JP4684429B2 - 新規なアルミニウム顔料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なアルミニウム顔料に関し、さらに詳しくは、塗料用顔料として使用したとき、これまでにない優れた金属光沢、意匠性を維持しながら密着性においても優れたメタリック塗膜を与えるアルミニウム顔料およびその製造方法に関するものである。また、上記アルミニウム顔料、塗料用樹脂、および希釈剤からなる新規なメタリック塗料、さらにこれまでにない優れた金属光沢、意匠性を維持しながら密着性においても優れたメタリック塗膜を与える塗料及びメタリックインキに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、メタリック塗料用、印刷インキ用、プラスチック練り込み用等に、メタリック感を重視する美粧効果を得る目的でアルミニウム顔料が使用されている。ただし、表面に何らの処理も施していないアルミニウム顔料は、金属感や意匠性が高い反面、塗料及び印刷インキの樹脂系によっては塗膜中での樹脂との密着性が劣るため、セロハンテープ剥離による密着性試験を行った場合に多量に剥離してしまうという欠点を有していた。
【0003】
これはアルミニウム顔料表面と塗料及び印刷インキ樹脂との相溶性、濡れ性が不十分であるためと考えられるが、この改善策として、アルミニウム顔料の表面処理を行う方法が提案されている。
【0004】
アルミニウム顔料であるフレーク状アルミニウム粉末、またはフレーク状アルミニウム粉末のペーストを有機溶媒中に分散し、まずはじめにラジカル重合性不飽和カルボン酸等を吸着せしめ、次いでラジカル重合性二重結合を3個以上有する単量体から生成される重合体によって表面被覆する方法が提案されている(特公平1−49746号公報)。しかしこの方法は、密着性は改善されるもののメタリック塗膜の耐薬品性の実現を本来の主な目的としているため、被覆させる単量体を相当量添加することが必要となり、このとき同時に金属感の低下をもたらし、意匠性が著しく低下してしまうという問題点を有している。
【0005】
その色調低下を防止し、かつ更に耐薬品性、耐候性を改良するために、表面被覆の方法を改良し、均一で高度に三次元架橋した被覆膜を形成させる方法が提案されている(国際公開公報WO96/38506参照)。しかしこの方法でも、金属感、意匠性の低下は改善されるものの、表面被覆処理を施していないアルミニウム顔料の色調よりはかなり劣り、十分でない。
【0006】
アルミニウム顔料の意匠性を維持したまま密着性を付与する方法として、炭素数1〜5の低級脂肪酸を添加する方法が提案されている(特開平10−120936号公報)。しかしこの方法によって得られたアルミニウム顔料は貯蔵安定性が劣り、十分でないという問題を有している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本件出願の発明は、アルミニウム顔料の優れた光沢、意匠性を維持しながら、塗料、印刷インキ用顔料として使用したとき、金属感、意匠性に優れ、かつ密着性においても優れたメタリック塗膜を与えることができるアルミニウム顔料及びその製造方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記したような従来のアルミニウム顔料が有する問題点を解決するべく鋭意研究を続けた結果、フレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して0.1〜2.1重量部の樹脂をフレーク状アルミニウム粉末表面に形成させ、またその樹脂が、(A)ラジカル重合性不飽和カルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸のモノまたはジエステル、及び、ラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤から選ばれた少なくとも1種と、(B)ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体の重合物とからなり、かつ、その重量比(本件明細書ではこれを「A/B」という。)が0.1〜4であるようなアルミニウム顔料を製造したところ、得られたアルミニウム顔料が上記の目的を達成し得る事実を見い出して本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(6)である。
(1)フレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して0.1〜2.0重量部の樹脂がフレーク状アルミニウム粉末表面に付着したアルミニウム顔料であって、当該樹脂が、(A)ラジカル重合性不飽和カルボン酸と、(B)ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体との重合物からなり、かつ、その重量比A/Bが0.1〜4であることを特徴とするアルミニウム顔料。
