JP4677883B2 - バウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

バウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、石油や天然ガスに使用される高強度ラインパイプ用鋼板およびその製造方法として好適な、バウシンガー効果による、鋼管に成形する前の鋼板の降伏応力から鋼管に成形した後の鋼管周方向の降伏応力の低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板及びその製造方法に関する。
一般に、鋼板に冷間で引張もしくは圧縮歪みを付与し、その後、逆方向に歪みを付与すると、バウシンガー効果により降伏応力が鋼板ままのそれと比較し低下する。バウシンガー効果は、最初の変形段階にセメンタイト、パーライト、島状マルテンサイト(以下、MA)等の硬質第2相、介在物、粒界等で発生する局所的な歪勾配による逆応力の発生がその原因とされている。
現在のラインパイプ用鋼板は、高強度、高靭性に優れたベイナイト組織を得るため、一般的に制御圧延と加速冷却のプロセスで製造される。加速冷却鋼板では、加速冷却後にベイナイトのラス間や未変態オーステナイト部にCが濃化し、加速冷却後の空冷段階でC濃化部がセメンタイトやMAへと変態するため、ベイナイトのマトリクスに硬質第2相が存在する組織となる。
また、一般的に加速冷却鋼板は、表面の冷却速度が板厚中央部と比較し速くなるため、表面硬度と板厚中央部硬度の差が大きくなる。この様な硬質第2相の存在や板厚方向の強度不均一は、UOE鋼管成型時や管周方向引張試験片矯正時の局所的な歪み勾配の原因となり、鋼管周方向の降伏強度はバウシンガー効果によって鋼板の降伏強度と比較して低下する。
この降伏強度低下代を見込んでパイプ原板の強度は高めに設計する必要があり、バウシンガー効果による降伏強度低下を低減することは鋼板の強度設計緩和に繋がり、合金元素低減によるコスト削減、溶接熱影響部靭性の向上が期待される。
バウシンガー効果による降伏強度低下を抑制する技術として、低C−高Cr系成分組成の鋼を用いる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では、多量のCr添加による溶接性の低下やコスト上昇を招く。
多量のCr添加に依存しない方法として、制御圧延終了温度と加速冷却停止温度を規定し、鋼板の降伏比、降伏伸びを最適化する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法では、鋼板の降伏比を90%以上と高くする必要があり、鋼管の成形性が低下し、生産性の低下を招く。
また、表面硬さ等の点から目的とする組織はフェライト組織で、強度を得るために添加する合金成分を多くすることが必要で、溶接性劣化やHAZ靭性劣化が懸念される。
特公昭53−25801号公報 特開2000−212680号公報
上述したように、従来の技術では、溶接熱影響部の靭性劣化、生産性低下、コスト上昇を招くことなく、バウシンガー効果による降伏強度低下が小さい鋼板を製造することは困難であった。
そこで、本発明は、溶接熱影響部の靭性を劣化させることなく、高生産性、低コストで製造できる、バウシンガー効果による降伏強度低下が小さい鋼板及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは前記課題を解決するために、鋼板のミクロ組織およびミクロ組織を達成するための製造方法、特に制御圧延後の加速冷却、冷却速度5℃/s以上、とその後の再加熱という製造プロセスについて鋭意検討し、以下の知見を得た。
すなわち、鋼板のミクロ組織中の硬質第2相であるセメンタイト、パーライト、MAを減少させ、さらに表層部と板厚中心部の硬度差を小さくし板厚方向に均一な強度分布とすることで、鋼管成型段階や引張試験片矯正時に硬質相周辺で発生する局所的な歪勾配を緩和しバウシンガー効果による降伏応力低下を抑制することが可能である。
また、加速冷却後直ちに表層部が板厚中心部より高温になるように再加熱することが重要で、このような加熱を実施する装置として誘導加熱装置が好ましく、生産性を低減させることなく、上記鋼板の製造が可能であることも見出した。
