以下、本発明の露光装置及び露光方法について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る露光装置を示す概略構成図である。
図1において、露光装置EXは、マスクMを支持するマスクステージMSTと、基板Pを支持する基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像を基板ステージPSTに支持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、投影光学系PLの像面側に液体LQ1を供給する第1液体供給機構10と、投影光学系PLの像面側の液体LQ1を回収する第1液体回収機構20とを備えている。第1液体供給機構10は、投影光学系PLを構成する複数の光学素子2(2A〜2G)のうち、投影光学系PLの像面に最も近い最終光学素子2Gの下面2Sと基板Pとの間に形成された第1空間K1に液体LQ1を供給する。第1液体回収機構20は、第1空間K1に供給された液体LQ1を回収する。
また、露光装置EXは、最終光学素子2Gの上面2Tとその上方に設けられた光学素子2Fとの間に形成された第2空間K2に液体LQ2を供給する第2液体供給機構30と、第2空間K2に供給された液体LQ2を回収する第2液体回収機構60とを備えている。第1空間K1と第2空間K2とは独立した空間であり、第2液体供給機構30は、第1液体供給機構10とは独立して第2空間K2へ液体を供給可能である。また、第2液体回収機構60は、第1液体回収機構20とは独立して第2空間K2内の液体を回収可能である。
露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板P上に転写している間(基板P上に露光光ELを照射している間)、第2液体供給機構30から供給した液体LQ2により第2空間K2を満たした状態で、第1液体供給機構10から供給した液体LQ1により投影光学系PLの投影領域AR1を含む基板P上の一部に、投影領域AR1よりも大きく且つ基板Pよりも小さい液浸領域AR2を局所的に形成する。具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの像面に最も近い最終光学素子2Gとその像面側に配置された基板P表面との間の第1空間K1に液体LQ1を満たし、基板P表面の一部を液浸領域AR2で覆う局所液浸方式を採用し、投影光学系PL、最終光学素子2Gの上面2T側の第2空間K2の液体LQ2、及び最終光学素子2Gの下面2S側の第1空間K1の液体LQ1を介して、マスクMを通過した露光光ELを基板Pに照射することによってマスクMのパターンを基板Pに投影露光する。
また、投影光学系PLの像面近傍には、第1、第2液体供給機構10、20、及び第1、第2液体回収機構30、60の一部を構成するノズル部材(流路形成部材)70が配置されている。ノズル部材70は、基板P(基板ステージPST)の上方において鏡筒PKの下部の周りを囲むように設けられた環状部材である。
本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、Z軸方向及びX軸方向に垂直な方向(非走査方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
照明光学系ILは、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明するものであり、露光用光源、露光用光源から射出された露光光ELの照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、露光光ELによるマスクM上の照明領域をスリット状に設定する可変視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。
本実施形態において、第1空間K1に満たされる液体LQ1、及び第2空間K2に満たされる液体LQ2には同じ純水が用いられる。純水はArFエキシマレーザ光のみならず、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。
マスクステージMSTは、マスクMを保持して移動可能であって、例えばマスクMを真空吸着(又は静電吸着)により固定している。マスクステージMSTは、リニアモータ等を含むマスクステージ駆動装置MSTDにより、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微少回転可能である。そして、マスクステージMSTは、X軸方向に指定された走査速度で移動可能となっており、マスクMの全面が少なくとも投影光学系PLの光軸AXを横切ることができるだけのX軸方向の移動ストロークを有している。
マスクステージMST上には移動鏡41が設けられている。また、移動鏡41に対向する位置にはレーザ干渉計42が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及びθZ方向の回転角(場合によってはθX、θY方向の回転角も含む)はレーザ干渉計42によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、レーザ干渉計42の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置を制御する。
投影光学系PLは、マスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、基板P側の先端部に設けられた最終光学素子2G及び最終光学素子2Gに次いで像面に近い光学素子2Fを含む複数の光学素子2(2A〜2G)で構成されている。複数の光学素子2A〜2Gは、光軸AXに対してほぼ静止した状態で鏡筒PKに支持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4、1/5、あるいは1/8の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、投影光学系PLは、屈折素子と反射素子とを含む反射屈折系、反射素子を含まない屈折系、屈折素子を含まない反射系のいずれであってもよい。
基板ステージPSTは、基板Pを基板ホルダPHを介して保持して移動可能であって、XY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。更に基板ステージPSTは、Z軸方向、θX方向、及びθY方向にも移動可能である。基板Pは基板ホルダPHに例えば真空吸着等により保持されている。基板ステージPSTは、制御装置CONTによって制御されるリニアモータ等の基板ステージ駆動装置PSTDにより駆動される。
基板ステージPST上には移動鏡43が設けられている。また、移動鏡43に対向する位置にはレーザ干渉計44が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計44によりリアルタイムで計測される。また、不図示ではあるが、露光装置EXは、例えば特開平8−37149号公報に開示されているような、基板ステージPSTに支持されている基板Pの表面の位置情報を検出するフォーカス・レベリング検出系を備えている。フォーカス・レベリング検出系は、第1空間K1の液体LQ1を介して、又は介さずに、基板P表面のZ軸方向の位置情報、及び基板PのθX及びθY方向の傾斜情報を検出する。液体LQ1を介さずに基板P表面の面情報を検出するフォーカス・レベリング検出系の場合、投影光学系PLから離れた位置で基板P表面の面情報を検出するものであってもよい。投影光学系PLから離れた位置で基板P表面の面情報を検出する露光装置は、例えば米国特許第6,674,510号に開示されている。
レーザ干渉計44の計測結果は制御装置CONTに出力される。フォーカス・レベリング検出系の受光結果も制御装置CONTに出力される。制御装置CONTは、フォーカス・レベリング検出系の検出結果に基づいて、基板ステージ駆動装置PSTDを駆動し、基板Pのフォーカス位置及び傾斜角を制御して基板Pの表面を投影光学系PLの像面に合わせ込むとともに、レーザ干渉計44の計測結果に基づいて、基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。
基板ステージPST上には凹部50が設けられており、基板Pを保持するための基板ホルダPHは凹部50に配置されている。そして、基板ステージPSTのうち凹部50以外の上面51は、基板ホルダPHに保持された基板Pの表面とほぼ同じ高さ(面一)になるような平坦面(平坦部)となっている。また本実施形態においては、移動鏡43の上面も、基板ステージPSTの上面51とほぼ面一に設けられている。基板Pの周囲に基板P表面とほぼ面一の上面51を設けたので、基板Pのエッジ領域を液浸露光するときにおいても、基板Pのエッジ部の外側には段差部がほぼ無いので、投影光学系PLの像面側に液体LQを保持して液浸領域AR2を良好に形成することができる。なお、第1空間K1に液体LQ1を保持可能であれば、基板P表面と基板ステージPSTの上面51との間に段差があってもよい。また、基板Pのエッジ部とその基板Pの周囲に設けられた平坦面(上面)51との間には0.1〜2mm程度の隙間があるが、液体LQの表面張力によりその隙間に液体LQが流れ込むことはほとんどなく、基板Pの周縁近傍を露光する場合にも、上面51により投影光学系PLの下に液体LQを保持することができる。
また、上面51を撥液性にすることにより、液浸露光中における基板P外側(上面51外側)への液体LQの流出を抑え、また液浸露光後においても液体LQを円滑に回収できて上面51に液体LQが残留する不都合を防止できる。基板ステージPSTの上面51を、例えばポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))などの撥液性を有する材料によって形成することで、上面51を撥液性にすることができる。あるいは、上面51に対して、例えば、ポリ四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂材料、アクリル系樹脂材料、シリコン系樹脂材料等の撥液性材料を塗布、あるいは前記撥液性材料からなる薄膜を貼付する等の撥液化処理を行ってもよい。また、撥液性材料の領域(撥液化処理領域)としては、上面51全域であってもよいし、撥液性を必要とする一部の領域のみであってもよい。
