量前進することになる。従って、本体筒1と先筒押え部材2との係合部である本体筒1の凸凹部1a及び先筒押え部材2の凹凸部2bの軸線方向長、先筒押え部材2のバネ部2dの軸線方向長を十分に確保しつつ、第一の螺合部8の長さ及び第二の螺合部9の長さを最大限に確保できる。このため、使用位置に繰り出される充填部材4の先端部4aを十分に露出させると共に充填物Lの使用量を増やすことが可能とされる等、軸線方向の長さを効率良く設計することが可能とされている。
また、このように、雌螺子部材5は、回転部材16を軸線方向に係止する環状突部5kを備えているため、第一の螺合部8の螺合作用による移動体6を含む充填部材4の移動に従い、回転部材16が確実に移動するようになっている。また、例えば皮膚等の被塗布部に接触する充填部材4の先端部4aの形状を、任意な塗布し易い形状に選択でき、使用感を一層向上することが可能とされている。
なお、特に軸線方向の長さを効率良く設計し得るとして、雌螺子部材5が、回り止めとして機能する回転部材16を残した状態で後退限から所定量前進し、その後、回転部材16を伴ってさらに前進するようにしているが、例えば係止部同士を予め軸線方向に当接する等して最初から回転部材16を伴って前進する構成とすることも可能である。
また、本実施形態の充填物押出容器100によれば、以下の作用・効果を奏する。すなわち、本体筒1内に収容され軸線方向に伸縮可能なバネ部2dを含む先筒押え部材2を具備し、先筒3は、先筒押え部材2のバネ部2dにより後側に付勢された状態で当該先筒押え部材2を介して本体筒1に回転可能に装着されているため、先筒押え部材2のバネ部2dにより、本体筒1と先筒3との相対回転時に好感覚な回転抵抗が与えられると共に、例えば容器100の落下等により作用する衝撃や振動等の外力が緩衝され充填物Lの吐出口4cからの漏出が防止され且つ部材の破壊が防止されている。
また、第二の螺合部9のリードに比して第一の螺合部8のリードが大きくされているため、本体筒1と先筒3との繰り出し方向への相対回転により、第一の螺合部8の螺合作用が働く充填部材4が、大きいリードに従い素早く使用位置に繰り出されて、充填部材4の先端部4aが先筒3内から出現し、さらなる本体筒1と先筒3との繰り出し方向への相対回転により、第二の螺合部9の螺合作用が働く移動体6が、小さいリードに従いゆっくりと繰り出され充填物Lが適度に充填部材4の先端部4aの吐出口4cから吐出して使用状態にされ、使用後には、本体筒1と先筒3との繰り戻し方向への相対回転により、充填部材4が、大きいリードに従い素早く繰り戻されて、充填部材4の先端部4aが先筒3内に没入して収容位置に後退し、その結果、使用性(使いやすさ)が一層向上されている。
なお、本実施形態においては、弾性部(Oリング11)の弾性力を利用して第二の螺合部9の作動抵抗を上げるようにしているが、作動抵抗を上げる他の構成として、例えば、材質を異ならせることや、螺子の接触抵抗を異ならせる等が挙げられる。また、第二の螺合部9の作動抵抗を上げるさらに他の構成としては、例えば、ピストン7の軸線方向の摺動抵抗による構成も挙げられる。
また、本実施形態においては、第一の螺合部8の螺合作用が第二の螺合部9の螺合作用より確実に先に働くように、第一の螺合部8の作動抵抗に比して第二の螺合部9の作動抵抗を上げるようにしているが、本実施形態のように、第二の螺合部9のリードに比して第一の螺合部8のリードを大きくしていれば、第一の螺合部8の螺合作用が第二の螺合部9の螺合作用より先に働くことになる。
また、このように第二の螺合部9のリードに比して第一の螺合部8のリードを大きくすることで、充填部材4の先筒3に対する出没を素早くする一方で、ピストン7による充填物Lの吐出を適度にゆっくりとし、ピストン7より充填部材4が速く移動するようにしているが、第一の螺合部8のリードと第二の螺合部9のリードとを同じとし充填部材4とピストン7の移動速度を同じとすることも可能である。この場合には、前述のように、第一の螺合部8の作動抵抗に比して第二の螺合部9の作動抵抗を上げる構成のように、第一の螺合部8の螺合作用が第二の螺合部9の螺合作用より先に働く構成の採用が必要とされる。なお、第二の螺合部9のリードに比して第一の螺合部8のリードを小さくすれば、充填部材4よりピストン7を速く移動させることが可能である。
因みに、充填部材4の先端部(外面)4aに、例えば発泡ウレタンや微細なネット状材等の多孔質材を設けこれを塗布部としても良く、また、外面4aに細毛等を設けこれを塗布部としても良く、また、先細のテーパー加工されたポリエステル繊維を束ねて成るブラシを取り付けこれを塗布部としても良く、また、シリコンゴムや熱可塑性エラストマー等の弾性体を塗布部としても良い。
