本発明は、ビデオカメラ等の光学機器におけるレンズ制御に関するものである。
民生用のレンズ一体型カメラでは、小型化や、被写体からできるだけ近い位置での撮影を可能とする等の要請がある。このため、補正レンズと変倍レンズをカムで機械的に連動させるのではなく、補正レンズの移動軌跡を予めマイクロコンピュータ内にレンズカムデータとして記憶させておき、このレンズカムデータにしたがって補正レンズを駆動し、さらにこの補正レンズによってフォーカスも合わせる、いわゆるインナーフォーカスタイプのレンズが主流になってきている。
図7は、従来のインナーフォーカスタイプレンズシステムの構成を示す図である。同図において、901は固定されている前玉レンズ、902は変倍を行なうためのズームレンズ(バリエータレンズともいう:第1レンズユニット)、903は絞り、904は固定されている固定レンズ、905は焦点調節機能と変倍による像面の移動を補正する機能(いわゆるコンペンセータ機能)とを兼ね備えた補正レンズとしてのフォーカスレンズ(第2レンズユニット)である。また、906は撮像面である。
図7のように構成されたレンズシステムでは、フォーカスレンズ905がコンペンセータ機能と焦点調節機能とを兼ね備えているため、焦点距離が等しくても、撮像面906に合焦するためのフォーカスレンズ905の位置は、被写体距離によって異なる。各焦点距離において被写体距離を変化させたとき、被写体像を撮像面906上に合焦させるためのフォーカスレンズ905の位置を連続してプロットすると、図8のようになる。変倍中は、図8に示された複数の軌跡の中から、被写体距離に応じた軌跡を選択し、選択した軌跡通りにフォーカスレンズ905を移動させれば、合焦状態を維持したままの変倍(ズーム)が可能になる。
なお、前玉レンズでフォーカスを行うタイプのレンズシステムでは、ズームレンズに対して独立したフォーカスレンズが設けられており、さらにはズームレンズとフォーカスレンズとがカム環に機械的に結合されている。従って、例えばカム環を手動で回転させて焦点距離を変えようとした場合、カム環をいくら速く動かしても、カム環はこれに追従して回転する。ズームレンズとフォーカスレンズはカム環に形成されたカムに沿って光軸方向に移動するので、フォーカスレンズが合焦位置にあれば、変倍によって像がぼけることはない。
これに対し、インナーフォーカスタイプのレンズシステムにおいては、図8に示した複数の軌跡(電子カム軌跡とも称される)情報又はこれに対応する情報(すなわち、軌跡そのものを示す情報でもレンズ位置を変数とした関数でもよい)を記憶しておき、フォーカスレンズとズームレンズの位置に基づいて軌跡を選択して、この選択した軌跡上をたどりながらズーミングを行うのが一般的である。
ただし、ズームレンズがテレからワイド方向に移動する場合には、図8から明らかなように複数の軌跡がある程度の間隔を持った状態から収束する方向であるので、上述した軌跡追従方法でも合焦は維持できる。しかしながら、ワイドからテレ方向では、収束点にいたフォーカスレンズがどの軌跡をたどるべきかが判らない(ワイド側では無限遠から数10cmまで同じフォーカス位置が合焦ポイントとなる)ので、同様な軌跡追従方法では合焦を維持できない。
そこで、特許文献1には、TV−AF方式で映像信号の高周波成分から得られるAF評価値信号(鮮鋭度信号)を用いて、ズームレンズの移動(変倍)の際に、フォーカスレンズを合焦位置よりピントをずらすように強制的に移動させ、さらにフォーカスレンズを合焦方向に向かうように切換え移動させる(軌跡に対する追従速度を変化させる)制御を繰り返し行う制御方法(ジグザグ動作)が開示されている。これにより、追従軌跡が補正される。また、特許文献1には、被写体や焦点距離、被写界深度に応じて追従速度の変化量を変化させることにより、鮮鋭度信号の増減周期を変化させ、追従軌跡の選択(特定)精度向上を図った手法も開示されている。
特許第2795439号公報(特許請求の範囲、図3,図4およびその説明)
上記特許文献1にて開示されているジグザグ動作では、AF評価値の変化に基づいて追従軌跡を特定する。しかしながら、AF評価値は像のぼけ状態によって変化するだけでなく、被写体の絵柄変化によっても変化する。このため、フォーカスレンズの移動方向を切り換える際に誤った方向に切り換わってしまう場合がある。そして、本来の追従すべき軌跡から外れてしまうと、再び正しい軌跡に戻るまでに像ぼけが発生することになる。また、フォーカスレンズレンズの移動方向を間違った場合において、特にAF評価値レベルが大きく低下するような像ぼけ状態が発生したり、低コントラストの被写体を撮影しているときには、正しい軌跡を見つけることができず、像ぼけを引きずったままテレ端まで行き着くという現象も発生する可能性がある。
特に、カム軌跡の間隔が詰まっているワイド側からズーミングを開始する際、ジグザグ駆動による駆動開始方向が、特定すべきカム軌跡(合焦軌跡)の方向と逆方向となってしまうと、合焦軌跡からの位置ずれ量が小さくても、ワイド側では焦点深度が浅いため、像ぼけが目に付きやすい。さらに、前述したように無限から数10cmまでの被写体が同一フォーカス位置で合焦状態となるワイド側において、被写体距離の異なる複数の物体がワイド画角内に存在すると、これらの被写体の像が同時にぼけてしまい、画像の品位がきわめて悪くなる。
本発明は、高速ズームにおいても、確実に合焦状態を維持しつつ、撮影シーンやカメラワークに左右されることなく高品位なズーミングが行えるレンズ制御装置、光学機器およびレンズ制御方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は、変倍用の第1レンズユニットの移動に際して、像面移動を補正するために第2レンズユニットの移動を制御するレンズ制御装置であって、所定の合焦距離に対して作成された前記第1レンズユニットの位置に応じた前記第2レンズユニットの位置を示すデータを記憶した記憶手段と、前記第1レンズユニットおよび第2レンズユニットを含む光学系により形成された光学像の光電変換信号に基づく前記光学系の合焦状態を表す焦点信号を取得する取得手段と、前記第2レンズユニットの移動目標位置を示す第1の情報に基づいて前記第2レンズユニットの移動を制御する制御手段と、合焦対象物までの距離に対応する第2の情報を検出する距離検出手段とを有する。そして、前記制御手段は、変倍動作中に、前記データと前記焦点信号に応じて前記第1の情報を生成する際、前記第2の情報に基づいて前記第2レンズユニットの移動動作に重み付けを行う。
また、本発明は、変倍用の第1レンズユニットの移動に際して、像面移動を補正するために第2レンズユニットの移動を制御するレンズ制御方法であって、前記第1レンズユニットおよび第2レンズユニットを含む光学系により形成された光学像の光電変換信号に基づく前記光学系の合焦状態を表す焦点信号を取得する取得ステップと、前記第2レンズユニットの移動目標位置を示す第1の情報に基づいて前記第2レンズユニットの移動を制御する制御ステップと、合焦対象物までの距離に対応する第2の情報を検出するステップとを有する。そして、前記制御ステップにおいて、変倍動作中に、記憶手段に記憶された所定の合焦距離に対して作成された前記第1レンズユニットの位置と前記第2レンズユニットの位置とを示すデータと前記焦点信号に応じて前記第1の情報を生成する際、前記第2の情報に基づいて前記第2レンズユニットの移動動作に重み付けを行う。
ここで、上記重み付けとしては、第2レンズユニットの駆動方向や駆動速度に関する重み付けや、前記第2レンズユニットをその駆動条件(駆動速度や駆動方向等)を切り換えながら駆動する場合の該駆動条件を切り換えるための条件(焦点信号に基づいて第2レンズユニットの駆動条件を切り換えながら駆動する場合の該焦点信号の条件)に関する重み付けが挙げられる。
