しかしながら、上述した従来の空気入りタイヤでは、タイヤ幅方向における中央部に主溝が配置されていることによりタイヤ幅方向の中央部付近のブロック剛性が低下するため、排水性や騒音性能を向上させつつ、操縦安定性の向上を図ることが困難なものとなっていた。また、各主溝を配置する位置によっては、主溝間に位置する各陸部のタイヤ幅方向における幅が大きく異なり、各陸部のブロック剛性に差が生じて偏摩耗が発生する虞があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、操縦安定性を確保しつつ、排水性と耐偏摩耗性とを共に向上させることのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部の表面であるトレッド面に形成される複数の溝部によって複数の陸部が区画された空気入りタイヤにおいて、前記トレッド面のタイヤ幅方向における中央部には、前記複数の陸部のうちのセンター陸部が位置しており、前記複数の溝部のうち、前記センター陸部のタイヤ幅方向の両端に隣接する前記溝部は、タイヤ幅方向に湾曲しつつタイヤ周方向に沿って形成された弧状溝がタイヤ周方向に連続して繰り返すように形成された弧状湾曲主溝として形成されており、前記複数の陸部のうち、前記弧状湾曲主溝のタイヤ幅方向外方に隣接する前記陸部は第2陸部として形成されており、前記複数の溝部のうち、前記第2陸部のタイヤ幅方向外方に隣接する前記溝部は、前記弧状湾曲主溝の溝幅と同等の溝幅で形成され、且つ、タイヤ周方向に沿って形成された第2主溝として形成されており、前記複数の陸部のうち、前記第2主溝のタイヤ幅方向外方に隣接する前記陸部は、前記第2主溝から前記トレッド面のタイヤ幅方向における端部まで形成されたショルダー陸部として形成されており、前記ショルダー陸部には、前記トレッド面のうち正規内圧で空気を充填すると共に正規荷重で負荷をかけた場合に接地する部分である接地部のタイヤ幅方向における端部である接地端が位置しており、前記センター陸部のタイヤ幅方向における幅と、前記第2陸部のタイヤ幅方向における幅と、前記ショルダー陸部の前記第2主溝側の端部から前記接地端までのタイヤ幅方向における幅とは、前記接地部のタイヤ幅方向における幅である接地幅に対する割合同士で比較した際の差が5%以下となるように形成されていることを特徴とする。
この発明では、トレッド面の中央部にセンター陸部を配置しているので、当該空気入りタイヤの接地時の中央部のブロック剛性は高くなっている。このトレッド面の中央部は、車両の走行時に接地している部分のタイヤ幅方向における中央部分に位置しており、接地荷重が大きくなり易い部分となっている。このため、この部分の剛性を向上させることにより、車両走行時の安定性を得ることができる。また、複数の溝部のうちタイヤ周方向に沿って形成された主溝は、弧状湾曲主溝と第2主溝とがそれぞれ2本ずつ形成されている。つまり、主溝は4本形成されているので、路面とトレッド面との間に位置する水を、この4本の主溝によって効果的に排水することができる。
さらに、陸部は、前記センター陸部と、弧状湾曲主溝を介してセンター陸部のタイヤ幅方向外方に隣接した第2陸部と、第2主溝を介して第2陸部のタイヤ幅方向外方に隣接したショルダー陸部と、が形成されているが、これらの各陸部のタイヤ幅方向における幅の接地幅に対する割合の差を5%以下にしている。このため、各陸部のブロック剛性の差が小さくなるので、当該空気入りタイヤを車両に装着して走行した場合における各陸部の摩耗量の差が小さくなる。これにより、偏摩耗量が発生し難くなる。これらの結果、操縦安定性を確保しつつ、排水性と耐偏摩耗性とを共に向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記複数の溝部のうち、前記第2陸部を介して隣り合う前記弧状湾曲主溝から前記第2主溝にかけて形成されると共に前記弧状湾曲主溝と前記第2主溝とに接続された前記溝部は、第2陸部ラグ溝部として形成されており、前記第2陸部ラグ溝部は、前記第2陸部に隣接しており、且つ、前記弧状湾曲主溝側の端部の溝幅よりも、前記第2主溝側の端部の溝幅の方が狭くなっていることを特徴とする。
この発明では、弧状湾曲主溝と第2主溝とに接続された第2陸部ラグ溝部を形成することにより、濡れた路面を走行した際に弧状湾曲主溝と第2主溝との間で水が流れるようにし、排水性の向上を図っている。また、第2陸部ラグ溝部の溝幅を、弧状湾曲主溝側よりも第2主溝側の方が狭くなるようにしているので、当該第2陸部ラグ溝部に接している第2陸部の大きさを、弧状湾曲主溝側よりも第2主溝側の方が大きくなるようにすることができる。これにより、第2陸部のブロック剛性を、タイヤ幅方向内方側よりもタイヤ幅方向外方側の方が高くすることができる。車両の走行時にコーナーリングをした際には、タイヤ幅方向外方側に荷重がかかり易くなるが、上記のように第2陸部のブロック剛性をタイヤ幅方向内方側よりもタイヤ幅方向外方側の方が高くなるようにすることにより、コーナーリング時などタイヤ幅方向外方側に荷重がかかった際に、その荷重を高い剛性で受けることができる。これにより、コーナーリング時の安定性を向上させることができる。これらの結果、排水性と操縦安定性とを、さらに向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記第2陸部ラグ溝部は、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾いて形成されていることを特徴とする。
この発明では、前記第2陸部ラグ溝部を、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜させているので、より確実に弧状湾曲主溝と第2主溝との間で水が流れるようにすることができる。つまり、当該空気入りタイヤは回転しながら路面に接地するが、弧状湾曲主溝と第2主溝との間を流れる水はタイヤ幅方向に移動する。このため、弧状湾曲主溝と第2主溝との間を水が流れる場合には、この水は車両の進行方向に対して斜め方向に移動することになるが、第2陸部ラグ溝部を上述したように傾斜させることにより、第2陸部ラグ溝部を通るこの水を流れ易くすることができる。この結果、より確実に排水性を向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記第2陸部ラグ溝部は、前記弧状湾曲主溝側の端部の溝幅Wkaが2〜8mmの範囲内で形成されており、且つ、前記弧状湾曲主溝側の端部の溝幅Wkaと前記第2主溝側の端部の溝幅Wkbとの関係が0.25≦(Wkb/Wka)≦0.9の範囲内となっていることを特徴とする。
