JP4672822B2 - 親水性コーティング剤及び表面親水性基体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、レンズ、鏡、金属、タイル、ガラス、繊維・不織布等の基体表面にコーティングすると、その表面が親水性作用を有する、親水性コーティング剤及び該親水性コーティング剤でコーティングした表面親水性基体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、眼鏡レンズ、浴室鏡、注射針等の表面に親水性・防曇性等を付与するコーティング剤としてはシリコン系樹脂がよく知られている。また、光触媒能を有するアナターゼ型酸化チタンTiO2 とシリコン系樹脂との混合物からなるコーティング剤をコーティングし、紫外線照射時に親水性作用を発揮する表面親水性基体も知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
シリコン系樹脂を親水性コーティング剤として用いた場合、シリコン系樹脂面に生じる静電気により、大気中の塵埃等が着塵し、その表面を黒く汚すという問題点があった。また、現在、光触媒を担持させる基体として多用されている有機高分子樹脂基板(プラスチック板やプラスチックレンズ)に対して、上記光触媒能を有するアナターゼ型酸化チタンTiO2 とシリコン系樹脂とからなる親水性コーティング剤を適用すると、酸化チタンによる静電気放電防止作用により大気中の塵埃等の着塵は防止しうるが、光触媒機能により有機高分子樹脂からなるプラスチック材の劣化が著しいという問題点があった。また、この光触媒能を有するアナターゼ型酸化チタンTiO2 とシリコン系樹脂とからなる親水性コーティング剤は、親水機能を発揮するためには紫外線照射が必要とされており、紫外線が照射されない場所に設置された場合には親水性機能が発揮できないという不都合があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため、鋭意研究したところ、アモルファス型チタン酸化物とケイ素酸化物との混合物からなるコーティング剤が、極めて優れた親水性を有するのみならず、かつ成膜性に優れ、加えて静電気放帯電防止作用を有し汚れを静電付着させることがなく、かつ有機高分子樹脂材を劣化させることがないばかりか、紫外線照射がないところでも親水機能を充分発揮しうることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
また、アモルファス型チタン酸化物とケイ素酸化物との混合物に、さらに光触媒を混和してなるコーティング剤をガラス、タイル等の基体にコーティングすると、紫外線照射がない場合であっても、表面親水性機能が発揮されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、アモルファス型過酸化チタンゾル等のアモルファス型チタン酸化物と、コロイダルシリカ等のケイ素酸化物とを含む親水性被膜(層)を基体表面に形成させることを特徴とする表面親水性基体に関する。
また、本発明は、アモルファス型過酸化チタンゾル等のアモルファス型チタン酸化物と、コロイダルシリカ等のケイ素酸化物と、アナターゼ型酸化チタン等の光触媒とを含む親水性被膜(層)を基体表面に形成させることを特徴とする表面親水性基体に関する。
さらに、本発明は、アモルファス型過酸化チタンゾル等のアモルファス型チタン酸化物と、コロイダルシリカ等のケイ素酸化物とを含む親水性コーティング剤、及び、アモルファス型過酸化チタンゾル等のアモルファス型チタン酸化物と、コロイダルシリカ等のケイ素酸化物と、アナターゼ型酸化チタン等の光触媒とを含む親水性コーティング剤に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、アモルファス型チタン酸化物としては、アモルファス型の過酸化チタンTiO3 やアモルファス型酸化チタンTiO2 を例示することができる。アモルファス型の過酸化チタンやアモルファス型酸化チタンには、アナターゼ型酸化チタンTiO2 やルチル型酸化チタンTiO2 と異なり、光触媒機能は実質上殆どない。
【0008】
本発明において用いられるアモルファス型過酸化チタンとして、特に好ましいアモルファス型過酸化チタンゾルは、例えば次のようにして製造することができる。四塩化チタンTiCl4 のようなチタン塩水溶液に、アンモニア水ないし水酸化ナトリウムのような水酸化アルカリを加える。生じる淡青味白色、無定形の水酸化チタンTi(OH)4はオルトチタン酸H4TiO4とも呼ばれ、この水酸化チタンを洗浄・分離後、過酸化水素水で処理すると、本発明のアモルファス形態の過酸化チタン液が得られる。このアモルファス型過酸化チタンゾルは、pH6.0〜7.0、粒子径8〜20nmであり、その外観は黄色透明の液体であり、常温で長期間保存しても安定である。また、ゾル濃度は通常1.40〜1.60%に調整されているが、必要に応じてその濃度を調整することができ、低濃度で使用する場合は、蒸留水等で希釈して使用する。
【0009】
