JP4674019B2 - 画像表示媒体及びそれを有する画像表示装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界の作用によって帯電した白色粒子及び着色粒子を分散媒中において移動させることにより、可逆的に視認状態を変化させることができる画像表示媒体及びそれを有する画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、文字、静止画、動画等の画像を表示する画像表示装置として、カソードレイ チューブ(CRT)、液晶ディスプレイ等の表示装置が用いられている。これらの表示装置は、デジタルデータを瞬時に表示でき、また、書き換えることができるが、▲1▼卓上等に設置して使用するものとなっているので持ち歩くことが困難であること、▲2▼これを長時間見て作業すると眼が疲労すること、▲3▼電源をオフにしては表示できないこと、等の問題があった。
【0003】
一方、文字、静止画等のデジタルデータによる情報は、書類等の紙媒体として配布されたり、また、書類等の紙媒体として保存されたりするときは、プリンターにて紙媒体に記録されている。かかる情報が記録された紙媒体は、ハードコピーとして広く使用されている。ハードコピーは、(a) ディスプレイよりも文字が読みやすいこと、(b) 目が疲れにくいこと、(c) 自由な姿勢で読むことができること、(d) 軽量で自由に持ち運びが可能であること、等の特徴を有している。しかし,ハードコピーは、使用された後は、廃棄されたり、リサイクルされたりするが、そのためには、多くの労力と費用を要するので、省資源の点では問題があった。
【0004】
そこで、ディスプレイとハードコピーの両方の長所を持った書き換えが可能なペーパーライクな表示媒体へのニーズが高くなり、高分子分散型液晶素子、双安定性コレステリック液晶素子、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子等の表示媒体が提案された。これらの表示媒体は、反射型で明るい表示ができ、かつ、メモリー性のあるものとして注目されている。それらの中でも、電気泳動素子を用いた表示媒体(以下、「電気泳動表示媒体」という。)は、表示品質、表示動作時の消費電力等の点で優れており、例えば、特開平5−173194号公報及び特許第2612472号公報に開示されている。
【0005】
このような電気泳動表示媒体においては、着色した分散媒が一組の透明電極の間に封入され、そして、この着色した分散媒中には、その色とは異なる色を有する複数の泳動粒子が分散されている。泳動粒子は、分散媒中では、その表面に電荷を帯びたものとなっているので、一組の透明電極の一方に、泳動粒子の電荷と逆向きの電圧を与えると、泳動粒子が透明電極の一方に堆積して泳動粒子の色が観測され、また、泳動粒子の電荷と同じ向きの電圧を与える場合には、泳動粒子は反対側に移動するため分散媒の色が観測される。電気泳動表示媒体には、このような原理に基づいて、情報が表示される。
【0006】
電気泳動表示媒体に用いられる分散媒としては、一般に、電気絶縁性のある非極性の有機溶媒が使用される。これらの非極性の有機溶媒としては、▲1▼ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、リグロイン、ソルベントナフサ(アイソバーH、G、L、K(エクソン化学社製)、シエルゾール(シェル石油社製))等の脂肪族炭化水素、及び、▲2▼テトラクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの非極性の有機溶媒で構成される分散媒は、揮発性が高く、そのために、これを常温、大気圧下で表示媒体及び表示装置において使用したり或いはそのまま放置したりすると、その一部が気化することがあるので、引火したり、また、表示動作の安定性を確保することが困難となったりする、という問題があった。また、これらの分散媒は、表示媒体及び表示装置が万一破損して漏出した際には、人体に有害な蒸気を大量に発生させる危険、及び、火災を発生させる危険があった。特に、ハロゲン化炭化水素に至っては総じて毒性があり、これらを選択して表示媒体、表示装置等の製品を製造することは現実的ではない。
【0008】
これらの問題を解決するために、直鎖アルキルベンゼン構造を有する化合物からなる分散媒を表示媒体に使用することが特許第2612474号公報に開示されている。しかし、かかる化合物からなる分散媒は、引火点がベンゼン、トルエン等よりも高いものの、特有の臭気を持つものが多く、また、総じて皮膚に対する刺激性が強いので、表示媒体及び表示装置が万一破損し分散媒が漏出した際には、人体に悪い影響を与えるという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