この発明では、第2陸部ラグ溝部の、弧状湾曲主溝側の端部の溝幅Wkaが2〜8mmの範囲内になるように形成しているので、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させることができる。つまり、第2陸部ラグ溝部の溝幅Wkaが2mm未満の場合には、溝幅が狭すぎるため第2陸部ラグ溝部内に流れる水は少量となってしまう。また、第2陸部ラグ溝部の溝幅Wkaが8mmよりも大きい未満の場合には、第2陸部ラグ溝部の溝幅が広すぎるので第2陸部が小さくなってしまい、第2陸部のブロック剛性が低下してしまう。そこで、第2陸部ラグ溝部の溝幅Wkaが2〜8mmの範囲内になるように形成することにより、第2陸部ラグ溝部内に水が流れ易くすると共に、第2陸部の大きさを確保することにより第2陸部のブロック剛性を確保することができる。これにより、第2陸部ラグ溝部内に水が流れ易くなるので排水性が向上し、第2陸部のブロック剛性が確保されるので、操縦安定性を確保することができる。この結果、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させることができる。
また、第2陸部ラグ溝部の弧状湾曲主溝側の端部の溝幅Wkaと、当該第2陸部ラグ溝部の第2主溝側の端部の溝幅Wkbとの関係が0.25≦(Wkb/Wka)≦0.9の範囲内になるようにすることにより、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させることができる。つまり、(Wkb/Wka)が0.25未満の場合には、第2陸部ラグ溝部の第2主溝側の端部の溝幅Wkbが狭すぎるため、第2陸部ラグ溝部内を水が流れ難くなる。また、(Wkb/Wka)が0.9よりも大きい場合には、第2陸部のタイヤ幅方向外方側の大きさが小さくなり過ぎる虞があり、これによって第2陸部のブロック剛性が低くなる虞がある。そこで、第2陸部ラグ溝部の弧状湾曲主溝側の端部の溝幅Wkaと、当該第2陸部ラグ溝部の第2主溝側の端部の溝幅Wkbとの関係が0.25≦(Wkb/Wka)≦0.9の範囲内になるようにすることにより、第2陸部ラグ溝部内に効果的に水が流れるようにしつつ、第2陸部の大きさを確保してブロック剛性を確保することができる。これにより、排水性を向上させると共に、第2陸部のブロック剛性が確保されることによって操縦安定性を確保することができる。この結果、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記弧状湾曲主溝は、タイヤ周方向にシースルーとなって形成されていることを特徴とする。
この発明では、弧状湾曲主溝をシースルー形状にすることにより、弧状湾曲主溝内に水が流れる際の排水抵抗を低減している。これにより、路面上の水は弧状湾曲主溝内を流れ易くなる。この結果、より確実に排水性を向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記弧状湾曲主溝と前記第2主溝とは、共に溝幅が前記接地幅に対して3〜10%の範囲内となって形成されていることを特徴とする。
この発明では、弧状湾曲主溝と第2主溝とを、共に溝幅が接地幅に対して3〜10%の範囲内になるように形成することにより、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させている。つまり、これらの主溝の溝幅を接地幅に対して3%未満にした場合には、溝幅が狭すぎるため水が流れ難くなり、排水性が低下する虞がある。また、これらの主溝の溝幅を接地幅に対して10%よりも広くした場合には、溝幅が広くなり過ぎることにより陸部が小さくなり過ぎ、陸部のブロック剛性が低くなってしまう虞がある。このように陸部のブロック剛性が低くなると、操縦安定性が低下する虞がある。そこで、弧状湾曲主溝と第2主溝とを、共に溝幅が接地幅に対して3〜10%の範囲内になるように形成することにより、各主溝内を水が流れ易くなると共に、陸部の大きさを確保して陸部のブロック剛性を確保することができる。これにより、排水性が向上し、また、操縦安定性が向上する。これらの結果、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記弧状湾曲主溝は、前記弧状湾曲主溝を形成する各前記弧状溝のタイヤ周方向における弧状のピッチ長さが、前記弧状湾曲主溝の全周長の2〜5%の範囲内となって形成されていることを特徴とする。
この発明では、弧状湾曲主溝を形成する各弧状溝のタイヤ周方向における長さを、当該弧状湾曲主溝の全周長の2〜5%の範囲内になるように形成することにより、より確実に操縦安定性を確保すると共に、騒音の低減を図ることができる。つまり、弧状溝のタイヤ周方向における長さを、弧状湾曲主溝の全周長の2%未満にした場合には、陸部における弧状湾曲主溝に隣接する部分のタイヤ周方向の長さが短くなり過ぎる虞があり、この場合、この部分のブロック剛性が低下し、このブロック剛性の低下によって操縦安定性が低下する虞がある。また、弧状湾曲主溝は弧状溝が繰り返し形成されることによりタイヤ幅方向に波打つように形成されているが、このように主溝を波形状に形成することにより、車両走行時に溝部内で発生する音の周波数が分散されるので、気柱共鳴音が発生し難くなる。しかし、弧状溝のタイヤ周方向における長さを、弧状湾曲主溝の全周長の5%よりも長くした場合には、当該弧状湾曲主溝内で発生する音の周波数が分散されず、気柱共鳴音の発生を低減し難くなる虞がある。そこで、弧状湾曲主溝を形成する各弧状溝のタイヤ周方向における長さを、当該弧状湾曲主溝の全周長の2〜5%の範囲内になるように形成することにより、陸部のブロック剛性を確保できるので操縦安定性が確保でき、また、弧状湾曲主溝で発生する音の周波数を分散して気柱共鳴音を、より確実に低減できる。この結果、より確実に操縦安定性を確保すると共に、騒音の低減を図ることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記第2陸部ラグ溝部のうち、タイヤ周方向において隣り合う前記第2陸部ラグ溝部同士の間隔は第2陸部ラグ溝部ピッチ長となっており、且つ、前記第2陸部ラグ溝部は、それぞれ長さが異なる複数の前記第2陸部ラグ溝部ピッチ長によって配設されており、前記ショルダー部ラグ溝部のうち、タイヤ周方向において隣り合う前記ショルダー部ラグ溝部同士の間隔はショルダー部ラグ溝部ピッチ長となっており、且つ、前記ショルダー部ラグ溝部は、それぞれ長さが異なる複数の前記ショルダー部ラグ溝部ピッチ長によって配設されていることを特徴とする。
