(第1の実施例)
以下、図1乃至10を参照して、本発明の1つの実施態様に係るカードコネクタについて、詳細に説明する。
図1は、本発明に係るカードコネクタの概要を示す斜視図である。図2は、図1に示すカードコネクタを示し、(a)は概略平面図であり、(b)は、ICカード挿入側から見た概略側面図である。図3は、図2に示すA−A線に沿って断面されたカードコネクタの概略断面図である。図4は、本発明に係るカードコネクタに装着される2種類のICカードを示し、(a)は、マイクロSDカードの概略平面図であり、(b)は、MMCマイクロ(カード)の概略平面図である。図5は、図2に示すカードコネクタにおいて、カバー部材が取り除かれた状態のカードコネクタの概略平面図である。図6は、本発明に採用されているトレイの概要を示す斜視図である。図7は、マイクロSDカードが装着された状態を示す、図2におけるA−A線に沿うカードコネクタの概略断面図である。図8は、MMCマイクロ(カード)が装着された状態を示す、図2におけるA−A線に沿うカードコネクタの概略断面図である。図9は、マイクロSDカードが誤挿入された状態を示す、図5と同様のカードコネクタの概略平面図である。図10は、MMCマイクロ(カード)が誤挿入された状態を示す、図5と同様のカードコネクタの概略平面図である。
本明細書において使用される用語「前」、「後」、「右」及び「左」は、図2(a)に示されるカードコネクタの平面図の「左」、「右」、「下」及び「上」を指す。
図1乃至3に、本発明に係るカードコネクタ1の外観が示されている。このカードコネクタ1は、例えば、携帯電話、PDAあるいはカメラなどの電子機器内の配線基板(不図示)上に設置される。カードコネクタ1には、図4(a)、(b)に示されるような、第1のカードとしてのマイクロSD(secure digital)カード100及び第2のカードとしてのMMC(multi media card)マイクロ200がそれぞれ選択的に1枚ずつ装着可能とされる。
ICカード100または200は、カード挿入スロット8を通ってカード収容空間5内に着脱可能に収容され得る。より具体的には、挿入されるICカード100または200の外部接点であるパッド(図9及び10参照)が、カードコネクタ1に設けられている該パッドに対応するコンタクト50または60に接触することで、ICカード100または200は、電子機器と電気的に接続される。
マイクロSDカード100は、長さL11が15mm、幅W11が11mm、厚さT1が0.7mm(図7参照)の寸法を有し、裏面に外部接点として8個のパッド106(図9参照)を含んでいる。マイクロSDカード100の先端部は、図4(a)に示されるように、該カード100の左側(図4(a)において上側)に切欠102が形成されている。切欠102の長さL12及び幅W13は、後述するトレイ20の構造に関連する。切欠102が設けられることで、マイクロSDカード100の先端部の幅W12は、幅W11よりW13だけ小さく形成されている。
MMCマイクロ200は、長さL21が14mm、幅W21が12mm、厚さT2が1.1mm(図8参照)の寸法を有し、裏面に外部接点として10個のパッド206(図10参照)を含んでいる。MMCマイクロ200の先端部は、図4(b)に示されるように、マイクロSDカードとは逆に、カード200の右側(図4(b)において下側)に切欠202が形成されている。切欠202の長さL22及び幅W23も、後述するトレイ20の構造に関連する。切欠202が設けられることで、MMCマイクロ200の先端部の幅W22は、幅W21よりW23だけ小さく形成されている。
カードコネクタ1は、図1に示されるように、概ね、電気的に絶縁性の合成樹脂から作られるコネクタ本体10と金属板から作られるカバー部材40を含んでいる。このコネクタ本体10とカバー部材40を組み立てることでICカードを収容するカード収容空間5が形成されるとともに、その後方にはカード挿入スロット8が形成される。コンタクト本体10とカバー部材40は、例えば、カバー部材の側壁に形成された開口部に、コネクタ本体10の第1の側壁としての左右の側壁12、13に形成された爪部が係止されることで、一体に組み立てられ得る。
コンタクト本体10は、カード収容空間5を形成するように、底壁11、左側壁12、右側壁13及び前側壁14を含んでいる。左右の側壁12及び13及び前側壁14は、概ね同じ高さを有しているが、右側壁13の前方で前側壁14までの前方部分13bは、一段低く形成されている。
底壁11には、図3に詳細に示されるように、前方から順に、第1のICカードとしてのマイクロSDカード100のための第1のコンタクト列及び第2のICカードとしてのMMCマイクロ200のための第2のコンタクト列が設置されている。
第1のコンタクト列には、第1のICカード100のパッド106に対応して複数(本実施例では、8個)のコンタクト50が左右の側壁12、13と平行に配列されている。第1のコンタクト列の各コンタクト50は、それぞれ、第1のICカード100のパッド106に接触する接点部51、該接点部51を上下方向に変位可能とする弾性変形部52、固定部53、及び電子機器の外部接点と接続される端子部54を含んでいる。コンタクト50の接点部51は、後方に向けてカード収容空間5内に突出するとともに、弾性変形部52を介して片持ち梁状に底壁11に支持される。
なお、コンタクト50は、底壁11と前側壁14との間に形成された孔にその固定部52が圧入されることでコネクタ本体1に固定、支持される。また、コンタクト50の接点部51の上下方向の変位を吸収すべく、図には示されていないが、対応する底壁11には、溝または貫通孔が形成されている。さらに、コンタクト50の端子部54は、前側壁14より前方に突出し、電子機器の外部接点と半田付けなどにより連結される。
第2のコンタクト列には、第2のICカード200のパッド206に対応して複数(本実施例では、10個)のコンタクト60が、コンタクト50と同様に、左右の側壁12、13と平行に配列されている。第2のコンタクト列の各コンタクト60は、それぞれ、第2のICカード200のパッド206に接触する接点部61、該接点部61を上下方向に変位可能とする弾性変形部62、固定部63、及び電子機器の外部接点と接続される端子部64を含んでいる。コンタクト60の接点部61は、前方に向けてカード収容空間5内に突出するとともに、弾性変形部62を介して片持ち梁状に支持される。
