JP4673487B2 - 金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物に関し、詳しくは、特に金属ベルト式無段変速機におけるベルトとプーリー間の摩擦特性とその耐久性に優れる金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物に関する。
【0002】
【従来技術および発明が解決しようとする課題】
金属ベルト式無段変速機は、変速によるエネルギー損失が小さいという点から、近年、自動車用変速機として脚光を浴びるようになってきた。このタイプの変速機は、金属製のベルトと金属製のプーリー間の摩擦によりトルクを伝達し、またプーリーの半径比を変えることにより変速を行うという機構を有する。従って金属ベルト式無段変速機に用いられる潤滑油は、金属ベルトと金属プーリーとの間の摩擦係数を出来だけ高くできる性能を有していることが極めて重視される。
従来、金属ベルト式無段変速機用潤滑油には、一般には自動変速機油(ATF)が使用されている。しかしながら、ATFを金属ベルト式無段変速機用潤滑油として用いた場合には、ベルトとプーリー間の金属間摩擦係数を十分高くできなかった。このため、ATFを使用した従来の金属ベルト式無段変速機は伝達トルク容量に限界があり、小型自動車にしか搭載できないという問題があった。
従って、本発明の課題は、金属間摩擦係数を高めることができ、それによりより大きな伝達トルク容量を得ることができる金属ベルト式無段変速機に特に有利な潤滑油組成物を提供することである。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するために、鋭意検討を重ねた結果、上記(A)アルカリ金属ホウ酸塩若しくはその水和物を用いることにより、金属間摩擦係数をより高めることができる金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0004】
本発明は、潤滑油基油に(A)アルカリ金属ホウ酸塩もしくはその水和物が含有されてなることを特徴とする金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物にある。
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物は、さらに(B)無灰分散剤を含有していることが望ましい。
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物は、さらに(C)金属系清浄剤、(D)リン系添加剤、(E)摩擦調整剤、(F)酸化防止剤、及び(G)粘度指数向上剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有していることが望ましい。
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物において、上記(A)アルカリ金属ホウ酸塩もしくはその水和物は、ホウ酸カリウム水和物であることが望ましい。
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物において、上記(A)アルカリ金属ホウ酸塩もしくはその水和物の配合量は、潤滑油組成物全量基準でホウ素元素量として0.002質量%〜0.1質量%であることが望ましい。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物は、潤滑油基油と(A)アルカリ金属ホウ酸塩もしくはその水和物とを含有する。
潤滑油基油としては、通常の潤滑油の基油として用いられる任意の鉱油及び/又は合成油が使用できる。
鉱油としては、具体的には例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、あるいは白土処理等の精製処理等を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の油やノルマルパラフィン等が使用できる。
合成油としては、特に制限はないが、例えば、ポリ−α−オレフィン(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンオリゴマー等)若しくはその水素化物、イソブテンオリゴマー若しくはその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、あるいはポリフェニルエーテル等が使用できる。
これらの潤滑油基油は単独であるいは2種類以上を任意の割合で組み合わせて使用することができる。潤滑油基油の動粘度は特に限定されず任意であるが、通常100℃における動粘度は、好ましくは1〜20mm2/s、より好ましくは1.5〜10mm2/sである。
【0006】
次に、(A)アルカリ金属ホウ酸塩もしくはその水和物を説明する。
(A)成分のアルカリ金属ホウ酸塩もしくはその水和物としては、例えば、ホウ酸リチウム水和物、ホウ酸ナトリウム水和物、ホウ酸カリウム水和物、ホウ酸ルビジウム水和物、ホウ酸セシウム水和物などを挙げることができる。特に好ましくはホウ酸カリウム水和物である。
これらのアルカリ金属ホウ酸塩もしくはその水和物は、例えば、ホウ素とアルカリ金属(カリウム/ナトリウム)との原子比が2.0〜4.5(ホウ素/アルカリ金属)の範囲となるように水酸化カリウムもしくは水酸化ナトリウムとホウ酸とを水に溶解させ、この溶液を中性のアルカリ土類金属スルホネートまたはコハク酸イミド系無灰分散剤を含む油溶液に加え、激しく攪拌して油中水型エマルションを作り、それを脱水して得たホウ酸カリウム水和物もしくはホウ酸ナトリウム水和物の微粒子状の分散液として得ることができる。
【0007】
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物において、任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の(A)成分の配合量は任意であるが、通常その下限値は、組成物全量基準でホウ素元素量として好ましくは0.002質量%、より好ましくは0.005質量%であり、一方、その上限値は、組成物全量基準でホウ素元素量として好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.06質量%である。(A)成分の含有量が、組成物全量基準でホウ素元素量として0.002質量%に満たない場合は、(A)成分配合による組成物の金属間摩擦特性の向上効果に乏しく、一方、その含有量が、組成物全量基準でホウ素元素量として0.1質量%を越える場合は、組成物の貯蔵安定性が低下する恐れがあるため、それぞれ好ましくない。
【0008】
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物は、前記アルカリ金属ホウ酸塩もしくはその水和物を含有させることにより、金属間摩擦係数を高めることができ、それにより十分なトルク伝達容量を達成できるが、さらに(B)無灰分散剤を含有させることで、さらに高いトルク伝達容量を有する組成物を得ることができる。