尚、本発明のバウシンガー効果による降伏応力低下が小さいとは、バウシンガー効果を、10φ丸棒試験片を1/4厚位置から採取し1〜3%の圧縮予歪みを導入した後、引張を行い、引張時の0.5%耐力を圧縮時の0.5%耐力で除した値を耐力比として評価し、耐力比が0.8以上を降伏応力低下が小さいとした。
本発明は得られた知見を基に更に検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.質量%で、C:0.03〜0.06%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.08%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、ベイナイト組織中の第2相組織の体積分率が3%以下であり、表層(鋼板幅方向断面の表面から板厚中心方向1mmの位置)と板厚中心部のビッカース硬度差が40以内であることを特徴とするバウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板。
2 更に、質量%で、Mo:0.05〜0.4%、Ti:0.005〜0.04%、Nb:0.005〜0.06%、V:0.005〜0.07%の中から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする1に記載のバウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板。
3 更に、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Cr:1.0%以下、B:0.005%以下の中から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする1または2に記載のバウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板。
4 更に、質量%で、Ca:0.001〜0.005%、Mg:0.005%以下、REM:0.02%以下の中から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする1乃至3のいずれか一つに記載のバウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板。
5 1乃至4のいずれか一つに記載の成分組成を有する鋼を、1000〜1300℃の温度に加熱し、Ar変態点温度以上の圧延終了温度で熱間圧延し鋼板とした後、Ar変態点以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で300〜600℃まで加速冷却を行い、その後直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で鋼板表面温度600℃以上、板厚中心部温度550〜700℃まで再加熱を行い、且つ加熱終了時の鋼板表面と板厚中心部の温度差が20℃以上であることを特徴とするバウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法。
本発明によれば、バウシンガー効果による降伏応力の低下が小さい、すなわち、鋼管に成形する前の鋼板の降伏応力からの鋼管に成形した後に低下する鋼管周方向の降伏応力の低下量が小さい鋼板を、溶接熱影響部の靭性を劣化させたり、生産性を低下させることなく、低コストで製造することが可能で産業上極めて有用である。
本発明に係るバウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板の成分組成、ミクロ組織および板厚方向の硬度特性を規定する。
[ミクロ組織]
本発明では、金属組織中の第2相組織の体積分率を3%以下とする。本発明において第2相組織はセメンタイトやMA等の硬質相であり、その周辺に発生する局所的な歪勾配による逆応力の発生を防止し、バウシンガー効果による降伏応力低下を抑制するため金属組織中において体積分率を3%以下とする。
3%を超えると、バウシンガー効果による降伏応力低下が増大し、鋼板の強度設計を高くする必要があるため、合金コスト等の製造コスト上昇を招く。バウシンガー効果軽減の観点から、より好ましくは1%以下とする。
[板厚方向の硬度特性]
