JP4735585B2 - コンクリート系棒状ダンパー構造 - Google Patents

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Description

本発明は、コンクリート系棒状ダンパー構造に関するものであり、例えば支承構造を有する橋梁において、大規模地震時の上部構造と下部構造の相対変位によりエネルギー吸収を図るダンパー構造である。新設橋梁にも、既設橋梁の耐震補強にも適用できるものである。
地震国である我が国では、過去に大規模な地震が発生するたびに、社会基盤を構成する構造物が大きな被害を受けてきた。例えば、橋梁では、地震時に下部構造の天端に上部構造からの慣性力が作用することにより、下部構造の基部や接合部などに大きな曲げモーメントが発生し、鉄筋の降伏、座屈、コンクリートの圧壊などの損傷が発生する。これらの下部構造における損傷は、地震時における橋梁全体の応答、残留変位の増加に繋がり、使用者の安全や地震後の使用性に著しい影響を与える。
大規模な地震による橋梁の損傷を防ぐ方法としては、下部構造の大規模化や、補強、補修などを行い、下部構造の耐震性を向上させることが考えられる。しかし、大規模な下部構造は、施工費が増加するのに加え、橋梁全体の重量が増加するために基礎への負担が大きくなる。また、既存の下部構造に対する補強、補修では、連続繊維シートを用いた補強方法等、橋梁の重量を増加せずに耐震性を向上できるが、コスト増及び施工環境が問題となる場合も少なくない。
一方、橋梁の地震時における応答の低減を目的として、下部構造と上部構造の間に免震支承やダンパー等を設置して、上部構造の慣性力が下部構造に伝わらないようにすると共に、地震による橋梁の振動エネルギーを積極的に吸収する方法がある。小型の装置でも十分な効果を期待できるため、設置工事が簡易であり、また、下部構造と上部構造の間に設置するため、既存の橋梁の補強に対しても有効であることから、橋梁の免震化、耐震補強に適用されている。
但し、以上のような支承、ダンパーを橋梁へ適用するためには、地震時に下部構造と上部構造の間に発生する大きな相対変形に追従できる変形性能、及び大変形領域におけるエネルギー吸収性能が必要とされる。また、これらの装置の適用を低コストで実現することも重要である。さらに、沿岸部など劣悪な環境下においてもメンテナンスフリーでダンパーとしての性能を保持し得るような耐久性、対候性も要求される。
従来のダンパーには、機構として単純な鋼棒ダンパーや低降伏点鋼材を用いたハニカムダンパーなどの鋼材からなるダンパー、ピストン状の機構を持つオイルダンパーや鉛押出しダンパー、鉛直荷重を支持しない免震支承などを設置する方法等があった。
(1)鋼棒ダンパー:鋼棒ダンパーは、ラッパ管でテーパー支持されていることにより、鋼棒の変形を片持ち梁の基部に集中させず、効率の良いエネルギー吸収を可能としている。橋梁へ適用される場合には、下部構造と上部構造にすり鉢状の拘束管が埋設され、その内部中心に鋼棒が設置される。
(2)ハニカムダンパー:低降伏点鋼等からなる鋼材をハニカム形状に加工した鋼材ダンパーである。独自のハニカム形状により、鋼材の塑性化領域の分散化が可能であり、単純な棒部材に比べ、大きな変形領域におけるエネルギー吸収性能に優れている。
(3)オイルダンパー・ビンガムダンパー・鉛押出しダンパー:シリンダ内にオイル、ビンガム流体の粘性流体や鉛等を封入したものである。橋梁へ適用する場合には、シリンダ本体の基端とピストンロッドの先端がそれぞれ下部構造、上部構造に固定され、地震時における相対変形の速度に比例した抵抗力を発揮することにより、エネルギーを吸収する。
(4)MRダンパー:シリンダ内部にMR(磁気粘性)流体という電流に対して抵抗力が変化する磁気性流体が封入されたダンパーである。エネルギー吸収能力を制御し、地震時の応答を効率的に低減する場合に用いられる。
(5)鉛プラグ入り積層ゴム支承:比較的柔なゴム材料で構成された支承であり、地震による加速度が上部構造へ伝達するのを遮断することにより、応答を低減できる。また、ゴム内に設置された鉛プラグが塑性変形することによるエネルギー吸収も期待できる。
新設の橋梁において、高減衰ゴムを用いた免震支承や鉛プラグ入り積層ゴム支承は、エネルギー吸収性能には限界があり、支承本体とは別にエネルギー吸収装置、即ちダンパーを別途設置することが合理的である。
既設の橋梁においても、既存の支承を免震支承に取替える場合には、新設と同様の問題点がある。但し、既設支承の取替えは、
(1)主桁および橋脚に損傷を与えずに既存の支承を撤去するのは、施工上の制約が多い。
(2)主桁のジャッキアップにおいて、高度な施工技術や高価な載荷装置が必要になる。
(3)重量の大きな新旧支承を狭い空間において効率良く撤去・設置しなければならない。
(4)旧規準の場合を超える地震時水平力を合理的に負担させる必要があるが、アンカーボルトの取替えは一般に不可能である。
などの問題点がある。そこで、ダンパーを追加して設置する方法が望ましい。(以上、例えば特許文献1参照)