【0010】
(2)フレーク状アルミニウム粉末が、平均表面粗さRaが20nm以下、または、平均表面粗さ曲線の凹凸の平均高さRcが80nm以下であることを特徴とする(1)記載のアルミニウム顔料。
【0011】
(3)フレーク状アルミニウム粉末を有機溶剤に分散せしめ、次に(A)ラジカル重合性不飽和カルボン酸をフレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して0.1〜2.0重量部添加する第一工程と、これに(B)ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体0.1〜2.0重量部と重合開始剤とを添加する第二工程とからなり、重量比A/Bが0.1〜4であり、かつ重合反応によって得られる樹脂がフレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して0.1〜2.1重量部となるようにA及びBの添加量を調整することを特徴とする(1)または(2)記載のアルミニウム顔料の製造方法。
【0012】
(4)(1)または(2)に記載のアルミニウム顔料を含有するメタリック塗料。
(5)(1)または(2)に記載のアルミニウム顔料を含有するメタリックインキ。
【0013】
本発明によるアルミニウム顔料は、従来にない優れた金属光沢、意匠性を維持しながら、かつ優れた密着性を有するものである。
【0014】
本発明のアルミニウム顔料の原料となるフレーク状アルミニウム粉末は、特にその種類を限定されるものではなく、一般的にアルミニウム顔料として使用されているもので良く、その形状は、鱗片状、角状、丸み状等の扁平状である。その製造方法についても特に限定されるものではないが、アルミニウムの粒状粉、又は、細片を機械的方法、例えばスタンプミル法、乾式ボールミル法、湿式ボールミル法、アトライター法、振動ボールミル法等により数%の粉砕助剤と共に粉砕することにより得られる。
【0015】
原料となるフレーク状アルミニウム粉末の粒径は用途により異なり、塗料用、印刷インキ用としては、平均粒径d50が1〜100μm程度のものが良く、本発明に適用できる。又、最近特に高意匠性が求められる用途として、自動車用、一般家電用、携帯電話に代表される情報家電用、印刷用が挙げられ、それぞれ鉄やマグネシウム合金などの金属、あるいはプラスチック等の塗装に使用されるが、これらに使用される好ましい粒径は、5〜35μmであり、更に好ましくは、5〜25μmである。
【0016】
本発明のアルミニウム顔料の原料として使用されるフレーク状アルミニウム粉末の意匠性については、特に限定されるものではないが、意匠性の高さを維持したいのであれば、高意匠性グレード(高級メタリック塗料ないしはインキ用グレード)を使用した方が本発明の効果はより発揮される。高意匠性のフレーク状アルミニウム粉末の製造方法としては、たとえば、国際公開公報WO99/54074に記載された方法が挙げられ、その製造方法で得られる、表面が平滑で厚みも均一なフレーク状アルミニウム粉末が本発明のアルミニウム顔料の原料として特に好ましく使用できる。
【0017】
以下に、本発明の原料として使用されるフレーク状アルミニウム粉末の具体的な形状について述べる。
【0018】
平均粒径d50の好ましい範囲は5〜35μmであり、更に好ましい範囲は5〜25μmである。その他に定義される形状の好ましい範囲は、平均厚みt(μm)に対する平均粒径d50(μm)の好ましい比は30〜90であり、平均表面粗さRaは20nm以下である。また、表面粗さ曲線の凹凸の平均高さRcは80nm以下であることが好ましい。そして、これらの性状の範囲をすべて満たすものが最も好ましい。
【0019】
フレーク状アルミニウム粉末の平均粒径d50(μm)、平均厚みt(μm)、水面拡散面積WCA(m2/g)、平均表面粗さRa(nm)、表面粗さ曲線の凹凸の平均高さRc は、次の様に定義される。
【0020】
<平均粒径(d50)>
平均粒径d50(μm)は、次の方法で測定する。
測定溶剤としてミネラルスピリットを用い、試料となるフレーク状アルミニウム粉末を、前処理として2分間の超音波分散を行った後に、レーザーミクロンサイザーLMS−24(セイシン企業(株)製)を用いて測定する。
【0021】
平均粒径d50は5〜35μmであることが好ましい。更に好ましくは5〜25μmである。平均粒径d50は、意図する意匠性に合わせて極細目、細目、中目、粗目、極粗目を適宜に選択すればよい。平均粒径が5μm以上のものは、塗膜中で一定方向に配向し易く、また、光の散乱が減少し望ましい光輝度が発現し易い。一方、35μm以下のものは、粒子の大きさが塗膜の膜厚を越えず粒子の一部が塗膜表面に突出しにくいため、きめ細かいメタリック塗膜が得られ易く実用的である。
【0022】
<平均厚み(t)>
平均厚みt(μm)は、金属成分1g当たりの水面拡散面積WCA(m2/g)を測定し、下式により算出した値である。
