上記のように、一つの放射電極で複数の周波数帯での無線通信を行わせるための手法には様々な手法が提案されている。しかしながら、放射電極と、当該放射電極に電気的に接続している無線通信装置の無線通信用回路(高周波回路)とのインピーダンス整合に問題が生じたり、放射電極の共振動作による周波数帯の帯域幅が十分でなかったり、放射電極の共振周波数の切り換え幅が小さかったり、放射電極の切り換え変化させる全ての共振周波数を設定通りの周波数に調整することが難しい等の様々な問題があり、満足できるものではなかった。
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、その目的は、アンテナ利得や帯域幅等のアンテナ特性を悪化させることなく放射電極の共振周波数を切り換え変化させることができて予め定められた無線通信用の全ての周波数帯で良好に無線通信でき、しかも、放射電極の共振周波数の切り換え幅を1オクターブ以上に大きくすることも、反対に小さくすることもできるアンテナ構造およびそれを備えた無線通信装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、この発明は次に示す構成をもって前記課題を解決するための手段としている。すなわち、この発明のアンテナ構造は、
グランド電極が形成された無線通信用に用いられる基板と、
基板に配設され共振動作によりアンテナとして動作する放射電極と、
互いに間隔を介した隣接状態で放射電極の端縁部に連接される低側と高側の少なくとも2つの給電電極と、
を有し、
低側の給電電極は、インダクタンス部を介して無線通信用の予め定められた低い方の周波数帯の信号を導通させる低側の給電用導通経路の一部と成し、
高側の給電電極は、キャパシタンス部を介して無線通信用の予め定められた高い方の周波数帯の信号を導通させる高側の給電用導通経路の一部と成しており、
さらに、
上記低側および高側の給電電極が形成されている給電電極形成領域の両側にそれぞれ給電電極形成領域と間隔を介して配置され、放射電極の端縁部をインダクタンス部を介し基板のグランド電極に高周波的に接続させ無線通信用の低い方の周波数帯の周波数で放射電極と当該放射電極に電気的に接続される回路とを整合させる低側共振動作用のリアクタンス回路と、
上記給電電極形成領域の両側のうちの少なくとも一方側に配置されて放射電極の端縁部とグランド電極との間をスイッチ手段を介して電気的に接続する低インピーダンス接地用経路と、
を有し、
低インピーダンス接地用経路のスイッチ手段がオンすることによって、低側共振動作用のリアクタンス回路から低インピーダンス接地用経路に切り換わって放射電極の端縁部がグランド電極に高周波的に接続されている状態となって放射電極の共振動作の共振周波数が無線通信用の低い方の周波数帯の周波数から高い方の周波数帯の周波数に切り換わって無線通信が行われることを特徴としている。また、この発明の無線通信装置は、この発明において特有な構成を有するアンテナ構造が設けられていることを特徴としている。
この発明のアンテナ構造では、低インピーダンス接地用経路のスイッチ手段がオンしているときには、低側共振動作用のリアクタンス回路から低インピーダンス接地用経路に高周波電流の経路が切り換わり当該低インピーダンス接地用経路を介して放射電極の端縁部がグランド電極に高周波的に接続されている状態となる。この状態のときには、放射電極は、予め定められた無線通信用の高い方の周波数帯で共振動作して、無線通信用の高い方の周波数帯での無線通信を行う。アンテナ構造の無線通信用の周波数帯が、例えば携帯型電話機等で使用される約800MHz帯〜約2GHz帯の範囲内にある場合に、放射電極が低インピーダンス接地用経路を介して基板(例えば携帯型電話機等の無線通信装置の筐体内に設けられる回路基板)のグランド電極に高周波的に接続される場合には、約1.7GHz〜2GHzの広い周波数範囲で共振動作する。
また、低インピーダンス接地用経路のスイッチ手段がオフしているときには、低側および高側の給電電極が連接されている放射電極の端縁部(給電部)の両側が、それぞれ、低側共振動作用のリアクタンス回路を介して高周波的に基板のグランド電極に接続されている状態となる。この状態のときには、低側共振動作用のリアクタンス回路のインダクタンス部と、低側の給電用導通経路のインダクタンス部との各リアクタンスが放射電極に付与されている状態となる。この状態は、放射電極の共振周波数に関与する放射電極の電気的な長さ(電気長)を、上記付与されているリアクタンス値に応じた分だけ長くして放射電極の共振周波数を下げて放射電極に予め定められた無線通信用の低い方の周波数帯で共振動作させると共に、その低い方の周波数帯での放射電極の共振動作による帯域幅を約800MHz〜900MHzの周波数範囲というような広帯域なものにできる効果を有する。このため、放射電極は、要望通りの帯域幅を持つ無線通信用の低い方の周波数帯での無線通信を行うことが可能となる。携帯型電話機用のアンテナ構造の無線通信用の周波数帯が例えば約800MHz帯〜約2GHz帯の範囲内にある場合には、放射電極だけでなく、放射電極の共振動作に誘起されてグランド電極をも共振動作の一部として動作する。この発明の構成では、その共振動作時にグランド電極における長方形状の基板の長辺に沿う方向の高周波の電流分布を分散させる効果があり、これにより、上記したように無線通信用の低い方の周波数帯の広帯域化を図ることができる。