なお、本発明に関連するダンパーの先行技術文献として特許文献2、3がある。特許文献2の発明は、橋梁の免震技術であり、棒状のダンパー部材(極低降伏点鋼)の基部を橋脚または橋台に埋設した上部が開口した鋼製容器のストッパー構造物内に挿入し底部に固定して垂直に立て、その上部を水平力のみ伝達する構造で橋桁と連結し、鉛直荷重は可動支承で支持するものである。
特許文献3の発明は、鋼棒ダンパーであり、上部構造体に設けた上部の鋼棒と基礎に設けた下部の鋼棒とをそれぞれの先端部に設けたテーパー型積層円筒部材と円筒状緩衝体で連結し、地震時に上部構造体と基礎とが水平変位すると、上下の鋼棒の基部が塑性化し、地震エネルギーを吸収し、上下の鋼棒の先端部が円筒状緩衝体から抜け出し可能とするものである。
特開2004−332478号公報 特開平9−49209号公報 特開平11−287289号公報
鋼棒ダンパーでは、前述したように下部構造と上部構造との間に、その端部がすり鉢状の拘束管の内部中心に固定されている鋼棒が設置されている。このように、鋼棒が屋外に剥き出しになっているため、海岸部などの周辺環境が劣悪である場合、腐食による機能低下、及びそれを防ぐための定期的なメンテナンスが必要となる。
オイルダンパーやビンガムダンパー等は鋼棒ダンパーに比べると耐久性に富むが、装置自体のコストが高い上、大きな変形性能を実現しようとすると、装置が大型化していまい、設置時における施工性やさらなるコスト増に繋がる可能性がある。
MRダンパーについては、さらにコストが高くなる上、制御システムが必要となるため、パッシブな制震効果を期待する際には適当ではない。
鉛プラグ入り免震支承は、列挙したものの中で最も適用例が多いが、支承が大きなものとなるため、既存の橋梁へ適用する際には、施工性が問題となることが多い。
そこで、コンクリートやモルタルなどコンクリート系材料を用いた、海浜部においても錆の心配のないダンパーが望まれていたが、コンクリートに鉄筋等の鋼材を埋設した部材の変形性能は、鋼材ダンパーやハニカムダンパーなどのように大きな変形性能を付与することは不可能である。細い棒状部材とすれば、変形性能は付与できるが、部材に生じる反力は小さくなるから、多数のダンパーを設置する必要があり、現実的ではない。
さらに、橋梁のダンパーとしては、橋軸方向の桁の温度伸縮による変位に追随する必要があり、ダンパーの両端を、単に主桁と橋脚天端に固定しただけでは、常時の温度変化を受けてしまうので、オイルダンパーのような装置では問題がなかったが、鋼棒ダンパーやハニカムダンパー等の履歴型ダンパーでは、問題があった。
本発明は、棒状のダンパーの両端をそれぞれ構造物に定着してなるコンクリート系棒状ダンパー構造であり、コンクリート系材料を用いたダンパーでありながら、単純な機構で大きな変形性能とエネルギー吸収性能を有し、かつ、沿岸部などの劣悪な環境下における橋梁等にも適用できる耐久性・耐候性を併せ持ち、さらに温度伸縮等にも追随可能なコンクリート系棒状ダンパー構造を提供するものである。
高い耐久性・耐候性を実現するためには、鋼製ダンパーやデバイス等を用いるよりも、周囲がコンクリート系材料で被覆されているRC部材によるダンパーが適している。しかし、単純なRC部材では、橋梁のダンパーで要求される変形性能を実現することができない。そこで、本発明では、後述するように、円弧拘束管や高性能材料等を用いてRC部材等のコンクリート系部材でありながら、橋梁等に適用できるような変形性能・エネルギー吸収性能を有するダンパーを実現する。
本発明の請求項1は、棒状のダンパーの両端をそれぞれ構造物に定着し、構造物の相対変位による棒状のダンパーの曲げ変形でエネルギーを吸収する棒状ダンパー構造であり、
RC部材またはPC部材からなる棒状ダンパーと、構造物に定着される筒状の部材であって前記棒状ダンパーの端部が挿入される拘束孔を有する拘束部材とから構成され、前記拘束孔の内面には、基部から先端部に向かって棒状ダンパーの外面から離れていく円弧による曲面が形成されており、拘束孔の基部における円弧の出だしには、棒状ダンパーの基部の伸び出しによる回転角に相当する遊角θ(伸び出しによる回転変位に追随する角度)が形成されていることを特徴とするコンクリート系棒状ダンパー構造である(図1、図2参照)。
本発明では、一様断面の円形断面等の中実棒部材または円環断面等の中空棒部材を用い、材料には、鉄筋やPC鋼材等の鋼材と、モルタルやコンクリート等のセメント材料を用いる。モルタルまたはコンクリートに繊維を混入してもよい。構造物に定着された拘束部材としての円弧拘束管の基部から先端部に向かって開く朝顔状の円弧拘束孔内に棒状ダンパーの端部を差込んで根入れし、上部構造と下部構造の相対変位により円弧に沿って棒状ダンパーを曲げ変形させ、棒状ダンパーの曲率分布を制御し、曲げ変形を分散させることにより、変形性能としての終局回転角を増大させる。