t(μm)=0.4/[WCA(m2/g)]
【0023】
上記した平均厚みの算出方法は、例えば、Aluminium Paint and Powder,J.D.Ed-wards & R.I.Wray著、第3版、Reinhold Publishing Corp.New York(1955)の第16〜22頁に記載されている。
【0024】
水面拡散面積は、一定の予備処理を行ったのち、JIS K 5906-1991に従って求める。なお、JISに記載されている水面拡散面積の測定方法はリーフィングタイプの場合のものであるのに対し、前記国際公開公報WO99/54074に記載のものはノンリーフィングタイプである。しかし、試料を5%ステアリン酸のミネラルスピリット溶液で予備処理を行う以外の操作方法は、全てリーフィングタイプの場合と同様である。
【0025】
試料の予備処理については、塗料原料時報、第156号、第2〜16頁(1980.9.1旭化成工業(株)発行)に記載されている。
【0026】
本発明でいう平均厚みtに対する平均粒径d50の比は、d50/tで与えられ、いわゆる、フレーク状アルミニウム粉末の扁平度である(以下扁平度と呼ぶことがある。)。
【0027】
アルミニウム粉を媒体攪拌ミルまたはボールミルで摩砕すると、扁平度は徐々に大きくなり、ある程度まで展延されると粒子は折れ曲がり易くなる。概して、扁平度が200を越えると粒子にクラックが入り易くなり折れ曲がり易くなる。そのため扁平度d50/tは30〜90であることが好ましい。扁平度が90以下では、フレーク状アルミニウム粉末表面が平滑であり、該表面での光の散乱が減少し正反射率が増大することにより光輝度が向上し、また、フロップ性も高くなる。また、扁平度が30以上で、アルミニウム顔料の重要な機能の一つである隠蔽力が維持され、実用に供し得る。
【0028】
<平均表面粗さ(Ra)>
平均表面粗さRaは、次の方法により算出する。
アルミニウム顔料の表面形態観察法として、原子間力顕微鏡(以下AFMと略記する)TMX-2010(Topometrix製)を使用する。前処理として、試料のアルミニウム顔料を過剰のメタノール及びクロロホルムで超音波洗浄後、真空乾燥し、再度アセトンに分散後、Siウェハー上に滴下し、自然乾燥を行う。AFMによる表面粗さの定量は、フレーク状アルミニウム粉末が他のフレーク状アルミニウム粉末と重なりがないものについて、5μm四方の視野につき表面粗さ曲線(表面凹凸のラインプロファイル)を300スキャンにより測定し、粗さ曲線の算術平均粗さ(基準長さ5μm内での標高の絶対値の算術平均)を求める。
【0029】
基準長さは、平均粒径d50によるが、5μmを基準とする。そして、算術平均粗さを3視野以上測定し、更に算術平均した値を「平均表面粗さRa(nm)」として定義する。「表面粗さ」という用語は、JIS B0660:1998に基づくものである。平均表面粗さRaは20nm以下、好ましくは15nmである。20nm以下の時、表面での光の正反射率が大きいため、極めて優れた光輝度を示すと共にフロップ性も良好である。
【0030】
<表面粗さ曲線の凹凸の平均高さ(Rc)>
フレーク状アルミニウム粉末の表面粗さ曲線の凹凸の平均高さRcは、前記で測定した表面粗さ曲線において、表面粗さ曲線の山頂の高さの絶対値の平均値と表面粗さ曲線の谷底の深さの絶対値の平均値の和で表される。具体的には、表面粗さ曲線の算術平均高さを3視野以上測定し、さらにそれを算術平均した値をいう。Rcは80nm以下であることが好ましい。平均高さRcが80nm以下であると、極めて優れた高輝度を示すと共にフロップ性も良好であった。
【0031】
上記で述べたような条件をすべて満たすフレーク状アルミニウム粉末表面は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察でも、表面の凹凸が少なく、また、表面に極微粉等の付着も少なく、また、粒子の中央から端部に至るまで均一な厚みを有するアルミニウム顔料粒子をかなり多く含む。
【0032】
本発明のアルミニウム顔料は、先ず未処理の上記のフレーク状アルミニウム粉末を有機溶剤中に分散後、加温し、攪拌しながら第一工程として(A)ラジカル重合性不飽和カルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸モノまたはジエステル、及び、ラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤から選ばれた少なくとも1種を添加しフレーク状アルミニウム粉末の表面を処理し、次いで第二工程として(B)ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体と重合開始剤とを添加して第一工程でフレーク状アルミニウム粉末表面に吸着した成分(A)とラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体とを重合させて樹脂層を形成させることによって得られる。
