JP4689755B1 - 電池内部状態推定装置および電池内部状態推定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電池のシミュレーションモデルに含まれるパラメータを効率よく学習すること。
【解決手段】電池のシミュレーションモデルに基づいて当該電池の内部状態を推定する電池内部状態推定装置において、シミュレーションモデルに含まれる複数のパラメータを格納する格納手段(RAM10c)と、電池から負荷に流れる放電電流を検出する検出手段(I/F10d)と、検出手段によって検出された放電電流の値に応じて適応学習の対象となるパラメータを選択する選択手段(CPU10a)と、選択手段によって選択されたパラメータに対して、適応学習を行う適応学習手段(CPU10a)と、を有することを特徴とする。
【選択図】図2
【解決手段】電池のシミュレーションモデルに基づいて当該電池の内部状態を推定する電池内部状態推定装置において、シミュレーションモデルに含まれる複数のパラメータを格納する格納手段(RAM10c)と、電池から負荷に流れる放電電流を検出する検出手段(I/F10d)と、検出手段によって検出された放電電流の値に応じて適応学習の対象となるパラメータを選択する選択手段(CPU10a)と、選択手段によって選択されたパラメータに対して、適応学習を行う適応学習手段(CPU10a)と、を有することを特徴とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、電池内部状態推定装置および電池内部状態推定方法に関するものである。
電池の内部状態を推定する方法としては、例えば、特許文献1に開示されるような技術が知られている。すなわち、特許文献1には、カルマンフィルタを使用し、電池の充電状態を示すSOC(State of Charge)を推定する技術が開示されている。
ところで、特許文献1に開示されている技術では、パラメータを同時並行的に適応学習するので、学習効率が低いという問題点があった。
そこで、本発明の目的は、適応学習処理を効率よく行うことが可能な電池内部状態推定装置および電池内部状態推定方法を提供することである。
上記課題を解決するために、本発明の電池内部状態推定装置は、電池のシミュレーションモデルに基づいて当該電池の内部状態を推定する電池内部状態推定装置において、前記シミュレーションモデルに含まれる複数のパラメータを格納する格納手段と、前記電池から負荷に流れる放電電流を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された前記放電電流の値に応じて適応学習の対象となるパラメータを選択する選択手段と、前記選択手段によって選択されたパラメータに対して、適応学習を行う適応学習手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、適応学習を効率よく行うことが可能になる。
このような構成によれば、適応学習を効率よく行うことが可能になる。
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記負荷は、原動機を始動するための電動機を少なくとも有し、前記検出手段は、前記電動機によって前記原動機が始動される際の電流を検出し、前記選択手段は、前記電動機に流れる電流値に応じたパラメータを選択し、前記適応学習手段は、前記選択手段によって選択されたパラメータに対して適応学習を実行することを特徴とする。
このような構成によれば、電動機に流れる電流に基づいてパラメータを選択することが可能になる。
このような構成によれば、電動機に流れる電流に基づいてパラメータを選択することが可能になる。
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記シミュレーションモデルの構成要素として、前記電池の陽極および陰極の等価回路としてのコンスタントフェーズエレメント(CPE)を少なくとも有し、前記コンスタントフェーズエレメントは、並列接続された抵抗とコンデンサからなるRC並列ユニットが複数直列接続された等価回路によって表されるとともに、それぞれのRC並列ユニットを構成する抵抗とコンデンサの素子値が前記パラメータとされ、前記選択手段は、前記放電電流の値に応じて予め定められた所定のRC並列ユニットを選択し、前記適応学習手段は、前記選択手段によって選択された抵抗とコンデンサの素子値を適応学習することを特徴とする。
このような構成によれば、シミュレーションモデルを構成するコンスタントフェーズエレメントのパラメータを効率よく学習することができる。
このような構成によれば、シミュレーションモデルを構成するコンスタントフェーズエレメントのパラメータを効率よく学習することができる。
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記シミュレーションモデルの構成要素として、前記電池の内部抵抗を有し、前記内部抵抗の抵抗値が前記パラメータとされ、前記選択手段は、前記電動機の起動時に流れるピーク電流を検出した場合には、前記内部抵抗を選択することを特徴とする。
このような構成によれば、素子値が小さい内部抵抗を効率よく学習することが可能になる。
このような構成によれば、素子値が小さい内部抵抗を効率よく学習することが可能になる。
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記シミュレーションモデルの構成要素として電圧源を有し、前記電圧源の電圧に関するパラメータとして前記電池内部の電解液の濃度値を有し、前記選択手段は、前記放電電流が0または0近傍である場合には、前記電解液の濃度を適応学習の対象として選択することを特徴とする。
このような構成によれば、安定状態における電解液の濃度を効率よく学習することができる。
このような構成によれば、安定状態における電解液の濃度を効率よく学習することができる。
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記パラメータは拡張カルマンフィルタの状態ベクトルを構成し、前記適応学習手段は、前記状態ベクトルに対して前記適応学習を実行することを特徴とする。
このような構成によれば、拡張カルマンフィルタに基づいて、シミュレーションモデルを構成するパラメータを効率よく学習することができる。
