JP5279356B2 - コンクリート系部材の塑性ヒンジ構造およびコンクリート系部材 - Google Patents
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Description
(1)主桁および橋脚に損傷を与えずに既存の支承を撤去するのは、施工上の制約が多い。
(2)主桁のジャッキアップにおいて、高度な施工技術や高価な載荷装置が必要になる。
(3)重量の大きな新旧支承を狭い空間において効率良く撤去・設置しなければならない。
(4)旧規準の場合を超える地震時水平力を合理的に負担させる必要があるが、アンカーボルトの取替えは一般に不可能である。
などの問題点がある。そこで、ダンパーを追加して設置する方法が望ましい。
RC部材やPC部材の塑性ヒンジ部に、ある程度の強度と剛性を有する剛部材と、剛性が小さく変形性能に富む緩衝材としての柔部材とを交互に何層か配置する。柔部材の箇所は、何も材料を配置せずに隙間としてもよい。
塑性ヒンジ部及び塑性ヒンジ部の近傍において軸方向鋼材(異形鉄筋、丸鋼、平鋼など)のアンボンド領域を作る。アンボンド領域は、軸方向鋼材の挿通孔やシース管などで形成することができる。アンボンド領域の上部と下部でコンクリート躯体に軸方向鋼材の端部を定着させる。
軸方向鋼材のアンボンド領域における軸方向鋼材の外面と、軸方向鋼材周囲の剛部材の挿通孔やシース管などの剛な部材との隙間を小さくする。この構造により、軸方向鋼材の座屈防止が可能となり、軸方向鋼材の安定した塑性変形を可能とする。このとき、柔部材では、軸方向鋼材の座屈変形を防止することが困難であることから、剛部材と柔部材を交互に配置し、柔部材を薄くすることによって、軸方向鋼材の座屈を剛部材で防止することを可能とする。
剛部材間を連結する鉛直に貫通する棒材や凹凸の嵌合によるせん断キーなどのせん断変形防止部材を有することにより、柔部材でのせん断変形を抑制し、安定した曲げ変形を実現することを可能とする。
図5に示すように、通常のRC部材の場合は、曲げに対する中立軸が圧縮側に大きく偏って位置するのに対し、本塑性ヒンジ構造では、剛部材と柔部材の積層構造により、柔部材があることによって、曲げに対する中立軸が水平方向の部材高さ(h)のほぼ中央(h/2)位置になり、圧縮領域の軸方向鋼材が圧縮降伏することにより、同じ部材変形角において、最大の引張塑性ひずみが、通常のRC部材や従来の座屈防止構造付きRC部材よりも小さくなることを特徴としている(図6参照)。図6は、従来のRC構造、従来の座屈防止構造付きRC構造、本発明の塑性ヒンジ構造が繰り返し変形を受けた際に、軸方向鋼材に生じる応力ひずみ履歴を比較したものである。従来の座屈防止構造付きRC構造の軸方向鋼材の履歴は、引張ひずみ領域において履歴を描くのに対し、本塑性ヒンジ構造の軸方向鋼材の履歴は、圧縮領域と引張領域の両領域において履歴を描くようになる。この効果により軸方向鋼材の引張破断を遅らせることが可能となり、また、最大塑性引張ひずみが小さいということは、塑性化したときの断面積の減少(断面が細る)が少ないから、圧縮に転じたときの座屈に対する抵抗性が従来よりも大きくなる。
軸方向鋼材にアンボンド構造を持たせることにより、塑性領域を制御可能とし、軸方向鋼材の局所的な塑性化を防止することで安定した塑性変形を可能とする。また、図4に示すように、アンボンド長を調整することにより同じ部材変形角での塑性ひずみ量を調整することが可能となる。つまり、構造部材の要求性能に合わせて、柔部材と剛部材の寸法や重ね枚数、軸方向鋼材の材質・量を調整することが容易に可能となる。
通常、部材が大きな繰り返し荷重を受けると、軸方向鋼材は圧縮塑性変形および引張塑性変形を繰り返すことにより、軸方向鋼材が圧縮塑性変形する際に軸方向鋼材の座屈が起り得る。軸方向鋼材と軸方向鋼材周囲の部材との隙間を小さく、かつ、柔部材の厚さを座屈に対して弱点にならない程度まで十分小さくすることにより、軸方向鋼材の座屈を制御することが可能となる。
RC部材やPC部材の塑性ヒンジ部を安定して曲げ変形させるために、塑性ヒンジ部に十分なせん断耐力およびせん断剛性を有する必要がある。そこで、剛性のあるせん断キーを配置することにより、柔部材のせん断変形を抑制し、曲げ変形が卓越することを可能とする。
(2)また、部材断面中心付近のせん断変形防止部材は曲げによる開閉が柔部材(隙間)を有さない構造よりも小さくなり、構造を単純化することが可能となる。
(3)柔部材により軸方向鋼材の圧縮塑性変形が生じやすくなるが、座屈防止が可能であることから、軸方向鋼材の安定した圧縮・引張の塑性変形が可能となる。
(4)また、部材の曲げ変形を柔部材が吸収することにより、コンクリート部の損傷を低減することが可能となる。
(5)以上により、高い変形性能と、安定した高い地震エネルギー吸収能力を発揮することが可能な塑性ヒンジ構造およびコンクリート系部材を低コストで実現することができる。
