JP4641590B2 - 樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,耐熱性,耐油性に富み,引張伸び特性に優れた樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは,スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂及び特定構造の部分水添ブロック共重合体からなる食品用容器等に好適な樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
スチレン系樹脂は,加工性が良く,優れた機械的特性を有することから,射出成形材料やシ−ト成形材料として広く使用されている。しかし,スチレン系樹脂は,耐油性が劣り,マ−ガリンやゴマ油等の油類に触れると急激な物性低下を起こすため,その使用に限界があった。そこで,耐油性を改良するためにオレフィン系樹脂を混合することが試みられてきた。しかしながら,スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂とは相溶性が乏しいため,剥離現象を生じ,脆い組成物となってしまう。
【0003】
この問題点を解決するために,ブロック共重合体を添加してなる組成物が種々提案されている。例えば,特開昭56−38338号公報には,ビニル芳香族化合物重合体ブロックAを少なくとも1個と共役ジエン系重合体ブロックBを少なくとも1個有するブロック共重合体を水素添加することによって,該ブロック共重合体の二重結合の少なくとも70%を飽和して得られた水素添加ブロック共重合体を添加してなるポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂からなる組成物が提案されており,具体的には結合スチレン含有量が50%,水素添加前のビニル含有量が13%のA−B型ブロック共重合体を二重結合の92%水素添加した水素添加ブロック共重合体等が開示されている。また,特開平1−174550号公報にも,同様な水素添加ブロック共重合体を含有するポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂からなる組成物が提案され,具体的には結合スチレン含有量が35%,水素添加前のイソプレン中のビニル含有量が8%のA−B型ブロック共重合体を二重結合の93%水素添加した水素添加ブロック共重合体等が開示されている。しかし,これらの組成物で使用されている水素添加ブロック共重合体は,水素添加率の高いものであり,その生産性が低いという欠点を有していた。例えば,特開昭56−38338号公報に開示の水素添加ブロック共重合体を得るために要する水素添加時間は6時間,特開平1−174550公報に開示の水素添加ブロック共重合体を得るために要する水素添加時間は8時間と,相当の時間が必要であった。そこで,製造方法が容易で生産性の良いブロック共重合体であり,且つポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂からなる組成物に添加した時に優れた特性を有する重合体の出現が待たれていた。また,ここに開示されている組成物は,ポリオレフィン系樹脂とポリスチレン系樹脂の相溶性は改良されているものの,組成物における引張伸び特性は充分でなく,さらなる改良が望まれている。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明は,スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂に特定構造の部分水素添加ブロック共重合体を添加することにより,耐熱性,耐油性に富み,引張伸び特性が優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは,スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂を混合して使用するに際し,耐熱性,耐油性に富み,引張伸び特性の優れた樹脂組成物が得られ,且つ生産性の良いブロック共重合体について鋭意検討を進めた結果,特定構造の部分水素添加ブロック共重合体をスチレン系樹脂とオレフィン系に添加することにより,その目的が達成されることを見出し,本発明を完成した。
【0006】
すなわち,本発明は,
1.(A)スチレン系樹脂95〜5重量%,(B)オレフィン系樹脂5〜95重量%の合計量100重量部に対して,(C)部分水素添加ブロック共重合体2〜30重量部を含有し,