このような構成によれば、拡張カルマンフィルタに基づいて、シミュレーションモデルを構成するパラメータを効率よく学習することができる。
また、本発明の電池内部状態推定装置は、電池のシミュレーションモデルに基づいて当該電池の内部状態を推定する電池内部状態推定方法において、前記シミュレーションモデルに含まれる複数のパラメータを格納する格納ステップと、前記電池から負荷に流れる放電電流を検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて検出された前記放電電流の大小に応じて適応学習の対象となるパラメータを選択する選択ステップと、前記選択ステップにおいて選択されたパラメータに対して、適応学習を行う適応学習ステップと、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、適応学習を効率よく行うことが可能になる。
このような方法によれば、適応学習を効率よく行うことが可能になる。
本発明によれば、適応学習処理を効率よく行うことが可能な電池内部状態推定装置および電池内部状態推定方法を提供することが可能となる。
次に、本発明の実施形態について説明する。
(A)実施形態の構成の説明
図1は本発明の実施形態に係る電池内部状態推定装置の構成例を示す図である。この図1に示すように、本実施形態の電池内部状態推定装置1は、制御部10、電圧検出部11(請求項中の「検出手段」の一部に対応)、電流検出部12(請求項中の「検出手段」の一部に対応)、および、放電回路14を主要な構成要素としており、鉛蓄電池13(請求項中の「電池」に対応)の内部状態を推定する。この例では、鉛蓄電池13には、電流検出部12を介してオルタネータ15、セルモータ16(請求項中の「電動機」に対応)、および、負荷17が接続されている。なお、本実施形態では、電池内部状態推定装置1が、例えば、自動車等の車両に搭載されている場合を例に挙げて説明する。
図1は本発明の実施形態に係る電池内部状態推定装置の構成例を示す図である。この図1に示すように、本実施形態の電池内部状態推定装置1は、制御部10、電圧検出部11(請求項中の「検出手段」の一部に対応)、電流検出部12(請求項中の「検出手段」の一部に対応)、および、放電回路14を主要な構成要素としており、鉛蓄電池13(請求項中の「電池」に対応)の内部状態を推定する。この例では、鉛蓄電池13には、電流検出部12を介してオルタネータ15、セルモータ16(請求項中の「電動機」に対応)、および、負荷17が接続されている。なお、本実施形態では、電池内部状態推定装置1が、例えば、自動車等の車両に搭載されている場合を例に挙げて説明する。
制御部10は、図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)10a(請求項中の「選択手段」および「適応学習手段」に対応)、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c(請求項中の「格納手段」に対応)、および、I/F(Interface)10d(請求項中の「検出手段」の一部に対応)を主要な構成要素としている。CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラム10baに基づいて装置の各部を制御する。ROM10bは、半導体メモリによって構成され、プログラム10baその他の情報を格納している。RAM10cは、半導体メモリによって構成され、パラメータ10caその他の情報を書き換え可能に格納する。I/F10dは、電圧検出部11および電流検出部12からの検出信号をデジタル信号に変換して入力するとともに、放電回路14に対して制御信号を供給して制御する。
電圧検出部11は、鉛蓄電池13の端子電圧を検出して制御部10に通知する。電流検出部12は、鉛蓄電池13に流れる電流を検出して制御部10に通知する。放電回路14は、例えば、半導体スイッチを有し、制御部10の制御に基づいて、鉛蓄電池13に蓄積されている電力を放電する。オルタネータ15は、例えば、レシプロエンジン等の原動機(不図示)によって駆動され、直流電力を生成して鉛蓄電池13を充電する。セルモータ16は、例えば、直流モータによって構成され、鉛蓄電池13から供給される直流電力によって回転し、原動機を始動する。負荷17は、例えば、自動車のヘッドライト、ワイパー、方向指示ライト、ナビゲーション装置その他の装置によって構成されている。
図3は、プログラム10baが実行されることにより実現される処理アルゴリズムの概略を説明するための図である。この図に示すように、本実施形態では、複数のパラメータを有する鉛蓄電池13のシミュレーションモデル30を設定する。そして、対象となる鉛蓄電池13を観測して観測値を得るとともに、シミュレーションモデル30に基づいて観測値に対応する計算値を得る。これらの観測値と計算値の偏差を計算し、拡張カルマンフィルタ31による適応学習によって最適なパラメータを推定する。そして、推定されたパラメータにより、シミュレーションモデル30を更新することにより、シミュレーションモデル30を最適化することができる。このようにして最適化されたシミュレーションモデル30により、鉛蓄電池13の内部状態を推定するSOC(State of Charge)、SOF(State of Function)、および、SOH(State of Health)等を計算によって得ることができる。なお、本実施形態では、鉛蓄電池13から流出する放電電流の値によって、適応学習の対象となるパラメータを選択することにより、適応学習を高い精度で行うことが可能になる。
なお、本明細書中において「適応学習」とは、パラメータを有する柔軟で一般的なモデルを用意し、学習によって統計的・適応的にパラメータを最適化する手法を言う。以下の実施形態では、適応学習の一例として拡張カルマンフィルタを用いているが、本発明はこのような場合にのみ限定されるものではなく、例えば、ニューラルネットワークモデルを用いた適応学習や、遺伝的アルゴリズムモデルを用いた適応学習等を用いることも可能である。すなわち、学習対象のモデルを作成し、観測により得られた結果によって、モデルを構成するパラメータを最適化する手法であれば、どのような手法でも使用することができる。
