JP4029609B2 - 生体成分の測定方法およびそれに用いる試薬キット - Google Patents

生体成分の測定方法およびそれに用いる試薬キット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を用いた、ホルムアルデヒドまたは反応中間体としてホルムアルデヒドを生成する化合物の、簡便で且つ高感度な測定方法、およびそのための試薬キットに関する。さらに本発明は、中間生成物としてホルムアルデヒドを経由する、クレアチニン、クレアチンおよびホモシステイン等の生体成分を測定する方法、およびそのための試薬キットに関する。本発明はまた、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素およびジメチルグリシンオキシダーゼを用いたホモシステインの測定方法およびそのための試薬キットに関する。さらに本発明は、上記の測定方法および試薬キットに好適に用いられる新規酵素に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホルムアルデヒドは、蛋白質、膜、DNA等と反応性に富む細胞毒であり、吸引、内服することで種々の障害を引き起こすことが知られている。近年、大気中、工業廃液、食品等に含有されるホルムアルデヒドが問題視されており、これを簡便かつ正確に測定する方法が要求されている。
【0003】
ホルムアルデヒドの測定法として、Hanz試薬、CTA試薬(J. Biol. Chem., 231, 813 (1958))、Purpald試薬(Anal. Biochem., 234(1), 50 (1996))などを用いて比色分析する方法、フェニルヒドラジン、フェリシアン化カリウム、クロロホルム、メタノールを組み合わせた試薬を用いる分析法が知られている。しかし、これらの方法は、操作が煩雑で測定に長時間を要する、或いは有害試薬を使用するなどの問題点があった。この問題を解決する手段として、グルタチオン非依存性のホルムアルデヒド脱水素酵素(EC 2.1.1.46)を用いる酵素法が開示されている(特開平5−42000号公報、特開2000−225000号公報)。これらの酵素法は、酵素反応によりホルムアルデヒドから蟻酸を生成する際に、同時に生成される還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、若しくは該補酵素のさらなる反応により生成される発色色素を分析するものであるが、測定感度は還元型NADや色素の分子吸光係数に依存するため、微量のホルムアルデヒドの測定には必ずしも十分とは言えない。
【0004】
一方、微量物質の酵素による高感度定量法として、測定対象とする基質や、基質に作用する酵素の補酵素をサイクリング反応により増幅、定量する方法が知られている(検査と技術、vol.27、No8、1999年7月)。サイクリング法の1つとして、脱水素酵素と2種類の補酵素(チオNAD類とNADH類、またはNAD類とチオNADH類)を用いて、可逆反応を利用した酵素サイクリング法による測定法が報告されている(特公平6−61278号公報、特公平6−73477号公報、特公平6−73478号公報、特公平6−73479号公報、特許第3023700号公報、特許第3034969号公報、特許第3034979号公報、特許第3034984号公報、特許第3034986号公報、特許第3034987号公報、特許第3034988号公報、特開平8−103298号公報)。
【0005】
特開平4−341198号公報には、アルコールデヒドロゲナーゼおよびチオNAD類とNADH類、またはNAD類とチオNADH類を用いるアルコール類またはアルデヒド類の高感度定量法が開示されている。ここで用いられるアルコールデヒドロゲナーゼの代表的な酵素として、下記の反応を触媒する酵素(EC 1.1.1.1)が挙げられている。
【0006】
【数1】
Figure 0004029609
【0007】
しかしながら、D. SchomburgおよびD. Stephan編, 「酵素ハンドブック9(Enzyme Handbook 9)」(Springer-Verlag)には、本酵素は、基質としてメタノールを酸化するのみならず、その生成物であるホルムアルデヒドをも酸化することが記載されている。ホルムアルデヒドは水溶液中では水和して存在し、アルコールの状態で存在するので、アルコールデヒドロデナーゼの被酸化基質となり、一部は酢酸まで酸化されて反応系の外に放出されてしまう。したがって、この酵素を用いてのホルムアルデヒドの高感度測定は成り立たない。
【0008】
また、グルタチオン非依存性のホルムアルデヒド脱水素酵素等のアルデヒド脱水素酵素は非可逆的にホルムアルデヒドを酸化するので、同様にサイクリング反応による高感度測定には適用できない。
【0009】
一方、分析科学の分野において、ホルムアルデヒドを中間生成物として経由して測定できる化合物があることが知られている。中でも有用なものとして、臨床検査におけるクレアチニン、クレアチンおよびホモシステイン等の測定が挙げられる。
【0010】
クレアチニンは臨床検査において腎機能の主要な診断マーカーである。また、クレアチンの測定は、筋ジストロフィー症、甲状腺機能亢進症などの病態解析に用いられる。これらの測定法としてはJaffe法が主流であるが、特異性に関する問題点の指摘があった。最近は、基質特異性の高いクレアチニンアミドハイドロラ−ゼ、クレアチンアミジノハイドロラーゼ、サルコシンオキシダーゼ、ペルオキシダーゼを用いた酵素法も増加しているが、生体内に存在する還元物質の影響を受ける可能性の指摘があった。また、酵素法においてペルオキシダーゼの代わりにグルタチオン非依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を用いて、サルコシンオキシダーゼ反応により生成するホルムアルデヒドを上記方法にて分析する方法も報告されているが(Clin. Clim. Acta, 122, 181 (1982), Ann. Clin. Biochem., 29, 523 (1992))、上述のように、微量の測定には必ずしも十分ではなかった。
【0011】
ホモシステインは、生体内では必須アミノ酸であるメチオニンが代謝を受けて生成されるSH基を有するアミノ酸であるが、シスタチオニンβ−シンターゼによってさらに代謝されるため、通常は低濃度で生体内に存在する。血中ホモシステイン濃度の上昇をもたらすこれら代謝酵素の遺伝疾患であるホモシスチン尿症が動脈硬化症と関連のあることが知られており、近年では、正常値より若干高いレベルのホモシステイン濃度においても脳梗塞、心筋梗塞、深部静脈血栓症(いわゆるエコノミークラス症候群)と関連付けられることが明らかにされたことから、現在では、血中ホモシステイン濃度がこれら疾患の独立した危険因子として注目されている。
【0012】
ホモシステインの測定法は、これまでHPLCを用いた方法が標準法として用いられており(Clin. Chem., 39, 1590 (1993))、種々の改良法も報告されているが、HPLCを用いる方法では、精巧な分析装置を必要とする上、多量の検体を扱うには不適であるという欠点がある。HPLCによる分離を要しない方法としては、ホモシステインをアデノシン、フルオレセイン標識S−アデノシルホモシステイン存在下でS−アデノシルホモシステイン加水分解酵素と反応させ、反応系に存在するS−アデノシルホモシステインを、抗S−アデノシルホモシステイン抗体を用いて蛍光偏向イムノアッセイにより計測することで、ホモシステインを測定する方法(特表平8−506478号公報)などが知られている。また最近、酵素法として、ホモシステインをホモシステインデスルフラーゼで反応させ、生成するアンモニア、α−ケト酸または硫化水素を測定する方法(特表2000−502262号公報)、ホモシステインに対して分解作用を有するL−メチオニンγ−リアーゼやo−アセチルホモセリン−リアーゼを用いて、チオール化合物の存在下で生成する硫化水素またはチオール化合物置換ホモシステインを測定する方法(特開2000−166597号公報)、ホモシステインのγ位メルカプト基と置換可能な求核試薬の存在下、γ−置換−α−アミノ酪酸合成酵素によりホモシステインから生成する、γ−置換−α−アミノ酪酸または硫化水素を定量する方法(特開2000−228998号公報)なども報告されている。
【0013】
しかし、イムノアッセイ法でも、一般の生化学検査に比べて時間、費用を要することが知られており、短時間に多数の検体を安価に分析するのには好適とはいえない。また、従来の酵素反応を用いた分析法では、一般に血中ホモシステイン量が正常値で10μM程度若しくはそれ以下と微量であるため測定感度が不足していたり、あるいは使用する酵素の基質特異性により、検体中のホモシステイン以外の物質に作用するなどの点で、正確なホモシステイン量の測定には十分であるとは言えない。
【0014】
服部と川村(特開2001−17198)は、ホモシステインと他の物質とを基質とする転移酵素を、当該他の基質とともにホモシステインを含む試料に作用させて、生成する化合物を測定することにより、ホモシステインをより高感度且つ高精度に測定できることを開示している。特に、転移酵素としてベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、および他の基質としてベタインを使用し、生成するジメチルグリシンを、ジメチルグリシンオキシダーゼを用いて更にサルコシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素にまで分解し、これらの化合物のいずれかを測定することにより、ホモシステインを特に高感度且つ高精度に測定できることが記載されている。しかしながら、生体試料において、ホモシステインの多くは、ジスルフィド結合により蛋白質やチオール基を有する他のアミノ酸と結合した状態で存在するため、総ホモシステインの測定は還元条件下で行う必要があるが、還元条件下で十分に安定なジメチルグリシンオキシダーゼはこれまでに報告されておらず、したがって、かかる条件下では試薬性能の低下を引き起こす可能性があった。
【0015】
一方、酵素サイクリング法を利用したホモシステイン測定法として、シスタチオニンβ−シンターゼとシスタチオニンβ−リアーゼにより生成するピルビン酸、アンモニアを測定する方法(US6174696)、ホモシステインデスルフラーゼと2−ケト酪酸脱水素酵素を用いて、生成されるNAD類または消費されるチオNAD類を分析する方法(特開2001−161399,特開2001−149092)などが知られているが、生体内でのホモシステイン量を考慮すると更に高感度で測定できる方法が望ましい。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の第1の目的は、ホルムアルデヒド、または測定系における反応中間体としてホルムアルデヒドが生成する、ホモシステイン、クレアチニン、クレアチン等の化合物の、高感度且つ簡便な測定手段を提供することである。また、本発明の第2の目的は、HPLCやイムノアッセイを用いずに、高感度且つ簡便にホモシステインを測定する手段を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の第1の課題を解決すべく、酵素サイクリング法を用いたホルムアルデヒドの高感度測定法の確立を目標とした。そこでまず、当該方法に使用し得る酵素として、ホルムアルデヒドに可逆的に作用するグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(EC 1.2.1.1)に着目して、鋭意研究を重ねた結果、2種類の異なる酸化還元物質を補酵素として利用することができ、且つ両者に対する反応性のバランスがサイクリング反応の進行を可能ならしめるものである、新規なグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素をスクリーニングすることに成功した。さらに、この酵素を、グルタチオン、酸化型の補酵素および還元型の他の補酵素とともに試料に作用させ、該酵素反応によるいずれかの補酵素量の変化を測定することにより、ホルムアルデヒド、並びに反応中間体としてホルムアルデヒドを生成するホモシステインやクレアチニン、クレアチン等を、高感度且つ簡便に測定できることを確認した。
【0018】
一方で、本発明者らは、上記の第2の課題を解決する手段として、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素とジメチルグリシンオキシダーゼを用いる測定系に着目し、当該測定系における使用に適した特性を有するジメチルグリシンオキシダーゼを鋭意探索した結果、チオール化合物に対して耐性であり、且つ従来の酵素に比べてジメチルグリシンに対するKm値の小さい、新規なジメチルグリシンオキシダーゼを単離精製することに成功した。さらに、本酵素を上記測定系に適用したところ、ホモシステインをさらに高感度且つ高精度に測定できることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0019】
即ち、本発明は以下のような構成からなる。
(1)NADに対する反応性に対してのチオNADに対する反応性の比が30%以上、好ましくは60%以上であるグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素、グルタチオンおよび酸化型補酵素を試料に接触させ、該酵素反応より生成した化合物を分析することを特徴とするホルムアルデヒドの測定方法。
(2)グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素が、さらに以下の理化学的性質を有するものである、上記(1)のホルムアルデヒドの測定方法。