図35は、図2〜図8中の回転部材に代えて用いられる他の回転部材を示す斜視図、図36は、図35に示す回転部材の縦断斜視図である。
この回転部材16Zが上記回転部材16と違う点は、スリット16cを有する本体部16xを、周壁の対向位置に開口16n,16nを一対有する有底円筒状の本体部16mに代えると共に、この本体部16mにおける開口16nの先端側の内縁に沿って、内側(軸心側)に張り出す円弧状の凸部16pを、雌螺子部材5に軸線方向に係止される係止部として設けた点である。
このように構成された回転部材16Zを用いても、回転部材16を用いた場合とほぼ同様な作用・効果を奏する。
図37は、本発明の第二実施形態に係る充填物押出容器の初期状態を示す縦断面図、図38は、図37に示す状態から使用者の操作により充填部材が最大に前進した時の縦断面図、図39は、図37に示す状態から使用者の操作により充填部材が最大に前進し続いて移動体が最大に前進した時の縦断面図、図40は、図37〜図39中の回転部材及び移動体を示す分解斜視図である。
この第二実施形態の充填物押出容器200が第一実施形態の充填物押出容器100と違う点は、円柱状の軸体16yを筒体216yに代えた回転部材216を回転部材16に代えて用いると共に、筒状の移動体6に代えて軸状の移動体206を用い、この変更に伴って、雌螺子部材5の一部の構成を変えた雌螺子部材205を用いた点であり、他の構成は第一実施形態と同様である。
具体的には、回転部材216の筒体216yは、概ね有底円筒状に構成され、図40に示すように、先端側の外径小径部216aと、この外径小径部216aの後端に続く外径大径部216bと、を備える段付き円筒形状とされている。外径小径部216a及び外径大径部216bの内周面は、円形形状の内周の対向部を内側に張り出した二平面部216xxを有し、非円形の内形を有する構成とされている。この筒体216yの二平面部216xxが、回り止め部(回り止め機構)250の一方を構成する回り止めとされている。
また、回転部材216の外径大径部216bの先端の外周面には、雌螺子部材205に軸線方向に係止される係止部としての環状突部216dが設けられている。そして、回転部材216の筒体216yの底部には、第一実施形態と同様に、円環状の鍔部16aが設けられると共に、この鍔部16aの周面に沿って、本体筒1の突条1fに回転方向に係合すると共に軸線方向移動可能に係合する歯車形状の凹凸部16bが設けられている。
移動体206は、第一実施形態の移動体6の筒孔を埋めた横断面非円形形状の中実の軸体とされ、他の部分の構成に関しては、第一実施形態の移動体6と同様であり、移動体206の外周の二平面部6xxが回り止め部250の他方を構成する回り止めとされている。そして、この移動体206は、図37に示すように、回転部材216の筒体216yに内挿され、図40に示すように、移動体206の二平面部6xxと筒体216yの二平面部216xxとが回転方向に係合すると共に軸線方向移動可能に係合することで、回り止め部250が構成されている。なお、移動体及び回転部材に設けられていた軸体捩切れ防止機構6f,16gは、ここでは無くされている。
雌螺子部材205は、図37に示すように、外径大径部5bの鍔部5cより後側の大径部分205xが、雌螺子部材5に比して、半径方向外側に位置し、回転部材216の外径大径部216bを内挿する構成とされている。この雌螺子部材205の大径部分205xの後端部の内周面には、回転部材216の環状突部216dを軸線方向に係止するための環状突部(係止部)205kが、環状突部216dに対して軸線方向後方に所定に離間して設けられている。他の部分の構成に関しては、第一実施形態の雌螺子部材5と同様であり、雌螺子5jが移動体206の雄螺子6bと螺合して第二の螺合部9を構成すると共に、螺合突起5eが先筒3の螺合溝3bと螺合して第一の螺合部8を構成している。
このような構成を有する充填物押出容器200によれば、図37に示す初期状態から使用者により本体筒1と先筒3とが繰り出し方向に相対回転されると、第一実施形態と同様に、第一の螺合部8の螺合作用が働き、回り止め部250との協働により、雌螺子部材205及び充填部材4と共に移動体206及びピストン7が前進して充填部材4の先端部4aが先筒3の先端の開口から出現し、雌螺子部材205が所定量前進すると、雌螺子部材205の環状突部205kが回転部材216の凸部216dを軸線方向に係止し、続けて本体筒1と先筒3とが繰り出し方向へ相対回転されると、環状突部205kと凸部216dとの係止により雌螺子部材205が回転部材216を伴って前進し、充填部材4の先端部4aの先筒3からの突出量が増えながら、充填部材4が、図38に示すように、雌螺子部材205の螺合突起5eが先筒3の螺合溝3bの先端3fに位置する前進限まで前進し、続けて本体筒1と先筒3とが繰り出し方向へ相対回転されると、第二の螺合部9の螺合作用が働き、回り止め部250との協働により、図39に示すように、移動体206及びピストン7が前進し、充填物Lが充填部材4の先端部から吐出されて使用状態にされる。