即ち、本発明は、火災の発生を防止すると共に、人体に悪い影響を与えることを防止し、且つ、分散粒子が外部電界によって良好に泳動することができる電気絶縁性の高い画像表示媒体及びそれを有する画像表示装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、分散媒中に白色粒子及び白色以外の着色粒子を分散させた分散媒が導電層を介して少なくとも一方を光透過性とする一対の基板の間に封入された画像表示媒体であって、前記一対の基板間に電圧を印加することによる前記粒子の電気泳動により表示動作を行う画像表示媒体において、前記分散媒が70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサンで構成されていることを特徴とする画像表示媒体である。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記分散媒が、次の一般式
【化7】
【化8】
【化9】
(式中、R1 〜R12は、アルキル基、フェニル基及びアラルキル基から選ばれる基であって、それらは、同じ基であっても、また、異なった基であってもよい。
)
に示される繰り返し単位の少なくとも1種類以上により構成されるオルガノポリシロキサンで構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1又は2に記載された発明において、前記分散媒の体積抵抗率が1×109 Ω・cm以上であることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の画像表示媒体を有することを特徴とする画像表示装置である。
【0014】
請求項5に記載された発明は、着色した分散媒中に白色粒子又はこの分散媒の色とは異なる着色粒子を分散させた分散媒が導電層を介して一対の基板間に封入された画像表示媒体であって、前記一対の基板間に電圧を印加することによる前記粒子の電気泳動により表示動作を行う画像表示媒体において、前記分散媒が、70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサンで構成されていることを特徴とする画像表示媒体である。
【0015】
請求項6に記載された発明は、請求項5に記載された発明において、前記分散媒が、次の一般式
【化10】
【化11】
【化12】
(式中、R1 〜R12は、アルキル基、フェニル基及びアラルキル基から選ばれる基であって、それらは、同じ基であっても、また、異なった基であってもよい。)
に示される繰り返し単位の少なくとも1種類以上により構成されるオルガノポリシロキサンであって、それらの繰り返し単位の少なくとも1つの繰り返し単位がフェニル基を有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とするものである。
【0016】
請求項7に記載された発明は、請求項5又は6に記載された発明において、前記分散媒の体積抵抗率が1×109 Ω・cm以上であることを特徴とするものである。
【0017】
請求項8に記載された発明は、請求項5〜7のいずれかに記載された発明において、前記分散媒がこれに可溶な油溶性染料で着色されていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項9に記載された発明は、請求項5〜8のいずれかに記載された画像表示媒体を有することを特徴とする画像表示装置である。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施の形態を示す表示媒体の断面図である。図2は、本発明の他の一実施の形態を示す表示媒体の断面図である。そして、図3は、本発明の一実施の形態を示す画像表示装置の模式図である。
【0020】
(実施の形態1)
図1において、10は、画像表示媒体である。画像表示媒体10は、分散媒4の中に白色粒子3a及び白色以外の着色粒子(以下、明細書では、「着色粒子」という。)3bを分散させた分散媒4が導電層1,2を介して少なくとも一方を光透過性とする一対の基板(図示せず)の間に封入された一対の基板を有しており、そして、その一対の基板間に電圧を印加することによる前記粒子3の電気泳動により表示動作を行うものとなっている。また、画像表示媒体10においては、その分散媒4が70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサンで構成されている。この油状のオルガノポリシロキサンは、有機塩素化合物のような毒性がなく、また、常温、大気圧において実質的に揮発しないので、人体の皮膚に作用して炎症を起こさせること等の悪い影響を人体に与えることはないし、さらに、環境に排出されることもない。
【0021】
前記分散媒は、好ましくは、次の一般式
【化13】
【化14】
【化15】
(式中、R1 〜R12は、アルキル基、フェニル基及びアラルキル基から選ばれる基であって、それらは、同じ基であっても、また、異なった基であってもよい。)
に示される繰り返し単位の少なくとも1種類以上により構成されるオルガノポリシロキサンで構成されている。
【0022】
このようなオルガノポリシロキサンとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、環状アルキルポリシロキサン等のうち引火点が70℃以上のものがあげられる。これらの具体例を挙げれば次のとおりである。
【0023】
・環状ポリアルキルフェニルシロキサンの例:環状ポリメチルフェニルシロキサン、環状ポリエチルフェニルシロキサン、環状ポリブチルフェニルシロキサン、環状ポリヘキシルフェニルシロキサン、環状ポリメチルクロロフェニルシロキサン、環状ポリメチルブロムフェニルシロキサン。
・アルキルフェニルシリコーンオイルの例:メチルフェニルシリコーンオイル、エチルフェニルシリコーンオイル、プロピルフェニルシリコーンオイル、ブチルフェニルシリコーンオイル、ヘキシルフェニルシリコーンオイル、オクチルフェニルシリコーンオイル、ラウリルフェニルシリコーンオイル、ステアリルフェニルシリコーンオイル。
【0024】
これらシリコーンオイルの市販の例としては、信越化学工業(株)製のKF96シリーズ、KF50シリーズ、KF54、KF56、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のAKシリーズ、ASシリーズ、ARシリーズ、APシリーズ、PDMシリーズ、GE東芝シリコーン(株)製のTSF451シリーズ、TSF456シリーズ、TSF405、TSF4427、TSF431、TSF433、TSF437、TSF456シリーズ、更には東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH200シリーズ、SH510、SH550、SH556、SH702、SH704、SH705などのうち引火点が70℃以上のものが挙げられる。これらのオイルは単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
前記導電層1,2は、アルミニウム、銀、ニッケル、銅等の金属材料、又は、ITO、酸化錫、酸化亜鉛:アルミニウム等の透明導電体材料を用いてスパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法等の手段で基板上に形成するか、或いは、導電剤を溶媒又は合成樹脂バインダに混合して得た塗布剤を用いて基板上に塗布することにより形成する。前記導電剤としては、▲1▼ポリメチルベンジルトリメチルクロライド、ポリアリルポリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性高分子電解質、▲2▼ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸塩等のアニオン性高分子電解質、或いは、▲3▼電子伝導性の酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム等の微粉末が用いられる。導電層1,2は、自体が自己保持機能を有する程度に厚い場合もあるし、図示しない自己保持機能を有する基体上に導電層が設けられている場合もあり、いずれの場合も好適に使用できる。また、導電層1,2は、異方導電性を示す層であってもよいし、厚さ方向に導電性部分が貫通したパターン状ないしマルチドット状のセグメントを有する層であってもよい。いずれにおいても、導電層1,2の一部に電源電極をコンタクトすれば、導電層1、2の間に電界を生じさせることが可能となるので、白色粒子3a及び着色粒子3bは、確実に導電層1,2に移動できる。表示を行うには、導電層1、2間の電圧印加手段を用意すればよい。
【0026】
白色粒子3a及び着色粒子3bは、帯電極性がそれぞれ異なる。白色粒子3aとしては、例えば、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物の固体粒子である。また、着色粒子3bとしては、例えば、▲1▼カーボンブラック、アニリンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック等の黒色顔料、▲2▼フタロシアニンブルー、メチレンブルー、ビクトリアブルー、メチルバイオレット、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー等のシアン系の顔料、▲3▼ローダミン6Gレーキ、ジメチルキナクリドン、ウォッチングレッド、ローズベンガル、ローダミンB、アリザリンレーキ等のマジェンタ、及び、▲4▼イエローの着色剤としては、例えば、クロムイエロー、ベンジジンイエロー、ハンザイエロー、ナフトールイエロー、モリブデンオレンジ、キノリンイエロー、タートラジン等黄色顔料がある。また、上記金属酸化物や着色顔料を少なくとも分散媒となる溶媒に不溶なバインダー樹脂に分散又は混合したものも使用できる。前記バインダー樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のうち分散媒に不溶なものが全て使用できるが、とりわけ非粘着材系材料が好ましく使用できる。前記樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン系の重合体がある。このような金属酸化物及び着色剤が使用できる量は、バインダー樹脂10重量部に対して上記金属酸化物及び着色顔料0.1〜300重量部、好ましくは、1〜100重量部である。