この発明では、複数の第2陸部ラグ溝部は複数の第2陸部ラグ溝部ピッチ長によって配設されており、複数のショルダー部ラグ溝部は複数のショルダー部ラグ溝部ピッチ長によって配設されている。このため、空気入りタイヤが転動した際に、第2陸部やショルダー陸部が路面に接地する場合や路面から離れる場合の間隔が、当該空気入りタイヤの1周において複数の長さの間隔になる。これにより、路面に接地したり離れたりする際の音が特定の周波数によって発生せず、複数の種類の周波数によって発生し、特定の周波数の音が強く発生することを抑制できる。この結果、パターンノイズを低減することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記第2陸部ラグ溝部は、それぞれ長さの異なる複数の前記第2陸部ラグ溝部ピッチ長がタイヤ周方向において周期的に繰り返されるように設けられており、前記ショルダー部ラグ溝部は、それぞれ長さの異なる複数の前記ショルダー部ラグ溝部ピッチ長がタイヤ周方向において周期的に繰り返されるように設けられていることを特徴とする。
この発明では、第2陸部ラグ溝部ピッチ長とショルダー部ラグ溝部ピッチ長とを周期的に繰り返しているので、空気入りタイヤの転動時に発生する音の周波数を容易に設定することができる。この結果、より確実にパターンノイズを低減することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記第2主溝を介して隣り合う前記第2陸部或いは前記ショルダー陸部に隣接する前記第2陸部ラグ溝部と前記ショルダー部ラグ溝部とは、1つ或いは連続した複数の前記第2陸部ラグ溝部ピッチ長の範囲内に位置する前記第2陸部と、当該第2陸部とタイヤ周方向における位置が同じ位置となる部分を有する1つ或いは連続した複数の前記ショルダー部ラグ溝部ピッチ長の範囲内に位置する前記ショルダー陸部と、を1つの陸部パターンとして前記陸部パターンが複数形成されるように設けられていることを特徴とする。
この発明では、第2陸部とショルダー陸部とで1つの陸部パターンを形成するので、空気入りタイヤの転動時に発生する音の周波数を設定する際に、さらに容易に設定することができる。この結果、より確実にパターンノイズを低減することができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記ショルダー部ラグ溝部は、前記第2主溝に接続されていることを特徴とする。
この発明では、ショルダー部ラグ溝部を第2主溝に接続しているので、濡れた路面を走行した際に第2主溝内を流れる水をショルダー部ラグ溝部に流すことができ、排水し易くすることができる。この結果、より確実に排水性を向上させることができる。
本発明にかかる空気入りタイヤは、操縦安定性を確保しつつ、排水性と耐偏摩耗性とを共に向上させることができる、という効果を奏する。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。また、タイヤ周方向に沿った方向に形成された溝部を有する空気入りタイヤは、リブパターンやリブラグパターン等を有する空気入りタイヤがあるが、以下の説明では、リブ基調のトレッドパターンを有する空気入りタイヤについて説明する。
(実施の形態)
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内方とはタイヤ幅方向において赤道面に向かう方向、タイヤ幅方向外方とは、タイヤ幅方向において赤道面に向かう方向の反対方向をいう。また、タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいい、タイヤ周方向とは、前記回転軸を回転の中心となる軸として回転する方向をいう。図1は、本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部を示す図である。同図に示す空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側にトレッド部4が形成されており、このトレッド部4の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)が走行した場合に、路面と接触する部分はトレッド面5として形成されている。このトレッド面5には、複数の溝部が形成されており、この複数の溝部によってトレッド面には複数の陸部が区画されている。
この複数の溝部のうち、所定の幅でほぼタイヤ周方向に沿って形成されている溝部は主溝10として形成されている。この主溝10は複数形成されており、複数の主溝10は、全て同程度の溝幅でほぼ平行に4本形成されている。さらに、これらの主溝10の位置は、赤道面40を中心として赤道面40の両側に2本ずつ、ほぼ対称な位置に配置されている。なお、これらの主溝10は、正確にタイヤ周方向に沿って形成されていなくてもよい。各主溝10は、概ねタイヤ周方向に形成されていればよく、タイヤ幅方向に斜めに形成されている場合や、曲線で形成されていてもよい。
前記トレッド面5のタイヤ幅方向における中央部、即ち、赤道面40が位置している部分には、前記複数の陸部のうちのセンター陸部であるセンターリブ21が位置している。このセンターリブ21は、トレッド面5のタイヤ幅方向の中央部に、赤道面40に沿ってタイヤ周方向に形成されている。
前記センターリブ21のタイヤ幅方向の両端には、前記主溝のうちのセンター側主溝11がセンターリブ21に隣接して配設されている。このセンター側主溝11は、複数の弧状溝14がタイヤ周方向に連続して繰り返すように形成された弧状湾曲主溝として形成されている。前記弧状溝14はタイヤ幅方向内方に凸となって湾曲しつつタイヤ周方向に沿って形成された形状となっている。当該センター側主溝11は、この弧状溝14がタイヤ周方向に連続して形成された弧状湾曲主溝として形成されているため、タイヤ周方向に沿って形成されつつ、タイヤ幅方向内方に凸となって湾曲した弧状の形状の溝が繰り返し形成された形状となっている。また、センター側主溝11のうち、弧状溝14が接続されている部分、即ち、タイヤ幅方向外方に凸となっている部分は谷部15となっているが、タイヤ幅方向においてセンターリブ21の両端に位置する2つのセンター側主溝11は、それぞれの谷部15の位置が、タイヤ周方向において異なった位置となって形成されている。
また、このような形状で形成されているセンター側主溝11は、タイヤ周方向にシースルーとなっている。つまり、センター側主溝11のタイヤ幅方向外方側の溝壁16は、全ての部分が当該センター側主溝11のタイヤ幅方向内方側の溝壁16のいずれの部分よりもタイヤ幅方向外方に位置している。
なお、上述したように、センター側主溝11は弧状溝14がタイヤ周方向に連続して繰り返すように形成されているが、各弧状溝14のタイヤ周方向おける弧状のピッチ長さL、つまり、タイヤ周方向において隣り合う谷部15から谷部15までタイヤ周方向の長さLは、当該センター側主溝11の全周長の2〜5%の範囲内となって形成されていることが好ましい。
