JP4715627B2 - 白金族元素を吸着したイオン交換樹脂から白金族元素の回収方法 - Google Patents
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Description
例えば、最も代表的な方法としては、陰イオン交換樹脂により白金族元素のクロロ錯体を吸着し、その後溶離して回収する方法である。特に、強塩基性陰イオン交換樹脂を用いて白金族元素の塩化物イオンが最大に配位した完全なクロロ錯体、例えば4価の白金を含むヘキサクロロ白金(IV)酸イオンを吸着する場合には、該樹脂への吸着は陰イオン交換反応によるものであるので、その溶離に際しては、還元剤、錯形成剤等を用いて比較的容易に行なわれる(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、このような吸着−溶離操作を繰返し行なうと、イオン交換樹脂中に白金族元素の一部が徐々に蓄積され、最終的にはイオン交換樹脂の吸着能力を著しく低下させるので、樹脂の繰返し使用が制限されることになる。
しかしながら、上記焙焼−酸浸出法において、白金族元素を吸着したイオン交換樹脂を酸化焙焼する場合、完全に酸化が進行したときには、白金及びパラジウム以外の白金族元素は全て酸化物を形成し、そのため酸浸出での浸出率が著しく低下する。すなわち、特に、イリジウム、ロジウム、ルテニウムの4価の酸化物は安定であり、浸出に際して、あらゆる酸、アルカリ、酸化剤、及び錯形成剤にも溶解しないからである。したがって、特別な条件で酸化還元雰囲気を制御しない通常の酸化焙焼を行なって得られた焙焼物の浸出においては、白金族元素、特にイリジウム、ロジウム及びルテニウムの浸出率が非常に低いという問題があった。
(1)前記イオン交換樹脂を、吸着された白金族元素を合金化するが、樹脂分を分解するに十分な酸化還元雰囲気下に500〜1000℃の温度で焙焼する。
(2)得られた焙焼物を酸化剤の共存下に塩酸を用いて浸出する。
(3)得られた浸出液中に塩化カリウムを添加して白金族元素を含むヘキサクロロ錯塩の結晶を生成させ分離する。
(1)前記イオン交換樹脂を、吸着された白金族元素を合金化するが、樹脂分を分解するに十分な酸化還元雰囲気下に500〜1000℃の温度で焙焼する。
(2)得られた焙焼物を酸化剤の共存下に塩酸を用いて浸出する。
(3)得られた浸出液中に塩化カリウムを添加して白金族元素を含むヘキサクロロ錯塩の結晶を生成させ分離する。
また、上記イオン交換樹脂に吸着されている白金族元素及び不純物元素の種類及び含有割合は、前記原液の組成に起因してさまざまであり特に限定されるものではない。
本発明の(1)の工程は、前記イオン交換樹脂を、吸着された白金族元素を合金化するが、樹脂分を分解するに十分な酸化還元雰囲気下に500〜1000℃の温度で焙焼する工程である。これによって、次工程において浸出されやすい合金形態に還元された白金族元素を含む焙焼物が得られる。なお、ここで不純物元素は、それぞれの特性からその一部は金属形態に還元され、他は酸化物形態で焙焼物中に含有される。
白金族元素イオンと結合した陰イオン交換樹脂の分解反応は、300℃付近から始まり、主要な反応は500℃でほぼ終了し、さらに800℃まで昇温すると、吸熱及び発熱を伴う反応もほぼ完全に終了する。一方、白金族元素を吸着した陰イオン交換樹脂は、通常塩化物を含有しているため、1000℃を超えると、塩化物の揮発が大きくなり、容器及び炉材の腐食が激しくなり、実用的でない。したがって、焙焼温度としては、500〜1000℃であり、好ましくは800〜1000℃である。
したがって、白金族元素を吸着したイオン交換樹脂が酸化還元雰囲気を制御しない通常の酸化焙焼で処理されると、全ての白金族元素が酸に不溶な酸化物を形成する可能性がある。
すなわち、酸化段階で生成した焙焼物の還元剤としては、炭素、一酸化炭素、水素、炭化水素類、金属粉類等が用いられるが、設備的かつ安全上も最も簡便に用いられる還元剤として炭素が好ましい。ここで、炭素の添加割合としては、焙焼物中の酸化物に起因する酸素品位により決定されるが、通常、酸化物の重量に対して10〜20重量%が用いられる。また、炭素の形態としては、無定形炭素、グラファイトいずれも使用することができるが、木炭、コークス等の無定形炭素がより高速に反応するので好ましい。
