JP4647943B2 - 往復作動式工具 - Google Patents
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Description
前記課題を解決する本発明の第1発明は、請求項1に記載の往復作動式工具である。
請求項1に記載の往復作動式工具は、先端工具、第1の作動機構、動吸振器、第2の作動機構を少なくとも備える。
本発明における先端工具として、典型的には被加工材にハンマ加工作業やハンマドリル加工作業を加えるハンマビット、あるいは被加工材に切断加工作業を加える鋸刃等を用いる。本発明における第1の作動機構は、この先端工具を直線状に駆動させ、これによって当該先端工具に所定の加工作業を遂行させる機能を有する作動機構である。
この種の動吸振器においては、当該動吸振器の構成要素である弾性要素の弾性係数のバラツキ、ウェイトの質量誤差、往復作動式工具使用時の動作周波数のバラツキ等、製造上や使用上の理由による公差やバラツキが生じる場合がある。このような場合には、最適な振動低減を行うべく往復作動式工具使用時の動作周波数に対応させて第2運動変換機構の加振周波数を設定したとしても、ウェイトの振幅や、ウェイトの第2運動変換機構との間の位相差に関し変動が生じるゆえ、実際の制振性を確実なものとするのに限界がある。そこで、本発明では、特に動吸振器を構成するウェイトの減衰特性を好適に調節することによって、広い加振周波数領域に対応してウェイトの振幅、及びウェイトの第2の作動機構との間の位相差のいずれも安定化させ、これによって動吸振器の動作を安定化させるようにしたのである。従って、本発明によれば、制振性を確実なものとする往復作動式工具を構築することが可能とされる。
前記課題を解決する本発明の第2発明は、請求項2に記載の往復作動式工具である。
請求項2に記載の往復作動式工具では、請求項1に記載の動吸振器が、ハウジング及び通気孔を少なくとも備える構成になっている。ハウジングは、ウェイトを摺動自在に収容する機能を有する。通気孔は、ハウジングに形成され、当該ハウジングの内部領域と外部領域とを連通することでこれら両領域間における空気の移動を許容する機能を有する部位である。このとき、ハウジングの内部領域においてウェイトの直線運動に伴って加圧された加圧空気が通気孔を通過するときのエネルギー消費によって当該ウェイトに減衰力が付与されることとなる。そして、本発明では、ウェイトがハウジング内を摺動する際に通気孔を空気が移動し、これにより通気孔における単位時間当たりの通気量に応じてウェイトに作用する減衰力が調節される構成であり、通気孔における単位時間当たりの通気量が、請求項1に記載の減衰特性に対応して設定されるよう通気孔の通気径が構成されている。
本発明によれば、通気孔における単位時間当たりの通気量を最適化することによってウェイトの減衰特性を調節することが可能となり、これによって動吸振器の動作を安定化させることができる。特に、ウェイトの減衰特性の調節に際し通気孔の構成を用いることによって、制振性を確実なものとする往復作動式工具を構築することが可能となるうえに、往復作動式工具の構成を簡素化することができるという作用効果を奏する。
以下、本発明の第1の実施形態につき、図1〜図6を参照しつつ詳細に説明する。本発明の実施の形態では、「往復作動式工具」の一例として、電動式のハンマドリルを例に説明する。図1は第1の実施形態に係るハンマドリルの全体構成を概略的に示す側断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係るハンマドリル101は、概括的に見て、ハンマドリル101の外郭を形成する本体部103、当該本体部103の先端領域にツールホルダ137を介して着脱自在に取付けられたハンマビット119を主体として構成される。ハンマビット119は、本発明における「先端工具」に対応する。
本発明における「動吸振器」としての動吸振器151は、本体部103、具体的にはギアハウジング107に一体状に形成された筒体152と、当該筒体152内に配置されたウェイト153と、ウェイト153の左右に配置された付勢バネ157を主体として構成される。付勢バネ157は、本発明における「弾性要素」に対応する。付勢バネ157は、ウェイト153が筒体152の長軸方向(ハンマビット119の長軸方向)に移動する際にウェイト153に対向状の弾発力を付与する。