【0009】
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物には、さらに(C)金属系清浄剤、(D)リン系添加剤、(E)摩擦調整剤、(F)酸化防止剤、及び(G)粘度指数向上剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有させることで、さらに高いトルク伝達容量を有する組成物を得ることができる。
【0010】
(B)無灰分散剤
無灰分散剤としては、潤滑油用の無灰分散剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、例えば炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、あるいはアルケニルコハク酸イミドの変性品等が挙げられる。
このアルキル基又はアルケニル基としては、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
このアルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を越える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
【0011】
また、無灰分散剤の1例として挙げた含窒素化合物の誘導体としては、具体的には例えば、前述の含窒素化合物に炭素数2〜30のモノカルボン酸(脂肪酸等)やシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の炭素数2〜30のポリカルボン酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆる酸変性化合物;前述の含窒素化合物にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和したり、アミド化した、いわゆるホウ素変性化合物;前述の含窒素化合物に硫黄化合物を作用させた硫黄変性化合物;及び前述の含窒素化合物に酸変性、ホウ素変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせた変性化合物等が挙げられる。
【0012】
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物には、これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で併用することができるが、通常その配合量は、潤滑油組成物全量基準で0.1〜10質量%である。
【0013】
(C)金属系清浄剤
金属系清浄剤としては、好ましくはその全塩基価が20〜450mgKOH/g、さらに好ましくは50〜400mgKOH/gの塩基性金属系清浄剤である。なお、全塩基価とは、JIS K2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価を意味する。
金属系清浄剤の全塩基価が20mgKOH/g未満の場合は、湿式クラッチの繰り返し圧縮に対する強度低下を抑制する効果が不十分であり、一方、全塩基価が450mgKOH/gを越える場合は構造的に不安定であり、組成物の貯蔵安定性が悪化するため、それぞれ好ましくない。
(C)成分の具体例としては、例えば以下の化合物から選ばれる1種類又は2種類以上の金属系清浄剤等が挙げられる。
(C−1)全塩基価が20〜450mgKOH/gのアルカリ土類金属スルホネート
(C−2)全塩基価が20〜450mgKOH/gのアルカリ土類金属フェネート
(C−3)全塩基価が20〜450mgKOH/gのアルカリ土類金属サリシレート
【0014】
上記(C−1)アルカリ土類金属スルフォネートとしては、より具体的には、例えば分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩が好ましく用いられ、アルキル芳香族スルホン酸としては、具体的にはいわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸等が挙げられる。
石油スルホン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものやホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルホン酸としては、例えば洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、ポリオレフィンをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンを原料とし、これをスルホン化したもの、あるいはジノニルナフタレンをスルホン化したもの等が用いられる。またこれらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては特に制限はないが、通常、発煙硫酸や硫酸が用いられる。
【0015】
上記(C−2)アルカリ土類金属フェネートとしては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルフェノール、このアルキルフェノールと元素硫黄を反応させて得られるアルキルフェノールサルファイド又はこのアルキルフェノールとホルムアルデヒドを反応させて得られるアルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
【0016】
上記(C−3)アルカリ土類金属サリシレートとしては、より具体的には、炭素数4〜30、好ましくは6〜18の直鎖状又は分枝状のアルキル基を少なくとも1個有するアルキルサリチル酸のアルカリ土類金属塩、特にマグネシウム塩及び/又はカルシウム塩等が好ましく用いられる。
【0017】
また、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート及びアルカリ土類金属サリシレートには、その金属塩が20〜450mgKOH/gの範囲にある限りにおいて、アルキル芳香族スルホン酸、アルキルフェノール、アルキルフェノールサルファイド、アルキルフェノールのマンニッヒ反応生成物、アルキルサリチル酸等を、直接、マグネシウム及び/又はカルシウムのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物等のアルカリ土類金属の塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからアルカリ土類金属塩と置換させること等により得られる中性塩(正塩)だけでなく、さらにこれら中性塩(正塩)と過剰のアルカリ土類金属塩やアルカリ土類金属塩基(アルカリ土類金属の水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガスの存在下で中性塩(正塩)をアルカリ土類金属の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩(超塩基性塩)も含まれる。