図4は、鉛蓄電池13のシミュレーションモデル30(この例では電気的な等価回路)の一例を示す図である。この例では、シミュレーションモデル30は、抵抗R0、インダクタンスL、インピーダンスZ1,Z2、および、電圧源V0を主要な構成要素としている。
ここで、抵抗R0は、鉛蓄電池13の電極の導電抵抗および電解液の液抵抗を主要な要素とする内部抵抗である。インダクタンスLは、鉛蓄電池13の電極等に流れる電流によって生じる電界に起因する誘導成分である。なお、このインダクタンスLは、鉛蓄電池13に接続されるケーブルのインダクタンス値に比較すると非常に小さい値であるので必要に応じて無視することができる。インピーダンスZ1は、鉛蓄電池13の陽極とこれに接する電解液とに対応する等価回路であり、基本的にはバトラー・ボルマー(Butler-Volmer)の式に基づく特性を有し、コンスタントフェーズエレメントCPE1と抵抗R1との並列接続回路として表すことができる。なお、インピーダンスZ1の詳細については後述する。インピーダンスZ2は、鉛蓄電池13の陰極とこれに接する電解液とに対応する等価回路であり、前述のバトラー・ボルマーの式に基づく特性を有し、コンスタントフェーズエレメントCPE2と抵抗R2との並列接続回路として表すことができる。なお、インピーダンスZ2の詳細についても後述する。電圧源V0は、内部インピーダンスが0の理想的な電圧源であり、陰極付近の電解液濃度CNおよび陽極付近の電解液濃度CPをパラメータとして電圧が表される電圧源である。
図5は、図4に示す等価回路のインピーダンス特性を示す図である。この図5において縦軸はインピーダンスの虚数成分(Im(Z))を示し、横軸はインピーダンスの実数成分(Re(Z))を示している。また、図中の太線は等価回路のインピーダンス特性を示している。この例では、周波数が増加すると等価回路のインピーダンスは、太線上を右から左に向かって移動し、まず、Z2によって示される半円に漸近するように軌跡を描いて移動し、続いて、Z1によって示される半円に漸近するように軌跡を描いて移動する。そして、高い周波数では実数成分がR0の直線に漸近し、インダクタンスLに起因して、周波数の増加に伴ってインピーダンスが増加していく特性を有している。
図6は、本実施形態において使用される、インピーダンスZ1,Z2の等価回路を示している。この例では、インピーダンスZ1としては、抵抗Ra1,Ra2,Ra3とコンデンサCa1,Ca2,Ca3がそれぞれ並列接続されたRC並列ユニットが複数直列接続されて形成されている。具体的には、抵抗Ra1とコンデンサCa1が並列接続されて1つのRC並列ユニットを構成し、同様に、抵抗Ra2とコンデンサCa2および抵抗Ra3とコンデンサCa3が並列接続されてRC並列ユニットをそれぞれ構成する。なお、図6に示すように、各RC並列ユニットに生じる電圧降下をそれぞれΔVa1,ΔVa2,ΔVa3とする。
また、インピーダンスZ2としては、抵抗Rb1,Rb2,Rb3とコンデンサCb1,Cb2,Cb3が並列接続されたRC並列ユニットが複数直列接続されて形成されている。なお、図6に示すように、各RC並列ユニットに生じる電圧降下をそれぞれΔVb1,ΔVb2,ΔVb3とする。
図7は、鉛蓄電池13の放電電流と、電極と電解液の間に生じる電気二重層の関係を示す図である。図7(A)は、放電電流が小さい場合の電気二重層の状態を示し、図7(B)は、図7(A)よりも放電電流が大きい場合の電気二重層の状態を示し、図7(C)は、図7(B)よりも放電電流が大きい場合の電気二重層の状態を示している。この図7に示すように、電流が多く流れるほど、電気二重層が広がる傾向にある。本実施形態では、図7(A)に示す状態は、抵抗Ra3とコンデンサCa3によって構成されるRC並列ユニットおよび抵抗Rb3とコンデンサCb3によって構成されるRC並列ユニットによって表される。また、図7(B)に示す状態は、抵抗Ra2とコンデンサCa2によって構成されるRC並列ユニットおよび抵抗Rb2とコンデンサCb2によって構成されるRC並列ユニットによって表される。さらに、図7(C)に示す状態は、抵抗Ra1とコンデンサCa1によって構成されるRC並列ユニットおよび抵抗Rb1とコンデンサCb1によって構成されるRC並列ユニットによって表される。
(B)実施形態の概略動作の説明
つぎに、本実施形態の概略の動作を説明する。本実施形態では、セルモータ16によって原動機を起動する際に、鉛蓄電池13からセルモータ16に流れる放電電流の値に応じて、シミュレーションモデル30のパラメータを選択し、選択したパラメータについて適応学習を実行し、それ以外のパラメータについては適応学習を行わない。図8は、セルモータ16によって原動機を始動する場合に鉛蓄電池13から流れる放電電流と時間の関係を示す図である。また、図9は図8と同じ場合において、抵抗R0に生じる電圧降下(VR0)、インダクタンスLに生じる電圧降下(VL)、インピーダンスZ1に生じる電圧降下(VZ1)、および、インピーダンスZ2に生じる電圧降下(VZ2)を示している。この例では、セルモータ16が回転される前の期間(τ1の期間)では、放電電流は殆ど流れておらず、この期間において電解液濃度を示すパラメータCNおよびCPが適応学習の対象となる。セルモータ16が回転される前の期間では、鉛蓄電池13内における電解液の濃度分布は安定していることから、このような期間にこれらのパラメータを選択して適応学習することで、正確な濃度値を学習することができる。
つぎに、本実施形態の概略の動作を説明する。本実施形態では、セルモータ16によって原動機を起動する際に、鉛蓄電池13からセルモータ16に流れる放電電流の値に応じて、シミュレーションモデル30のパラメータを選択し、選択したパラメータについて適応学習を実行し、それ以外のパラメータについては適応学習を行わない。図8は、セルモータ16によって原動機を始動する場合に鉛蓄電池13から流れる放電電流と時間の関係を示す図である。また、図9は図8と同じ場合において、抵抗R0に生じる電圧降下(VR0)、インダクタンスLに生じる電圧降下(VL)、インピーダンスZ1に生じる電圧降下(VZ1)、および、インピーダンスZ2に生じる電圧降下(VZ2)を示している。この例では、セルモータ16が回転される前の期間(τ1の期間)では、放電電流は殆ど流れておらず、この期間において電解液濃度を示すパラメータCNおよびCPが適応学習の対象となる。セルモータ16が回転される前の期間では、鉛蓄電池13内における電解液の濃度分布は安定していることから、このような期間にこれらのパラメータを選択して適応学習することで、正確な濃度値を学習することができる。
