JP4705563B2 - 配電系統の状態推定装置、状態推定方法及びそのプログラム - Google Patents
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Description
そこで、計測情報が十分得られない配電系統の潮流状態推定方法として、特許文献2には、配電変電所の送り出し電流からフィーダ内各区間の電流を推定する技術が示されている。これは、配電系統の送り出し電流を計測し、各区間の負荷特性データベースに基づいて各区間電流として配分し、各区間の負荷電流や電力を推定する方法である。
そこで、本願出願人は、引用文献3に、配電系統の限られた電圧・電流計測値から、配電系統の潮流状態を精度よく推定する技術を開示した。
図1は、本実施の形態に係る配電系統及び状態推定装置の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態は、配電系統100と、状態推定装置10とを通信ネットワーク200を介して接続して構成される。
潮流状態の推定の対象となる本実施の形態の配電系統100は、配電変電所110と、ノード(母線)130と、それらに接続する配電線路140と、ノード130に接続される負荷150及び発電機160と、配電系統に設置されるセンサ170とを含んで構成される。また、配電変電所110は、配電変電所母線120及びセンサ170を含んでいる。
なお、センサ170は、設置地点における線路の電流、電流力率、有効電力P、無効電力Q、電圧Vを含んで計測し、通信線路210及び通信ネットワーク200を介して状態推定装置10にこれらの計測値を含む情報を送信する。
RAM15は、プログラムデータ26に記憶された各プログラムを展開し、CPU13の命令により、表示装置11に表示する表示用の画像データ、後記する各プログラムが出力する潮流計算結果、最適化計算結果、状態推定結果等の計算結果データを一時格納するメモリである。
潮流計算データベース21には、潮流計算におけるパラメータとなる線路のインピーダンスを示す線路定数Z(=R+jX)、負荷・発電量(有効電力P、無効電力Q)、系統の線路やノードとの接続状況を表す系統構成データ等が記憶されている。
設備データベース23には、配電系統100内の負荷や発電量の有効電力P及び無効電力Qの上下限、その日変化パターン、配電系統100内の各計測装置(センサ170)の誤差数式モデル(数式、係数、定数等)等のデータが格納されている。
センサ誤差推定結果データベース25には、状態推定計算結果と同時に求められる各計測装置の誤差情報推定結果が格納されている。
なお、状態推定装置10のCPU13で実行される状態推定計算プログラムが、必要に応じて潮流計算プログラム及び最適化計算プログラムを呼び出すことで、特許請求の範囲の「配電系統状態推定部」、「潮流計算部」、及び「感度係数算出部」が具現される。
また、「表示作成部」は、表示作成プログラムを状態推定装置10のCPU13が実行することで具現される。
次に、図2を用いて、センサ170の誤差について説明する。例えば、図2は電圧センサの計測値(電圧計測値)と真値(電圧真値)との関係を表すグラフである。図2のグラフにおいて、破線220は計測誤差がない場合の真値と計測値の関係を表し、実線230は計測誤差が含まれる場合を示している。一般的に、センサの計測値には真値からの誤差が含まれた値が示される。ここでは、真値と計測値の関係が1次式(実線230)で表される例について考える。真値とセンサiの計測値との関係を次の数式(1)に示す。
その上で、複数の時間断面(t=1,2,・・・n)のセンサ計測値から、配電系統100内の負荷の有効電力P、無効電力Q、計測誤差係数u、計測誤差定数bを同時に求めることができる特徴を持つ。このような推定手法を用いると、各センサの誤差を補正することが可能となるために単一断面による状態推定結果よりも精度向上が期待できるとともに、誤差係数計算結果を蓄積することで各センサの計測誤差補正を長期的に明らかにすることができる。
次に、図1に示した状態推定装置10が実行する状態推定計算プログラムの計算処理内容について説明する(適宜、図1参照のこと)。
ここで、図4は、状態推定計算プログラムの実行手順を説明するフローチャートの例である。ここでは、ある時刻において、負荷・発電量の有効電力P及び無効電力Q(以下、負荷・発電量P,Qという)を推定し、そのデータを用いて潮流計算をおこなうことで、系統内各所の電圧、電流、有効・無効潮流を計算する。
そして、ステップS3では、ステップS1及びステップS2で設定したデータを用いて公知のアルゴリズムである潮流計算プログラムを呼び出して潮流計算を実行し、各ノードの電圧、線路潮流(有効・無効電力潮流、線路電流、電流力率を含む)を計算し、この計算結果をRAM15に一時格納する。
ここで、計測値のなかで状態推定計算に使用するデータであるか否か、誤差を考慮するセンサであるか否か、どの時間断面を使って状態推定を行うか等については、計測データベース22に予め設定しておくことや、ユーザが入力手段12を介して指定することができる。
そして、ステップS6では、ステップS3で計算され、RAM15に一時記憶された潮流計算結果と、ステップS4で計測データベース22から読み出した計測値との偏差を計算する。例えば、あるノードmの電圧については、計測値Vm’と潮流計算結果Vmの偏差ΔVmを、-ΔVm=Vm’−Vmを用いて求める。電流、有効・無効電力等についても、状態推定計算に用いる計測値がある場合は、同様に偏差を計算する。
前記のように、負荷・発電量P,Qの修正量計算問題は、二次計画法として定式化される。まず目的関数について説明する。目的関数は、潮流、負荷・発電量等の計測値と推定と値の偏差に重み係数をかけたものの総和とし、次の式(2)で定義される。なお、式(2)は、本発明の「定式化された目的関数」に相当する。
