JP4661102B2 - 燃料電池用電解質膜の製造方法および燃料電池 - Google Patents

燃料電池用電解質膜の製造方法および燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、燃料電池用であって、水素透過性金属層を有する電解質膜の製造方法およびその膜を用いた燃料電池に関する。
従来から、水素と空気との電気化学反応によって発電する燃料電池に関して、様々な構造が提案されている(下記特許文献1,特許文献2参照)。例えば、下記特許文献1には、ガス(水素)透過性を有するパラジウムの金属膜の燃料極、水素ガスのプロトン伝導性を有する固体電解質、酸化物導電性を有する空気極の3種類の層を、この順序で積層したガス分離膜式燃料電池が開示されている。こうした燃料電池では、燃料極としてセラミック材料ではなく水素透過性を有する金属膜を用いることで、3種類の層を積層して製造する際や、高温条件下で使用する際の材料の熱膨張率差に基づくクラックの発生や層間の剥離等を抑制するとされている。
特開平4−345762号公報 特開2004−146337号公報
しかしながら、かかる構成の燃料電池を用いても、運転中に金属膜を水素が透過することにより、固体電解質と金属膜との間で剥離が生じてしまうことがあった。これは、金属膜を水素が透過する際、金属膜が固体電解質に比して大きく膨張し、固体電解質との接合界面側に引張方向の応力が発生するためであった。
水素透過性を有する金属膜とプロトン伝導性を有する固体電解質とを積層して構成される電解質膜に、こうした剥離による欠損が生じることで、電解質膜を用いた燃料電池の性能を低下させることがあった。
本発明は、こうした問題を踏まえて、運転中の金属膜の膨張に起因して生じる固体電解質と金属膜との剥離を抑制する電解質膜の製造方法およびこうした電解質膜を備えた燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の電解質膜の製造方法は、上記課題に鑑み、以下の手法を採った。すなわち、燃料電池に用いられ、水素透過性金属を含有する水素透過性金属層上にプロトン伝導性を有する電解質層を積層する電解質膜の製造方法であって、前記水素透過性金属層における前記電解質層を積層する界面側に前記水素透過性金属層の面に沿った圧縮方向の残留応力を付加する工程を備え、前記工程は、前記水素透過性金属層に引張方向の応力による塑性変形を付加しながら、前記電解質層を成膜する工程であることを要旨としている。
本発明の電解質膜の製造方法によれば、水素透過性金属層の電解質層側に、圧縮方向の残留応力を備えた電解質膜を製造する。こうして製造された電解質膜を水素が透過する際に、水素透過性金属層の膨張により発生する引張方向の応力は、水素透過性金属層の界面側に付加した圧縮方向の残留応力によって低減する。つまり、圧縮方向の残留応力が水素透過性金属層の引張方向の応力を打ち消す方向に働くため、電解質膜の水素透過により水素透過性金属層と電解質層とに発生する応力を低減する。したがって、水素の透過による膨張に起因した水素透過性金属層と電解質層との剥離を抑制することができる。
かかる電解質膜の製造方法における圧縮残留応力を付加する工程としては、例えば、水素透過性金属層自体に引張方向の塑性変形を加えながら電解質層を成膜する工程や、水素透過性金属層の表面にローラ等による引張方向の塑性変形を与える等のいわゆる機械的な表面処理を施して電解質層を成膜する工程などであっても良い。水素透過性金属層自体に引張方向の塑性変形を加えながら電解質層を成膜する場合には、塑性変形が電解質層の成膜による拘束を受け、その内部に残留応力を付加することができる。こうした工程を経ることで、水素透過性金属層と電解質層との剥離を抑制することができる。
上記の製造方法における水素透過性金属層は複数の水素透過性金属が積層された複合水素透過性金属層からなり、前記工程は、前記複合水素透過性金属層における一の水素透過性金属上に圧縮方向の残留応力を付加した水素透過性金属を積層する第1工程と、前記第1工程の後、前記一の水素透過性金属と前記圧縮方向の残留応力を付加した水素透過性金属とを、所定の方法で接合する第2工程と、前記第2工程の後、前記圧縮方向の残留応力を付加した水素透過性金属層上に、前記電解質層を成膜する第3工程とを備えるものとしても良い。