(a) 作用:NAD類、NADP類、チオNAD類、チオNADP類からなる群より選ばれる1つの酸化型補酵素および還元型グルタチオンの存在下にホルムアルデヒドに作用して、S−ホルミルグルタチオンおよび還元型補酵素を生成する。
(b) 至適pH:約7.5〜約8.5
(c) pH安定性:約6.0〜約9.0
(d) 熱安定性:約40℃以下(pH7.5、30分間処理)
(3)グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素が、微生物、好ましくはメタノール資化性酵母、より好ましくはハンゼヌラ(Hansenula)属に属する酵母、就中ハンゼヌラ・ノンファーメンタンス(Hansenula nonfermentans)IFO1473株由来である、上記(1)または(2)のホルムアルデヒドの測定方法。
(4)NADに対する反応性に対してのチオNADに対する反応性の比が30%以上であるグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素、グルタチオン、チオNAD類およびチオNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物、並びに還元型NAD類および還元型NADP類からなる群より選ばれる1つの化合物を試料に接触させて、サイクリング反応を行わせしめ、該反応により変化した化合物の量を分析することを特徴とする、ホルムアルデヒドの測定方法。
(5)NADに対する反応性に対してのチオNADに対する反応性の比が30%以上であるグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素、グルタチオン、還元型チオNAD類および還元型チオNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物、並びにNAD類およびNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物を試料に接触させて、サイクリング反応を行わせしめ、該反応により変化した化合物の量を分析することを特徴とする、ホルムアルデヒドの測定方法。
(6)生成した還元型チオNADP類または還元型チオNAD類化合物の量を分析することを特徴とする、上記(4)のホルムアルデヒドの測定方法。
(7)ホルムアルデヒドの最低検出感度が1μmol/L以下である、上記(4)〜(6)のいずれかのホルムアルデヒドの測定方法。
(8)反応中間体としてホルムアルデヒドを生成する生体成分の測定方法において、生成したホルムアルデヒドを上記(1)〜(7)のいずれかの方法により分析することを特徴とする、該生体成分の測定方法。
(9)ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、ジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼを試料に接触させ、該酵素反応により生成したホルムアルデヒドを、上記(1)〜(7)のいずれかの方法により測定することを特徴とする、ホモシステインの測定方法。
(10)クレアチンアミジノハイドロラーゼ、サルコシンオキシダーゼ、および必要に応じてクレアチニンアミドハイドロラーゼを作用させ、該酵素反応により生成したホルムアルデヒドを上記(1)〜(7)のいずれか方法により測定することを特徴とする、クレアチンまたはクレアチニンの測定方法。
(11)ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、チオール化合物に対し安定なジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼを試料に接触させ、該酵素反応により生成した過酸化水素を、ペルオキシダーゼ存在下、酸化系発色試薬および必要に応じてカップラーと反応させ、生成する色素を測定することを特徴とする、ホモシステインの測定方法。
(12)ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、チオール化合物に対し安定なジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼを試料に接触させ、該酵素反応により生成したホルムアルデヒドを、ホルムアルデヒド脱水素酵素および酸化型補酵素と反応させ、生成する還元型補酵素を測定することを特徴とする、ホモシステインの測定方法。
(13)ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、チオール化合物に対し安定なジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼを試料に接触させ、該酵素反応により生成したホルムアルデヒドを、グルタチオン、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素および酸化型補酵素と反応させ、生成する還元型補酵素を測定することを特徴とする、ホモシステインの測定方法。
(14)チオール化合物が、ジチオスレイトール、ジチオエリスリトール、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトエタンスルホン酸、2−メルカプトエチルアミン、システイン、ホモシステイン、N−アセチルシステイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、還元型グルタチオンまたはこれらの塩から選択される少なくとも1種、好ましくはジチオスレイトールであり、より好ましくは、ジチオスレイトール非存在下に対し、0.05mmol/Lジチオスレイトール存在下で、少なくとも50%酵素活性が保持されるジメチルグリシンオキシダーゼを用いることを特徴とする、上記(11)〜(13)のいずれかのホモシステインの測定方法。
(15)ジメチルグリシンオキシダーゼが、さらに以下の理化学的性質を有する酵素である、上記(11)〜(14)のいずれかのホモシステインの測定方法。
(a) 作用:酸素の存在下にジメチルグリシンに作用して,サルコシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素を生成する。
(b) ジメチルグリシンに対するKm値:15mM以下
(16)ジメチルグリシンオキシダーゼが、微生物、好ましくはアルスロバクター属(Arthrobacter)またはストレプトマイセス属(Streptomyces)に属する微生物、より好ましくはアルスロバクター・ニコチアナエ(Arthrobacter nicotianae)IFO14234株またはストレプトマイセス・ミュータビリス(Streptomyces mutabilis)IFO12800株由来である、上記(11)〜(15)のいずれかのホモシステインの測定方法。
(17)ホモシステインの最低検出感度が1μmol/L以下である、上記(13)〜(16)のいずれかのホモシステインの測定方法。
(18)以下の理化学的性質を有するグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素。
(a) 作用:NAD類、NADP類、チオNAD類、チオNADP類からなる群より選ばれる1つの補酵素、還元型グルタチオンの存在下にホルムアルデヒドに作用して、S−ホルミルグルタチオン、還元型補酵素を生成する。
(b) NADに対する反応性に対してのチオNADに対する反応性の比が30%以上である。
(c) 至適pH:約7.5〜約8.5
(d) pH安定性:約6.0〜約9.0
(e) 熱安定性:約40℃以下(pH7.5、30分間処理)
(19)微生物、好ましくはメタノール資化性酵母、より好ましくはハンゼヌラ属に属する酵母、就中ハンゼヌラ・ノンファーメンタンスIFO1473株由来である、上記(18)のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素。
(20)以下の理化学的性質を有するジメチルグリシンオキシダーゼ。
(a) 作用:酸素の存在下にジメチルグリシンに作用して,サルコシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素を生成する。
(b) ジチオスレイトール非存在下に対し、0.05mmol/Lジチオスレイトール存在下で、少なくとも50%酵素活性が保持される。
(c) ジメチルグリシンに対するKm値:15mM以下
(21)微生物、好ましくはアルスロバクター属またはストレプトマイセス属に属する微生物、より好ましくはアルスロバクター・ニコチアナエIFO14234株またはストレプトマイセス・ミュータビリスIFO12800株由来である、上記(20)のジメチルグリシンオキシダーゼ。
(22)緩衝液、グルタチオン、NADに対する反応性に対してのチオNADに対する反応性の比が30%以上であるグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素、および該酵素反応により生成する化合物を分析するための試薬を少なくとも含有してなることを特徴とするホルムアルデヒド測定用試薬キット。
(23)緩衝液、グルタチオン、NADに対する反応性に対してのチオNADに対する反応性の比が30%以上であるグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素、チオNAD類およびチオNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物、並びに還元型NAD類および還元型NADP類からなる群より選ばれる1つの化合物を少なくとも含有してなることを特徴とするホルムアルデヒド測定用試薬キット。
(24)緩衝液、グルタチオン、NADに対する反応性に対してのチオNADに対する反応性の比が30%以上であるグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素、還元型チオNAD類および還元型チオNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物、並びにNAD類およびNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物を少なくとも含有してなることを特徴とするホルムアルデヒド測定用試薬キット。
(25)グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素が、上記(18)または(19)の酵素である、上記(22)〜(24)のいずれかのホルムアルデヒド測定用試薬キット。
(26)上記(22)〜(25)のいずれかに記載の試薬に加えて、ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、ジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼを更に含有してなることを特徴とする、ホモシステイン測定用試薬キット。
(27)上記(22)〜(25)のいずれかに記載の試薬に加えて、クレアチンアミジノハイドロラーゼ、サルコシンオキシダーゼおよび必要に応じてクレアチニンアミドハイドロラーゼを更に含有してなることを特徴とする、クレアチニンまたはクレアチン測定用試薬キット。
(28)緩衝液、ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、チオール化合物に対し安定なジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼ、並びに該酵素反応により生成した過酸化水素を測定するための試薬を含有してなることを特徴とする、ホモシステイン測定用試薬キット。
(29)過酸化水素を測定するための試薬として、ペルオキシダーゼ、酸化系発色試薬および必要に応じてカップラーを含有することを特徴とする、上記(28)のホモシステイン測定用試薬キット。
(30)緩衝液、ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、チオール化合物に対し安定なジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼ、並びに該酵素反応により生成したホルムアルデヒドを測定するための試薬を含有してなることを特徴とする、ホモシステイン測定用試薬キット。
(31)ホルムアルデヒドを測定するための試薬として、ホルムアルデヒド脱水素酵素および酸化型補酵素を含有することを特徴とする、上記(30)のホモシステイン測定用試薬キット。
(32)ホルムアルデヒドを測定するための試薬として、グルタチオン、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素および酸化型補酵素を含有することを特徴とする、上記(30)のホモシステイン測定用試薬キット。
(33)ジメチルグリシンオキシダーゼが、上記(20)または(21)のいずれかの酵素である、上記(28)〜(32)のいずれかのホモシステイン測定用試薬キット。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明のホルムアルデヒドの測定方法は、チオNAD類もしくはチオNADP類、およびNAD類もしくはNADP類の2種類の補酵素を利用でき、且つNADに対する反応性に対するチオNADに対する反応性の比が従来公知のものに比べて高い新規グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を、グルタチオンおよび上記いずれかの酸化型補酵素とともに試料に作用させ、生成もしくは消費されるいずれかの化合物の量を測定することを特徴とする。