(C)が,少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックXと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックY有し,結合ビニル芳香族化合物含有量が30〜80重量%であり,水素添加前の共役ジエンブロック中のビニル結合量が30〜80重量%であるブロック共重合体を水素添加することによって,該ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく二重結合の35%以上66%以下を飽和して得られた部分水素添加ブロック共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。
2.(C)が,少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックXと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックYを有し,結合ビニル芳香族化合物含有量が40〜80重量%であり,水素添加前の共役ジエンブロック中のビニル結合量が30〜80重量%であるブロック共重合体を水素添加することによって,該ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく二重結合の40%以上66%以下を飽和して得られた部分水素添加ブロック共重合体であることを特徴とする1.に記載の樹脂組成物。
3.(C)部分水素添加ブロック共重合体中の残存ビニル結合量が,10%未満であることを特徴とする1.又は2.に記載の樹脂組成物。
4.(C)部分水素添加ブロック共重合体が,X−Y−X構造を有することを特徴とする1.〜3.のいずれかに記載の樹脂組成物。
5.(C)部分水素添加ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物がスチレンであり,共役ジエン化合物がブタジエンであることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.(B)オレフィン系樹脂が,プロピレン系樹脂であることを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載の樹脂組成物に関する。
【0007】
以下,本発明を詳細に説明する。
本発明の(A)成分に使用されるスチレン系樹脂としては,スチレン,メチルスチレン,エチルスチレン,イソプロピルスチレン,ジメチルスチレン,パラメチルスチレン,クロロスチレン,ブロモスチレン,ビニルキシレン等の単独重合体または共重合体,スチレン−無水マレイン酸共重合体,スチレン−アクリル酸共重合体,スチレン−アクリル酸エステル共重合体,スチレン−メタクリル酸共重合体,スチレン−アクリロニトリル共重合体,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等が挙げられる。また,上記のスチレン系樹脂に,ブタジエンゴム,スチレンブタジエンゴム,エチレン−プロピレンゴム等のゴムを混合またはグラフト重合した耐衝撃性ポリスチレン系樹脂を使用することができる。特に,ポリスチレン,ゴム変性した耐衝撃性ポリスチレンが好ましい。また,本発明のスチレン系樹脂のメルトフロ−レ−ト(MFR:200℃,5Kg荷重)は,0.5〜20g/10分が好ましく,1〜10g/10分がより好ましい。
【0008】
本発明の(B)成分に使用されるオレフィン系樹脂としては,α−オレフィン,例えばエチレン,プロピレン,1−ブテン,イソブチレン,4−メチル−1−ペンテン等を重合して得られる樹脂であれば特に限定されるものではない。共重合体は,ランダム共重合体,ブロック共重合体のいずれでもよく,α−オレフィンの2種又は3種以上の共重合体ゴム,又はα−オレフィンと他のモノマ−との共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマ−を含有していてもよい。これら共重合体ゴムとしては,エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR),エチレン−ブテン共重合体ゴム(EBR),エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)等が挙げられる。このなかでも,ホモ又はブロックのポリプロピレンが好ましく,特にシンジオタクティックポリプロピレンホモポリマ−,DSCによる結晶融解ピ−ク温度が155℃以上のプロピレン−エチレンブロックブロック樹脂を用いると,得られる組成物の耐熱性が高くなる。また,本発明のオレフィン系樹脂のメルトフロ−レ−ト(MFR:230℃,2.16Kg荷重)は,0.5〜60g/10分が好ましく,1〜20g/10分がより好ましい。メルトフロ−レ−トが0.5g/10分未満であると,得られる組成物の成形性が劣り,また60g/10分を超えると耐衝撃性が低下する。