なお、これらの反応は、通常、溶媒(ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶剤、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤、軽質潤滑油基油等)中で行われる。また、金属系清浄剤は通常、軽質潤滑油基油等で希釈された状態で市販されており、また、入手可能であるが、一般的に、その金属含有量が1.0〜20質量%、好ましくは2.0〜16質量%のものを用いる。
【0018】
本発明の金属ベルト式無断変速機用潤滑油組成物において、(C)成分を配合する場合、(C)成分の配合量は特に限定されないが、通常、潤滑油組成物全量基準で、0.01〜5.0質量%であるのが好ましく、0.05〜4.0質量%であるのがより好ましい。
【0019】
(D)リン系添加剤
(D)リン系添加剤としては、アルキルジチオリン酸亜鉛、リン酸、亜リン酸、リン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、リン酸トリエステル類、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類、(亜)リン酸エステル類の塩、及びこれらの混合物等が挙げられる。
ここに挙げた(D)成分のうち、リン酸、亜リン酸を除いたものは、通常、炭素数2〜30、好ましくは3〜20の炭化水素基を含有する化合物である。
この炭素数2〜30の炭化水素基としては、具体的には、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等のアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基等のアルケニル基(これらアルケニル基は直鎖状でも分枝状でもよく、また二重結合の位置も任意である);シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5〜7のシクロアルキル基;メチルシクロペンチル基、ジメチルシクロペンチル基、メチルエチルシクロペンチル基、ジエチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、メチルエチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、ジメチルシクロヘプチル基、メチルエチルシクロヘプチル基、ジエチルシクロヘプチル基等の炭素数6〜11のアルキルシクロアルキル基(アルキル基のシクロアルキル基への置換位置も任意である);フェニル基、ナフチル基等のアリール基:トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基等の炭素数7〜18の各アルキルアリール基(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよく、またアリール基への置換位置も任意である);ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルヘキシル基等の炭素数7〜12の各アリールアルキル基(これらアルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);等が例示できる。
【0020】
(D)成分として好ましい化合物としては、具体的には、リン酸;亜リン酸;ジプロピルジチオリン酸亜鉛、ジブチルジチオリン酸亜鉛、ジペンチルジチオリン酸亜鉛、ジヘキシルジチオリン酸亜鉛、ジヘプチルジチオリン酸亜鉛、ジオクチルジチオリン酸亜鉛等のアルキルジチオリン酸亜鉛(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノプロピルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノペンチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノペプチルホスフェート、モノオクチルホスフェート等のリン酸モノアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノフェニルホスフェート、モノクレジルホスフェート等のリン酸モノ(アルキル)アリールエステル;ジプロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジペンチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジペプチルホスフェート、ジオクチルホスフェート等のリン酸ジアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);ジフェニルホスフェート、ジクレジルホスフェート等のリン酸ジ(アルキル)アリールエステル;トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェート、トリペプチルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸トリアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸トリ(アルキル)アリールエステル;モノプロピルホスファイト、モノブチルホスファイト、モノペンチルホスファイト、モノヘキシルホスファイト、モノペプチルホスファイト、モノオクチルホスファイト等の亜リン酸モノアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノフェニルホスファイト、モノクレジルホスファイト等の亜リン酸モノ(アルキル)アリールエステル;ジプロピルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジペンチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジペプチルホスファイト、ジオクチルホスファイト等の亜リン酸ジアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);ジフェニルホスファイト、ジクレジルホスファイト等の亜リン酸ジ(アルキル)アリールエステル;トリプロピルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリペンチルホスファイト、トリヘキシルホスファイト、トリペプチルホスファイト、トリオクチルホスファイト等の亜リン酸トリアルキルエステル(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト等の亜リン酸トリ(アルキル)アリールエステル;及びこれらの混合物等が例示できる。
【0021】