中空の棒状ダンパーの場合、内部での圧縮破壊を防止するため、内部空間にコンクリートを充填し、中実の棒状ダンパーとしてもよい。また、一様断面の棒状ダンパーの場合、単純円弧を回転させた曲面で円弧拘束孔を形成する。これに限らず、例えば基部から開口部にかけて曲率半径が小さくなる(曲率が大きくなる)円弧の曲面とし、棒状ダンパーの変形性能を高めるようにしてもよい。円弧拘束管は、例えば、外側型枠として設置された鋼管の内側に朝顔状の鋼製型枠を設置した状態でコンクリート系材料(無収縮モルタルまたは普通コンクリート)を打設することにより製作することができる。円弧拘束管の外形は、円形でも角形等でもよい。
円弧拘束孔の拡径を一方向に限定し、棒状ダンパーの円筒形部材に対する外部からの拘束効果を利用するようにしてもよい。鋼部材ではこうした拘束は見込めないが、コンクリートの圧縮破壊において拘束効果による終局ひずみの伸びが大きいことを利用することができる。耐震ダンパーのように1方向であるが、正負の繰り返し載荷を受ける場合は、円弧拘束孔は偏平な朝顔形状とする。
棒状ダンパーが矩形断面の場合、矩形断面の幅と高さの比を大きくとり、1方向にのみ変形性能を持たせ、それと直角方向にはストッパーとして変位を拘束するなどの方向性を持った緩衝装置・ダンパーとして利用することができる。
円弧の出だしが鉛直真上を向いた直線であれば、計算上、伸び出しはしないが、棒状ダンパーの伸び出しの角度θに等しい角度を持たせれば、棒状ダンパーの外面が降伏点で円弧拘束孔の内面に接して、それ以降の伸び出しは拘束され、計算上も降伏点以上に耐力は上昇しないので、降伏点以降の伸び出しによる回転角は一定である。この伸び出しによる回転変形分により棒状ダンパーの変形性能が向上する。この伸び出しによる回転角の占める割合は、付着強度が小さく降伏強度が高い分、RC部材よりもPC部材の方が大きいので、本発明においてPC部材を用いる場合は特にその必要性がある。
また、棒状ダンパーのPC鋼材にはアンボンド定着区間を設け、抜け出しによる回転性能を向上させることもできる。
本発明の請求項は、請求項1に記載の棒状ダンパー構造において、拘束孔の内面は、棒状ダンパーの終局曲率または降伏曲率に対応した形状であることを特徴とするコンクリート系棒状ダンパー構造である。
円弧拘束孔は、終局曲率ではなく、降伏曲率に合わせた円弧とすることにより、損傷を許容しないが、大きな変形性能が可能な構造とすることができる。
本発明の請求項は、請求項1または2に記載の棒状ダンパー構造において、棒状ダンパーの基部は拘束部材を貫通し、構造物内に根入れされていることを特徴とするコンクリート系棒状ダンパー構造である。
棒状ダンパーの基部を円弧拘束管の下へ例えば1D(棒状ダンパーの外径)程、根入れすることにより(図1参照)、棒状ダンパーの根入れ部の構造物からの抜け出しによる回転を終局回転角に加えることができる。
本発明の請求項は、請求項1から請求項までのいずれか1つに記載の棒状ダンパー構造において、拘束孔の基部には、構造物内部に向かって棒状ダンパーから離れる遊角θ´が設けられていることを特徴とするコンクリート系棒状ダンパー構造である(図3参照)。
円弧拘束孔の基部に初期剛性を微小にする遊角θ´を持たせることにより、例えば橋桁の温度収縮に伴う棒状ダンパーの変位の吸収が可能となる。
本発明の請求項は、請求項1から請求項までのいずれか1つに記載の棒状ダンパー構造において、棒状ダンパーの外周部(かぶりコンクリート部分あるいは最外縁から鋼材周囲まで)に高性能繊維補強コンクリート(超高強度繊維補強コンクリートUFC、あるいは、高じん性FRCのECC等)が用いられていることを特徴とするコンクリート系棒状ダンパー構造である(図5参照)。
棒状ダンパーの円弧拘束管に挿入される端部に高性能繊維補強コンクリートを用いることで、同部分の終局曲率を大幅に増大させることができる。また、遠心成形する従来の製造設備をそのまま使用して製作することができる。
また、円弧拘束管は、内外に二重とした二重円弧拘束管とすることもでき、内側の拘束部材の拘束孔に棒状ダンパーの基部を挿入し、この内側の拘束部材を外側の拘束部材の拘束孔に挿入する。棒状ダンパーが変形し、次いで内側円弧拘束管が変形することにより、変位を増大させることができる。
以上のような本発明において、エネルギーを吸収する棒状ダンパーはRC部材等のコンクリート系部材とする。RC部材等が地震などにより曲げ変形した場合、部材内の鋼材が塑性化することにより、エネルギーを吸収することができる。図14に示すように、エネルギー吸収(荷重−変形曲線で囲まれる面積∝Pu×δu=Pu×θu×H)を増大させるには、耐力を増大させる、および/または終局回転角を増大させることになる。耐力Puは部材寸法(有効高さあるいは円形断面の直径)の2乗に比例する。また、変形性能δuは後述するようにダンパー基部における拘束管や高性能材料等の適用により向上できる。つまり、RC部材等では、断面寸法や鉄筋量、拘束管の形状、および高性能材料の特性を調節することにより、曲げ耐力や変形性能を制御でき、適切なエネルギー吸収性能を実現することができる。また、例えばダンパー部材の形状を矩形断面とし、その断面に対しの幅と高さの比を大きくとり、1方向にのみ変形性能を持たせれば、それと直角方向にはストッパーとして変位を拘束するなどの方向性を持った緩衝装置・ダンパーとして機能する。こういった場合、コンクリート系材料で構成される本発明によるダンパーは、鋼製ダンパーに比べ、任意の形状を容易に実現できるため有利であり、その形状によりエネルギー吸収の量のみならず、ダンパーが有効に機能する方向性などの諸条件も制御できる。