【0027】
前記分散媒4は、無色透明であることが好ましい。このように、分散媒4が無色透明であると、白色粒子3a及び着色粒子3bの色の違いに基づく画像のコントラストに悪影響を与えないので好ましい。分散媒4には、分散粒子の分散性を制御するために界面活性剤などが必要に応じて添加されることもある。
【0028】
本発明における分散媒中に前記白色粒子3a、着色粒子3b等の配合成分を混合するには、前記配合成分を70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサン中に直接混合分散すればよい。その際、前記配合剤を分散手段として、ボールミル、サンドミル、アトライター等を用いてもよい。なお、混合順序は特に限定されるものではない。
【0029】
本発明の画像表示媒体を製造する際には、前記分散媒中の粒子の凝集や偏りを抑えるために導電層1、2の間に図示しない隔壁あるいはマイクロカプセルなどにより分散媒を微少空間に隔離しても良い。
【0030】
本発明によれば、このように画像分散媒における分散媒が70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサンで構成されているので、火災の発生を防止すると共に、人体に悪い影響を与えることを防止し、且つ、分散粒子が外部電界によって良好に泳動することができる電気絶縁性の高い画像表示媒体及びそれを有する画像表示装置とすることができる。
【0031】
本発明によれば、前記分散媒の体積抵抗率は、好ましくは、1×109 Ω・cm以上である。このように、分散媒の体積抵抗率が1×109 Ω・cm以上であると、分散媒に分散安定剤等を添加しても、導電層1,2における分散媒中の粒子の泳動が良好に行われ、そのために、応答性の良い画像表示媒体及び画像表示装置とすることができる。前記分散媒の体積抵抗率が1×109 Ω・cm未満であると導電層1,2の間に粒子の電気泳動に必要な電界を生じさせることが困難となり、素子としての動作に不具合を生じる。
【0032】
(実施の形態2)
図2において、20は、画像表示媒体である。画像表示媒体20は、着色した分散媒14の中に白色粒子13a又はこの分散媒14の色とは異なる着色粒子(図示せず)を分散させた分散媒14が導電層11,12を介して少なくとも一方を光透過性とする一対の基板(図示せず)間に封入された一対の基板を有しており、その少なくとも一方を光透過性とする一対の基板の間に電圧を印加することによる前記粒子の電気泳動により表示動作を行うものとなっている。そして、前記画像表示媒体20においては、その分散媒14が70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサンで構成されている。この油状のオルガノポリシロキサンは、常温、大気圧において、実質的に実質上揮発せず、また、人体の皮膚に作用して炎症を起こさせること等の悪い影響を人体に与えることはない。
【0033】
前記分散媒は、次の一般式
【化16】
【化17】
【化18】
(式中、R1 〜R12は、アルキル基、フェニル基及びアラルキル基から選ばれる基であって、それらは、同じ基であっても、また、異なった基であってもよい。
)
に示される繰り返し単位の少なくとも1種類以上により構成されるオルガノポリシロキサンであって、それらの繰り返し単位の少なくとも1つの繰り返し単位がフェニル基を有するオルガノポリシロキサンで構成されている。
【0034】
このようなオルガノポリシロキサンとしては、環状ポリアルキルフェニルシロキサン、アルキルフェニルシリコーンオイル、ポリアルキルアラルキルシロキサン等のうち引火点が70℃以上のものがあげられる。これらの具体例を挙げれば下記のとおりである。
【0035】
・環状ポリアルキルフェニルシロキサンの例:環状ポリメチルフェニルシロキサン、環状ポリエチルフェニルシロキサン、環状ポリブチルフェニルシロキサン、環状ポリヘキシルフェニルシロキサン、環状ポリメチルクロロフェニルシロキサン、環状ポリメチルブロムフェニルシロキサン。
・アルキルフェニルシリコーンオイルの例:メチルフェニルシリコーンオイル、エチルフェニルシリコーンオイル、プロピルフェニルシリコーンオイル、ブチルフェニルシリコーンオイル、ヘキシルフェニルシリコーンオイル、オクチルフェニルシリコーンオイル、ラウリルフェニルシリコーンオイル、ステアリルフェニルシリコーンオイル。
【0036】