次に、図6を用いて状態推定計算結果の表示の一例を説明する。図6は、状態推定装置10において表示作成プログラムを実行し、配電系統の状態推定計算結果を表示装置11に表示させた例を示す図面である。ここでは、表示装置11への表示を示している。
表示装置11には、潮流計算データベース21に格納された系統構成を示す情報に基づいて、状態推定の対象となる系統図100aが表示され、各ノード130に符号N2〜N5が、また各センサ170に符号a〜iが付されて表示され、負荷150及び発電機160がノードの符号で、センサの測定値がセンサの符号で特定できるように表示される。
なお、図6に示した表示では、表示の便宜のために、配電変電所110の配電変電所母線120にも、ノード130と同様に符号N1を付している。
また、各時刻における潮流計算を行うためのデータを用意でき、将来時刻に発生する系統条件変化に対する系統電圧・電流変化量を予め潮流計算によって把握することができるようになるため、配電系統の信頼度評価システムや配電自動化システムの機能として用いることも可能となる。
12 入力手段
13 CPU
15 RAM
21 潮流計算データベース
22 計測データベース
26 プログラムデータ
170 センサ
Claims (8)
- 配電系統の潮流状態と、各計測装置の誤差とを計算する配電系統の状態推定装置であって、
複数時間断面における前記配電系統の負荷・発電量、ノード電圧及び線路潮流を含む配電系統状態の計測値を格納している計測データベースと、
前記配電系統の線路のインピーダンスを示す線路定数、負荷・発電量の初期値、前記線路及びノードの接続状況を表す系統構成データを含んで格納している潮流計算データベースと、
前記潮流計算データベースから、前記線路定数、前記負荷・発電量の初期値及び前記系統構成データを読み込み、潮流計算により配電系統状態の推定値を計算する潮流計算部と、
前記計測データベースに格納された前記配電系統状態の計測値を読み込み、前記読み込んだ前記配電系統状態の計測値と、前記潮流計算により計算された前記配電系統状態の推定値との偏差を計算し、前記計算した偏差を前記各計測装置における真値と計測値との関係を表すセンサ誤差データの数式で表して定式化した目的関数を、最適化計算により解くことで、前記センサ誤差データの推定値及び前記配電系統状態の推定値の修正量を計算し、この修正量を用いて前記配電系統状態の推定値を修正する配電系統状態推定部と、
を備えることを特徴とする配電系統の状態推定装置。 - 前記配電系統の負荷・発電量の上下限値を格納している設備データベースをさらに備え、
前記潮流計算部は、前記配電系統の負荷・発電量の上下限値を制約条件として用いて前記潮流計算を実行すること、
を特徴とする請求項1に記載の配電系統の状態推定装置。 - 前記配電系統状態推定部は、
前記潮流計算部において計算した前記配電系統状態の推定値を用いて、負荷・発電量の変化に対する配電系統状態の変化量を表す感度係数を算出し、前記偏差及び前記感度係数を用いて定式化した前記目的関数を最適化計算により解くことで、前記センサ誤差データの推定値及び前記潮流計算により計算された前記配電系統状態の推定値の修正量を計算すること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の配電系統の状態推定装置。 - 前記センサ誤差データは、前記計測装置における真値yを、計測値xを変数とするy=ux+bの1次式で表した数式モデルであり、
前記配電系統状態推定部は、前記センサ誤差データの推定値として、前記数式の係数u及び定数bを算出すること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の配電系統の状態推定装置。 - 前記各計測装置のうち、誤差を考慮する計測装置がいずれであるかを指定するための情報を入力する入力部をさらに有し、
前記配電系統状態推定部は、前記入力部から入力された前記情報に応じて、前記誤差を考慮する計測装置の前記センサ誤差データの推定値を計算すること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の配電系統の状態推定装置。 - 前記修正された配電系統状態の推定値及び前記センサ誤差データの推定値と、前記潮流計算データベースに格納された前記系統構成データとを読み込み、前記配電系統に含まれる計測点、ノード、線路、負荷または発電設備と対応させて表示する表示画面を作成する表示作成部をさらに備えること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の配電系統の状態推定装置。 - 配電系統の潮流状態と各計測装置の誤差とを推定する状態推定装置における配電系統の状態推定方法であって、
前記状態推定装置が、
前記状態推定装置の潮流計算データベースに格納された、前記配電系統の線路のインピーダンスを示す線路定数、負荷・発電量の初期値、及び前記線路とノードとの接続状況を表す系統構成データを読み込み、潮流計算により負荷・発電量、ノード電圧及び線路潮流を含む配電系統状態の推定値を計算する手順と、
前記状態推定装置の計測データベースに格納された複数時間断面における前記配電系統状態の計測値を読み込み、前記読み込んだ配電系統状態の計測値と、前記潮流計算により計算された前記配電系統状態の推定値との偏差を計算する手順と、
前記計算した偏差を前記各計測装置における真値と計測値との関係を表すセンサ誤差データの数式で表して定式化した目的関数を、最適化計算により解くことで、前記センサ誤差データの推定値及び前記配電系統状態の推定値の修正量を計算し、この修正量を用いて前記配電系統状態の推定値を修正する手順と、
を含むことを特徴とする配電系統の状態推定方法。 - 請求項7に記載の状態推定方法を、コンピュータである前記状態推定装置に実行させるためのプログラム。
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