以降の動作も第一実施形態と同様であり、本体筒1と先筒3とが繰り戻し方向へ相対回転されると、第一の螺合部8の螺合作用が働き、回り止め部250との協働により、雌螺子部材205及び充填部材4と共に移動体206及びピストン7が後退して、充填部材4の先端部4aが先筒3の先端の開口から没入し、回転部材216の後端面が本体筒1の底面に当接して雌螺子部材205が後退限に達し、さらに本体筒1と先筒3とが繰り戻し方向へ相対回転されると、第二の螺合部9の螺合作用が働き、回り止め部250との協働により、移動体206及びピストン7が後退する。
このような第二実施形態の充填物押出容器200にあっても、第一実施形態と同様な効果を得ることができるというのはいうまでもない。
ところで、ここまでは、充填物を、例えば、液状や、ゼリー状、ゲル状、ペースト状を含む練り状等の半固体や軟固形状等とした場合に、特に好適な充填物押出容器100,200について述べてきたが、以下の第三、第四実施形態では、充填物を、例えば、アイライナー、アイブロー、リップライナー、リップスティック等を始めとした種々の棒状化粧料、筆記用具等の棒状の芯等の棒状体とした場合に、特に好適な充填物押出容器300,400について述べる。この棒状体Mとしては、比較的硬めのものや、非常に軟らかい棒状体が用いられ、外径が10mm以上の太めの棒状体とするのが好適であるが、10mm以下や2、3mmの細めの棒状体とすることも可能である。
図41は、本発明の第三実施形態に係る充填物押出容器の初期状態を示す縦断面図、図42は、図41に示す状態から使用者の操作により充填部材が最大に前進し続いて移動体が前進し使用状態とした時の縦断面図である。
この第三実施形態の充填物押出容器300が第一実施形態の充填物押出容器100と違う点は、先端が閉じられると共に吐出口4cを有する充填部材4に代えて、円筒形状のパイプ部材304を用いると共に、このパイプ部材304に上記棒状体Mを充填物として充填した点であり、他の構成は第一実施形態と同様である。
具体的には、パイプ部材304は、大径の円筒状に構成され、内部に大径円柱状の棒状体Mを密接状態で摺動可能に収容して成る。この棒状体Mは、パイプ部材304内に溶融状態の棒状体形成材料を注入し冷却固化することでパイプ部材304内に充填したものであっても、予め製造された棒状体をパイプ部材304に密接状態で嵌挿し充填したものであっても良い。なお、パイプ部材304内に溶融状態の棒状体形成材料を注入し冷却固化することでパイプ部材304内に充填したものとする場合には、充填物押出容器300を組み立て後、加熱溶融した棒状体をパイプ部材304の先端から充填し冷却後先端を仕上げる(整える)方法と、組み立てる前のパイプ部材304の先端を密閉し後端から加熱溶融した棒状体を充填し冷却後、容器に装着する方法とを採用できる。
また、この第三実施形態にあっては、パイプ部材304の先端は所定の角度で傾斜して構成され、先端の傾斜する開口304aと面一を成すように、円柱形状の棒状体Mの先端面も傾斜面とされている。従って、棒状体Mの先端面は傾斜する楕円面とされ、例えば皮膚等の被塗布部等に対する塗布に好適な面とされている。また、パイプ部材304の軸線方向中程の外周段差面4hから後端までの構成は、第一実施形態の充填部材4と同様である。
また、第一実施形態のピストン7に代えて、先端面が棒状体Mの先端面と同様に傾斜するピストン307が用いられている。このピストン307は、パイプ部材304の内周面に緊密に当接すると共に、当該ピストン307と棒状体Mとがパイプ部材304内において気密に接した状態とされている。
このような構成を有する充填物押出容器300によれば、図41に示す初期状態から使用者により本体筒1と先筒3とが繰り出し方向に相対回転されると、第一の螺合部8の螺合作用が働き、回り止め部50との協働により、雌螺子部材5及びパイプ部材304と共に移動体6及びピストン307が前進してパイプ部材304の先端部が先筒3の先端の開口から出現し、雌螺子部材5が所定量前進すると、雌螺子部材5の環状突部5kが回転部材16の凸部16dを軸線方向に係止し、続けて本体筒1と先筒3とが繰り出し方向へ相対回転されると、環状突部5kと凸部16dとの係止により雌螺子部材5が回転部材16を伴って前進し、パイプ部材304の先端部の先筒3からの突出量が増えながら、パイプ部材304が、雌螺子部材5の螺合突起5eが先筒3の螺合溝3bの先端3fに位置する前進限まで前進し、続けて本体筒1と先筒3とが繰り出し方向へ相対回転されると、第二の螺合部9の螺合作用が働き、回り止め部50との協働により、図42に示すように、移動体6及びピストン307が前進し、ピストン307により棒状体Mが押し出されてパイプ部材304の先端から出現して突出し使用状態にされる。