つまり、この発明のアンテナ構造では、上記したようにグランド電極に流れる高周波電流をも有効に利用して無線通信を行うので、無線通信用の周波数帯域の広帯域化を図ることが容易となる。また、この発明では、給電電極が連接されている放射電極の端縁部(つまり、放射電極において磁界の最も強い部分)の両側の放射電極端縁部分にはそれぞれ低側共振動作用のリアクタンス回路が接続されているので、アンテナ構造が無線通信用の低い方の周波数帯の無線通信を行う場合に、それら低側共振動作用のリアクタンス回路によって放射電極の電流分布が拡散する。このことによっても、周波数帯域の広帯域化が図られている。
また、この発明のアンテナ構造では、基板のグランド電極も共振動作するのでグランド電極からも電波の輻射があり、当該輻射は、放射電極が配置されている側の基板面側が強くなる。このため、この発明のアンテナ構造が携帯型電話機に設けられる場合には、通話中に外側(人体側の反対側)となる回路基板(基板)の基板面に放射電極を配設することによって、アンテナ構造の電波の指向性を人体の反対側とすることができる。これにより、人体に起因したアンテナ特性の劣化を抑制することができる。
さらに、この発明では、放射電極およびグランド電極における共振動作時の電流分布はアンテナ特性に大きな影響を与えることと、良好なアンテナ特性を得るための電流分布は周波数によって異なることとを考慮して、良好なアンテナ特性を得るべく、上述したように、無線通信用の周波数帯によって放射電極とグランド電極との接続形態を切り換え変化させて放射電極およびグランド電極の電流分布を切り換え変化させている。このため、無線通信用の低い方の周波数帯と高い方の周波数帯との両方の周波数帯で良好なアンテナ特性を得ることができる。
さらに、この発明のアンテナ構造では、無線通信用の高い方の周波数帯と低い方の周波数帯との周波数の切り換え変化幅は、低側共振動作用のリアクタンス回路のインダクタンス部および低側の給電用導通経路のインダクタンス部のリアクタンス値の大きさによってほぼ定まる。それら各インダクタンス部は、放射電極に高周波的に接続される回路に設けられるものであり、それらインダクタンス部には放射電極に制約されずに小さいリアクタンス値を持たせることも大きなリアクタンス値を持たせることもできる。また、低側の給電用導通経路のインダクタンス部と、高側の給電用導通経路のキャパシタンス部とによるLC並列共振の並列共振周波数が、無線通信用の低い方の周波数帯と高い方の周波数帯との間の周波数に設定されている構成を備えることにより、アンテナ構造の周波数の切り換え変化幅を1オクターブ以上大きくした場合でも、放射電極と、当該放射電極に電気的に接続される回路(無線通信用回路)側とをインピーダンス整合させることが容易となる。このため、インピーダンス整合を悪化させることなく、放射電極の共振周波数を1オクターブ以上に大きく切り換え変化させることが可能となる。
さらに、この発明のアンテナ構造では、低側の給電用導通経路に直列的にインダクタンス部が介設されている。そのインダクタンス部は、例えば、無線通信用の低い方の周波数帯が800MHz帯であるときには例えば10nH〜20nHのリアクタンス値を有し、当該インダクタンス部のリアクタンス値は、無線通信用の高い方の周波数帯(例えば2GHz帯)の信号にとっては50Ωよりも高いインピーダンスとなる。このため、無線通信用の高い方の周波数帯の信号にとっては、放射電極から無線通信用回路側を見たときに、低側の給電用導通経路に直列に介設されているインダクタンス部は電気的に見えない状態となる。これにより、アンテナ構造の無線通信用の周波数帯を低い方の周波数帯から高い方の周波数帯に切り換えたときに、低側の給電用導通経路のインダクタンス部が無線通信用の高い方の周波数帯の放射電極の共振動作に悪影響を与えることは殆ど無い。つまり、例えば、無線通信用の高い方の周波数帯において放射電極と無線通信用回路側とが高側の給電用導通経路を介して良好なインピーダンス整合状態でもって接続することができるように放射電極における給電電極の連接位置を設定し、また、無線通信用の低い方の周波数帯において放射電極と無線通信用回路側とが低側の給電用導通経路を介して良好なインピーダンス整合状態でもって接続することができるように低側の給電用導通経路のインダクタンス部のリアクタンス値を設定することによって、アンテナ構造の無線通信用の周波数帯を切り換えても、放射電極と無線通信用回路側とのインピーダンス整合を良好な状態に維持することができる。
さらに、この発明のアンテナ構造では、高側の給電用導通経路にキャパシタンス部を設けることによって、無線通信用の高い方の周波数帯において、キャパシタンス部の静電容量の大きさを適宜調整することにより、放射電極と、無線通信用回路側とのインピーダンス整合状態を良好にすることがより容易となる。
さらに、この発明では、低側の給電電極を含む低側の給電用導通経路と、高側の給電電極を含む高側の給電用導通経路とが、それぞれ、別々に設けられている。この構成も、無線通信用の低い方の周波数帯と高い方の周波数帯とのそれぞれにおける放射電極と無線通信用回路側との良好なインピーダンス整合状態を得ることができる要素である。また、無線通信用の低い方の周波数帯の信号と、高い方の周波数帯の信号とを別々に独立的に放射電極に給電することができるので、低い方の周波数帯の信号の給電と、高い方の周波数帯の信号の給電とを切り換えるためのスイッチ手段や、低い方の周波数帯の信号と高い方の周波数帯の信号との合成や分離を行うためのダイプレクサを無線通信装置に設けなくて済む。これにより、無線通信装置の部品点数の削減や、回路の簡略化を図ることができる。さらに、低側の給電用導通経路と高側の給電用導通経路とが共通に接続されて無線通信用回路に接続する態様を採る場合には、無線通信用の低い方の周波数帯の信号と高い方の周波数帯の信号との合成が容易となる。