【0021】
本発明において使用されるグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(EC 1.2.1.1)は、正確には、酸化型補酵素の存在下、グルタチオンとホルムアルデヒドより非酵素的に生成するS−ヒドロキシメチルグルタチオンを基質として、S−ホルミルグルタチオンと還元型補酵素の生成を可逆的に触媒する酵素である。
【0022】
本発明におけるグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素は、補酵素として、チオNAD類もしくはチオNADP類、およびNAD類もしくはNADP類を利用することができる。NAD類としては、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、アセチルピリジンアデニンジヌクレオチド、アセチルピリジンアデニンヒポキサンチンジヌクレオチド、ニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチドなどが、NADP類としては、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、アセチルピリジンアデニンジヌクレオチドリン酸、アセチルピリジンアデニンヒポキサンチンジヌクレオチドリン酸、ニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチドリン酸などが例示される。また、チオNAD類としては、例えば、チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、チオニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチドなどが、チオNADP類としては、例えば、チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、チオニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチドリン酸などが具体例として挙げられる。
【0023】
好ましい実施態様においては、本発明のホルムアルデヒドの測定方法は、グルタチオン、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素、チオNAD類およびチオNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物、並びに還元型NAD類および還元型NADP類からなる群より選ばれる1つの化合物を試料に作用させて、サイクリング反応を行わせしめ、該反応より変化した化合物の量を分析することを特徴とする。
【0024】
別の好ましい実施態様においては、本発明のホルムアルデヒドの測定方法は、グルタチオン、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素、還元型チオNAD類および還元型チオNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物、並びにNAD類およびNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物を試料に作用させて、サイクリング反応を行わせしめ、該反応より変化した化合物の量を分析することを特徴とする。
【0025】
該サイクリング反応では、酸化型補酵素から還元型補酵素、若しくは還元型補酵素から酸化型補酵素の生成が反応時間に比例して、基質の量に対して増幅して生成されることから、補酵素がNAD類、NADP類の場合は340nm付近の吸光度を、チオNAD類、チオNADP類の場合は400nm付近の吸光度を測定することで、ホルムアルデヒドを高感度に定量することができる。該サイクリング反応に用いるグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素としては、ホルムアルデヒドを分解してサイクリング反応系外に放出するような夾雑酵素(例えば、S−ホルミルグルタチオンハイドロラーゼ等)を含まないか、測定値に影響を与えない程度に含量が低いことが望ましい。またNAD(P)分解酵素についても全く含まないか、測定値に影響を与えない程度に含量が低いことが望ましい。
【0026】
該サイクリング反応を効率的に行わせしめるためには、本発明で使用するグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素は、チオNAD類もしくはチオNADP類に対して十分な反応性を有する必要がある。具体的には、NADに対する反応性に対してのチオNADに対する反応性の比が30%以上であり、好ましくは60%以上である。さらに、酸化型補酵素としてチオNAD(P)類を用いる場合、逆反応において、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素は、正反応により生成する還元型チオNAD(P)類に対する反応性に対して、添加される還元型NAD(P)類に対する反応性が十分に高いものである。一方、酸化型補酵素としてNAD(P)類を用いる場合、逆反応において、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素は、正反応により生成する還元型NAD(P)類に対する反応性に対して、添加される還元型チオNAD(P)類に対する反応性が十分に高いものである。グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素は高等動物から微生物まで広く存在することが知られており、チオNADに対して比較的高い作用性を有する該酵素としてはヒト肝臓由来のものが報告されているが(Biochem. J., 177, 869-878 (1979))、高等動物のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素は、通常、微生物由来の酵素と比べて比活性が低く、また、該酵素を用いてサイクリング反応を行うことができたという報告は未だなされていない。
【0027】
従って、本発明は、上記のいずれかの条件を具備し、サイクリング反応を触媒することができる、新規グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を提供する。好ましくは、当該酵素は、さらに下記の理化学的性質を有する。
(a) 作用:NAD類、NADP類、チオNAD類、チオNADP類からなる群より選ばれる1つの補酵素、還元型グルタチオンの存在下にホルムアルデヒドに作用して、S−ホルミルグルタチオン、還元型補酵素を生成する。
(b) 至適pH:約7.5〜約8.5
(c) pH安定性:約6.0〜約9.0
(d) 熱安定性:約40℃以下
ここで「pH安定性」とは、25℃で24時間処理した後の残存活性が80%以上のpH範囲をいい、「熱安定性」とは、pH7.5で30分間処理した後の残存活性が90%以上の温度範囲をいう。
【0028】
本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素は、サイクリング反応を触媒するのに必要な上記の条件を具備する限り、その由来は特に制限されないが、好ましくは微生物由来であり、より好ましくはメタノール資化性酵母由来、いっそう好ましくはハンゼヌラ属に属する酵母由来、就中ハンゼヌラ・ノンファーメンタンスIFO1473株由来のものが挙げられる。IFO1473株は、財団法人発酵研究所(〒532−8686 大阪市淀川区十三本町2−17−85)より入手可能である。
【0029】
また、本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素は、ランダムにもしくは部位特異的に変異を誘発することにより、サイクリング反応を触媒するのに必要な、2種類の補酵素に対する反応性のバランスを保持する範囲で、比活性や安定性を向上させるなどの酵素特性の改良をもたらすように遺伝的に改変されたものであってもよい。
【0030】
本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素は、該酵素を産生する細胞または組織の培養物を原料として単離精製する方法、あるいは当該酵素蛋白質をコードする遺伝子を常法によって単離し、遺伝子組換え技術を用いて適当な宿主中で発現させる方法によって取得することができる。前者の好ましい一実施態様として、以下の方法が例示される。
【0031】
まず、上記のいずれかのグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素生産菌(例えば、ハンゼヌラ・ノンファーメンタンスIFO1473株など)を栄養培地中で培養する。使用する栄養培地としては、使用菌株が資化しうる炭素源、窒素源、無機物、その他必要な栄養素を適量含有するものであれば、合成培地、天然培地のいずれも使用できる。炭素源としては、例えばリンゴ酸、コハク酸等が使用される。窒素源としては、例えばペプトン類、肉エキス、酵母エキス等の窒素含有天然物や、塩化アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の無機窒素含有化合物が使用される。無機物としては、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等が使用される。
【0032】
培養は通常、振盪培養あるいは通気撹拌培養により行う。培養温度は約20〜約40℃、好ましくは約25〜約37℃である。培養pHは約5〜約9、好ましくは約6〜約8の範囲に制御するのがよい。しかしながら、使用する菌株が生育し得る限り、これら以外の条件下でも実施することができる。培養期間は、通常約1〜約7日であり、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素は通常、菌体内に生産蓄積される。
【0033】
本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素の精製は、一般に使用される精製法を用いて行うことができる。例えば、菌体を回収後、超音波破砕、ガラスビーズを用いる機械的な破砕、フレンチプレス、界面活性化剤による溶解などにより、菌体内画分を抽出することができる。得られた抽出液を、硫安やぼう硝などによる塩析法、塩化マグネシウムや塩化カルシウムなどによる金属凝集法、プロタミンやポリエチレンイミンなどを用いた凝集法、さらにはDEAE(ジエチルアミノエチル)−セファロース、CM(カルボキシメチル)−セファロースなどによるイオン交換クロマト法などに付すことにより、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を精製することができる。
【0034】
本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素によるサイクリング反応を用いたホルムアルデヒドの測定方法について、酸化型補酵素としてチオNAD(P)類化合物を用いる場合を例にとってさらに詳述する。還元型グルタチオン、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素、酸化型チオNAD(P)類化合物および還元型NAD(P)類化合物を試料に接触させると、試料中に含まれるホルムアルデヒド、還元型グルタチオンおよび酸化型チオNAD(P)類化合物から、S−ホルミルグルタチオンと還元型チオNAD(P)類化合物が生成する。次いで、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素は、過剰に存在する還元型NAD(P)類化合物を補酵素として利用し、生成されたS−ホルミルグルタチオンを再びホルムアルデヒドとグルタチオンに戻す。以下、酸化型チオNAD(P)類化合物を補酵素とする正反応と、還元型NAD(P)類を補酵素とする逆反応とが繰り返され、結果として1分子のホルムアルデヒドに対して多数分子の還元型チオNAD(P)類化合物が生成される。一方で、還元型NAD(P)類化合物は反応サイクルの進行に伴って消費される。したがって、還元型チオNAD(P)類化合物量の増加または還元型NAD(P)類化合物量の減少を、上記のように吸光度を指標にしてモニタリングすることにより、低濃度のホルムアルデヒドも感度よく検出することができる。
【0035】