上述するRC部材等において、エネルギー吸収性能を向上させるためには、前述したように、曲げ耐力と変形性能を高めることが必要となる。RC部材等の曲げ耐力を向上させ、エネルギー吸収量を増加することは比較的容易であるが、下部構造に伝達される反力が大きくなり、その損傷の要因となる。また、拘束管や定着部にも大きな反力が作用し、同部分が損傷することにより、地震時に十分な制震効果を期待できない可能性がある。さらに、部材寸法を一定にし、鉄筋量を上げると、耐力は比例するが、変形性能は低下することになる。即ち、必要以上の鉄筋を用いず、曲げ耐力を低くするほど、下部構造や定着部の設計が有利となり、好ましい。そのため、エネルギー吸収性能を高めるためには、ダンパー部材の変形性能としての終局回転角θuを増加させ、地震時にダンパーが積極的に塑性変形を起こし、エネルギーを吸収することが重要となる。
曲げモーメントが作用する独立1本柱において、部材の高さ方向に一様に降伏あるいは終局に達するような部材を実現できれば、かなりの変形性能のある部材とすることができる。通常のRC部材では、大きな曲げモーメントが作用する箇所が塑性化し、剛性が低下するため、以後は塑性化した部分に曲げ変形が集中する。そのため、塑性化した以外の箇所が健全であっても、変形が集中する部分のコンクリートが圧壊し、鉄筋が座屈、破断することにより、部材は終局を迎える。これに対して、部材の高さ方向に一様に曲げ変形を分散することができれば、部材全体としては同じ変形量であっても、曲げ変形が集中する部分が無いため、変形性能を増加することができる。
曲げ変形、即ち曲率を分散する方法としては、RC部材の端部を円弧拘束管で拘束する方法が考えられる。図1に示すように、円弧拘束管内の中心に設置されたRC柱部材がその天端に作用する力により曲げ変形する場合、曲げモーメント分布が最も大きくなる基部の曲率が増加する。通常の柱部材であれば、そのまま基部が塑性化し剛性が低下することにより、基部にのみ曲げ変形が集中するようになる。しかし、円弧拘束管が周囲にある場合には、曲げ変形した柱の表面が円弧拘束管の内面に接触し、それ以後の変形形状、即ち、柱部材の曲率分布は、円弧拘束管の内面の形状に従うようになる。つまり、円弧拘束管の内面の形状により柱部材の曲率分布を制御し、曲げ変形が基部などの一箇所に集中しないようにすることができる。柱部材における曲げ変形(曲率)を分散することができれば、通常の部材に比べRC部材の損傷(コンクリートの圧壊、鉄筋の座屈、破断)を抑制し、変形性能を高めることができる。
この時、円弧拘束管の内面形状を柱部材の終局曲率に合わせた形状、例えば、単純円弧ではなく、基部から開口部にかけて曲率半径が小さくなる(曲がりがきつくなる)形状とすれば、柱部材の変形性能を最大限に高めることができる。また、ダンパーが有効に機能する方向を1方向に定めたい場合は、拡径を1方向に限定し(例えば、偏平な朝顔形状)、円筒形部材に対する外部からの拘束効果を利用すればよい。このように拘束管内部の形状を任意に変えることにより、変形性能の向上効果以外の性能をダンパーに付与することができる。
図2に示すように、円弧拘束管の内面の形状には、基部からのRC部材等の軸方向鋼材の伸び出しによる回転変位に追随する遊角θ(基部の伸び出しによる回転角に相当する角度)を持たせてもよい。円弧の出だしが鉛直真上を向いた直線であれば、計算上、伸び出しはしない。これに対し、伸び出しによる回転角θに等しい角度を円弧の出だしに持たせれば、降伏点でRC部材等の表面が拘束管の円弧拘束孔の内面に接して、それ以降の伸び出しは拘束される。計算上も降伏点以上に耐力は上昇しないので、降伏点以降の伸び出しによる回転角は一定である。軸方向鋼材の伸び出しによる回転変形分も、ダンパーの変形性能として考慮し、活用することができれば、エネルギー吸収性能、変形性能の増加に有利となる。なお、この軸方向鋼材の伸び出しによる回転変形は、鋼棒ダンパーなどの鋼製部材では存在せず、RC部材等特有の変形要因である。
図3に示すように、円弧拘束管の基部に遊角θ´を持たせることにより、ダンパーの微小な初期変位に対する剛性・抵抗力を小さくすることができる。例えば、ダンパーに微小な水平力が作用した場合、当初は円弧拘束管内部の凸部とRC部材等の点接触箇所を中心として、RC部材等が回転変形するために、微小変形に対する抵抗力が発生しない。これに対し、変形が大きくなり、RC部材等の下部が円弧拘束管の下部内面に接した後は、RC部材等自体が曲げ変形して抵抗力が発生することにより、エネルギーを吸収し始める。本機構によれば、橋桁の温度収縮に伴う変位のような常時の微小変形を遊角により吸収し、地震時のように大変形する場合には、上記したメカニズムによりエネルギーを吸収するダンパー装置を実現することができる。