コンタクト60は、底壁11後方に形成された溝にその固定部62が圧入されることでコネクタ本体1に固定、支持される。図3からも理解されるように、第2のコンタクト列のコンタクト60は、第1のコンタクト列のコンタクト50と対向するように設置されている。また、コンタクト60の接点部61の上下方向の変位を吸収すべく、図には示されていないが、対応する底壁11には、溝または貫通孔が形成されている。さらに、コンタクト60の端子部64は、底壁11の後縁部11aより後方に突出し、電子機器の外部接点と半田付けなどにより連結される。
図5に明瞭に示されるように、左右の側壁12、13の後方には、カード収容空間5を挟んで、対をなすロック金具17及び18が支持されている。
左側壁12に支持される一方のロック金具17は、後述するトレイ20の第1の係止壁25に係合する湾曲部17a、弾性変形部17b、及び左側壁12に固定される固定部17cを有する。ロック金具17の湾曲部17aは、第1の係止壁25よりカード収容空間5内に突出しており、弾性変形部17bを介して外側(図5において、上側)に変位可能であり、それにより第1の係止壁25との係合が解放されることが可能なように構成されている。
ロック金具17と対をなす他方のロック金具18は、右側壁13に支持されている。ロック金具18は、後述するトレイ20の第2の係止壁26に係合する湾曲部18a、弾性変形部18b、及び右側壁13に固定される固定部18cを有する。ロック金具18の湾曲部18aは、第2の係止壁26よりカード収容空間5内に突出しており、弾性変形部18bを介して外側(図5において、下側)に変位可能であり、それにより第2の係止壁26との係合が解放されることが可能なように構成されている。
ここで重要なことは、本発明のカードコネクタ1においては、一対のロック金具17及び18それぞれの湾曲部17a及び18aが対応する第1の係止壁25及び第2の係止壁26から同時に解放されなければトレイ20は移動可能とならないことに留意されたい。すなわち、何れか一方のみが解放された状態では、トレイ20は、移動し得ない。
したがって、一対のロック金具17及び18のそれぞれの湾曲部17a及び18aの間隔は、第2のカード200の幅W21より小さく、第1のカード100の幅W11と略同じかそれ以上であるように設計される。なお、一対のロック金具17及び18は、形状及び配置位置に関し、必ずしも左右対称の形状及び左右対称の配置位置を備えていなくてもよい。上述したように、挿入されるICカードがトレイ20に当接し、該トレイ20を移動させる前に、一対のロック金具17及び18のそれぞれの湾曲部17a及び18aが、第1の係止壁25及び第2の係止壁26から同時に解放される構成であればどのような形状及び配置位置を備えていてもよい。
本実施例では、底壁11の後縁部11aは、左右の側壁12及び13の後縁部より前方に位置している。すなわち、カード挿入スロット8が凹形状になるように底壁11の後縁部11aが左右の側壁12及び13の後縁部より前方に後退して形成されている。このように構成することで、ICカードの先端がコンタクト60の端子部64に当たることなくICカードの挿入が円滑に行われる。しかしながら、この構成に限られることはなく、底壁11の後縁部11aと左右の側壁12及び13の後縁部とが面一に形成されていてもよい。
カードコネクタ1は、さらに、コネクタ本体の左右の側壁12及び13の間に配置されるトレイ20を備えている。トレイ20は、電気的に絶縁性の合成樹脂から作られる。トレイ20は、カード収容空間5内で、底壁11に対して回転可能であるとともに、前後方向に移動可能に構成されている。トレイ20は、通常、第1のコンタクト列の複数のコンタクト50及び第2のコンタクト列の複数のコンタクト60を覆っている。そして、トレイ20の回転及び/またはその移動により、第1のコンタクト列のコンタクト50及び第2のコンタクト列のコンタクト60の一方をカード収容空間5内に突出させ、他方を覆ったままに維持することで、コンタクトを対応するICカードのパッドに接触させることを可能とする。
トレイ20は、図6に示されるように、概略、底壁21、第1の側壁としての左側壁22、第2の側壁としての右側壁23、第1の当接壁24、第2の当接壁27及び1対の係止壁25、26を含んでいる。
底壁21は、平面図で概ね矩形状であり、後方基端部32、前方末端部31及びこれらの間の中間部に複数のスリット30を有する。後方基端部32は、コネクタ本体10の左右の側壁12及び13にそれぞれ形成される段部12a及び13aに係合する。また、複数のスリット30各々は、第2のコンタクト列に配列される複数のコンタクト60それぞれに対応して形成されている。各スリット30は、また、互に平行に前後方向に延在するとともに、底壁21を貫通している。
本実施例においては、底壁21の後方基端部32の左右から後方に、該底壁21と面一で一対の脚部33及び34が突出形成されている。したがって、コネクタ本体10の段部12aおよび13aに係合するのは、本実施例では、一対の脚部33及び34それぞれの後端縁33a及び34aである。この構造は、コネクタ本体10の構造に合わせたものであり、該構造に限定されるものではない。
また、底壁21の前方末端部31には、第1のコンタクト列に配列される複数のコンタクト50にそれぞれ対応する溝36が形成されている。溝36の深さは、コンタクト50の長さに応じて適宜設定される。
底壁21の左辺前方には、段部35が形成され、該段部35から後方に第1の側壁としての左側壁22が所定の長さで立設され、さらに、該左側壁22から間隔をおいて左辺後方端部に第1の係止壁25が立設されている。第1の側壁としての左側壁22及び第1の係止壁25は、左側壁22と第1の係止壁25のそれぞれの内面22a及び25aすなわちカード収容空間5側の面は、同一平面をなすように形成され、第2のICカード200を案内する。また、第1の側壁としての左側壁22と第1の係止壁25との間の間隔は、少なくともロック金具17の湾曲部17aが出入り可能であるように設定される。