また、上記測定系において、NAD(P)類を補酵素として利用し得るがチオNAD(P)類を補酵素として実質的に利用できない他の酵素と、当該酵素の基質をさらに添加することにより、酸化型NAD(P)類化合物を還元型に再生することができる。この場合、ホルムアルデヒドの測定は、還元型チオNAD(P)類化合物の増加を指標にして行われる。このような測定系に使用される他の酵素およびその基質の組み合わせとしては、NAD類を利用し得るものとして、例えば、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.37)(例えば、ブタやウシの心筋由来)とL−リンゴ酸、グリセロール−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.8)(例えば、ウサギ筋肉由来)とL−グリセロール−3−リン酸、グリセロアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.12)(例えば、ウサギ骨格筋もしくは肝、酵母または大腸菌由来)とD−グリセロアルデヒドリン酸およびリン酸、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.49)(例えば、リューコノストック(Leuconostoc)属細菌由来)とグルコース−6−リン酸、グルコースデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.47)(例えば、バチルス属細菌、シュードモナス属細菌由来)とβ−D−グルコース、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.3)(例えば、ウシ肝由来)とL−グルタミン酸等が、NADP類を利用し得るものとして、例えば、グリオキシル酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.2.1.17)(例えば、シュードモナス・オキサラティカス(Pseudomonas oxalaticus)由来)とCoAおよびグリオキシル酸、ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.44)(例えば、ラット肝、ビール酵母または大腸菌由来)と6−ホスホ−D−グルコン酸、グリセロアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.13)(例えば、植物葉緑体由来)とD−グリセロアルデヒド−3−リン酸およびリン酸、グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.49)(例えば、酵母またはリューコノストック属細菌由来)とグルコース−6−リン酸、グルコースデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.47)(例えば、バチルス属細菌、シュードモナス属細菌由来)とβ−D−グルコース、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(EC 1.4.1.3)(例えば、ウシ肝由来)とL−グルタミン酸等が挙げられる。
【0036】
本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を用いたサイクリング法によれば、試料中の濃度が1μmol/L以下の微量のホルムアルデヒドの検出が可能となる。
【0037】
しかしながら、本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を用いたホルムアルデヒドの測定は、サイクリング反応を介さずに、以下のようにして行うこともできる。
即ち、グルタチオン、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素およびチオNAD類、チオNADP類、NAD類およびNADP類からなる群より選ばれる1つの酸化型補酵素を試料に接触させ、生成されるS−ホルミルグルタチオンを、紫外部における吸光度を指標として測定することにより、ホルムアルデヒドを測定することができる。あるいは、さらにS−ホルミルグルタチオンハイドロラーゼ(EC 3.1.1.12)を作用させて生成するギ酸を、さらにギ酸脱水素酵素(EC1.2.1.2;EC 1.2.1.43)を用いて二酸化炭素に分解し、生成する還元型補酵素を測定することによっても、ホルムアルデヒドの測定が可能である。
【0038】
S−ホルミルグルタチオンハイドロラーゼは、動物臓器やメタノール資化性酵母、細菌などに存在することが知られており、これら給源より採取して使用することができる。また、ギ酸脱水素酵素は、植物種子、メタノール資化性酵母、細菌などに存在する酵素で、これら給源より採取して使用することができる。あるいは、市販の酵素(例えば、シグマ製FORMATE DEHYDROGENASE等)を使用してもよい。
【0039】
上記の一連の酵素反応により生成される還元型補酵素(NADH類またはNADPH類)は、紫外部での吸光度、或いは蛍光を測定することにより分析することができる。また、ジアホラーゼやメチルフェナジウムメチルスルフェートのような電子伝達体の存在下でテトラゾリウム塩を還元する際に生成するホルマザン色素を測定することによっても、還元型補酵素を測定することができる。
【0040】
本発明のホルムアルデヒドの測定方法は、多段階測定の反応中間体としてホルムアルデヒドを生成する種々の生体成分の測定方法において、その最終工程として好ましく使用され得る。
【0041】
例えば、クレアチニンまたはクレアチンの測定は、クレアチンアミジノハイドロラーゼおよびサルコシンオキシダーゼ(クレアチニンの場合はさらにクレアチニンアミドハイドロラーゼ)を試料に作用させて、クレアチニンまたはクレアチンをグリシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素に分解し、生成する過酸化水素を発色基質等を用いて測定することにより行われている。そこで、過酸化水素の定量用試薬の代わりに、本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を用いてホルムアルデヒドを測定することにより、クレアチニンまたはクレアチンを高感度で測定することができる。
【0042】
従って、本発明は、クレアチンアミジノハイドロラーゼ、サルコシンオキシダーゼおよび必要に応じてクレアチニンアミドハイドロラーゼを試料に接触させてホルムアルデヒドを生成させ、さらに、本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素、グルタチオン、およびチオNAD類、チオNADP類、NAD類およびNADP類からなる群より選ばれる1つの酸化型補酵素、および必要に応じてさらに該酸化型補酵素とは異なる種類の還元型補酵素を接触させて、生成もしくは消費される化合物量を分析することによる、クレアチニンまたはクレアチンの測定方法を提供する。
【0043】
使用するクレアチンアミジノハイドロラーゼ、サルコシンオキシダーゼおよびクレアチニンアミドハイドロラーゼは特に限定されるものではなく、これらの酵素を生産する微生物などから公知の手法を用いて採取できる他、各種市販の酵素を用いることもできる。例えば、クレアチンアミジノハイドロラーゼとしては、バチルス属、コリネバクテリウム属、ミクロコッカス属、アクチノバチルス属、アルカリゲネス属(Alcaligenes)に属する細菌等由来のものが、クレアチニンアミドハイドロラーゼとしては、シュードモナス属、アルカリゲネス属、フラボバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロコッカス属、ペニシリウム属に属する細菌等由来のものが、サルコシンオキシダーゼとしては、各種動物や、アルスロバクター属、ペニシリウム属、バチルス属に属する微生物等由来のものが挙げられる。
【0044】
また、ホモシステインの測定は、ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素およびジメチルグリシンオキシダーゼを試料に作用させて、ホモシステインをサルコシン、過酸化水素およびホルムアルデヒドに分解し、生成する過酸化水素を発色基質等を用いて測定することにより行うことができる。そこで、上記と同様に、過酸化水素の定量用試薬の代わりに、本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を用いてホルムアルデヒドを測定することにより、ホモシステインを測定することができる。
【0045】
本発明において使用されるベタイン−ホモシステインメチル転移酵素(EC 2.1.1.5)は、ベタインをもう一方の基質としてホモシステインに作用し、ジメチルグリシンとメチオニンを生成する酵素であり、例えば、哺乳動物やシュードモナス属、アスペルギルス属などの微生物から採取することが可能である。本酵素のもう一方の基質であるベタインは、塩酸塩の形で安価に市販されている。
【0046】
ジメチルグリシンオキシダーゼ(EC 1.5.3.10)は、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素により生成したジメチルグリシンに作用して、サルコシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素に分解する酵素であり、例えばシリンドロカーポン(Cylindrocarpon)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アルスロバクター属などの微生物から採取することができる。
【0047】
また、ジメチルグリシンオキシダーゼにより生成されるサルコシンにサルコシンオキシダーゼを作用させれば、2倍量のホルムアルデヒドが生成するので検出感度をさらに増加させることができる。サルコシンオキシダーゼとしては、クレアチニンまたはクレアチンの測定方法について上記した通りのものを、同様に使用することができる。
【0048】
反応中間体としてホルムアルデヒドを生成する他の測定対象として、例えば、メタノール、尿酸などが例示される(Clin. Chem., 33/12, 2204-2208 (1987), Clin. Biochem., 27/2, 93-97 (1994))。即ち、メタノールは、アルコールオキシダーゼ(EC 1.1.3.13)によりホルムアルデヒドと過酸化水素を生成する。また、尿酸は、ウリカーゼ(EC 1.7.3.3)の反応により生成される過酸化水素を、メタノールの存在下でカタラーゼ(EC 1.11.1.6)と作用させることでホルムアルデヒドを生成するので、これを上記測定方法により分析することができる。
【0049】
本発明はまた、上記のホルムアルデヒドの測定方法に使用するための試薬キットを提供する。本発明におけるホルムアルデヒド測定用試薬キットは、緩衝液、グルタチオン、上述の本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素および該酵素反応により生成する化合物を分析するための試薬を少なくとも含有してなる。当該試薬キットは、NAD類、NADP類、チオNAD類およびチオNADP類からなる群より選ばれる1つの酸化型補酵素をさらに含有することが好ましい。
【0050】
グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素の反応により生成する化合物を分析するための試薬としては、S−ホルミルグルタチオンを分析するための試薬として、S−ホルミルグルタチオンハイドロラーゼ、ギ酸脱水素酵素および生成する還元型補酵素を分析するための試薬が挙げられる。S−ホルミルグルタチオンハイドロラーゼ、ギ酸脱水素酵素および生成する還元型補酵素を分析するための試薬は、それぞれ上述のものが好ましく使用され得る。なお、S−ホルミルグルタチオンは、反応液の紫外部での吸光度を分析することにより直接測定することができるので、この場合は上記の試薬に代えて、吸光度測定に必要な試薬もしくは器具類を含むこともできる。
【0051】
本発明の試薬キットにおいて使用される緩衝液としては、トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、GOOD緩衝液などが挙げられる。トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液は濃度、温度によりpHの変動を受けやすいが、安価という利点がある。一方、GOOD緩衝液は具体的にはMES、Bis−Tris、ADA、PIPES、ACES、BES、MOPS、TES、HEPES、Tricine、Bicine、POPSO、TAPS、CHES、CAPSなどが例示され、臨床診断薬用として多用されている。これら緩衝液の種類、濃度およびpHは、各試薬成分の保存および酵素反応など目的に応じて一種もしくは複数が選択されるが、いずれの緩衝液を用いるに際しても、酵素反応時のpHとしては5.0〜10.0の範囲で使用されることが好ましい。
【0052】
また、本発明の試薬キットを構成する試薬には、金属塩、蛋白質、アミノ酸、糖、有機酸などを安定化剤として使用することができる。金属塩としてはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、銅、亜鉛、マンガンなどの塩が挙げられる。蛋白質としては酵素反応に影響を与えないものが望ましいが、例えば牛血清アルブミン、卵アルブミン、ゼラチンなどが挙げられる。アミノ酸としては、グリシン、リジン、グルタミン酸、グリシルグリシン、ポリリジンなどを挙げることができる。糖としては、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖およびこれらの誘導体を用いることができる。具体的には、グルコース、フラクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、ラクトース、シュークロース、マルトース、トレハロース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトシルシクロデキストリン、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、デキストリン、アミロース、グリコーゲン、デンプン、イヌリン、グルコサミン、イノシトール、マンニトール、ソルビトール、リビトール、デオキシグルコースなどが挙げられる。有機酸としては、α−ケトグルタル酸、リンゴ酸、フマル酸、グルコン酸、コール酸、デオキシコール酸などが例示される。その他、ホウ酸、ホウ砂、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、グリセロール、フィコールなども使用可能である。