鋼板表層(鋼板幅方向断面の表面から板厚中心方向1mmの位置)と板厚中心部のビッカース硬度差は40以内とする。鋼板表層(鋼板幅方向断面の表面から板厚中心方向1mmの位置)と板厚中心部の硬度差を少なくすることで、鋼管成型やサンプル矯正時の歪み分布が均一となり、局所的な歪み勾配が軽減され、バウシンガー効果を抑制することが出来る。より均一な歪み分布を得る観点から、さらに好適には30以内とする。
[成分組成]
以下の説明において%で示す単位は全て質量%とする。

C:0.03〜0.06%とする。Cは焼き入れ性を高め強度確保に重要な元素であるが、0.03%未満では十分な強度が確保できない。また、0.06%を超える添加は、組織中のMAやセメンタイトの体積分率を増加させバウシンガー効果を大きくするため、C含有量を0.03〜0.06%に規定する。
Si
Si:0.01〜0.5%とする。Siは脱酸のため添加するが、0.01%未満では脱酸効果が十分でなく、0.5%を超えるとMA体積分率の増加や溶接性劣化が起こるため、Si含有量を0.01〜0.5%に規定する。さらに好適には、0.01〜0.3%である。
Mn
Mn:0.5〜2.0%とする。Mnは強度、靭性向上に有効な元素であるが、0.5%未満ではその効果が十分でなく、2.0%を超えると焼き入れ性が高まりMA体積分率の増加、表硬度の上昇、溶接性劣化を招くため、Mn含有量を0.5〜2.0%に規定する。MA生成抑制の観点から、さらに好適には0.5〜1.5%とする。
Al
Al:0.08%以下とする。Alは脱酸剤として添加されるが、0.08%を超えると鋼の清浄度が低下し、靱性が劣化するため、Al含有量は0.08%以下に規定する。好ましくは、0.01〜0.08%とする。
以上が基本成分組成であるが、鋼板の強度靱性をさらに改善する目的で、以下に示すMo、Ti、Nb、Vの1種又は2種以上を含有することが可能である。
Mo
Moは焼き入れ性を向上し強度上昇に大きく寄与する元素である。しかし、0.05%未満ではその効果が得られず、0.4%を超える添加はMA体積分率の増加や溶接熱影響部靭性の劣化を招くため、Moを添加する場合は、含有量を0.05〜0.4%に規定する。さらに好適には0.3%以下とする。
Ti
TiはTiNのピニング効果により加熱時のオーステナイトの粗大化を抑制し、母材や溶接熱影響部の靭性を改善するために有効な元素である。しかし、0.005%未満では効果が無く、0.04%を超える添加はTiNが粗大化し、逆に溶接熱影響部靭性の劣化を招くため、Tiを添加する場合は、含有量は0.005〜0.04%に規定する。さらに、Ti含有量を0.02%未満にすると、より優れた靭性を示す。
Nb
Nbは制御圧延の効果を高め、組織細粒化により強度、靭性を向上させる元素である。しかし、0.005%未満では効果がなく、0.06%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化するため、Nbを添加する場合は、含有量は0.005〜0.06%に規定する。

Vは強度上昇に寄与する元素である。しかし、0.005%未満では効果がなく、0.07%を超えると溶接熱影響部の靭性が劣化するため、Vを添加する場合は、含有量は0.005〜0.07%に規定する。
さらに、鋼板の強度靱性を向上させる場合、以下に示すCu、Ni、Cr、B、Ca、Mg、REM、Nの1種又は2種以上を含有してもよい。
Cu
Cuは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素である。その効果を得るためには、0.1%以上添加することが好ましいが、多く添加すると溶接性の劣化やMA体積分率の増加を招くため、添加する場合は1.0%を上限とする。
Ni
Niは靭性の改善と強度の上昇に有効な元素である。その効果を得るためには、0.1%以上添加することが好ましいが、多く添加するとコスト的に不利になり、また、溶接熱影響部靱性が劣化するため、添加する場合は1.0%を上限とする。
Cr
CrはMnと同様に低Cでも十分な強度を得るために有効な元素である。その効果を得るためには、0.1%以上添加することが好ましいが、多く添加すると溶接性が劣化やMA体積分率の増加を招くため、添加する場合は1.0%を上限とする。

Bは強度上昇、HAZ靭性改善に寄与する元素である。その効果を得るためには、0.0005%以上添加することが好ましいが、0.005%を超えて添加すると溶接性を劣化させるため、添加する場合は0.005%以下とする。