本実施例では、第1の係止壁25は、底壁21の後方基端部32左右より後方に突出する一対の脚部33及び34のうちの第1の脚部33上に設けられている。また、底壁21の左辺は、図5に示されるように、第1の側壁としての左側壁22が立設する部分が後述するイジェクト部材70に及び第1の脚部33が形成されている部分がコネクタ本体10の左側壁12に接している。
底壁21の左辺前方に形成される段部35は、底壁21の左辺に直交しており、該段部35に沿って、第1の当接壁24が立設される。該第1の当接壁24は、左側壁22に連続しており、その後面24bに第2のICカード200の先端が当接する。また、第1の当接面24の右端面24aは、第1のICカード100の切欠102を案内する。このことから、第1の当接壁24は、該第1の当接壁24の右端面24aを含む平面と後述する右側壁23の内面23aとの間の距離が第1のICカード100の先端部の幅W12に略等しくなるように形成される。なお、段部35の左右方向の長さは、第1の当接壁24の長さと略同じであるかそれより若干大きい。
底壁21の右辺前方には、段部37が形成され、該段部37から後方に段部37と同じ大きさの幅を有する第2の側壁としての右側壁23が所定の長さで立設されている。第2の側壁としての右側壁23に連続して、該右側壁23の後方に第2の当接壁27が立設されている。第2の当接壁27は、第2の当接壁27の内面27aすなわちカード収容空間5に向いている面が右側壁23の内面23aと面一となるように形成される。したがって、第2の側壁としての右側壁23の内面23aと第2の当接壁27の内面27aは、連続する同一平面を形成している。該右側壁23の内面23aと第2の当接壁27の内面27aは、第1のICカード100及び第2のICカード200の切欠202を案内する。このことから、第2の当接壁27の後端面27bの位置は、第1の当接面24の後端面24bを含む平面と第2の当接面27の後端面27bを含む平面との間の距離が第2のICカード200の切欠の長さL22と略等しいかそれ以下になるように決定される。
底壁21の右辺後方端部、すなわち第2の脚部34上には、上記第2の当接壁27から間隔をおいて上記第1の係止壁25と対をなす第2の係止壁26が形成される。第2の係止壁26の内面26a、すなわちカード収容空間5に面している面は、第2のICカード200を案内する。このことから、第2の係止壁26の内面26aの位置は、該内面26aを含む平面と上記右側壁23及び第2の当接壁27のそれぞれ内面23a及び27aを含む面との距離が第2のカード200の切欠の幅W23に略等しくなるように決定される。
また、以上の説明から理解されるように、第2の係止壁26と第1の係止壁25との間隔は、第2のカード200の幅W21に略等しい。したがって、右側壁23及び第2の当接壁27のそれぞれ内面23a及び27aを含む面と第1の係止壁25の内面25aを含む面との間の間隔は、第2のICカード200の先端部の幅W22に略等しい。さらに、第2の当接壁27と第2の係止壁26との間の間隔は、少なくともロック金具18の湾曲部18aが出入り可能であるように設定される。但し、湾曲部18aは、第2の係止壁26よりカード収容空間5内に突出するが、第2の当接壁27よりは突出しないように配置される。なお、段部37の左右方向の長さは、右側壁23の幅と略同じであるかそれより若干大きい。また、底壁21の右辺は、図5に示されるように、右側壁23が立設する部分及び第2の脚部34が形成されている部分のいずれもがコネクタ本体10の右側壁13に接している。
さらに、一対のロック金具17及び18のそれぞれの該湾曲部17a、18aの少なくとも一方が対応する第1の係止壁25及び第2の係止壁26と係合することで、トレイ20の移動が阻止され、対をなす湾曲部17a及び18aが係止壁25及び26から同時に離脱することでトレイ20の移動が許容される。
このような構成を備えるトレイ20は、図3、5に示されるように、ICカードが装着されていないときは、第1の位置にある。より具体的には、第1の位置は、トレイ20の脚部33及び34のそれぞれの後端縁33a及び34aがコネクタ本体10の底壁11に形成される段部12a、13aに係合し、コネクタ本体10の底壁11に対してトレイ20の前方が高くなるように傾斜している位置である。このことから理解されるように、トレイ20の底壁21の左辺及び右辺に形成される側壁、係止壁及び当接壁は、この傾斜した第1の位置で、カバー部材40と干渉しないように前方に行くほど低くなるように適宜設定される。
トレイ20が第1の位置あるとき、第1のコンタクト列の複数のコンタクト50及び第2のコンタクト列の複数のコンタクト60のそれぞれの接点部51及び61は、いずれもトレイ20の前方末端部31の下に位置する。ただし、第1のコンタクト列の複数のコンタクト50の接点部51は、トレイ20の前方末端部31に形成される複数の溝36の真下に位置する。トレイ20は、第2のコンタクト列の複数のコンタクト60の弾性力によりトレイ20の底壁21の前方末端部31が持ち上げられることで、傾斜した位置を保持している。
カードコネクタ1は、さらに、イジェクト機構を備えている。該イジェクト機構は、装着されるICカードを装着位置に保持するとともに、ICカードをカードコネクタから取り出すことを容易にする機構である。本実施例におけるイジェクト機構は、基本的には、従来のイジェクト機構と同様のプッシュ・プッシュタイプである。
本発明に係るイジェクト機構は、概略、コネクタ本体10の左側壁12に沿って配置されるイジェクト部材70及び作動部材80を含んでいる。なお、イジェクト機構は、一端がイジェクト部材70に形成されるレバー案内溝72に沿って移動するカムレバー(不図示)及びイジェクト部材70をカード排出方向すなわち後方に付勢するバネ部材としてのコイルスプリング75をさらに備える。
イジェクト部材70は、電気的に絶縁性の合成樹脂から作られている。イジェクト部材70は、その上面にハートカム71及びこのハートカム71を囲むレバー案内溝72が形成され、コネクタ本体10の左側壁12に沿って前後方向に移動可能に形成されている。
作動部材80は、上記イジェクト部材70に直交し、カード収容空間5を横断してコネクタ本体10の右側壁13の前方部分13aまで延びている。該作動部材80は、強度の関係から金属で作られることが好ましい。しかしながら、作動部材80は、設計上許されるのであれば、イジェクト部材70と同じ合成樹脂で一体成形されてもよい(例えば、実施例2参照)。