露光装置EXは、投影光学系PLを支持する鏡筒定盤5と、鏡筒定盤5及びマスクステージMSTを支持するメインコラム1とを備えている。メインコラム1は、床面上に設けられたベース9上に設置されている。基板ステージPSTはベース9上に支持されている。メインコラム1には、内側に向けて突出する上側段部7及び下側段部8が形成されている。
照明光学系ILは、メインコラム1の上部に固定された支持フレーム3により支持されている。メインコラム1の上側段部7には、防振装置46を介してマスク定盤4が支持されている。マスクステージMST及びマスク定盤4の中央部にはマスクMのパターン像を通過させる開口部MK1、MK2がそれぞれ形成されている。マスクステージMSTの下面には非接触軸受である気体軸受(エアベアリング)45が複数設けられている。マスクステージMSTはエアベアリング45によりマスク定盤4の上面(ガイド面)に対して非接触支持されており、マスクステージ駆動装置MSTDによりXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。
投影光学系PLを保持する鏡筒PKの外周にはフランジPFが設けられており、投影光学系PLはこのフランジPFを介して鏡筒定盤5に支持されている。鏡筒定盤5とメインコラム1の下側段部8との間にはエアマウントなどを含む防振装置47が配置されており、投影光学系PLを支持する鏡筒定盤5はメインコラム1の下側段部8に防振装置47を介して支持されている。この防振装置47によって、メインコラム1の振動が、投影光学系PLを支持する鏡筒定盤5に伝わらないように、鏡筒定盤5とメインコラム1とが振動的に分離されている。
基板ステージPSTの下面には複数の非接触軸受である気体軸受(エアベアリング)48が設けられている。また、ベース9上には、エアマウント等を含む防振装置49を介して基板定盤6が支持されている。基板ステージPSTはエアベアリング48により基板定盤6の上面(ガイド面)に対して非接触支持されており、基板ステージ駆動装置PSTDにより、XY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能である。この防振装置49によって、ベース9(床面)やメインコラム1の振動が、基板ステージPSTを非接触支持する基板定盤6に伝わらないように、基板定盤6とメインコラム1及びベース9(床面)とが振動的に分離されている。
ノズル部材70は、メインコラム1の下側段部8に連結部材52を介して支持されている。連結部材52はメインコラム1の下側段部8に固定されており、その連結部材52にノズル部材70が固定されている。メインコラム1の下側段部8は、防振装置47及び鏡筒定盤5を介して投影光学系PLを支持しており、ノズル部材70は、投影光学系PLを支持する下側段部8に支持されている構成となっている。
そして、ノズル部材70を連結部材52を介して支持しているメインコラム1と、投影光学系PLの鏡筒PKをフランジPFを介して支持している鏡筒定盤5とは、防振装置47を介して振動的に分離されている。したがって、ノズル部材70で発生した振動が投影光学系PLに伝達されることは防止されている。また、ノズル部材70を連結部材52を介して支持しているメインコラム1と、基板ステージPSTを支持している基板定盤6とは、防振装置49を介して振動的に分離している。したがって、ノズル部材70で発生した振動が、メインコラム1及びベース9を介して基板ステージPSTに伝達されることが防止されている。また、ノズル部材70を連結部材52を介して支持しているメインコラム1と、マスクステージMSTを支持しているマスク定盤4とは、防振装置46を介して振動的に分離されている。したがって、ノズル部材70で発生した振動がメインコラム1を介してマスクステージMSTに伝達されることが防止されている。
第1液体供給機構10は、液体LQ1を投影光学系PLの最終光学素子2Gの下面2S側(光射出側)に形成された第1空間K1に供給するためのものであって、液体LQ1を送出可能な第1液体供給部11と、第1液体供給部11にその一端部を接続する供給管13とを備えている。第1液体供給部11は、液体LQ1を収容するタンク、供給する液体LQ1の温度を調整する温調装置、液体LQ1中の異物を除去するフィルタ装置、及び加圧ポンプ等を備えている。基板P上に液浸領域AR2を形成する際、液体供給機構10は液体LQ1を基板P上に供給する。
第1液体回収機構20は、最終光学素子2Gの下面2S側に形成された第1空間K1に供給された液体LQ1を回収するためのものであって、液体LQ1を回収可能な第1液体回収部21と、第1液体回収部21にその一端部を接続する回収管23とを備えている。第1液体回収部21は例えば真空ポンプ等の真空系(吸引装置)、回収された液体LQ1と気体とを分離する気液分離器、及び回収した液体LQ1を収容するタンク等を備えている。なお、真空系、気液分離器、タンクなどの少なくとも一部を露光装置EXに設けずに、露光装置EXが配置される工場などの設備を用いてもよい。基板P上に液浸領域AR2を形成するために、第1液体回収機構20は第1液体供給機構10より供給された基板P上の液体LQ1を所定量回収する。
第2液体供給機構30は、液体LQ2を投影光学系PLの最終光学素子2Gの上面2T側に形成された第2空間K2に供給するためのものであって、液体LQ2を送出可能な第2液体供給部31と、第2液体供給部31にその一端部を接続する供給管33とを備えている。第2液体供給部31は、液体LQ2を収容するタンク、供給する液体LQ2の温度を調整する温調装置、液体LQ2中の異物を除去するフィルタ装置、及び加圧ポンプ等を備えている。なお、第1液体供給部11及び第2液体供給部31のタンク、加圧ポンプの少なくとも一部は、必ずしも露光装置EXが備えている必要はなく、露光装置EXが設置される工場などの設備を代用することもできる。
第2液体回収機構60は、最終光学素子2Gの上面2S側に形成された第2空間K2に供給された液体LQ2を回収するためのものであって、液体LQ2を回収可能な第2液体回収部61と、第2液体回収部61にその一端部を接続する回収管63とを備えている。第2液体回収部61は例えば真空ポンプ等の真空系(吸引装置)、回収された液体LQ2と気体とを分離する気液分離器、及び回収した液体LQ2を収容するタンク等を備えている。なお、真空系、気液分離器、タンクなどの少なくとも一部を露光装置EXに設けずに、露光装置EXが配置される工場などの設備を用いるようにしてもよい。
図2は投影光学系PLの像面側及びノズル部材70近傍を示す断面図、図3はノズル部材70を下から見た図である。
図2及び図3において、最終光学素子2G及びその上方に配置された光学素子2Fは、鏡筒PKに支持されている。最終光学素子2Gは平行平面板であって、鏡筒PKの下面PKAとその鏡筒PKに保持された最終光学素子2Gの下面2Sとはほぼ面一となっている。鏡筒PKに支持された最終光学素子2Gの上面2T及び下面2SはXY平面とほぼ平行となっている。また、最終光学素子(平行平面板)2Gはほぼ水平に支持されており、無屈折力である。また、鏡筒PKと最終光学素子2Gとの接続部などはシールされている。すなわち、最終光学素子2Gの下面2S側の第1空間K1と上面2T側の第2空間K2とは互いに独立した空間であり、第1空間K1と第2空間K2との間での液体の流通が阻止されている。上述したように、第1空間K1は、最終光学素子2Gと基板Pとの間の空間であって、その第1空間K1に液体LQ1の液浸領域AR2が形成される。一方、第2空間K2は、鏡筒PKの内部空間の一部であって、最終光学素子2Gの上面2Tとその上方に配置された光学素子2Fの下面2Uとの間の空間である。
なお、最終光学素子2Gの上面2Tの面積は、その上面2Tと対向する光学素子2Fの下面2Uの面積とほぼ同一、もしくは下面2Uの面積よりも小さく、第2空間K2を液体LQで満たした場合、最終光学素子2Gの上面2Tのほぼ全面が液体LQで覆われる。
また、最終光学素子2Gは、鏡筒PKに対して容易に取り付け・外しが可能となっている。すなわち、最終光学素子2Gは交換可能に設けられている。特に、最終光学素子2Gの取り付け及び取り外しに際して、鏡筒PK内の他の光学素子を離脱することなく、また、他の光学素子または投影光学系の光学特性に影響を与えることないように最終光学素子2Gが鏡筒PKに取り付けることができる。例えば、鏡筒PKを、光学素子2Fを保持する第1保持部材と、最終光学素子2Gを保持する第2保持部材とに分離し、第2保持部材を第1保持部材にネジなどを用いて固定する構造とすることによって、第2保持部材を取り外して、最終光学素子2Gを容易に交換することができる。
ノズル部材70は、投影光学系PLの下端部の近傍に配置されており、基板P(基板ステージPST)の上方において鏡筒PKの周りを囲むように設けられた環状部材である。ノズル部材70は、第1液体供給機構10及び第1液体回収機構20それぞれの一部を構成するものである。ノズル部材70は、その中央部に投影光学系PL(鏡筒PK)を配置可能な穴部70Hを有している。本実施形態において、投影光学系PLの投影領域AR1はY軸方向(非走査方向)を長手方向とする矩形状に設定されている。
基板Pに対向するノズル部材70の下面70Aには、Y軸方向を長手方向とする凹部78が形成されている。投影光学系PL(鏡筒PK)を配置可能な穴部70Hは凹部78の内側に形成されている。凹部78の内側には、XY平面と略平行であり、基板ステージPSTに支持された基板Pと対向する面78A(以下、キャビティ面78Aと称する)が設けられている。また、凹部78は、内側面79を有している。内側面79は、基板ステージPSTに支持された基板P表面に対してほぼ直交するように設けられている。ここで、基板ステージPSTは、基板P表面とXY平面とが略平行となるように基板Pを支持している。最終光学素子2Gと基板Pとの距離は、ノズル部材70の下面70Aと基板Pとの距離よりも長くなっている。
ノズル部材70の下面70Aのうち、凹部78の内側面79には、第1液体供給機構10の一部を構成する第1供給口12(12A、12B)が設けられている。本実施形態においては、第1供給口12(12A、12B)は2つ設けられており、投影光学系PLの光学素子2(投影領域AR1)を挟んでX軸方向両側のそれぞれに設けられている。第1供給口12A、12Bのそれぞれは、第1液体供給部11から送出された液体LQ1を、投影光学系PLの像面側に配置された基板P表面と略平行、すなわちXY平面と略平行に(横方向に)吹き出す。