前記センター側主溝11のタイヤ幅方向外方には、前記複数の陸部のうちの第2陸部であるセカンドリブ22が形成されている。このセカンドリブ22は、センター側主溝11と、前記主溝10のうちセンター側主溝11よりもタイヤ幅方向外方に位置する第2主溝であるショルダー側主溝12との間に位置しており、これらの主溝10に隣接している。
また、セカンドリブ22を介して隣り合うセンター側主溝11とショルダー側主溝12との間には、これらの間にかけて形成された第2陸部ラグ溝部であるセカンドリブ連通傾斜溝32が配置されている。このセカンドリブ連通傾斜溝32は、センター側主溝11とショルダー側主溝12とに接続されており、また、タイヤ周方向においてセカンドリブ22と隣接している。また、このセカンドリブ連通傾斜溝32は、センター側主溝11とショルダー側主溝12との間にかけて形成されているため、略タイヤ幅方向に向けて形成されており、詳細には、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾いて形成されている。
このように形成されたセカンドリブ連通傾斜溝32は、タイヤ周方向に複数設けられており、タイヤ周方向におけるセカンドリブ連通傾斜溝32間には、セカンドリブ22に隣接したセカンドリブ閉止傾斜溝33が形成されている。このセカンドリブ閉止傾斜溝33は、ショルダー側主溝12に接続されており、ショルダー側主溝12からタイヤ幅方向内方に向けて形成されているが、このセカンドリブ閉止傾斜溝33はセカンドリブ連通傾斜溝32とは異なり、センター側主溝11には接続されていない。このため、セカンドリブ閉止傾斜溝33のタイヤ幅方向内方側の端部はセンター側主溝11よりもタイヤ幅方向外方側に位置しており、セカンドリブ閉止傾斜溝33とセンター側主溝11との間には、セカンドリブ22が位置している。また、セカンドリブ閉止傾斜溝33は、セカンドリブ連通傾斜溝32の傾斜角度と同程度の傾斜角度でタイヤ周方向或いはタイヤ幅方向に対して傾いて形成されている。このセカンドリブ閉止傾斜溝33もセカンドリブ連通傾斜溝32と同様にタイヤ周方向に複数設けられており、セカンドリブ閉止傾斜溝33とセカンドリブ連通傾斜溝32とは、タイヤ周方向において交互に配置されている。
前記ショルダー側主溝12のタイヤ幅方向外方には、当該ショルダー側主溝12に隣接するショルダー陸部であるショルダーリブ23が形成されている。このショルダーリブ23は、ショルダー側主溝12から、トレッド面5のタイヤ幅方向における端部まで形成されている。
また、ショルダー側主溝12よりもタイヤ幅方向外方側の位置には、ショルダー側主溝12からタイヤ幅方向外方に向けて形成されたショルダー部ラグ溝部であるショルダーリブ傾斜溝34が形成されている。このショルダーリブ傾斜溝34は、ショルダー側主溝12に接続されていると共に、ショルダーリブ23に隣接しつつ当該ショルダーリブ23のタイヤ幅方向外方の端部まで形成されており、さらに、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾いて形成されている。また、このショルダーリブ傾斜溝34は、セカンドリブ連通傾斜溝32と同様にタイヤ周方向に複数設けられている。
このショルダーリブ傾斜溝34のうち、タイヤ周方向において隣り合うショルダーリブ傾斜溝34同士の間隔はショルダー部ラグ溝部ピッチ長となるショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nとなっている。ショルダーリブ傾斜溝34は、それぞれ長さが異なる複数のショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nによってタイヤ周方向に並んで配設されており、長さが異なる複数のショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nがタイヤ周方向において周期的に繰り返されるように設けられている。同様に、前記セカンドリブ連通傾斜溝32のうち、タイヤ周方向において隣り合うセカンドリブ連通傾斜溝32同士の間隔は第2陸部ラグ溝部ピッチ長となるセカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mとなっている。セカンドリブ連通傾斜溝32は、それぞれ長さが異なる複数のセカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mによってタイヤ周方向に並んで配設されており、長さが異なる複数のセカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mがタイヤ周方向において周期的に繰り返されるように設けられている。
また、ショルダー側主溝12を介して隣り合うセカンドリブ22或いはショルダーリブ23は、これらに隣接するセカンドリブ連通傾斜溝32やショルダーリブ傾斜溝34によって所定の陸部パターンであるブロックパターンを有して設けられている。つまり、1つのセカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mの範囲内に位置するセカンドリブ22と、当該セカンドリブ22とタイヤ周方向における位置が同じ位置となる部分を有する連続した2つのショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nの範囲内に位置するショルダーリブ23とは、1つのブロックパターンとなっている。セカンドリブ連通傾斜溝32及びショルダーリブ傾斜溝34は、複数の長さのセカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mや、複数の長さのショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nによって配設されているため、セカンドリブ22及びショルダーリブ23によるブロックパターンは、複数の種類の形状で形成されている。
このようにトレッドパターンが形成される空気入りタイヤ1が接地した場合には、接地部のタイヤ幅方向における端部である接地端8は、ショルダーリブ23内に位置する。また、この接地端8からショルダーリブ23のタイヤ幅方向内方側の端部まで幅と、前記センターリブ21のタイヤ幅方向における幅と、セカンドリブ22のタイヤ幅方向における幅とは、同程度になっている。詳細には、センターリブ21のタイヤ幅方向における幅をW1とし、セカンドリブ22のタイヤ幅方向における幅をW2とし、ショルダーリブのうち接地端8よりもタイヤ幅方向内方側に位置する部分のタイヤ幅方向における幅をW3とした場合において、接地部のタイヤ幅方向における幅である接地幅Wに対するW1、W2、W3の割合の差は、5%以下となっている。つまり、センターリブ21とセカンドリブ22とショルダーリブ23とは、(W1/W)と(W2/W)と(W3/W)とのそれぞれ差が5%以下となるように形成されている。なお、これらのW1、W2、W3は、それぞれセンターリブ21、セカンドリブ22、ショルダーリブ23のタイヤ幅方向における幅のうち、もっとも広い部分の幅になっている。
