JP4731733B2 - システイン共存試料中のホモシステインの測定法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホモシステイン及びシステインを含有する試料における、酵素を用いたホモシステインの定量法、及びそれに用いる試薬並びに測定キットに関する。
【0002】
【従来の技術】
生体中の蛋白質を構成する硫黄原子含有アミノ酸としては、メチオニン、システイン、シスチン等が知られており、生体内ではそれぞれが一連の代謝サイクルの中で恒常性を維持している。通常、ホモシステインは、速やかに代謝されるため、正常時にはほとんど生体中には存在しない。
【0003】
しかしながら、その代謝に関与する酵素や補助因子の異常に起因するホモシステインの蓄積が起きることがある(New England Journal of Medicine, 318, 1720−1728(1988)、特開平7−49348号公報)。
【0004】
近年、ホモシステインは、喫煙、血圧、血糖、コレステロール、中性脂肪などの従来からの動脈硬化のリスク因子とは独立した、新たな動脈硬化(特に、心臓や脳血管)の指標として注目されており、ホモシステインの血中濃度と疾患との関係を示した臨床データが数多く報告されている(例えば、New England Journal of Medicine, 324, 1149−1155(1991))。
【0005】
従来、試料中のホモシステインの測定法としては、ガスクロマトグラフィー−質量分析法(特開昭63−221249号公報、特開平7−49348号公報)や高速液体クロマトグラフィー法(HPLC)(Clinical Chemistry, 39, 1590−1597(1993))などでホモシステインを分離分析する方法、ホモシステインのSH基を介して蛍光物質(Clinical Chemistry, 35, 1921−1927(1989)、Clinical Chemistry, 39, 263−271(1993))や放射性物質(Clincal Chemistry, 31, 624−628(1985))で標識後、これらの誘導体を高速液体クロマトグラフィーで分離分析する方法などが主なものであった。しかし、これらの方法は、検体の前処理が煩雑なうえ、専用の分析装置を必要とし、検体の処理能力も低く、臨床的な測定法としてはとても受け入れられるものではなかった。
【0006】
ホモシステインを化学的な方法で修飾し、このホモシステイン誘導体に特異的な抗体を用いて免疫的に測定する方法(特表平9−512634(WO95/30151)号公報)、ホモシステインとアデノシンをS−アデノシルホモシステインヒドロラーゼ(EC3.3.1.1)で処理後、この反応で変化するアデノシンの量を酵素反応系を組み合わせて検出し、あるいはこの反応による生成物を抗アデノシン抗体を用いて免疫的に検出する、間接的にホモシステインの濃度を測定する方法(特表平8−506478(WO93/15220)号公報)が知られている。しかしこれらの測定法も操作が煩雑であり、特殊な免疫測定装置を必要とするなど、いくつかの問題点があった。
【0007】
ホモシステインに作用して硫化水素を遊離させる酵素を用い、発生した硫化水素を検出するホモシステインの測定法もいくつか報告されている。このような酵素には、ホモシステイン分解酵素及びホモシステイン置換酵素が知られているが、いずれも、後述するような問題点を持っている。
【0008】
ホモシステイン分解酵素は、ホモシステインから硫化水素とアンモニアを遊離させるもので、ホモシステインデスルフヒドリラーゼ(EC4.4.1.2)、ホモシステイナーゼなどが知られている。これらの酵素を用いてホモシステインを分解し、この反応で生じた生成物の硫化水素、アンモニア、または、2−オキソ酪酸のいずれかを比色的に検出し、ホモシステインを測定する方法が知られている(WO98/07872号公報)。しかし、この酵素は、ホモシステイン以外にシステインやメチオニンとも反応し、酵素の特異性に問題があるため前処理でシステインやメチオニンを除去しなければならず、実際の臨床現場での使用には不完全なものであった(特表2000−513589号公報)。
【0009】