また、上記第1の情報は、第1レンズユニットに対する第2レンズユニットの位置を表す軌跡情報若しくは該軌跡を特定するためのパラメタであってもよいし、第2レンズユニットを駆動すべき位置情報であってもよい。
本発明によれば、上記第1の情報(軌跡情報等)生成のために第2レンズユニットの駆動を制御する際に、検出した合焦対象物までの距離に対応する第2の情報に基づいた重み付けを行うので、像ぼけが大きくなるような第2レンズユニットの駆動を抑制することができる。
例えば、上記第1の情報生成のための第2レンズユニットの駆動方向に関して上記第2の情報に基づく重み付けを行うようにすれば、第2レンズユニットの像ぼけが大きくなる方向への駆動を回避できる。
また、上記第1の情報生成のための第2レンズユニットの駆動速度に関して上記第2の情報に基づく重み付けを行うようにすれば、像ぼけを小さくする方向に速く駆動することができる。
さらに、上記第1の情報を生成するために第2レンズユニットをその駆動条件を切り換えながら駆動する場合に、該駆動条件を切り換えるための条件に関して上記第2の情報に基づく重み付けを行うようにすれば、該第2の情報に応じて第2レンズユニットの駆動条件の切り換えを行うことができ、迅速に上記情報を生成することができる。
以上のように、本発明によれば、上記第1の情報生成に際しての第2レンズユニットの駆動制御に合焦対象物までの距離に対応する第2の情報に応じた重み付けをすることができ、像ぼけの発生を抑制しつつ、迅速かつ円滑な情報生成が可能となる。その結果、合焦対象物に対して確実に合焦を維持(第1レンズユニットによる変倍に追従)することができる。
そして、本発明を、第1および第2レンズユニットを含む光学系により形成された光学像の光電変換信号から得られる上記光学系の焦点状態を表す焦点信号を用いて上記情報を生成する際(例えば、再生成処理)における第2レンズユニットの駆動制御や、いわゆるジグザク動作における第2レンズユニットの駆動条件切換えの条件の設定に対して適用することにより、焦点信号が距離変化だけでなく合焦対象物の絵柄の変化でも影響を受けて第2レンズユニットが駆動され、像ぼけが目立つといった問題を回避することができる。
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
(前提技術)
まず本発明の実施例の説明に先立って、本発明の前提となる技術について説明する。
図9は、インナーフォーカスタイプのレンズシステムにおけるフォーカスレンズの軌跡追従方法の一例を説明するための図である。
図9において、Z0,Z1,Z2,・・Z6はズームレンズの位置を示しており、a0,a1,a2,・・a6 およびb0,b1,b2,・・b6 は、不図示のマイクロコンピュータに予め記憶されている被写体距離に応じたフォーカスレンズの位置である。これらのフォーカスレンズ位置の集まり(a0,a1,a2,・・a6およびb0,b1,b2,・・b6)が、代表的な被写体距離ごとのフォーカスレンズが追従すべき合焦軌跡(代表軌跡)となる。
また、p0,p1,p2,・・p6は、上記2つの代表軌跡を基に算出された、フォーカスレンズが追従すべき合焦軌跡上の位置である。この合焦軌跡上の位置の算出式を以下に示す。
p(n+1)
=|p(n)-a(n)|/|b(n)-a(n)|×|b(n+1)-a(n+1)|+a(n+1) …(1)
上記(1)式によれば、例えば図9においてフォーカスレンズがp0にある場合、p0が線分b0−a0を内分する比を求め、 この比に従って線分b1−a1を内分する点をp1とする。このp1−p0の位置差と、ズームレンズがZ0〜Z1まで移動するのに要する時間から、合焦を保つためのフォーカスレンズの移動速度が分かる。
次に、ズームレンズの停止位置が、記憶された代表軌跡データを有するズームエリアの境界上のみという制限がないとした場合について説明する。図10はズームレンズの移動方向の内挿方法を説明するための図であり、図9の一部を抽出してズームレンズの位置を任意としたものである。
図10において、縦軸はフォーカスレンズの位置、横軸はズームレンズの位置を示している。マイクロコンピュータで記憶している代表軌跡上のフォーカスレンズ位置を、ズームレンズの位置を Z0,Z1,・・Zk−1,Zk・・Znとしたとき、フォーカスレンズ位置を被写体距離別に、
a0,a1,・・ak−1,ak・・an
b0,b1,・・bk−1,bk・・bn
としている。
今、ズームレンズ位置がズームエリア境界上でないZxにあり、フォーカスレンズ位置がpxである場合にax,bxを求めると、
ax=ak−(Zk−Zx)×(ak−ak−1)/(Zk−Zk−1) …(2)
bx=bk−(Zk−Zx)×(bk−bk−1)/(Zk−Zk−1) …(3)
となる。つまり現在のズームレンズ位置とそれを挟む2つのズームエリア境界位置(例えば、図10におけるZkとZk−1)とから得られる内分比に従い、記憶している4つの代表軌跡データ(図11でのak,ak−1,bk,bk−1)のうち同一被写体距離のものを上述の内分比で内分することにより、ax,bxを求めることができる。
そして、 ax,px,bxから得られる内分比に従い、予め記憶されている上記4つの代表データのうち、同一焦点距離のものを(1)式のように上述の内分比で内分することにより、pk,pk−1を求めることができる。
そして、ワイドからテレへのズーム時には、追従移動先のフォーカス位置pk および現在のフォーカス位置pxの差と、ズームレンズがZx〜Zk まで移動するのに要する時間とから、合焦を保つために必要なフォーカスレンズの移動速度が分かる。
また、テレからワイドへのズーム時には、 追従移動先のフォーカス位置pk−1および現在のフォーカス位置px の差と、ズームレンズがZx〜Zk−1まで移動するのに要する時間とから、合焦を保つためのフォーカスレンズの移動速度が分かる。
このとき、マイクロコンピュータ内に予め記憶されている合焦軌跡情報のテーブルデータの例を図11に示す。図11は、ズームレンズ位置により変化する、被写体距離別のフォーカスレンズ位置データA(n,v)を示している。 変数nの列方向に被写体距離、変数vの行方向にズームレンズ位置(焦点距離)が変化している。ここでは、n=0が無限遠の被写体距離を表し、nが大きくなるに従って被写体距離は最至近距離側に変化する。n=mは1cmの被写体距離を示している。
一方、v=0はワイド端を表す。さらに、vが大きくなるに従って焦点距離が増し、v=sがテレ端のズームレンズ位置を表している。従って、1列のテーブルデータで1本の代表軌跡が描かれることになる。
次に、前述したように、ワイドからテレ方向におけるズーミング時にフォーカスレンズがどの軌跡をたどるべきかが判らなくなる問題を解消するための軌跡追従方法について説明する。
図12(A),(B)において、横軸は変倍レンズの位置を示している。また、図12(A)において、縦軸はTV−AF方式により撮像信号から得られるAF評価信号を示す。このAF評価信号は、撮像信号の高周波成分(鮮鋭度信号)のレベルを示している。また、図12(B)において、縦軸はフォーカスレンズの位置を示している。図12(B)において、ある距離に位置する被写体に対して合焦を得ながらズーミングを行う際にフォーカスレンズがた辿るべきカム軌跡(フォーカスレンズ位置の集まり)が1304であるとする。
ここで、ズームレンズの位置1306(Z14)よりもワイド側での合焦軌跡追従のための標準移動速度を正(フォーカスレンズ至近方向に移動)、位置1306よりもテレ側でフォーカスレンズが無限遠方向に移動する際の合焦軌跡追従のための標準移動速度を負とする。合焦を維持しながらフォーカスレンズが目標軌跡1304を辿るときに、AF評価信号の大きさは、図12(A)に1301で示すレベルとなる。一般に、合焦を維持したズーミングでは、 AF評価信号レベルはほぼ一定値となる。