次に、各工程の詳細について述べる。
【0033】
<フレーク状アルミニウム粉末の分散工程について>
未処理のフレーク状アルミニウム粉末を有機溶剤中に分散させる。
使用する有機溶剤は、フレーク状アルミニウム粉末に対して不活性であればよく、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル類、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ類が挙げられる。
【0034】
有機溶剤中のフレーク状アルミニウム粉末の重量濃度は0.1〜40%が好ましく、更に好ましくは1%〜35%である。0.1%未満では均一な分散は得られるが取扱いの溶剤量が過大となり後で取り除くための労力を要し好ましくない。また、40%を越えるとフレーク状アルミニウム粉末の分散が不均一となり易く好ましくない。
【0035】
<第一工程について>
第一工程では、フレーク状アルミニウム粉末を分散させた有機溶剤中に、(A)ラジカル重合性不飽和カルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸のモノまたはジエステル、及び、ラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤から選ばれた少なくとも1種を添加する。成分(A)としてはラジカル重合性不飽和カルボン酸が特に好ましい。
【0036】
ラジカル重合性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等が例示され、その一種または二種以上を混合して使用することができる。使用される量は該フレーク状アルミニウム粉末の種類と特性、特にその表面積によって異なるが、本発明ではフレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して0.1〜2.0重量部の間であり、更に好ましくは0.2重量部〜1.5重量部である。0.1重量部未満では、フレーク状アルミニウム粉末表面への樹脂層の形成が十分に行われず、本発明の効果である密着性を満足させることができない。また、2重量部を越えて使用する場合は、本発明の範囲を外れるため金属感と意匠性の低下を抑えるという本発明の効果が実現できない。
【0037】
ラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸のモノまたはジエステルとしては、2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジ−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、トリ−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジ−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、トリ−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、2−メタクリロイロキシプロピルホスフェート、ビス(2−クロロエチル)ビニルホスホネート、ジアリルジブチルホスホノサクシネート等が挙げられ、その一種または二種以上を混合して使用することができる。
【0038】
好ましいものとしてはリン酸モノエステルを挙げることができる。これはリン酸基の持つOH基が2個あるため、より強固にフレーク状アルミニウム粉末表面に固定されるためであると推定される。
【0039】
より好ましいリン酸モノエステルとして、メタクリロイロキシ基およびアクロイロキシ基を有したモノエステルが挙げられ、例えば、2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、2−アクロイロキシエチルホスフェートが挙げられる。その使用量は、該フレーク状アルミニウム粉末の種類と特性、特にその表面積によって異なるが、本発明ではフレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して0.1〜2.0重量部の間であり、更に好ましくは0.2重量部〜1.5重量部である。0.1重量部未満では、フレーク状アルミニウム粉末表面への樹脂層の形成が十分に行われず、本発明の効果である密着性を満足させることができない。また、2重量部を越えて使用する場合は、本発明の範囲を外れるため金属感と意匠性の低下を抑えるという本発明の効果が実現できない。
【0040】
ラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
【0041】
シランカップリング剤の例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニル・トリス(β−メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0042】