なお、本実施形態における第1供給口12A、12Bは略円形状に形成されているが、楕円形状、矩形状、スリット状など任意の形状に形成されていてもよい。また、本実施形態においては、第1供給口12A、12Bは互いにほぼ同じ大きさを有しているが、互いに異なる大きさであってもよい。また、第1供給口は1箇所であってもよい。また、第1供給口12A,12Bを、投影光学系PLの光学素子2(投影領域AR1)に対してY軸方向両側にそれぞれ設けても良い。
ノズル部材70の下面70Aにおいて、投影光学系PLの投影領域AR1を基準として凹部78の外側には第1液体回収機構20の一部を構成する第1回収口22が設けられている。第1回収口22は、基板Pに対向するノズル部材70の下面70Aにおいて投影光学系PLの投影領域AR1に対して第1液体供給機構10の第1供給口12A、12Bの外側に、投影領域AR1に対して第1供給口12A、12Bよりも離れて設けられており、投影領域AR1、及び第1供給口12A、12Bを囲むように環状に形成されている。また、第1回収口22には多孔体22Pが設けられている。なお第1回収口22は、投影領域AR1、及び第1供給口12A、12Bを囲むように環状に設けなくてもよく、例えば離散的に設けても良い。すなわち、第1回収口22の数、配置、及び形状などは、上述のものに限られず、液体LQ1が漏れ出さないように液体LQ1を回収できる構造であればよい。
連結部材52を介してメインコラム1の下側段部8に支持されたノズル部材70は、投影光学系PL(鏡筒PK)とは離れている。すなわち、ノズル部材70の穴部70Hの内側面70Kと鏡筒PKの側面PKSとの間には間隙が設けられている。この間隙は、投影光学系PLとノズル部材70とを振動的に分離するために設けられたものである。これにより、ノズル部材70で発生した振動が、投影光学系PL側に伝達することが防止されている。また、上述したように、メインコラム1(下側段部8)と鏡筒定盤5とは、防振装置47を介して振動的に分離している。したがって、ノズル部材70で発生した振動が、メインコラム1及び鏡筒定盤5を介して投影光学系PLに伝達されることは防止されている。
図2に示すように、供給管13の他端部は、ノズル部材70の内部に形成された第1供給流路14の一端部に接続している。一方、ノズル部材70の第1供給流路14の他端部は、ノズル部材70の凹部78の内側面79に形成された第1供給口12に接続されている。ここで、ノズル部材70の内部に形成された第1供給流路14は、複数(2つ)の供給口12(12A、12B)のそれぞれにその他端部を接続可能なように途中から分岐している。また、図2に示すように、第1供給口12に接続された第1供給流路14のうち第1供給口12近傍は、第1供給口12に向かって漸次拡がる傾斜面となっており、供給口12はラッパ状に形成されている。
第1液体供給部11の液体供給動作は制御装置CONTにより制御される。液浸領域AR2を形成するために、制御装置CONTは、第1液体供給機構10の第1液体供給部11より液体LQ1を送出する。第1液体供給部11より送出された液体LQ1は、供給管13を流れた後、ノズル部材70の内部に形成された第1供給流路14の一端部に流入する。そして、第1供給流路14の一端部に流入した液体LQ1は途中で分岐した後、ノズル部材70の内側面79に形成された複数(2つ)の第1供給口12A、12Bより、最終光学素子2Gと基板Pとの間の第1空間K1に供給される。ここで、本実施形態においては、第1供給口12から供給される液体LQ1は、基板P表面とほぼ平行に吹き出されるため、例えば基板P表面の上方よりその基板P表面に対して下向きに液体LQ1を供給する構成に比べて、供給された液体LQ1が基板Pに及ぼす力を低減できる。したがって、液体LQ1の供給に起因して基板Pや基板ステージPSTが変形する等といった不都合の発生を防止することができる。もちろん、基板Pや基板ステージPSTへ及ぼす圧力を考慮して、下向きに液体LQ1が供給されるように第1供給口を形成してもよい。
図2に示すように、回収管23の他端部は、ノズル部材70の内部に形成された第1回収流路24の一部を構成するマニホールド流路24Mの一端部に接続している。一方、マニホールド流路24Mの他端部は、第1回収口22に対応するように平面視環状に形成され、その第1回収口22に接続する第1回収流路24の一部を構成する環状流路24Kの一部に接続している。
第1液体回収部21の液体回収動作は制御装置CONTに制御される。制御装置CONTは、液体LQ1を回収するために、第1液体回収機構20の第1液体回収部21を駆動する。真空系を有する第1液体回収部21の駆動により、基板P上の液体LQ1は、その基板Pの上方に設けられている第1回収口22を介して環状流路24Kに鉛直上向き(+Z方向)に流入する。環状流路24Kに+Z方向に流入した液体LQ1は、マニホールド流路24Mで集合された後、マニホールド流路24Mを流れる。その後、回収管23を介して第1液体回収部21に吸引回収される。
鏡筒PKの内側面PKLには、第2液体供給機構30の一部を構成する第2供給口32が設けられている。第2供給口32は、鏡筒PKの内側面PKLにおいて第2空間K2の近傍に形成されており、投影光学系PLの光軸AXに対して+X側に設けられている。第2供給口32は、第2液体供給部31から送出された液体LQ2を、最終光学素子2Gの上面2Tと略平行、すなわちXY平面と略平行に(横方向に)吹き出す。第2供給口32は、最終光学素子2Gの上面2Tとほぼ平行に液体LQ2を吹き出すので、供給された液体LQ2が光学素子2G、2F等に及ぼす力を低減できる。したがって、液体LQ2の供給に起因して光学素子2G、2F等が変形したり変位する等といった不都合の発生を防止することができる。
また、鏡筒PKの内側面PKLにおいて、第2供給口32に対して所定位置には、第2液体回収機構60の一部を構成する第2回収口62が設けられている。第2回収口62は、鏡筒PKの内側面PKLにおいて第2空間K2の近傍に形成されており、投影光学系PLの光軸AXに対して−X側に設けられている。すなわち、第2供給口32及び第2回収口62は対向している。本実施形態においては、第2供給口32及び第2回収口62はそれぞれスリット状に形成されている。なお、第2供給口32及び第2回収口62は、略円形状、楕円形状、矩形状など任意の形状に形成されていてもよい。また、本実施形態においては、第2供給口32、第2回収口62のそれぞれは互いにほぼ同じ大きさを有しているが、互いに異なる大きさであってもよい。また、第2供給口32を、上記第1供給口12と同様、ラッパ状に形成してもよい。
図2に示すように、供給管33の他端部は、鏡筒PKの内部に形成された第2供給流路34の一端部に接続している。一方、鏡筒PKの第2供給流路34の他端部は、鏡筒PKの内側面PKLに形成された第2供給口32に接続されている。
第2液体供給部31の液体供給動作は制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTが、第2液体供給機構30の第2液体供給部31より液体LQ2を送出すると、その第2液体供給部31より送出された液体LQ2は、供給管33を流れた後、鏡筒PKの内部に形成された第2供給流路34の一端部に流入する。そして、第2供給流路34の一端部に流入した液体LQ2は、鏡筒PKの内側面PKLに形成された第2供給口32より、光学素子2Fと最終光学素子2Gとの間の第2空間K2に供給される。
図2に示すように、回収管63の他端部は、鏡筒PKの内部に形成された第2回収流路64の一端部に接続している。一方、第2回収流路64の他端部は、鏡筒PKの内側面PKLに形成された第2回収口62に接続されている。
第2液体回収部61の液体回収動作は制御装置CONTに制御される。制御装置CONTは、液体LQ2を回収するために、第2液体回収機構60の第2液体回収部61を駆動する。真空系を有する第2液体回収部61の駆動により、第2空間K2の液体LQ2は、第2回収口62を介して第2回収流路64に流入し、その後、回収管63を介して第2液体回収部61に吸引回収される。なお、第2供給口32および第2回収口の数や配置など、上述のものに限られず、光学素子2Fと光学素子2Gとの間の露光光ELの光路が第2液体LQ2で満たされる構造であればよい。
なお、本実施形態においては、鏡筒PKの内部に流路34、64が形成されているが、鏡筒PKの一部に貫通孔を設けておき、そこに流路となる配管を通すようにしてもよい。また、本実施形態においては、供給管33及び回収管63は、ノズル部材70とは別に設けられているが、供給管33及び回収管63のかわりにノズル部材70の内部に供給路及び回収路を設けて、鏡筒PK内部に形成された流路34、64のそれぞれと接続するようにしてもよい。
鏡筒PKに保持されている光学素子2Fの下面2Uは平面状に形成されており、最終光学素子2Gの上面2Tとほぼ平行となっている。一方、光学素子2Fの上面2Wは、物体面側(マスクM側)に向かって凸状に形成されており、正の屈折率を有している。これにより、上面2Wに入射する光(露光光EL)の反射損失が低減されており、ひいては投影光学系PLの大きい像側開口数が確保されている。また、屈折率(レンズ作用)を有する光学素子2Fは、良好に位置決めされた状態で鏡筒PKに堅固に固定されている。
光学素子2Fの下面2U及び最終光学素子2Gの上面2Tには第2空間K2に満たされた液体LQ2が接触し、最終光学素子2Gの下面2Sには第1空間K1の液体LQ1が接触する。本実施形態においては、少なくとも光学素子2F、2Gは石英によって形成されている。石英は、水である液体LQ1、LQ2との親和性が高いので、液体接触面である光学素子2Fの下面2U、最終光学素子2Gの上面2T及び下面2Sのほぼ全面に液体LQ1、LQ2を密着させることができる。したがって、光学素子2F、2Gの液体接触面2S、2T、2Uに液体LQ1、LQ2を密着させて、光学素子2Fと最終光学素子2Gとの間の光路、及び最終光学素子2Gと基板Pとの間の光路を液体LQ1、LQ2で確実に満たすことができる。
また、石英は屈折率の大きい材料であるため、光学素子2Fなどの大きさを小さくすることができ、投影光学系PL全体や露光装置EX全体をコンパクト化できる。また、石英は耐水性があるので、例えば液体接触面2S、2T、2U等に保護膜を設ける必要がないなどの利点がある。