前述した本発明の方法は、柱部材の変形形状を円弧拘束管で制御し、部材自体の変形性能を100%利用することにより変形性能を高める方法である。即ち、円弧拘束管を適用しても、最終的には柱部材のコンクリートの圧壊、鉄筋の座屈・破断により終局を迎える。逆に言えば、柱部材自体の変形性能も高め、円弧拘束管と併用することができれば、より大きな変形性能を期待することができる。例えば、曲げ変形時に円弧拘束管に拘束される領域のかぶりコンクリートに高性能材料を適用する方法がある。
ここでいう高性能材料とは、圧縮強度が高いコンクリート又はモルタル内に、鋼繊維、炭素繊維、ガラス繊維、あるいはビニロン繊維などが混入された材料である。このような高性能材料としては、高い圧縮強度だけではなく、曲げ強度・じん性も期待できる超高強度繊維補強コンクリート(圧縮強度が100〜250 N/mm、曲げ引張強度が10〜40 N/mm、引張強度が5〜15 N/mmのもの、以下UFCと称する)、あるいは、圧縮強度は普通コンクリートレベルであるが、伸び・曲げ変形性能が著しく高い、高じん性FRC(曲げ引張強度が10〜40 N/mm、引張強度が5〜15 N/mmのもの、以下ECCと称する)などがある。
図5に示すように、例えば、UFCを変形領域のかぶり部分に適用することができれば、曲げ変形時にコンクリートの最外縁に作用する曲げ圧縮応力をUFCの高い圧縮強度が負担し、座屈した主筋のはらみ出しをUFCの曲げ強度・じん性が抑制する。これにより、柱部材のコンクリートの圧壊、主筋の座屈が抑制され、柱部材の変形性能を向上させることができる。また、断面全体、もしくは、最外縁から鉄筋の周囲までをECCで構築すれば、柱部材自体の曲げ変形部のひび割れが分散する他、圧縮に対する終局ひずみも普通コンクリートより大きいため、変形性能を高めることができる。この場合、鉄筋はECCにより被覆されるため、断面中心における普通コンクリートは無くてもよい(中空部材)。
エネルギー吸収部材となるRC部材等は、当然のことながら鉄筋等の鋼材の周囲をコンクリート系材料が被覆している。そのため、前述した鋼棒ダンパーの場合、沿岸部などの塩害が問題となるような劣悪な環境下では、腐食による機能低下が問題となり、防錆処理や定期的なメンテナンス等が必要となるが、本発明によるダンパーでは、十分なかぶりを確保することにより、塩分や雨水などの腐食要因物質をコンクリート系材料が遮断し、内部にある鋼材の腐食を抑制することができる。即ち、本発明によるダンパーは、沿岸部における橋梁などへの適用も可能であり、その場合でも特別な防錆処理や定期的なメンテナンスが不要となる。
図14に示すように本発明によるダンパー部材は、曲げ耐力を小さくし、変形性能を高めることにより、荷重−変形関係が囲む面積であるエネルギー吸収性能を確保しつつ、定着部への反力を低減することができる。即ち、定着部で負担すべき荷重が小さくなるので、その小規模化を実現することができる。また、ダンパー部材をPC部材で構築すれば、エネルギー吸収性能は、RC部材に比べ低減するものの、荷重−変位関係に原点指向性が付与されるため、地震後に残留する下部構造と桁間の相対変位を低減できる。
なお、本発明に係るコンクリート系棒状ダンパー構造は、沿岸部の橋梁の耐震ダンパーのほか、金属部品では腐蝕の問題などが予想される杭頭免震構造などにも有効に適用される。
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果が得られる。
(1)コンクリート系材料の棒状ダンパーを円弧拘束管の基部から先端部に向かって開く朝顔状等の円弧拘束孔に差し込んで根入れし、棒状ダンパーの変形性能としての終局回転角を増大させるようにしているため、コンクリート系材料を用いたダンパーでありながら、単純な機構で大きな変形性能とエネルギー吸収性能を得ることができる。
(2)コンクリート系の柱部材を用い、円弧拘束管による境界条件で対処するものであり、比較的簡単で低コストの棒状ダンパーで十分なエネルギー吸収が可能となる。
(3)コンクリート系の棒状ダンパーであるため、耐久性・耐候性を併せ持ち、沿岸部などの劣悪な環境下における橋梁などにも適用できる。十分なかぶりを確保することができ、劣悪な環境下でも特別な防錆処理や定期的なメンテナンスが不要となる。
(4)円弧拘束管の下部形状により橋桁等の温度伸縮などにも容易に対応することができる。
(5)円弧拘束管の円弧出だしの遊角、円弧拘束管下の根入れからの抜け出しによる回転、高性能繊維補強コンクリートの使用などにより、ダンパーの吸収エネルギーをさらに増大させることができる。
(6)コンクリート系棒状ダンパーの変形性能を高めることにより、大きなエネルギー吸収性能を確保しつつ、定着部への反力を低減することができ、定着部で負担すべき荷重が小さくなるので、その小規模化を図ることができる。
(7)コンクリート系棒状部材であるため、鋼材の配置,プレストレスの有無,高性能材料の適用によりダンパーとしての特性(耐力,変形性能,エネルギー吸収性能,残留変位,耐久性)を制御できる。そのため、本発明によれば様々な特性を有するダンパーを実現することができ、対象とする橋梁にとって最適な特性を有するダンパーを適用することができる。