チタネート系カップリング剤の例としては、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート等が挙げられる。
【0043】
アルミニウム系カップリング剤の例としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、ジルコアルミネート等が挙げられる。
【0044】
使用されるラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤の量は、該フレーク状アルミニウム粉末の種類と特性、特にその表面積によって異なるが、本発明ではフレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して0.1〜2.0重量部の間であり、更に好ましくは0.2重量部〜1.5重量部である。0.1重量部未満では、フレーク状アルミニウム粉末表面への樹脂層の形成が十分に行われず、本発明の効果である密着性を満足させることができない。また、2重量部を越えて使用する場合は、本発明の範囲を外れるため金属感と意匠性の低下を抑えるという本発明の効果が実現できない。
【0045】
成分(A)の添加は40℃〜150℃の温度で加温、攪拌しながら行うことが望ましい。40℃未満では成分(B)の重合温度まで昇温するのに時間を要し、150℃を越えると有機溶剤の蒸気の発火等に対する配慮を充分にしなければならず好ましくない。成分(A)の添加終了後、40℃〜150℃の温度で引き続き5分〜10時間程度攪拌を続けることが好ましい。この時間が5分未満では成分(A)の有機溶剤中の拡散およびフレーク状アルミニウム粉末表面への吸着が不十分となりやすく、10時間を越えても効果の増大はなく時間要するのみで好ましくない。
【0046】
<第二工程について>
第二工程では、前記第一工程を経た有機溶剤中に(B)ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体と重合開始剤とを添加する。
【0047】
ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体としては、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジ−ペンタエリスリトールペンタアクリレートモノプロピオネート等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を混合して使用する。
【0048】
ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体の使用量は、フレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して0.1〜2.0重量部の間であり、更に好ましくは、0.2〜1.5重量部である。0.1重量部未満では、フレーク状アルミニウム粉末表面への樹脂層の形成が十分に行われず、本発明の効果である密着性を満足させることができない。また、2重量部を越えて使用する場合は、本発明の範囲を外れると共に金属感と意匠性の低下を抑えるという本発明の効果が実現できない。
【0049】
本発明で規定されている、第一工程で処理する成分(A)のラジカル重合性不飽和カルボン酸、ラジカル重合性二重結合を有するリン酸またはホスホン酸モノまたはジエステル、及び、ラジカル重合性二重結合を有するカップリング剤から選ばれた少なくとも1種と、第二工程で処理する成分(B)のラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体の重量比A/Bは、意匠性を維持してかつ密着性を付与させるという本発明の効果を得るために重要である。
【0050】
そのA/Bの範囲は、0.1〜4であるが、更に好ましくは、0.5〜3である。0.1以下では成分(A)の量が少なく成分(B)の量が多いため、第一工程が不十分となり、フレーク状アルミニウム粉末表面に強固な樹脂層を形成できないので好ましくない。4以上では成分(A)の方が多くなるので、成分(A)の遊離物や処理後のアルミニウム顔料に残存する重合基により貯蔵安定性が悪くなるので好ましくない。
【0051】
重合開始剤は、一般にラジカル発生剤として知られるものであり、その種類は特に制限されない。重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ビス−(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキサイド類、および2,2’−アゾビス−イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。その使用さ量は、重合性モノマーの反応速度によってそれぞれ調整されるため特に限定されないが、フレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して、0.1重量部〜25重量部程度である。