なお、光学素子2F、2Gの少なくとも一方は、水との親和性が高い蛍石であってもよい。この場合は、蛍石の液体接触面には水への溶解を防止するための保護膜を形成しておくことが望ましい。また、例えば光学素子2A〜2Eを蛍石で形成し、光学素子2F、2Gを石英で形成してもよいし、光学素子2A〜2Gの全てを石英(あるいは蛍石)で形成してもよい。
また、光学素子2F、2Gの液体接触面2S、2T、2Uに、MgF2、Al2O3、SiO2等を付着させる等の親水化(親液化)処理を施して、液体LQ1、LQ2との親和性をより高めるようにしてもよい。あるいは、本実施形態における液体LQ1、LQ2は極性の大きい水であるため、親液化処理(親水化処理)としては、例えばアルコールなど極性の大きい分子構造の物質で薄膜を形成することで、この光学素子2F、2Gの液体接触面2S、2T、2Uに親水性を付与することもできる。すなわち、液体LQ1、LQ2として水を用いる場合にはOH基など極性の大きい分子構造を持ったものを前記液体接触面2S、2T、2Uに設ける処理が望ましい。
また、本実施形態においては、鏡筒PKの内側面PKL、及び光学素子2Fの側面2FKのそれぞれは、撥液化処理されて撥液性を有している。鏡筒PKの内側面PKL、及び光学素子2Fの側面2FKのそれぞれを撥液性にすることで、内側面PKLと側面2FKとで形成される間隙に第2空間K2の液体LQ2が浸入することが防止されるとともに、前記間隙の気体が、第2空間K2の液体LQ2中に気泡となって混在することが防止されている。
上記撥液化処理としては、例えば、ポリ四フッ化エチレン等のフッ素系樹脂材料、アクリル系樹脂材料、シリコン系樹脂材料等の撥液性材料を塗布、あるいは前記撥液性材料からなる薄膜を貼付する等の処理が挙げられる。
また、鏡筒PKの側面PKSとノズル部材70の内側面70Kとのそれぞれに撥液処理を施してそれら側面PKS及び内側面70Kを撥液性にすることにより、内側面70Kと側面PKSとで形成される間隙に第1空間K1の液体LQ1が浸入することが防止されるとともに、前記間隙の気体が、第1空間K1の液体LQ1中に気泡となって混在することが防止されている。
なお、光学素子2Fの側面2FKと鏡筒PKの内側面PKLとの間にOリングやVリング等のシール部材を配置してもよい。また、鏡筒PKの側面PKSとノズル部材70の内側面70Kとの間にOリングやVリング等のシール部材を配置してもよい。
次に、上述した構成を有する露光装置EXを用いてマスクMのパターン像を基板Pに露光する方法について説明する。
基板Pの露光を行うに際し、制御装置CONTは、第2液体供給機構30より第2空間K2に液体LQ2を供給する。制御装置CONTは、第2液体供給機構30による単位時間あたりの液体LQ2の供給量及び第2液体回収機構60による単位時間あたりの液体LQ2の回収量を最適に制御しつつ、第2液体供給機構30及び第2液体回収機構60による液体LQ2の供給及び回収を行い、第2空間K2のうち、少なくとも露光光ELの光路上を液体LQ2で満たす。なお、第2空間K2へ液体LQ2の供給を開始するときに、鏡筒PKの内側面PKLと光学素子2Fの側面2FKとの間隙への液体LQ2の浸入を抑制するために、第2液体供給機構30による単位時間あたりの液体LQ2の供給量を徐々に多くしてもよい。
また、ロード位置において基板Pが基板ステージPSTにロードされた後、制御装置CONTは、基板Pを保持した基板ステージPSTを投影光学系PLの下、すなわち露光位置に移動する。そして、基板ステージPSTと投影光学系PLの最終光学素子2Gとを対向させた状態で、制御装置CONTは、第1液体供給機構10による単位時間あたりの液体LQ1の供給量及び第1液体回収機構20による単位時間あたりの液体LQ1の回収量を最適に制御しつつ、第1液体供給機構10及び第1液体回収機構20による液体LQ1の供給及び回収を行い、第1空間K1のうち、少なくとも露光光ELの光路上に液体LQ1の液浸領域AR2を形成し、その露光光ELの光路を液体LQ1で満たす。
ここで、基板ステージPST上の所定位置には、例えば特開平4−65603号公報に開示されているような基板アライメント系、及び特開平7−176468号公報に開示されているようなマスクアライメント系によって計測される基準マークを備えた基準部材(計測部材)が設けられている。更に、基板ステージPST上の所定位置には、光計測部として例えば特開昭57−117238号公報に開示されているような照度ムラセンサ、例えば特開2002−14005号公報に開示されているような空間像計測センサ、及び例えば特開平11−16816号公報に開示されているような照射量センサ(照度センサ)などが設けられている。制御装置CONTは、基板Pの露光処理を行う前に、基準部材上のマーク計測や、光計測部を使った各種計測動作、基板アライメント系を用いた基板P上のマークの検出動作を行い、その計測結果に基づいて、基板Pのアライメント処理や、投影光学系PLの結像特性調整(キャリブレーション)処理を行う。例えば光計測部を使った計測動作を行う場合には、制御装置CONTは、基板ステージPSTをXY方向に移動することで液体LQ1の液浸領域AR2に対して基板ステージPSTを相対的に移動し、光計測部上に液体LQ1の液浸領域AR2を配置し、その状態で液体LQ1及び液体LQ2を介した計測動作を行う。なお、基準部材や光計測部を用いた各種の計測動作は、露光対象の基板Pを基板ステージPST上にロードする前に行っても良い。また、基板アライメント系による基板P上のアライメントマークの検出は、投影光学系PLの像面側に液体LQ1の液浸領域AR2を形成する前に行っても良い。
上記アライメント処理及びキャリブレーション処理を行った後、制御装置CONTは、第1液体供給機構10による基板P上に対する液体LQ1の供給と並行して、第1液体回収機構20による基板P上の液体LQ1の回収を行いつつ、基板Pを支持する基板ステージPSTをX軸方向(走査方向)に移動しながら、マスクMのパターン像を、投影光学系PL、第2空間K2の液体LQ2、及び第1空間K1の液体LQ1(すなわち液浸領域AR2の液体)を介して基板P上に投影露光する。
本実施形態における露光装置EXは、マスクMと基板PとをX軸方向(走査方向)に移動しながらマスクMのパターン像を基板Pに投影露光するものであって、走査露光時には、投影光学系PL、及び第1、第2空間K1、K2の液体LQ1、LQ2を介してマスクMの一部のパターン像が投影領域AR1内に投影され、マスクMが−X方向(又は+X方向)に速度Vで移動するのに同期して、基板Pが投影領域AR1に対して+X方向(又は−X方向)に速度β・V(βは投影倍率)で移動する。基板P上には複数のショット領域が設定されており、1つのショット領域への露光終了後に、基板Pのステッピング移動によって次のショット領域が走査開始位置に移動し、以下、ステップ・アンド・スキャン方式で基板Pを移動しながら各ショット領域に対する走査露光処理が順次行われる。
本実施形態においては、レンズ作用を有する光学素子2Fの下に、平行平面板からなる最終光学素子2Gが配置されているが、最終光学素子2Gの下面2S側及び上面2T側の第1、第2空間K1、K2のそれぞれに液体LQ1、LQ2を満たすことで、光学素子2Fの下面2Uや最終光学素子2Gの上面2Tでの反射損失が低減され、投影光学系PLの大きな像側開口数を確保した状態で、基板Pを良好に露光することができる。
基板Pの露光中においても、第2液体供給機構30及び第2液体回収機構60による液体LQ2の供給及び回収は継続される。更に、基板Pの露光前後においても、第2液体供給機構30及び第2液体回収機構60による液体LQ2の供給及び回収は継続される。第2液体供給機構30及び第2液体回収機構60による液体LQ2の供給及び回収を継続することで、第2空間K2の液体LQ2は常に新鮮な(清浄な)液体LQ2と交換される。第2空間K2に対する液体LQ2の供給及び回収を行わずに、第2空間K2に液体LQ2を溜めた状態で露光を行ってもよいが、露光光ELの照射により液体LQ2の温度が変化し、投影光学系PLの液体を介した結像特性が変動する可能性がある。したがって、第2液体供給機構30より温度調整された液体LQ2を常時供給するとともに、その液体LQ2を第2液体回収機構60により回収することで、第2空間K2の液体LQ2の温度変化を抑えることができる。同様に、露光光ELの照射中において、第1液体供給機構10及び第1液体回収機構20による液体LQ1の供給及び回収を常時行うことにより、第1空間K1の液体LQ1は常に新鮮な(清浄な)液体LQ1と交換される。第1空間K1の液体LQ1(すなわち基板P上の液浸領域AR2の液体LQ1)の温度変化を抑えることができる。また、液体LQ1、LQ2の供給及び回収を常時行って、清浄な液体LQ1、LQ2を流し続けることにより、第1、第2空間K1、K2に細菌(バクテリア等)が発生し、清浄度が劣化するといった不都合の発生を防止することもできる。
なお、第2空間K2の液体LQ2の温度変化等が露光精度に影響を与えない程度であれば、第2空間K2に液体LQ2を溜めた状態で露光を行い、所定時間間隔毎や所定処理基板枚数毎に、第2空間K2の液体LQ2を交換するようにしてもよい。この場合、露光光ELの照射中(例えば、基板Pの露光中)に、第2液体供給機構30及び第2液体回収機構60による液体LQ2の供給及び回収が停止されるので、液体LQ2の供給(液体LQ2の流れ)に起因する光学素子2Fの振動や変位が防止され、基板Pの露光及び上述の光計測部を用いた各種の計測動作を精度良く実行することができる。
基板Pの露光が終了すると、制御装置CONTは、第1液体供給機構10による液体LQ1の供給を停止し、第1液体回収機構20等を使って、液浸領域AR2の液体LQ1(第1空間K1の液体LQ1)をすべて回収する。更に、制御装置CONTは、第1液体回収機構20の第1回収口22等を使って基板P上や基板ステージPST上に残留している液体LQ1の滴などを回収する。一方、制御装置CONTは、基板Pの露光が終了した後も、第2液体供給機構30及び第2液体回収機構60の液体LQ2の供給及び回収を継続し、第2空間K2に液体LQ2を流し続ける。こうすることにより、上述同様、第2空間K2の清浄度が劣化したり、液体LQ2の気化(乾燥)に起因して光学素子2F、2Gの液体接触面2U、2T等に付着痕(所謂ウォーターマーク)が形成される等といった不都合の発生を防止することができる。そして、基板P上の液体LQ1が回収された後、制御装置CONTは、その基板Pを支持した基板ステージPSTをアンロード位置まで移動し、アンロードする。なお、基板ステージPSTが投影光学系PLから離れた位置(例えば、ロード位置、アンロード位置)へ移動している場合、投影光学系PLの像面側に平坦面を有する所定部材を配置して、その所定部材と投影光学系PLとの間の空間(第1空間)を液体LQ1で満たし続けても良い。