【0009】
本発明の(C)成分に使用される部分水素添加ブロック共重合体は,少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックXと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックYを有し,結合ビニル芳香族化合物含有量が30〜80重量%であり,水素添加前の共役ジエンブロック中のビニル結合量が20〜90重量%であるブロック共重合体を水素添加することによって,該ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく二重結合の35%以上70%未満を飽和して得られた部分水素添加ブロック共重合体である。
【0010】
ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックXは,ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との重量比が100/0〜60/40,好ましくは100/0〜80/20の組成範囲からなる重合体ブロックである。ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物が共重合した場合,このブロックにおける共役ジエン化合物の分布は,ランダム,テ−パ−(分子鎖に沿ってモノマ−成分が増加または減少するもの),一部ブロック状またはこれらの任意の組合わせのいずれであってもよい。ここで供するビニル芳香族化合物としては,スチレン,α−メチルスチレン,p−メチルスチレン,p−タ−シャリブチルスチレン等のアルキルスチレン,パラメトキシスチレン,ビニルナフタレン,1,1−ジフェニルエチレン,ジビニルベンゼン等のうちから1種または2種以上が選ばれ,中でもスチレンが好ましい。
【0011】
また,共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックYは,共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物との重量比が100/0〜60/40,好ましくは100/0〜80/20の組成範囲からなる重合体ブロックである。共役ジエン化合物とビニル芳香族化合物が共重合した場合,このブロックにおけるビニル芳香族化合物の分布は,ランダム,テ−パ−(分子鎖に沿ってモノマ−成分が増加または減少するもの),一部ブロック状またはこれらの任意の組合わせのいずれであってもよい。ここで供する共役ジエン化合物としては,ブタジエン,イソプレン,ピペリレン,メチルペンタジエン,フェニルブタジエン,3,4−ジメチル−1,3−ヘキサジエン,4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン等のうちから1種または2種以上が選ばれ,中でもブタジエン及び/またはイソプレンが好ましい。
【0012】
上記ブロック共重合体の分子構造は,直鎖状,分岐状,放射状またはこれらの組合わせなどいずれでもよいが,直鎖状が好ましい。その中でもXが2個以上の構造が好ましく,例えばX−Y−X、X−Y−X−Y、Y−X−Y−X−Y構造が好ましく、取り分けX−Y−X構造が特に好ましい。そして,ブロックXあるいはブロックYのそれぞれは,同一の構造であってもよいし,モノマ−成分含有量,それらの分子鎖における分布,ブロックの分子量,ミクロ構造などの各構造が異なるものであってもよい。例えば,両末端のXが分子量の異なるX−Y−X’であってもよい。
【0013】
部分水素添加ブロック共重合体(C)のビニル芳香族化合物含有量は,30〜80重量%,好ましくは40〜80重量%,より好ましくは45〜75重量%である。ビニル芳香族化合物含有量が30重量%未満では,ブロック共重合体とスチレン系樹脂との親和性が不足してスチレン系樹脂相とオレフィン系樹脂相の界面に存在するブロック共重合体量が不十分となり,相溶化効果に欠ける。一方,80重量%を超えると,スチレン系樹脂との親和性が過剰となり,ブロック共重合体はスチレン系樹脂相に取り込まれてしまうため,やはり相溶化効果が不充分となる。
【0014】
部分水素添加ブロック共重合体(C)の水添前の共役ジエンブロック中のビニル結合量は,20〜90重量%,好ましくは30〜80重量%,より好ましくは40〜75重量%である。ここに,水添前の共役ジエンブロック中のビニル結合量とは,ブロック共重合体中に1,2−結合,3,4−結合及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン化合物のうち,1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれているものの割合とする。水添前の共役ジエンブロック中のビニル結合量が20重量%未満では,ブロック共重合体とオレフィン系樹脂との親和性が不足し,相溶化効果が不充分となる。一方,90重量%を超えると,オレフィン系との親和性が過剰となり,ブロック共重合体はオレフィン系樹脂相に取り込まれてしまうため,やはり相溶化効果が不充分となる。