また、ここでいう接地幅Wとは、空気入りタイヤ1を正規リムにリム組みし、且つ、正規内圧を充填するとともに正規荷重をかけたときにこの空気入りタイヤ1が路面と接地する際のタイヤ幅方向の幅をいう。ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいはETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。ただし、乗用車用の空気入りタイヤ1の場合には、180kPaである。また、正規荷重とは、JATMAで規定する「最大負荷能力」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「LOAD CAPACITY」である。ただし、乗用車用の空気入りタイヤ1の場合には、これらの88%荷重である。
また、センター側主溝11の溝幅とショルダー側主溝12の溝幅とは、共に接地幅Wの3〜10%の範囲内になるように形成されている。つまり、センター側主溝11のタイヤ幅方向における溝幅をWaとし、ショルダー側主溝12のタイヤ幅方向における溝幅をWbとした場合に、(Wa/W)及び(Wb/W)は、共に3〜10%の範囲内となっている。なお、このセンター側主溝11の溝幅Waとショルダー側主溝12の溝幅Wbとは、共にそれぞれの主溝10の溝幅のうち、最も広い部分の溝幅となっている。
図2は、図1のA部詳細図である。また、前記セカンドリブ連通傾斜溝32は、センター側主溝11側の端部である赤道面側端部35の溝幅よりも、ショルダー側主溝12側の端部であるショルダー側端部36の溝幅の方が狭くなっている。なお、このセカンドリブ連通傾斜溝32は、赤道面側端部35の溝幅が2〜8mmの範囲内で形成され、さらに、赤道面側端部35の溝幅をWkaとし、ショルダー側端部36の溝幅をWkbとした場合に、これらの関係が0.25≦(Wkb/Wka)≦0.9の範囲内となるように形成されるのが好ましい。
以上の実施の形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、路面にはトレッド面5が接地する。その際に、タイヤ幅方向の中央部、つまり、赤道面40付近は接地荷重が大きくなり易いが、この部分にはセンターリブ21が配置されている。このため、赤道面40付近の剛性は高くなっており、タイヤ幅方向におけるトレッド面5の中央付近は変形し難くなっている。これにより、車両を走行させた際の安定性を得ることができる。
また、タイヤ周方向に沿って形成される主溝10は、センター側主溝11とショルダー側主溝12とがそれぞれ2本ずつ形成されており、合計で4本形成されている。車両が走行をする際には、雨天時など路面上に水が存在する場合があるが、このように濡れた路面を走行する場合でも、上記のようにタイヤ周方向に形成された主溝10が4本形成されているので、路面とトレッド面5との間に位置する水を、4本の主溝10によって効果的に排水することができる。
さらに、トレッド面5には、センターリブ21と、セカンドリブ22と、ショルダーリブ23とが配設されており、これらのタイヤ幅方向における幅を同程度の幅にしている。つまり、接地幅Wに対するセンターリブ21の幅W1の割合と、接地幅Wに対するセカンドリブ22の幅W2の割合と、接地幅Wに対するショルダーリブ23の接地部内の幅W3の割合とのそれぞれの差が5%以下になるようにしている。これにより、各陸部のブロック剛性の差が小さくなるので、当該空気入りタイヤ1を装着した車両が走行した際のセンターリブ21、セカンドリブ22及びショルダーリブ23の摩耗量の差が小さくなる。これにより、偏摩耗量が発生し難くなる。これらの結果、操縦安定性を確保しつつ、排水性と耐偏摩耗性とを共に向上させることができる。
また、センター側主溝11は、弧状溝14をタイヤ周方向に連続的に繰り返すように形成されているので、車両の走行時にトレッド面5が接地した場合でも、センター側主溝11内では接地時に発生する音の周波数が分散されるので、気柱共鳴が発生し難くなる。この結果、当該空気入りタイヤ1を装着した車両の走行時の騒音の低減を図ることができる。また、センター側主溝11は上記のような形状で形成されているので、センター側主溝11の溝壁16とトレッド面5とが交差する部分の長さ、つまり、センターリブ21及びセカンドリブ22において、実際に路面に接地する部分のセンター側主溝11側の端部の、センター側主溝11に沿った方向の長さが、主溝10がストレートな形状で形成されている場合と比較して長くなっている。この部分はトレッド面5とセンター側主溝11とが交差しているためエッジとして形成されているが、このエッジが長くなることにより、エッジ量が増え、濡れた路面を走行する場合でもグリップし易くなる。この結果、濡れた路面を走行する際の操縦安定性の向上を図ることができる。
また、センター側主溝11をシースルー形状になっているので、センター側主溝11内に水が流れることによってトレッド面5と路面との間の水を排水する場合に、センター側主溝11内を流れる水の排水抵抗を低減することができる。これにより、路面上の水はセンター側主溝11を通って排水され易くなる。この結果、より確実に排水性を向上させることができる。
また、センター側主溝11を形成する各弧状溝14のタイヤ周方向における弧状のピッチ長さL、或いはタイヤ周方向において隣り合う前記谷部15から谷部15までの長さLが、当該センター側主溝11の全周長の2〜5%の範囲内になるように形成されているので、より確実に操縦安定性を確保すると共に、騒音の低減を図ることができる。つまり、センター側主溝11に隣接するセンターリブ21やセカンドリブ22は、センター側主溝11に隣接する側がタイヤ幅方向に凹凸を有するように形成されているが、谷部15から谷部15までの長さLがセンター側主溝11の全周長の2%以上になるように形成することにより、この凹凸のタイヤ周方向ピッチが小さくなり過ぎることを抑制できる。これにより、センターリブ21やセカンドリブ22においてセンター側主溝11近傍に位置する部分のブロック剛性を確保でき、操縦安定性を確保できる。また、谷部15から谷部15までの長さLがセンター側主溝11の全周長の5%以下になるように形成することにより、車両の走行時にセンター側主溝11内で発生する音の周波数を、より確実に分散し、気柱共鳴をより確実に抑制することができる。これらの結果、センター側主溝11の谷部15から谷部15までの長さLがセンター側主溝11の全周長の2〜5%の範囲内になるように形成することにより、より確実に操縦安定性を確保すると共に、騒音の低減を図ることができる。