セルモータ16の回転が開始されると、放電電流が急激に流れ始める(突入電流が流れる)。この突入電流は、セルモータ16が直流ブラシモータであることから、停止状態から起動する際に最も大きくなる。また、突入電流の大きさは、例えば、環境温度や原動機の状態によって異なると考えられる。具体的には、長期間停止されたり、環境温度が低かったりして、原動機が冷却された状態では潤滑油の粘度が上昇しているので、駆動トルクが大きく電流もそれに応じて大きくなる。この例では、ピーク電流である500A近傍に定められた所定の閾値(この例では400A)を超える期間(τ2の期間)において、抵抗R0が選択されて適応学習が実行される。なお、最大電流に近い電流が流れる期間において、抵抗R0の値を適応学習するのは、抵抗R0の値は非常に小さいため、これによる電圧降下は、最大電流に近い電流が流れる期間が最も観測しやすいからである。
つぎに、セルモータ16に流れる電流がピーク電流よりも少なくなった最初の期間(τ3の期間)では、Ra1,Ca1,Rb1,Cb1が適応学習の対象として選択される。この期間は、図7(C)の状態に対応しており、この状態はRa1およびCa1により構成されるRC並列ユニットおよびRb1およびCb1により構成されるRC並列ユニットに対応付けされていることから、放電電流が300Aから200Aの期間では、Ra1,Ca1,Rb1,Cb1が選択され、適応学習が実行される。
つぎに、放電電流が200Aから100Aの期間では、Ra2,Ca2,Rb2,Cb2が適応学習の対象として選択される。この期間は、図7(B)の状態に対応しており、この状態はRa2およびCa2により構成されるRC並列ユニットおよびRb2およびCb2により構成されるRC並列ユニットに対応付けされていることから、放電電流が200Aから100Aの期間では、Ra2,Ca2,Rb2,Cb2が選択され、適応学習が実行される。
つぎに、放電電流が100Aから0Aの期間では、Ra3,Ca3,Rb3,Cb3が適応学習の対象として選択される。この期間は、図7(A)の状態に対応しており、この状態はRa3およびCa3により構成されるRC並列ユニットおよびRb3およびCb3により構成されるRC並列ユニットに対応付けされていることから、放電電流が100Aから0Aの期間では、Ra3,Ca3,Rb3,Cb3が選択され、適応学習が実行される。なお、セルモータ16によって原動機が始動されると、オルタネータ15による充電が開始されるため、鉛蓄電池13に流れる電流はプラスとなる(図8参照)。
なお、適応学習の方法としては、例えば、所定の周期(10mS)単位で電圧検出部11および電流検出部12の検出値を取得して検出値に基づく観測値を生成し、一方で、シミュレーションモデル30に基づく予測値を生成する。そして、観測値と予測値とを比較し、比較結果に基づいて選択されているパラメータを拡張カルマンフィルタに基づいて最適化することで実現できる。なお、最適学習の方法としては、前述したように様々な方法が存在するので、複数の方法の中から最適な方法を選択すればよい。
以上のようにして適応学習が行われたシミュレーションモデル30を用いることにより、例えば、SOC、SOF、および、SOHを正確に算出することができる。これらの値を参照することにより、鉛蓄電池13の内部状態を正確に知ることができる。
具体例を示す。図10は、本実施形態のシミュレーションモデル30を用いて計算(推測)されたSOHと、SOHの実測値との対応関係を示す図である。この図では、横軸が実測値を示し、縦軸が推測値を示し、各点はサンプルを示す。図10では、各点は推測値と実測値が一致する45度の直線上に各点がほぼ集まっており、本実施形態による推定の妥当性が高いことが示されている。また、図11は、SOHの誤差とサンプル数との関係を示す図である。この図において横軸はSOHの誤差(%)を示し、縦軸はサンプル数を示す。この図に示すように、誤差が10%以内のサンプルが全体の大半を占めている。この図からも、本実施形態の妥当性が高いことが分かる。
以上に説明したように、本実施形態では、放電電流の値に応じて対象となるパラメータが選択され、適応学習が実行される。これにより、それぞれのパラメータが観測値に最も顕著に表れるタイミングで、適応学習を行うようにしたので、適応学習を効率良く行うことで、鉛蓄電池13の内部状態を正確に知ることができる。また、複数のパラメータのうちの限られたパラメータを適応学習の対象とすることにより、演算に要する時間を短縮することができる。これにより、例えば、演算能力の低いプロセッサを使用することが可能になるので、装置の製造コストを低減することができる。
(C)実施形態の詳細な動作の説明
つぎに、本実施形態の詳細な動作を図12,13に示すフローチャートを参照して説明する。図12は、図1に示す実施形態において実行される処理の詳細を説明するためのフローチャートである。また、図13は、図12のステップS22の詳細を説明するためのフローチャートである。なお、本実施形態では、図4に示す等価回路において、抵抗R0およびインピーダンスZ1,Z2による電圧降下をΔVとしたときに、シミュレーションモデル30によるこの電圧降下ΔVの予測値をΔVxとして求める。そして、予測値ΔVxを所定の許容値と比較することで、鉛蓄電池13の放電能力を判定するようにしている。ここで、インダクタンスLについては、配線によるインピーダンスの方が大きいとして無視する。また、電圧降下ΔVと、鉛蓄電池13の端子電圧Vと、OCV(Open Circuit Voltage)に対応する電圧源の電圧V0との間には以下の関係が成立するものとする。
つぎに、本実施形態の詳細な動作を図12,13に示すフローチャートを参照して説明する。図12は、図1に示す実施形態において実行される処理の詳細を説明するためのフローチャートである。また、図13は、図12のステップS22の詳細を説明するためのフローチャートである。なお、本実施形態では、図4に示す等価回路において、抵抗R0およびインピーダンスZ1,Z2による電圧降下をΔVとしたときに、シミュレーションモデル30によるこの電圧降下ΔVの予測値をΔVxとして求める。そして、予測値ΔVxを所定の許容値と比較することで、鉛蓄電池13の放電能力を判定するようにしている。ここで、インダクタンスLについては、配線によるインピーダンスの方が大きいとして無視する。また、電圧降下ΔVと、鉛蓄電池13の端子電圧Vと、OCV(Open Circuit Voltage)に対応する電圧源の電圧V0との間には以下の関係が成立するものとする。