【0015】
本発明に使用される部分水素添加ブロック共重合体は,上記ブロック共重合体を水素添加することによって,該ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく二重結合の35%以上70%未満を飽和したものである。水素添加率が35%未満では,ブロック共重合体とオレフィン系樹脂との親和性が低下するために,ブロック共重合体はスチレン系樹脂相に取り込まれ,相溶化効果が不充分となる。また,加工時の耐熱性が低下し,リサイクル性が劣る。水素添加率が70%以上の場合,加工性が劣るほか,水素添加率が70%未満のものに比較して生産性が低い。また,本発明に使用される部分水素添加ブロック共重合体中の残存ビニル結合量は,好ましくは10%未満,より好ましくは5%以下,さらに好ましくは3%以下である。ここで,残存ビニル結合量とは,はじめの共役ジエン100に対し水添されずに残ったビニル構造の量である。ブロック共重合体中の残存ビニル結合量が10%以上であると,相溶化効果が不充分となる。
【0016】
部分水素添加ブロック共重合体(C)のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックXの重量平均分子量は,5000〜50000,共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックYは,5000〜70000が好ましい。重合体ブロックXの分子量が5000以下であると,スチレン系樹脂との親和性が低下し,重合体ブロックYの分子量が5000以下であると,オレフィン系樹脂との親和性が低下して相溶化効果が劣る。また,重合体ブロックXの分子量が50000以上か,重合体ブロックYの分子量が70000以上であると,ブロック共重合体としての分子量が過大となるために溶融粘度が上昇し,スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂からなる樹脂組成物中での分散が不充分となり,相溶化効果が劣る。
【0017】
部分水素添加ブロック共重合体(C)のメルトフロ−レ−ト(MFR:230℃,2.16Kg荷重)は,好ましくは0.1〜50g/10分,より好ましくは0.5〜20g/10分,さらに好ましくは1〜10g/10分である。メルトフロ−レ−トが0.1g/10分未満であると,溶融粘度が高すぎて充分な相溶化効果が得られず,また50g/10分を超えるとスチレン系樹脂とオレフィン系樹脂の界面の補強効果が低下する。
【0018】
部分水素添加ブロック共重合体(C)の製造方法は,特に限定されるものではなく,公知の方法が採用される。例えば,特公昭36−19286号公報に記載されている有機リチウム触媒を用いたリビングアニオン重合の技術を用いて,不活性溶媒中でビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を重合することにより,ブロック共重合体を製造することができる。有機リチウム触媒として,n−ブチルリチウム,sec−ブチルリチウム,tert−ブチルリチウムなどのモノリチウム化合物を用い,X,Y,Xの順に逐次的に重合しブロックを形成する方法,X−Yの順にX−Y型リビングブロック共重合体を形成した後,2官能カップリング剤によってX−Y−X構造のトリブロック共重合体を形成する方法,ジリチウム化合物を用いて,X,Yの順に重合し,X−Y−X構造のトリブロック共重合体を形成する方法などがある。ビニル芳香族化合物含有量の調節は,ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物のフィ−ドモノマ−組成によって行われる。また,共役ジエン化合物のビニル結合量の調節は,ビニル化剤の使用によって行われる。ビニル化剤としては,N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン,トリメチルアミン,トリエチルアミン,ジアゾビシクロ[2,2,2]オクタン等のアミン類,テトラヒドロフラン,ジエチレングリコ−ルジメチルエ−テル,ジエチレングリコ−ルジブチルエ−テル等のエ−テル類,チオエ−テル類,ホスフィン類,ホスホルアミド類,アルキルベンゼンスルホン酸塩,カリウムやナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。
【0019】