また、このアモルファス型過酸化チタンゾルは、常温ではアモルファスの状態で未だアナターゼ型酸化チタンには結晶化しておらず、密着性に優れ、成膜性が高く、均一でフラットな薄膜を作成することができ、かつ、乾燥被膜は水に溶けないという性質の他に、光触媒に対して安定であるという特性を有している。
なお、アモルファス型の過酸化チタンのゾルを100℃以上で加熱すると、アナターゼ型酸化チタンゾルに変化し始め、アモルファス型過酸化チタンゾルを基体にコーティング後乾燥固定したものは、250℃以上の加熱によりアナターゼ型酸化チタンになる。
【0010】
本発明において用いられるアモルファス型酸化チタンとしては微粉末状のものやこの微粉末状のものを硝酸等の溶媒に懸濁分散させたゾル状のものが知られている。この光触媒機能を有さないアモルファス型酸化チタンの内、微粉末状のものを用いる場合には、熱硬化水溶性樹脂などのバインダーと混合してコーティングすることになる。
【0011】
本発明において用いられるケイ素酸化物としては、コロイダルシリカ等の二酸化珪素の他、シリコーン、オルガノポリシロキサン等のシロキサン類化合物、水ガラスを挙げることができるが、コロイダルシリカが望ましい。
【0012】
本発明において使用しうる光触媒としては、Ti02、ZnO、SrTiO3、CdS、Cd0、CaP、InP、In2O3、CaAs、BaTiO3、K2NbO3、Fe2O3、Ta2O5、WO3、SaO2、Bi2O3、NiO、Cu2O、SiC、SiO2、MoS2、MoS3、InPb、RuO2、CeO2などを挙げることができるが、これらの中でも粉末状又はゾル状のアナターゼ型酸化チタンTi02 が好ましい。
【0013】
ゾル状のアナターゼ型酸化チタン、すなわちアナターゼ型酸化チタンゾルは、上記のように、アモルファス型過酸化チタンゾルを100℃以上の温度で加熱することにより製造できるが、アナターゼ型酸化チタンゾルの性状は加熱温度と加熱時間とにより多少変化し、例えば100℃で6時間処理により生成するアナターゼ型の酸化チタンゾルは、pH7.5〜9.5、粒子径8〜20nmであり、その外観は黄色懸濁の液体である。
このアナターゼ型酸化チタンゾルは、常温で長期間保存しても安定であるが、酸や金属水溶液等と混合すると沈殿が生じることがあり、また、Naイオンが存在すると光触媒活性や耐酸性が損なわれる場合がある。また、ゾル濃度は通常2.70〜2.90重量%に調整されているが、必要に応じてその濃度を調整して使用することもできる。
【0014】
光触媒としては、上記のアナターゼ型酸化チタンゾルの他、粉末状の二酸化チタンとして、例えば市販の「ST−01」(石原産業株式会社製)や「ST−31」(石原産業株式会社製)をも使用しうる。この場合、バインダーとしては、光触媒作用により劣化を受けないもので、かつ、光触媒機能を低下させないものであればどのようなものでも使用できるが、常温での優れた接着性を有する上記アモルファス型過酸化チタンゾルを用いることが望ましい。
【0015】
光触媒体には、光触媒反応を促進補完するものとして、その製造過程で、光触媒機能補助添加金属(Pt,Ag,Rh,RuO,Nb,Cu,Sn,NiOなど)を添加しておくこともできる。また、成形前に、光触媒と共に、自発型紫外線放射剤又は蓄光型紫外線放射剤の粒子あるいはこれらの放射剤を混入した粒子を混合しておくこともできる。
【0016】
本発明の親水性コーティング剤には、アモルファス型酸化チタンとケイ素酸化物とともに、紫外線遮断機能や静電気放電防止機能を有する誘電体セラミックス材料や導電性セラミックス材料を、必要に応じて含有せしめることができる。
【0017】
本発明の親水性組成物が担持される基体としては、セラミックス、ガラスなどの無機材質、有機高分子樹脂、ゴム、木、紙などの有機材質、並びにアルミニウム、鋼などの金属材質のものを用いることができるが、コーティング剤に光触媒が含まれたものを使用する場合、有機高分子材からなる基体は望ましくない。また、その大きさや形には制限されず板状、針状、ハニカム状、ファイバー状、濾過シート状、ビーズ状、発砲状やそれらが集積したものでもよい。
【0018】
本発明のコーティング剤のコーティング方法としては、スプレーコート、ディッピング、スピンコートなどの工法で薄膜を作る方法が挙げられる。また、コーティング薄膜(層)の厚みとしては、親水性付与という目的が達成しうる厚みやバインダー等の造膜性能により決定されるが、例えばバインダー機能をも兼ね備えているアモルファス型過酸化チタンゾルと、コロイダルシリカとの混合物からなるコーティング剤を用いる場合、通常0.5μm〜5.0μmの厚みにコーティングされる。
【0019】
本発明の親水性コーティング剤は、ショウケースガラス、浴室鏡、眼鏡レンズ、自動車のウインドウガラスやボディーの曇り防止、注射針の体内注入時の刺激痛軽減、窓ガラス、天窓の結露防止、浴室とユニットバスとの間や外壁と窓枠との間やタイルとタイルとの間等のシリコン系シーリング材や油性コーキング材等建材の汚れ防止などに用いることができる。また、光触媒を含むコーティング剤の場合は、ガラスやタイル等の無機材からなる基体表面に付着した塵、油、垢等の汚染有機物が光触媒作用によって分解されるので、外装建築材等に用いることができる。