さらに、低側の給電用導通経路と高側の給電用導通経路とのうちの少なくとも高側の給電用導通経路の導通オン・オフ状態を切り換えるスイッチ手段が設けられている構成を備えることによって、無線通信用の低い方の周波数帯での無線通信を行う場合には、高側の給電用導通経路のスイッチ手段をオフして放射電極と無線通信用回路側とのインピーダンス整合状態への高側の給電用導通経路の影響を無くすことができる。これにより、無線通信用の低い方の周波数帯と高い方の周波数帯とのそれぞれにおける放射電極と無線通信用回路側との良好なインピーダンス整合状態を得ることがより一層容易となる。
放射電極は導体板により構成され、低側の給電用導通経路のインダクタンス部、および、高側の給電用導通経路のキャパシタンス部も導体板により構成されて放射電極の導体板と一体的に設けられている構成を備えることによって、良好なアンテナ特性を持つアンテナ構造を安定的に提供することができることとなる。つまり、低側の給電用導通経路のインダクタンス部や、高側の給電用導通経路のキャパシタンス部はアンテナ特性に大きく関与するものであり、それらインダクタンス部やキャパシタンス部は、放射電極に適した予め設定されたリアクタンス値を有することが好ましい。しかし、それらインダクタンス部やキャパシタンス部が放射電極と別個に設けられると、例えば部品の性能ばらつき等によって、設定のリアクタンス値からずれたリアクタンス値を持つインダクタンス部やキャパシタンス部が設けられることがあり、これにより、アンテナ特性が劣化してしまう虞がある。これに対して、上記インダクタンス部やキャパシタンス部を放射電極と一体的に導体板により構成することによって、インダクタンス部やキャパシタンス部が放射電極とは別個に設けられていることに因るアンテナ特性の劣化問題を抑制することができる。
また、インダクタンス部やキャパシタンス部を放射電極と一体的に導体板により構成することによって、それらインダクタンス部やキャパシタンス部を基板に設けなくて済むので、基板におけるそれらインダクタンス部やキャパシタンス部の配設の手間を無くすことができ、アンテナ構造の製造工程の簡略化を図ることができる。また、インダクタンス部やキャパシタンス部を基板に設けなくて済む分、基板における部品の搭載領域を広げることができる。
放射電極の少なくとも一部に誘電体が設けられていることによって、誘電体による波長短縮効果によって放射電極の小型化を図ることができる。また、放射電極とグランド電極間に誘電体を設けることによって、放射電極とグランド電極との間が空隙である場合に比べて、放射電極とグランド電極との間の静電容量の大きさを設定通りの大きさとすることが容易となる。このため、アンテナ構造のアンテナ特性の安定化を図ることができる。
放射電極が複数の放射電極に分岐されている構成を備えることによって、より多くの周波数帯でもって無線通信を行うことが可能となり、アンテナ構造のマルチバンド化を図ることが容易となる。また、放射電極にマルチバンド化用のスロットが形成されている構成を備えることによっても、マルチバンド化用のスロットを形成するだけで、放射電極を大型化することなく、マルチバンド化されたアンテナ構造を得ることができる。さらに、複数の放射電極が設けられている構成を備えることによっても、マルチバンド化されたアンテナ構造を得ることができる。この場合には、離れた周波数帯を無線通信用の周波数帯として採用することが容易となる。
また、放射電極に電気長を長くするためのスリットが形成されている構成を備えることによって、放射電極を大きくすることなく、放射電極の共振周波数を低くすることができる。つまり、放射電極の小型化を図ることができる。
さらに、低インピーダンス接地用経路のスイッチ手段はダイオードにより構成されている構成を備えることによって、簡単な構成でもってスイッチ手段を構成することができ、そのダイオードのオン・オフ状態の切り換え制御も簡単な回路でもって行うことができる。
以下に、この発明に係る実施形態例を図面に基づいて説明する。
図1(a)には第1実施形態例のアンテナ構造が模式的な斜視図により表されており、図1(b)には図1(a)のA−A部分の模式的な断面図が示されている。この第1実施形態例のアンテナ構造1は、無線通信装置である携帯型電話機に設けられるものであり、当該アンテナ構造1は、基板2と、この基板2に実装される誘電体基体3と、誘電体基体3に設けられる放射電極4および給電電極5(5H,5L)と、放射電極4に接続されるグランド接地用回路6(6A,6B)と、給電電極5に接続される給電用回路7とを有して構成されている。
この第1実施形態例のアンテナ構造1を構成する基板2は、携帯型電話機の筐体内に内蔵される回路基板であり、短辺と長辺を有する長方形状と成している。当該基板2には、グランド電極Gが設けられ、また、無線通信用回路8が形成されている。この第1実施形態例のアンテナ構造1が設けられる携帯型電話機は、例えば900MHz帯と2GHz帯というような2つの異なる周波数帯での無線通信が可能な機能を備えている。このため、図2(a)〜(c)に示されるように、この第1実施形態例における携帯型電話機の無線通信用回路8は、低側の無線通信用回路部8Lと、高側の無線通信用回路部8Hとを有している。低側の無線通信用回路部8Lは、予め定められた無線通信用の低い方の周波数帯(例えば900MHz帯)と高い方の周波数帯(例えば2GHz帯)とのうちの低い方の周波数帯の信号の変調や復調等の信号処理を行う回路構成を備えている。高側の無線通信用回路部8Hは、高い方の周波数帯の信号の処理を行う回路構成を備えている。