ΔV=V−V0 ・・・ (1)
鉛蓄電池13の放電能力を正確に判定するためには、鉛蓄電池13のシミュレーションモデル30(等価回路)が所定のパターンの電流で放電したときの電圧降下の予測値ΔVxを精度良く推定する必要がある。本実施形態では、セルモータ16による原動機の始動時において、所定の時間間隔(ΔT)の離散時間で鉛蓄電池13を観測し、得られた観測データに基づいてシミュレーションモデル30のパラメータを適応学習することにより、電圧降下ΔVxを精度良く推定できるようにしている。図12に示すフローチャートが実行されると、以下の処理が実行される。なお、この処理は、例えば、自動車のエンジン(原動機)を始動するための「イグニッションキー」が回転された場合に実行されるものとする。
ステップS10では、CPU10aは、前回の処理実行時の時刻Tnに対して、時間間隔ΔT(例えば、10mS)を加算し、現在の時刻Tn+1を得る。具体的には、図12に示す処理は、時間間隔ΔT毎に実行されるので、処理が実行される度にΔTずつ時刻が増加されていく。
ステップS11では、CPU10aは、鉛蓄電池13の観測値を取得する。具体的には、CPU10aは、放電回路14をΔTよりも短い期間(例えば、ΔTの10%の期間)オンの状態にして放電電流を通じるとともに、電圧検出部11から鉛蓄電池13の端子電圧を取得して変数Vn+1に格納し、電流検出部12から鉛蓄電池13の放電電流を取得して変数In+1に格納する。また、所定のSOCの算出方法に基づいてSOCn+1を算出する。具体的な算出方法としては、例えば、鉛蓄電池13の起動初期の安定OCVの測定値(詳細には図8のτ1の期間に測定された鉛蓄電池13の端子電圧(=V0))と、電流積算値を組み合わせて用いる方法や、動作環境中における電流電圧特性(I/V)を用いる方法があり、いずれの方法を用いてもよい。なお、電圧検出部11は、内部抵抗が非常に高く、測定時に電流が殆ど流れないので、鉛蓄電池13の起動初期に測定した電圧は、抵抗R0およびインピーダンスZ1,Z2の影響を殆ど受けないため、電圧源の電圧V0を測定できるとする。
ステップS12では、CPU10aは、ステップS11で取得した観測値を以下の式に代入することにより、電圧降下ΔVn+1を得る。
ΔVn+1=Vn+1−OCVn+1 ・・・(2)
ここで、OCVn+1は、ステップS12で得られたSOCn+1から、次式で算出することができる。
OCVn+1=a・SOCn+1+b ・・・(3)
ΔVn+1=Vn+1−OCVn+1 ・・・(2)
ここで、OCVn+1は、ステップS12で得られたSOCn+1から、次式で算出することができる。
OCVn+1=a・SOCn+1+b ・・・(3)
なお、式(3)において、係数a,bは、実験等によって予め求めた値を用いることができる。このような値は、例えば、ROM10bに格納しておくことができる。また、係数a,bは、温度依存性を有する場合があるので、図示せぬ温度検出部から得られた温度に応じた係数a,bをROM10bに格納されているテーブルから取得するようにしてもよい。
ステップS13では、CPU10aは、n回目の観測値と前回の状態ベクトル推定値からヤコビアン行列Fnを更新する。ここで、本実施形態ではヤコビアン行列Fnは以下のように表されるものとする。ここで、diagは対角行列を示している。
Fn=diag(1−ΔT/Ra1n・Ca1n,1−ΔT/Ra2n・Ca2n,1−ΔT/Ra3n・Ca3n,1−ΔT/Rb1n・Cb1n,1−ΔT/Rb2n・Cb2n,1−ΔT/Rb3n・Cb3n,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1) ・・・(4)
Fn=diag(1−ΔT/Ra1n・Ca1n,1−ΔT/Ra2n・Ca2n,1−ΔT/Ra3n・Ca3n,1−ΔT/Rb1n・Cb1n,1−ΔT/Rb2n・Cb2n,1−ΔT/Rb3n・Cb3n,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1,1) ・・・(4)
ステップS14では、CPU10aは、ステップS12における観測により得た観測値から計算したΔVn+1を観測残差Yn+1とする。
Yn+1=ΔVn+1 ・・・(5)
Yn+1=ΔVn+1 ・・・(5)
ステップS15では、CPU10aは、状態ベクトルの1周期先を予測する。具体的には、例えば、図6の左端のRC並列回路の電圧降下ΔVa1nは、以下の式で表される。
ΔVa1n+1=ΔVa1n−ΔVa1n・ΔT/Ra1n・Ca1n ・・・(6)
ΔVa1n+1=ΔVa1n−ΔVa1n・ΔT/Ra1n・Ca1n ・・・(6)
したがって、状態ベクトルXn Tを以下の式で表すものとする。なお、Tは転置行列を示す。
Xn T=(ΔVa1n,ΔVa2n,ΔVa3n,ΔVb1n,ΔVb2n,ΔVb3n,R0n,Ra1n,Ra2n,Ra3n,Ca1n,Ca2n,Ca3n,Rb1n,Rb2n,Rb3n,Cb1n,Cb2n,Cb3n) ・・・(7)
Xn T=(ΔVa1n,ΔVa2n,ΔVa3n,ΔVb1n,ΔVb2n,ΔVb3n,R0n,Ra1n,Ra2n,Ra3n,Ca1n,Ca2n,Ca3n,Rb1n,Rb2n,Rb3n,Cb1n,Cb2n,Cb3n) ・・・(7)
また、入力ベクトルUn Tを以下の式で表す。
Un T=(Δt・In/Ca1n,Δt・In/Ca2n,Δt・In/Ca3n,Δt・In/Cb1n,Δt・In/Cb2n,Δt・In/Cb3n,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0) ・・・(8)
Un T=(Δt・In/Ca1n,Δt・In/Ca2n,Δt・In/Ca3n,Δt・In/Cb1n,Δt・In/Cb2n,Δt・In/Cb3n,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0) ・・・(8)
したがって、Xnの1周期先の予測値Xn+1|nを以下の式により算出する。
Xn+1|n=Fn・Xn+Un ・・・(9)
Xn+1|n=Fn・Xn+Un ・・・(9)