【0053】
更に、本発明の試薬キットを構成する試薬には、試薬性能に悪影響を及ぼさない範囲で防腐剤や界面活性剤を添加してもよい。防腐剤としてはアジ化ナトリウム、キレート剤、各種抗生物質、防菌剤、防黴剤などが挙げられる。具体的にはアジ化ナトリウムの他、EDTA及びその塩(金属キレートを含む)、CyDTA、GHEG、DPTA−OH、DTPA、EDDA、EDDP、EDDPO、EDTA−OH、EDTPO、EGTA、HBED、HDTA、HIDA、IDA、Methyl-EDTA、NTA、NTP、NTPO、TTHA(これらは同仁より市販)等のキレート剤、BND、CAA、HPO、IZU、MIT(ロッシュより市販)、ProClin150、ProClin300(ローム&ハースより市販)、ベンザルコニウムクロリド、KathonCG、p−ヒドロキシメチルベンゾエート等の防菌(黴)剤、アンフォテリシンB、アンピシリン、ブラスティシジンS、クロラムフェニコール、ジヒドロストレプトマイシン、クリンダマイシン、シクロヘキシミド、フィリピン、G418、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、ネオマイシン、ロモフンジン、ポリオキシン、ペニシリン、スルファメチゾール、テトラサイクリン等の抗生物質が使用可能である。界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。具体的には、アデカトール720N、B−795、B−797、LO−7、NP−690、NP−695、NP−720、PC−8、SO−120、SO−145、ブリジェ35、98、700、エマルゲン109P、430、460、707、709、810、911、935、950、A−60,B66、n−ドデシルマルトシド、ゲナポールX−080,MEGA−7、8、9、10、ニッコールBL−9EX、BL−20TX、HCD−100、MGO、MYO−6、MYL−10、NP−18TX、OP−10、TL−10、TMGO5、SL−10、オクチル α―グルコシド、オクチル β―グルコシド、オクチルチオグルコシド、オクチルチオガラクトシド、ペンタエチレングリコールドデシルエーテル、ポリエチレンエーテルW−1、プルロニックF−68、L−71、P−103、ノニデットP40、レオドール460、TWL−103、TWL−106、サポニン、サルコシネートPN、スパン20、85、SM1080、スクロースモノラウレート、テトロニック704、テシット、トリトンX−100、X−114、X−305、ツイーン20、40、80等の非イオン性界面活性剤、ビス(ヒドロキシエチル)−(ステアロイルアミノメチルカルボニルオキシ)エチルアミンクロリド、メチル硫酸ベンジルラウリルメチルスルフォニウム、2−[(4−t−オクチルフェノキシ)エトキシ]エチルモルフォリンクロリド、ラウリルピリジニウムクロリド、ラウリル(トリ−p−トリル)ホスホニウムクロリド、ラウリルフェニルシクロテトラメチレンホフホニウムブロミド、セチルピリジウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、(ポリオキシエチレン)ラウリルアミン、などの陽イオン性界面活性剤、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸、N−ラウロイルサルコシン、タウロコール酸などの陰イオン性界面活性剤、CHAPS、CHAPSO、N,N−ビス(オクチルアミノエチル)グリシン、N−カルボキシメチル−N−(ステアリルオキシメチル)ピリジウムベタイン、N−パルミチルスルホタウリン、ラウリルジメチルアミンオキシド、N−(ラウリルチオエトキシ)メチル−N,N−ジメチルベタインなどの両性界面活性剤が使用できる。
【0054】
本発明の別のホルムアルデヒド測定用試薬キットは、グルタチオンおよび本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素に加えて、チオNAD類およびチオNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物、並びに還元型NAD類および還元型NADP類からなる群より選ばれる1つの化合物をさらに含有してなるか、あるいは、還元型チオNAD類および還元型チオNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物、並びにNAD類およびNADP類からなる群より選ばれる1つの化合物をさらに含有してなる。
【0055】
これらの試薬キットによれば、上記のサイクリング反応によるホルムアルデヒドの高感度測定を簡便に実施することが可能である。NAD類、NADP類、チオNAD類、チオNADP類としては、それぞれ上述のようなものを用いることができる。また、当該試薬キットには、サイクリング反応により生成する酸化型補酵素を還元型に再生する、上述のような酵素およびその基質をさらに含有させることもできる。
【0056】
本発明のホルムアルデヒド測定用試薬キットは、上記の各試薬成分を、それぞれ単独で保存することもできるし、あるいは2以上の成分を同一の試薬中に保存することもできる。したがって、本発明の試薬キットは、上記の全ての試薬成分を含有してなる単一の試薬組成物であってもよい。しかしながら、互いに干渉を与える成分が存在するか、または単一の保存条件で安定性の確保が難しい成分が存在する場合には、構成成分を分割して保存することが好ましい。
【0057】
本発明は、上記のホルムアルデヒド測定用の試薬成分に加えて、更にクレアチンアミジノハイドロラーゼ、サルコシンオキシダーゼおよび必要に応じてクレアチニンアミドハイドロラーゼを含有してなる、クレアチニンまたはクレアチン測定用試薬キットを提供する。これらの酵素としては、上述したようなものを適宜利用可能である。
【0058】
また、別の本発明は、上記のホルムアルデヒド測定用の試薬成分に加えて、更にベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、ジメチルグリシンオキシダーゼを少なくとも含有してなる、ホモシステイン測定用試薬キットを提供する。これらの酵素および基質としては、それぞれ上述したようなものを好ましく使用することができる。
【0059】
しかしながら、測定に供される試料が生体試料、特に血漿や尿の場合、含有されるホモシステインは、大部分がアルブミンのような循環蛋白質と結合した状態、あるいはシステインや他のホモシステイン分子のような遊離アミノ酸とのジスルフィド結合体の状態で存在する。従って、総ホモシステインを測定する際には、予め試料を還元剤や酵素反応により処理し、遊離ホモシステインを生成させることが必要となる。
【0060】
この場合に用いられる還元剤としては、例えばチオール類、水素化ホウ素類、アマルガム、ホスフィンやホスホチオエートなどを例示することができる。具体的には、チオール類としてはジチオスレイトール、ジチオエリスリトール、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトメチルアミン、システイン、シスタミン、システインチオグリコレート、チオグリコール酸、還元型グルタチオンなど、水素化ホウ素類としては水素化ホウ素ナトリウムなど、アマルガムとしてはナトリウムアマルガムなどが挙げられる。
【0061】
しかしながら、本発明において使用される酵素が該チオール化合物により活性阻害を受けた場合、試薬性能の低下を引き起こす可能性が考えられるが、チオール化合物に影響を受けないジメチルグリシンオキシダーゼはこれまでに報告されておらず、本発明によって初めて単離精製されたものである。
【0062】
従って、本発明は、チオール化合物に対して安定な新規ジメチルグリシンオキシダーゼを提供する。このようなチオール化合物としては、ジチオスレイトール、ジチオエリスリトール、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトエタンスルホン酸、2−メルカプトエチルアミン、システイン、ホモシステイン、N−アセチルシステイン、チオグリセロール、チオグリコール酸、還元型グルタチオンまたはこれらの塩から選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0063】
ここで「チオール化合物に対して安定」とは、試料中の総ホモシステインをすべて遊離型に還元するのに必要な量のチオール化合物の存在下において、ホモシステインの正確な測定に影響を与えない程度に酵素活性が保持され得ることをいう。好ましくは、本発明のジメチルグリシンオキシダーゼは、ジチオスレイトール非存在下に対し、0.05mmol/Lジチオスレイトール存在下で、少なくとも50%酵素活性が保持されるものである。
【0064】
より好ましくは、本発明のジメチルグリシンオキシダーゼは、さらに下記の理化学的性質を有する酵素である。
(a) 作用:酸素の存在下にジメチルグリシンに作用して,サルコシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素を生成する。
(b) ジメチルグリシンに対するKm値:15mM以下
【0065】
本発明のジメチルグリシンオキシダーゼは、上記のチオール化合物に対する安定性を有する限りその由来は特に制限されないが、好ましくはアルスロバクター属またはストレプトマイセス属等の微生物由来であり、特に好ましくは、アルスロバクター・ニコチアナエIFO14234株またはストレプトマイセス・ミュータビリスIFO12800株由来のものが挙げられる。IFO14234株およびIFO12800株は、いずれも財団法人発酵研究所(〒532−8686日本国大阪市淀川区十三本町2−17−85)より入手可能である。
【0066】
また、本発明のジメチルグリシンオキシダーゼは、ランダムにもしくは部位特異的に変異を誘発することにより、上記のチオール化合物に対する耐性を保持する範囲で、比活性や安定性を向上させるなどの酵素特性の改良をもたらすように遺伝的に改変されたものであってもよい。
【0067】
本発明のジメチルグリシンオキシダーゼは、該酵素を産生する細胞または組織の培養物を原料として単離精製する方法、あるいは当該酵素蛋白質をコードする遺伝子を常法によって単離し、遺伝子組換え技術を用いて適当な宿主中で発現させる方法によって取得することができる。前者の好ましい一実施態様として、以下の方法が例示される。
【0068】
まず、上記のいずれかのジメチルグリシンオキシダーゼ生産菌、例えば、アルスロバクター・ニコチアナエIFO14234株またはストレプトマイセス・ミュータビリスIFO12800株などを栄養培地中で培養する。使用する栄養培地としては、使用菌株が資化しうる炭素源、窒素源、無機物、その他必要な栄養素を適量含有するものであれば、合成培地、天然培地のいずれも使用できる。炭素源としては、例えばリンゴ酸、コハク酸等が使用される。窒素源としては、例えばペプトン類、肉エキス、酵母エキス等の窒素含有天然物や、塩化アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の無機窒素含有化合物が使用される。無機物としては、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等が使用される。
【0069】
培養は通常、振盪培養あるいは通気撹拌培養により行う。培養温度は約20〜約40℃、好ましくは約25〜約37℃である。培養pHは約5〜約9、好ましくは約6〜約8の範囲に制御するのが良い。しかしながら、使用する菌株が生育し得る限り、これら以外の条件下で実施することもできる。培養期間は通常、約1〜約7日であり、ジメチルグリシンオキシダーゼは通常、菌体内に生産蓄積される。
【0070】
本発明のジメチルグリシンオキシダーゼの精製は、一般に使用される精製法を用いて行うことができる。例えば、菌体を回収後、超音波破砕、ガラスビーズを用いる機械的な破砕、フレンチプレス、界面活性化剤による溶解などにより、菌体内画分を抽出することができる。得られた抽出液を、硫安やぼう硝などによる塩析法、塩化マグネシウムや塩化カルシウムなどによる金属凝集法、プロタミンやポリエチレンイミンなどを用いた凝集法、さらにはDEAE(ジエチルアミノエチル)−セファロース、CM(カルボキシメチル)−セファロースなどによるイオン交換クロマト法などに付すことにより、ジメチルグリシンオキシダーゼを精製することができる。
【0071】
本発明はまた、上記の本発明のジメチルグリシンオキシダーゼを用いたホモシステインの測定方法を提供する。当該方法は、ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素および本発明のジメチルグリシンオキシダーゼを試料に作用させて、試料中に含まれるホモシステインをサルコシン、過酸化水素およびホルムアルデヒドに分解し、これらの生成物のいずれかを分析することを特徴とする。
【0072】
ベタインおよびベタイン−ホモシステインメチル転移酵素は、それぞれ上述のものが好ましく使用され得る。
【0073】
ジメチルグリシンオキシダーゼは、下式に示すように、酸素の存在下にジメチルグリシンをサルコシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素に分解する。
【0074】
【数2】
Figure 0004029609
【0075】