また、上述した(亜)リン酸エステル類の塩としては、具体的には、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、亜リン酸モノエステル、亜リン酸ジエステル等に、アンモニアや炭素数1〜8の炭化水素基又は水酸基含有炭化水素基のみを分子中に含有するアミン化合物等の含窒素化合物を作用させて、残存する酸性水素の一部又は全部を中和した塩等が例示できる。
この含窒素化合物としては、具体的には、アンモニア;モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、モノペンチルアミン、モノヘキシルアミン、モノヘプチルアミン、モノオクチルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミン、ジエチルアミン、メチルプロピルアミン、エチルプロピルアミン、ジプロピルアミン、メチルブチルアミン、エチルブチルアミン、プロピルブチルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン等のアルキルアミン(アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよい);モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミン、モノペンタノールアミン、モノヘキサノールアミン、モノヘプタノールアミン、モノオクタノールアミン、モノノナノールアミン、ジメタノールアミン、メタノールエタノールアミン、ジエタノールアミン、メタノールプロパノールアミン、エタノールプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、メタノールブタノールアミン、エタノールブタノールアミン、プロパノールブタノールアミン、ジブタノールアミン、ジペンタノールアミン、ジヘキサノールアミン、ジヘプタノールアミン、ジオクタノールアミン等のアルカノールアミン(アルカノール基は直鎖状でも分枝状でもよい);及びこれらの混合物等が例示できる。これらの(D)成分は、1種類あるいは2種類以上を任意に配合することができる。
【0022】
本発明の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物において(D)成分を配合する場合、その配合量は特に限定されないが、通常その配合量は、潤滑油組成物全量基準でリン元素として、0.005〜0.2質量%、好ましくは0.01〜0.1質量%である。
【0023】
(E)摩擦調整剤
摩擦調整剤としては、潤滑油用の摩擦調整剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であるが、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、特に炭素数6〜30の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基を分子中に少なくとも1個有する、アミン化合物、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩等が挙げられる。
【0024】
アミン化合物としては、炭素数6〜30の直鎖状若しくは分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族モノアミン、直鎖状若しくは分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪族ポリアミン、又はこれら脂肪族アミンのアルキレンオキシド付加物等が例示できる。脂肪酸エステルとしては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸と、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールとのエステル等が例示できる。脂肪酸アミドとしては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸と、脂肪族モノアミン又は脂肪族ポリアミンとのアミド等が例示できる。脂肪酸金属塩としては、炭素数7〜31の直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の脂肪酸の、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩等)や亜鉛塩等が挙げられる。
【0025】
本発明においては、これらの摩擦調整剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で配合することができるが、通常その配合量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5.0質量%、好ましくは0.03〜3.0質量%である。
【0026】
(F)酸化防止剤
本発明の金属ベルト式潤滑油組成物に併用される酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。
具体的には、2−6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、4、4−メチレンビス(2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛等のジアルキルジチオリン酸亜鉛類、(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)と1価又は多価アルコール、例えばメタノール、オクタデカノール、1、6ヘキサジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等とのエステル等が挙げられる。
これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を配合することができるが、通常その配合量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5.0質量%である。
【0027】
(G)粘度指数向上剤
粘度指数向上剤としては、具体的には、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの共重合体若しくはその水添物などのいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤等が例示できる。他の粘度指数向上剤の具体例としては、非分散型又は分散型エチレン-α-オレフィン共重合体(α −オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン等が例示できる)及びその水素化物、ポリイソブチレン及びその水添物、スチレン-ジエン水素化共重合体、スチレン-無水マレイン酸エステル共重合体及びポリアルキルスチレン等がある。
【0028】