上記で得られたブロック共重合体を公知の方法で水素添加反応(以降水添反応と記す)することにより部分水素添加ブロック共重合体は得られる。水添反応に使用される触媒としては,(1)担持型不均一触媒と,(2)チ−グラ−型触媒,あるいはチタノセン化合物を用いる均一触媒が知られている。具体的な方法としては,特公昭42−8704号公報,特公昭43−6636号公報に記された方法,好ましくは特公昭63−4841号公報あるいは特公昭63−5401号公報に記された方法により,不活性溶媒中で水添触媒の存在下に目標量の水素を添加して部分水素添加ブロック共重合体の溶液を得ることができる。
【0020】
このようにして得られた部分水素添加ブロック共重合体の溶液から,通常の方法で脱溶剤することにより,部分水素添加ブロック共重合体を得ることができる。必要に応じ,金属類を脱灰する工程を採用することができる。また,必要に応じ,反応停止剤,酸化防止剤,中和剤,界面活性剤等を用いてもよい。
特に,本発明の組成物において,部分水素添加ブロック共重合体(C)の40%以上,好ましくは50%以上がスチレン系樹脂(A)とオレフィン系樹脂(B)の境界面に存在することが好ましい。存在比率が40%以上である場合は,スチレン系樹脂とオレフィン系樹脂の界面の接着強度が優れるために,引張伸び特性において優れた性能が発揮される。
【0021】
本発明の各成分の配合割合としては,スチレン系樹脂(A)とオレフィン系樹脂(B)の配合比は95:5〜5:95の重量比である。剛性を高める場合は,スチレン系樹脂(A)の配合比を多くし,耐熱性,耐油性を重視する場合は,オレフィン系樹脂(B)の配合比を増やす調整が可能であるが,剛性と耐熱性,耐油性のバランスから好ましいスチレン系樹脂(A)とオレフィン系樹脂(B)の配合比は80:20〜40:60の重量比である。
部分水素添加ブロック共重合体(C)の添加量は,スチレン系樹脂(A)とオレフィン系樹脂(B)の合計100重量部に対して,2〜30重量部であり,好ましくは5〜15重量部である。2重量部未満では相溶化効果が不十分となる。
また,30重量部を超えると,剛性が低下すると共に経済的でない。
【0022】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には,必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。添加剤の種類は,樹脂の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はないが,例えば,シリカ,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,硫酸カルシウム,タルク等の無機充填剤,有機繊維,酸化チタン,カ−ボンブラック,酸化鉄等の顔料,ステアリン酸,ベヘニン酸,ステアリン酸亜鉛,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸マグネシウム,エチレンビスステアロアミド等の滑剤,離型剤,有機ポリシロキサン,ミネラルオイル等の可塑剤,ヒンダ−ドフェノ−ル系やリン系の酸化防止剤,難燃剤,紫外線吸収剤,帯電防止剤,ガラス繊維,炭素繊維,金属ウィスカ等の補強剤,その他添加剤或いはこれらの混合物等が挙げられる。
【0023】
本発明の樹脂組成物の製造方法は,特に制限されるものではなく,公知の方法が利用できる。例えば,バンバリ−ミキサ−,単軸スクリュ−押出機,2軸スクリュ−押出機,コニ−ダ,多軸スクリュ−押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法,各成分を溶解又は分散混合後,溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。好ましくは,スチレン系樹脂(A),オレフィン系樹脂(B)及び部分水素添加ブロック共重合体(C)が十分に溶解,混和され,部分水素添加ブロック共重合体(C)がスチレン系樹脂(A)相とオレフィン系樹脂(B)相の界面に移動する条件である180℃以上,好ましくは200℃以上で,シェアレ−トが100sec-1となる条件で混練されることが好ましい。また,好ましくは2軸スクリュ−押出機を用いる方法である。また,これらの方法で一旦混練してマスタ−ペレットを製造し,それを用いて成形,必要により発泡成形することが好ましい。
【0024】
【実施例】
本発明をより具体的かつ詳細に説明するために,次に実施例を示すが,本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(1)使用する成分とその作成
(a)スチレン系樹脂
市販耐衝撃性ポリスチレン樹脂:475D(A&Mスチレン(株)製)
(b)オレフィン系樹脂
(b-1) プロピレン系樹脂
市販ホモポリプロピレン樹脂:PL500A(モンテルエスディ−ケイサンライズ(株)製)