図12(B)において、ズーミング時に、目標軌跡1304をトレースするフォーカスレンズの標準移動速度をVf0とする。実際のフォーカスレンズの移動速度をVf とし、該移動速度Vf を標準移動速度をVf0 に対して大小させながらズーミングすると、その軌跡は1305のようにジグザグな軌跡となる(以下、これを「ジクザク補正動作」という)。
このとき、AF評価信号レベルは、図12(A)に1303で示すように、山と谷を生ずるように変化する。ここで、目標軌跡1304と実際のジグサグな軌跡1305が交わる位置でAF評価信号レベル1303は最大レベル1301となり( Z0,Z1,Z2,・・Z16の偶数のポイント)、実際の軌跡1305の移動方向ベクトルが切り換わる Z0,Z1,Z2,・・Z16の奇数のポイントでAF評価信号レベル1303は最小レベル1302となる。
そして、逆に、AF評価信号レベル1303の最小レベル1302の値TH1を予め設定し(すなわち、合焦とみなせる最小レベルTH1のAF評価信号を下限とする合焦許容範囲を設定し)、AF評価信号レベル1303の大きさがTH1と等しくなる毎に、軌跡1305の移動方向ベクトルを切り換えれば、切り換え後のフォーカスレンズの移動方向は、目標軌跡1304に近づく方向に設定できる。つまり、AF評価信号の最大レベル1301と最小レベル1302(TH1)の差分だけ像がぼける毎に、該ぼけを減らすようにフォーカスレンズの駆動条件である駆動方向および駆動速度を制御することで、ぼけ量の発生を抑制したズーミングが行える。
このような手法を用いることにより、図8に示したように、被写体距離別の合焦軌跡が収束から発散していくワイドからテレへのズーミングにおいて、仮に合焦を維持する標準移動速度Vf0がそのときの被写体距離に対して最適でなくとも、標準移動速度((1)式より求まるp(n+1) を使って算出する)に対して、フォーカスレンズの移動速度Vf を制御しながら、AF評価信号レベルの変化に従って軌跡1305で示すような切り換え動作を繰り返すことにより、AF評価信号レベルが最小レベル1302(TH1)より下がらない、つまり一定量以上のぼけを生じず、合焦軌跡の再特定(再生成)が行える。また、TH1を適切に設定することにより、見た目には像ぼけが判らないズーミングが可能である。
ここで、フォーカスレンズの移動速度Vf は、標準移動速度に対して加える正方向の補正速度をVf+、負方向の補正速度をVf−とすると、
Vf =Vf0+Vf+ …(4)
又は、
Vf =Vf0+Vf− …(5)
となる。このとき、補正速度Vf+,Vf−は、上記ズーミング手法による追従軌跡の選択時に片寄りが生じないように、(4),(5)式により得られるVf の2つの方向ベクトルの内角が、Vf0の方向ベクトルにより2等分されるように決定される。
以上説明してきたズーミング制御は、撮像素子からの撮像信号を用いて焦点検出を行う関係から、映像の垂直同期信号に同期して処理が行われるのが一般的である。
図6は、マイクロコンピュータ内で行われるズーミング制御のフローチャートである。ステップ(図ではSと記す)701で処理が開始されると、S702で初期設定が行われる。初期設定では、マイクロコンピュータ内のRAMや各種ポートの初期化を行う。
S703では、カメラ本体の操作系の状態を検出する。マイクロコンピュータは、ここで撮影者が操作するズームスイッチユニットの情報を受け取り、撮影者にズーミング実行中を知らせるための、ズームレンズ位置などの変倍動作情報をディスプレイに表示する。
S704では、AF処理を行う。すなわちAF評価信号の変化に応じて自動焦点調節処理を行う。
S705では、ズーミング処理を行う。すなわち変倍に際して合焦を維持するためのコンペセータ動作の処理を行う。具体的には、図9に示す軌跡をほぼトレースするために、フォーカスレンズの標準駆動方向および標準駆動速度を算出を行う。
S706では、AFやズーミングに際して、S704からS705の処理ルーチンで算出されるズームレンズやフォーカスレンズの駆動方向や駆動速度のうちいずれを使用するかを選択し、ズームレンズやフォーカスレンズを、それぞれがメカ端に当たらないようにソフト的に設けている制御上のテレ端およびワイド端の間または制御上の至近端および無限端の間で駆動するルーチンである。
S707では、S706で定めたズームおよびフォーカス用の駆動方向情報、駆動速度情報に応じて、モータドライバに制御信号を出力し、レンズの駆動/停止を制御する。S707の処理終了後はS703に戻る。
なお、図6に示した一連の処理は、垂直同期信号に同期して実行される(S703の処理の中で次の垂直同期信号が入力されるまで待機する)。
図3〜図5には、1垂直同期時間に1回、マイクロコンピュータ内で実行される制御フローを示しており、図6のS705で実行される処理の内容を詳細に示している。
以下、図3〜図5、さらには図9を用いて説明を行う。
図3のS400では、ズームスイッチユニットの操作情報に応じて、自然な変倍動作が行えるようズームモータの駆動速度Zspを設定する。
S401では、現在のズームレンズおよびフォーカスレンズの位置から、撮影している被写体までの距離(被写体距離)を特定(推定)し、その被写体距離情報を3つの軌跡パラメタ(情報)α、β、γとしてRAMなどのメモリ領域に記憶する。ここでは、図4に示した処理が行われる。なお、以下、説明を簡単にするために、現在のレンズ位置にて合焦状態が維持されているものとして図4に示した処理を説明する。
図4のS501では、現在のズームレンズ位置Zx が、図11に示したデータテーブル上で、ワイド端からテレ端までをs等分したうちの何番目のズームエリアvに存在するのかを算出する。その算出方法を図5を用いて説明する。
S601では、ズームエリア変数vをクリアする。S602では、次に示す(6)式に従って、ズームエリアvの境界上のズームレンズ位置Z(v)を算出する。このZ(v)は、図9で示したズームレンズ位置Z0,Z1,Z2,・・に相当する。
Z(v)=(テレ端ズームレンズ位置−ワイド端ズームレンズ位置)×v/s
+ワイド端ズームレンズ位置 …(6)
S603では、S602で求めたZ(v) が現在のズームレンズ位置Zx と等しいかどうか判別する。等しければ、ズームレンズ位置Zx はズームエリアvの境界上に位置するとして、S607で境界フラグに1を立てる。
S603で等しくなければ、S604で、Zx <Z(v)かどうかを判別する。 S604がYesならば、Zx はZ(v−1)とZ(v)との間にあることになり、S606で境界フラグを0とする。S604でNoならば、S605でズームエリアvをインクリメントしてS602に戻る。
以上の処理を繰り返し行うことにより、図5のフローを抜けるときには、現在のズームレンズ位置Zx が、図11のデータテーブル上におけるv=k番目のズームエリアに存在し、さらにZx がズームエリア境界上か否かを知ることができる。
図4に戻って、S501で図5の処理により現在のズームエリアが定まったので、以下の処理ではフォーカスレンズが図11のデータテーブル上のどこに位置するのかを算出する。
まず、S502では、被写体距離変数nをクリアし、S503では、現在のズームレンズ位置がズームエリアの境界上に存在しているかどうかを判別する。境界フラグが0ならば境界上にいないとしてS505からの処理に進む。