(8)以上のことから、地震による揺れだけでなく、温度変化による桁の変形などの日常の変状から、橋梁等の損傷を防ぐことができ、災害直後の機能性を確保し、被害を軽減するために有意である。また、メンテナンスが不要となることで、ライフサイクルコストの低減が可能となる。
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の棒状ダンパー構造の一例を示す斜視図である。図2、図3は、図1の棒状ダンパー構造で用いる円弧拘束管の円弧曲面の形状を変えた例を示す鉛直断面図である。図4は、図1の棒状ダンパー構造の詳細を示す斜視図である。図5は、図4の棒状ダンパーの下部に高性能材料を適用した例を示す斜視図と横断面図である。
図1に示すように、RC部材からなる棒状ダンパー1と、この棒状ダンパー1の端部が挿入される円弧拘束孔2を有し、構造物に定着される筒状の拘束部材の円弧拘束管3とから構成する。円弧拘束管3は、下部構造の上部と上部構造の下部にそれぞれ埋設される。円弧拘束孔2は、棒状ダンパー1の例えば終局曲率に合わせた円弧で上方または下方に向かって広がる朝顔状とする。地震時における上部構造からの慣性力等の水平力が棒状ダンパー1の上部に作用すると、棒状ダンパー1の曲率が円弧拘束孔2の形状に従い、曲率分布の制御・曲げ変形の分散により、棒状ダンパー1の終局回転角即ち変形性能が大幅に向上する。
また、図2に示すように、円弧拘束孔2の基部における円弧の出だしには、棒状ダンパー1の基部の伸び出しによる回転変形分を付加する遊角θを形成することができる。さらに、図3に示すように、円弧拘束孔2の基部に初期剛性を微小にする遊角θ´を形成することができる。また、棒状ダンパー1の基部を円弧拘束管3の下へ例えば1D程度、根入れし、棒状ダンパー1の根入れ部の抜け出しによる回転を終局回転角に加えることもできる。
図4に示すように、棒状ダンパー1は、鉛直方向に一様断面の円形断面あるいは円環断面のRC部材であり、コンクリート系材料内部に鉄筋等の鋼材4が配置されている。一方、円弧拘束管3も、コンクリート系材料で形成される。円弧拘束孔2は、単純円弧を回転させて得られる曲面の円弧拘束孔とする。また、基部から開口部にかけて曲率半径が小さくなる(曲がりがきつくなる)形状とすれば、棒状ダンパー1の変形性能を最大限に高めることができる。この円弧拘束管3は、外側型枠として設置された鋼管の内側に朝顔状の鋼製型枠を設置した状態でコンクリート系材料(無収縮モルタルまたは普通コンクリート)を打設することにより製作することができる。
鉄筋等の鋼材4は、塑性化することにより、繰り返し時における履歴吸収エネルギー量を増やす。水平耐力が高くなり過ぎない程度の量を配置する。棒状ダンパー1は、低い水平耐力と高い変形性能によりエネルギー吸収を実現する。円弧拘束管3は、棒状ダンパー1の端部の曲げ変形形状を円弧拘束孔2が制御し、曲率を分散し、棒状ダンパー1の変形性能を向上させる。
RC部材の棒状ダンパー1は、コンクリート系材料として普通コンクリートのほかに、高強度・曲げじん性を有するUFC、あるいは優れた変形性能を有するECCなどを適用することができる。
UFCを用いる場合には、棒状ダンパー1において曲げ変形が卓越する領域(例えば、円弧拘束管で被覆される部分)のかぶり部分をUFC製のプレキャスト型枠により構築する方法が考えられる。図5(a)に示すように、棒状ダンパー1の曲げ変形が集中する領域、即ち円弧拘束管で覆われる部分にUFCプレキャスト型枠10を設置する。このUFCプレキャスト型枠10には、ひび割れ誘発目地11を上下方向に間隔をおいて複数形成しておく。かぶり部分をUFCで構築することにより、コンクリートの圧壊、鉄筋の座屈を抑制し、棒状ダンパー1自体の変形性能を向上させる。また、ひび割れ誘発目地11により曲げひび割れを誘導発生させる。その他の部分は、普通コンクリート12等とする。特に大きな強度は必要とされないため、せん断力の伝達のみとする。
また、断面全体、もしくは、最外縁から鉄筋の周囲までをECCで構築すれば、棒状ダンパー自体の曲げ変形部のひび割れが分散する他、圧縮に対する終局ひずみも普通コンクリートよりも大きいため、変形性能を高めることができる。図5(b)に示すように、円弧拘束管で覆われる部分において最外縁から鉄筋等の鋼材4の周囲までECC13で覆うことにより、終局ひずみの延伸、ひび割れ分散性の向上、曲率の分散化により、棒状ダンパー1自体の変形性能が向上する。この場合、鉄筋等の鋼材4はECCで被覆されるため、断面中心部における普通コンクリート12はなくてもよく、中空部材とすることができる。
図6に示すように、円弧拘束管3の円弧拘束孔2は、以下の要因により決定する。
(1) 内面の曲率は、棒状ダンパー1のRC部材の終局曲率
(2) 円弧出だし部の遊角θは、棒状ダンパー1のRC部材で考慮する伸び出しによる回転角
(3) 基部の遊角θ´は、橋桁の温度伸縮により発生する変形・回転角
以上の条件により決定される円弧拘束管3を有するRC部材による棒状ダンパー1は、後述する例のように「伸び出しによる変形+円弧拘束管による変形+RC部材自体の変形」で変形性能が決定し、通常のRC部材単体の場合に比べ、大きな変形に追従しエネルギーを吸収することが可能となる。また、温度伸縮に伴う橋桁の微小な変形に対してもダンパーが緩衝装置として機能し、下部構造・上部構造における温度伸縮に伴う応力の負担を軽減することができる。