(b-2) エチレン系樹脂
市販高密度ポリエチレン樹脂:サンテックJ301(旭化成工業(株)製)
【0025】
(c)ブロック共重合体
▲1▼ 攪拌機及びジャケット付きの内容量100lのオ−トクレ−ブを洗浄,乾燥,窒素置換し,予め精製したスチレン33重量部を含むシクロヘキサン溶液を投入した。次いでn−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンを添加し,70℃で1時間重合した後,予め精製したブタジエン34重量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて1時間,さらに33重量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて1時間重合した。
【0026】
得られたブロック共重合体溶液の一部をサンプリングし,オクタデシル-3- (3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオネ−トをブロック共重合体100重量部に対して0.3重量部添加し,その後溶媒を加熱除去した(得られた共重合体をポリマ−Iとする)。ポリマ−Iは,スチレン含量が66重量%,ポリプタジエン部の1,2ビニル結合量が50重量%,数平均分子量が56000であった。
尚,スチレン含有量は赤外分析法(IR)を用いて測定した。また,ビニル結合量は赤外分析法(IR)を用いて測定し,ハンプトン法により算出した。また,数平均分子量はゲルパ−ミュエ−ションクロマトグラフィ−(GPC)を用いて測定した。
【0027】
次に,残りのブロック共重合体溶液を用いて,ジ−p−トリスビス(1−シクロペンタジェニル)チタニウムとn−ブチルリチウムを水添触媒として,温度70℃で水素添加を行い,一部の重合体溶液をサンプリングしてポリマ−IIを得た。ポリマ−IIは,水素添加率が26%であった。尚,水素添加率は,核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定した。また,水素添加率は,供給する水素ガス量を流量計で測定し,目標水添率を達成した時点でガスの供給を止めることでコントロ−ルした。残りの重合体溶液は,再度水素添加を行い,ポリマ−III,IVの共重合体溶液を得た。ポリマ−IIIは,水素添加率44%であったが,水素添加開始からの所要時間は30分であった。また,ポリマ−IVは,水素添加率は65%であったが,水素添加開始からの所要時間は45分であった。
各共重合体溶液は,ポリマ−Iと同様に安定剤添加後に溶媒を加熱除去し,種々のポリマ−(II〜IV)を作成した。各サンプルのポリマ−構造を表1に示した。
【0028】
▲2▼ スチレンの投入量,n−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンの添加量を変えた以外は,▲1▼と同様にブロック共重合体を得た。得られたポリマ−は,スチレン含量が60重量%,ポリプタジエン部の1,2ビニル結合量が25重量%,数平均分子量が76000であった(ポリマ−Vとした)。
さらにブロック共重合体溶液を用いて,▲1▼と同様に水素添加を行い,ポリマ−VIを作成した。各サンプルのポリマ−構造を表1に示した。
▲3▼ ▲2▼で,テトラメチルエチレンジアミンを未添加にした以外は,同様にブロック共重合体を得た。得られたポリマ−は,スチレン含量が60重量%,ポリプタジエン部の1,2ビニル結合量が12重量%,数平均分子量が74000であった。
【0029】
さらにブロック共重合体溶液を用いて,▲1▼と同様に水素添加を行い,ポリマ−VII,VIIIを作成した。各サンプルのポリマ−構造を表1に示した。
▲4▼ スチレンの投入量,n−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンの添加量を変えた以外は,▲1▼と同様にブロック共重合体を得た。得られたポリマ−は,スチレン含量が50重量%,ポリプタジエン部の1,2ビニル結合量が40重量%,数平均分子量が62000であった(ポリマ−IXとした)。
【0030】
さらにブロック共重合体溶液を用いて,▲1▼と同様に水素添加を行い,ポリマ−X,XIを作成した。各サンプルのポリマ−構造を表1に示した。
▲5▼ ▲1▼で,はじめに投入するスチレン量を37重量部,ブタジエン重合後に投入するスチレン量を29重量部にする以外は同様にブロック共重合体を得た。得られたポリマ−は,スチレン含量が66重量%,ポリプタジエン部の1,2ビニル結合量が48重量%,数平均分子量が54000であった。
【0031】
さらにブロック共重合体溶液を用いて,▲1▼と同様に水素添加を行い,ポリマ−XIIを作成した。ポリマ−構造を表1に示した。