前記70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサンとしては、信越化学工業(株)製のKF50、KF−54、KF−56、旭化成ワッカーシリコーン(株)製のASシリーズ、ARシリーズ、APシリーズ、PDMシリーズ、GE東芝シリコーン(株)製のTSF431、433、437、更には東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH510、SH550、SH556、SH702、SH704、SH705などが挙げられる。これらの溶媒は単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
本発明によれば、このように画像分散媒における分散媒が70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサンで構成されているので、火災の発生を防止すると共に、人体に悪い影響を与えることを防止し、且つ、分散粒子が外部電界によって良好に泳動することができる電気絶縁性の高い画像表示媒体及びそれを有する画像表示装置とすることができる。
【0038】
前記70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサンよりなる分散媒14は、白色粒子13a及び着色粒子13bの色とは異なる色に着色されている。着色された分散媒14には、分散粒子の分散性を制御するために界面活性剤などが必要に応じて添加されることもある。前記分散媒14を着色する染料としては、上記分散媒に可溶な油溶性染料が挙げられ、Coulour IndexにおいてSolvent dyeに分類される染料が好適に使用される。これらの油溶性染料には、アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、トリアリルメタン系の染料がある。これら油性染料は、例えば、スピリットブラック(SB,SSBB,AB)、ニグロシンベース(SA,SAP,SAPL,EE,EEL,EX,EXBP,EB)、オイルイエロー(105,107,129,3G,GGS)、オイルオレンジ(201,PS,PR)、ファーストオレンジ、オイルレッド(5B,RR,OG)、オイルスカーレット、オイルピンク312、オイルバイオレット#730、マクロレックスブルーRR、スミプラストグリーンG、オイルブラウン(GR,416)、スーダンブラックX60、オイルグリーン(502,BG)、オイルブルー(613,2N,BOS)、オイルブラック(HBB,860,BS)、バリファーストイエロー(1101,1105,3108,4120)、バリファーストオレンジ(3209,3210)、バリファーストレド(1306,1355,2303,3304,3306,3320)、バリファーストピンク2310N、バリファーストブラウン(2402,3405)、バリファーストブルー(3405,1501,1603,1605,1607,2606,2610)、バリファーストバイオレット(1701,1702)、ヴァリファーストブラック(1802,1807,3804,3810,3820,3830)が代表的なものとして挙げられるが、本発明の目的に反しない限り、ここに記載された染料以外の油性染料又は油溶性染料であってもかまわない。
【0039】
本発明における「70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサン」が、繰り返し単位の少なくとも1つの繰り返し単位がフェニル基を有するオルガノポリシロキサンで構成されていることは、前述のとおりであるが、このように「70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサン」が「繰り返し単位の少なくとも1つの繰り返し単位がフェニル基を有するオルガノポリシロキサン」で構成されていると、「70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサン」に前記したような油溶性染料をいっそう均一に溶解させることができるので、画像表示媒体に表示される文字等の情報を着色された分散媒によっていっそう鮮明に表示することができ、よって、表示コントラストが高い画像表示媒体および画像表示装置を提供することができる。
【0040】
着色された分散媒14には染料の溶解性を向上させるために他の物質を加えることができる。これらの物質は、非極性溶媒に溶解ないし混和可能な物質が好ましい。これらの物質の例としては、エーテル類、エステル類、アルコール類、ケトン類、アミド類などが挙げられる。このような他の溶媒の混合比は、分散媒100重量部に対し0.1〜10重量部程度である。
【0041】
前記導電層11,12は、前記実施の形態1で説明したものと同様な材料を用いて同様な手段で基板上に形成される。白色粒子13a及び着色粒子13bとしては、前記実施の形態1で説明したものと同様なものが用いられる。そして、前記白色粒子13a、着色粒子13b等の配合成分は、実施の形態1で説明したのと同様の手段で、分散媒14の中に混合される。
【0042】
本発明の画像表示媒体20を製造する際には、実施の形態1と同様に、分散媒中の粒子の凝集や偏りを抑えるために導電層11、12の間に図示しない隔壁あるいはマイクロカプセルなどにより分散媒を微少空間に隔離しても良い。
【0043】