橋梁へ本発明のコンクリート系棒状ダンパー構造を適用する場合、下部構造の天端と上部構造間に設置することが考えられる。例えば、図7では、下部構造(橋脚)20の天端と上部構造(主桁)21の下部に、円弧拘束管3を有する定着土台22を設けた例を示している。一般に、橋梁では、地震時に下部構造と上部構造間の相対変形が大きくなる。この時に、下部−上部構造間に設置されたダンパー装置が大変形することにより、効率よく、橋梁の震動エネルギーを吸収することが可能となる。
橋梁に適用する場合の棒状ダンパーの端部については、(1)両端固定で両端に円弧拘束管を設置する形態と、(2)片側に円弧拘束管を設置して固定端とし他端をピンとする形態がある(図8参照)。ただし、図8(a)において断面諸元が同一であれば、長さ2Lの両端固定梁と長さLの片持ち梁の強度(図8(a)の水平力)は同じであるが、その時の変位は、ほぼAがBの倍程度となる。同じ強度の棒部材における吸収エネルギー量は、変形が大きい方が大きくなるため、橋梁のダンパーとしては長さ2Lの両端固定梁の方(図8A)が合理的となる。一方、図8(b)に示すように同一の断面の片持ち梁で同じエネルギー吸収性能、すなわち、同じ変位で同じ水平力を得るには、2本の長さ2Lの片持ち梁が必要となる。片持ち梁の自由端の機構はピン構造となるため簡易であるが、円弧拘束管による変形性能の改善が無いため、棒部材全体の変形性能としては、長さ2Lの両端固定梁の方が優れている。
ただし、両端固定とすると、水平変位によりダンパーの長さが伸びるため、別途、この伸縮を逃す機構が必要となる場合がある。そのような場合でも、(1)ダンパーの高さ中央に伸縮を吸収する機構を設ける方法や(2)円弧拘束管の外周とそれを埋め込むコンクリートとの縁を切り、円弧拘束管が多少の抜け出しにより棒部材の伸びを吸収する方法等を適用すればよい。例えば、図9(a)に示すようにダンパーの高さ中央で棒部材の不連続部30を設け、その周囲を棒部材と縁の切れた円筒状の部材31で覆う方法がある。この場合、棒部材の伸びは切れ目間が離れることにより吸収される一方、せん断力は円筒状の部材により伝達するため棒部材は曲げ変形することができる。すなわち、ダンパーの軸方向の伸縮を吸収しつつ、エネルギー吸収性能を確保できる機構が実現できる。なお、円筒状の部材は、ダンパー部材と同等の耐久性、耐候性を有するものが望ましく、例えば、高性能材料を含むコンクリート系材料によるRC部材が良いが、その限りではない。円筒状の部材31は、フープ状の鉄筋と主筋からなる鉄筋籠を製作し、その周囲に筒状の型枠を設置して、無収縮モルタル等を打設してプレキャスト部材として製作しても良い。この場合、分割された棒状ダンパーの下方に筒状部材31が下がらないための突起状のストッパー32を設置し、上方ダンパーに筒状部材を通して、設置後、筒状部材を下方のストッパーの位置までずらすことにより設置することができる(図9(b))。また、筒状部材31をプレキャスト部材ではなく、ダンパーの設置箇所において製作することもできる(図9(c))。棒部材との縁切りのため内側の型枠(ビニールシートでもよい)を配置し、外側の型枠との間に無収縮モルタル等を打設して製作する。いずれの方法でも、円筒状の部材を棒状ダンパーの設置後に設置することが可能となるため、棒状ダンパーを分割して設置することができ施工性において有利となる。一方、円弧拘束管の外周とそれを埋め込むコンクリートとの縁を切ることによっても、ダンパーの軸方向の伸縮を円弧拘束管の抜け出しにより吸収することができる。
以下、本発明の効果を具体的事例について説明する。RC棒状ダンパーの諸元は、直径φ250mm、コンクリート強度50N/mm、配置鉄筋D13-16本(p=4.1%)、柱突出部分の全長1.0mとした。円弧拘束管は、この断面の最大曲率に対応する曲率半径とし、その長さを0.7mとした。
先ず、上記断面について、曲げモーメントと曲率の関係を算出すると、図10に示すようになる。この場合の終局曲率は、0.050m−1である。次に、従来構造の柱突出部分1mの変形を既往の設計手法により求めると、図11に示すようになる。ここで、各点の変位は、橋脚天端と主桁下面に埋め込まれた鉄筋の伸び出しによる柱基部の回転による変位、塑性ヒンジ部の回転による変位、塑性ヒンジ部以外の曲げ変形による変位の3つに分類して算出される。その概念を、独立柱の場合について示すと、図12に示すようになる。主桁下面と橋脚天端の間に設置するダンパーにおいては、柱の上下が柱の中央に対し逆対称となるだけで、原理は全く同じである。本発明においては、これに円弧拘束管による曲げ変形が加わる。
このうち、基部伸び出しによる回転は、RCダンパーの断面の諸元によって決まり、この場合、0.017radである。円弧拘束管を用いない場合、柱部分の両端に伸び出しが生じるので、相対変位は、0.017rad×1.0m=17mmである。円弧拘束管の基部に伸び出しによる回転を生じさせる場合、伸び出しによる変位は、相対距離が円弧拘束管を含めた距離(0.7m+柱部長さ1.0m+0.7m=2.4m)になり、相対変位は0.017rad×2.4m=41mmとなる。