したがって、反応中の酸素消費量を計測するか、あるいは過酸化水素センサーを用いて、または直接もしくはペルオキシダーゼ存在下に酸化還元指示薬を用いて、過酸化水素の生成量を計測することにより、ジメチルグリシンを測定することができる。あるいは、生成したホルムアルデヒドを、Hanz試薬、ホルムアルデヒド脱水素酵素、ホルムアルデヒドオキシダーゼ等を用いて、紫外部もしくは可視部の吸光度、あるいは蛍光を計測することにより間接的に測定することができる。例えば、ホルムアルデヒド脱水素酵素によりNADより生成する還元型NAD(NADH)は、ジアホラーゼやメチルフェナジウムメチルスルフェートのような電子伝達体の存在下で、テトラゾリウム塩を還元してホルマザン色素を生じるので、これを測定することによりホモシステインを定量することができる。
【0076】
更に、サルコシンオキシダーゼ(EC 1.5.3.1)を追加して加えると、サルコシンはグリシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素に分解されるので、ホルムアルデヒドまたは過酸化水素を感度的に倍加して測定することができる。また、更にホルムアルデヒドオキシダーゼを作用させてホルムアルデヒドを過酸化水素に分解することにより、感度をさらに向上させることができる。
【0077】
サルコシンオキシダーゼは、上述のように、各種動物や、アルスロバクター属、ペニシリウム属、バチルス属等の微生物などから採取することが可能である。また、市販の酵素を使用することもできる。
【0078】
また、上記酵素は、それぞれの酵素蛋白質をコードする遺伝子を生産菌から単離し、遺伝子工学的技術により発現させた酵素であってもよい。更に、例えば酵素蛋白質の比活性や安定性を向上させるなど、酵素特性の改良をもたらすように遺伝子を改変したものも含まれる。
【0079】
ジメチルグリシンオキシダーゼにより(場合によっては、さらにサルコシンオキシダーゼおよびホルムアルデヒドオキシダーゼにより)生成する過酸化水素は、紫外部の吸光度を直接測定するか、カタラーゼと酸化チタン試薬(Agric. Biol. Chem., 38, 1213 (1974))により比色定量分析を行うか、あるいは過マンガン酸カリウムを用いて滴定定量するなどにより分析することが可能であるが、高感度測定のためには、ペルオキシダーゼ存在下、酸化系発色試薬及び、必要に応じて4−アミノアンチピリンや3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンなどのカップラーと反応させ、生成する色素を測定することにより定量することが好ましい。使用する発色試薬は特に制限されるものではなく、各種の市販されているものなどを使用することができるが、具体例としてN−エチル−N−スルホプロピル−m−アニシジン、N−エチル−N−スルホプロピル−アニリン、N−メチル−N−スルホプロピル−アニリン、N−ブチル−N−スルホプロピル−アニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン、N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−スルホプロピル−m−トルイジン、N−エチル−N−スルホプロピル−o−トルイジン、N−エチル−N−スルホプロピル−p−トルイジン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−アニシジン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジン、N−スルホプロピルアニリン、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、2,4−ジクロロフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、N−(3−スルホプロピル)3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、N,N,N’,N’,N”,N”−ヘキサ(3−スルホプロピル)−4,4’,4”−トリアミノトリフェニルメタンなどが挙げられる。また、過酸化水素は直接、またはカタラーゼ共存下で酸素の消費をセンサーを用いてモニタリングすることでも測定することができる。
【0080】
ジメチルグリシンオキシダーゼにより生成するサルコシンは、サルコシンオキシダーゼを作用させることにより生成するホルムアルデヒドまたは過酸化水素を上述方法により分析できる他、電子伝達体、発色色素の存在下でサルコシン脱水素酵素を作用させ、生成する色素を測定することでも分析することが可能である。電子伝達体としては、ジアホラーゼやメチルフェナジウムメチルスルフェート、メチレンブルー、フェリシアン化カリウムなどが例示される。また、色素としてはテトラゾリウム塩、インドフェノールなどが挙げられる。また、サルコシン脱水素酵素は哺乳動物やシュードモナス属微生物などから直接、もしくは該酵素の遺伝子を遺伝子工学的手法で作製した組換え体より採取可能である。
【0081】
ジメチルグリシンオキシダーゼにより(場合によっては、さらにサルコシンオキシダーゼにより)生成するホルムアルデヒドは、好ましくは、グルタチオン、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素および酸化型補酵素、および必要に応じて当該酸化型酵素とは異なる種類の還元型補酵素を試料に作用させて、生成もしくは消費され化合物を分析することにより測定することができる。
【0082】
グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素としては、本発明において新たに取得された上述の酵素を用いることが最も好ましいが、哺乳動物、高等植物、メタノール資化性酵母、細菌などに由来する従来公知の酵素も同様に使用することができる。例えば、市販品である、キャンジダ(Candida)属酵母由来の酵素などを使用することができる。具体的には、シグマ製FORMALDEHYDE DEHYDROGENASE (Glutathione dependent)等が挙げられる。
【0083】
該酵素は酵素蛋白質をコードする遺伝子を生産菌から単離し、遺伝子工学的技術により発現させたものであっても良く、更には、例えば酵素比活性や安定性を向上させるなど、酵素特性を改変した変異体や化学修飾酵素も含まれる。
【0084】
補酵素としては、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(NAD類)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸類(NADP類)、チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド類(チオNAD類)またはチオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸類(チオNADP類)が挙げられ、NAD類またはNADP類は、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素が補酵素として利用できるものを適宜使用すれば良いが、公知のものではNAD類として、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、アセチルピリジンアデニンジヌクレオチド、アセチルピリジンアデニンヒポキサンチンジヌクレオチド、ニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチドなどが、NADP類としてはニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、アセチルピリジンアデニンジヌクレオチドリン酸、アセチルピリジンアデニンヒポキサンチンジヌクレオチドリン酸、ニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチドリン酸などが例示される。また、チオNAD類またはチオNADP類においても、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素が補酵素として利用可能なものを適宜使用可能であるが、公知のものとして、チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、チオニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチド、チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸、チオニコチンアミドヒポキサンチンジヌクレオチドリン酸などが具体例として挙げられる。
【0085】
従来公知のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を用いた場合のホルムアルデヒドの測定方法としては、本発明の新規グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素について上述したもののうち、サイクリング反応を介した測定法を除くいかなる手段も同様に用いることができる。
【0086】
ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、本発明のジメチルグリシンオキシダーゼおよびグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素を用いた本発明の測定方法によれば、試料中の濃度が1μmol/L以下の微量のホモシステインの検出が可能となる。
【0087】
本発明はまた、上記のホモシステインの測定方法に使用するための試薬キットを提供する。本発明のホモシステイン測定用試薬キットは、緩衝液、ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、チオール化合物に対して安定な本発明のジメチルグリシンオキシダーゼ、およびこれらの酵素反応により生成するホルムアルデヒド、サルコシンまたは過酸化水素の少なくとも1種を分析するための試薬を含有してなる。さらにサルコシンオキシダーゼを含んでいてもよい。ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、サルコシンオキシダーゼに関しては、上述したようなものが好ましいが、特に限定はされない。ここで酵素反応により生成するホルムアルデヒド、サルコシン、または過酸化水素を分析するための試薬とは、具体的には上述したような原理に基づくものが挙げられる。即ち、ホルムアルデヒドを分析するための試薬としては、ホルムアルデヒド脱水素酵素、ホルムアルデヒドオキシダーゼ、Hanz試薬、CTA試薬(J. Biol. Chem., 231, 813 (1958))、Purpald試薬(Anal. Biochem., 234(1), 50 (1996))やフェニルヒドラジン、フェリアン化カリウム、クロロホルム、メタノールを組み合わせた試薬などがある。過酸化水素を分析するための試薬としては、ペルオキシダーゼ、酸化系発色試薬及び、必要に応じて4−アミノアンチピリンや3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンなどのカップラー、カタラーゼ、酸化チタン試薬、過マンガン酸カリウムなどがある。また、サルコシンを分析するための試薬としては、サルコシンオキシダーゼおよび該酵素反応により生成するホルムアルデヒド、過酸化水素を分析するための上記試薬、サルコシン脱水素酵素、電子伝達体、発色色素などがある。
【0088】
特に好ましい態様においては、本発明のホモシステイン測定用試薬キットは、緩衝液、ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、チオール化合物に対して安定な本発明のジメチルグリシンオキシダーゼ、グルタチオン、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素および該グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素が利用し得る酸化型補酵素を含有してなる。必要に応じてサルコシンオキシダーゼをさらに含むことができる。ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素および酸化型補酵素としては、上述のものが好ましく使用できる。また、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素として、本発明において新たに得られた酵素を使用し、サイクリング反応を介してホルムアルデヒドを測定する場合には、該試薬キットは、上記酸化型補酵素とは異なる種類の還元型補酵素をさらに含むことが好ましい。
【0089】
緩衝液としては、トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、GOOD緩衝液など、上記のホルムアルデヒド測定用試薬キット中に含まれる緩衝液として例示されたものが同様に使用可能である。緩衝液の種類、濃度およびpHは、各試薬成分の保存および酵素反応など目的に応じて一種もしくは複数が選択されるが、いずれの緩衝液を用いるに際しても、酵素反応時のpHとしては5.0〜10.0の範囲で使用されることが好ましい。
【0090】
また、本発明のホモシステイン測定用試薬キットを構成する試薬には、上記のホルムアルデヒド測定用試薬キットを構成する試薬の安定化剤として例示された、各種の金属塩、蛋白質、アミノ酸、糖、有機酸などを同様に含有させることができる。さらに、試薬性能に悪影響を及ぼさない範囲で上述のような防腐剤や界面活性剤を添加してもよい。
【0091】