また、観測モデルに関するヤコビアンHn Tを以下の式で表す。
Hn T=(1,1,1,1,1,1,In,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0) ・・・(10)
このとき、システム方程式および観測方程式は以下の式で表現できるとする。
システム方程式:Xn+1=Fn・Xn ・・・(11)
観測方程式:Yn+1=Hn T・Xn ・・・(12)
Hn T=(1,1,1,1,1,1,In,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0,0) ・・・(10)
このとき、システム方程式および観測方程式は以下の式で表現できるとする。
システム方程式:Xn+1=Fn・Xn ・・・(11)
観測方程式:Yn+1=Hn T・Xn ・・・(12)
ステップS16では、CPU10aは、1周期先の予測値Xn+1|nと、観測値Yn+1を用いて最適カルマンゲインを算出し、この最適カルマンゲインに基づいて状態ベクトルの更新値Xn+1|n+1を算出する。なお、通常の拡張カルマンフィルタに基づく演算では、得られた状態ベクトルXn+1|n+1に基づいて、全てのパラメータを更新するが、本実施形態では、後述するように、放電電流の値に応じて定まる所定のパラメータに対してのみ更新処理を実行する。
ステップS17では、CPU10aは、ステップS12で観測した電流InがIn≒0Aであるか否かを判定し、In≒0Aである場合(ステップS17:YES)にはステップS18に進み、それ以外の場合(ステップS17:NO)にはステップS19に進む。例えば、図8に示すτ1の期間である場合にはIn≒0Aが成立するので、その場合にはステップS18に進む。なお、具体的な判断の方法としては、例えば、負荷17のうちエンジン停止時に定常的に流れている電流値(例えば、車載時計、カーセキュリティシステム等に流れる数十mA程度の電流値)が流れている場合には、In≒0Aが成立しているとしてステップS18に進むようにすればよい。
ステップS18では、CPU10aは、パラメータCNおよびCPの値を更新する。ここで、パラメータCNおよびCPは、それぞれ陰極および陽極の電解液濃度を表している。また、電圧源V0の電圧は、これらのパラメータCN,CPの関数V0(CN,CP)として表される。このステップS18では、観測された電圧および電流からCN,CPを求め、求めた値によってこれらのパラメータCN,CPを更新する。なお、このようにして求めたパラメータCN,CPにより、関数V0(CN,CP)を用いて前述した鉛蓄電池13の起動初期の安定OCVの測定値(詳細には図8のτ1の期間に測定された鉛蓄電池13の端子電圧V0)(ステップS11参照)を求めることができる。
ステップS19では、CPU10aは、ステップS12で観測した電流InがIn>400Aであるか否かを判定し、In>400Aである場合(ステップS19:YES)にはステップS20に進み、それ以外の場合(ステップS19:NO)にはステップS21に進む。例えば、図8に示すτ2の期間である場合には、In>400Aが成立するので、その場合にはステップS20に進む。
ステップS20では、CPU10aは、ステップS16において求めた状態ベクトルXn+1|n+1に含まれているパラメータR0nの値により、パラメータR0nの値を更新する。これにより、R0nは新たな値となる。
ステップS21では、CPU10aは、ステップS12で観測した電流Inが300A≧In>0Aであるか否かを判定し、300A≧In>0Aが成立する場合(ステップS21:YES)にはステップS22に進み、それ以外の場合(ステップS21:NO)にはステップS23に進む。例えば、図8において、τ3〜τ5の期間に該当する場合には、300A≧In>0Aが成立するので、ステップS22に進む。
ステップS22では、CPU10aは、パラメータZ1,Z2を更新する処理を実行する。なお、この処理の詳細は、図13を参照して後述する。
ステップS23では、CPU10aは、処理を繰り返し実行するか否かを判定し、繰り返し実行する場合(ステップS23:YES)にはステップS10に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS23:NO)にはステップS24に進む。例えば、原動機が始動されてから所定の時間(例えば、数秒)が経過するまでは処理を繰り返し、所定の時間が経過するとステップS24に進む。
ステップS24では、CPU10aは、ΔVxを推定する。詳細には、CPU10aは、拡張カルマンフィルタ演算によって更新されたパラメータを用いたシミュレーションモデル30に基づき、所定の電流パターンで鉛蓄電池13から放電させたときの電圧降下ΔVxを推定する。前述した所定の電流パターンとしては、例えば、現在の放電電流に新たに起動させる負荷の電流パターンを加算して決定することができる。
具体的な計算方法としては式(5)の関係と、所定の電流パターンIxn+1の値を用いて以下のように表すことができる。
ΔVxn+1=ΔVa1n+1+ΔVa2n+1+ΔVa3n+1+ΔVb1n+1+ΔVb2n+1+ΔVb3n+1+R0・Ixn+1 ・・・(13)
ΔVxn+1=ΔVa1n+1+ΔVa2n+1+ΔVa3n+1+ΔVb1n+1+ΔVb2n+1+ΔVb3n+1+R0・Ixn+1 ・・・(13)
なお、計算負荷を低減する方法として、前述した方法より若干精度は落ちるが、便宜的にΔVx=(Ra+Rb)×IxあるいはΔVx=Ra×Ix、ΔVx=Rb×IxのようなΔVx=G(Ra,Rb,Ix)の関係を実験よりもとめて算出してもよい。
ステップS25では、CPU10aは、予測した電圧降下ΔVxを所定の許容値ΔVlimitと比較して、ΔVxがΔVlimit以下の場合(ステップS25:YES)にはステップS26に進み、それ以外の場合(ステップS25:NO)にはステップS27に進む。
ステップS26では、CPU10aは、放電能力が十分と判定する。また、ステップS27では、CPU10aは、放電能力が不足していると判定する。そして、処理を終了する。