本発明によれば、前記分散媒の体積抵抗率は、好ましくは、1×109 Ω・cm以上である。このように、分散媒の体積抵抗率が1×109 Ω・cm以上であると、分散媒に分散安定剤等を添加しても、導電層1,2における分散媒中の粒子の泳動が良好に行われ、そのために、応答性の良い画像表示媒体及び画像表示装置とすることができる。前記分散媒の体積抵抗率が1×109 Ω・cm未満であると導電層1,2の間に粒子の電気泳動に必要な電界を生じさせることが困難となり、素子としての動作に不具合を生じる。
【0044】
(実施の形態3)
図3に示されるように、本発明の画像表示装置30は、画像表示媒体10、又は、画像表示媒体20)を備え、そして、図示しない駆動回路、演算回路、内部メモリ、電源等を備えている。表示媒体における電極は、ドットマトリックスを形成し、指定のドットをON表示することにより、全体として画像を表示する。図3において、31は、筺体であり、また、31は、情報入力手段である。
【0045】
【実施例】
(実施例1)
ジメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製SH200 5cs:引火点153℃)95部に、黒色低次酸化チタン(チタンブラック)を3−アミノプロピルトリメトキシシランでカップリング処理したもの2部と酸化チタン3部を加えボールミルで分散して分散媒を調製した。なお、上記分散媒の20℃における体積抵抗率を交流インピーダンス測定から求めたところ、1.2×1010Ω・cmであった。続いて、2枚のITO電極付き基板間に1cm□の開口を設けた250μm厚のポリエステルフィルムを挟み空間を作り、その空間に上記分散媒を封入して画像表示媒体とした。このようにして得られた画像表示媒体の上部ITO電極に+200Vを印加したところ、前記チタンブラックは下部電極に電着され、また、酸化チタン粒子は上部電極に電着されて、上部基板面から見ると白色に見えた。さらに、上部電極に−200Vを印加したところ、チタンブラックは上部電極に移動して電着され、また、酸化チタン粒子は下部電極に移動し吸着されて、上部基板側から見るとチタンブラックの色に起因する着色状態が鮮明に見られた。
【0046】
(実施例2)
フェニルメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング・シリコーン社 SH556:引火点131℃)を使用した以外は実施例1と同様にして分散媒を調製した。上記分散媒の20℃における体積抵抗率を交流インピーダンス測定から求めたところ、7.6×109Ω・cmであった。続いて、2枚のITO電極付き基板間に1cm□の開口を設けた250μm厚のポリエステルフィルムを挟み空間を作り、その空間に上記分散媒を封入した。そして、上部ITO電極に+200Vを印加したところ、チタンブラックは下部電極に電着され、また、酸化チタン粒子は上部電極に電着されて、上部基板面から見ると白色に見えた。さらに、上部電極に−200Vを印加したところ、チタンブラックは上部電極に移動して吸着され、また、酸化チタン粒子は下部電極に移動して吸着されて、上部基板側から見るとチタンブラックの色に起因する着色状態が鮮明に見られた。
【0047】
(実施例3)
アルキル変性シリコーンオイル(GE東芝シリコーン社 XF42−A3161:引火点208℃)を使用した以外は実施例1と同様にして分散媒を調製した。上記分散媒の20℃における体積抵抗率を交流インピーダンス測定から求めたところ、1.3×1010Ω・cmであった。続いて、2枚のITO電極付き基板間に1cm□の開口を設けた250μm厚のポリエステルフィルムを挟み空間を作り、その空間に上記分散媒を封入した。そして、上部ITO電極に+200Vを印加したところ、チタンブラックは下部電極に電着され、また、酸化チタン粒子は上部電極に電着されて、上部基板面から見ると白色に見えた。さらに、上部電極に−200Vを印加したところ、チタンブラックは上部電極に移動して吸着され、また、酸化チタン粒子は下部電極に移動して吸着されて、上部基板側から見るとチタンブラックの色に起因する着色状態が鮮明に見られた。
【0048】
(実施例4)
フェニルメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング・シリコーン社 SH556:引火点131℃)95部に染料(バイエル マクロレックスブルーRR)0.1部を溶解して着色し、酸化チタン5部を加えボールミルで分散して分散媒を調製した。なお、上記分散媒の20℃における体積抵抗率を交流インピーダンス測定から求めたところ、9.1×109Ω・cmであった。続いて、2枚のITO電極付き基板間に1cm□の開口を設けた250μm厚のポリエステルフィルムを挟み空間を作り、その空間に上記分散媒を封入して画像表示媒体とした。このようにして得られた画像表示媒体の上部ITO電極に+200Vを印加したところ、酸化チタン粒子は速かに上部電極に電着されて、上部基板面から見ると白色に見えた。さらに、上部電極に−200Vを印加したところ、酸化チタン粒子は下部電極に移動して吸着されて、上部基板側から見ると染料の色に起因する着色状態が鮮明に見られた。