かかる電解質膜の製造方法によれば、電解質層を成膜する基材となる水素透過性金属層に、複数の水素透過性金属を積層してなる複合水素透過性金属層を用いる。この複合水素透過性金属層の電解質層との界面側には、圧縮方向の残留応力を付加した水素透過性金属を積層する。つまり、複合水素透過性金属層は、許容できる限り水素透過性金属が何層あっても良いが、電解質層との界面側には圧縮方向の残留応力を予め付加した水素透過性金属を使用する。したがって、複合水素透過性金属層と電解質層との剥離を抑制することができる。
上記の製造方法において、前記第1工程は、前記複合水素透過性金属層の表裏面に圧縮方向の残留応力を付加した水素透過性金属を積層する工程であり、前記第3工程は、前記表裏面に積層された前記水素透過性金属の一方に前記電解質膜を成膜する工程であるものとしても良い。
かかる電解質膜の製造方法によれば、複合水素透過性金属層は、残留応力を付加していない水素透過性金属を、残留応力を付加した水素透過性金属で両側から挟みこんで形成する。したがって、複合水素透過性金属層と電解質層との剥離を抑制すると共に、複合水素透過性金属層に不要な曲げ方向の応力が働くことを抑えることができる。
上記の製造方法において、前記第2工程は、金属の表面を活性し、所定の加圧下で接合する表面活性化接合法を用いて接合する工程であるものとしても良い。
かかる電解質膜の製造方法によれば、表面活性化接合法を用いて複合水素透過性金属層を生成し、その上に電解質層を成膜する。こうした製造方法を用いることで、複数の水素透過性金属同士を接合して多層とすることができ、一の水素透過性金属層の内部に圧縮方向の残留応力を付加したものと同等である複合水素透過性金属層を生成することができる。
本発明の燃料電池は、水素透過性金属を含有する水素透過性金属層と、プロトン伝導性を有する電解質層とからなる電解質膜を有する燃料電池であって、前記水素透過性金属層に引張方向の応力による塑性変形を付加しながら前記電解質層を成膜することによって、前記水素透過性金属層における前記電解質層を積層する界面側に前記水素透過性金属層の面に沿った圧縮方向の残留応力を付加した圧縮残留応力層を備えるものとすることができる。

かかる燃焼電池によれば、上記の製造方法や、その他、水素透過性金属表面に残留応力を付加する種々の製造方法を利用して、水素透過性金属層に圧縮残留応力層を形成する。したがって、圧縮残留応力層を水素が透過する際の水素透過性金属層の膨張を抑制し、電解質層との剥離を抑制することができる。その結果、燃焼電池としての性能低下を抑制することができる。
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて次の順序で説明する。
A.燃料電池の構造:
B.第1の電解質膜の製造方法:
C.第2の電解質膜の製造方法:
D.変形例:
A.燃料電池の構造:
図1は、本発明の一実施例としての燃料電池を構成する単セルの概略構成を示す断面模式図である。本実施例の燃料電池は、燃料ガス中から分離した水素と、空気等の酸化ガス中の酸素との電気化学反応により発電する燃料電池である。この燃料電池は、図1に示す単セル10を複数積層し、これを両端からエンドプレート80にて挟持することで形成されている。複数の単セル10を直列に接続したスタック構造とすることで、システムに必要な電力を取り出すことができる。
スタック構造の燃料電池は、燃料ガスや空気などを供給する通路(図示なし)を備えており、例えば、高圧タンクに貯留された燃料ガスやコンプレッサを介した空気が通路に供給される。こうしたガスは、エンドプレート80、通路を介して、各単セル10内に十分に供給される。なお、燃料電池には、燃料ガスと酸化ガスとが直交して流れる直交流型と平行流型(対向流型を含む)とがあるが、本実施例では、説明を簡単にするため、平行流型として図示している。
図1に示すように、この単セル10は、主に、燃料ガスや酸化ガスの単セル10内の流路となるガスセパレータ60,70、電解質膜と電極とを一体で備えたMEA100(Membrane-Electrode Assembly)等からなり、ガスセパレータ60,70でMEA100を両側から挟みこんで形成されている。なお、図示は省略するが、スタック構造の内部温度を調整するために、各単セル間に、または所定数の単セルを積層する毎に、燃料電池を冷却する冷媒の通過する冷媒流路を設けるものとしても良い。
ガスセパレータ60,70は、カーボンや金属などの導電性材料で形成され、燃料ガス,酸化ガスを透過させない緻密質体で構成されている。ガスセパレータ60の表面には燃料ガスを単セル10内部に導く燃料ガス流路65を形成する凹凸形状が、ガスセパレータ70の表面には酸化ガスを単セル10内部に導く酸化ガス流路75を形成する凹凸形状が、それぞれ形成されている。