【0052】
成分(B)のラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体及び重合開始剤の添加の態様としては、両方を同時に一括で添加する態様、両方を同時に徐々に添加する態様、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体を先に添加後重合開始剤のみを徐々に添加する態様、などの種々の態様をとることができる。
【0053】
成分(B)の添加は、攪拌しながら、加温された状態で添加するのが望ましい。添加する際の温度は、重合が生ずればよく特に限定されないが60℃〜150℃が好ましい。また、重合効率を高めるために窒素、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で添加、重合することが望ましい。
【0054】
成分(B)の添加後の重合は、攪拌を連続、もしくは断続的に行い、分散を維持した状態で、60℃〜150℃の温度で引き続き5分〜10時間の間で行うのが望ましい。この時間が5分未満ではラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体同士の重合および第一工程でフレーク状アルミニウム粉末表面に吸着した成分(A)への重合が不十分となりやすく、10時間を越えても効果の増大はなく時間を要するのみで好ましくない。
【0055】
ここにいう重合時間とは、成分(B)のラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体と重合開始剤とが反応系中に同時に存在した時点から、ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体の未反応物が1%未満になるまでの時間をいう。
【0056】
本発明のアルミニウム顔料を含有するメタリック塗料及びメタリックインキは、溶剤型、水性型等、何れの形態でも使用可能である。また、このメタリック塗料及びメタリックインキは主として3つの基本成分、即ち(a)塗料用樹脂、(b)アルミニウム顔料、(c)希釈剤から適宜選択して作製すればよい。
【0057】
溶剤型塗料及びインキで使用する塗料用樹脂としては、従来メタリック塗料及びメタリックインキで用いられている塗料用樹脂の中の任意のものを用いることができる。その樹脂としては、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、オイルフリーアルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、セルロース系樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし混合して用いてもよい。
【0058】
溶剤型塗料及びインキとして使用する場合の本発明のアルミニウム顔料の使用量は、塗料用樹脂100重量部に対して0.1重量部〜300重量部であることが好ましく、更に0.2重量部〜200重量部用いることが好ましい。このアルミニウム顔料が 0.1重量部未満であると、メタリック塗料及びメタリックインキとして必要な金属光沢が不十分であり、また、300重量部を越えて用いると、塗料及びインキ中の金属顔料の量が多くなり過ぎて、塗装及び印刷作業性が悪くなり、かつ、塗膜物性も劣り実用的でない。
【0059】
溶剤型塗料及びインキにおいて使用できる希釈剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系化合物、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族系化合物、エタノール、プタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類、トリクロロエチレン等の塩素化合物、エチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ類が挙げられ、これらの希釈剤は単独または二種以上混合して使用できる。その組成は塗料用及びインキ用樹脂に対する溶解性、塗膜形成特性、塗装作業性等を考慮して適宜決定すればよい。
【0060】
さらに、メタリック塗料及びメタリックインキには、塗料業界で一般に使用されている顔料、染料、湿潤剤、分散剤、色分れ防止剤、レベリング剤、スリップ剤、皮張り防止剤、ゲル化防止剤、消泡剤等の添加剤を加えることができる。
【0061】
また、メタリック塗料及びメタリックインキは、水性塗料用樹脂を用いることにより水性塗料としても使用可能である。ただし、本発明のアルミニウム顔料が水性塗料及びインキ中で水と反応するような場合には、反応阻害剤の添加が必要となる。ここで水性塗料用及びインキ用の樹脂とは、水溶性樹脂または水分散性樹脂であって、これらの単独または混合物であってもよい。その種類は目的、用途により千差万別であり、特に限定されるものではないが、塗料用では、一般にはアクリル系、アクリル−メラミン系、ポリエステル系、ポリウレタン系等の水性塗料用樹脂が挙げられ、中でもアクリルーメラミン系が最も汎用的に使用されている。