ところで、液浸領域AR2(第1空間K1)の液体LQ1中に、例えば感光剤(フォトレジスト)に起因する異物など、基板P上から発生した不純物等が混入することによって、その液体LQ1が汚染する可能性がある。液浸領域AR2の液体LQ1は最終光学素子2Gの下面2Sにも接触するため、その汚染された液体LQ1によって、最終光学素子2の下面2Sが汚染する可能性がある。また、空中を浮遊している不純物が、投影光学系PLの像面側に露出している最終光学素子2Gの下面2Sに付着する可能性もある。
本実施形態においては、最終光学素子2Gは、鏡筒PKに対して容易に取り付け及び取り外し可能(交換可能)となっているため、その汚染された最終光学素子2Gのみを清浄な最終光学素子2Gと交換することで、光学素子の汚染に起因する露光精度及び投影光学系PLを介した計測精度の劣化を防止できる。一方、第2空間K2には常に清浄な液体LQ2が流し続けられており、第2空間K2の液体LQ2は基板Pに接触しないようになっている。また、第2空間K2は、光学素子2F、2G、及び鏡筒PKで囲まれたほぼ閉空間であるため、空中を浮遊している不純物は第2空間K2の液体LQ2に混入し難く、光学素子2Fには不純物が付着し難い。したがって、光学素子2Fの下面2Uや最終光学素子2Gの上面2Tの清浄度は維持されている。したがって、最終光学素子2Gを交換するのみで、投影光学系PLの透過率の低下等を防止して露光精度及び計測精度を維持することができる。
以上説明したように、最終光学素子2Gの下面2T側の第1空間K1と上面2S側の第2空間K2とを独立した空間とし、第1空間K1及び第2空間K2のそれぞれに液体LQ1、LQ2を満たして露光するようにしたので、マスクMを通過した露光光ELを、光学素子2Fの下面2Uの一部、最終光学素子2Gの上面2Tの一部、及び最終光学素子2Gの下面2Sの一部を介して、基板Pまで良好に到達させることができる。
そして、汚染する可能性の高い最終光学素子2Gを容易に交換可能とすることで、清浄な最終光学素子2Gを備えた投影光学系PLを使って良好に露光することができる。平行平面板からなる最終光学素子2Gを設けずに、光学素子2Fに液浸領域AR2の液体を接触させる構成も考えられるが、投影光学系PLの像側開口数を大きくしようとすると、光学素子の有効径を大きくする必要があり、光学素子2Fを大型化せざるを得なくなる。光学素子2Fの周囲には、上述したようなノズル部材70や、不図示ではあるがアライメント系などといった各種計測装置が配置されるため、そのような大型の光学素子2Fを交換することは、作業性が低く、困難である。更に、光学素子2Fは屈折率(レンズ作用)を有しているため、投影光学系PL全体の光学特性(結像特性)を維持するために、その光学素子2Fを高い位置決め精度で鏡筒PKに取り付ける必要がある。本実施形態では、最終光学素子2Gとして比較的小型な平行平面板を設け、その最終光学素子2Gを交換する構成であるため、作業性良く容易に交換作業を行うことができ、投影光学系PLの光学特性を維持することもできる。そして、最終光学素子2Gの下面2S側の第1空間K1及び上面2T側の第2空間K2のそれぞれに対して液体LQ1、LQ2を独立して供給及び回収可能な第1、第2液体供給機構10、30、及び第1、第2液体回収機構20、60を設けたことにより、液体LQ1、LQ2の清浄度を維持しつつ、照明光学系ILから射出された露光光ELを投影光学系PLの像面側に配置された基板Pまで良好に到達させることができる。
なお、本実施形態においては、液体LQ2は光学素子2Fの下面2U及び最終光学素子2Gの上面2Tのそれぞれのほぼ全域を濡らすように第2空間K2に満たされているが、液体LQ2は露光光ELの光路上に配置されるように第2空間K2の一部を満たしていればよい。換言すれば、第2空間K2はその必要な一部が液体LQ2で十分に満たされていればよい。同様に、第1空間K1もその必要な一部が液体LQ1で十分に満たされていればよい。
なお、図1〜図3で説明した実施形態において、基板P上に局所的に液浸領域AR2を形成するための機構は、第1液体供給機構10及び第1液体回収機構20(ノズル部材70)に限られず、各種形態の機構を使うことができる。例えば、欧州特許出願公開EP1420298(A2)公報に開示されている機構を用いることもできる。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について図4を参照しながら説明する。以下の説明において、上述した実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略もしくは省略する。
本実施形態の特徴的な部分は、第1空間K1と第2空間K2とを連結する連結孔74が設けられている点にある。連結孔74は鏡筒PKの下面に周方向に所定間隔で複数設けられている。また、連結孔74のそれぞれには多孔体74Pが設けられている。
また、本実施形態においては、第1空間K1に直接的に液体を供給する第1供給口を含む第1液体供給機構(10)は設けられていない。また、第2空間K2の液体を直接的に回収する第2回収口を含む第2液体回収機構(60)も設けられていない。本実施形態における露光装置EXは、第2空間K2に液体LQを供給する第2液体供給機構30、及び第1空間K1(液浸領域AR2)の液体LQを回収する第1液体回収機構20を備えている。
また、本実施形態においては、鏡筒PKの側面とノズル部材70との間の間隙に対して、第1空間K1の液体LQが浸入することを阻止するシール部材100が設けられている。シール部材100は、ノズル部材70の振動が鏡筒PKに伝達するのを防止する見地から柔軟なゴムやシリコンなどの部材から形成されるのが望ましい。なお、シール部材100は無くてもよく、第1の実施形態で述べたように、例えば鏡筒PKの側面及びノズル部材70の内側面70Tを撥液性にすることで、前記間隙への第1空間K1の液体LQ1の浸入、及び第1空間K1の液体LQへの気体の混入を阻止することができる。
制御装置CONTは、第1空間K1及び第2空間K2に液体LQを満たすとき、第2液体供給機構30を使って、第2空間K2に液体LQを供給する。第2空間K2に供給された液体LQは、連結孔74を介して第1空間K1にも供給される。第2液体供給機構30は、第2空間K2から液体LQを供給し、連結孔74を介して第1空間K1にも液体LQを流入させることで、第1空間K1と第2空間K2とを液体LQで満たす。連結孔74を介して第1空間K1に供給された液体LQは基板P上に液浸領域AR2を形成し、その液浸領域AR2の液体LQは、第1液体供給機構20の第1回収口22より回収される。そして、第1空間K1と第2空間K2とが液体LQで満たされた後、制御装置CONTは、第1空間K1及び第2空間K2の液体LQを介して、基板P上に露光光ELを照射して基板Pを露光する。なお本実施形態において、第1液体供給機構10を併用して第1空間K1に液体LQを供給してもよい。
このように、第1空間K1と第2空間K2とを連結孔74を介して連結することで、装置構成を簡略化することができる。
なお、第1空間K1に液体LQを満たした後、第1空間K1に満たされた液体LQを、連結孔74を介して第2空間K2に流入させることで、第1空間K1と第2空間K2とを液体LQで満たすようにしてもよい。この場合、基板Pに接触した液体LQが第2空間K2に満たされることとなるので、例えば連結孔74にケミカルフィルタ等を配置しておけば、第2空間K2には、基板P上などから発生した不純物を混入した液体LQが満たされることがない。
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について図5を参照しながら説明する。
本実施形態の特徴的な部分は、最終光学素子2Gがノズル部材70に支持されている点にある。つまり、最終光学素子2Gが、投影光学系PLを構成する他の光学素子2A〜2Fとは分離して支持されている点にある。
図5において、光学素子2Fは鏡筒PKより露出している。投影光学系PLを構成する複数の光学素子2A〜2Gのうち、光学素子2A〜2Fは鏡筒PKで支持されている。一方、最終光学素子2Gは、連結部材72を介してノズル部材70に支持されている。環状部材であるノズル部材70は、投影光学系PLの先端部の光学素子2F、2Gの近傍に配置されており、基板P(基板ステージPST)の上方において光学素子2F、2Gの周りを囲むように設けられている。すなわち、光学素子2F、2Gは、ノズル部材70の穴部70Hの内側に配置されている。穴部70Hは凹部78の内側に形成されている。
最終光学素子2Gは、ノズル部材70のキャビティ面78Aに連結部材72を介して保持されている。連結部材72はノズル部材70のキャビティ面78Aに固定されており、その連結部材72に最終光学素子2Gが固定されている。ノズル部材70に連結部材72を介して保持された最終光学素子2Gと、鏡筒PKに保持された光学素子2A〜2Fとは離れており、最終光学素子2Gの上面2Tと光学素子2Fの下面2Uとの間に第2空間2Kが形成されている。最終光学素子2Gは、鏡筒PKに保持された他の光学素子2A〜2Fとは分離した状態で、ノズル部材70に連結部材72を介して支持された構成となっている。
連結部材72の下面72Aとその連結部材72に保持された平行平面板からなる最終光学素子2Gの下面2Sとはほぼ面一となっている。連結部材72に支持された最終光学素子2Gの上面2T及び下面2SはXY平面とほぼ平行となっている。また、連結部材72とキャビティ面78Aとの接続部、及び最終光学素子2Gと連結部材72との接続部などはシールされている。また、連結部材72はほぼ板状部材であって、孔などは設けられていない。すなわち、最終光学素子2Gの下面2S側の第1空間K1と上面2T側の第2空間K2とは互いに独立した空間であり、第1空間K1と第2空間2Kとの間での液体の流通が阻止されている。