これら粘度指数向上剤の分子量は、せん断安定性を考慮して選定することが必要である。具体的には、粘度指数向上剤の数平均分子量は、例えば分散型及び非分散型ポリメタクリレートの場合では、5,000〜150,000、好ましくは5,000〜35,000のものが、ポリイソブチレン又はその水素化物の場合は800〜5,000、好ましくは1,000〜4,000のものが、エチレン-α-オレフィン共重合体又はその水素化物の場合は800〜150,000、好ましくは3,000〜12,000のものが好ましい。
またこれら粘度指数向上剤の中でもエチレン-α-オレフィン共重合体又はその水素化物を用いた場合には、特にせん断安定性に優れた潤滑油組成物を得ることができる。
【0029】
本発明においては、これらの粘度指数向上剤の中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を、任意の量で配合することができるが、通常その配合量は、潤滑油組成物基準で0.1〜40.0質量%である。
【0030】
本発明の潤滑油組成物には、必要に応じて、有機ホウ素化合物、有機チタン化合物、有機ケイ素化合物、その他潤滑油に使用される任意の添加剤、具体的には、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、着色剤等が使用可能である。
【0031】
有機ホウ素化合物としては、炭素数2〜30の炭化水素基を有する有機ボレート、該ボレートとポリアミンの縮合物、該ボレートとポリオールの縮合物、該ボレートのホスファイト付加物、メルカプトアルキルボレート等が挙げられる。これらは金属間摩擦係数を高めるのに効果的である。
有機チタン化合物としては、炭素数2〜30の炭化水素基を有する有機オルトチタネート、該チタネートとポリアミンの縮合物、該チタネートとポリオールの縮合物、及び該チタンホスフェート等が挙げられる。これらは金属間摩擦係数を高めるのに効果的である。
有機ケイ素化合物としては炭素数2〜30の炭化水素基を有する有機オルトシリケート、該シリケートとポリアミンの縮合物、該シリケートとポリオールの縮合物等が挙げられる。これらは金属間摩擦係数を高めるのに効果的である。
有機ホウ素化合物、有機チタン素化合物、及び有機ホウ素化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物の使用量は、潤滑油組成物全量基準で通常0.001〜10質量%である。
【0032】
極圧添加剤としては、例えば、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等の硫黄系化合物等が挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、及びフルオロアルキルエーテル等が挙げられる。
【0033】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に配合する場合には、その配合量は潤滑油組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.01〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜1質量%、消泡剤、着色剤では0.0005〜1質量%の範囲が通常選ばれる。
【0034】
本発明の潤滑油組成物は、特に金属ベルト式無段変速機に好適に使用されるが、通常の湿式クラッチを有する自動変速機や湿式ブレーキ、二輪車用4サイクルエンジンの潤滑油に使用することも可能であり、また手動変速機用やガソリンエンジン、ガスエンジン、ディーゼルエンジン等の潤滑油、ギヤ油、油圧作動油、タービン油等にも好適に使用することができる。
【0035】
【実施例】
以下に本発明を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
(実施例1〜5、比較例1〜2)
水素化精製鉱油(100℃における動粘度:4mm2/s)の潤滑油基油に、下記表1に示す組成の本発明の潤滑油組成物(実施例1〜5)を調製した。また、下記表2に示す組成の比較用の潤滑油組成物(比較例1〜2)を調製した。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
上記実施例1〜5及び比較例1〜2の潤滑油組成物の性能を下記の性能評価試験により評価した。
(LFW−1摩擦試験)
ASTM D2714に規定される試験条件に準拠して以下に示す条件でLFW-1摩擦試験を行った。結果を図1及び図2に示す。
リング :Falex S−10 Test Ring
(SAE 4620 Steel)
ブロック:Falex H−60 Test Block
(SAE 01 Steel)
試験油温:110℃
試験荷重:250lb
すべり速度:0〜100cm/s
【0040】
図1及び図2に示す結果から、(A)アルカリ金属ホウ酸塩水和物を含有する本発明の潤滑油組成物(実施例1〜5)はいずれも、(A)を含有しない組成物(比較例1〜2)に比べ、金属ベルト式無段変速機の伝達トルク容量の指標となる金属間摩擦係数が十分高い性能を与えることがわかる。
【0041】
【発明の効果】
本発明の潤滑油組成物を用いることにより、金属間摩擦係数を高めることができる。従って、十分な伝達トルク容量を確保できるため、金属ベルト式無段変速機の大型自動車への搭載も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の摩擦試験におけるすべり速度と摩擦係数との関係を示すグラフである。
【図2】比較例の摩擦試験におけるすべり速度と摩擦係数との関係を示すグラフである。
Claims (5)
- 潤滑油基油に、(A)アルカリ金属ホウ酸塩もしくはその水和物を含有してなることを特徴とする金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物。
- さらに(B)無灰分散剤が含有してなることを特徴とする請求項1に記載の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物。
- さらに(C)金属系清浄剤、(D)リン系添加剤、(E)摩擦調整剤、(F)酸化防止剤、(G)粘度指数向上剤から選ばれる少なくとも1種の添加剤を含有してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物。
- (A)アルカリ金属ホウ酸塩もしくはその水和物がホウ酸カリウム水和物であることを特徴とする請求項1及至3の何れかの項に記載の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物。
- (A)アルカリ金属ホウ酸塩もしくはその水和物の配合量が、潤滑油組成物全量基準で、ホウ素元素量として0.002質量%〜0.1質量%である請求項1及至4の何れかの項に記載の金属ベルト式無段変速機用潤滑油組成物。
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