S505では、Zk にZ(v)をセットし、またZk−1にZ(v−1)をセットする。次に、S506では、4つのテーブルデータA(n,v−1)、A(n,v)、A(n+1,v−1)、A(n+1,v)を読み出し、S507で、上述した(2),(3)式からax,bx を算出する。
一方、S503で境界フラグが1と判断された場合は、S504で、被写体距離nでのズームレンズ位置(ここではvとなる )に対する合焦位置A(n,v)および被写体距離n+1でのズームレンズ位置に対するA(n+1,v)を呼び出し、それぞれをax,bx としてメモリする。
S508では、現在のフォーカスレンズ位置pxがax 以上であるかを判別する。ax 以上であるときは、S509で現在のフォーカスレンズ位置px がbx 以上か否かを判別する。bx 以上でないときは、フォーカスレンズ位置px は被写体距離nとn+1の間にあることになり、このときの軌跡パラメタをS513からS515でメモリに格納する。S513では、α=px−ax とし、 S514でβ=bx−ax、S515でγ=nとする。
S508でNoとなるのは、フォーカスレンズ位置px が超無限遠位置である場合である。このとき、S512で、α=0としてS514からの処理へ進み、無限遠の軌跡パラメタを記憶する。
S509でYesとなる場合は、フォーカスレンズ位置px がより至近側である場合であり、この場合、S510で被写体距離nをインクリメントして、S511でnが最至近距離に対応した位置mより無限遠側であるかを判別する。最至近距離位置mより無限遠側であればS503へ戻る。S511でNoとなる場合は、フォーカスレンズ位置px が超至近位置である場合で、このときS512からの処理へ進むことにより、最至近距離に対する軌跡パラメタをメモリする。
図3に戻って説明を続ける。前述したようにS401では、現在のズームレンズ位置およびフォーカスレンズ位置が図8に示したどの軌跡上の位置なのかを知るための軌跡パラメタの記憶を行った。
そして、S402では、1垂直同期時間(1V)後にズームレンズが到達しているズームレンズ位置(現在位置からの移動先の位置)Zx’を算出する。 ここで、S400で決定されたズーム速度をZsp (pps) とすると、1垂直同期時間後のズームレンズ位置Zx’は以下の(7)式で与えられる。ppsは、ステッピングモータの回転速度を表す単位で、1秒間当たりの回転するステップ量(1ステップ=1パルス)を示している。また、(7)式の符号は、ズームレンズの移動方向によってそれぞれ、テレ方向は+、ワイド方向は−としている。
Zx’=Zx±Zsp/垂直同期周波数 …(7)
次に、Zx’がどのズームエリアv’に存在するのかをS403で決定する。 S403では、図5の処理と同様の処理を行い、図5におけるZxをZx’に、vをv’に置き換えたものである。
次にS404で、1垂直同期時間後のズームレンズ位置Zx’ がズームエリアの境界上に存在しているかどうかを判別し、境界フラグ=0ならば境界上ではないとして、S405からの処理に進む。
S405では、Zk←Z(v’),Zk−1←Z(v’−1)と設定する。次に、S406では、図4の処理により被写体距離γが特定された4つのテーブルデータA(γ,v’−1)、A(γ,v’)、A(γ+1,v’−1)、A(γ+1,v’)を読み出し、S407で上述した(2),(3)式からax’,bx’を算出する。一方、S404でYesと判断された場合は、S408で、被写体距離γでのズームエリアv’に対する合焦位置A(γ,v’)、および被写体距離γ+1でのズームエリアv’に対する合焦位置A(γ+1,v’)を呼び出し、それぞれをax’,bx’としてメモリする。
そして、S409では、ズームレンズ位置がZx’ に達したときのフォーカスレンズの合焦位置(目標位置)px’ を算出する。(1)式を用いて、1垂直同期時間後の追従目標位置は(8)式のように表せる。
px’=(bx’−ax’)×α/β+ax’ …(8)
したがって、追従目標位置と現在のフォーカスレンズ位置との差ΔFは、
ΔF=(bx’−ax’)×α/β+ax’−px
となる。
次に、S410では、フォーカス標準移動速度Vf0を算出する。Vf0はフォーカスレンズ位置差ΔFを、この距離を移動するのに要するズームレンズの移動時間で除算して得られる。
以下、図12(B)に示したフォーカスレンズの移動速度補正(ジグザグ動作)を行うための補正速度の算出方法を説明する。
S411では、各種パラメタの初期値化を行い、以後の処理で用いる「反転フラグ」のクリアを行う。S412では、S410で得たフォーカス標準移動速度Vf0から、「ジグザグ補正動作」用の補正速度Vf+,Vf−を算出する。
ここで、補正量パラメタδおよび補正速度Vf+,Vf−は以下のように算出される。図13は、補正量パラメタδに応じた補正速度Vf+,Vf−の計算方法を説明するための図である。図13では、横軸にズームレンズ位置を、縦軸にフォーカスレンズ位置を示している。1304は追従すべき目標軌跡である。
今、ズームレンズ位置がxだけ変化するとき、フォーカスレンズ位置がy変化する(すなわち、目標位置に到達する)フォーカス速度が1403で算出された標準速度Vf0であり、ズームレンズ位置がx変化するときフォーカスレンズ位置が、変位yを基準としてn又はmだけ変化するフォーカス速度がそれぞれ、求めたい補正速度Vf+,Vf−である。ここで、変位yよりさらに至近側に駆動する速度(標準速度Vf0に正方向の補正速度Vf+を加算した速度)の方向ベクトル1401と、変位yより無限遠側に駆動する速度(標準速度Vf0に負方向の補正速度Vf−を加算した速度)の方向ベクトル1402とが、標準速度Vf0の方向ベクトル1403に対して等しい角度δだけ離れた方向ベクトルを持つようにn,mを決定する。
まずm,nを求める。図13より図形的に、
tanθ=y/x , tan(θ-δ) = (y-m)/x ,tan(θ+δ) = (y+n)/x …(9)
また、
tan(θ±δ) = (tanθ±tanδ)/{1±(-1)×tanθ×tanδ) …(10)
が成り立つ。
そして、(9),(10)式より、
m= (x 2 +y 2 )/(x/k+y) …(11)
n= (x 2 +y 2 )/(x/k-y) …(12)
但し、tanδ=k
となり、n,mを算出できる。
ここで補正角度δは、被写界深度の深さや、焦点距離等をパラメタとした変数としている。これにより、フォーカスレンズの駆動状態に応じて変化するAF評価信号レベルの増減周期を、所定のフォーカスレンズ位置変化量に対して一定に保つことができ、ズーミング中にフォーカスレンズが追従すべき合焦軌跡を見逃す可能性を低減することが可能となる。
δの値に応じてマイクロコンピュータのメモリ内に、データテーブルとしてkの値を記憶し、必要に応じて読み出すことにより、(11),(12)式の計算を行う。
ここで、ズームレンズ位置が単位時間当たりx変化する場合、
ズーム速度Zsp=x
フォーカス標準速度Vf0=y
補正速度Vf+=n,Vf−=m
となり、(11),(12)式により、補正速度Vf+,Vf−(負の速度)が得られる。
S413では、図6のS703で得られたズームスイッチユニットの操作状態を示す情報に応じて、ズーミング中かどうかを判断する。ズーミング中であれば、S416からの処理を行う。ズーミング中でなければ、S414でAF評価信号レベルの現在値から任意の定数μを減算した値をTH1とする。このTH1は、図12(A)で説明した、補正方向のベクトルの切換基準(ジグザグ補正動作の切換基準)となるAF評価信号レベルが決定される。このTH1はズーミング開始直前に決まることになり、この値が図12(A)の1302の最小レベルに対応する。