ホモシステイン置換酵素は、チオール化合物などの求核試薬の存在下に、ホモシステインのメルカプト基を置換するもので、O−アセチルホモセリン−リアーゼ(O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼあるいはメチオニン合成酵素、EC4.2.99.10)、γ−シアノ−α−アミノ酪酸合成酵素(GCS)などが知られている。なお、1つの酵素がO−アセチルホモセリン−リアーゼ(EC4.2.99.10)とγ−シアノ−α−アミノ酪酸合成酵素(GCS)の両方の分類に属する場合もある。これらの酵素により脱離してきた硫化水素を検出する測定法も提案されている(特開2000−166597号公報、特開2000−228998号公報)。しかしながらO−アセチルホモセリンリアーゼは、ホモシステインのみならずシステインとも反応性を有することから、まずこの酵素を用いてホモシステインとシステインの総和を測定しておき、この値からシステインの測定値を差し引きホモシステイン値を算出する方法が提案されている(特開2000−270895号公報)が、2種の酵素による煩雑な工程が必要であり実際の臨床現場での使用には困難が予想される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
システインが共存する試料中の微量なホモシステインを定量する、酵素を用いた測定法は、操作性などの面から有用であるが、単一の酵素反応を用いた、ホモシステインに特異性の高い測定法は知られていなかった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記した問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、システインが共存する試料中におけるホモシステインを定量する際に、試料中に充分量のシステインが存在する状態で、システインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素を作用させると、試料中に存在するシステインの影響を回避でき、試料中のホモシステインを特異的に定量できることを見出し本発明に至った。
【0012】
即ち、本発明は、
(1)ホモシステインとシステインが共存する試料中のホモシステインの定量法であって、該試料にシステインを添加し、次いでシステインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素を作用させることを特徴とするホモシステインの定量法;
(2)システインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素が、サーマス属由来のホモシステイン置換酵素である上記(1)記載のホモシステインの定量法;
(3)システイン添加後の試料中のシステイン濃度が、1μMから10mMである上記(1)または(2)に記載のホモシステインの定量法;
(4)システインを含むことを特徴とする、システイン共存試料中のホモシステイン定量用試薬;
【0013】
(5)システインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素を含むことを特徴とする、システイン共存試料中のホモシステイン定量用試薬;
(6)システイン、システインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素、及び該変換酵素の作用により発生する硫化水素を検出するための検出試薬を含む、システイン共存試料中のホモシステインを測定するためのホモシステイン測定キット;
(7)検出試薬が、N,N−ジアルキル−p−フェニレンジアミンである上記(6)記載のホモシステイン測定キット;及び
(8)緩衝液を含む上記(6)または(7)に記載のホモシステイン測定キットに関する。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ホモシステインとシステインが共存する試料に、システインを添加し、次いでシステインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素を作用させることを特徴とする、システイン共存試料中のホモシステインの定量法である。
本発明に使用する試料としては、ホモシステインとシステインが共存する試料であれば特に限定されず、例えば血清、血漿、髄液、唾液、尿などの臨床検体;赤血球、便、組織、培養細胞などの抽出液;さらには、食品、医薬部外品、医薬品などの工業製品、これらの製品が固体の場合には、これらの製品の抽出液、また、発酵を利用して製品を製造する工業の場合には、工程検査に必要な発酵液などが挙げられる。
【0015】
本発明のホモシステインの定量に用いられるシステインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素としては、ホモシステインに作用して硫化水素を生成するシステインよりもホモシステインに対する作用が強い酵素であれば特に限定されず、前記の公知の酵素から選ばれる酵素でもよい。このようなホモシステイン変換酵素には、ホモシステイン分解酵素、ホモシステイン置換酵素及びL−メチオニンγ−リアーゼ(EC4.4.1.11)の様にその両方の性質を持つものが挙げられる。