また、センター側主溝11の溝幅Waとショルダー側主溝12の溝幅Wbとが、共に接地幅Wに対して3〜10%の範囲内となるように形成しているので、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させることができる。つまり、これらの溝幅Wa、Wbが接地幅Wの3%以上になるように形成することにより、容易に排水をするための溝幅を確保することができる。また、溝幅Wa、Wbが接地幅Wの10%以下になるように形成することにより、溝幅が広くなり過ぎることにより、センター側主溝11やショルダー側主溝12に隣接する各陸部の大きさが小さくなり過ぎ、ブロック剛性が低くなってしまう事を抑制できる。従って、センター側主溝11の溝幅Waとショルダー側主溝12の溝幅Wbとが、共に接地幅Wに対して3〜10%の範囲内となるように形成することにより、排水性をより確実に向上させることができ、また、陸部のブロック剛性の低下が抑制されることにより操縦安定性を得ることができる。この結果、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させることができる。
また、センター側主溝11とショルダー側主溝12との間に、双方に接続されたセカンドリブ連通傾斜溝32を設けているので、センター側主溝11とショルダー側主溝12との間で水を流すことができ、より確実に排水性を向上させることができる。また、セカンドリブ連通傾斜溝32は、赤道面側端部35の溝幅よりもショルダー側端部36の溝幅の方が狭くなっているので、当該セカンドリブ連通傾斜溝32に隣接するセカンドリブ22におけるタイヤ幅方向外方側のブロック剛性を向上させることができる。これにより、コーナーリング時などタイヤ幅方向外方に荷重がかかった場合でも、その荷重を高い剛性で受けることができる。これにより、コーナーリング時の安定性を向上させることができる。これらの結果、排水性と操縦安定性とを、さらに向上させることができる。
また、セカンドリブ連通傾斜溝32は、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向の方向に傾斜しているので、空気入りタイヤ1が回転をしながらセンター側主溝11とショルダー側主溝12との間でセカンドリブ連通傾斜溝32を通って水が流れる場合に、セカンドリブ連通傾斜溝32内を水が流れ易くなる。つまり、空気入りタイヤ1が回転をしながらセンター側主溝11とショルダー側主溝12との間で水が流れる場合には、水はタイヤ周方向とタイヤ幅方向とに同時に進むことになるので、この水は車両の進行方向に対して斜め方向に流れることになる。このため、セカンドリブ連通傾斜溝32をタイヤ幅方向に対してタイヤ周方向の方向に傾斜させることにより、セカンドリブ連通傾斜溝32内を流れる水を流し易くすることができる。この結果、より確実に排水性を向上させることができる。
また、セカンドリブ連通傾斜溝32の赤道面側端部35の溝幅Wkaが2〜8mmの範囲内になるように形成されているので、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させることができる。つまり、セカンドリブ連通傾斜溝32の赤道面側端部35の溝幅Wkaが2mm以上になるように形成することにより、セカンドリブ連通傾斜溝32内に容易に水が流れるようにすることができる。また、セカンドリブ連通傾斜溝32の赤道面側端部35の溝幅Wkaが8mm以下になるように形成することにより、セカンドリブ連通傾斜溝32の溝幅が広くなり過ぎることを抑制でき、セカンドリブ連通傾斜溝32の溝幅が広くなり過ぎることに起因してセカンドリブ22が小さくなり過ぎてブロック剛性が低くなり過ぎること抑制することができる。従って、セカンドリブ連通傾斜溝32の赤道面側端部35の溝幅Wkaが2〜8mmの範囲内になるように形成することにより、より確実に排水性を向上させることができ、また、セカンドリブ22のブロック剛性を確保することができる。この結果、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させることができる。
また、セカンドリブ連通傾斜溝32の赤道面側端部35の溝幅Wkaと、ショルダー側端部36の溝幅Wkbとの関係が0.25≦(Wkb/Wka)≦0.9の範囲内になるように形成されているので、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させることができる。つまり、(Wkb/Wka)が0.25以上になるように形成することにより、ショルダー側端部36の溝幅Wkbが狭くなり過ぎることを抑制でき、セカンドリブ連通傾斜溝32内に水が容易に流れるようにすることができる。また、(Wkb/Wka)が0.9以上になるように形成することにより、セカンドリブ連通傾斜溝32のショルダー側端部36の溝幅が広くなり過ぎることに起因して、セカンドリブ22におけるタイヤ幅方向外方側のブロック剛性が低くなり過ぎることを抑制できる。従って、セカンドリブ連通傾斜溝32の赤道面側端部35の溝幅Wkaと、ショルダー側端部36の溝幅Wkbとの関係が0.25≦(Wkb/Wka)≦0.9の範囲内になるように形成することにより、より確実に排水性を向上させることができ、また、セカンドリブ22のブロック剛性を確保することができる。この結果、より確実に操縦安定性を確保しつつ排水性を向上させることができる。
また、セカンドリブ連通傾斜溝32は、それぞれ長さの異なる複数のセカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mによって配設され、ショルダーリブ傾斜溝34は、それぞれ長さの異なる複数のショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nによって配設されている。このため、空気入りタイヤが転動した際に、セカンドリブ22やショルダーリブ23が路面に接地する場合や路面から離れる場合の間隔が、セカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mやショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nの長さに応じて異なっている。これにより、当該空気入りタイヤ1の1周において、セカンドリブ22やショルダーリブ23の路面への接地等の間隔が複数の長さの間隔になる。このようにセカンドリブ22やショルダーリブ23が路面に接地する場合や路面から離れる場合には音が発生するが、この音は、接地等の間隔が同程度の場合には、同程度の高さの音、つまり、同程度の周波数の音になる。そこで、セカンドリブ22やショルダーリブ23の路面への接地等の間隔を複数の長さにすることにより、路面への接地する際等の音が特定の周波数によって発生せず、複数の種類の周波数によって発生し、特定の周波数の音が強く発生することを抑制できる。この結果、パターンノイズを低減することができる。