本実施例では、金属製の作動部材80の一端部は、合成樹脂製のイジェクト部材70と一体となるようにイジェクト部材70に取り付けられている。例えば、作動部材80は、イジェクト部材70から直交して突出する突出体(不図示)に作動部材80の一端部を固定することでイジェクト部材に連結され、一体化されてもよい。作動部材80の他端部は、自由端であり、右側壁13の前方部分13aの上を移動可能に支持されている。なお、上述したように、作動部材80の他端部が移動可能に支持される右側壁の前方部分13aは、右側壁13の高さより概略作動部材80の厚さ分低く形成されている。
作動部材80のイジェクト部材70との連結部分としての一端部は、ICカードが挿入されていないとき、すなわち、トレイ20が第1の位置にあるとき、該トレイ20の第1の当接部24の前面に接するように配置される。また、作動部材80の他端部は、ICカードが挿入されていないとき、該トレイ20の右側壁23に前端に接するように配置される。作動部材80は、また、後方に向かって突出形成される案内片86を含んでいる。該案内片86は、トレイ20の前方末端部31の幅に略等しい長さを有する。したがって、作動部材80の案内片86は、図3に明瞭に示されるように、ICカードが挿入されていないとき、トレイ20の前方末端部31を覆うように配置される。また、案内片86は、後述するように第1のICカード100が装着されたとき、該第1のICカード100の先端を保持することが可能であるようにその高さ位置が設定される。さらに、該案内片86は、第1のICカード100の先端を保持するためには、できるだけ長く設計されることが好ましい。したがって、本実施例では、その先端が第1の当接壁24の後面24bを含む平面と面一になる位置まで延びている。しかしながら、当案内片86の先端は、第1の当接壁24の後面24bを含む平面から前方に位置していてもよい。
作動部材80は、その略中央より左寄りに、図7に明瞭に示されるような当接片82が形成されている。該当接片82は、作動部材80から観音開き状に一対切り起こされることで形成される。したがって、作動部材80には、開口81が形成されている。該当接片82には、第1のICカード100が装着されるとき、該ICカード100の先端が当接する。なお、本実施例では、当接片82は、観音開き状に対をなして切り起こされているが、これに限定されるものではない。例えば、当接片82は、片開き状に切り起こされてもよいし、適宜間隔をおいて複数形成されてもよい。
本実施例における作動部材80は、図3及び5に示されるように、その上面に、断面が円弧状の突起84を複数含んでいる。該突起84は、作動部材80の前後方向の移動を円滑にするためのものであり、カバー部材40と作動部材80との摩擦が小さくできるのであれば、該突起84は、省略されてもよい。
以上の構成を備えるカードコネクタ1において、各ICカード100及び200の装着及び誤挿入防止機構について、図3、図5及び図7ないし図10を参照して以下に説明する。
図3及び図5には、ICカードが装着されていない状態におけるカードコネクタ1が示されている。
ICカードが装着されていない状態において、トレイ20は、その第1の脚部33及び第2の脚部34のそれぞれの後端縁33a及び34aがコネクタ本体10の段部12a及び13aに当接するとともに、前方末端部31がコンタクト60に持ち上げられ作動部材80の案内片86に接して傾斜した第1の位置にある。この時、コンタクト50は、前方末端部31に形成されている溝36の真下に位置している。
また、イジェクト部材70は、コイルスプリング75により後方に付勢された第1の位置にある。さらに、イジェクト部材70と一体の作動部材80も、図3および5に示される第1の位置にある。
図7には、カードコネクタ1に第1のICカードとしてのマイクロSDカード100が装着された状態が示されている。
第1のICカード100が、図4(a)に示される正しい姿勢で、カード挿入スロット8からカード収容空間5内に挿入される。この場合、第1のICカード100は、結局、トレイ20の第2の当接壁27及び右側壁23の内面27a及び23aに案内される。この時、第1のICカード100は、幅が小さいため、一対のロック金具17、18を同時に解除することはできない。
したがって、第1のICカード100は、傾斜しているトレイ20をこの位置で前方に押し倒しながらカード収容空間5内を前進する。第1のICカード100は、トレイ20を第1の位置で反時計方向に回転させ、略水平になるまで押し倒す。この結果、トレイ20は、図7に示されるように、第2の位置に到達し、前方末端部31の下に位置する第2のコンタクト列の複数のコンタクト60を下方に変位させる。なお、トレイ20は、第2の位置にあるとき、必ずしも水平である必要はなく、若干傾斜した状態にあってもよい。
トレイ20が略水平位置まで回転し、押し倒された第2の位置に到達することで、第1のコンタクト列の複数のコンタクト50は、トレイ20に形成された対応する複数の溝36を通過し、トレイ20より上方のカード収容空間5内に相対的に出現する。
この状態で、第1のICカード100をさらに前方に前進させると、第1のICカード100の先端が作動部材80の案内片86の下に入り込み、当接片82に当接する。それにより、該第1のICカード100のさらなる前進に伴い、作動部材80が前進し、一緒にイジェクト部材70もコイルスプリング75の付勢力に抗して前方に押し進められる。この時、第1のICカード100は、切欠102が設けられているため、トレイ20の第1の当接壁24にあたることなく前進することができる。
第1のICカード100の前進が不可能になったとき、第1のICカード100の押し込み力を解放すると、カムレバーの一端がハートカム71の凹部に係止することで、イジェクト部材70、作動部材80は、図7に示される第2の位置に保持される。この時、第1のICカード100のパッド106は、第1のコンタクト列の複数のコンタクト50と所定の接圧で電気的に接触状態にある。また、第1のICカード100は、複数のコンタクト50のパッド106への接圧を介して作動部材80の案内片86に押し付けられることで、図7に示される装着位置に保持されるとともに、ICカード100の抜けが防止される。なお、トレイ20は、依然として、第2の位置に位置したままである。