次に、S415では、補正フラグをクリアし、本処理を抜ける。ここで、補正フラグとは、軌跡追従状態が正方向の補正がかかった状態(補正フラグ=1)なのか、負方向の補正状態(補正フラグ=0)であるのかを示すフラグである。
S413でズーミング中と判断されると、S414でズーミング方向がワイドからテレ方向であるか否か判別を行う。テレからワイド方向であればS419でVf+=0,Vf−=0とし、S420からの処理を行う。ワイドからテレ方向であれば、S417で現在のAF評価信号レベルが、TH1より小さいか否かを判別する。TH1以上であればS420へ進み、TH1より小さければ、現在のAF評価信号レベルが図12(A)のTH1(1302)のレベルを下回ったので、補正方向の切り換えを行うため、S418で反転フラグに1をセットする。
S420では、反転フラグが1かどうかを判別し、反転フラグ=1であればS421で補正フラグが1かどうかを判別する。S421で補正フラグ=1でなければ、S424で補正フラグ=1(正方向の補正状態)とし、さらに(4)式により、
フォーカスレンズの移動速度Vf=Vf0+Vf+(但し、Vf+≧0)
とする。
一方、S421で補正フラグ=1であれば、S423で補正フラグ=0(負方向の補正状態)とし、(5)式により、
フォーカスレンズの移動速度Vf=Vf0+Vf−(但し、Vf−≦0)
とする。
また、S420で反転フラグが1でなければ、S422で補正フラグ=1かどうかを判別する。補正フラグ=1であればS424へ、そうでなければS423へ進む。
本処理の終了後、図6に示すS706で、動作モードに応じて、フォーカスレンズおよびズームレンズの駆動方向と駆動速度が選択される。ズーミング動作の場合、ここではS423またはS424で求めたフォーカスレンズ移動速度Vf が正であるのか負であるのかにより、フォーカスレンズの駆動方向がそれぞれ、至近方向、無限遠方向に設定される。このようにフォーカスレンズのジグザグ駆動を行いながら、トレースすべき軌跡の再特定を行うよう動作する。
以上が本発明の前提技術であり、以下、本発明の実施例について前提技術との差異を中心に説明する。
図1には、本発明の実施例であるレンズ制御装置を搭載した撮像装置(光学機器)としてのビデオカメラの構成を示す。なお、本実施例は、撮影レンズ一体型の撮像装置に本発明を適用した例を説明するが、本発明は、交換レンズとこれが装着されるカメラ本体とを有する撮像システムの交換レンズ(光学機器)にも適用できる。この場合、カメラ本体側から送信された信号に応答してレンズ内のマイクロコンピュータが以下に説明するズーミング動作を行う。また、本発明は、ビデオカメラに限らず、デジタルスチルカメラ等、各種の撮像装置に適用できる。
図1において、物体側から順に、101は固定されている前玉レンズユニット101、102は光軸方向に移動して変倍を行うズームレンズユニット(第1レンズユニット)、103は絞り、104は固定されている固定レンズユニット、105は焦点調節機能と変倍による像面移動を補正するコンペセータ機能とを兼ね備え、光軸方向に移動するフォーカスレンズユニット(第2レンズユニット)である。これらレンズユニットにより構成される撮影光学系は、物体側(図の左側)から順に、正、負、正、正の光学パワーを有する4つのレンズユニットで構成されたリアフォーカス光学系である。なお、図中には、各レンズユニットが1枚のレンズにより構成されているように記載されているが、実際には、1枚のレンズにより構成されていてもよいし、複数枚のレンズにより構成されていてもよい。
106はCCDやCMOSセンサにより構成される撮像素子である。撮影光学系を通ってきた物体からの光束はこの撮像素子106上に結像する。撮像素子106は、結像した物体像を光電変換して撮像信号を出力する。撮像信号は、増幅器(AGC)107で最適なレベルに増幅されてカメラ信号処理回路108へと入力される。カメラ信号処理回路108は、入力された撮像信号を標準テレビ信号に変換した後、増幅器110に出力する。増幅器110で最適レベルに増幅されたテレビ信号は、磁気記録再生装置111に出力され、ここで磁気テープ等の磁気記録媒体に記録される。記録媒体としては、半導体メモリや光ディスク等、他のものを用いてもよい。
また、増幅器110で増幅されたテレビ信号は、LCD表示回路114にも送られ、LCD115に撮影画像として表示される。なお、LCD115には、撮影モードや撮影状態、警告等を撮影者に知らせる画像も表示される。このような画像は、カメラマイクロコンピュータ116がキャラクタジェネレータ113を制御して、ここからの出力信号をLCD表示回路114でテレビ信号にミックスすることで、撮影画像に重畳して表示される。
一方、カメラ信号処理回路108に入力された撮像信号を、同時に内部メモリを使って圧縮処理した後、カードメディア等の静止画記録媒体112に記録することもできる。
また、カメラ信号処理回路108に入力された撮像信号は、焦点情報生成手段としてのAF信号処理回路109へも入力される。AF信号処理回路109で生成されたAF評価値信号(焦点信号)は、カメラマイクロコンピュータ116との通信によりデータとして読み出される。
また、カメラマイクロコンピュータ116は、ズームスイッチ130およびAFスイッチ131の状態を読み込み、さらにフォトスイッチ134の状態も検出する。
フォトスイッチ134が半押しの状態では、AFによる合焦動作が開始され、合焦状態にてフォーカスロックされる。さらに、全押し(深押し)状態では、合焦非合焦に関わらずフォーカスロックして、カメラ信号処理回路108内のメモリ(不図示)に画像を取り込み、磁気テープや静止画記録媒体112に静止画記録を行う。
なお、カメラマイクロコンピュータ116は、モードスイッチ133の状態に応じて動画撮影モードか静止画撮影モードかを判別し、カメラ信号処理回路108を介して磁気記録再生装置111や静止画記録媒体112を制御する。これにより記録媒体に適したテレビ信号をこれに供給したり、モードスイッチ133が再生モードにセットされている場合には磁気記録再生装置111や静止画記録媒体112からこれらに記録されたテレビ信号の再生制御を行う。
カメラマイクロコンピュータ116内のコンピュータズームユニット(制御手段)119は、AFスイッチ131がオフで、ズームスイッチ130が操作されているときは、コンピュータズームユニット119内のプログラムによってズームモータドライバ122に対し、ズームレンズユニット102をズームスイッチ130の操作されている方向に対応したテレまたはワイド方向に駆動するための信号を出力する。ズームモータドライバ122はこの信号を受けて、ズームモータ121を介してズームレンズユニット102を該方向に駆動する。またこのとき、コンピュータズームユニット119は、カムデータメモリ120に予め記憶されたレンズカムデータ(図8に示したような複数の被写体距離に応じた代表軌跡のデータや軌跡パラメタのデータ)に基づいて、フォーカスモータドライバ126を介してフォーカスモータ125を駆動し、変倍に伴う像面移動を補正するようフォーカスレンズユニット106を駆動する。
また、カメラマイクロコンピュータ116内のAF制御ユニット117は、AFスイッチ131がオンで、ズームスイッチ130が操作されているときは、合焦状態を保ち続けつつ変倍動作を行う必要があるので、コンピュータズームユニット119が、内部プログラムにより、カムデータユニット120に記憶されたレンズカムデータのみならず、AF信号処理回路109から送られてくるAF評価値信号や被写体距離検出回路127からの出力から得られた被写体(合焦対象物)までの距離情報とに基づいて、ズームレンズユニット102およびフォーカスレンズユニット105を駆動する。