なお、ウェイト153を摺動自在に収容する筒体152が、本発明における「ハウジング」に対応している。また、通気孔159aが本発明における「通気部」に対応し、第2作動室159が本発明における「内部領域」に対応し、動吸振器151外の領域が本発明における「外部領域」に対応している。
図1に示す駆動モータ111が通電駆動されると、その回転出力により、駆動ギア121が水平面内にて回動動作する。すると、駆動ギア121に噛み合い係合される被動ギア123を介してクランク板125が水平面内を周回動作し、これによってクランクアーム127が同じく水平面内を揺動しつつハンマビット119の長軸方向に移動し、当該クランクアーム127の先端に取り付けられたピストン129がシリンダ141内を直線状に摺動動作される。ピストン129の摺動動作に伴うシリンダ141内の空気バネの作用により、ストライカ143はシリンダ141内を直線運動する。ストライカ143は、インパクトボルト145に衝突することで、その運動エネルギをハンマビット119へと伝達する。ハンマドリル101がハンマドリルモードで駆動されるときは、駆動モータ111の回転出力によって回転される駆動ギア121に噛み合い係合する伝達ギア131、伝達軸133および小ベベルギア134が一体状に水平面内にて回転動作する。すると、小ベベルギア134に噛み合い係合する大ベベルギア135が鉛直面内にて回転し、この大ベベルギア135とともにツールホルダ137およびこのツールホルダ137にて保持されるハンマビット119が一体状に回転される。かくして、ハンマドリルモードでの駆動時には、ハンマビット119が長軸方向のハンマ動作と周方向のドリル動作を行い、被加工材にハンマドリル加工作業を遂行する。
本実施の形態では、偏心軸部161と連接板163とによって構成されるクランク機構を介してバネ受部材としての摺動子167を駆動し、ウェイト153を強制加振する構成としている。このため、ストライカ143がインパクトボルト145に衝突して衝撃力をハンマビット119に作用させるように直線運動する際、動吸振器151のウェイト153が、実際の設計上においては、ストライカ143に対向して反対方向へ直線運動するように、当該ウェイト153の駆動タイミング、すなわち、クランクの位相を調整することができる。このため、ハンマドリル101に生じる振動を効率的に抑制することができる。
まず、第1のステップとして、図4中の式(1)〜(7)に基づいて、第2運動変換機構116の加振周波数f(Hz)に対するウェイト153の振幅に係る係数ρ(−)の関係、及び加振周波数f(Hz)に対するウェイト153の加振入力との間の位相差θ(°)の関係を導出する。更に、この第1のステップでは、減衰係数cのみを変化させた場合の、係数ρ及び位相差θについて検討し、係数ρ及び位相差θが安定化する場合の所望の減衰係数cを導出する。
そこで、本実施の形態では、ウェイト153の減衰特性を規定する係数、すなわち図4中の(1)式における減衰係数cを好適に設定することによって、図5に示す「実施例」のように、加振周波数fに対しρ及びθのいずれもが安定化する領域を作り出すようにしている。具体的には、ウェイト153の質量m及び付勢バネ157(2本分)のバネ定数kは、図6に示す「比較例」と同じ値を用い、減衰係数cのみを0.1(N/m)から1(N/m)に変更している。これにより、加振周波数fに対しρ及びθのいずれもが安定化する周波数帯Aや周波数帯Bが得られることとなる。このとき、加振周波数fの所定周波数領域である周波数帯Aや周波数帯Bが、ハンマドリル101の製造上や使用上のバラツキを考慮した実際の動作周波数領域を包含する場合に、動吸振器151による制振が有効となる。
次に、第2のステップでは、上記第1のステップによって決定された所望の減衰係数cに対応して、ハンマドリル101の実際の設計を行う。具体的には、動吸振器151の筒体152に設ける通気孔159aの通気径、すなわち通気孔159aにおける単位時間当たりの通気量を、第1のステップによって決定された所望の減衰係数cが得られるように設定する。典型的には、この通気孔159aの通気径を1.0(mm)程度とする。
次に本発明の第2の実施形態につき、図7〜図12を参照して説明する。図7は第2の実施形態に係るハンマドリルの全体構成を概略的に示す側断面図である。図7に示すように、この実施の形態に係るハンマドリル201は、概括的に見て、ハンマドリル201の外郭を形成する本体部203、当該本体部203の先端領域にツールホルダ237を介して着脱自在に取付けられたハンマビット219を主体として構成される。ハンマビット219は、本発明における「先端工具」に対応する。