こうしたガスセパレータ60,70の流路の内、燃料ガス流路65には燃料ガスとしての炭化水素系燃料を改質して得られる水素リッチガスが、酸化ガス流路75には酸化ガスとしての空気が、それぞれ供給されている。ガスセパレータ60,70は、供給された水素リッチガス中の水素と空気中の酸素との電気化学反応にて発生する電気を集電する機能を有している。
MEA100は、主に、水素を選択的に透過する水素透過性金属層20とプロトン伝導性を有する電解質層30とを有する電解質膜50と、カソード電極40と、から構成され、水素透過性金属層20,電解質層30,カソード電極40の順序で積層されている。
カソード電極40は、電解質膜50の電解質層30上に成膜された金属やセラミックス系の材料などからなる層であり、例えば、電気化学反応を促進する触媒活性を有する貴金属であるパラジウム(Pd)などにより形成することができる。さらに、電気化学反応を促進するため、パラジウムに替えて、または、パラジウムと共に、白金(Pt)等の触媒層を設けるものとすることもできる。なお、本実施例では、カソード電極40としてセラミックス電極材(LaSrO,BaPrCo)を使用している。
水素透過性金属層20は、水素透過性を有する金属からなる層であり、例えば、パラジウム(Pd),Pd合金等により形成することができる。あるいは、バナジウム(V),ニオブ(Nb),タンタル(Ta)等や、これらの合金の上に、パラジウム(Pd),Pd合金層を形成した多層構造により形成することができる。こうした水素透過性金属層20は、高純度の水素を生成する水素分離膜としての機能に加え、アノード電極としての機能を有している。
電解質層30は、プロトン伝導性を有する固体電解質からなる層であり、例えば、セラミック系の固体酸化物であるBaCeO、SrCeO系のペロブスカイト、パイロクロア等を用いることができる。こうした電解質層30を、緻密な水素透過性金属層20上に薄膜として成膜することで電解質膜50は形成される。
本実施例の電解質膜50を構成する水素透過性金属層20には、所定の処理を施すことで圧縮方向の残留応力(圧縮残留応力)を付加している。図1に示した水素透過性金属層20上の矢印Pは、圧縮残留応力を示している。この圧縮残留応力Pは、水素透過性金属層20の表面から所定の深さに及び、水素透過性金属層20内部に圧縮残留応力の層21を形成している。
一般に、残留応力は、外力や熱による局部的な体積変化、寸法変化を(つまり、不均質な塑性変形を)与え、金属等の弾性体の内部の不調和の応力場に起因して発生する。つまり、外力や熱などをコントロールすることで圧縮方向の応力場を生成することができる。本実施例の電解質膜50は、こうした圧縮残留応力Pを内部に付加した水素透過性金属層20上に電解質層30を積層して形成されている。
以上の構成の燃料電池を運転する場合、外部から供給された水素リッチガス中の水素(プロトン)は、電解質膜50を透過し、カソード電極40にて酸素と反応する。この反応過程において、水素透過性金属層20は、水素の透過に伴って膨張する。
図2は、水素の透過に伴う電解質膜の膨張の様子を示す説明図である。図示するように、水素透過性金属層αは、400℃から500℃に至る高温運転条件の下、水素の透過に伴って、水素の移動方向に直交する方向に膨張する(伸びる)ことが一般的に知られている。
水素透過性金属層αと電解質層βとでは、水素の透過による膨張率が異なり、水素透過性金属層αは電解質層βに比べて大きく膨張する。そのため、電解質層βは、水素透過性金属層αにより伸ばされた状態(接合界面に引張応力Tを受けた状態)となる。例えば、この引張応力Tが、接合界面の強度を超えると、水素透過性金属層αと電解質層βとの間には剥離が生じることとなる。
本実施例の水素透過性金属層20は、その内部に圧縮残留応力Pを有しているため、水素透過性金属層20の膨張を抑制し、膨張に起因して接合界面に生じる引張応力Tを低減することができる。したがって、水素透過性金属層αと電解質層βとの接合界面での剥離を抑制することができる。
換言すると、圧縮残留応力Pを付加しておくことで、水素の透過時に発生する水素透過性金属層20の膨張の割合を低減し、水素透過性金属層20と電解質層30との膨張率の差を低減し、剥離を抑制する。その結果、燃料電池の性能低下を抑制することができる。以下に、圧縮残留応力を付加した電解質膜50の製造方法について、説明する。
B.第1の電解質膜の製造方法:
図3は、第1実施例として、圧縮残留応力を付加した電解質膜50の製造工程を示す工程図である。電解質膜50の製造にあたって、まず、電解質膜50の基礎となる水素透過性金属基材を準備する(ステップS300)。第1実施例では、水素透過性金属層20を形成する基材S1として、100(μm)の厚みのパラジウム(Pd)を使用している。
続いて、基材S1の端部を引っ張り、基材S1自体に張力(テンション)を付加する(ステップS310)。このテンションは、基材S1に塑性変形を発生させる負荷であり、後の工程で圧縮残留応力を発生させる。
テンションを付加した状態の基材S1上に、電解質層30を成膜する(ステップS320)。第1実施例では、電解質層30としてSrCeO系のペロブスカイト(以下、単にペロブスカイト)を、1(μm)の厚みに成膜している。
この成膜には、液相成長法の一種である公知のゾル・ゲル法を用いている。ゾル・ゲル法は、ゾル状の成膜材料を基材表面にコートして、乾燥、焼成し、ゲル状態を経て、薄膜を得る方法である。第1実施例では、この方法を用いてペロブスカイトを成膜しているが、一般的なスパッタ法や、物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)など種々の成膜方法を用いるものとしても良い。
ペロブスカイトを成膜して形成した電解質膜50は、テンションが付加されたままの状態である。このテンションを除去して(ステップS330)、一連の製造工程を終了する。
こうして製造された電解質膜50の基材S1は、テンションの付加による変形の過程で、ペロブスカイトの成膜により一様な塑性変形が拘束される。一般に、自由で一様な塑性変形でもそれが拘束される場合には、残留応力が発生する。第1実施例の基材S1は、テンションを付加した状態でペロブスカイトを成膜することで、その内部(表面)に圧縮残留応力を保持したものとなる。こうした製造工程を経ることで、水素透過性金属層20である基材S1を水素が透過する際の、基材S1の膨張を抑え、基材S1とペロブスカイトとの界面の剥離を抑制する電解質膜50を製造することができる。
さらに、ペロブスカイトは、そのベースとなる基材S1にテンションを付加した状態で成膜され、その後、テンションを除去する。このテンションは、主に塑性変形に用いられるが、わずかに基材S1の弾性変形にも用いられる。つまり、電解質膜50(基材S1)にかかるテンションの除去により、弾性変形限度内で電解質膜50(基材S1)が縮み(戻り)、ペロブスカイト自体に圧縮応力を付加することができる。この製造方法は、基材S1に圧縮残留応力を与えると共に、ペロブスカイトにも圧縮方向の応力(これも、圧縮残留応力と呼ぶ)を与えることができる。
こうして予め圧縮残留応力を与えたペロブスカイト(電解質層30)に、燃料電池の運転により所定の引張応力が生じた場合には、その引張応力を内部の圧縮残留応力により緩和することができる。つまり、引張方向の許容応力を向上することができる。
他方、電解質層30に、所定の圧縮応力が生じた場合には、内部の圧縮残留応力が加算されるため、圧縮方向の応力が増大することとなる。一般に、ペロブスカイトに代表される電解質層30に用いる材料は、引張方向よりも圧縮方向に対して高い許容応力を有する。したがって、圧縮方向の応力が増大しても、概ね許容することができる。その結果、引張方向と圧縮方向との強度バランスを加味した電解質層30、それを備えた電解質膜50を形成することができ、電解質膜50全体の強度を向上することができる。
なお、こうした製造工程を実行する成膜装置には、種々の態様が考えられるが、その一例を図4に示した。図4は、第1実施例の製造方法により電解質膜50を製造する成膜装置の概略構成図である。この成膜装置では、コイル状に準備された水素透過性金属の基材S1から連続的に電解質膜50を成膜することができる。
図示するように、この成膜装置400は、主に、ペロブスカイトを成膜する成膜部410,成膜部410に水素透過性金属の基材S1を搬入するローラ420,基材S1にテンションを付加するテンションローラ430,基材Sおよび電解質膜50を挟持する挟持ローラ425,435,基材S1をコイル状に保持する保持ロール部440,生成された電解質膜50を巻き取る巻取ロール部450などから構成されている。
この成膜装置400では、テンションローラ430と挟持ローラ435とにより電解質膜50を挟持し、ローラ420と挟持ローラ425とにより基材S1を挟持し、テンションローラ430のローラ回転速度を調整することで、成膜部410内の基材S1にテンションを付加することができる。