なお、被写体距離検出回路127からの出力信号は、カメラマイクロコンピュータ116内の距離情報処理部128で演算処理され、被写体距離情報としてコンピュータズームユニット119に出力される。
また、AFスイッチ131がオンで、ズームスイッチ130が操作されていないときは、AF制御ユニット117は、AF信号処理回路109から送られてきたAF評価値信号が最大になるようにフォーカスレンズ105を駆動するようフォーカスモータドライバ126に信号を出力し、フォーカスモータ125を介してフォーカスレンズレンズユニット105を駆動する。これにより、自動焦点調節動作が行われる。
ここで、被写体距離検出回路127は、アクティブセンサを用いた三角測距方式で被写体までの距離を測定し、その測定結果である距離情報を出力する。この場合のアクティブセンサとしては、コンパクトカメラによく使用される赤外線センサを用いることができる。
なお、本実施形態では三角測距方式で距離検出を行う場合を例として説明するが、本発明における距離検出手段としてはこれ以外のものを用いることができる。例えば、TTL位相差検出方式による距離検出を行ってもよい。この場合、撮影レンズの射出瞳を通ってきた光を分割する素子(ハーフプリズム又はハーフミラー)を設け、該素子から射出した光をサブミラーや結像レンズを介して少なくとも2つのラインセンサへと導き、これらラインセンサの出力の相関を取って、これら出力のずれ方向およびずれ量を検出し、これら検出結果から被写体までの距離を求める。
三角測距および位相差検出方式による距離演算の原理図をそれぞれ図14および15に示す。図14において、201は被写体、202は第1の光路用の結像レンズ、203は第1の光路用のラインセンサ、204は第2の光路用の結像レンズ、205は第2の光路用のラインセンサである。両ラインセンサ203,204は基線長Bだけ離れて設置されている。被写体201からの光のうち、結像レンズ202によって第1の光路を通った光がラインセンサ203上に結像し、結像レンズ204によって第2の光路を通った光がラインセンサ205上に結像する。ここで、第1と第2の光路を通って結像した2つの被写体像を受けたラインセンサ203,205から読み出した信号の例を示したものが図15である。2つのラインセンサは基線長Bだけ離れているため、図15から分かるように、被写体像信号は画素数Xだけずれたものとなる。そこで2つの信号の相関を、画素をずらしながら演算し、相関が最大になる画素ずらし量を求めることでXが演算できる。このXと基線長B、および結像用レンズ202,204の焦点距離fより、三角測量の原理で被写体までの距離Lが、L=B×f/Xにより求められる。
さらに、距離検出手段として、超音波センサを用いてその伝搬速度を測定して被写体までの距離を検出する方法も採用することができる。
被写体距離検出回路127からの距離情報は、距離情報処理部128に送られる。距離情報処理部128では、以下の3種類の処理を行っている。
1.現在のズームレンズユニット102およびフォーカスレンズユニット105の位置が、図8上のどの距離のカム軌跡上の対応するかを算出する。カム軌跡の算出は、例えば、図3の処理S401で説明したように、現在のレンズユニット位置を基に、軌跡パラメタα、β、γなりの、図11の列方向のγ列とγ+1列のカム軌跡をα/βの比率に内分する仮想的なカム軌跡が被写体距離として、何mに相当するのかを出力する。軌跡パラメタα、β、γと、被写体距離とは、所定の相関テーブルデータで変換され、主被写体の実距離が出力できるようになっている。
2.被写体距離検出回路127からの被写体の実距離を、上記1の相関テーブルの逆変換を行うことで、軌跡パラメタα、β、γで表現される図8上のカム軌跡を求める。このとき、相関テーブルの逆変換処理は、図8のカム軌跡が収束しているワイド側のデータは使用せず、軌跡が分散している、出来るだけテレ側のデータを用いて行われ、最も分解能の高い軌跡パラメタが得られるようにしている。
3.上記1.2の実距離差と差分方向を算出する。
これら1,2,3の処理の内、上記2の処理により、被写体距離検出回路127で検出された検出距離に相当するカム軌跡データの特定が行える。
一方、カメラマイコン116は、露出制御も行う。カメラマイコン116は、カメラ信号処理回路108で生成されたテレビ信号の輝度レベルを参照し、輝度レベルが露出に適正となるようアイリスドライバ124を制御してIGメータ123を駆動し、絞り103の開口を制御する。絞り103の開口量は、アイリスエンコーダ129により検出され、絞り103のフィードバック制御が行われる。また、絞り103のみでは適正な露出制御ができない場合には、撮像素子106の露光時間をタイミングジェネレータ(TG)132により制御し、高速シャッターから所謂スローシャッターと呼ばれる長時間露光まで対応する。さらに、低照度下での撮影など露出が不足する際には、増幅器107を通じてテレビ信号のゲインを制御する。
撮影者は、メニュースイッチユニット135を操作することで、撮影条件に適した撮影モードやカメラの機能切換えをマニュアル操作できる。
次に、ズーミング動作時のアルゴリズムを図2Aおよび図2Bを用いて説明する。本実施例では、カメラマイクロコンピュータ116内のコンピュータズームユニット119が、前述した各動作フロー(プログラム)を含めて、以下に説明する動作フローの処理を実行する。なお、図2Aおよび2Bにおいて、同じ丸囲み数字が付された部分は互いにつながっている。
また、本実施例では、被写体距離検出回路127より得られる距離情報(第2の情報)に応じて、追従すべきカム軌跡(第1の情報)を特定(生成)し、ズーミング動作を行う。図3の動作フローは、距離情報を用いて、追従すべきカム軌跡であるズームトラッキングカーブを精度良く特定(生成)しながらズーミング動作する方法の例である。特にこの方法は、ズーミング動作の開始時における像ぼけの低減や、ズーミング中にフォーカスレンズユニット105が合焦カム軌跡から外れた場合の像ぼけのリカバリングに有効である。
図2Aおよび図2Bは、本実施例において、先に説明した図6のS705で行われる処理であり、図3と同様な処理(ステップ)については、同一符号を付して説明を省略する。
S400では、ズーム動作時のズーム速度を決定する。S401では、現在のズームレンズ位置およびフォーカスレンズ位置から、撮影している主被写体が、図8のカム軌跡上でどの位置に相当するのかを決定する。ここでは、図8に示す代表軌跡を離散的データとして記憶しているカム軌跡データテーブル(図11)を基にした補間処理により、仮想的なカム軌跡も含め、現在のズームレンズ、フォーカスレンズ位置が存在しているカム軌跡、つまりは該カム軌跡に対応した被写体距離を3つの軌跡パラメタα、β、γとして算出し、RAMなどのメモリ領域に記憶する。この処理は、先に図4を用いて説明した処理と同じである。
S300では、算出した軌跡パラメタα、β、γを、一旦αnow、βnow、γnowとして保存し、且つ軌跡パラメタα、β、γが、実際の被写体距離(推定距離)では何mになるのかを算出する。軌跡パラメタと推定距離の相関は、予め代表的な被写体距離のカムカーブ形状が均一な範囲で、推定距離と軌跡パラメタとの相関をテーブルデータ化しておき、軌跡パラメタを入力として算出することができる。カムカーブ形状が変化する被写体距離では、別の相関関係を表すルックアップテーブルとし、これらテーブルを複数持つことで、全てのズームレンズ位置およびフォーカスレンズ位置毎に推定距離Bが得られる。
次に、S301では、被写体距離検出回路127からの出力を得る。そして、被写体距離検出回路127の出力が示す撮影被写体までの距離(実距離)Aと、S300で現在のレンズ位置より求めた推定距離Bとを比較し、実距離Aが推定距離Bに比べて近距離側(至近方向)なのか、遠距離側(無限遠方向)なのかを確認する。