また、最終光学素子2Gは、連結部材72に対して容易に取り付け及び取り外しが可能となっている。すなわち、最終光学素子2Gは交換可能に設けられている。なお、最終光学素子2Gを交換するために、連結部材72をノズル部材70(キャビティ面78A)に対して取り付け・外し可能(交換可能)に設けてもよいし、ノズル部材70を交換可能にしてもよい。
ノズル部材70の下面70Aのうち、凹部78の内側の内側面79には、第1実施形態と同様に、第1液体供給機構10の一部を構成する第1供給口12(12A、12B)が設けられている。また、ノズル部材70の下面70Aにおいて、投影光学系PLの投影領域AR1を基準として凹部78の外側には、第1実施形態と同様に、第1液体回収機構20の一部を構成する第1回収口22が設けられている。
連結部材52を介してメインコラム1の下側段部8に支持されたノズル部材70は、投影光学系PL(光学素子2F)とは離れている。すなわち、ノズル部材70の穴部70Hの内側面70Kと光学素子2Fの側面2FKとの間には間隙が設けられており、光学素子2Fを保持する鏡筒PKとノズル部材70との間にも間隙が設けられている。これら間隙は、投影光学系PL(光学素子2A〜2F)とノズル部材70とを振動的に分離するために設けられたものである。これにより、ノズル部材70で発生した振動が、投影光学系PL側に伝達することが防止されている。また、上述したように、メインコラム1(下側段部8)と鏡筒定盤5とは、防振装置47を介して振動的に分離している。したがって、ノズル部材70で発生した振動がメインコラム1及び鏡筒定盤5を介して投影光学系PLに伝達されることは防止されている。
ノズル部材70の内側面70Kには、第2液体供給機構30の一部を構成する第2供給口32が設けられている。第2供給口32は、第2液体供給部31から送出された液体LQ2を、最終光学素子2Gの上面2Tと略平行、すなわちXY平面と略平行に(横方向に)吹き出す。第2供給口32は、最終光学素子2Gの上面2Tとほぼ平行に液体LQ2を吹き出すので、供給された液体LQ2が光学素子2G等に及ぼす力を低減できる。したがって、液体LQ2の供給に起因して光学素子2Gや連結部材72、あるいは光学素子2Fが変形したり変位する等といった不都合の発生を防止することができる。
また、ノズル部材70の内側面70Kにおいて、第2供給口32に対して所定位置には、第2液体回収機構60の一部を構成する第2回収口62が設けられている。本実施形態においては、第2回収口62は第2供給口32の上方に設けられている。
図6はノズル部材70を示す概略斜視図である。図6に示すように、第2供給口32はノズル部材70の内側面70Kに複数設けられている。本実施形態においては、第2供給口32は、内側面70Kにおいて周方向にほぼ等間隔で設けられている。同様に、第2回収口62はノズル部材70の内側面70Kに複数設けられており、本実施形態においては、第2回収口62は、第2供給口32の上方において周方向にほぼ等間隔で設けられている。
なお、図6においては、第2供給口32及び第2回収口62は略円形状に形成されているが、楕円形状、矩形状、スリット状など任意の形状に形成されていてもよい。また、本実施形態においては、第2供給口32、第2回収口62のそれぞれは互いにほぼ同じ大きさを有しているが、互いに異なる大きさであってもよい。また、第2供給口32を第2回収口62の上方に配置するようにしてもよい。また、第2供給口32及び第2回収口62のそれぞれを内側面70Kにおいて周方向に並べて設ける構成の他に、例えば内側面70Kにおいて投影光学系PLの光軸AXを挟んで+X側に第2供給口32を設け、−X側に第2回収口62を設ける等、その配置は任意に設定可能である。すなわち、本実施形態においても、第2供給口32、および第2回収口62の数、配置、形状などは、図5,6に示した構造に限られず、光学素子2Fと光学素子2Gとの間の露光光ELの光路が第2液体LQで満たされる構造であればよい。
なお、図2を参照して説明した実施形態において、鏡筒PKの内側面PKLに、図6に示すような配置で第2供給口32及び第2回収口62を形成してもよい。
図5に示すように、供給管33の他端部は、ノズル部材70の内部に形成された第2供給流路34の一端部に接続している。一方、ノズル部材70の第2供給流路34の他端部は、ノズル部材70の内側面70Kに形成された第2供給口32に接続されている。ここで、ノズル部材70の内部に形成された第2供給流路34は、複数の第2供給口32のそれぞれにその他端部を接続可能なように途中から分岐している。なお、第2供給口32を、上記第1供給口12と同様、ラッパ状に形成してもよい。
第2液体供給部31の液体供給動作は制御装置CONTにより制御される。制御装置CONTが、第2液体供給機構30の第2液体供給部31より液体LQ2を送出すると、その第2液体供給部31より送出された液体LQ2は、供給管33を流れた後、ノズル部材70の内部に形成された第2供給流路34の一端部に流入する。そして、第2供給流路34の一端部に流入した液体LQ2は途中で分岐した後、ノズル部材70の内側面70Kに形成された複数の第2供給口32より、光学素子2Fと最終光学素子2Gとの間の第2空間K2に供給される。
図5に示すように、回収管63の他端部は、ノズル部材70の内部に形成された第2回収流路44の一部に接続している。一方、第2回収流路44の他端部は、ノズル部材70の内側面70Kに形成された第2回収口62に接続されている。ここで、ノズル部材70の内部に形成された第2回収流路64は、複数の第2回収口62のそれぞれにその他端部を接続可能なように途中から分岐している。
第2液体回収部61の液体回収動作は制御装置CONTに制御される。制御装置CONTは、液体LQ2を回収するために、第2液体回収機構60の第2液体回収部61を駆動する。真空系を有する第2液体回収部61の駆動により、第2空間K2の液体LQ2は、第2回収口62を介して第2回収流路64に流入し、その後、回収管63を介して第2液体回収部61に吸引回収される。
また、本実施形態においては、ノズル部材70の内側面70K、及び光学素子2Fの側面2FKのそれぞれは、撥液化処理されて撥液性を有している。ノズル部材70の内側面70K、及び光学素子2Fの側面2FKのそれぞれを撥液性にすることで、内側面70Kと側面2FKとで形成される間隙に第2空間K2の液体LQ2が浸入することが防止されるとともに、前記間隙の気体が、第2空間K2の液体LQ2中に気泡となって混在することが防止されている。
以上のように、最終光学素子2Gと他の光学素子2A〜2Fとを分離して支持し、最終光学素子2Gの下面2T側の第1空間K1と上面2S側の第2空間K2とを独立した空間とし、第1空間K1及び第2空間K2のそれぞれに液体LQ1、LQ2を満たして露光するようにしたので、マスクMを通過した露光光ELを基板Pまで良好に到達させることができる。
また、最終光学素子2Gをノズル部材70で支持することにより、光学素子2F、2Gとノズル部材70との間に鏡筒PKを配置しない構成とすることができる。したがって、光学素子2F、2Gに対してノズル部材70を近づけることができ、装置のコンパクト化を図ることができる等、装置の設計の自由度を向上することができる。また、ノズル部材70に形成された第1供給口12および第1回収口22を投影領域AR1に近づけることができる。そのため、液浸領域AR2の大きさを小さくすることができる。したがって、液浸領域AR2の大きさに伴って基板ステージPSTを大型化したり、基板ステージPSTの移動ストロークを大きくする必要がなくなるので、装置をコンパクト化できる。
なお、ノズル部材70は液浸領域AR2(第1空間K1)の液体の供給及び回収を行う供給口12及び回収口22を有する部材であり、また基板P(基板ステージPST)の移動に伴って液浸領域AR2の液体の剪断力を受けるので、ノズル部材70には振動が生じやすい。しかしながら、本実施形態においては、ノズル部材70に保持されている光学素子2Gが平行平板なので、ノズル部材70の振動が露光や計測の精度に与える影響を抑えることができる。一方、上述したように、防振装置47などによって鏡筒PKには振動が生じ難いため、図2や図5を参照して説明した第1、第2実施形態のように、鏡筒PKで最終光学素子2Gを支持することで、投影光学系PLの結像特性に与える影響を抑えることができる。
なお、ノズル部材70で最終光学素子2Gを支持する場合には、ノズル部材70と最終光学素子2Gとの間に防振機構を設けることで、ノズル部材70で発生した振動が、最終光学素子2Gに伝わることを防止することができる。液体LQ2の供給(液体LQ2の流れ)に起因する光学素子2Fの振動や変位が防止され、基板Pの露光及び上述の光計測部を用いた各種の計測動作を精度良く実行することができる。
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について図7を参照しながら説明する。本実施形態の特徴的な部分は、連結部材72に、第1空間K1と第2空間K2とを連結する連結孔74が設けられている点にある。連結孔74は連結部材72に周方向に所定間隔で複数設けられている。連結孔74のそれぞれには多孔体74Pが設けられている。
また、本実施形態においては、第1空間K1に直接的に液体を供給する第1供給口を含む第1液体供給機構(10)は設けられていない。また、第2空間K2の液体を直接的に回収する第2回収口を含む第2液体回収機構(60)も設けられていない。一方、本実施形態における露光装置EXは、第2空間K2に液体LQを供給する第2液体供給機構30、及び第1空間K1(液浸領域AR2)の液体LQを回収する第1液体回収機構20を備えている。
制御装置CONTは、第1空間K1及び第2空間K2に液体LQを満たすとき、第2液体供給機構20を使って、第2空間K2に液体LQを供給する。第2空間K2に供給された液体LQは、連結孔74を介して第1空間K1にも供給される。このように、第2液体供給機構30は、第2空間K2から液体LQを供給し、連結孔74を介して第1空間K1にも液体LQを流入させることで、第1空間K1と第2空間K2とを液体LQで満たす。連結孔74を介して第1空間K1に供給された液体LQは基板P上に液浸領域AR2を形成し、その液浸領域AR2の液体LQは、第1液体供給機構20の第1回収口22より回収される。そして、第1空間K1と第2空間K2とが液体LQで満たされた後、制御装置CONTは、第1空間K1及び第2空間K2の液体LQを介して、基板P上に露光光ELを照射して基板Pを露光する。