【0062】
水性塗料及びインキに使用される本発明のアルミニウム顔料は、塗料用樹脂100重量部に対して0.1重量部〜300重量部である。特に0.2重量部〜200重量部用いることが好ましい。このアルミニウム顔料が0.1重量部未満であると、メタリック塗料及びメタリックインキとして必要な金属光沢が不十分であり、また、300重量部を越えて用いると、塗料及びインキ中のアルミニウム顔料の量が多くなり過ぎて、塗装及び印刷作業性が悪くなり、かつ、塗膜物性も劣り実用的でない。
【0063】
また、各種添加剤としては、例えば、分散剤、増粘剤、タレ防止剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、成膜助剤、界面活性剤、その他の有機溶剤、水等、当該分野に於いて通常使用され得るものであって、本発明の効果を損なわないものが使用でき、また、本発明の効果を損なわない程度の量であれば、添加しても差し支えない。
【0064】
本発明のアルミニウム顔料は自動車用、一般家電用、携帯電話に代表される情報家電用、印刷用に、それぞれ鉄やマグネシウム合金などの金属、あるいはプラスチック等の基材の塗装用、印刷用途に好適に使用でき、高い意匠性を発揮できる。
【0065】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を示す。また、本実施例で用いる試験方法および測定方法を以下に詳述する。
【0066】
(1)評価用塗板の作製
本発明のアルミニウム顔料を使用し、表1に示す塗料配合にて、密着性評価用のメタリック塗料を調製する。
ABS樹脂板に膜厚が10μmになるように吹き付け塗装する。その後50℃で30分乾燥し、評価用塗板を作製する。
【0067】
(2)光沢保持率
光沢計(スガ試験機(株)製、デジタル変角光沢計UGV−5D)を用いて60度光沢(入射角、反射角とも60度)を測定する。上記(1)で作製した塗板の60度光沢の測定値をG’、未処理フレーク状アルミニウム粉末を用いて同様に作製した塗板の60度光沢の測定値をGとし、光沢保持率Rを下式によって求める。
R=(G’/G)×100
【0068】
(3)密着性
上記(1)で作成した塗板を用い、セロテープ(登録商標:ニチバン(株)製、CT−24)を塗膜に密着させ、45度の角度で引っ張り、アルミニウム顔料粒子の剥離度合いを目視で観察した。
【0069】
【実施例1】
アルミアトマイズ粉10kg、5重量%のオレイン酸を含むミネラルスピリット10kgの混合物をボールミル中で8時間粉砕し、次にミネラルスピリット20kgを加えて希釈した後、スラリータンクに移し、フィルタープレスでろ過した。このようにして得られたフレーク状アルミニウム粉末は、ペースト状であり、加熱残分は75重量%、ミネラルスピリット25重量%であった。
【0070】
そのフレーク状アルミニウム粉末の平均粒径は12μmで、平均厚みt(μm)に対する平均粒径d50(μm)の比は50で、平均表面粗さRaは15nmであり、また、表面粗さ曲線の凹凸の平均高さRcは、60nmであった。
【0071】
得られたフレーク状アルミニウム粉末ペースト100gを、容積1リットルの四つ口フラスコに入れ、ミネラルスピリット500gを加え、窒素ガスを導入しながら撹拌し、系内の温度を70℃に昇温した。次いで、アクリル酸0.37gを添加し70℃で30分撹拌を続けた。
【0072】
次にトリメチロールプロパントリメタクリレート0.37gと2、2’−アゾビス−2、4−ジメチルバレロニトリル2.0gを一括添加し、系内の温度を70℃に保ちながら合計6時間重合した。この時点でサンプリングしたろ液中のトリメチロールプロパントリメタクリレートの未反応量をガスクロマトグラフィで分析したところ、添加量の99%以上が反応していた。重合終了後、自然冷却し、ペースト状の本願発明のアルミニウム顔料を得た。このアルミニウム顔料の加熱残分(JIS−K−5910による)は、75.0重量%であった。
【0073】
成分(A)のアクリル酸と成分(B)中のモノマー(トリメチロールプロパントリメタクリレート)の添加比A/Bは1.0で、またアルミニウム金属分100重量部に対する樹脂量は1.0重量部であった。
【0074】
これを用いて、上記試験方法および測定方法に基づいて性能評価を行った。その光沢保持率評価結果、密着性評価結果を表2に示す。密着性は良好で、また光沢保持率も高く維持されていた。
【0075】
【実施例2】
実施例1のトリメチロールプロパントリメタクリレート添加量を1.1gとしたこと以外は実施例1と同様にしてアルミニウム顔料を作製した。このアルミニウム顔料の加熱残分(JIS−K−5910による)は、73.4重量%であった。