つぎに、図13を参照して、図12に示すステップS22の処理の詳細について説明する。図13に示す処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS40では、CPU10aは、ステップS12で観測した電流Inが300A≧In>200Aであるか否かを判定し、300A≧In>200Aが成立する場合(ステップS40:YES)にはステップS41に進み、それ以外の場合(ステップS40:NO)にはステップS42に進む。例えば、図8において、τ3の範囲に該当する場合には、300A≧In>0Aが成立するので、ステップS41に進む。
ステップS41では、CPU10aは、ステップS16において求めた状態ベクトルXn+1|n+1に含まれているパラメータの値により、パラメータRa1n,Rb1n,Ca1n,Cb1nの値を更新する。これにより、パラメータRa1n,Rb1n,Ca1n,Cb1nは新たな値となる。
ステップS42では、CPU10aは、ステップS12で観測した電流Inが200A≧In>100Aであるか否かを判定し、200A≧In>100Aが成立する場合(ステップS42:YES)にはステップS43に進み、それ以外の場合(ステップS42:NO)にはステップS44に進む。例えば、図8において、τ4の範囲に該当する場合には、200A≧In>100Aが成立するので、ステップS43に進む。
ステップS43では、CPU10aは、ステップS16において求めた状態ベクトルXn+1|n+1に含まれているパラメータの値により、パラメータRa2n,Rb2n,Ca2n,Cb2nの値を更新する。これにより、パラメータRa2n,Rb2n,Ca2n,Cb2nは新たな値となる。
ステップS44では、CPU10aは、ステップS12で観測した電流Inが100A≧In>0Aであるか否かを判定し、100A≧In>0Aが成立する場合(ステップS44:YES)にはステップS45に進み、それ以外の場合(ステップS44:NO)には元の処理に復帰(リターン)する。例えば、図8において、τ5の範囲に該当する場合には、100A≧In>0Aが成立するので、ステップS45に進む。
ステップS45では、CPU10aは、ステップS16において求めた状態ベクトルXn+1|n+1に含まれているパラメータの値により、パラメータRa3n,Rb3n,Ca3n,Cb3nの値を更新する。これにより、パラメータRa3n,Rb3n,Ca3n,Cb3nは新たな値となる。そして、元の処理に復帰(リターン)する。
以上の処理によれば、拡張カルマンフィルタを用いて、鉛蓄電池13のシミュレーションモデル30のパラメータを適応学習することができる。また、適応学習を実行する際には、放電電流の値に応じて対象となるパラメータを選択し、選択されたパラメータに対して適応学習を行うようにしたので、パラメータの影響が顕著なタイミングで適応学習を行うことで、精度よく、かつ、効率的に学習を行うことができる。
(D)変形実施形態
なお、上記の各実施形態は、一例であって、これ以外にも各種の変形実施態様が存在する。例えば、以上の実施形態では、拡張カルマンフィルタを用いて適応学習を行うようにしたが、これ以外の方法を用いるようにしてもよい。具体的には、ニューラルネットワークモデルを用いて適応学習を行うようにしたり、遺伝的アルゴリズムモデルを用いて適応学習を行うようにしたりしてもよい。
なお、上記の各実施形態は、一例であって、これ以外にも各種の変形実施態様が存在する。例えば、以上の実施形態では、拡張カルマンフィルタを用いて適応学習を行うようにしたが、これ以外の方法を用いるようにしてもよい。具体的には、ニューラルネットワークモデルを用いて適応学習を行うようにしたり、遺伝的アルゴリズムモデルを用いて適応学習を行うようにしたりしてもよい。
また、以上の実施形態では、学習対象以外のパラメータについては、パラメータを更新しないようにしたが、学習対象以外のパラメータについては、状態ベクトルの計算対象から除外するようにしてもよい。具体的に説明する。例えば、一般的な拡張カルマンフィルタの場合、以下のような予測と更新が繰り返し実行される。
更新し、それ以外のパラメータについては更新しないようにしたが、例えば、式(17)を更新の対象となるパラメータのみについて計算するようにしてもよい。具体的には、例えば、Ra1,Rb1,Ca1,Cb1が適応学習の対象となっている場合には、式(17)を計算する際には、これらのパラメータのみについて計算を行い、それ以外のパラメータについては計算を行わないようにすることも可能である。このような方法によれば、対象外のパラメータに関する計算を省略することで、計算速度を向上させることができる。また、CPU10aとして性能が低いものを使用することができるので、装置の製造コストを低減することが可能になる。
また、更新の対象となるパラメータのみについて計算を行うのではなく、更新の対象となるパラメータについては、他のパラメータよりも重み付けを重くすることができる。例えば、各パラメータを更新する際に、重み係数Wをそれぞれ設定し、更新の対象となるパラメータに対しては大きな重み付けを行い、それ以外のパラメータに対しては小さな重み付けをすることも可能である。具体例として、更新対象となるパラメータについては、W=0.8とし、それ以外のパラメータについてはW=0.2とするようにしてもよい。なお、前述した数字はあくまでも一例であり、それ以外の数字であってもよいことはいうまでもない。
また、以上の実施形態では、インピーダンスZ1,Z2の2つの存在を想定したが、例えば、いずれか一方のみが存在すると想定するようにしてもよい。また、インピーダンスZ1,Z2はそれぞれ3つのRC並列ユニットによる構成としてあるが、インピーダンスZ1,Z2のそれぞれでRC並列ユニットの個数が異なってもよい。また、3つではなく、1または2つであったり、4以上であったりしてもよい。なお、その場合には、個数に応じて、τ3〜τ5の分割数を変更するようにすればよい。また、図8,9に示すτ3〜τ5の分割はあくまでも一例であって、これ以外の分割方法であってもよいことはいうまでもない。
また、以上の実施形態では、放電回路14によって放電電流を流すようにしたが、セルモータ16に流れる電流は時間的な変化を伴うことから、放電回路14を用いずにセルモータ16に流れる電流を所定の周期でサンプリングして用いるようにしてもよい。すなわち、放電回路16を除外し、セルモータ16の回転時における電流および電圧を所定の周期(例えば、10mSの周期)でサンプリングし、前述した処理を実行するようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、電解液の陰極と陽極の濃度CN,CPを学習対象として選択したが、単にV0を学習対象として選択するようにしてもよい。あるいは、陰極と陽極の濃度CN,CPに加えて、セパレータの電解液濃度CSを学習対象として加え、これらのCN,CP,CS基づいてV0を求めるようにしてもよい。