ローラ420,テンションローラ430,挟持ローラ425,435によって、テンションを付加した状態で成膜部410に搬入された基材S1は、その上面にペロブスカイトを積層し、電解質膜50として巻取ロール部440に巻き取られる。こうした装置を用いて製造された電解質膜50は、その基材S1に圧縮残留応力を付加したものとなる。かかる電解質膜50を燃焼電池に使用することで、水素透過性金属層20と電解質層30との剥離による燃焼電池の性能低下を抑制することができる。
C.第2の電解質膜の製造方法:
図5は、第2実施例として、圧縮残留応力を付加した電解質膜の製造工程を示す工程図である。電解質膜50の製造にあたって、まず、電解質膜50の基礎となる水素透過性金属の基材S2を製造する(ステップS500)。このステップでは、水素透過性金属層20を形成する基材S2として、バナジウム(V)を基礎とし、その両面をパラジウム(Pd)で挟み込んで形成した複合金属膜を生成する。
この複合金属膜の製造には、異種金属(バナジウム,パラジウム)の表面を活性化して接合する表面活性化接合法を用いている。
図6は、表面活性化接合法の一つとして異種金属を接合するグラッド法の説明図である。なお、第2実施例の基材S2は、Pd−V−Pdの3層からなる複合金属膜であるが、説明を簡単にするため、2種類の異種金属による接合を示した。
図示するように、このクラッド法では、金属材料Aと金属材料Bとを、所定の圧力Fで加圧して接合する。加圧には加圧用ローラ600を、接合した複合金属膜の移動には巻取用ローラ610を、それぞれ用い、連続して複合金属膜を生成している。
ここで使用する金属材料Aはバナジウム(V)、金属材料Bはパラジウム(Pd)であり、金属材料Bには予め圧縮残留応力を付加している。予め圧縮残留応力を付加する方法としては、ショットピーニングなどの機械的な表面処理や、表面焼入れなどの熱処理、または金属材料A、金属材料Bのロール速度(金属材料A、金属材料Bのテンションローラの負荷)を異ならせながら接合することにより残留応力を付加するなどの種々の方法を用いることができる。
金属材料Aと、圧縮残留応力を付加した金属材料Bとの接合面には、加圧用ローラ600を通過する前に所定の処理(前処理)が施される。この前処理は、真空中の雰囲気下でアルゴン(Ar)イオンなどを、金属材料A,Bの表面にぶつけ、表面上に存在する付着物、酸化被膜等を除去して、活性な表面を露出させる(表面の活性化)処理である。こうして活性化された接合表面を持つ金属材料A,Bを加圧用ローラ600に搬入し、異種金属同士を接合する。こうした前処理により、接合に要する圧力Fを比較的低い圧力とすることができる。
こうしたグラッド法を用いて生成した3層の金属複合膜としての基材S2上に、電解質層30を成膜し(ステップS510)、一連の製造工程を終了する。この電解質層30は、第1の製造方法と同様、ペロブスカイトを使用し、その成膜方法にはゾル・ゲル法を用いている。なお、成膜方法としては、上述のように物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)などの種々の方法を用いることができる。
第2実施例では、基材S2の表裏面に相当するパラジウム(Pd)に、予め圧縮残留応力を付加している。したがって、第1実施例と同様、電解質膜50への水素透過時の、基材S2と電解質層30との剥離を低減することができる。
また、第2実施例では、基材S2の表裏面に圧縮残留応力を保持しているため、接合界面側にのみ圧縮残留応力を保持している場合に比べ、水素透過時における電解質膜の曲げ変形を抑制することができる。もとより、電解質層30との接合界面側にのみ圧縮残留応力を付加したパラジウム(Pd)を用いるものとしても、剥離の抑制に効果を奏する。なお、複合金属膜を構成する異種金属(バナジウム,パラジウム)同士の膨張率の差は、剥離の問題を生じるほどの影響はない。
D.変形例:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
第1実施例では、基材S1にテンションを掛けながらペロブスカイトを成膜する過程で、基材S1に圧縮残留応力を付加するものとしたが、ペロブスカイトの成膜前の段階で基材S1に圧縮残留応力を付加するものとしても良い。