次に、S302では、「AF補正フラグ」がセット状態か否かを判別する。セット状態であれば、S303に進み、後述するS311において決定される軌跡パラメタαAF、βAF、γAF をそれぞれ、α、β、γに設定(メモリに格納)する。ここで、軌跡パラメタαAF、βAF、γAF は、フォーカスレンズユニット105のジグザグ動作を行いながらAF評価信号の変化を検出して、図12(A)のピークレベル1301となったときのカム軌跡パラメタである。つまり、ジグザグ動作を行いつつ、AF評価信号のピークレベルが検出されたカム軌跡情報そのものであり、真の合焦カム軌跡とマイコン116が認識したカム軌跡とを表現している。
こうしてS303で更新された軌跡パラメタα、β、γは、AF評価信号に基づいて再特定されたカム軌跡を表し、以下連続するズーミング動作で、繰り返しカム軌跡の再特定を行い続けることで、結果的にフォーカスレンズユニット105に真の合焦カム軌跡をトレース(追従)させることができる。
一方、S302で、「補正フラグ」がクリアであった場合は、S300で既に決定している、被写体距離検出回路127による距離情報を基に特定された軌跡パラメタα、β、γを保持し、該軌跡パラメタα、β、γにより特定されるカム軌跡をトレースするようにフォーカスレンズ105を制御する。
ここで、「補正フラグ」は、後述するAF評価信号によって追従すべきカム軌跡が再特定されたか否かを表すフラグであり、一旦セットされると(追従カム軌跡が再特定されると)、ズーミング方向の切り換えやズーミング動作が停止されない限りクリアされることはない。再特定されたカム軌跡の情報(α、β、γ)は、AF評価信号の検出結果に基づいて連続的に再特定(更新)され、カム軌跡が分散する焦点距離となると、合焦軌跡に特定されることになる。
以下、図3と同様な処理を行う。S402では、1垂直同期時間後にズームレンズ102が到達している位置(現在位置からの移動先の位置)Zx’を算出する。S400で決定されたズーム速度をZsp (pps) とすると、1垂直同期時間後のズームレンズ位置Zx’は前述の(7)式で与えられる。ここで、ppsはズームモータ121であるステッピングモータの回転速度を表す単位で、1秒間当たりの回転ステップ量(1ステップ=1パルス)を示している。(7)式の符号は、ズームレンズ102の移動方向によってそれぞれ、テレ方向なら+、ワイド方向なら−としている。
Zx’=Zx±Zsp/垂直同期周波数 …(7)
次に、S403で、Zx’がどのズームエリアv’に存在するのかを判別する。S403は、図5に示した処理と同様な処理であり、図5におけるZx をZx’にvをv’に置き換えたものである。
次に、S404で、1垂直同期時間(1V)後のズームレンズ位置Zx’がズームエリアの境界上に存在しているかどうかを判別し、境界フラグ=0ならば境界上にいないとして、S405からの処理に進む。S405では、Zk にZ(v')をセットし、Zk−1 にZ(v'−1) をセットする。
次に、S406では、図4に示す処理により、被写体距離γが特定された4つのテーブルデータA(γ,v’−1)、A(γ,v’)、A(γ+1,v’−1)、A(γ+1,v’)を読み出し、S407では、上述した(2),(3)式からax’,bx’を算出する。
一方、S403でYesと判断された場合には、S408で被写体距離γでのズームエリアv’に対するフォーカスレンズ位置A(γ,v')およびA(γ+1,v')を呼び出し、それぞれax’,bx’としてメモリする。そして、S409では、ズームレンズ位置がZx’に達したときのフォーカスレンズ105の合焦位置(目標位置)px’を算出する。(1)式を用いて1垂直同期時間後のフォーカスレンズ105の目標位置は(8)式の様に表せる。
px’=(bx’−ax’)×α/β+ax’ …(8)
したがって、目標位置と現在のフォーカスレンズ位置との差は、
ΔF=(bx’−ax’)×α/β+ax’−px
となる。
次に、S410では、フォーカス標準移動速度Vf0を算出する。Vf0はフォーカスレンズ位置差ΔFを、この距離を移動するのに要するズームレンズユニット102の移動時間で除算して得られる。
そして本処理を終了して、図6のS706に進み、ズーミング動作中であれば、S410で決定したフォーカス速度で、該フォーカス速度の符号方向(至近方向を正、無限遠方向を負とする)に移動し、コンペンセータ動作が行われる。
S411では、各種パラメタの初期値化を行う。ここでは、以後の処理で用いる「反転フラグ」のクリアを行う。S412では、S410で得たフォーカス標準移動速度Vf0 から、ジグザグ動作用の補正速度Vf+,Vf− を算出する。ここで、補正量パラメタδおよび補正速度Vf+,Vf−は、図13を用いて前述したように、(9)〜(12)式を用いて算出される。
S413では、図6に示したS703で得られたズームスイッチ130の操作状態を示す情報に応じて、ズーミング中かどうかを判断する。YesならばS416からの処理を行う。Noと判断したときは、S313で「ズームフラグ」および「AF補正フラグ」をクリアして、次回のワイドからテレ方向のズーミング動作の準備をする。そしてS414では、AF評価信号レベルの現在値から任意の定数μを減算した値をTH1(図12(A)に1302で示したレベル)とし、前述した補正方向のベクトルの切換基準(ジグザグ動作の切換基準)となるAF評価信号レベルを決定する。このTH1は、ズーミングの開始直前に決まることになり、この値が図12(a)の1302のレベルである。
次に、S415では、「補正フラグ」をクリアし、本処理を抜ける。ここで「補正フラグ」とは、前述したように、カム軌跡の追従状態が正方向の補正がかかった状態(補正フラグ=1)なのか、負方向の補正がかかった状態(補正フラグ=0)であるのかを示すフラグである。
S413でズームミング中と判断すると、S414で、ズーミング方向がワイドからテレ方向であるか否かを判別する。NoならばS313と同様に、「ズームフラグ」および「補正フラグ」をクリアして、次回のワイドからテレ方向のズーミング動作の準備を行う(S312)。そして、S419で、Vf+=0,Vf−=0とし、S420からの処理を行ってジグザグ駆動を実質行わない。
S413でYesならば、S304で、「ズームフラグ」がクリア状態かどうかを判別する。クリアの場合、今回初めてワイドからテレ方向にズームされた場合であるので、S305へ進み、「ズームフラグ」をセットし、さらにS306で、ズームスタート時のAF評価信号の検出結果に基づくジグザグ動作の補正方向(フォーカスレンズユニット105の駆動開始方向)を、主被写体の物体距離方向に正しく合わせるべく、被写体距離検出回路127の出力から得た距離情報が、現在のフォーカスレンズ位置に対応する距離に比べて、至近方向なのか無限遠方向なのかを判別する。
ここで、S306の処理は、S300で決定したレンズ位置に基づく推定距離Bと、S301で決定した被写体距離検出回路127の出力に基づく実距離Aとの関係を判定するものである。実距離Aのほうが推定距離Bよりも近距離側、つまりは至近方向であった場合にはS424に進み、ジグザグ動作正の補正方向を至近方向から開始する。S306でNo、つまりは実距離Aが推定距離Bよりも遠距離側にある場合には、無限遠方向から補正動作を開始するためにS423に進む。
このように、本実施例では、ズーミングの開始時に、AF評価信号を用いたカム軌跡の特定動作のための補正方向を、フォーカスレンズユニット105の位置に対応する距離(推定距離B)が、被写体距離検出回路127の出力に基づく距離(実距離A)に近づくように設定する、すなわちフォーカスレンズユニット105の駆動方向に関して重み付け設定を行うことを第1の特徴とする。