【0016】
好ましくは、チオール化合物存在下、チオール化合物との置換反応を触媒し、かつシステインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン置換酵素、例えば、O−アセチルホモセリン−リアーゼ(O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼあるいはメチオニン合成酵素、EC4.2.99.10)、γ−シアノ−α−アミノ酪酸合成酵素(GCS)やL−メチオニンγ−リアーゼなどから選ばれるシステインよりもホモシステインに対する作用が強い酵素が挙げられる。特にホモシステインに特異性の高いサーマス属由来のホモシステイン変換酵素、なかでも後述する耐熱性菌サーマス・サーモフィラス由来のO−アセチルホモセリン−リアーゼが好ましい。
【0017】
本発明におけるシステインよりもホモシステインに対する作用が強い酵素とは、下記のミカエリス−メンテンの式
【0018】
【式1】
Figure 0004731733
v:反応速度、S:基質濃度、Vmax:基質飽和における最大反応速度、Km:ミカエリス定数(基質親和性の逆数)
【0019】
に従う場合において、システインに対するVmaxが低く、低濃度のシステインで容易に基質飽和するが、ホモシステインに対するVmaxは高いためホモシステインでは基質飽和されず、更に、システインに対するKmよりホモシステインに対するKmの方が小さい(親和性が高い)ため実質的にシステインの影響なくホモシステインとの反応が進む酵素のことである。
【0020】
本発明で用いる、システインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素は、以下に述べる種々の方法によって得ることができる。
ホモシステイン分解酵素であってホモシステイン置換酵素でもあるL−メチオニンγ−リアーゼは、この酵素を産生する微生物、例えばシュードモナス属の細菌等から公知の方法により得ることもでき、また和光純薬株式会社等から市販されており、これらL−メチオニンγ−リアーゼから上記条件に合う酵素を選別して用いればよい。
【0021】
ホモシステイン置換酵素であるO−アセチルホモセリン−リアーゼやγ−シアノ−α−アミノ酪酸合成酵素(GCS)は、公知の酵素を用いることもでき(特開2000−228998号公報)、また、該酵素を産生する様々な微生物等から公知の方法(例えば、Ozaki等,J.Biochem.,91,1163−1171(1982)、Yamagata,J.Biochem.,96,1511−1523(1984)、Brzywczy等,Acta Biochimica Polonica,40(3),421−428(1993)等)により得ることもできる。また、γ−シアノ−α−アミノ酪酸合成酵素(GCS)としては、市販の酵素、例えば池田食研株式会社製のバチルス属由来のものも使用可能であり、これらの酵素から上記条件に合う酵素を選別して用いればよい。池田食研株式会社製の上記GCSは特開2000−228998号公報に記載されている。
【0022】
また、これら上記の酵素をコードする遺伝子を酵素を産生する微生物から取り出し、この遺伝子またはこの遺伝子情報を参考にして修飾した遺伝子、酵素のアミノ酸配列情報を参考にして作成した遺伝子などを、遺伝子工学的手法を用いて微生物等に発現させ、次いで上記条件に合う酵素を選別して得ることもできる。
【0023】
例えば、この遺伝子工学的手法を用いて発現し選別された酵素としては、耐熱性菌であるサーマス・サーモフィラス菌株由来のO−アセチルホモセリン−リアーゼがあり、池田食研株式会社から市販されている。
【0024】
該酵素について、その遺伝子組換え法の手法は、例えば下記の通りである。
O−アセチルホモセリン−リアーゼのアミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子の塩基配列を解析した報告は多数存在する。例えば、公開データベースの集合体であるGenomeNet WWW server(http://www.genome.ad.jp/)にある「LIGAND」で、EC番号「4.2.99.10」をキーワードとして検索すると、「ec:4.2.99.10 O-Acetylhomoserine (thiol)-lyase; Methionine synthase」というエントリーが見出され、Pseudomonas aeruginosa、Candida jejuni、Bacillus halodurans、Deinococcus radiodurans、Thermotoga maritime Halobacterium、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombeなどの微生物等が有するO−アセチルホモセリン−リアーゼのアミノ酸配列及びその遺伝子の塩基配列データを、閲覧する事が可能である。