例えば、図4に示した電解質膜の成膜装置において、基材S1の搬送方向と逆方向に挟持ローラ425を強制的に回転させることで圧縮残留応力を付加する構成とするものとしても良い。この場合、基材S1の表面(ペロブスカイトを成膜する側)は、挟持ローラ425の回転方向に引っ張られ、局所的に塑性変形する。基材S1の表層内部では、引張りの変形を押し留める圧縮方向の反力が働き、これが圧縮残留応力となる。こうしてペロブスカイトの成膜前の基材S1表面に圧縮残留緒応力を付加し、そのまま弾性限度内のテンションを基材S1に掛けながら、ペロブスカイトを成膜するものとすれば良い。
また、ペロブスカイトの成膜前に予め基材S1に圧縮残留応力を付加する方法としては、どのような表面処理を施すものとしても良い。例えば、基材S1の表面に、ショットピーニングなどの機械的な表面処理や、表面焼入れなどの熱処理を施して圧縮残留応力を付加することができる。
本実施例では、水素透過性金属層に圧縮残留応力を付加して、水素の透過時における水素透過性金属層の膨張を抑制する構成としたが、例えば、水素透過性金属を含む電解質膜を支持する枠体を設ける燃料電池であれば、枠体自体に圧縮残留応力を付加して、燃料電池を構成するものとしても良い。こうすることで、水素透過性金属の膨張を更に抑制することができる。
本発明の一実施例としての燃料電池を構成する単セルの概略構成を示す断面模式図である。 水素の透過に伴う電解質膜の膨張の様子を示す説明図である。 第1実施例として、圧縮残留応力を付加した電解質膜の製造工程を示す工程図である。 第1実施例の製造方法により電解質膜を製造する成膜装置の概略構成図である。 第2実施例として、圧縮残留応力を付加した電解質膜の製造工程を示す工程図である。 表面活性化接合法の一つとして異種金属を接合するグラッド法の説明図である。
符号の説明
10...単セル
20...水素透過性金属層
21...圧縮残留応力の層
30...電解質層
40...カソード電極
50...電解質膜
60,70...ガスセパレータ
65...燃料ガス流路
75...酸化ガス流路
80...エンドプレート
100...MEA
400...成膜装置
410...成膜部
420...ローラ
425,435...挟持ローラ
430...テンションローラ
440...保持ロール部
450...巻取ロール部
600...加圧用ローラ
610...巻取用ローラ

Claims (5)

  1. 燃料電池に用いられ、水素透過性金属を含有する水素透過性金属層上にプロトン伝導性を有する電解質層を積層する電解質膜の製造方法であって、
    前記水素透過性金属層における前記電解質層を積層する界面側に前記水素透過性金属層の面に沿った圧縮方向の残留応力を付加する工程を備え
    前記工程は、前記水素透過性金属層に引張方向の応力による塑性変形を付加しながら、前記電解質層を成膜する工程である、電解質膜の製造方法。
  2. 請求項1に記載の電解質膜の製造方法であって、
    前記水素透過性金属層は複数の水素透過性金属が積層された複合水素透過性金属層からなり、
    前記工程は、
    前記複合水素透過性金属層における一の水素透過性金属上に圧縮方向の残留応力を付加した水素透過性金属を積層する第1工程と、
    前記第1工程の後、前記一の水素透過性金属と前記圧縮方向の残留応力を付加した水素透過性金属とを、所定の方法で接合する第2工程と、
    前記第2工程の後、前記圧縮方向の残留応力を付加した水素透過性金属層上に、前記電解質層を成膜する第3工程と
    を備える電解質膜の製造方法。
  3. 請求項に記載の電解質膜の製造方法であって、
    前記第1工程は、前記複合水素透過性金属層の表裏面に圧縮方向の残留応力を付加した水素透過性金属を積層する工程であり、
    前記第3工程は、前記表裏面に積層された前記水素透過性金属の一方に前記電解質膜を成膜する工程である
    電解質膜の製造方法。
  4. 請求項または請求項3に記載の電解質膜の製造方法であって、
    前記第2工程は、金属の表面を活性し、所定の加圧下で接合する表面活性化接合法を用いて接合する工程である電解質膜の製造方法。
  5. 水素透過性金属を含有する水素透過性金属層と、プロトン伝導性を有する電解質層とからなる電解質膜を有する燃料電池であって、
    前記水素透過性金属層に引張方向の応力による塑性変形を付加しながら前記電解質層を成膜することによって、前記水素透過性金属層における前記電解質層を積層する界面側に前記水素透過性金属層の面に沿った圧縮方向の残留応力を付加した圧縮残留応力層を備える燃料電池。
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