図7の状態から、第1のICカード100を取り外す場合、第1のICカード100を押し込み、カムレバーの一端をハートカム71の凹部から離脱させる。このようにイジェクト部材70のロック状態が解除されることで、第1のICカード100への押し込みを解除すると、コイルスプリング75の付勢力(復帰力)によりイジェクト部材70及び作動部材80が第2の位置から当初の第1の位置に戻される。それにより、第1のICカード100も、カード挿入スロット8から容易に取り出すことが可能となる。第1のICカード100が取り出されることで、トレイ20も当初の第1の位置に戻される。
図8には、カードコネクタ1に第2のICカードとしてのMMCマイクロ200が装着された状態が示されている。
第2のICカード200が、図4(b)に示される正しい姿勢で、カード挿入スロット8からカード収容空間5内に挿入される。この場合、第2のICカード200は、トレイ20の第1の係止壁17に案内される。この時、第2のICカード200の先端には切欠202が設けられているため、左側のロック金具17は、第1の係止壁25から離脱されるが、右側のロック金具18は、第2の係止壁26から離脱していないので、トレイ20はロックされたままである。
第2のICカード200は、さらに前進することで、切欠202が第2の当接壁27に案内され、同時に、第2のICカード200の切欠202の後方が第2の係止壁25に案内される。この状態で、第2のICカード200がカード収容空間5内でさらに押し込まれると、右側のロック金具18も第2の係止壁26から離脱する。それにより、一対のロック金具17、18が対応する第1の係止壁25及び第2の係止壁26から同時に離脱した状態となり、トレイ20は、ロック状態から解放される。ロックが解除されると、トレイ20は、トレイ20と第2のICカード200との間の摩擦力により、第2のICカード200の前進に伴って、一緒に前進する。トレイ20が前進することで、第1のコンタクト列の複数のコンタクト50の接点部は、トレイ20の前方末端部31の下に入り、第2のコンタクト列の複数のコンタクト60の接点部61は、トレイ20の複数のスリット30の真下に入る。
この状態で、第2のICカード200をさらに押し込むと、第2のICカード200の先端が、トレイ20の第1の当接壁24に当接する。トレイ20の第1の当接壁24は、作動部材80に接しており、また、第2のICカード200の先端も作動部材80の案内片86先端に当接することから、作動部材80及びイジェクト部材70ともに前進する。
第2のICカード200がさらに前進することで、該第2のICカード200の厚みにより、トレイ20は、前進するとともに、反時計方向に回動し、略水平になるまで押し倒され、図8に示されるように、第3の位置に到達する。トレイ20が第3の位置に達すると、第1のコンタクト列の複数のコンタクト50は、トレイ20の前方末端部31に下に位置しているので下方に変位する。また第2のコンタクト列の複数のコンタクト60は、スリット30を通過してトレイ20の底壁21より上方のカード収容空間5内に相対的に出現する。
第2のICカード200の前進が不可能になったとき、第2のICカード200の押し込み力を解放すると、第1のICカード100のときと同様に、カムレバーの一端がハートカム71の凹部に係止し、イジェクト部材70、作動部材80は、図8に示される第2の位置に保持される。この時、第2のICカード200のパッド206は、第2のコンタクト列の複数のコンタクト60と所定の接圧で電気的に接触状態にある。また、第2のICカード200は、複数のコンタクト60のパッド106への接圧を介してカバー部材40に押し付けられることで、図8に示される装着位置に保持されるとともに、ICカード200の抜けが防止される。
図8の状態から、第2のICカード200を取り外す場合、第1のICカード100の場合と同様、第2のICカード200を押し込むことで、イジェクト部材80のロックが解除される。その結果、コイルスプリング75の付勢力(復帰力)によりイジェクト部材70及び作動部材80は、第2の位置から当初の第1の位置に戻される。それにより、第2のICカード200も、カード挿入スロット8から容易に取り出すことが可能となる。第2のICカード200が取り出されることで、トレイ20も当初の第1の位置に戻る。
次に、語挿入防止機構につき説明する。
図9に示されるように、例えば、第1のICカード100を前後逆に且つ表裏も逆に挿入した場合を想定する。
前後逆に且つ表裏も逆になっている、すなわち第1のICカード100の後端を前にして、第1のICカード100をカード挿入スロット8からカードコネクタ1のカード収容空間5内に挿入する。この時、第1のICカード100は、正しい姿勢で挿入されたときと同様に、結局、トレイ20の第2の当接壁27及び右側壁23の内面27a及び23aに案内される。また、第1のICカード100の幅W11は、一対のロック金具17、18の湾曲部17a、18aの間隔より小さく設定されているから、該一対のロック金具17、18をトレイ20の第1の係止壁25及び第2の係止壁26から同時に離脱させることができない。したがって、トレイ20もロックされたままである。
ところで、トレイ20の第2の当接壁27及び右側壁23と第2の当接壁24との間隔は、第1のICカード100の先端の幅W12と略同じである。したがって、第1のICカード100がさらに挿入されると、第1のICカード100の後端は、第1の当接壁24と右側壁23との間を抜けることができず、トレイ20の第1の当接壁24に当接する。上記したように、トレイ20はロックされたままであるから、第1のICカード100はこれ以上前進することが不可能となり、該第1のICカード100をカードコネクタ1に完全に装着することができない。よって、第1のICカード100の後端を前にして挿入する限り、第1のICカード100の誤挿入が防止される。
また、図に示されていないが、第1のICカード100を図4(a)の正しい姿勢から先端はそのままで、単に裏返しにして挿入した場合も、結局上記の場合と同様の動作により、第1のICカード100の完全な装着が阻まれることが理解されるであろう。
続いて、図10に示されるように、例えば、第2のICカード200を前後逆に且つ表裏も逆に挿入した場合を想定する。