誘電体基体3は、この第1実施形態例では、直方体状と成している。放射電極4は導体板により構成されており、当該放射電極4は、誘電体基体3の上面3aの全面と側面3b,3cに接合することができる形状に加工されて誘電体基体3と接合している。この放射電極4の端縁部には給電部Qの位置が予め設定されており、当該給電部Qには2つの給電電極5(5H,5L)が互いに間隔を介し隣接した状態で連接されている。各給電電極5(5H,5L)は、放射電極4を構成する導体板と同一の導体板により構成され、誘電体基体3の側面3dに形成されている。
この第1実施形態例では、放射電極4および給電電極5(5H,5L)が接合一体化している誘電体基体3は、放射電極4の給電部Q(給電電極5)が基板2の長方形状の短辺に向き合う状態で基板2の端部(好ましくは角部)に配設されている。
給電用回路7は、インダクタンス部10を有する低側の給電路11と、キャパシタンス部12を有する高側の給電路13とを有して構成されている。低側の給電路11の一端側は給電電極5Lに電気的に接続されている。低側の給電路11と給電電極5Lは、無線通信用の低い方の周波数帯の信号を導通させるための低側の給電用導通経路を構成しており、給電電極5Lは低側の給電電極と成す。また、高側の給電路13の一端側は給電電極5Hに電気的に接続されている。高側の給電路13と給電電極5Hは、無線通信用の高い方の周波数帯の信号を導通させるための高側の給電用導通経路を構成しており、給電電極5Hは高側の給電電極と成す。上記低側の給電路11と、高側の給電路13との各他端側は、それぞれ、無線通信用回路8に接続させるための接続部11P,13Pと成している。接続部11P,13Pと、無線通信用回路8との接続形態は、携帯型電話機の回路構成に応じたものとなる。例えば、図2(a)に示されるように、接続部11Pが低側の無線通信用回路部8Lに、また、接続部13Pが高側の無線通信用回路部8Hに、それぞれ、直接的に接続される。また、図2(b)に示されるように、接続部11Pが高低切り換えスイッチ手段14を介して低側の無線通信用回路部8Lに、また、接続部13Pが高低切り換えスイッチ手段14を介して高側の無線通信用回路部8Hに、それぞれ接続される場合もある。さらに、図2(c)に示されるように、接続部11Pがダイプレクサ15を介して低側の無線通信用回路部8Lに、また、接続部13Pがダイプレクサ15を介して高側の無線通信用回路部8Hに、それぞれ、接続される場合もある。なお、高低切り換えスイッチ手段14は、高側の無線通信用回路部8Hと、低側の無線通信用回路部8Lとのうちの何れか一方を択一的に給電用回路7を介して放射電極4に接続させる構成を有するものである。
グランド接地用回路6(6A,6B)は、放射電極4の給電部Qと間隔を介した給電部Qの両側の放射電極端縁部にそれぞれ接続されており、当該グランド接地用回路6(6A,6B)は、スタブ電極17と、スタブ接続経路18と、高側用接地経路19と、インダクタンス部20と、低側用接地経路21と、スイッチ手段22とを有して構成されている。すなわち、スタブ電極17は、給電部Qの両側の放射電極端縁部に連接された電極であり、当該スタブ電極17は、放射電極4と同一の導体板により構成されている。このスタブ電極17も放射電極4と同様に誘電体基体3に接合一体化されている。
スタブ接続経路18は、その一端側がスタブ電極17に電気的に接続され、他端側はスイッチ手段22に接続されている。高側用接地経路19は、その一端側が基板2のグランド電極Gに接続され、他端側はスイッチ手段22に接続されている。インダクタンス部20は低側用接地経路21に介設されており、その低側用接地経路21の一端側は基板2のグランド電極Gに接続され、他端側はスイッチ手段22に接続されている。スイッチ手段22は、高側用接地経路19と、低側用接地経路21とのうちの何れか一方を択一的にスタブ接続経路18とスタブ電極17を介して放射電極4の端縁部に電気的に接続させる構成を有している。この第1実施形態例では、スイッチ手段22は、例えば、携帯型電話機の制御回路(図示せず)に接続され、その制御回路によって次に示すようにスイッチング動作が制御される。つまり、放射電極4(アンテナ構造1)が無線通信用の高い方の周波数帯での無線通信を行う場合には、放射電極4の端縁部が高側用接地経路19を介して基板2のグランド電極Gに接続され、放射電極4(アンテナ構造1)が無線通信用の低い方の周波数帯での無線通信を行う場合には、放射電極4の端縁部が低側用接地経路21を介して基板2のグランド電極Gに接続されるべく、スイッチ手段22のスイッチング動作が制御される。