円弧拘束管を用いた構造においては、上記の伸び出しの変位が従来構造よりも大きくなることと、円弧拘束管による変位増分があることが特徴である。突出している柱部分については、塑性ヒンジが形成され、それによる変位と塑性ヒンジ部以外の弾性変位は、二つの構造で同じである。また、最大反力も、突出している長さ1.0mが同じであれば、従来構造と同じである。円弧拘束管による変位は、RCダンパーの終局曲率に相当する円弧の曲率半径としたので、断面の終局曲率0.050m−1と円弧拘束管の長さ0.7mから求まる拘束管出口での回転角に、柱の突出長1.0mを乗じて相対変位が算出でき、この実施例では、0.05/m×0.7m×1.0m=0.035rad×1.0m=35mmである。
これらをまとめると、図13に示すようになる。なお、相対変位は、いずれの構造においても、ダンパー断面の最大耐力点までの変位とした。この図13から明らかなように、本発明の円弧拘束管を用いると、RCダンパーにおいて、最大反力は同じで、約2倍の相対変位を実現できることがわかる。
上記の例では、95mm程度の相対変位までしか対応できないが、円弧拘束管の長さを長くすると、容易に相対変位を増大できることがわかる。免震橋の支承相対変位は150mm程度であるから、例えば、円弧拘束管の長さを1mとすれば、伸び出しによる相対変位が0.017rad×3.0m=51mmとなり、全相対変位は51+50+43=144mmとなり、容易に対応可能であることがわかる。
以上は主桁の下面にダンパーを配置する場合(図7)であるが、これに限らず、例えばT桁橋の場合には、主桁と主桁の間に配置することもできる。
なお、以上は橋梁のダンパーに適用した場合について例示したが、これに限らず、杭頭免震構造などにも適用することができる。また、本発明は図示例に限定されないことはいうまでもない。
本発明の棒状ダンパー構造の一例を示す斜視図である。 図1の棒状ダンパー構造で用いる円弧拘束管の円弧曲面の円弧形状を変えた例を示す鉛直断面図である。 図1の棒状ダンパー構造で用いる円弧拘束管の円弧曲面の下部形状を変えた例を示す鉛直断面図である。 図1の棒状ダンパー構造の詳細を示す斜視図である。 図4の棒状ダンパーの下部に高性能材料を適用した例を示す斜視図と横断面図である。 本発明の円弧拘束管の一例を示す斜視図である。 本発明を橋梁に適用した場合の一例を示す正面図と、その部分断面図である。 同一断面の両端固定梁と片持ち梁の関係を示す図である。 棒状ダンパーの伸縮吸収機構の一例を示す図である。 RCダンパーの曲げモーメントと曲率の関係を示す図である。 ダンパーの柱突出部分の変形を示す図である。 ダンパーの独立柱の変形を示す図である。 従来と本発明で変形を比較した図である。 ダンパーによるエネルギー吸収性能を示す図である。
符号の説明
1……棒状ダンパー
2……円弧拘束孔
3……円弧拘束管(拘束部材)
4……鉄筋等の鋼材
10…UFCプレキャスト型枠
11…ひび割れ誘発目地
12…普通コンクリート
13…ECC
20…下部構造(橋脚)
21…上部構造(主桁)
22…定着土台
30…不連続部
31…円筒状の部材(筒状部材)
32…ストッパー

Claims (5)

  1. 棒状のダンパーの両端をそれぞれ構造物に定着し、構造物の相対変位による棒状のダンパーの曲げ変形でエネルギーを吸収する棒状ダンパー構造であり、
    RC部材またはPC部材からなる棒状ダンパーと、構造物に定着される筒状の部材であって前記棒状ダンパーの端部が挿入される拘束孔を有する拘束部材とから構成され、前記拘束孔の内面には、基部から先端部に向かって棒状ダンパーの外面から離れていく円弧による曲面が形成されており、拘束孔の基部における円弧の出だしには、棒状ダンパーの基部の伸び出しによる回転角に相当する遊角が形成されていることを特徴とするコンクリート系棒状ダンパー構造。
  2. 請求項1に記載の棒状ダンパー構造において、拘束孔の内面は、棒状ダンパーの終局曲率または降伏曲率に対応した形状であることを特徴とするコンクリート系棒状ダンパー構造。
  3. 請求項1または請求項2に記載の棒状ダンパー構造において、棒状ダンパーの基部は拘束部材を貫通し、構造物内に根入れされていることを特徴とするコンクリート系棒状ダンパー構造。
  4. 請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の棒状ダンパー構造において、拘束孔の基部には、構造物内部に向かって棒状ダンパーから離れる遊角が設けられていることを特徴とするコンクリート系棒状ダンパー構造。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の棒状ダンパー構造において、棒状ダンパーの外周部に高性能繊維補強コンクリートが用いられていることを特徴とするコンクリート系棒状ダンパー構造。
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