また、セカンドリブ連通傾斜溝32は、セカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mを周期的に繰り返すように形成されており、ショルダーリブ傾斜溝34は、ショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nを周期的に繰り返すように形成されている。これにより、空気入りタイヤの転動時に発生する音の周波数を容易に設定することができる。この結果、より確実にパターンノイズを低減することができる。
また、セカンドリブ22とショルダーリブ23とで1つのブロックパターンを形成しており、また、複数の長さのセカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mと複数の長さのショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nとによってブロックパターンが複数の形状になるように形成することにより、空気入りタイヤ1の転動時に発生する音の周波数を、さらに容易に設定することができる。この結果、より確実にパターンノイズを低減することができる。
また、ショルダーリブ傾斜溝34はショルダー側主溝12に接続されているので、濡れた路面を走行した際にショルダー側主溝12内を流れる水を、ショルダーリブ傾斜溝34に流し、ショルダーリブ傾斜溝34からタイヤ幅方向外方の方向に排水することができる。これにより、ショルダー側主溝12内を流れる水を排水し易くすることができる。この結果、より確実に排水性を向上させることができる。
図3は、実施の形態の空気入りタイヤの変形例を示す図である。なお、上述した空気入りタイヤ1では、トレッド面5のタイヤ幅方向における中央部にはセンターリブ21が配置されており、タイヤ幅方向の中央部或いは赤道面40上には溝などは形成されていないが、開口面積が小さく、深さが浅いものであれば、センターリブ21には溝や凹みなどを形成してもよい。例えば、図3に示すように、トレッド面5のタイヤ幅方向における中央部にセンターリブ21を配置し、当該センターリブ21にタイヤ周方向に沿って形成された補助溝50を設けてもよい。なお、ここでいう補助溝50とは、溝深さが前記主溝10の溝深さよりも1.6mm以上浅くなっており、溝幅は複数の主溝10のうち最も溝幅が広い主溝10の溝幅の40%以下の溝をいう。このような補助溝50をセンターリブ21に形成した場合でも、溝深さが浅く、溝幅が狭いので、センターリブ21のブロック剛性の低下は少ないため、操縦安定性を確保することができる。即ち、実質的にセンターリブ21のブロック剛性には影響が少ない溝や凹みであれば、センターリブ21はこれらの溝や凹みなどを形成してもよい。
また、セカンドリブ連通傾斜溝32やショルダーリブ傾斜溝34は、セカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mやショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nが周期的に繰り返されるように設けられず、異なる長さのセカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mやショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nがランダムになるように設けられていてもよい。また、セカンドリブ連通傾斜溝32やショルダーリブ傾斜溝34は、セカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mとショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nとで関連性を持たせて、セカンドリブ22とショルダーリブ23とでブロックパターンを形成するような関係にはせず、セカンドリブ連通傾斜溝32のセカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mと、ショルダーリブ傾斜溝34のショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nとは独立していてもよい。これらのように形成した場合でも、セカンドリブ連通傾斜溝32やショルダーリブ傾斜溝34を、それぞれ長さの異なる複数のセカンドリブ連通傾斜溝ピッチ長Mや、それぞれ長さの異なるショルダーリブ傾斜溝ピッチ長Nで形成することにより、パターンノイズを低減することができる。
以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来の空気入りタイヤ1と本発明の空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験は、操縦安定性、耐偏摩耗性及び排水性の3項目について行なった。
試験方法は、205/50R16サイズの空気入りタイヤ1を16×6.5JJのリムに組み付けて内圧を180kPaに設定し、エンジン排気量1800ccの後輪駆動の車両に装着して、この車両を走行させることによって行った。各試験項目の評価方法は、操縦安定性については、この車両で濡れた路面も含む舗装路を走行し、その際の操縦安定性をドライバーのフィーリングにて評価し、後述する比較例1及び比較例3の操縦安定性を100とした指数で評価した。指数が大きい程操縦安定性が優れている。耐偏摩耗性については、上記の車両で舗装路を8000km走行して、その際の偏摩耗量を測定し、後述する比較例2の耐偏摩耗性を100とした指数で評価した。指数が大きい程耐偏摩耗性が優れている。排水性ついては、直進ハイドロプレーニング性能にて評価する。具体的には、上記の車両で水深10mm±1mmのハイドロプールに高速で進入し、タイヤのスリップ率が10%に至ったときの速度にて比較する。この結果を、後述する比較例3の排水性を100とした指数で評価した。指数が大きい程排水性が優れている。
試験をする空気入りタイヤ1は、本発明が6種類、そして、本発明と比較する比較例の4種類を、上記の方法で試験する。各評価試験のうち、操縦安定性についての評価試験では、比較例1と本発明1とを比較している。また、耐偏摩耗性についての評価試験では、比較例2と本発明2、3を比較している。また、排水性についての評価試験では、比較例3、4と、本発明4〜6を比較しており、また、この試験では、濡れた路面を走行した際の操縦安定性についても評価している。