このような場合、還元段階において、敢えて合金化元素を添加して合金化することにより、溶解を促進することができる。既に、合金化元素が共存する場合でも、さらに、合金化元素を添加することにより、浸出率をより向上させることができる。
本発明の(2)の工程は、得られた焙焼物を酸化剤の共存下に塩酸を用いて浸出する工程である。ここで、例えば、まず所定量の焙焼物を所定量の塩酸中に懸濁させ、その中に酸化剤を添加しながら、酸化還元電位を所定値に制御し、かつ所定温度に維持する。これによって、焙焼物中の白金族元素が高収率で浸出されるが、特にイリジウム、ルテニウム、及びロジウムの浸出率が大幅に向上する。このとき合金化された不純物元素も同時に溶出される。
本発明の(3)の工程は、得られた浸出液中に塩化カリウムを添加して、白金族元素を含むヘキサクロロ錯塩の結晶を生成させ分離する工程である。これによって、白金族元素を一括して結晶化することができるので、他の共存する不純物元素から分離することができる。ここで、例えば、上記(2)の工程からろ過により得られる浸出液中に、所定量の塩化カリウムを添加し、再度所定温度に昇温し、酸化剤を添加しながら酸化還元電位を所定値に制御する。すなわち、ここでは、白金族元素のクロロ錯体の特異反応である水や酸に溶解しにくいヘキサクロロ錯塩の結晶を析出させる。
炉内に縦0.9m×横1.4m×深さ0.05m(底面積:1.26m2)の直方体形状のSUS304製の平鍋を静置したガス燃焼加熱方式の焙焼炉を用いた。
まず、上記イオン交換樹脂を平鍋内部に層厚150mmで充填し、次いで大気雰囲気で、800〜850℃の温度範囲で1時間保持した。次いで焙焼物を放冷後、均一に混合して粉砕した。その後、焙焼物の状態を確認するため、次の浸出評価を行なった。ここで、粉砕した焙焼物20gの試料を採取して、塩酸140mLと硝酸60mLを用いて浸出を行ない、白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム及びロジウムの浸出率を求めた。結果を表3に示す。
次に得られた濾液に塩化カリウムを濾液に対して150g/Lの割合でを添加した後、再び80℃に昇温して、亜塩素酸ナトリウムを添加し、酸化還元電位を銀/塩化銀電極(塩化カリウム飽和水溶液中)に対して900〜1100mVに制御した。この条件を1時間維持して、結晶化を行なった。この結晶が析出された液を室温まで冷却し、濾過して結晶を分離回収した。その後、濾液を分析し結晶分離後の母液の組成を求めた。結果を表2に示す。また、これらの濃度より、結晶化率を求めた。結果を表2に示す。
上記イオン交換樹脂の焙焼に際して、層厚が100mmになるように充填したこと以外は、実施例1と同様に行ない、その後、焙焼物の状態を確認するため、粉砕した焙焼物の浸出評価を実施例1と同様に行なった。結果を表3に示す。
続いて、浸出液から白金族元素ヘキサクロロ錯塩の結晶の分離回収を確認するため、結晶化を実施例1と同様に行なったところ、浸出液中の白金族元素は、高結晶化率で回収された。
上記イオン交換樹脂の焙焼に際して、層厚が10mmになるように充填したこと以外は、実施例1と同様に行ない、その後、焙焼物の状態を確認するため、粉砕した焙焼物の浸出評価を実施例1と同様に行なった。結果を表3に示す。
上記イオン交換樹脂の焙焼に際して、層厚が50mmになるように充填したこと以外は、実施例1と同様に行ない、その後、焙焼物の状態を確認するため、粉砕した焙焼物の浸出評価を実施例1と同様に行なった。結果を表3に示す。
上記イオン交換樹脂の焙焼に際して、層厚が200mmになるように充填したこと以外は、実施例1と同様に行ない、その後、焙焼物の状態を確認したところ、焙焼物中に未分解の樹脂が残留していた。これより、浸出評価するまでもなく、所望の状態の焙焼物が得られていないと判定した。結果を表3に示す。