動吸振器251の摺動子267は、筒体252内に当該筒体252の長軸方向(ハンマビット219の長軸方向)に摺動自在に嵌合され、一方の付勢バネ257の一端を支持している。揺動部材261の各端部は、各摺動子267に対向する位置にそれぞれ配置されており、当該各端部にはそれぞれ作動片263が設けられている。各作動片263は、先端が摺動子267のバネ支持面の背面に当接され、揺動部材261とともに揺動することで付勢バネ257を加圧する方向に摺動子267を移動させる構成とされる。
なお、ウェイト253を摺動自在に収容する筒体252が、本発明における「ハウジング」に対応している。また、通気孔259aが本発明における「通気部」に対応し、第2作動室259が本発明における「内部領域」に対応し、動吸振器251外の領域が本発明における「外部領域」に対応している。
また、摺動子267は、移動方向の一端が塞がれた筒状に形成されるとともに、移動方向に長尺状に形成されている。このため、筒体252の長軸方向の長さ寸法を増大することなく摺動子267の摺接面積を広く取ることができ、当該摺動子267が長軸方向に移動動作するときの安定化を図ることができる。
一方、被動軸225とともに第1伝達ギア231が回転されると、第1伝達ギア231に噛み合い係合される第2伝達ギア233を介してスリーブ235が鉛直面内にて回転され、更にスリーブ235とともにツールホルダ237およびこのツールホルダ237にて保持されるハンマビット219が一体状に回転される。かくして、ハンマビット219が長軸方向のハンマ動作と周方向のドリル動作を行い、被加工材にハンマドリル加工作業を遂行する。
さらには、第2の実施形態によれば、摺動子267の小さい移動量で、ウェイト253を大きく移動できることによる、動吸振器251を強制加振するための揺動機構の配置スペースの縮小化、あるいは動吸振器251をハンマビット219の移動線を跨いで両側配置したことによる、無用なモーメントの発生防止効果等、前述した第1の実施の形態と同様の作用効果を奏するものである。
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、本実施の形態に基づいた種々の応用例や変更例を想到することができる。例えば、本実施の形態を応用した以下の形態を実施することもできる。
本発明では、「先端工具と、前記先端工具を往復直線状に駆動させることで当該先端工具に所定の加工作業を遂行させる第1の作動機構と、弾性要素及び、当該弾性要素による付勢力が作用した状態で直線運動可能なウェイトを有する動吸振器と、前記ウェイトを強制加振して駆動する第2の作動機構とを備える往復作動式工具につき、
前記第2の作動機構による加振周波数の所定周波数領域において前記ウェイトの振幅が規定振幅範囲内で変動し、且つ当該所定周波数領域において前記ウェイトの前記第2の作動機構との間の位相差が規定位相差範囲内で変動するような減衰特性を導出し、導出した当該減衰特性を前記動吸振器の動作安定化設計に反映させることを特徴とする、往復作動式工具の設計支援システム。」という構成(態様1)を採り得る。
本発明に係るシステムは、動吸振器の動作が安定するような特定の減衰係数を導出する構成を有する。具体的には、第2の作動機構による加振周波数の所定周波数領域においてウェイトの振幅が規定振幅範囲内で変動し、且つ当該所定周波数領域においてウェイトの前記第2の作動機構との間の位相差が規定位相差範囲内で変動するような所望の減衰係数を導出する。換言すれば、本発明では、第2の作動機構による加振周波数の所定周波数領域において、ウェイトの振幅及び位相差の変化度合いが規定範囲内におさまるような減衰係数を導出する。このとき、加振周波数の所定周波数領域が、往復作動式工具の製造上や使用上のバラツキを考慮した実際の動作周波数領域を包含する場合に、動吸振器による制振が有効となる。この減衰係数の導出は、既知の構成のCPU、ROM,RAMなどを用いて構築される演算システムによって実行される。そして、この所望の減衰係数が得られるように動吸振器を設計する。
本態様1に記載の発明によれば、広い加振周波数領域に対応してウェイトの振幅、及びウェイトの第2の作動機構との間の位相差のいずれも安定化させることができ、これによって動吸振器の動作を安定化させることが可能とされる。従って、本発明によれば、制振性を確実なものとする往復作動式工具の設計支援システムを構築することが可能とされる。