▲6▼ 攪拌機及びジャケット付きの内容量100lのオ−トクレ−ブを洗浄,乾燥,窒素置換し,予め精製したスチレン30重量部を含むシクロヘキサン溶液を投入した。次いでn−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンを添加し,70℃で1時間重合した後,予め精製したイソプレン40重量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて1時間,さらに30重量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて1時間重合した。
【0032】
得られたブロック共重合体溶液の一部をサンプリングし,オクタデシル-3- (3,5-ジ-t- ブチル-4- ヒドロキシフェニル)プロピオネ−トをブロック共重合体100重量部に対して0.3重量部添加し,その後溶媒を加熱除去した(得られた共重合体をポリマ−XIIIとする)。ポリマ−XIIIは,スチレン含量が60重量%,ポリイソプレン部のビニル結合総量が40重量%,数平均分子量が52000であった。
【0033】
次に,残りのブロック共重合体溶液を用いて,ジ−p−トリスビス(1−シクロペンタジェニル)チタニウムとジブチルマグネシウムを水添触媒として,温度70℃で水素添加を行い,ポリマ−XIVを得た。ポリマ−XIVは,水素添加率が52%であった。残りの重合体溶液は,再水素添加を行い,ポリマ−XVの共重合体溶液を得た。ポリマ−XVは,水素添加率が92%であった。各サンプルのポリマ−構造を表1に示した。
【0034】
【表1】
【0035】
(2)樹脂組成物の調製と物性測定
各(a)成分,(b)成分,(c)成分を表2,表3に示した割合で配合し,30mmの2軸押出機を用いて220℃の温度で溶融混練を行い,ペレット化した。
尚,実施例及び比較例に示した物性の測定規格,試験法は以下の通りである。
得られたペレットを220℃で射出成形し,下記1〜7の各種特性を測定した。
1.引張伸び特性:ASTM D638に準拠して,射出成形試験片の引張破断点伸度を測定した。尚,引張速度は,5mm/分で行った。
2.耐熱性:ASTM D1525に準拠して,射出成形試験片の荷重1kgfでのビカット軟化点を測定し,指標とした。
【0036】
3.剛性:ASTM D790に準拠して,射出成形試験片の曲げ試験を行い,曲げ弾性率を測定した。
4.ブロック共重合体界面存在率:スチレン系樹脂相とオレフィン系樹脂相の境界面に存在するブロック共重合体中の全配合量に対する割合を以下の方法で測定,算出した。
樹脂組成物の射出成形体から成形時の樹脂の流れ方向に平行な面の超薄切片をウルトラミクロト−ムで切り出し,四酸化ルテニウムで染色し,透過型電子顕微鏡で10000倍の画像の写真を撮る。この写真の画像解析により,スチレン系樹脂相もしくはオレフィン系樹脂相に存在するブロック共重合体の面積を測定し,画像解析の対象とした全面積に対する比率(a)を算出する。さらに,樹脂組成物の配合比率から算出したブロック共重合体重量比率を(b)とすると,スチレン系樹脂相とオレフィン系樹脂相の境界面に存在するブロック共重合体の割合(c)は,((b)−(a))/(b)×100%となる。この値を指標とした。
【0037】
5.耐油性:シ−ト押出機で,樹脂組成物を1mm厚のシ−トとし,高さ2cm×縦10cm×横10cmの容器に成形し,内面に合成椰子油を塗布した後,オ−ブンで1時間加熱した際の容器の内容積の変化率が10%となる加熱温度を求めた。この温度が高い程,耐油性が良いと判断した。
6.耐熱老化性:樹脂組成物を射出成形する際,成形機内に240℃の温度下で10分間滞留させ,その後プレ−トを射出成形し,その表面状態を目視判定した。フラッシュの出方により,3段階で評価した。
○(無し)< △(少し有り) < ×(有り)
7.加工性:樹脂組成物のペレットのMFR(200℃/5Kg荷重)を測定し,その指標とした。
以下の実施例1〜7の結果を表2に示した。
【0038】
実施例1〜2,参考実施例3
(a)成分として耐衝撃性ポリスチレン70重量%,
(b)成分として(b-1)ノホモのポリプロピレン30重量%,
(c)成分に部分水素添加ブロック共重合体を配合した本発明の樹脂組成物の例である。高い引張伸び特性と剛性に加えて,耐熱性,耐油性及び耐熱老化性の優れた樹脂組成物であることがわかる。
実施例4,5
(a)成分として耐衝撃性ポリスチレン45重量%,
(b)成分として(b-1) のホモのポリプロピレン55重量%,
(c)成分に部分水素添加ブロック共重合体を配合した本発明の樹脂組成物の例である。高い引張伸び特性と剛性に加えて,耐熱性,耐油性及び耐熱老化性の優れた樹脂組成物である。
【0039】
実施例6,7