本発明においてNは不可避的不純物として扱うが、0.007%を越えると、溶接熱影響部靭性が劣化するため、好ましくは0.007%以下に制限する。
さらに、Ti量とN量の比であるTi/Nを最適化することで、TiN粒子により溶接熱影響部のオーステナイト粗大化を抑制し、良好な溶接熱影響部靭性を得ることが出来るため、好ましくはTi/Nを2〜8、さらに好ましくは2〜5とする。
Ca
製鋼プロセスにおいて、脱酸反応支配でCaSを確保して靭性改善効果を得るためにCaを0.001%以上添加することが好ましいが、0.005%を超えて添加すると粗大CaOが発生しやすく靭性が低下するうえ、取鍋のノズル閉塞の原因となり生産性を阻害するので、添加する場合は0.005%以下とする。
Mg
Mgはアルミナクラスター(Al)を、Al、Mg系酸化物として微細分散させることで母材靭性向上に寄与する元素である。0.005%を越える添加では酸化物の増加により母材靭性の低下が起こるため、添加する場合は0.005%以下とする。
REM
REMは、MnSの形態制御に有効な元素であり、母材靭性の向上に寄与する。0.02%以上の添加は、REMの酸硫化物が過剰に生成し、母材靭性を劣化させるため、添加する場合は0.02%以下とする。
上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物とする。
次に、本発明に係る高強度鋼板の好適な製造方法について説明する。製造方法においては、スラブ加熱温度、熱間圧延、加速冷却、および加速冷却後の再加熱条件を規定する。
加熱温度、圧延終了温度、冷却停止温度の温度は鋼板の平均温度とする。平均温度は、スラブもしくは鋼板の表面温度より、板厚、熱伝導率等のパラメータを考慮して、計算により求めたものである。
また、冷却速度は、冷却開始後、冷却停止温度(300〜600℃)まで冷却に必要な温度差をその冷却を行うのに要した時間で割った平均冷却速度とする。
[スラブ加熱温度]
スラブ加熱温度:1000〜1300℃とする。加熱温度が1000℃未満では十分な強度が得られず、1300℃を超えると母材靭性が劣化するため、1000〜1300℃とする。
[熱間圧延条件]
熱間圧延は圧延終了温度:Ar変態点温度以上とする。本発明では硬質相の少ない均一な組織とすることが重要であるが、圧延終了温度がAr変態点温度未満であると、初析フェライトが生成し冷却後の金属組織がフェライトとベイナイトの混合組織となるため、圧延終了温度はAr変態点温度以上とする。
[加速冷却条件]
圧延終了後、Ar変態点温度以上から直ちに5℃/s以上の冷却速度で加速冷却する。冷却開始温度がAr温度未満となると初析フェライトが生成し混合組織となるためバウシンガー効果が大きくなり、さらに強度不足を招く。
また冷却速度が5℃/s未満では冷却時に硬質相であるパーライトが生成するため、冷却開始をAr変態点温度以上、圧延終了後の冷却速度を5℃/s以上に規定する。
加速冷却停止温度:300〜600℃とする。加速冷却停止温度が300℃未満では冷却中に島状マルテンサイトが生成し、その後の再加熱で分解しても凝集したセメンタイトが生成する。さらに、300℃未満となると表硬度が上昇する。
一方、600℃を超えると加速冷却停止時の未変態オーステナイト分率が高くなり、再加熱後の空冷時にMAやパーライトが生成する。このような凝集したセメンタイトやパーライトは局所的な歪勾配の原因となり、鋼管成型時のバウシンガー効果による降伏応力低下が大きくなるため、加速冷却停止温度を300〜600℃に規定する。好ましくは350〜550℃であり、より好ましくは400〜530℃である。
冷却方法については製造プロセスによって任意の冷却設備を用いることが可能であり、例えば水冷方式の加速冷却設備が利用できる。
[加速冷却後の再加熱条件]
前述したように、加速冷却材におけるセメンタイトやMAといった硬質相は、加速冷却後の空冷時にCが濃化した未変態オーステナイトやベイナイトラス間で生成する。
本発明では、加速冷却直後の再加熱中に微細な炭窒化物を析出させ、Cを消費することで、未変態オーステナイトへのC濃化を抑え、MAやセメンタイトの生成を抑制する。
さらに、再加熱時に鋼板表面温度を板厚中心部温度より高くすることで、表を軟化させることが可能であり、均一な板厚方向の硬度分布が得られる。