また、本発明では、「態様1に記載の、往復作動式工具の設計支援システムであって、前記ウェイトを摺動自在に収容するハウジングにつき、当該ハウジングの内部領域と外部領域とを連通することでこれら両領域間における空気の移動を許容する通気部における単位時間当たりの通気量を、前記減衰特性に対応して導出し、導出した当該通気量に基づいて前記ハウジングの通気部を設計することを特徴とする、往復作動式工具の設計支援システム。」という構成(態様2)を採り得る。
本態様2に記載の発明によれば、制振性を確実なものとする往復作動式工具の設計支援システムを構築することが可能となるうえに、特定の減衰係数が得られるようにハウジングの通気部を設計すればよいため、往復作動式工具の設計ステップを簡素化するのに有効である。
103 本体部
105 モータハウジング
107 ギアハウジング
109 ハンドグリップ
111 駆動モータ
113 第1運動変換機構(第1の作動機構)
114 動力伝達機構
115 打撃要素
116 第2運動変換機構(第2の作動機構)
117 バレル部
119 ハンマビット(先端工具)
121 駆動ギア
123 被動ギア
125 クランク板
126 偏心軸(第1の駆動機構部)
128 クランクアーム(第1の駆動機構部)
128 連結軸
129 ピストン(第1の駆動機構部)
131 伝達ギア
132 滑りクラッチ
133 伝達軸
134 小ベベルギア
135 大ベベルギア
136 クラッチ機構
137 ツールホルダ
141 シリンダ
143 ストライカ
145 インパクトボルト
151 動吸振器
152 筒体
153 ウェイト
154 大径部
155 小径部
157 付勢バネ(弾性要素)
158 第1作動室
158a 開口
159 第2作動室
159a 通気孔
161 偏心軸部(第2の駆動機構部)
162 長円孔
163 連接板(第2の駆動機構部)
164 連係部
165 ガイドピン
167 バネ受部材
168 係合凹部
201 ハンマドリル(作業工具)
203 本体部
205 モータハウジング
207 ギアハウジング
209 ハンドグリップ
211 駆動モータ
213 第1運動変換機構(第1の作動機構)
214 動力伝達機構
215 打撃要素
216 第2運動変換機構(第2の作動機構)
217 バレル部
219 ハンマビット(先端工具)
221 駆動ギア
223 被動ギア
224 係合部材
225 被動軸
226 軸受
227 回転体(第1の駆動機構部)
228 揺動ロッド(第1の駆動機構部)
229 揺動リング(第1の駆動機構部)
231 第1伝達ギア
233 第2伝達ギア
235 スリーブ
237 ツールホルダ
241 シリンダ
243 ストライカ
245 インパクトボルト
251 動吸振器
252 筒体
253 ウェイト
254 大径部
255 小径部
257 付勢バネ(弾性要素)
258 第1作動室
258a 通気孔
259 第2作動室
259a 通気孔
261 揺動部材(第2の駆動機構部)
263 作動片(第2の駆動機構部)
265 ホルダー
267 摺動子
Claims (2)
- 先端工具と、前記先端工具を往復直線状に駆動させることで当該先端工具に所定の加工作業を遂行させる第1の作動機構と、弾性要素及び、当該弾性要素による付勢力が作用した状態で直線運動可能なウェイトを有する動吸振器と、前記ウェイトの直線運動方向に前記弾性要素を加圧することで前記ウェイトを強制加振して駆動する第2の作動機構とを備える往復作動式工具であって、
前記動吸振器は、前記第2の作動機構による加振周波数の所定周波数領域において前記ウェイトの振幅がその振幅が安定化して変動する規定振幅範囲内で変動し、且つ当該所定周波数領域において前記ウェイトの前記第2の作動機構との間の位相差がその位相差が安定化して変動する規定位相差範囲内で変動するような減衰特性を有する構成であり、これによって前記動吸振器の動作が安定化することを特徴とする往復作動式工具。 - 請求項1に記載の往復作動式工具であって、
前記動吸振器は、前記ウェイトを摺動自在に収容するハウジングと、前記ハウジングに形成され、当該ハウジングの内部領域と外部領域とを連通することでこれら両領域間における空気の移動を許容する通気孔を備え、前記ウェイトが前記ハウジング内を摺動する際に前記通気孔を空気が移動し、これにより前記通気孔における単位時間当たりの通気量に応じて前記ウェイトに作用する減衰力が調節される構成であり、前記通気孔における単位時間当たりの通気量が前記減衰特性に対応して設定されるよう前記通気孔の通気径が構成されていることを特徴とする往復作動式工具。
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