前後逆に且つ表裏も逆になっている、すなわち第2のICカード200の後端を前にして、第2のICカード200をカード挿入スロット8からカードコネクタ1のカード収容空間5内に挿入する。この時、第2のICカード200は、第1の係止壁25と第2の係止壁26に案内される。また、第2のICカード200の幅W21は、一対のロック金具17、18の湾曲部17a、18aの間隔より大きく設定されているから、該一対のロック金具17、18をトレイ20の第1の係止壁25及び第2の係止壁26から同時に離脱させる。したがって、トレイ20のロックは解除される。
ところで、トレイ20の左側壁22及び第1の係止壁25と第2の当接壁27及び右側壁23との間隔は、第2のICカード200の先端の幅W22と略同じである。したがって、第2のICカード200がさらに挿入されると、第2のICカード200の後端は、第2の当接壁27の後端面27aに当接する。上記したように、トレイ20はロックが解除されているから、第2のICカード200はトレイ20の第2の当接壁27を介してトレイ20を前方に押す。同時に、トレイ20の右側壁23を介して作動部材80が押され、イジェクト部材70に第2のICカード200の押し込み力が作用する。しかしながら、この押し込み力は、イジェクト部材70から遠い位置でイジェクト部材70に対して該イジェクト部材70を時計方向に回転させる回転力として作用する。そのため、イジェクト部材70は、コネクタ本体10の左側壁との間で摩擦力が生じ、前方への円滑な移動が阻止される。仮に、イジェクト部材70及び作動部材80が第2の位置へ移動し得たとする。その場合であっても、第2のICカード200の後端は、第2の当接壁27の後端面27bに当接しているのであるから、第2のICカード200の先端が本来の第1の当接壁24と間の距離差分カード挿入スロット8から突出している。したがって、いずれにしても、第2のICカード200をカードコネクタ1に完全に装着することができない。よって、第2のICカード200の後端を前にして挿入する限り、第2のICカード200の誤挿入が防止される。
また、図に示されていないが、第2のICカード200を図4(b)の正しい姿勢から先端はそのままで、単に裏返しにして挿入した場合は、切欠202の存在によりトレイ20のロックが解除されず、結局、第2のICカード200は、第2の当接壁27に当接し、それ以上の挿入が阻まれる。
(第2の実施例)
次に、図11乃至14を参照して、本発明の別の実施態様に係るカードコネクタについて、詳細に説明する。
図11は、本実施例に係るカードコネクタであって、カバー部材が取り除かれた状態の斜視図である。図12は、図3と同様の位置で断面された図11に示されるカードコネクタの概略断面図である。図13は、マイクロSDカードが装着された状態を示す、図7と同様の位置で断面された図11に示されるカードコネクタの概略断面図である。図14は、MMCマイクロ(カード)が装着された状態を示す、図8と同様の位置で断面された図11に示されるカードコネクタの概略断面図である。
本実施例においてもカードコネクタ501に装着されるICカードは、上記第1の実施例と同じ第1のICカードとしてのマイクロSDカード100及び第2のICカードとしてのMMCマイクロ200である。
本実施例におけるカードコネクタ501は、図11ないし14に示されるように、イジェクト機構を構成するイジェクタ部材570と連動する作動部材580の構造が大きく異なる。また、それに伴って、作動部材580に関連する構成要素、例えば、コネクタ本体510、トレイ520、コンタクト550及び560の配置など、の構成も変更されている。しかしながら、カードコネクタ501も、このような若干の相違はあるとしても基本的には第1の実施例のカードコネクタ1とほぼ同様の構成及び機能を有する。
本実施例におけるカードコネクタ501は、上述したように、基本的には第1の実施例のカードコネクタ1と同様に、概ね、コネクタ本体510、対をなすロック金具517及び518、トレイ520、カバー部材540、第1のICカードに対応する第1のコンタクト列に配列される複数のコンタクト550、第2のICカードに対応する第2のコンタクト列に配列される複数のコンタクト560、イジェクト部材570及び作動部材580を含んでいる。
コネクタ本体510は、底壁511、該底壁511周辺に沿って形成される左側壁512、右側壁513及び前側壁514を有し、後方は開放されている。コネクタ本体510は、カバー部材540と組み合わされることで、ICカードを収容するカード収容空間505を形成している。本実施例において、コネクタ本体510の左側壁512は、後方にのみ形成されているが、第1の実施例と同様に底壁511左辺全体にわたって形成されていてもよい。なお、本実施例では、左側壁512が形成されていない部分は、カバー部材540の側壁で覆われるので、特に支障はない。また、右側壁513前方において、作動部材を案内するための一段低い部分が省略されている。
第1のICカード100用の第1のコンタクト列の複数のコンタクト550及び第1のICカード200用の第2のコンタクト列の複数のコンタクト560は、第1の実施例と同様に底壁511に前後に配列される。コンタクト550及び560の形状及び設置態様も第1の実施例と特に変わるところはない。
本実施例においては、第1のコンタクト列の複数のコンタクト550及び第2のコンタクト列の複数のコンタクト560の変位を吸収するために、これらの複数のコンタクト550及び560に対応してコネクタ本体510の底壁511に貫通孔515及び516が形成されている。このように構成することで、カードコネクタ501の高さを低くすることが可能となる。
コネクタ本体510には、カード収容空間5を挟んで一対のロック金具517及び518が設けられている。該ロック金具517及び518は、それぞれ、後述するトレイ520の第1の係止壁525および第2の係止壁526に係合し、トレイ520の前方への移動を阻止する。本実施例においても、対を成すロック金具517及び518の両方が同時に解放されない限り、トレイ520は移動することができない。対をなすロック金具517及び518の備えるべき機能に関しては、第1の実施例と全く同じである。