本発明のホモシステイン測定用試薬キットは、上記の各試薬成分を、それぞれ単独で保存することもできるし、あるいは2以上の成分を同一の試薬中に保存することもできる。したがって、本発明の試薬キットは、上記の全ての試薬成分を含有してなる単一の試薬組成物であってもよい。しかしながら、互いに干渉を与える成分が存在するか、または単一の保存条件で安定性の確保が難しい成分が存在する場合には、構成成分を分割して保存することが好ましい。
【0092】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
実施例1 グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素の取得
本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素の活性測定は以下の試薬及び測定条件にて行った。
〈試薬〉
試薬A 100mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)
試薬B 10mM 酸化型NAD水溶液
試薬C 20mM ホルムアルデヒド水溶液
試薬D 20mM グルタチオン水溶液
〈測定条件〉
試薬A、試薬B、試薬Cおよび試薬Dを各2.1ml、0.3ml、0.3ml、0.3mlの割合で混合し、試薬混液を作成する。この試薬混液3mlを37℃で約5分間予備加温した後、0.1mlの酵素溶液を加えて混和し、37℃で4分間反応させる。この時、340nmにおける1分間当たりの吸光度変化を測定する。盲検は酵素溶液の代わりに蒸留水を試薬混液に加えて、以下同様に吸光度変化を測定する。上記条件にて1分間に1マイクロモルの過酸化水素を生成する酵素量を1単位(U)とする。
【0094】
メタノール資化性酵母ハンゼヌラ・ノンファーメンタンスIFO1473株を60mlのYPD培地(1% D−グルコース、1% ポリペプトン、1% 酵母エキス;pH5.0)に一白金耳植菌し、30℃、24時間振とう培養後、6Lのグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素生産培地(2% メタノール、0.5% D−グルコース、1% ポリペプトン、1.6% 酵母エキス、0.2% リン酸水素二カリウム、0.7% リン酸二水素一カリウム)に移し、30℃、48時間通気攪拌培養した。培養終了後、培養液を遠心分離し、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁した。次いで、菌体をガラスビーズで破砕し、遠心分離を行って上清液を得た。得られた酵素液をポリエチレンイミンによる除核酸処理および硫安分画後、セファデックスG−25による脱塩処理、DEAEセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびスーパーデックス200ゲル濾過クロマトグラフィーにより分離精製し、精製酵素標品約90mgを得た。該方法により得た標品は電気泳動(SDS−PAGE)的に単一なバンドを示し、この時の比活性は約250U/mg蛋白質であった。
【0095】
また、上記方法で得たグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素の酵素活性を、試薬Bの酸化型NADの代わりに酸化型チオNADを用いた以外は上記活性測定条件と同じ条件で測定した結果、この酵素の酸化型チオNADに対する反応性は、酸化型NADに対するそれの61%であった。
【0096】
一方、比較例として、市販のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(Candida boidinii由来;SIGMA社製)の酵素活性を、同様に測定した結果、当該酵素の酸化型チオNADに対する反応性は、酸化型NADに対するそれの22%であった。
【0097】
実施例2 ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素の取得
本発明のベタイン−ホモシステインメチル転移酵素の活性測定は以下の試薬及び測定条件で行った。
〈試薬〉
試薬A 50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)
試薬B 100mM DL−ホモシステイン溶液(試薬Aで溶解)
試薬C 100mM ベタイン(試薬Aで溶解)
試薬D 0.2% ペンタシアノアンミン鉄(III)ナトリウム水溶液
試薬E 酢酸
試薬F 10% 亜硝酸ナトリウム水溶液
〈測定条件〉
酵素溶液2.3mlに試薬B、試薬Cを各0.075ml、0.125mlを加えて混和後、37℃で1時間反応させる。反応終了後、直ちに試薬Dを5ml加えて攪拌し、一分間放置後、更に試薬E、試薬Fの順に各1mlずつ加えて攪拌する。室温で30分間放置後520nmにおける吸光度を測定する。試薬Aに溶解したL−メチオニンを酵素溶液の代わりに用いて同様の手順にて測定した吸光度より標準曲線を作成し、これから酵素反応により生成したメチオニンの量を測定する。上記条件にて1時間に1マイクロモルのメチオニンを生成する酵素量を1単位(U)とする。
【0098】
遺伝子の塩基配列が公知であるヒト由来のベタイン−ホモシステインメチル転移酵素(J. Biol. Chem., 271(37), 22831 (1998))をコードする遺伝子の全長を増幅可能な2種のプライマー(配列表の配列番号1および2に記載)を作成し、これを用いてヒト肝臓cDNA(クロンテック製)を鋳型として、ポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)法によりヒト由来のベタイン−ホモシステインメチル転移酵素をコードするDNA断片を増幅した。PCRは以下に示す反応液組成及び反応条件にて実施した。
〈反応液組成〉
KODPlus DNAポリメラーゼ(東洋紡績製) 1U/50μl
10倍濃度添付バッファー 5μl/50μl
鋳型cDNA 1.5μg/50μl
dATP、dTTP、dGTPおよびdCTP 各0.2mM
プライマー 各25pmol/50μl
〈反応条件;下記(2)〜(4)を計30サイクル実施した〉
(1)95℃、2分間 (変性)
(2)95℃、30秒間(変性)
(3)60℃、30秒間(アニーリング)
(4)68℃、1分間 (伸長反応)
【0099】
PCR反応後、反応液の一部をアガロースゲル電気泳動に供し、約1.2Kbpの単一の増幅バンドを確認した。この増幅断片をDNA断片精製キット(MagExtractor PCR&Gel Clean Up;東洋紡績製)を用いて回収した後、このDNA断片をNdeIおよびBamHI制限酵素にて処理した。次いで、pET11aプラスミド(ストラタジーン製)をNdeIおよびBamHI制限酵素で処理し、これを上記DNA断片とT4 DNAリガーゼ(東洋紡績製)を用いて連結した。これを用いてEpicurian Coli BL21 (DE3)-CodonPlusTM-RIL コンピテントセル(ストラタジーン製)を形質転換し、アンピシリンを含むLB寒天培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% NaCl、100μg/ml アンピシリン;pH7.2)に塗布し、37℃で16時間培養した。
【0100】
得られたコロニーは、アンピシリンを含むLB培地60mlで30℃、16時間振とう培養後、塩化亜鉛およびアンピシリンを含む2×YT培地(1.6% ポリペプトン、1% 酵母エキス、0.5% NaCl、34μg/ml 塩化亜鉛、100mg/ml アンピシリン;pH7.2)6Lに接種し、37℃で通気攪拌培養した。約2.5時間後、培養液の600nmの吸光度が約1.0に達した時点で、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシドを1mMになるように添加し、更に4時間培養を行った。培養終了後、培養液を遠心分離し、菌体を5mM 2−メルカプトエタノール、1mM EDTAを含む20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁した。次いで、菌体をフレンチプレスで破砕し、遠心分離を行って上清液を得た。得られた酵素液をポリエチレンイミンによる除核酸処理後、セファデックスG−25による脱塩処理、DEAEセファロースクロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、スーパーデックス200ゲル濾過クロマトグラフィーにより分離精製し、精製酵素標品約50mgを得た。該方法により得た標品は電気泳動(SDS−PAGE)的に単一なバンドを示し、この時の比活性は約2.1U/mg−蛋白質であった。
【0101】
実施例3 ジメチルグリシンオキシダーゼの取得
本発明のジメチルグリシンオキシダーゼの活性測定は以下の試薬及び測定条件により行った。
〈試薬〉
試薬A 100mM ジメチルグリシン溶液
(100mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.5)で溶解)
試薬B 0.1% 4−アミノアンチピリン水溶液
試薬C 0.1% フェノール水溶液
試薬D 25U/ml ペルオキシダーゼ(東洋紡績製;PEO−301)水溶液
〈測定条件〉
試薬A、試薬B、試薬Cおよび試薬Dを各1.5ml、0.3ml、0.6ml、0.6mlの割合で混合し、試薬混液を作成する。この試薬混液3mlを37℃で約5分間予備加温した後、0.1mlの酵素溶液を加えて混和し、37℃で4分間反応させる。この時、500nmにおける1分間当たりの吸光度変化を測定する。盲検は酵素溶液の代わりに蒸留水を試薬混液に加えて、以下同様に吸光度変化を測定する。上記条件にて1分間に1マイクロモルの過酸化水素を生成する酵素量を1単位(U)とする。
【0102】
(1)アルスロバクター・ニコチアナエIFO14234株からの単離
アルスロバクター・ニコチアナエIFO14234株を60mlのLB培地(1% ポリペプトン、0.5% 酵母エキス、0.5% NaCl;pH7.2)に一白金耳植菌し、30℃、16時間振とう培養後、6Lのジメチルグリシンオキシダーゼ生産培地(2% ベタイン、1% ポリペプトン、1.6% 酵母エキス、1.4% リン酸水素二カリウム、0.55% リン酸二水素一カリウム)に移し、30℃、40時間通気攪拌培養した。培養終了後、培養液を遠心分離し、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁した。次いで、菌体をガラスビーズで破砕し、遠心分離を行って上清液を得た。得られた酵素液をポリエチレンイミンによる除核酸処理および硫安分画後、セファデックスG−25による脱塩処理、DEAEセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、スーパーデックス200ゲル濾過クロマトグラフィーにより分離精製し、精製酵素標品約110mgを得た。該方法により得た標品は電気泳動(SDS−PAGE)的に単一なバンドを示し、この時の比活性は約9.3U/mg蛋白質であった。
【0103】
また、上記方法で得たジメチルグリシンオキシダーゼの酵素活性を、0.05mmol/L ジチオスレイトール存在下で測定した以外は上記活性測定条件と同じ条件で測定した結果、その活性値はジチオスレイトール非存在下と比べて71%であった。
【0104】
(2)ストレプトマイセス・ミュータビリスIFO12800株からの単離
ストレプトマイセス・ミュータビリスIFO12800株を、60mlのジメチルグリシン生産培地(2% ベタイン、1% ポリペプトン、1.6% 酵母エキス、1.4% リン酸ニ水素カリウム、0.55% リン酸水素ニカリウム)に一白金耳接種し、30℃、72時間振とう培養した。培養終了後、培養液を遠心分離し、回収した菌体を20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁した。次いで、菌体をガラスビーズで破砕し、遠心分離を行い、得られた抽出液をセファデックスG−25により脱塩処理した。
【0105】
また、上記抽出液について、ジメチルグリシンオキシダーゼの酵素活性を、0.05mmol/L ジチオスレイトール存在下で測定した以外は上記活性測定条件と同じ条件で測定した結果、その活性値はジチオスレイトール非存在下と比べて98%であった。
【0106】
さらに、上記2種のジメチルグリシンオキシダーゼのジメチルグリシンに対するK値を測定した結果、アルスロバクター・ニコチアナエIFO14234株由来の酵素は13.6mM、ストレプトマイセス・ミュータビリスIFO12800株由来の酵素は14.3mMであった。
【0107】
実施例4 ホルムアルデヒド標準液の測定(1)
本実施例で使用するS−ホルミルグルタチオンハイドロラーゼの活性測定はBiochimica. et Biophysica Acta, 614 81-91 (1980)に記載の方法に、また、ギ酸脱水素酵素の酵素活性はEur. J. Biochem., Feb 2;62(1), 151-160 (1976)に記載の方法にそれぞれ従って実施した。
【0108】
本実施例で使用するS−ホルミルグルタチオンハイドロラーゼは以下にようにして取得した。