【0025】
これらのデータから、幾つかのO−アセチルホモセリン−リアーゼで保存されている特有の塩基配列を知る事が出来る。この情報を元に、サザンハイブリダイゼーションに用いるプローブ或いはPolymerase Chain Reaction (PCR)に用いるプライマーをデザインし、サーマス・サーモフィラスの染色体DNAを対象にサザンハイブリダイゼーション或いはPCRを行う事により、サーマス・サーモフィラスのO−アセチルホモセリン−リアーゼ遺伝子を特定し、取得する事が可能である。
【0026】
O−アセチルホモセリン−リアーゼの構造遺伝子と、この遺伝子の発現を調節し得るプロモーター領域を含む適当な宿主細胞内で複製可能なプラスミドDNAとからなる組換え体DNAは、常法(例えばジェイ・サムブルック、イー・エフ・フリッチ、ティー・マニアティス、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス社刊(1989)[J.Sambrook, E.F.Fritsch, T.Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd ed, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)]等参照)により作製する事が出来る。
【0027】
大腸菌K12株等の適当な宿主細胞を、上記の組換え体DNAで形質転換し、O−アセチルホモセリン−リアーゼを産生する形質転換された宿主細胞を得る事が出来る。この形質転換体を適当な条件で培養し、産生するO−アセチルホモセリン−リアーゼを得る方法としては、一般の微生物等の培養方法及び蛋白質の精製方法が利用出来る。即ち、この形質転換体を培養し、培養液を遠心分離して得られる形質転換体を破砕し、遠心分離等によって破砕液から上清液を得る。この上清液中に含まれるO−アセチルホモセリン−リアーゼを、塩析、透析、イオン交換クロマトグラフィー、疎水吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動等の適当な精製操作を組み合わせる事によって精製して、本発明に使用し得るO−アセチルホモセリン−リアーゼを調製することができる。
【0028】
さらに、本発明に使用されるシステインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素には、酵素活性を保っていれば上記の酵素を修飾したものも含まれる。
【0029】
本発明の定量法において試料に添加するシステインとしては、ホモシステイン変換酵素によるホモシステイン測定の際においてシステインであればよく、システインのほかに、ホモシステイン測定の条件下またはホモシステイン測定に影響を与えない条件でシステインを遊離するシステイン誘導体が挙げられる。システイン誘導体としては例えばシスチン等でもよい。
本発明の定量法において試料に添加するシステインの量は、試料中に存在するシステインの影響を実質的に無視できる程度、即ち本発明で使用するシステインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素の基質飽和量となる量程度を加えればよい。このシステインの添加量は、ホモシステイン置換酵素の場合、ホモシステインに対する特異性が高く、システインよりホモシステインに強く作用する酵素ほど少なくてよいが、試料中のシステイン濃度が、通常1μM〜10mM程度、好ましくは10μM〜1mM程度となる量である。例えば、ホモシステイン置換酵素がサーマス・サーモフィラス菌株由来のO−アセチルホモセリン−リアーゼの場合では酵素反応の場において終濃度が20μM以上、より好ましくは100〜500μMとなるように添加すればよい。ホモシステイン分解酵素あるいはL−メチオニンγ−リアーゼを用いる場合も、システインの添加量は、ホモシステイン置換酵素の場合とほぼ同様である。
システインまたはシステイン誘導体を添加する方法は、その溶液や粉末を直接試料に添加しても、ホモシステイン測定試薬の成分とともに試料に添加してもよい。
【0030】