この第1実施形態例では、放射電極4(アンテナ構造1)が無線通信用の高い方の周波数帯(例えば2GHz帯)での無線通信を行う場合には、図1(d)に示されるように、放射電極4の給電部Qは、給電電極5Hと高側の給電路13(つまり、高側の給電用導通経路)を介して、無線通信用回路8の高側の無線通信用回路部8Hに電気的に接続される。また、グランド接地用回路6(6A,6B)のスイッチ手段22のスイッチング動作によって、給電部Qの両側の放射電極端縁部はそれぞれスイッチ手段22を介して基板2のグランド電極Gに直接的に接続される。このように放射電極4が無線通信用回路部8Hやグランド電極Gに接続されている状態で、放射電極4は予め設定されている無線通信用の高い方の周波数帯で共振動作して無線通信を行う。つまり、上記のように放射電極4が無線通信用回路部8Hやグランド電極Gに接続されている状態で放射電極4が無線通信用の高い方の周波数帯で無線通信できるように、放射電極4の大きさや、誘電体基体3の誘電率や、高側の給電路13のキャパシタンス部12の容量の大きさ等がそれぞれ設定されている。
また、放射電極4(アンテナ構造1)が無線通信用の低い方の周波数帯(例えば900MHz帯)での無線通信を行う場合には、図1(c)に示されるように、放射電極4の給電部Qは、給電電極5Lと低側の給電路11(つまり、低側の給電用導通経路)を介して、無線通信用回路8の低側の無線通信用回路部8Lに電気的に接続される。また、グランド接地用回路6(6A,6B)のスイッチ手段22のスイッチング動作によって、給電部Qの両側の放射電極端縁部はそれぞれインダクタンス部20を介して基板2のグランド電極Gに電気的に接続される。このように放射電極4の端縁部がインダクタンス部10,20に電気的に接続されている状態で、放射電極4は無線通信用の低い方の周波数帯で無線通信を行う。つまり、放射電極4が無線通信用の低い方の周波数帯で共振動作を行うことができるように、インダクタンス部10,20のそれぞれのリアクタンス値が設定されている。
すなわち、この第1実施形態例では、グランド接地用回路6(6A,6B)を構成するスタブ電極17とスタブ接続経路18とスイッチ手段22とインダクタンス部20と低側用接地経路21によって、低側共振動作用のリアクタンス回路が構成されており、当該低側共振動作用のリアクタンス回路は、給電部Qの両側の放射電極端縁部をそれぞれインダクタンス部を介してグランド電極Gに接続させ放射電極を無線通信用の低い方の周波数帯の周波数で共振動作させ、また、放射電極4と無線通信用回路8側とを整合させる。また、グランド接地用回路6(6A,6B)を構成するスタブ電極17とスタブ接続経路18とスイッチ手段22と高側用接地経路19によって、低側共振動作用のリアクタンス回路に電気的に並列的に設けられ放射電極の端縁部とグランド電極間をスイッチ手段を介して接続する低インピーダンス接地用経路が構成されている。さらに、スイッチ手段22は、低側共振動作用のリアクタンス回路の導通オン・オフ状態を切り換えるスイッチ手段としての機能と、低インピーダンス接地用経路の導通オン・オフ状態を切り換えるスイッチ手段としての機能とを兼用するスイッチ手段であり、低側共振動作用のリアクタンス回路と低インピーダンス接地用経路とのうちの何れか一方を択一的に導通オン状態にして放射電極の端縁部とグランド電極間を高周波的に接続させるものである。
この第1実施形態例のアンテナ構造1は上記のように構成されている。このアンテナ構造1では、上述したように、スイッチ手段22のスイッチング動作によって放射電極4の共振動作の共振周波数が切り換わる。
なお、図1の例では、低側の給電用導通経路の接続部11Pと、高側の給電用導通経路の接続部13Pとは別個に設けられていたが、例えば、図3に示されるように、低側の給電用導通経路(11)の放射電極側の反対側の端部と、高側の給電用導通経路(13)の放射電極側の反対側の端部とは、共通の接続部Pに接続されている構成としてもよい。この場合には、アンテナ構造1側と、携帯型電話機の無線通信用回路8側とは、図2(b)や図2(c)に示されるような接続形態を採ることとなる。
また、放射電極4と、無線通信用回路8とが離れて形成される場合に、図2cに示されるように1フィードで給電する必要が生じる。この場合、無線通信用の低い方の周波数帯と高い方の周波数帯のそれぞれにおける放射電極4への給電をより一層独立的なものとするために、例えば、低側の給電路11と、高側の給電路13とのそれぞれに、図4(a)に示されるような回路23,24を介設してもよい。また、例えば、図4(b)に示されるように、高側の給電路13に当該導通経路13の導通オン・オフ状態を切り換えるスイッチ手段25を介設してもよい。このスイッチ手段25は例えば携帯型電話機の制御回路に接続され、当該制御回路によってスイッチング動作が制御される。つまり、携帯型電話機の制御回路は、無線通信用の低い方の周波数帯での無線通信を行う場合にはスイッチ手段25をオフ状態とし、無線通信用の高い方の周波数帯での無線通信を行う場合にはスイッチ手段25をオン状態に切り換える。さらに、低側の給電路11と、高側の給電路13とのそれぞれに、導通オン・オフ状態を切り換えるスイッチ手段を介設してもよい。この場合には、例えば、携帯型電話機の制御回路によって、無線通信用の高い方の周波数帯での無線通信を行う場合には高側の給電路13に介設したスイッチ手段がオン状態に、また、低側の給電路11に介設したスイッチ手段がオフ状態に、それぞれ、制御される。また、携帯型電話機の制御回路によって、無線通信用の低い方の周波数帯での無線通信を行う場合には低側の給電路11に介設したスイッチ手段がオン状態に、また、高側の給電路13に介設したスイッチ手段がオフ状態に、それぞれ、制御される。
以下に、第2実施形態例を説明する。なお、この第2実施形態例の説明において、第1実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