そのため、加速冷却後直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で鋼板表面温度600℃以上、板厚中心部温度550〜700℃まで再加熱を行い、且つ加熱終了時の鋼板表面と板厚中心部の温度差を20℃以上とする。
冷却後は、Cが濃化したベイナイトのラス間や未変態オーステナイト部が、空冷によりセメンタイトやMAへと変態するため、180秒以内に直ちに加熱を開始する必要がある。好ましくは、120秒以内である。
昇温速度が0.5℃/s未満では、目的の再加熱温度に達するまでに長時間を要するため製造効率が悪化し、またパーライト変態が生じるため、バウシンガー効果が大きくなる。
板厚中心部の再加熱温度が550℃未満ではセメンタイトや炭窒化物の十分な析出が得られずMAが生成する。700℃を超えるとセメンタイトの凝集、粗大化が起こるため、再加熱の温度域を550〜700℃に規定する。
更に、鋼板表面温度が600℃未満であり、鋼板表面と板厚中心部の温度差が20℃未満であると、表硬度を低下させることが出来ず、表面が硬化した不均一な板厚方向硬度分布となりバウジンガー効果が大きくなるので、鋼板表面温度を600℃以上、且つ鋼板表面と板厚中心部の温度差を20℃以上とする。再加熱後の冷却過程は特に規定しないが、空冷とすることが望ましい。
加速冷却後の再加熱を行うための設備として、冷却設備の下流側に加熱装置を設置する。加熱装置としては、鋼板表面と板厚中央部で温度差を発生させることが容易な誘導加熱装置を用いる事が好ましい。
上述した製造方法を実施する設備として、圧延ラインの上流から下流側に向かって熱間圧延機、冷却装置、誘導加熱装置、ホットレベラーを逐次配置したものが好適である。
誘導加熱装置あるいは他の熱処理装置を、圧延設備である熱間圧延機およびその出側に配置される冷却装置と同一ライン上に設置する事によって、圧延、加速冷却終了後迅速に再加熱処理が行えるので、加速冷却後の鋼板温度を過度に低下させることなく加熱することが可能である。
上述した製造方法と成分組成の組み合わせにより製造した本発明鋼板では金属組織中の島状マルテンサイト分率が3%以下、更に表層(鋼板幅方向断面の表面から板厚中心方向1mmの位置)と板厚中央部の硬度差として40以下が得られる。
図1に本発明鋼板(0.05mass%C−1.4mass%Mn−0.01mass%Ti−0.04mass%Nb)を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したミクロ組織を示す。
図1はナイタールエッチング後に電解エッチングを施した試料の観察結果で、セメンタイト(矢印で示す)は電解エッチングで溶解されるため黒く穴状で観察され、MAはベイナイトラス間に針上に存在したり粒界付近に塊状に存在し白く浮きだって観察される。 図1から明らかなように、ベイナイト組織中のセメンタイトやMAの硬質相はほとんど観察されない。
表1に示す化学成分の鋼(鋼種A〜L)を連続鋳造法によりスラブとし、板厚18、26mmの厚鋼板(No.1〜21)を製造した。
加熱したスラブを熱間圧延により圧延した後、直ちに水冷型の冷却設備を用いて加速冷却を行い、誘導加熱炉を用いて再加熱を行った。誘導加熱炉は冷却設備と同一ライン上に設置した。
各鋼板(No.1〜21)の製造条件を表2に示す。なお、加熱温度、圧延終了温度、冷却開始および停止温度は鋼板の平均温度とした。平均温度は、スラブもしくは鋼板の表面温度より、板厚、熱伝導率等のパラメータ、計算により求めた。
加速冷却速度は、加速冷却開始後、加速冷却停止温度まで冷却に必要な温度差をその冷却を行うのに要した時間で割った平均冷却速度とした。
再加熱昇温速度は、加速冷却後、板厚中心部の再加熱温度までの再加熱に必要な温度差を再加熱するのに要した時間で割った平均昇温速度とした。
再加熱終了時の鋼板表面温度は、放射温度計で測定し、鋼板板厚中心部温度は、鋼板の表面温度より、板厚、熱伝導率等のパラメータ、計算により求めた。
以上の条件で製造した鋼板を用い、表層(鋼板幅方向断面の表面から板厚中心方向1mmの位置)と板厚中心部の硬度差測定、引張特性測定、バウシンガー試験を実施した。測定結果を表2に併せて示す。