このように、第1空間K1と第2空間K2とを連結孔74を介して連結することで、装置構成を簡略化することができる。なお、本実施形態においても、第1空間K1に液体LQを満たした後、第1空間K1に満たされた液体LQを、連結孔74を介して第2空間K2に流入させることで、第1空間K1と第2空間K2とを液体LQで満たすようにしてもよい。
なお、上述の第3及び第4の実施形態においては、第1空間K1、及び第2空間K2用の液体流路を有するノズル部材70で最終光学素子2Gを支持しているが、第1空間K1、及び第2空間K2のどちらか一方のための液体流路を有するノズル部材70で最終光学素子2Gを支持してもよい。
また、第1空間K1と第2空間の少なくとも一方に液体を供給する供給口だけを有するノズル部材で最終光学素子2Gを支持してもよいし、第1空間K1と第2空間の少なくとも一方の液体を回収する回収口だけを有するノズル部材で最終光学素子2Gを支持してもよい。
また、上述の第3及び第4の実施形態においては、最終光学素子2Gをノズル部材70で支持しているが、これに限られず、鏡筒PK及びノズル部材70とは異なる部材で最終光学素子2Gを支持するようにしてもよい。
また、上述の第3及び第4の実施形態で採用されている最終光学素子2Gをノズル部材70で支持する構成は、第1空間K1のみを液体で満たす液浸露光方式にも採用することができる。
また、上述の第1〜第4の実施形態において、投影光学系PLは、無屈折力の平行平面板である最終光学素子2Gを含めて所定の結像特性となるように調整されているが、最終光学素子2Gが結像特性にまったく影響を及ぼさない場合には、最終光学素子2Gを除いて、投影光学系PLの結像特性が所定の結像特性となるように調整してもよい。
また、上述の第1〜第4の実施形態において、最終光学素子2Gは、無屈折力の平行平面板であるが、屈折力を有する光学素子であってもよい。すなわち、最終光学素子2Gの上面2Tが曲率を持っていてもよい。この場合、最終光学素子2Gの交換を容易とするために、最終光学素子2Gの上面2Tの曲率は極力小さいほうが望ましい。
また、上述の第1〜第4の実施形態においては、投影光学系PLの光軸AX上において、第1空間K1の液体LQ1は、第2空間K2の液体LQ2よりも厚くなっているが、すなわち最終光学素子2Gと光学素子2Fとの距離は、最終光学素子2Gと基板Pとの距離よりも短いが、第2空間K2の液体LQ2を第1空間K1の液体LQ1よりも厚くしてもよいし、同じ厚さにしてもよい。更に、上述の第1〜第4の実施形態においては、Z軸方向に関して、最終光学素子2Gの厚さは、第1空間K1の液体LQ1及び第2空間K2の液体LQ2よりも薄くなっているが、最終光学素子2Gを最も厚くしてもよい。すなわち、第1空間K1の液体LQ1、第2空間K2の液体LQ2、及び最終光学素子2GのZ軸方向の厚さは、液体LQ1、LQ2、及び最終光学素子2Gを介して基板P上に投影されるパターンの結像状態が最適化されるように適宜決めてやればよい。なお、一例としては、光軸AX上における液体LQ1及び液体LQ2の厚さを5mm以下、最終光学素子2Gの厚さを3〜12mmとすることができる。
また、上述の第1〜第4の実施形態においては、最終光学素子2Gは投影光学系PLの光軸AXに対してほぼ静止した状態で支持されているが、その位置、傾きを調整するために、微小移動可能に支持されていてもよい。例えば、最終光学素子2Gの支持部にアクチュエータを配置して、最終光学素子2Gの位置(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)や傾き(θX方向、θY方向)を自動的に調整できるようにしてもよい。この場合、第3、第4実施形態のように、ノズル部材70で、最終光学素子2Gを保持する場合には、ノズル部材の位置や傾きを調整することによって、最終光学素子2Gの位置及び/又は傾きを調整してもよい。
また、上述の第1〜第4の実施形態において、最終光学素子2Gの位置(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)や、傾き(θX方向、θY方向)を計測する干渉計等の計測器を更に設けてもよい。この計測器は、光学素子2A〜2Fに対する位置や傾きを計測できることが望ましい。このような計測器を搭載することで、最終光学素子2Gの位置や傾きのずれを容易に知ることができ、上述したアクチュエータと併用すれば、最終光学素子2Gの位置や傾きを高精度に調整することができる。
また、第3及び第4の実施形態に記載されているように、最終光学素子2Gを、光学素子2Fとは分離して支持する場合、最終光学素子2Gが液体LQ1から受ける圧力や振動が直接光学素子2A〜2Fに伝導しないので、投影光学系PLの結像特性の劣化を抑制することができる。この場合、最終光学素子2Gを軟らかく保持したり、基板Pの傾き(基板ステージPSTの傾き)に応じて最終光学素子2Gの位置や傾きを調整すれば、より効果的に光学素子2A〜2Fへの圧力や振動を抑えることができる。
<第5実施形態>
次に、上述の第1〜第4の実施形態における第1液体回収機構20の回収方法の別の実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、第1回収口22から液体LQだけを回収するようにしており、これによって液体回収に起因する振動の発生を抑制するようにしている。
以下、図8の模式図を参照しながら、本実施形態における第1液体回収機構20による液体回収動作の原理について説明する。図1〜5及び7との関係で説明した第1液体回収機構20の第1回収口22には、多孔部材25として、例えば多数の孔が形成された薄板状の多孔部材(メッシュ部材)を使用することができる。本実施形態においては、多孔部材はチタンで形成されている。また本実施形態においては、多孔部材25が濡れた状態で、多孔部材25の上面と下面との圧力差を後述の所定条件を満足するように制御することで、多孔部材25の孔から液体LQだけを回収するものである。上述の所定条件に係るパラメータとしては、多孔部材25の孔径、多孔部材25の液体LQとの接触角(親和性)、及び第1液体回収部21の吸引力(多孔部材25の上面に圧力)等が挙げられる。
図8は、多孔部材25の部分断面の拡大図であって、多孔部材25を介して行われる液体回収の一具体例を示す。多孔部材25の下には、基板Pが配置されており、多孔部材25と基板Pとの間には、気体空間及び液体空間が形成されている。より具体的には、多孔部材25の第1孔25Haと基板Pの間には気体空間が形成され、多孔部材25の第2孔25Hbと基板Pとの間には液体空間が形成されている。このような状況は、例えば、図2に示した液浸領域AR2の端部で、あるいは何らかの原因で液浸領域AR2内に気体空間が生じたときに起こりえる。また、多孔部材25の上には、第1回収流路24の一部を形成する流路空間が形成されている。
図8において、多孔部材25の第1孔25Haと基板Pの間の空間の圧力(多孔部材25Hの下面の圧力)をPa、多孔部材25の上の流路空間の圧力(多孔部材25の上面での圧力)をPb、第1及び第2孔25Ha,25Hbの孔径(直径)をd、多孔部材25(孔25Hの内側)の液体LQとの接触角をθ、液体LQの表面張力をγとして、
(4×γ×cosθ)/d ≧ (Pa−Pb) …(3)
の条件が成立する場合、図8に示すように、多孔部材25の第1孔25Haの下側(基板P側)に気体空間が形成されても、多孔部材25の下側の空間の気体が孔25Haを介して多孔部材25の上側の空間に移動(侵入)することを防止することができる。すなわち、上記(3)式の条件を満足するように、接触角θ、孔径d、液体LQの表面張力γ、圧力Pa、Pbを最適化することで、液体LQと気体との界面が多孔部材25の孔25Ha内に維持され、第1孔25Haからの気体の侵入を抑えることができる。一方、多孔部材25の第2孔25Hbの下側(基板P側)には液体空間が形成されているので、第2孔25Hbを介して液体LQのみを回収することができる。
なお、上記(3)式の条件においては、説明を簡単にするために多孔部材25の上の液体LQの静水圧は考慮していない。
また、本実施形態において、第1液体回収機構20は、多孔部材25の下の空間の圧力Pa、孔25Hの直径d、多孔部材25(孔25Hの内側面)の液体LQとの接触角θ、液体(純水)LQの表面張力γは一定として、第1液体回収部21の吸引力を制御して、上記(3)式を満足するように、多孔部材25の上の流路空間の圧力を調整している。ただし、上記(3)式において、(Pa−Pb)が大きいほど、すなわち、((4×γ×cosθ)/d)が大きいほど、上記(3)式を満足するような圧力Pbの制御が容易になるので、孔25Ha、25Hbの直径d、及び多孔部材25の液体LQとの接触角θ(0<θ<90°)は可能な限り小さくすることが望ましい。
なお、上述の図1,2,4,5,7及び8などを用いた説明においては、最終光学素子2Gの下面2Sと基板Pとを対向させた状態で、最終光学素子2Gの下面2Sと基板Pとの間の第1空間K1を液体LQ1で満たしているが、投影光学系PLと他の部材(例えば、基板ステージPSTの上面51など)が対向している場合にも投影光学系PLとその他の部材との間を液体で満たすことができることはいうまでもない。
上述したように、本実施形態における液体LQ1、LQ2として純水を用いた。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。なお工場等から供給される純水の純度が低い場合には、露光装置が超純水製造器を持つようにしてもよい。
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44と言われており、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