ロック金具517及び518は、それぞれ、湾曲部517a、518a、弾性変形部517b、518b及び固定部517c、518cを有する。
本実施例においては、対をなすロック金具517及び518は、図11に示されるように、互いの形状が異なるとともに、コネクタ本体510への固定位置も異なる。
左側のロック金具517は、左側壁512の後方端部で固定部517cを介して左側壁512に固定される。また、ロック金具517は、該ロック金具517の固定部517cから延びる弾性変形部517は、略U字形を成して折り返しており、弾性変形部517bから固定部517cに向かって延在する湾曲部517aの先端部が第1の係止壁525前面に係合するように構成される。さらに、この係合状態において、ロック金具517の湾曲部517aが第1の係止壁525の内面525aよりカード収容空間505側に突出するように、ロック金具517は構成されている。
他方、右側のロック金具518は、右側壁513の略中間部で固定部518cを介して右側壁513に固定される。また、ロック金具518は、該ロック金具517の固定部518cから延びる弾性変形部518bは、固定部518cに対して略くの字状に折り曲げられており、弾性変形部518bから後方に向かって延在する湾曲部518aの先端部が第2の係止壁526前面に係合するように構成される。さらに、この係合状態において、ロック金具518の湾曲部518aが第2の係止壁526の内面526aよりカード収容空間505側に突出するように、ロック金具518は構成されている。
本実施例においては、図11に示されるように、対をなすロック金具517及び518のそれぞれの湾曲部517a及び518aの設置位置が異なる。すなわち、左側のロック金具517の湾曲部517aが右側のロック金具518の湾曲部518aより前方に位置する。左側のロック金具517の湾曲部517aと右側のロック金具518の湾曲部518aとの前後方向の距離は、第1のICカード200の切欠202の長さL22に略等しく設定する。このように構成することで、左側のロック金具517の湾曲部517aの第1の係止壁525からの離脱と右側のロック金具518の湾曲部518aの第2の係止壁526からの離脱が同時に起こる。
後述するように、第2のICカード200が挿入されることで、右のロック金具518が解放され、その状態を維持したままで、次に左のロック金具517が解放される。この時点で、対をなすロック金具517及び518が同時に解放された状態となる。
トレイ520は、底壁521、第1の側壁としての左側壁522、第2の側壁としての右側壁523、第1の当接壁524及び一対の係止壁525、526を含んでいる。本実施例においては、第1の実施例における第2の当接壁27に対応する構成要素は、図11からも明らかなように、第2の側壁としての右側壁523と一体に形成されている。
トレイ520の底壁521は、略矩形状を成し、後方基端部532、前方末端部531これらの間の中間部に複数のスリット530を有する。該複数のスリット530各々は、第2のコンタクト列の複数のコンタクト560それぞれに対応して形成されている。また、各スリット530は、互に平行に前後方向に延在するとともに、底壁521を貫通している。
底壁521の前方末端部531は、第1の実施例とは異なり、その先端面534aが第1の当接壁524の後面524bに揃えられている。すなわち、前方末端部531の先端面534aは、第1の当接面524の後面524bと同一平面内にある。したがって、本実施例では、ICカードが挿入されていないとき、前方末端部531の先端部は、図12に明瞭に示されるように、第1の実施例と同様に、第2のコンタクト列のコンタクト560の接点部561を覆うように構成されている。しかしながら、トレイ520の前方末端部531は、第1のコンタクト列のコンタクト550の接点部551を覆うようには構成されていない。
本実施例においても、底壁521の後方基端部532の左右から後方に、底壁521と面一の一対の脚部533及び534が突出形成されている。そして、該一対の脚部533及び534の後方端部は、ICカードが装着されていないとき、コネクタ本体510に設けられている段部512a及び513aに係合する。
底壁521の左辺前方には、左辺に沿って所定の長さの第1の側壁としての左側壁522が立設され、さらに左側壁522から間隔をおいて左辺後方端部、すなわち、左脚部533上に第1の係止壁525が立設される。本実施例においても、第1の側壁としての左側壁522と第1の係止壁525は、それぞれの内面522a及び525aが同一平面を成すように形成される。また、左側壁522と第1の係止壁525との間の間隔は、ロック金具517の湾曲部517aが出入り可能であるように設定される。
底壁521の前方末端部531の先端部には、第1の側壁としての左側壁522と直角を成して延在する第1の当接壁524が立設される。該第1の当接壁524は、第1の実施例と同様に、左側壁522に連続しており、その後面524bに第2のICカード200の先端が当接する。また、第1の当接面524の右端面524aは、第1のICカード100の切欠102を案内する。なお、以上の説明から理解されるように、本実施例では、底壁521の前方末端部531の先端面が第1の当接壁524の後端面524aと同一平面を成していることから、第1の実施例における段部35は存在しない。
底壁521の右辺前方には、第2の側壁としての右側壁523が所定の長さで立設されている。右側壁523の内面523aは、第1のICカード100及び第2のICカード200の切欠202を案内する。本実施例においては、右側壁523は、第1の実施例における第2の当接壁27を含んで、一体に形成されている。したがって、右側壁523の後端面523bの位置は、第1の当接面524の後面524aを含む平面と右側壁523の後端面523bを含む平面との距離が第2のICカード200の切欠の長さL22と略等しいかそれ以下になるように設定される。
底壁521の右辺後方端部、すなわち右側の脚部534上には、第2の側壁としての右側壁523から間隔をおいて、上記第1の係止壁525と対をなす第2の係止壁526が立設される。右側壁523と第2の係止壁526との間の間隔は、少なくともロック金具518の湾曲部518aが出入り可能であるように設定される。第2の係止壁526の内面526aは、第2のICカード200を案内する。