【0020】
【実施例】
以下に、実施例を掲げてこの発明をさらに具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
参考例1(アモルファス型過酸化チタンゾルの製造)
四塩化チタンTiCl4の50%溶液(住友シティクス株式会社)を蒸留水で70倍に希釈したものと、水酸化アンモニウムNH4OHの25%溶液(高杉製薬株式会社)を蒸留水で10倍に希釈したものとを、容量比7:1に混合し、中和反応を行う。中和反応後pHを6.5〜6.8に調整し、しばらく放置後上澄液を捨てる。残ったTi(OH)4のゲル量の約4倍の蒸留水を加え十分に撹拌し放置する。塩化銀でチェックし上澄液中の塩素イオンが検出されなくなるまで水洗を繰り返し、最後に上澄液を捨ててゲルのみを残す。場合によっては遠心分離により脱水処理を行うことができる。この淡青味白色のTi(OH)43600mlに、35%過酸化水素水210mlを30分毎2回に分けて添加し、約5℃で一晩撹拌すると黄色透明のアモルファス型過酸化チタンゾル約2500mlが得られる。
なお、上記の工程において、発熱を抑えないとメタチタン酸等の水に不溶な物質が析出する可能性があるので、すべての工程は発熱を抑えて行うのが望ましい。
【0021】
参考例2(アモルファス型過酸化チタンゾルからの酸化チタンゾルの製造)
上記アモルファス型過酸化チタンゾルを100℃で加熱すると、3時間程度経過後にアナターゼ型酸化チタンが生じ、6時間程度加熱するとアナターゼ型酸化チタンゾルが得られる。また、100℃で8時間加熱すると、淡黄色やや懸濁蛍光を帯び、濃縮すると、黄色不透明のものが得られ、100℃で16時間加熱すると極淡黄色のものが得られるが、これらは上記100℃、6時間加熱のものに比べて乾燥密着度が多少低下する。
この酸化チタンゾルは、アモルファス型過酸化チタンに比べ粘性が低下しているのでディッピングしやすいように2.5重量%まで濃縮して使用する。
【0022】
実施例1
150×150mmのフロートガラスに、参考例により作製したアモルファス型過酸化チタンゾル(TiO3 として1.7重量%含有)を2倍希釈したものに、コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名スノーテックス、SiO2 を20.7%含有)をTiO3 に対するSiO2 の重量比が、それぞれ0%、0.5%、1%、2%、8%になるように混合したものを用いて、上記基体にコーティングした。コーティングには、明治機械社製の直径0.54mmの丸型吹き出しノズルを有するスプレーガンFS−G05R−1を2Kg/cm3 のエアー圧で用い、吹き付け量は0.2g/100cm2 とし、吹き付け後、80℃で乾燥させた。また、対照として、表面コーティングをしなかったものを用いた。
【0023】
次に、各ガラス基板に、水道水0.1mlをスポイトにて1cmの高さから滴下し、紫外線を照射せずに約10分間放置後、基板上の水滴の直径(φ:単位mm)を測定する実験を4回繰り返した。結果を表1に示す。表1からもわかるように、本発明にかかる表面親水性基体は優れた親水性を示した。
【0024】
【表1】
【0025】
実施例2
アモルファス型過酸化チタンゾルTiO3 に代えて、アモルファス型酸化チタン粉末(出光興産社製、商品名;出光チタニア)とバインダーとしての熱硬化水溶性樹脂との混合物からなるコーティング剤を用いる他は、実施例1と同様に行ったところ、ほぼ同様な結果が得られた。
【0026】
実施例3
コロイダルシリカに代えて、水性アクリルシリコン樹脂(ロックペイント社製、商品名;シリコマックス)を用いる他は、実施例1と同様に行ったところ、ほぼ同様な結果が得られた。
【0027】
実施例4
実施例1のコーティング剤に、光触媒として更に参考例2で得られたアナターゼ型酸化チタンゾルを、TiO3 に対するTiO2 の重量比が約1:3になるように添加したものを用いる他は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。表2からもわかるように、本発明にかかる表面親水性基体は紫外線照射下でないにもかかわらず優れた親水性を示した。また、コーティング層は紫外線照射下で長期間経過後も何ら変化しないことがわかった。
【0018】
【表2】
【0021】
【発明の効果】
本発明の親水性コーティング剤組成物は、極めて優れた親水性を付与しうるばかりでなく、かつ成膜性に優れ、加えて静電防止作用を有し汚れを静電付着させることがなく、かつ有機高分子樹脂基板を劣化させることがないばかりか、紫外線を吸収し紫外線照射がないところでも親水機能を充分発揮しうる。
Claims (2)
- アモルファス型チタン酸化物とケイ素酸化物とを含む親水性コーティング剤を基体表面にコーティングさせてなることを特徴とする表面親水性基体(ただし、熱処理を行ってアモルファス型チタン酸化物が結晶性チタン酸化物に変換されたものを除く)。
- 親水性コーティング剤がさらに光触媒を含有する請求項1記載の表面親水性基体。
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