なお、上述した図2及び図5の実施形態においては、液体LQ1、LQ2として同じ純水を供給しているが、第1空間に供給される純水(液体LQ1)と第2空間に供給される純水(液体LQ2)との品質を異ならせてもよい。純水の品質としては、例えば温度、温度均一性、温度安定性、比抵抗値、あるいはTOC(total organic carbon)値、溶存気体濃度(溶存酸素、溶存窒素)などが挙げられる。例えば、第2空間K2に供給される純水よりも、投影光学系PLの像面に近い第1空間K1へ供給される純水の品質を高くしてもよい。また、第1空間と第2空間に互いに異なる種類の液体を供給し、第1空間K1に満たす液体LQ1と第2空間K2に満たす液体LQ2とを互いに異なる種類にしてもよい。例えば露光光ELに対する屈折率及び/又は透過率が互いに異なるものを用いることができる。また、例えば、第2空間K2にフッ素系オイルをはじめとする純水以外の所定の液体を満たすことができる。オイルは、バクテリアなどの細菌の繁殖する確率が低い液体であるため、第2空間K2や液体LQ2(フッ素系オイル)の流れる流路の清浄度を維持することができる。
また、液体LQ1、LQ2の双方を水以外の液体にしてもよい。例えば、露光光ELの光源がF2レーザである場合、このF2レーザ光は水を透過しないので、液体LQ1、LQ2としてはF2レーザ光を透過可能な例えば、過フッ化ポリエーテル(PFPE)やフッ素系オイル等のフッ素系流体であってもよい。この場合、液体LQ1、LQ2と接触する部分には、例えばフッ素を含む極性の小さい分子構造の物質で薄膜を形成することで親液化処理する。また、液体LQ1、LQ2としては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。この場合も表面処理は用いる液体LQ1、LQ2の極性に応じて行われる。
なお、上述したような液浸法においては、投影光学系の開口数NAが0.9〜1.3になることもある。このように投影光学系の開口数NAが大きくなる場合には、従来から露光光として用いられているランダム偏光光では偏光効果によって結像性能が悪化することもあるので、偏光照明を用いるのが望ましい。その場合、マスク(レチクル)のライン・アンド・スペースパターンのラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明を行い、マスク(レチクル)のパターンからは、S偏光成分(TE偏光成分)、すなわちラインパターンの長手方向に沿った偏光方向成分の回折光が多く射出されるようにするとよい。投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が液体で満たされている場合、投影光学系PLと基板P表面に塗布されたレジストとの間が空気(気体)で満たされている場合に比べて、コントラストの向上に寄与するS偏光成分(TE偏光成分)の回折光のレジスト表面での透過率が高くなるため、投影光学系の開口数NAが1.0を越えるような場合でも高い結像性能を得ることができる。また、位相シフトマスクや特開平6−188169号公報に開示されているようなラインパターンの長手方向に合わせた斜入射照明法(特にダイポール照明法)等を適宜組み合わせると更に効果的である。特に、直線偏光照明法とダイボール照明法との組み合わせは、ライン・アンド・スペースパターンの周期方向が所定の一方向に限られている場合や、所定の一方向に沿ってホールパターンが密集している場合に有効である。例えば、透過率6%のハーフトーン型の位相シフトマスク(ハーフピッチ45nm程度のパターン)を、直線偏光照明法とダイポール照明法とを併用して照明する場合、照明系の瞳面においてダイボールを形成する二光束の外接円で規定される照明σを0.95、その瞳面における各光束の半径を0.125σ、投影光学系PLの開口数をNA=1.2とすると、ランダム偏光光を用いるよりも、焦点深度(DOF)を150nm程度増加させることができる。
また、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、微細なライン・アンド・スペースパターン(例えば25〜50nm程度のライン・アンド・スペース)を基板P上に露光するような場合、マスクMの構造(例えばパターンの微細度やクロムの厚み)によっては、Wave guide効果によりマスクMが偏光板として作用し、コントラストを低下させるP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりS偏光成分(TE偏光成分)の回折光が多くマスクMから射出されるようになる。この場合、上述の直線偏光照明を用いることが望ましいが、ランダム偏光光でマスクMを照明しても、投影光学系PLの開口数NAが0.9〜1.3のように大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。
また、マスクM上の極微細なライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合、Wire Grid効果によりP偏光成分(TM偏光成分)がS偏光成分(TE偏光成分)よりも大きくなる可能性もあるが、例えばArFエキシマレーザを露光光とし、1/4程度の縮小倍率の投影光学系PLを使って、25nmより大きいライン・アンド・スペースパターンを基板P上に露光するような場合には、S偏光成分(TE偏光成分)の回折光がP偏光成分(TM偏光成分)の回折光よりも多くマスクMから射出されるので、投影光学系PLの開口数NAが0.9〜1.3のように大きい場合でも高い解像性能を得ることができる。
更に、マスク(レチクル)のラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明(S偏光照明)だけでなく、特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線(周)方向に直線偏光する偏光照明法と斜入射照明法との組み合わせも効果的である。特に、マスク(レチクル)のパターンが所定の一方向に延びるラインパターンだけでなく、複数の異なる方向に延びるラインパターンが混在(周期方向が異なるライン・アンド・スペースパターンが混在)する場合には、同じく特開平6−53120号公報に開示されているように、光軸を中心とした円の接線方向に直線偏光する偏光照明法と輪帯照明法とを併用することによって、投影光学系の開口数NAが大きい場合でも高い結像性能を得ることができる。例えば、透過率6%のハーフトーン型の位相シフトマスク(ハーフピッチ63nm程度のパターン)を、光軸を中心とした円の接線方向に直線偏光する偏光照明法と輪帯照明法(輪帯比3/4)とを併用して照明する場合、照明σを0.95、投影光学系PLの開口数をNA=1.00とすると、ランダム偏光光を用いるよりも、焦点深度(DOF)を250nm程度増加させることができ、ハーフピッチ55nm程度のパターンで投影光学系の開口数NA=1.2では、焦点深度を100nm程度増加させることができる。
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
また、露光装置EXとしては、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第1パターンの縮小像を投影光学系(例えば1/8縮小倍率で反射素子を含まない屈折型投影光学系)を用いて基板P上に一括露光する方式の露光装置にも適用できる。この場合、更にその後に、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で第2パターンの縮小像をその投影光学系を用いて、第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光するスティッチ方式の一括露光装置にも適用できる。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。また、基板Pを保持するステージとは別に測定用の部材やセンサを搭載した測定ステージを備えた露光装置にも本発明を適用することはできる。なお、測定ステージを備えた露光装置は、例えば欧州特許公開第1,041,357号公報に記載されている。
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているツイン(マルチ)ステージ型の露光装置にも適用できる。
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク(レチクル)を用いたが、このレチクルに代えて、例えば米国特許第6,778,257号公報に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて、透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスクを用いても良い。
また、国際公開第2001/035168号パンフレットに開示されているように、干渉縞をウエハW上に形成することによって、ウエハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)にも本発明を適用することができる。
上述の実施形態においては、投影光学系PLと基板Pとの間を局所的に液体で満たす露光装置を採用しているが、例えば特開平6−124873号公報、特開平10−303114号公報、米国特許第5,825,043号などに詳細に記載されているように、露光対象の基板の表面全体が液体で覆われる液浸露光装置にも本発明を適用可能である。
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータ(USP5,623,853またはUSP5,528,118参照)を用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−166475号公報(USP5,528,118)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−330224号公報(US S/N 08/416,558)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
以上のように、本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図9に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
2(2A〜2G)…光学素子(エレメント)、2S…下面、2T…上面、10…第1液体供給機構、20…第1液体回収機構、30…第2液体供給機構、60…第2液体回収機構、70…ノズル部材(流路形成部材)、74…連結孔、EL…露光光、EX…露光装置、K1…第1空間、K2…第2空間、LQ(LQ1、LQ2)…液体、P…基板、PL…投影光学系