また、以上の実施形態では、インダクタンスLを無視するようにしたが、インダクタンスLを学習対象に加えるようにしてもよい。その場合には、例えば、電流変化が大きい部分(例えば、セルモータ16の起動時)において適用学習を行うようにすればよい。
また、以上の実施形態では、セルモータ16に流れる電流に基づいて適応学習を実行するようにしたが、これ以外の負荷に流れる電流に基づいて適応学習を実行するようにしてもよい。例えば、車両を駆動するためのモータ(例えば、ハイブリッド車のモータ)が存在する場合には、当該モータに流れる電流に基づいて適応学習を行うようにしてもよい。また、例えば、一般家庭で使用される太陽光発電の蓄電池の場合には、家庭内に使用される様々な負荷(例えば、起動時に大きな電流が流れる空調装置等)に流れる電流を用いることができる。
また、以上の実施形態では、鉛蓄電池を例として説明を行ったが、これ以外の電池(例えば、ニッケルカドミウム電池等)についても本発明を適用することが可能である。なお、その場合には、電池の種類に応じてシミュレーションモデル30を変更するようにすればよい。
また、以上の実施形態では、制御装置10は、CPU、ROM、RAM等から構成されるようにしたが、例えば、DSP(Digital Signal Processor)等によって構成するようにしてもよい。
1 電池内部状態推測装置
10 制御部
10a CPU(選択手段、適応学習手段)
10b ROM
10c RAM(格納手段)
10d I/F(検出手段の一部)
11 電圧検出部(検出手段の一部)
12 電流検出部(検出手段の一部)
13 鉛蓄電池(電池)
14 放電回路
15 オルタネータ
16 セルモータ(電動機)
17 負荷
30 シミュレーションモデル
31 拡張カルマンフィルタ
R 内部抵抗
Z1,Z2 インピーダンス
10 制御部
10a CPU(選択手段、適応学習手段)
10b ROM
10c RAM(格納手段)
10d I/F(検出手段の一部)
11 電圧検出部(検出手段の一部)
12 電流検出部(検出手段の一部)
13 鉛蓄電池(電池)
14 放電回路
15 オルタネータ
16 セルモータ(電動機)
17 負荷
30 シミュレーションモデル
31 拡張カルマンフィルタ
R 内部抵抗
Z1,Z2 インピーダンス
Claims (7)
- 電池のシミュレーションモデルに基づいて当該電池の内部状態を推定する電池内部状態推定装置において、
前記シミュレーションモデルに含まれる複数のパラメータを格納する格納手段と、
前記電池から負荷に流れる放電電流を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された前記放電電流の値に応じて適応学習の対象となるパラメータを選択する選択手段と、
前記選択手段によって選択されたパラメータに対して、適応学習を行う適応学習手段と、
を有することを特徴とする電池内部状態推定装置。 - 前記負荷は、原動機を始動するための電動機を少なくとも有し、
前記検出手段は、前記電動機によって前記原動機が始動される際の電流を検出し、
前記選択手段は、前記電動機に流れる電流値に応じたパラメータを選択し、
前記適応学習手段は、前記選択手段によって選択されたパラメータに対して適応学習を実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電池内部状態推定装置。 - 前記シミュレーションモデルの構成要素として、前記電池の陽極および陰極の等価回路としてのコンスタントフェーズエレメント(CPE)を少なくとも有し、前記コンスタントフェーズエレメントは、並列接続された抵抗とコンデンサからなるRC並列ユニットが複数直列接続された等価回路によって表されるとともに、それぞれのRC並列ユニットを構成する抵抗とコンデンサの素子値が前記パラメータとされ、
前記選択手段は、前記放電電流の値に応じて予め定められた所定のRC並列ユニットを選択し、
前記適応学習手段は、前記選択手段によって選択された抵抗とコンデンサの素子値を適応学習する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電池内部状態推定装置。 - 前記シミュレーションモデルの構成要素として、前記電池の内部抵抗を有し、前記内部抵抗の抵抗値が前記パラメータとされ、
前記選択手段は、前記電動機の起動時に流れるピーク電流を検出した場合には、前記内部抵抗を選択する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の電池内部状態推定装置。 - 前記シミュレーションモデルの構成要素として電圧源を有し、前記電圧源の電圧に関するパラメータとして前記電池内部の電解液の濃度値を有し、
前記選択手段は、前記放電電流が0または0近傍である場合には、前記電解液の濃度を適応学習の対象として選択する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池内部状態推定装置。 - 前記パラメータは拡張カルマンフィルタの状態ベクトルを構成し、
前記適応学習手段は、前記状態ベクトルに対して前記適応学習を実行する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電池内部状態推定装置。 - 電池のシミュレーションモデルに基づいて当該電池の内部状態を推定する電池内部状態推定方法において、
前記シミュレーションモデルに含まれる複数のパラメータを格納する格納ステップと、
前記電池から負荷に流れる放電電流を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて検出された前記放電電流の大小に応じて適応学習の対象となるパラメータを選択する選択ステップと、
前記選択ステップにおいて選択されたパラメータに対して、適応学習を行う適応学習ステップと、
を有することを特徴とする電池内部状態推定方法。
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