【0049】
(実施例5)
分散媒にフェニルメチルシリコーンオイル(GE東芝シリコーン社 TSF437:引火点170℃)を用いた以外は実施例1と同様にして分散媒を調製した。なお、上記分散媒の20℃における体積抵抗率を交流インピーダンス測定から求めたところ、1.4×1010Ω・cmであった。続いて、2枚のITO電極付き基板間に1cm□の開口を設けた250μm厚のポリエステルフィルムを挟み空間を作り、その空間に上記分散媒を封入して画像表示媒体とした。このようにして得られた画像表示媒体の上部ITO電極に+200Vを印加したところ、酸化チタン粒子は速かに上部電極に電着されて、上部基板面から見ると白色に見えた。さらに、上部電極に−200Vを印加したところ、酸化チタン粒子は下部電極に移動して吸着されて、上部基板側から見ると染料の色に起因する着色状態が鮮明に見られた。
【0050】
【発明の効果】
(1)請求項1,2,4に記載された発明によれば、画像表示媒体における分散媒が70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサンで構成されているので、火災の発生を防止すると共に、人体に悪い影響を与えることを防止し、且つ、分散粒子が外部電界によって良好に泳動することができる電気絶縁性の高い画像表示媒体及びそれを有する画像表示装置とすることができる。
【0051】
(2)請求項3に記載された発明によれば、分散媒の体積抵抗率が1×109 Ω・cm以上であるので、分散媒に分散安定剤等を添加しても、導電層における分散媒中の粒子の泳動が良好に行われ、そのために、応答性の良い画像表示媒体及び画像表示装置とすることができる。
【0052】
(3)請求項5,9に記載された発明によれば、画像表示媒体における分散媒が70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサンで構成されているので、火災の発生を防止すると共に、人体に悪い影響を与えることを防止し、且つ、分散粒子が外部電界によって良好に泳動することができる電気絶縁性の高い画像表示媒体及びそれを有する画像表示装置とすることができる。
【0053】
(4)請求項6,8に記載された発明によれば、「70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサン」が「繰り返し単位の少なくとも1つの繰り返し単位がフェニル基を有するオルガノポリシロキサン」で構成されているので、「70℃以上の引火点を有する油状のオルガノポリシロキサン」に油溶性染料をいっそう均一に溶解させることができ、そのために、画像表示媒体に表示される文字等の情報を着色された分散媒によっていっそう鮮明に表示することができ、よって、表示コントラストが高い画像表示媒体および画像表示装置を提供することができる。
【0054】
(5)請求項7に記載された発明によれば、分散媒の体積抵抗率が1×109 Ω・cm以上であるので、分散媒に分散安定剤等を添加しても、導電層における分散媒中の粒子の泳動が良好に行われ、そのために、応答性の良い画像表示媒体及び画像表示装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示す表示媒体の断面図である。
【図2】本発明の他の一実施の形態を示す表示媒体の断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す画像表示装置の模式図である。
【符号の説明】
1,2 導電層
3a,13a 白色粒子
3b,13b 着色粒子
4 分散媒
10,20 画像表示媒体
30 画像表示装置
Claims (3)
- 着色した分散媒中に白色の粒子又はこの分散媒の色とは異なる色に着色した粒子を分散させた分散媒が導電層を介して一対の基板間に封入された、前記一対の基板間に電圧を印加することにより表示動作を行う、画像表示媒体であって、
(イ)前記分散媒が、次の一般式
に示される繰り返し単位の少なくとも1種類以上よりなるオルガノポリシロキサンで構成され、
(ロ)前記繰り返し単位の少なくとも1つの繰り返し単位が、フェニル基を有するオルガノポリシロキサンとされ、
(ハ)前記分散媒が、該分散媒に可溶な油溶性染料で着色され、
(ニ)前記分散媒には、該分散媒100重量部に対して、0.1〜10重量部の混合比で非極性溶媒に溶解ないし混和可能な溶媒が含有され、かつ、
(ホ)前記溶媒が、エーテル類、エステル類、アルコール類、ケトン類、及び、アミド類から選ばれる
ことを特徴とする画像表示媒体。 - 前記分散媒の体積抵抗率が1×109 Ω・cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示媒体。
- 請求項1又は2に記載の画像表示媒体を有することを特徴とする画像表示装置。
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