この第2実施形態例のアンテナ構造1では、図5に示されるように、給電電極形成領域に間隔を介し隣接した位置にスイッチング動作回路部16が設けられている。このスイッチング動作回路部16は、給電電極5と間隔を介して隣接配置して放射電極4の端縁部に連接される電極46と、スイッチ手段47を介して電極46を基板2のグランド電極Gに接地させるための接地用経路48とを有して構成されている。また、この第2実施形態例では、第1実施形態例に示したグランド接地用回路6(6A,6B)のスイッチ手段22と高側用接地経路19が省略されており、インダクタンス部20はスイッチ手段22を介さずに直接的にスタブ電極17に電気的に接続されている。この第2実施形態例では、スタブ電極17とインダクタンス部20と低側用接地経路21によって低側共振動作用のリアクタンス回路が構成され、スイッチング動作回路部16によって低インピーダンス接地用経路が構成されている。スイッチング動作回路部16のスイッチ手段47がオフ状態のときには、放射電極4の端縁部はスタブ電極17とインダクタンス部20(つまり、低側共振動作用のリアクタンス回路)を介してグランド電極Gに接地され、放射電極4は無線通信用の低い方の周波数帯で共振動作して無線通信を行う。また、スイッチング動作回路部16のスイッチ手段47がオン状態のときには、放射電極4の端縁部は低側共振動作用のリアクタンス回路からスイッチング動作回路部(低インピーダンス接地用経路)16に切り換わって基板2のグランド電極Gに接地され、放射電極4は無線通信用の高い方の周波数帯で共振動作して無線通信を行う。この第2実施形態例のアンテナ構造1の上記以外の構成は、第1実施形態例のアンテナ構造1の構成と同様である。
なお、スイッチング動作回路部16の電極46の形成位置は図5に示される形成位置に限定されるものではなく、無線通信用の設定の周波数に応じた適宜な位置に配置され放射電極4の端縁部に連接されるものである。
この第2実施形態例では、低側共振動作用のリアクタンス回路と、低インピーダンス接地用経路とを別個独立に設けたので、アンテナ構造1を設計し易くなる(つまり、設計の自由度が高くなる)。このため、最適な設計が可能となる。このため、無線通信用の低い方の周波数帯と高い方の周波数帯との両方の周波数帯において、放射電極4と無線通信用回路8側とのインピーダンス整合を良好な状態とすることがより容易となる。
以下に、第3実施形態例を説明する。なお、第3実施形態例の説明において、第1や第2の各実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
この第3実施形態例では、図6に示されるように、放射電極4には、当該放射電極4の電気的な長さ(電気長)を長くするためのスリット26が形成されている。この第3実施形態例のアンテナ構造1の上記以外の構成は、第1や第2の各実施形態例のアンテナ構造1の構成と同様である。
この第3実施形態例では、放射電極4の電気長を長くするためのスリット26が形成されている。このため、放射電極4の物理的な大きさを大きくすることなく、スリット26を形成するだけで、放射電極4の電気長を長くすることができて放射電極4の電気長不足(換言すれば、大きさ不足)を解消でき、これにより、設定の無線通信用の低い方の周波数帯での共振動作を放射電極4に行わせることができる。すなわち、放射電極4の小型化を図ることができる。
なお、スリット26の形成数や形成位置やスリット形状やスリットサイズ等の設計事項は、放射電極4の大きさや、無線通信用の高い方の周波数帯の周波数や、放射電極4の電流分布等の様々な電気長に関わる点を考慮して適宜に設定されるものであり、図6の例に限定されるものではない。また、図6の例では、図1に示されるアンテナ構造1に第3実施形態例において特有な構成(つまり、放射電極4にスリット26が形成されている構成)を適用した例が示されているが、もちろん、図3や図4(a)、(b)に示される構成を有するアンテナ構造1や、第2実施形態例のアンテナ構造1においても、この第3実施形態例において特有な構成を適用してもよい。
以下に、第4実施形態例を説明する。なお、この第4実施形態例の説明において、第1〜第3の各実施形態例の構成部分と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
この第4実施形態例のアンテナ構造1では、図7(a)に示されるように、放射電極4には、マルチバンド化用のスロット27が形成されている。この第4実施形態例のアンテナ構造1の上記以外の構成は、第1〜第3の各実施形態例と同様である。この第4実施形態例では、マルチバンド化用のスロット27が形成されているので、放射電極4が無線通信を行うことができる周波数帯を増加することができて、マルチバンド化に対応することが可能となる。
なお、スロット27の形成位置や形状や大きさ等は、図7(a)の例に限定されるものではなく、放射電極4の電流分布や、放射電極4に要求される複数の無線通信用の周波数帯の周波数や、放射電極4の大きさ等の放射電極4の共振動作に関与する様々な点を考慮して適宜に設定されるものである。また、図7(a)には、図1のアンテナ構造1の放射電極4にマルチバンド化用のスロット27が形成されている例が図示されているが、もちろん、図3や図4(a)、(b)に示される構成を有するアンテナ構造1の放射電極4や、第2や第3の各実施形態例のアンテナ構造1の放射電極4にマルチバンド化用のスロット27を形成してもよいものである。