このように評価試験を行う各空気入りタイヤ1のうち、本発明1〜6の空気入りタイヤ1には、センター側主溝11、ショルダー側主溝12、セカンドリブ連通傾斜溝32、ショルダーリブ傾斜溝34が形成されている。また、これらの各溝部の溝幅は、センター側主溝11の溝幅Waは9.2mm、ショルダー側主溝12の溝幅Wbは8.9mm、セカンドリブ連通傾斜溝32の赤道面側端部35の溝幅Wkaは4mm、セカンドリブ連通傾斜溝32のショルダー側端部36の溝幅Wkbは1.5mmとなっている。また、各溝部の溝深さは、センター側主溝11及びショルダー側主溝12は共に8mm、セカンドリブ連通傾斜溝32及びショルダーリブ傾斜溝34は共に6.3mmとなっている。さらに、セカンドリブ連通傾斜溝32及びショルダーリブ傾斜溝34の、タイヤ周方向に対するタイヤ幅方向への傾斜角度は、セカンドリブ連通傾斜溝32では55°、ショルダーリブ傾斜溝34では72°になっている。なお、これらの各数値は、評価試験を行った空気入りタイヤ1における数値であり、本発明に係る空気入りタイヤ1の各数値は、これらの数値には限定されない。
また、操縦安定性の評価試験を行う比較例1の空気入りタイヤ1は、トレッド面5のタイヤ幅方向における中心部、或いは赤道面40上にタイヤ周方向に沿って形成されたセンター溝が設けられている。これに対し、本発明1では、タイヤ幅方向における中央部には、センター溝は形成されておらず、この部分には前記センターリブ21が配設されている。
また、耐偏摩耗性の評価試験を行う比較例2及び本発明2、3の空気入りタイヤ1には、センターリブ21、セカンドリブ22、ショルダーリブ23が設けられており、空気入りタイヤ1ごとに接地幅に対するこれらの陸部のタイヤ幅方向における幅の割合が異なっている。これらの陸部の幅の割合は、センターリブ21の幅をW1、セカンドリブ22の幅をW2、ショルダーリブ23の幅をW3、接地幅をWとした場合に、比較例2では、(W1/W)が10%、(W2/W)が18%、(W3/W)が15%となっている。これに対し、本発明2では、(W1/W)が16%、(W2/W)が15%、(W3/W)が15%となっており、本発明3では、(W1/W)が12%、(W2/W)が17%、(W3/W)が15%となっている。
また、排水性及び濡れた路面での操縦安定性の評価試験を行う比較例3、4の空気入りタイヤ1には、本発明4〜6の空気入りタイヤ1と同様に複数の主溝10が形成されている。また、これらの複数の主溝10は、空気入りタイヤ1ごとに接地幅Wに対するタイヤ幅方向における溝幅の割合が異なっている。また、比較例3の空気入りタイヤ1には、センター側主溝11とショルダー側主溝12に加え、タイヤ幅方向における中心部にセンター溝が形成されている。
これらの主溝10の溝幅の接地幅Wに対する割合は、センター側主溝11の溝幅をWa、ショルダー側主溝12の溝幅をWbとし、また、比較例3のセンター溝の溝幅をWcとした場合に、比較例3では、(Wc/W)が8%、(Wa/W)が7%、(Wb/W)が1%になっている。また、比較例4では、(Wa/W)が6%、(Wb/W)6%となっている。これに対し、本発明4では、(Wa/W)が6%、(Wb/W)6%となっており、本発明5では、(Wa/W)が8%、(Wb/W)4%となっており、本発明6では、(Wa/W)が6%、(Wb/W)6%となっている。また、比較例3及び本発明4〜6では、主溝10に弧状溝14が形成されているが、比較例4では、主溝10には弧状溝14が形成されていない。さらに、比較例3及び本発明4、5では、弧状溝14が形成されている主溝10はシースルーになっているが、本発明6では、弧状溝14が形成されている主溝10はシースルーになっていない。
これらの比較例1〜4及び本発明1〜6の空気入りタイヤ1を上記の方法で評価試験をし、得られた結果を表1〜3に示す。表1は、比較例1、及び本発明1の試験結果を表示しており、表2は、比較例2、及び本発明2、3の試験結果を表示しており、表3は、比較例3、4、及び本発明4〜6の試験結果を表示している。
表1に示した上記の試験結果で明らかなように、トレッド面5のタイヤ幅方向における中央部にタイヤ周方向に形成される溝を設けた場合には、タイヤ中央部付近の剛性が低下するため、良好な操縦安定性を得ることができない(比較例1)。また、表2に示した試験結果で明らかなように、トレッド面5に複数形成された各陸部のタイヤ幅方向における幅が、陸部ごとに大きく異なっている場合には、それに伴い陸部のブロック剛性も大きく異なっているので、偏摩耗が発生し易くなる(比較例2)。
また、表3に示した試験結果で明らかなように、複数の主溝10のうち、他の主溝10よりも大幅に溝幅が細い主溝がある場合には、主溝10を通って排水される水の量が低減するので、排水性を向上させることができない(比較例3)。また、主溝10に弧状溝14が形成されていない場合には、主溝10の壁面とトレッド面5とが交差する部分であるエッジの長さが長くならないため、濡れた路面を走行する際の操縦安定性を向上させることができない(比較例4)。
これに対し、タイヤ幅方向における中央部には溝を配置せず、上述したようなセンターリブ21を設けることにより、操縦安定性を向上させることができる(本発明1)。また、トレッド面5に複数形成された陸部のタイヤ幅方向における幅を、全て同程度、具体的には、接地幅Wに対する割合の差が5%以下となるようにすることにより、陸部のブロック剛性の差が小さくなるので、偏摩耗を抑制できる(本発明2、3)。また、複数形成された主溝10のタイヤ幅方向における溝幅を、全て同程度、具体的には、接地幅Wに対する割合が全て3〜10%の範囲内となるようにすることにより、排水し易くなり、また、主溝10に弧状溝を形成することにより、濡れた路面を走行する際の操縦安定性を向上させることができる(本発明4〜6)。さらに、弧状溝14を有する主溝10をシースルーにすることにより、より確実に排水性を向上させることができる(本発明4、5)。
従って、トレッド面5のタイヤ幅方向における中央部にはセンターリブ21を設け、複数の陸部のタイヤ幅方向における幅を、接地幅Wに対する陸部の幅の割合同士で比較した際の差が5%以下になるようにし、主溝10に弧状溝14を形成することにより、車両走行時の安定性を確保できると共に偏摩耗を低減させることができ、さらに、主溝10内に水が流れ易くすることができる。これらの結果、操縦安定性を確保しつつ、排水性と耐偏摩耗性とを共に向上させることができる。
なお、上記の説明では、空気入りタイヤ1の一例としてリブ基調のトレッドパターンを有する空気入りタイヤ1を説明しているが、本発明を適用する空気入りタイヤ1は、リブ基調のトレッドパターン以外でもよく、例えば、リブラグパターンやブロックパターンなどでもよい。少なくともタイヤ周方向に沿って形成された主溝10を複数有しているトレッドパターンであれば、トレッド面5のパターン形状は問わない。