硬度差は、荷重10kgfのビッカース硬さの値で表層の硬度(鋼板幅方向断面の表面から板厚中心方向1mmの位置の硬度)と板厚中心部の硬度の差を示している。
引張特性は、圧延垂直方向の全厚引張試験片を2本採取し、引張試験を行い、引張特性を測定し、その平均値で評価した。引張強度540MPa以上を本発明に必要な強度とした。
バウシンガー試験は、10φ丸棒試験片を1/4厚位置から採取し1〜3%の圧縮予歪みを導入した後、引張を行い、引張時の0.5%耐力を圧縮時の0.5%耐力で除した値を耐力比として評価した。
耐力比が高いほどバウシンガー効果による降伏応力低下が小さいと評価でき、耐力比が0.8以上を本発明に必要な値とした。溶接熱影響部(HAZ)靭性については、再現熱サイクル装置によって入熱40kJ/cmに相当する熱履歴を加えた試験片を用いてシャルピー試験を行った。試験温度−10℃でのシャルピー吸収エネルギーが100J以上を良好とした。
第2相体積分率は、倍率1000倍で組織観察した5枚のSEM写真の画像解析から面積分率を平均して求め、鋼板中に均一に第2相が分散していると仮定して、体積分率とした。
表2において、本発明例であるNo.1〜9はいずれも、化学成分および製造方法が本発明の範囲内であり、引張強度540MPa以上の高強度で、第2相の体積分率も1%未満であり耐力比も0.8以上であった。
No.10〜16は、化学成分は本発明の範囲内であるが、製造方法が本発明の範囲外であるため、第2相体積分率か硬度差のいずれかが満足できず、耐力比が0.8未満となっている。
No.17〜21は化学成分が本発明の範囲外であるため第2相体積分率が3%を超しており、耐力比も0.8未満となっている。
本発明の鋼板を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した写真。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.06%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.5〜2.0%、Al:0.08%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなり、ベイナイト組織中の第2相組織の体積分率が3%以下であり、表層(鋼板幅方向断面の表面から板厚中心方向1mmの位置)と板厚中心部のビッカース硬度差が40以内であることを特徴とするバウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板。
  2. 更に、質量%で、Mo:0.05〜0.4%、Ti:0.005〜0.04%、Nb:0.005〜0.06%、V:0.005〜0.07%の中から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のバウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板。
  3. 更に、質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Cr:1.0%以下、B:0.005%以下、の中から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板。
  4. 更に、質量%で、Ca:0.001〜0.005%、Mg:0.005%以下、REM:0.02%以下の中から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載のバウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一つに記載の成分組成を有する鋼を、1000〜1300℃の温度に加熱し、Ar変態点温度以上の圧延終了温度で熱間圧延し鋼板とした後、Ar変態点以上の温度から5℃/s以上の冷却速度で300〜600℃まで加速冷却を行い、その後直ちに0.5℃/s以上の昇温速度で鋼板表面温度600℃以上、板厚中心部温度550〜700℃まで再加熱を行い、且つ加熱終了時の鋼板表面と板厚中心部の温度差が20℃以上であることを特徴とするバウシンガー効果による降伏応力低下が小さい高強度ラインパイプ用鋼板の製造方法。
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