また、この第4実施形態例では、放射電極4にスロット27を形成することで、マルチバンド化に対応可能な構成としたが、例えば、図7(b)、(c)に示されるように、放射電極4は、給電部(給電電極5H,5Lが連接されている放射電極端縁部)Qから電流の通電経路の終端側となる放射電極端部に向かう途中の位置で複数に分岐して放射電極4a,4b,4cが形成されて互いに異なる周波数帯で共振動作するマルチバンド化のための構成としてもよい。この構成を採用することによっても、第1〜第3の各実施形態例に示した放射電極4よりも、この第4実施形態例の特有な構成を持つ放射電極4は、より多くの周波数帯での無線通信が可能となる。なお、放射電極4における分岐位置や、分岐した放射電極4a,4b,4cの形状や、分岐の放射電極の形成数等は、予め定められた無線通信用の周波数帯の数や周波数帯の周波数や、周波数帯域の帯域幅やアンテナ利得等のアンテナ特性等を考慮して適宜設定されるものであり、図7(b)や図7(c)の図示の例に限定されるものではない。また、図7(b)、(c)では、基板2と、グランド接地用回路6と、給電用回路7との図示が省略されている。
以下に、第5実施形態例を説明する。なお、この第5実施形態例の説明において、第1〜第4の各実施形態例の構成部分と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
この第5実施形態例では、図8(a)に示されるように、低側の給電路11のインダクタンス部10と、高側の給電路13のキャパシタンス部12とは、それぞれ、放射電極4を構成している導体板と同一の導体板により構成されており、それらインダクタンス部10およびキャパシタンス部12は放射電極4に連接されて放射電極4と一体化している。図8(a)の例では、インダクタンス部10を構成している導体板の一端側と、キャパシタンス部12を構成している導体板の一端側とはそれぞれ放射電極4の給電部Qに連接されている。放射電極4の給電部Qに連接しているインダクタンス部10の導体板端部は低側の給電電極5Lとして機能する。また、放射電極4の給電部Qに連接しているキャパシタンス部12の導体板端部は高側の給電電極5Hとして機能している。また、インダクタンス部10とキャパシタンス部12との他端側同士は連接されて無線通信用回路8との接続部Pに接続されている。さらに、この図8(a)の例では、インダクタンス部10を構成している導体板は、低側の給電用導通経路としても機能し、また、キャパシタンス部12を構成している導体板は、高側の給電用導通経路としても機能している。
この第5実施形態例のアンテナ構造1の上記以外の構成は第1〜第4の各実施形態例と同様である。なお、図8(a)の例では、インダクタンス部10とキャパシタンス部12の端部同士が連接されて共通の接続部Pに接続されているが、図8(b)に示されるように、インダクタンス部10の端部と、キャパシタンス部12の端部とはそれぞれ別々の接続部11P,13Pに接続されている構成としてもよい。また、図8(a)の例では、図1のアンテナ構造1に、この第5実施形態例において特有な構成(つまり、インダクタンス部10とキャパシタンス部12がそれぞれ導体板により構成されて放射電極4に一体化されている構成)を適用した形態例が示されているが、もちろん、図4(a)や図4(b)の構成を持つアンテナ構造1や、第2実施形態例のアンテナ構造1に、この第5実施形態例において特有な構成を適用してもよい。
さらに、第3実施形態例のようにスリットが形成されている放射電極4を持つアンテナ構造1に、第5実施形態例において特有な構成を適用してよい。さらにまた、第4実施形態例のようにマルチバンド化用のスロットが形成されている放射電極4や分岐している放射電極4を持つアンテナ構造1に、第5実施形態例において特有な構成を適用してもよい。
さらに、低側の給電路11のインダクタンス部10と、高側の給電路13のキャパシタンス部12とだけでなく、図9に示されるように、低側共振動作用のリアクタンス回路のインダクタンス部20をも放射電極4を構成する導体板と同一の導体板により構成され放射電極4と一体的に形成されている構成としてもよい。図9に示される例では、グランド接地用回路6(6A,6B)において、スタブ電極17は低インピーダンス接地用経路専用のものとなり、当該スタブ電極17にインダクタンス部20が並設されている。スイッチ手段22は、それらスタブ電極17とインダクタンス部20とのうちの何れか一方を択一的に接地用経路28を介してグランド電極に電気的に接続させる構成を備えている。図9の例では、インダクタンス部20とスイッチ手段22と接地用経路28によって低側共振動作用のリアクタンス回路が構成され、スタブ電極17とスイッチ手段22と接地用経路28によって低インピーダンス接地用経路が構成されている。
以下に、第6実施形態例を説明する。なお、この第6実施形態例の説明において、第1〜第5の各実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
この第6実施形態例では、第1〜第5の各実施形態例をより実現に向けて具体化した形態例を示す。すなわち、この第6実施形態例のアンテナ構造1では、給電部Qの両側の放射電極端縁部には、図10(b)に示されるような低側共振動作用のリアクタンス回路30が接続されている。この第6実施形態例では、低側共振動作用のリアクタンス回路30は、インダクタンス部20とコンデンサ部29が直列に接続された回路構成を有し、コンデンサ部29をグランド電極側にして放射電極端縁部に接続されて、放射電極端縁部とグランド電極間を接続している。