メタノール資化性酵母キャンジダ・ボイディニイ(Candida boidinii)IFO1473株を60mlのYPD培地(1% D−グルコース、1% ポリペプトン、1% 酵母エキス;pH5.0)に一白金耳植菌し、30℃、24時間振とう培養後、6LのS−ホルミルグルタチオンハイドロラーゼ生産培地(2% メタノール、0.5% D−グルコース、1% ポリペプトン、1.6% 酵母エキス、0.2% リン酸水素二カリウム、0.7% リン酸二水素一カリウム)に移し、30℃、48時間通気攪拌培養した。培養終了後、培養液を遠心分離し、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に懸濁した。次いで、菌体をガラスビーズで破砕した後、遠心分離を行って上清液を得た。得られた酵素液をポリエチレンイミンによる除核酸処理および硫安分画後、セファデックスG−25による脱塩処理、DEAEセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびスーパーデックス200ゲル濾過クロマトグラフィーにより分離精製し、精製酵素標品約10mgを得た。該方法により得た標品は電気泳動(SDS−PAGE)的にほぼ単一なバンドを示し、この時の比活性は約900U/mg蛋白質であった。
【0109】
種々の濃度のホルムアルデヒド水溶液10μLを試料とし、これを100U/ml グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(実施例1で調製)、1mM 酸化型NAD、3mM グルタチオン、5U/ml S−ホルミルグルタチオンハイドロラーゼ(上記で調製したもの)、5U/ml ギ酸脱水素酵素(シグマ製)をそれぞれ含む50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)300μlと混合し、37℃で10分間反応させ、340nmの吸光度を測定した。盲検はホルムアルデヒド水溶液の代わりに蒸留水を試薬混液に加えて、以下同様に吸光度変化を測定した。反応終了時の吸光度と試料のホルムアルデヒド濃度の関係は表1および図1に示す通りであり、ホルムアルデヒド濃度が0〜500μMの範囲において直線性を示し、定量が可能であった。
なお、この測定系はサイクリング法ではない。
【0110】
【表1】
Figure 0004029609
【0111】
実施例5 ホルムアルデヒド標準液の測定(2)
種々の濃度のホルムアルデヒド水溶液10μLを試料とし、これを100U/ml グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(実施例1で調製)、1mM 酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、0.5mM 還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、3mM グルタチオン、0.1% トリトンX−100をそれぞれ含む50mM HEPES緩衝液(pH8.0)300μlと混合し、37℃で5分間サイクリング反応を実施し、405nmの吸光度を測定した。盲検はホルムアルデヒド水溶液の代わりに蒸留水を試薬混液に加えて、以下同様に吸光度変化を測定した。反応開始後1分後と5分後の吸光度の増加と、試料中のホルムアルデヒド濃度の関係は表2および図2に示す通りであり、ホルムアルデヒド濃度が0〜50μMの範囲において直線性を示し、定量が可能であった。
【0112】
【表2】
Figure 0004029609
【0113】
さらに、表2および図2からは、サイクリング法において1μmol/Lのホルムアルデヒドが測定できていることがわかる。
【0114】
実施例6 クレアチニン標準液の測定
種々の濃度のクレアチニン水溶液5μLを試料とし、これを100U/ml クレアチニンアミドハイドロラーゼ(東洋紡績製;CNH−311)、50U/ml クレアチンアミジノハイドロラーゼ(東洋紡績製;CRH−221)、10U/ml サルコシンオキシダーゼ(東洋紡績製;SAO−341)、0.1% トリトンX−100をそれぞれ含む50mM HEPES緩衝液(pH8.0)200μlと混合し、37℃で5分間反応させた後、300U/ml グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(実施例1で調製)、3mM 酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、1.5mM 還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、9mM グルタチオン、0.1% トリトンX−100をそれぞれ含む50mM HEPES緩衝液(pH8.0)100μlを加え、37℃で5分間サイクリング反応を実施し、405nmの吸光度を測定した。盲検はクレアチニン水溶液の代わりに蒸留水を試薬混液に加えて、以下同様に吸光度変化を測定した。反応開始後1分後と5分後の吸光度の増加と、試料中のクレアチニン濃度の関係は表3および図3に示す通りであり、クレアチニン濃度が0〜100μMの範囲において直線性を示し、定量が可能であった。
【0115】
【表3】
Figure 0004029609
【0116】
さらに、表3および図3からは、サイクリング法において10μmol/Lのクレアチニンが測定できていることがわかる。
【0117】
実施例7 ホモシステイン標準液の測定
ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素およびジメチルグリシンオキシダーゼは、それぞれ実施例2および実施例3(1)で取得したものを使用した。また、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素およびジメチルグリシンオキシダーゼの活性測定は、それぞれ実施例2および実施例3と同様にして行った。
【0118】
種々の濃度のL−ホモシスチン水溶液を、0.5mM ジチオスレイトール中で、37℃、30分間加温して生成したL−ホモシステイン10μLを試料とし、これを20mM ベタイン、1U/ml ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素(上記で調製したもの)、7U/ml ジメチルグリシンオキシダーゼ(上記で調製したもの)、5U/ml サルコシンオキシダーゼ(東洋紡績製;SAO−341)をそれぞれ含む20mM PIPES緩衝液(pH7.3)200μlと混合し、37℃で5分間反応させた後、300U/ml グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素(実施例1で調製)、3mM 酸化型チオニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、1.5mM 還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、9mM グルタチオン、0.1% トリトンX−100をそれぞれ含む50mM HEPES緩衝液(pH8.2)100μlを加え、37℃で5分間サイクリング反応を実施し、405nmの吸光度を測定した。盲検はL−ホモシステイン溶液の代わりに0.5mM ジチオスレイトールを試薬混液に加えて、以下同様に吸光度変化を測定した。反応開始後1分後と5分後の吸光度の増加と、試料中のホモシステイン濃度の関係は表4および図4に示す通りであり、ホモシステイン濃度が0〜100μMの範囲において直線性を示し、定量が可能であった。
【0119】
【表4】
Figure 0004029609
【0120】
さらに、表4および図4からは、サイクリング法において1μmol/Lのホモシステインが測定できていることがわかる。
【0121】
【発明の効果】
本発明のグルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素はサイクリング反応が可能であるため、従来よりも高感度なホルムアルデヒドの測定が可能である。従って、当該酵素を用いたホルムアルデヒドの測定は、測定系における反応中間体としてホルムアルデヒドを生成させる、ホモシステイン、クレアチニン、クレアチン等の生体成分の臨床検査に好適に適用できる点で極めて有用である。一方、本発明のジメチルグリシンオキシダーゼはチオール化合物に対して安定であるため、ホモシステインの多くが蛋白質や他のアミノ酸とジスルフィド結合した状態で存在する、血液や尿などのような生体試料における総ホモシステインの測定に好適に使用することができ、より試薬性能に優れたホモシステイン定量試薬を提供できる点で有用である。
【0122】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1
ヒトベタイン−ホモシステインメチル転移酵素cDNAを増幅するためのPCRプライマーとして機能すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号2
ヒトベタイン−ホモシステインメチル転移酵素cDNAを増幅するためのPCRプライマーとして機能すべく設計されたオリゴヌクレオチド。
【0123】
【配列表】
Figure 0004029609
Figure 0004029609

【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4における、吸光度とホルムアルデヒド濃度との関係を示すグラフである。
【図2】実施例5における、吸光度とホルムアルデヒド濃度との関係を示すグラフである。
【図3】実施例6における、吸光度とクレアチニン濃度との関係を示すグラフである。
【図4】実施例7における、吸光度とホモシステイン濃度との関係を示すグラフである。

Claims (11)

  1. 以下の理化学的性質を有する、アルスロバクター・ニコチアナエIFO14234株由来の、チオール化合物に対して安定なジメチルグリシンオキシダーゼ。
    (a) 作用:酸素の存在下にジメチルグリシンに作用して、サルコシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素を生成する。
    (b) ジチオスレイトール非存在下に対し、0.05mmol/Lジチオスレイトール存在下で、71%酵素活性が保持される。
    (c) ジメチルグリシンに対するK値:13.6
  2. 以下の理化学的性質を有する、ストレプトマイセス・ミュータビリスIFO12800株由来の、チオール化合物に対して安定なジメチルグリシンオキシダーゼ。
    (a) 作用:酸素の存在下にジメチルグリシンに作用して、サルコシン、ホルムアルデヒドおよび過酸化水素を生成する。
    (b) ジチオスレイトール非存在下に対し、0.05mmol/Lジチオスレイトール存在下で、98%酵素活性が保持される。
    (c) ジメチルグリシンに対するK 値:14.3mM
  3. ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、請求項1または2記載のジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼを試料に接触させ、該酵素反応により生成した過酸化水素を、ペルオキシダーゼ存在下、酸化系発色試薬および必要に応じてカップラーと反応させ、生成する色素を測定することを特徴とする、ホモシステインの測定方法。
  4. ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、請求項1または2記載のジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼを試料に接触させ、該酵素反応により生成したホルムアルデヒドを、ホルムアルデヒド脱水素酵素および酸化型補酵素と反応させ、生成する還元型補酵素を測定することを特徴とする、ホモシステインの測定方法。
  5. ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、請求項1または2記載のジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼを試料に接触させ、該酵素反応により生成したホルムアルデヒドを、グルタチオン、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素および酸化型補酵素と反応させ、生成する還元型補酵素を測定することを特徴とする、ホモシステインの測定方法。
  6. ホモシステインの最低検出感度が1μmol/L以下である、請求項3〜5のいずれかに記載のホモシステインの測定方法。
  7. 緩衝液、ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、請求項1または2記載のジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼ、並びに該酵素反応により生成した過酸化水素を測定するための試薬を含有してなることを特徴とする、ホモシステイン測定用試薬キット。
  8. 過酸化水素を測定するための試薬として、ペルオキシダーゼ、酸化系発色試薬および必要に応じてカップラーを含有することを特徴とする、請求項記載のホモシステイン測定用試薬キット。
  9. 緩衝液、ベタイン、ベタイン−ホモシステインメチル転移酵素、請求項1または2記載のジメチルグリシンオキシダーゼおよび必要に応じてサルコシンオキシダーゼ、並びに該酵素反応により生成したホルムアルデヒドを測定するための試薬を含有してなることを特徴とする、ホモシステイン測定用試薬キット。
  10. ホルムアルデヒドを測定するための試薬として、ホルムアルデヒド脱水素酵素および酸化型補酵素を含有することを特徴とする、請求項記載のホモシステイン測定用試薬キット。
  11. ホルムアルデヒドを測定するための試薬として、グルタチオン、グルタチオン依存性ホルムアルデヒド脱水素酵素および酸化型補酵素を含有することを特徴とする、請求項記載のホモシステイン測定用試薬キット。
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