本発明の定量法において、前記酵素の添加量は、試料中のホモシステインを検出するのに充分な量であればよく、特に限定されない。ホモシステインが微量にしか含まれない試料の場合は、ホモシステインを完全に消費することができる最低必要量以上であることが好ましい。例えば、血漿中の総ホモシステインを測定する場合、例えば還元試薬で処理した血漿に、1〜1000単位の酵素を加え、pH4.5〜11.5の緩衝液中、5〜50℃で、1〜10分間反応させればよい。さらに好ましくは、1〜100単位の酵素を加え、pH5〜10の緩衝液中、25〜45℃で、2〜10分間反応させる。
【0031】
緩衝液は、上記したpH範囲で緩衝作用を有するものから選ばれ、トリス緩衝液、グッド緩衝液、リン酸、炭酸、硼酸、などの無機酸塩由来の緩衝液、酢酸、クエン酸などの有機酸塩由来の緩衝液などがある。好ましくは、ホモシステインとシステインの反応性の差を大きくし、ホモシステインに対する特異性を向上できるような緩衝液が選ばれる。例えば、トリス緩衝液、リン酸緩衝液等が挙げられる。
【0032】
本発明の定量法において、ホモシステインのγ位メルカプト基を求核試薬(アニオン)で置換する反応を触媒するホモシステイン置換酵素を用いる場合、求核試薬としては、該酵素の基質となるものであれば何であってもよく、特に限定されない。例えば、無機塩類のアニオン、有機化合物塩類のアニオン、チオール基を有する化合物および該化合物のチオレートアニオンや、水酸基を有する化合物および該化合物のアルコキシルイオンなどがあげられる。好ましくは、ホモシステインとシステインの反応性の差を大きくし、ホモシステインに対する特異性を向上できるような求核試薬、例えば2−メルカプトエタノール、チオグリセロール、ジチオスレイトール(DTT)、シアンイオン等が選ばれ、特に好ましくは2−メルカプトエタノール、チオグリセロール等が挙げられる。なお、対カチオンは特に限定されない。
【0033】
試料中のホモシステインは、SH基同士の酸化反応、または、SS結合との交換反応によって容易に縮合し、特に血漿や血清などの生体試料中ではSH基を有する低分子化合物や蛋白質とSS結合(ジスルフィド結合)して存在(コンジュゲート)する場合が多い。このため、これらの検体中に存在しているコンジュゲートも含めてホモシステインを総ホモシステインとして測定する必要がある場合には、コンジュゲートしているホモシステインを、化学反応や酵素反応によって強制的に遊離させ、この処理液中のホモシステインを測定する。本発明において定量されるホモシステインには、このようにして遊離されたホモシステインも含まれる。コンジュゲートしているホモシステインを遊離させる化学反応としては、チオール類、ホスフィン類や水素化硼素類などの還元剤を用いて行うことができる。例えば、Jocelynによって報告されているもの(Methods of Enzymology,143,243−256(1987))が利用できる。
【0034】
中でも、ジチオスレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、2−メルカプトエタノール、還元型グルタチオン、チオグリコール酸、メタンチオール、2−メルカプトエタン、システイン、チオグリセロール、システアミン、チオフェノール類などSH基を有する低分子化合物を試料に過剰に加えて、これらとのSS交換反応を利用し、穏やかにホモシステインを遊離させる方法が好ましい。例えば、血漿中の総ホモシステインを測定する場合、例えば、血漿に、1〜20mMのDTTを加えて還元すればよい。
【0035】
更にチオール類は、容易にコンジュゲート状態からホモシステイン及びシステインを特異的に遊離し、かつ、ホモシステイン置換酵素の求核試薬も兼ねることができるため、そのまま酵素反応も行うことができ好ましい。特に好ましくは、ホモシステインに対する特異性を高めるチオール類が選ばれ、例えば、チオグリセロール、2−メルカプトエタノールなどが挙げられる。
【0036】
本発明のホモシステインの測定において、前記酵素を作用させることにより発生する硫化水素の検出法としては、公知の方法を含め何であってもよく特に限定されない。例えば、特開2000−166597号公報、特開2000−228998号公報、特開2000−338096号公報、Clinical Chemistry, 46, 1686〜1688 (2000)等に記載の方法が挙げられる。
特に、臨床的に血清や血漿中のホモシステインを測定する場合、現在、広く普及している臨床検査用の汎用測定機に適用できる比色法による検出法が好ましい。
【0037】