炉内に縦0.9m×横1.4m×深さ0.05m(底面積:1.26m2)の直方体形状のSUS304製の平鍋を静置したガス燃焼加熱方式の焙焼炉を用いた。
比較例2と同様の条件で、上記イオン交換樹脂を平鍋内部に層厚50mmで充填し、次いで大気雰囲気で、800〜850℃の温度範囲で1時間保持して焙焼物を得た。
次に、上記平鍋内で、得られた焙焼物50kgに木炭5kg混合し、さらにその表層に木炭5kgを散布した後、平鍋の全面が被覆できるSUS304製の蓋をした。次いで、800〜850℃で温度で1時間保持した後、焙焼物を放冷した。得られた焙焼物は、容器に密着しやすい、板状の脆い金属状態に変化していた。その後、焙焼物の状態を確認するため、次の浸出評価を行なった。ここで、粉砕した焙焼物20gの試料を採取して、塩酸140mLと硝酸60mLを用いて浸出を行ない、白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム及びロジウムの浸出率を求めた。結果を表4に示す。
炉内にアルミナ製坩堝を静置した電熱式の焙焼炉を用いた。
まず、上記イオン交換樹脂1000gを坩堝内部に層厚50mmで充填し、次いで大気雰囲気で、800℃の温度で4時間保持し、続いて1000℃で1時間保持した酸化焙焼を行ない焙焼物を得た。
次に、得られた焙焼物69.6gに鉄粉17.7gと塩化ナトリウム23.6gを混合し、密閉したアルミナ製坩堝にいれ、1000℃で2時間保持し還元焙焼を行ない焙焼物を得た。なお、塩化ナトリウムは酸化防止のため表面を被覆した。その後、焙焼物を放冷した。その後、焙焼物の状態を確認するため、次の浸出評価を行なった。ここで、粉砕した焙焼物20gの試料を採取して、塩酸140mLと硝酸60mLを用いて浸出を行ない、白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウム及びロジウムの浸出率を求めた。結果を表4に示す。
また、このような2段焙焼で焙焼することにより、層厚を調整した1段焙焼に比べて白金族元素の高浸出率が得られること、また、還元剤として木炭を用いた場合に比べてより高浸出率が得られ、その結果残渣も極めて少なることが分かった。
Claims (7)
- 白金族元素を吸着したイオン交換樹脂から焙焼−酸浸出法により白金族元素を回収する方法であって、下記の(1)〜(3)の工程からなることを特徴とする白金族元素の回収方法。
(1)前記イオン交換樹脂を、吸着された白金族元素を合金化するが、樹脂分を分解するに十分な酸化還元雰囲気下に500〜1000℃の温度で焙焼する。
(2)得られた焙焼物を酸化剤の共存下に塩酸を用いて浸出する。
(3)得られた浸出液中に塩化カリウムを添加して白金族元素を含むヘキサクロロ錯塩の結晶を生成させ分離する。 - (1)の工程において、前記酸化還元雰囲気を、前記イオン交換樹脂を焙焼炉内に静置した容器中に100〜150mmの層厚で充填し、大気雰囲気下で保持することにより形成することを特徴とする請求項1に記載の白金族元素の回収方法。
- (1)の工程において、前記酸化還元雰囲気を、前記イオン交換樹脂を焙焼炉内に静置した容器中に10〜100mmの層厚で充填し、まず大気雰囲気下で保持した後、引き続いて炭素及び/又は鉄を添加して密閉状態下で保持することにより形成することを特徴とする請求項1に記載の白金族元素の回収方法。
- (2)の工程において、酸化還元電位を銀/塩化銀電極(塩化カリウム飽和水溶液中)に対して900〜1100mVに制御することを特徴とする請求項1に記載の白金族元素の回収方法。
- (2)の工程において、浸出温度は、60〜100℃に制御することを特徴とする請求項1に記載の白金族元素の回収方法。
- (3)の工程において、酸化還元電位を銀/塩化銀電極(塩化カリウム飽和水溶液中)に対して900〜1100mVに制御することを特徴とする請求項1に記載の白金族元素の回収方法。
- (3)の工程において、温度は、60〜100℃に制御することを特徴とする請求項1に記載の白金族元素の回収方法。
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