また、この第6実施形態例では、放射電極4の端縁部とグランド電極間には、給電部Qの両側の低側共振動作用のリアクタンス回路30のそれぞれに電気的に並列に低インピーダンス接地用経路31が設けられている。低インピーダンス接地用経路31にはスイッチ手段としてのダイオード32が介設されている。さらに、この第6実施形態例では、給電部Qの両側の低側共振動作用のリアクタンス回路30のうちの一方側の低側共振動作用のリアクタンス回路30におけるインダクタンス部20とコンデンサ部29との直列接続部にはインダクタンス部33の一端側が接続されている。そのインダクタンス部33の他端側はダイオードのオン・オフ動作制御用の直流電圧の入力部Xに接続されている。この入力部Xに例えば無線通信装置(携帯型電話機)の制御回路からダイオードオン用の電圧が加えられることによって、インダクタンス部33,20を介してダイオード32にダイオードオン用の電圧が印加してダイオード32が導通オン状態となる。低側共振動作用のリアクタンス回路30よりも低インピーダンス接地用経路31の方が放射電極4とグランド電極間のインピーダンスが小さいので、ダイオード32が導通オン状態になると、放射電極4の端縁部は、低側共振動作用のリアクタンス回路30から低インピーダンス接地用経路31に切り換わってグランド電極に接続される状態となる。また、入力部Xに対するダイオードオン用の電圧印加が無くなってダイオード32にダイオードオン用の電圧が印加されなくなると、ダイオード32は導通オフ状態となる。これにより、放射電極4の端縁部は、低インピーダンス接地用経路31から低側共振動作用のリアクタンス回路30に切り換わってグランド電極に接続される状態となる。すなわち、入力部Xとインダクタンス部33,20によってダイオード32のオン・オフ動作制御用の電圧を印加するための電圧印加用経路が構成されている。
この第6実施形態例のアンテナ構造1の上記以外の構成は第1〜第5の各実施形態例の構成と同様である。この第6実施形態例では、給電部Qの両側の放射電極端縁部にそれぞれダイオード32が接続されている。このため、入力部Xに大電流が入力してしまっても、各ダイオード32に分流して通電するので、ダイオード32の通電電流量を抑制できてダイオード32の歪みを少なくすることができる。なお、図10(a)には、インダクタンス部10,20とキャパシタンス部12が放射電極4を構成している導体板と同一の導体板により形成されている構成を有するアンテナ構造1に、上記した第6実施形態例において特有な構成を適用したモデル図が示されている。
以下に、第7実施形態例を説明する。なお、第7実施形態例の説明において、第1〜第6の各実施形態例と同一構成部分には同一符号を付し、その共通部分の重複説明は省略する。
この第7実施形態例のアンテナ構造1では、図11に示されるように、第1〜第6の各実施形態例に示した放射電極4に加えて、別の放射電極35が設けられている。その放射電極35は導体板により構成され、当該放射電極35は、放射電極4による無線通信用の周波数帯とは異なる予め定められている設定の無線通信用の周波数帯で共振動作してアンテナとして機能するものである。放射電極4と、放射電極35とはそれぞれ別々の誘電体基体に設けられていてもよいが、図11の例では、共通の誘電体基体3に放射電極4,35が設けられている。また、放射電極35には、給電電極36が連接されている。その給電電極36は無線通信用回路8に電気的に接続されるものであり、放射電極4の給電電極5と同様に、基板2の短辺に向き合う位置に配設されている。なお、放射電極35は設定の無線通信用の周波数帯で共振動作して無線通信動作を行うことができれば、その形状や大きさ等の放射電極構成は図11の例に限定されるものではなく、適宜な構成を採用してよいものである。
なお、この発明は第1〜第7の各実施形態例の形態に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、図12(a),(b)に示されるように、誘電体基体3の放射電極形成面である上面3aに傾斜を付けてもよい。また、図12(b)に示されるように、誘電体基体3はその一部が基板2の端縁からはみだした状態で基板2に配設され、そのはみだしている誘電体基体3の部位の底部には下方側に向けて突出した突出部3Tが形成されていてもよい。誘電体基体3が図12(a)あるいは図12(b)のような形態を有している場合には、傾斜が付けられた分、あるいは、突出部3Tが形成されている分、それぞれ誘電体基体3の体積が増加する。アンテナ特性には誘電体基体3の体積が関与するので、誘電体基体3の体積増加により、アンテナ特性を向上させることができる。第1〜第7の各実施形態例では、誘電体基体3は直方体状であったが、上述したように、誘電体基体3は直方体状以外の形状を採り得るものであり、例えばアンテナ特性の向上等を考慮した適宜な形状としてよいし、放射電極4に対する誘電体基体3の大きさも適宜設定してよいものである。
また、第1〜第7の各実施形態例の構成に加えて、低インピーダンス接地用経路にキャパシタンス部が介設されている構成としてもよい。
さらに、第1〜第7の各実施形態例では、高側の給電路13にはキャパシタンス部12が介設されていたが、キャパシタンス部12を介設せずに直接的に高側の給電路13によって放射電極4の給電部Qを無線通信用回路8に接続させる構成としてもよい。