実施例1〜3と同じ配合の例であるが,実施例6は,両端のスチレン量が異なる部分水添ブロック共重合体を使用した例,実施例7は,共役ジエン化合物としてイソプレンを使用した例である。どちらの樹脂組成物も,他の実施例と同様に高い引張伸び特性と剛性に加えて,耐熱性,耐油性及び耐熱老化性を有する組成物である。
また,実施例7のMFRを測定したところ,5.5g/10分であった。これに対し,実施例7のポリマ−XIVに代えて水素添加率の高いポリマ−XVを使用した樹脂組成物のMFRは,4.9g/10分であった。本願発明の樹脂組成物が,加工性で優れていることがわかる。
本願発明の樹脂組成物の特性が優れていることは,以下の比較例と比較することにより,一層明らかとなる。以下の比較例1〜8の結果を表3に示した。
【0040】
比較例1
耐衝撃性ポリスチレン70重量%とホモのポリプロピレン30重量%の樹脂組成物で,スチレン系ブロック共重合体を配合していない組成物の例である。相溶性が悪く,引張伸び特性をはじめ耐油性も著しく劣っている。
比較例2〜6,8
耐衝撃性ポリスチレン70重量%,ホモのポリプロピレン30重量%にスチレン系ブロック共重合体を配合した組成物であるが,ブロック共重合体が本発明で特定した構造を有さないために,引張伸び特性が著しく悪い上に,各特性のバランスが低下した樹脂組成物となっている。
【0041】
比較例7
実施例4,5と同様の配合の例であるが,ブロック共重合体が本発明で特定した構造を有さないために,各特性のバランスが低下した樹脂組成物となっている。
実施例8
実施例1の(b)成分を(b-1) から(b-2) に変更して,同様な樹脂組成物を得た。
実施例1と同様に,相溶性のよい樹脂組成物が得られた。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【発明の効果】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1の熱可塑性樹脂組成物の透過型電子顕微鏡写真の1例である。プロピレン樹脂相(染色されていない,明るい相)とスチレン樹脂相(染色された,暗い相)との境界に大部分の水添ブロック共重合体(黒い筋状の層)が存在する。
Claims (6)
- (A)スチレン系樹脂95〜5重量%,(B)オレフィン系樹脂5〜95重量%の合計量100重量部に対して,(C)部分水素添加ブロック共重合体2〜30重量部を含有し,
(C)が,少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックXと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックY有し,結合ビニル芳香族化合物含有量が30〜80重量%であり,水素添加前の共役ジエンブロック中のビニル結合量が30〜80重量%であるブロック共重合体を水素添加することによって,該ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく二重結合の35%以上66%以下を飽和して得られた部分水素添加ブロック共重合体であることを特徴とする樹脂組成物。 - (C)が,少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックXと少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックYを有し,結合ビニル芳香族化合物含有量が40〜80重量%であり,水素添加前の共役ジエンブロック中のビニル結合量が30〜80重量%であるブロック共重合体を水素添加することによって,該ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく二重結合の40%以上66%以下を飽和して得られた部分水素添加ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- (C)部分水素添加ブロック共重合体中の残存ビニル結合量が,10%未満であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
- (C)部分水素添加ブロック共重合体が,X−Y−X構造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
- (C)部分水素添加ブロック共重合体中のビニル芳香族化合物がスチレンであり,共役ジエン化合物がブタジエンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
- (B)オレフィン系樹脂が,プロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
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