【0076】
成分(A)のアクリル酸と成分(B)中のモノマー(トリメチロールプロパントリメタクリレート)の添加比A/Bは0.3で、またアルミニウム金属分100重量部に対する樹脂量は2.0重量部であった。
【0077】
これを用いて、上記試験方法および測定方法に基づいて性能評価を行った。その光沢保持率評価結果、密着性評価結果を表2に示す。密着性は良好で、また光沢保持率も90%以上であり、色調も良好であった。
【0078】
【実施例3】
実施例1のトリメチロールプロパントリメタクリレート0.37gと2、2’−アゾビス−2、4−ジメチルバレロニトリル2.0gをミネラルスピリット40gに溶解させ、その溶液を定量ポンプにより約0.24g/min.の速度で3時間かけて添加して重合させたこと以外は実施例1と同様にしてアルミニウム顔料を得た。このアルミニウム顔料の加熱残分(JIS−K−5910による)は、74.4重量%であった。
【0079】
成分(A)のアクリル酸と成分(B)中のモノマー(トリメチロールプロパントリメタクリレート)の添加比A/Bは1.0で、またアルミニウム金属分100重量部に対する樹脂量は1.0重量部であった。
【0080】
これを用いて、上記試験方法および測定方法に基づいて性能評価を行った。その光沢保持率評価結果、密着性評価結果を表2に示す。密着性は良好で、また光沢保持率も高く維持されていた。
【0081】
【比較例1】
実施例1のトリメチロールプロパントリメタクリレート添加量を1.9gとしたこと以外は実施例1と同様にしてアルミニウム顔料を作製した。このアルミニウム顔料の加熱残分(JIS−K−5910による)は、73.6重量%であった。
【0082】
成分(A)のアクリル酸と成分(B)中のモノマー(トリメチロールプロパントリメタクリレート)の添加比A/Bは0.2であるが、アルミニウム金属分100重量部に対する樹脂量は3.0重量部であった。
【0083】
これを用いて、上記試験方法および測定方法に基づいて性能評価を行った。その光沢保持率評価結果、密着性評価結果を表2に示す。密着性に問題はなかったが、光沢保持率が低く、色調が著しく低下していた。
【0084】
【比較例2】
実施例1のトリメチロールプロパントリメタクリレート添加量を6.3gとしたこと以外は実施例1と同様にしてアルミニウム顔料を作製した。このアルミニウム顔料の加熱残分(JIS−K−5910による)は、73.6重量%であった。
【0085】
成分(A)のアクリル酸と成分(B)中のモノマー(トリメチロールプロパントリメタクリレート)の添加比A/Bは0.06で、またアルミニウム金属分100重量部に対する樹脂量は9.0重量部であった。
【0086】
これを用いて、上記試験方法および測定方法に基づいて性能評価を行った。その光沢保持率評価結果、密着性評価結果を表2に示す。密着性に問題はなかったが、光沢保持率が低く、色調が著しく低下していた。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【発明の効果】
本発明の、密着性を付与できる最小限の重合性樹脂をフレーク状アルミニウム粉末顔料表面に形成させる方法により、金属感、意匠性を維持したまま、アルミニウム顔料に密着性を付与できる。
Claims (5)
- フレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して0.1〜2.0重量部の樹脂がフレーク状アルミニウム粉末表面に付着したアルミニウム顔料であって、当該樹脂が、(A)ラジカル重合性不飽和カルボン酸と、(B)ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体との重合物からなり、かつ、その重量比A/Bが0.1〜4であることを特徴とするアルミニウム顔料。
- フレーク状アルミニウム粉末が、平均表面粗さRaが20nm以下、または、平均表面粗さ曲線の凹凸の平均高さRcが80nm以下であることを特徴とする請求項1記載のアルミニウム顔料。
- フレーク状アルミニウム粉末を有機溶剤に分散せしめ、次に(A)ラジカル重合性不飽和カルボン酸をフレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して0.1〜2.0重量部添加する第一工程と、これに(B)ラジカル重合性二重結合を2個以上有する単量体0.1〜2.0重量部と重合開始剤とを添加する第二工程とからなり、重量比A/Bが0.1〜4であり、かつ重合反応によって得られる樹脂がフレーク状アルミニウム粉末100重量部に対して0.1〜2.1重量部となるようにA及びBの添加量を調整することを特徴とする請求項1または2記載のアルミニウム顔料の製造方法。
- 請求項1または2に記載のアルミニウム顔料を含有するメタリック塗料。
- 請求項1または2に記載のアルミニウム顔料を含有するメタリックインキ。
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