剛部材3の材料としては、ある程度の強度と剛性を有する必要があり、例えば、鋼材、コンクリート、超高強度繊維補強コンクリートなどがある。また、柔部材4としては、剛性が小さく、かつ、高い変形性能を有した材料である必要があり、例えば、弾性ゴム、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などがある。また、何も配置せずに剛部材3と剛部材3との間に隙間を持たせることで変形を吸収するという方法もある。
軸方向鋼材5を塑性ヒンジ部2および塑性ヒンジ部2の近傍において、安定して塑性化させるために、塑性ヒンジ部2の外側において十分な定着力により固定する必要がある。例えば、軸方向鋼材5にねじ鉄筋を用いて、ナットやアンカープレート等の定着体8を配置することにより、十分な定着力を持たせることが可能となる。また、定着部の周辺材料に超高強度繊維補強コンクリートなどの鋼材との付着強度が高い材料を用いることにより十分な定着力を持たせることが可能となる。
剛部材3に軸方向鋼材5の外径よりもわずかに大きい内径の挿通孔6を穿設し、あるいは、この挿通孔6に軸方向鋼材5の外径よりもわずかに大きい内径である程度の強度と剛性を有するパイプなどを挿入し、剛な材料で軸方向鋼材5を取り囲む。パイプなどの剛な材料としては、鋼材、コンクリート、超高強度繊維補強コンクリートなどがある。なお、柔部材4にも軸方向鋼材5の挿通孔を形成するが、柔部材4では軸方向鋼材5の座屈変形を防止することが困難であることから、挿通孔6のみで座屈を防止する場合には柔部材4を薄くし、剛部材3で座屈を防止する。
塑性ヒンジ部2の部材断面中心位置付近に十分なせん断耐力およびせん断剛性を有する材料のせん断変形防止部材7を配置することで、塑性ヒンジ部2の曲げ剛性および曲げ耐力への影響は小さいが、剛部材3と柔部材4の積層構造Aに十分なせん断耐力とせん断剛性を持たせることが可能となる。
耐候性、耐塩害性などの耐久性が要求される場合、例えば柔部材を隙間としてしまう場合や柔部材と剛部材間に密閉性がない場合など、軸方向鋼材の耐久性に問題が生じる。この問題に対する解決方法としては以下の方法が考えられる。
シリコーン樹脂やウレタン樹脂などを柔部材として注入することにより外部からの水や塩分を遮断する方法。
自己融着テープなどを柔部材と剛部材の積層箇所に巻き付けることにより、外部からの水や塩分の侵入を遮断する方法。
エポキシ樹脂などを軸方向鋼材に塗布することによって軸方向鋼材の腐食に対する抵抗力を高める方法。
ステンレス鉄筋などの耐久性があり機械的性能も高い材料を軸方向鋼材として使用することにより耐久性を向上させる方法。
ゴム管やPE管など耐久性が高く、外部からの密閉性の高いものを埋設型枠として使用し、内部に本塑性ヒンジ構造を製作することによって、外部からの水や塩分の侵入を遮断する方法。
図11に示すように、部材表面をコンクリートやモルタル20で覆い、常時やレベル1地震では、剥落せずに部材として抵抗し、レベル2地震程度の大きな変形性能を必要とするときのみ、容易に剥落する構造とする方法。表面を覆うことにより、外部からの水や塩分の侵入を遮断することが可能となる方法。
2……塑性ヒンジ部
3……剛部材
4……柔部材
5……軸方向鋼材
6……挿通孔
7……せん断変形防止部材
8……定着体
10…凹部
11…連結棒
12…定着体
13…テーパー
20…コンクリートやモルタル
A……積層構造
B……アンボンド区間
Claims (5)
- RC部材またはPC部材のコンクリート系部材に設けられる塑性ヒンジ部の曲げ変形によりエネルギーを吸収するコンクリート系部材の塑性ヒンジ構造であり、板状の剛部材と板状の柔部材とをコンクリート系部材の軸方向に交互に積層することにより塑性ヒンジ部が形成され、コンクリート系部材の内部に埋設される軸方向鋼材を剛部材と柔部材の積層構造に挿通させることにより塑性ヒンジ部とその近傍にアンボンド区間が形成され、剛部材には軸方向鋼材の座屈変形を拘束して座屈を防止する軸方向鋼材の挿通孔が設けられ、剛部材と柔部材の積層構造のせん断変形を抑制するせん断変形防止部材が積層構造内に設けられており、前記せん断変形防止部材は、剛部材の表面と裏面にそれぞれ設けられ、互いに嵌合する凹部と凸部であることを特徴とするコンクリート系部材の塑性ヒンジ構造。
- 請求項1に記載の柔部材に代えて隙間が設けられていることを特徴とするコンクリート系部材の塑性ヒンジ構造。
- 請求項1に記載の塑性ヒンジ構造において、柔部材は、ゴムまたは軟質プラスチックで形成されていることを特徴とするコンクリート系部材の塑性ヒンジ構造。
- 請求項1から請求項3のいずれかに記載の塑性ヒンジ構造において、剛部材は、鋼材、コンクリートまたは超高強度繊維補強コンクリートで形成されていることを特徴とするコンクリート系部材の塑性ヒンジ構造。
- 請求項1から請求項4までのいずれか一つに記載の塑性ヒンジ構造がコンクリート系部材の一端部または両端部に設けられていることを特徴とするコンクリート系部材。
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