硫化水素を直接定量する方法のみならず、硫化水素に起因する硫化物イオンを定量する方法、あるいは更に発色させて定量する方法であってもよい。例えば、(1)酸性条件下で酢酸鉛紙の黒変を検出する方法、(2)亜鉛を用いて、生成する硫化亜鉛の沈殿を検出する方法、(3)アルカリ条件下、ニトロプルシッドナトリウムとの反応により、硫黄イオンとして紫色に発色させる方法、(4)強酸性下で、N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミンと塩化第二鉄を用いてメチレンブルーを生成させ青色発色を検出する方法、(5)N,N−ジブチル−p−フェニレンジアミンとフェリシアン化カリを用いて蛍光色素を生成させ、その蛍光強度を検出する方法(Clinical Chemistry 46, 1686−1688(2000))、(6)2−(5−ブロモ−2−ピリジルアゾ)−5−[N−n−プロピル−N−(3−スルフォプロピル)アミノ]フェノール・ナトリウム塩(5−Br−PAPS)と塩化第一鉄を用いて色素を生成させ、その発色強度を検出する方法(特開2000−338096号公報)などが挙げられる。
【0038】
本発明には、システインを含む、システイン共存試料中のホモシステイン定量用試薬も含まれる。システインは、試料中のシステインの影響が回避されるのに充分な量であればよく、前記記載の濃度で含まれる。また、システインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素を含む、システイン共存試薬中のホモシステイン定量用試薬も本発明に含まれる。該酵素としては、前記のホモシステイン変換酵素が挙げられ、前記例示の酵素が好ましい。含まれる該酵素の量については、前記と同じ程度でよい。また、本発明の試薬に含まれるシステインは、ホモシステイン測定の際においてシステインであればよく、即ち前記のシステインを遊離するシステイン誘導体でもよい。
システイン、システインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素、及び該変換酵素の作用により発生する硫化水素を検出するための検出試薬を含む、システイン共存試料中のホモシステインを測定するためのホモシステイン測定キットも本発明に含まれる。ホモシステイン測定用キットは、具体的には、システインの影響を回避するためのシステイン、システイン誘導体またはその溶液、ホモシステインから硫化水素を遊離させるためのホモシステイン変換酵素、硫化水素を検出するための検出試薬から構成される。システインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素、硫化水素を検出するための検出試薬としては、前記した酵素及び試薬が挙げられ、好ましくは前記例示したものが挙げられる。特に検出試薬としてはN,N−ジアルキル−p−フェニレンジアミンが好ましい。
【0039】
更に、対象とする検体によってキットの試薬の構成は変化し得る。SH基を有する低分子化合物や蛋白質とコンジュゲートしているホモシステインをも含めて測定する必要がある場合には、一般的には、コンジュゲート状態からホモシステインを遊離させるための還元試薬、例えば、前記したチオール類、ホスフィン類や水素化硼素類などを構成中に含んでもよい。ホモシステイン変換酵素がホモシステイン置換酵素である場合は、ホモシステインのγ位メルカプト基を置換しうる求核試薬も構成中に含まれる。しかし、ホモシステインのγ位メルカプト基を置換しうる求核試薬が、上記還元試薬も兼ねる場合、敢えて求核試薬を添加しなくてもよい。
更に、緩衝液を構成中に含むキットも本発明に含まれる。緩衝液としては、前記した緩衝液が挙げられ、好ましくは前記例示したものが挙げられる。上記試薬を緩衝液で溶解してキット中に含んでも良く、また緩衝液を別途付けてもよい。
【0040】
これらの試薬を構成する上で、互いに干渉する成分が存在する場合には、さらに構成成分毎に分割し、細分化することもできる。逆に、これらの構成試薬を統合しても使用上問題がない場合には、これらを統合してもよい。例えば、システインを前記還元試薬として加えることで、システインの影響を回避するための別途添加を省略してもよい。
【0041】
血漿を検体として総ホモシステインを測定するキットの場合、例えば、2−メルカプトエタノールとシステインを含む還元試薬、前記のO−アセチルホモセリン−リアーゼを含む酵素試薬、硫化水素をメチレンブルーとして検出するための発色剤から構成されるキットが好ましく挙げられる。このキットの場合の1キット当たりに使用される各成分の量は、キットのテスト数と、1テスト当たりの反応液量によって変化するが、100テスト用(20mL用)のキットの場合、例えば、2−メルカプトエタノールが0.2〜1000μmol、システインが10〜1000nmol、O−アセチルホモセリンスルフヒドリラーゼが1〜1000単位である。