このような動作を行わせることで、特にカム軌跡の間隔が詰まっているワイド側からズーミングを開始する際に、ジグザグ動作におけるフォーカスレンズユニット105の駆動開始方向が合焦カム軌跡のある方向とは逆方向となってしまうために生ずる、合焦軌跡からの位置ずれが小さくても焦点深度が浅いために像ぼけが目立つという現象を回避するすることが可能となる。したがって、ワイド側で合焦カム軌跡の方向とフォーカスレンズユニット105の駆動方向(補正方向)とが逆方向となった場合に、様々な被写体距離の物体の像が同時にぼけてしまい撮影画像の品位が悪くなるという問題の発生を未然に防ぐことができる。
S304に戻って説明を続ける。S306で一旦「ズームフラグ」がセットされると、次回からのS304での判別結果(ズームフラグ=1)によってS307に進む。S307では、S306と同様に、被写体距離検出回路127の出力に基づく距離情報(実距離A)が、推定距離Bより至近方向かどうかを判別する。Yesならばジグザグ動作を至近方向優先に重み付けすべく、S309でVf+を2倍の値に設定する。一方、S307でNoである場合には、S308に進み、Vf-を2倍して重み付けをする。これは、検出した実距離Aに基づいて(実距離Aと推定距離Bとの関係に応じて)、AF評価信号を用いたカム軌跡の再特定のための補正動作に重み付けをするという本実施例の第2の特徴である。
この重み付け補正処理により、例えば、AF評価信号の変化に基づいてカム軌跡を特定する際に、AF評価信号が像ぼけ状態によって変化するだけでなく、被写体の絵柄の変化によっても変化することから、補正方向の切り換えを間違えてしまうという問題(再び正しい軌跡に戻るまでに長時間像ぼけが続いたり、像ぼけを引きずったままテレ端まで行き着いたりする問題)を回避できる。
本実施例では、重み付け処理の一例として、検出した実距離Aに基づいて、補正処理におけるフォーカスレンズユニット105の駆動速度(補正速度)を2倍にする場合について説明したが、本発明ではこれに限らない。
例えば、検出した実距離Aとレンズ位置に基づく推定距離Bとの差分とその方向に応じて、補正速度の重み付け比率を変化させてもよい。
また、実距離Aに近づく方向への補正速度を増加させるのではなく、逆方向への補正速度を減らすようにしてもよい。
また、図12(A)に示した、補正方向を切り換える条件としてのAF評価値の切り換えレベル(TH1)1302を、実距離Aに対応するフォーカスレンズ位置に近づく方向には該レベル1302を低く設定し、実距離Aに対応するフォーカスレンズ位置から離れる補正方向には該レベル1302を高く設定して、実距離Aに対応するフォーカスレンズ位置に近づく方向への補正動作の頻度が増加するようにしてもよい。
こうして、検出した距離情報に基づいてジグザグ動作の重み付け処理をズーム動作中に行いながら、S417以降の処理を行うことでジグザグ動作を実行する。まずS417で現在のAF評価信号レベルがTH1より小さいか否かを判別する。Yesならば、現在のAF評価信号レベルが図12(A)のTH1(1302)のレベルを下回ったので、補正方向の切り換えを行うためにS418で反転フラグをセットする。
S420では、反転フラグ=1かどうかを判別し、YesならばS421に進み、補正フラグが1か否かを判別する。S421でNoならば、S424に進み、補正フラグに1(正方向の補正状態)をセットし、(4)式により、
フォーカス速度Vf=Vf0+Vf+(但し、Vf+≧0)
とする。
一方、S421でYesならば、S423に進み、補正フラグに0(負方向の補正状態)をセットし、(5)式により、
フォーカス速度Vf=Vf0+Vf−(但し、Vf−≦0)
とする。
S420でNoと判断された場合は、S422で補正フラグが1であるか否かを判別し、YesならS424へ、NoならS423へ進む。
本処理の終了後、図6に示したS706で、動作モードに応じて、フォーカスレンズ105およびズームレンズ102の駆動方向と駆動速度が選択される。
ズーミング動作の場合、ここでは、S423又はS424で求めたフォーカス速度Vf が正であるのか負であるのかによって、フォーカスレンズ105の駆動方向をそれぞれ、至近方向又は無限方向に設定する。このようにしてフォーカスレンズ105のジグザグ駆動を行いながらトレースすべきカム軌跡の再特定を行う。
ジグザグ駆動を行いながらS417からS424の処理で、TV−AFにおけるAF評価信号が、図12(A)に示したピークレベル1301になったことが検出される。S417でNoのときは、S310でピークレベル1301が検出されたか否かを判別する。ピークレベルが検出された場合には、S311で、「補正フラグ=1」および軌跡パラメタの現在値をTV−AFによる再特定軌跡パラメタとして、
αAF←αnow、βAF←βnow、γAF←γnow
とセットする。そして、次回のS302では「AF補正フラグ=1」と判別されるので、S303で、特定カム軌跡が更新される。
今回、S303で更新され再特定された軌跡パラメタは、ズーミング動作が停止したり、ズーミング方向が逆転したりしない限り、新たにピークレベルが検出されるごとに(S310)、S311でαAF、βAF、γAFの更新を繰り返しつつ、ズーミング動作中に最適なカム軌跡が随時更新される。
なお、S310でAF評価値レベルがピークレベルになったことが検出されない場合には、そのままS420に進み、ジグザグ動作による補正方向の切り換えを行わずに、前回決定済の補正方向に補正しながらフォーカスレンズ105を駆動する。
以上のように本実施例によれば、ジグザグ動作におけるフォーカスレンズユニット105の駆動開始方向に関して、検出した距離情報に基づく重み付け設定がなされるのでジグザグ動作時における像ぼけの発生を抑制することができる。
しかも、ズーミング動作中に、主被写体は距離が変動する可能性もあるが、本実施例では、検出距離に対応するフォーカスレンズ位置に近づく方向への駆動や駆動速度に対して重み付けがなされるので、カム軌跡の乗り写りを迅速かつ円滑に行える。さらに、AF評価信号による補正動作で仮に追従すべき正しいカム軌跡から離れる方向に誤ってフォーカスレンズユニット105が駆動されている際にも、像ぼけの発生を低減しつつ、正しいカム軌跡にスムーズに戻ることが可能となる。
また、本実施例の手法を用いることで、TV−AF信号(AF評価信号)に基づく追従カム軌跡の特定精度を向上させることができる。このため、被写体距離検出回路127の検出精度をある程度粗くすることが可能となり、被写体距離検出回路127を小型で安価なタイプを選定することが可能となる。
本発明の実施例であるビデオカメラの構成を示すブロック図。
実施例のビデオカメラにおける動作を示すフローチャート。
実施例のビデオカメラにおける動作を示すフローチャート。
本発明の前提技術を示すフローチャート。
本発明の前提技術を示すフローチャート。
本発明の前提技術を示すフローチャート。
本発明の前提技術を示すフローチャート。
従来の撮影光学系の構成を示す概略図。
被写体距離に応じた合焦軌跡を示す概念図。
合焦軌跡を説明する図。
ズームレンズの移動方向の内挿方法を説明するための図。
合焦軌跡のデータテーブルの例を示す図。
(A),(B)とも本発明の前提技術を示す概念図。
本発明の前提技術を示す概念図。
三角測距法を説明するための図。
位相差検出による距離測定方法を説明するための図。
符号の説明
102 ズームレンズユニット
105 フォーカスレンズユニット
106 撮像素子
116 カメラマイクロコンピュータ
117 AF制御ユニット
120 カムデータメモリ
127 被写体距離検出回路