使用後に、本体筒1と先筒3とが繰り戻し方向へ相対回転されると、第一の螺合部8の螺合作用が働き、回り止め部50との協働により、雌螺子部材5及びパイプ部材304と共に移動体6及びピストン307が後退して、パイプ部材304の先端部が先筒3の先端の開口から没入し、回転部材16の後端面が本体筒1の底面に当接して雌螺子部材5が後退限に達し、さらに本体筒1と先筒3とが繰り戻し方向へ相対回転されると、第二の螺合部9の螺合作用が働き、回り止め部50との協働により、移動体6及びピストン307が後退する。
この時、ピストン307と棒状体Mとがパイプ部材304内において気密に接した状態にあるため、棒状体Mがピストン307と共に後退し、棒状体Mの先端部は、先筒3及びパイプ部材304内に収容される。
このような第三実施形態の充填物押出容器300にあっても、第一実施形態とほぼ同様な効果を得ることができる。
図43は、本発明の第四実施形態に係る充填物押出容器の初期状態を示す縦断面図、図44は、図43に示す状態から使用者の操作により充填部材が最大に前進し続いて移動体が前進し使用状態とした時の縦断面図である。
この第四実施形態の充填物押出容器400が第三実施形態の充填物押出容器300と違う点は、ピストン307に代えて、パイプ部材404の内周面に摺接する後端部の外径に比して小さい外径の先端部407aを有するピストン407を用い、このピストン407の先端部407aの周りRにも棒状体M1を充填した点である。
この棒状体M1は、パイプ部材404内に溶融状態の棒状体形成材料を注入し冷却固化することでパイプ部材404内に充填されている。従って、ピストン407と棒状体M1とは、パイプ部材404内において気密に接した状態にある。
なお、この充填物押出容器400にあっては、パイプ部材404及び棒状体M1の先端は、第三実施形態のようには傾斜していない。
このような構成を有する充填物押出容器400によれば、第三実施形態の充填物押出容器300と同様な作用・効果を奏し、加えて、ピストン407の先端部407aの周りRにも棒状体M1が充填されているため、ピストン407と棒状体M1とのパイプ部材404内での気密度が、第三実施形態に比して一層高められ、棒状体M1がピストン407と共に一層確実に後退することができる。
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、雄螺子、雌螺子は、間欠的に配される突起群又は螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子山と同様な働きをするものであっても良く、また、螺合突起は、連続する螺子山であっても良い。
また、第四実施形態のピストン407の構成を第三実施形態のピストン307に対して適用しても良く、第三実施形態のパイプ部材304及び棒状体Mの先端部の構成を第四実施形態のパイプ部材404及び棒状体M1の先端部に対して適用しても良い。
また、第二実施形態の構成、具体的には、回転部材216が、当該回転部材216の底部から立設された非円形の内形を有する筒体216yを具備し、移動体206の外面が、筒体216yの非円形の内形に同期回転可能且つ軸線方向移動可能に係合する形状とされる構成を、第三、第四実施形態に適用することも可能である。
さらに、上記実施形態においては、雌螺子部材5,205が軸線方向に移動する際に回転部材16,16Z,216を軸線方向に確実に係止すべく、係止部5k、16d(16p)、205k,216dを設けているが、このような係止部を無くし例えば使用者が容器を逆さにする等して回転部材16,216を自重により移動させたり、摩擦や螺合等により移動させることも可能である。
1…本体筒(本体)、3…先筒、3b…先筒の螺合溝(第一の螺合部)、3f…前進限、4…充填部材、4a…充填部材の先端部の外面(充填部材の先端部)、5,205…雌螺子部材、5e…雌螺子部材の螺合突起(第一の螺合部)、5j…雌螺子部材の雌螺子(第二の螺合部)、5k,205k…雌螺子部材の係止部、6,206…移動体、6b…移動体の雄螺子(第二の螺合部)、8…第一の螺合部、9…第二の螺合部、16,16Z,216…回転部材、16d,16p,216d…回転部材の係止部、16y…回転部材の軸体、100,200,300,400…充填物押出容器、216y…回転部材の筒体、304,404…パイプ部材(充填部材)、M,M1…棒状体(充填物)、L…充填物。