【0042】
【実施例】
以下に、比較例及び実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
比較例
システイン無添加によるホモシステインの測定
250mMトリス塩酸緩衝液(pH8.5)50μLに、25mM 2−メルカプトエタノール20μL、200U/mLのサーマス・サーモフィラス菌株由来O−アセチルホモセリン−リアーゼ(池田食研製)10μLを添加後、検体として、倍々希釈した100μMのホモシスチン溶液(ホモシステインとしては200μMに相当し、終濃度では40μMに相当する)25μLと、蒸留水、または、625μMのL−システイン20μL(終濃度では100μMに相当する)を加え、37℃で5分間反応した。さらに、蒸留水25μL、16mMのN,N−ジメチル―p―フェニレンジアミン塩酸塩の1N硫酸溶液81.25μLと、10mM塩化第二鉄の1N硫酸溶液18.75μLを加え、37℃で5分間反応した後、670nmにおける吸光度を測定した。得られた吸光度とホモシステインの濃度の関係をプロットし、作成した検量線を図1に示す。
図1から、システインを添加した検体の検量線では、添加していないものよりも大きく嵩上げされ、強くシステインの影響を受けていることが分かる。
【0044】
実施例1
システイン添加によるホモシステインの測定
上記比較例のトリス塩酸緩衝液に、さらに500μMとなるようにL−システイン(終濃度では200μMに相当する)を追加し、比較例と同様に反応させ、ホモシステインを測定した。得られた吸光度とホモシステインの濃度の関係をプロットし、作成した検量線を図2に示す。
図2に示したように、L−システインの追加によって、両方の検量線がほぼ同一直線状に重なった。このことは、緩衝液に追加されたL−システインによって、検体に含まれるシステインの影響を消去できることを意味し、この検量線を用いてホモシステインを定量することができる。
【0045】
実施例2
モデルサンプルとして、ホモシスチン(ホモシステインの2量体)50μM溶液(サンプルA)と、システイン100μMを添加したホモシスチン50μM溶液(サンプルB)とを、比較例の方法と本発明の実施例1の方法で測定した。即ち、比較例の方法としては、サンプルAとBに更にシステインを添加することなく測定し、実施例1の方法としては、サンプルAとBに更に終濃度が200μMとなるようにシステインを添加して測定した。その結果を表1にまとめた。システインを含むサンプルBのホモシステインの理論値は100μMであるが、比較例の方法では測定値が150.4μM、本発明の実施例1の方法では107.0μMとなり、本発明の方法によるとほぼ理論値に近い値が得られ、システイン共存試料中のホモシステインの特異的測定が可能であることが示された。
【0046】
【表1】
Figure 0004731733
【0047】
【発明の効果】
本発明の測定法を用いると、ホモシステインとシステインを含む試料中のホモシステイン量を、試料に基質飽和量となる量程度のシステインを添加し、システインよりもホモシステインに対する作用が強いホモシステイン変換酵素を用いて、システインの影響を受けることなく容易に測定することができる。この方法を用いて、臨床検体中のホモシステインを臨床検査用の汎用測定機で簡便に測定でき、動脈硬化症の診断にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】検体中のシステインの影響を調べるホモシステインの検量線を示す。
【図2】システイン添加により、システインの影響を回避したホモシステインの検量線を示す。

Claims (4)

  1. ホモシステインとシステインが共存する試料中のホモシステインの定量法であって、システイン添加後の試料中のシステイン濃度が1μMから10mMとなるよう該試料にシステインを添加し、次いでサーマス・サーモフィラス菌株由来のO−アセチルホモセリン−リアーゼを作用させることを特徴とするホモシステインの定量法。
  2. システイン、サーマス・サーモフィラス菌株由来のO−アセチルホモセリン−リアーゼ、及び、該リアーゼの作用により発生する硫化水素を検出するための検出試薬を含む、請求項1に記載のホモシステインの定量法に用いるためのホモシステイン測定キット。
  3. 検出試薬が、N,N−ジアルキル−p−フェニレンジアミンである請求項記載のホモシステイン測定キット。
  4. 緩衝液を含む請求項又はに記載のホモシステイン測定キット。
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