なお、左側壁522、第1の係止壁525、右側壁523、第2の係止壁526、第1の当接壁524及び対をなすロック金具517、518の相対的位置関係は、第1の実施例と同じであるので説明を省略する。
このような構成を備えるトレイ520は、図12に示されるように、ICカードが装着されていないときは、第1の位置にある。具体的には、トレイ520は、第1の位置では、トレイ520の左右の脚部533及び534のそれぞれの後端縁がコネクタ本体510の底壁511に形成される段部512a及び513aに係合し、トレイ520の前方が高くなるように傾斜している。
本実施例においては、トレイ520が第1の位置にあるとき、上述したように、第2のコンタクト列の複数のコンタクト560の接点部561がトレイ520の前方末端部531の下に位置する。トレイ520は、第2のコンタクト列の複数のコンタクト560の弾性力によりトレイ520の前方末端部531が持ち上げられることで、傾斜した第1の位置を保持している。
本実施例におけるイジェクト機構を構成するイジェクト部材570は、第1の実施例におけるイジェクト部材70と同様に、ハートカム及び該ハートカムを囲むレバー案内溝を含み、コイルバネ575により、後方に付勢されている。また、他端がコネクタ本体510の左側壁512に回動自在に支持されているカムレバー573の一端がレバー案内溝に沿って移動することで、イジェクト部材570をその第1の位置から第2の位置へ、または第2の位置から第1の位置へ案内する。
イジェクト機構を構成する作動部材580は、イジェクト部材570に直交し、カード収容空間505を横断して右側壁513まで延びている。本実施例では、作動部材580は、イジェクト部材と同じ電気的に絶縁性の合成樹脂から一体に成形されており、作動部材580の左右方向の長さは、トレイ520の幅に略等しい。作動部材580は、図12乃至13に明瞭に示されるように、断面略L字形を成しており、第1のICカード100の先端が当接する当接面582及び第1のICカード100の先端部が支持される支持面581を有している。支持面581は、トレイ520が第1の位置にあるとき、図12に示されるように、トレイ520の前方末端部531の上面と略同じかそれより若干下に位置するように形成されている。
作動部材580は、その支持面581の後端面がトレイ520の前方末端部531の先端面と略同一平面内にあるように形成される。作動部材580の前方下方は、図12乃至14に示されるように、傾斜面583が形成されており、ICカードが挿入されていないときは、第1のコンタクト列の複数のコンタクト550の接点部551に接触または対向している。
作動部材580のイジェクト部材570から延びだす部分としての一端部は、第1の実施例と同様に、トレイ520が第1の位置にあるとき、トレイ520の第1の当接部524に対向して設置されるとともに、該作動部材580の一端部の後面が第1の当接壁524の前面に当接するように配置されている。また、作動部材580の他端部としての自由端は、トレイ520の右側壁523に対向している。本実施例では、作動部材580の自由端は、図11に示されるように、コネクタ本体510の底壁511に支持されるように構成されている。しかしながら、第1の実施例と同様に、コネクタ本体510の右側壁513に支持されるように構成されていてもよい。
以上の構成を備えるカードコネクタ501において、各ICカード100及び200の装着について、図12ないし図14を参照して以下に説明する。
図12には、ICカードが装着されていない状態におけるカードコネクタ501が示されている。
ICカードが装着されていない状態において、トレイ520は、その第1の脚部533及び第2の脚部534のそれぞれの後端縁がコネクタ本体510の段部512a及び513aに当接するとともに、前方末端部531がコンタクト560に持ち上げられ作動部材80に対向する、傾斜した第1の位置にある。この時、コンタクト550は、作動部材580の傾斜面583の前方で該傾斜面583に接するように位置している。
また、イジェクト部材570は、コイルスプリング575により後方に付勢された第1の位置にある。さらに、イジェクト部材570と一体の作動部材80も、図12に示される第1の位置にある。
図13には、カードコネクタ501に第1のICカードとしてのマイクロSDカード100が装着された状態が示されている。
第1のICカード100が、正しい姿勢で、カード挿入スロット508からカード収容空間505内に挿入される。この場合、第1のICカード100は、結局、トレイ520の右側壁523の内面523aに案内される。この時、第1のICカード100は、幅が小さいため、一対のロック金具517、518を同時に解除することはできない。
したがって、第1のICカード100は、傾斜しているトレイ520をこの位置で前方に押し倒しながらカード収容空間505内を前進する。第1のICカード100は、トレイ520を第1の位置から反時計方向に回転させ、略水平になるまで押し倒す。この時、トレイ520は、図13に示されるように、第2の位置に到達し、第1のICカード100の前進を許容するとともに、前方末端部531の下に位置する第2のコンタクト列の複数のコンタクト60を下方に変位させる。なお、本実施例の場合も、トレイ520は、第2の位置にあるとき、必ずしも水平である必要はなく、若干傾斜した状態にあってもよい。
この状態で、第1のICカード100をさらに前方に前進させる。この時、第1のICカード100は、切欠102が設けられているため、トレイ520の第1の当接壁524にあたることなく前進することができる。この第1のICカード100の前進により、第1のICカード100の先端が作動部材580の当接面582に当接する。
第1のICカード100のさらなる前進に伴い、作動部材580も前進し、第1のコンタクト列の複数のコンタクト550を下方に変位させ、作動部材580は、該複数のコンタクト550を乗り越える。それにより、第1のコンタクト列の複数のコンタクト550は、相対的に作動部材580の後方のカード収容空間505内に出現し、第1のICカード100の外部接点であるパッド106に電気的に接触することが可能となる。また、作動部材580を介してイジェクト部材570もコイルスプリング575の付勢力に抗して前方に押し進められる。
第1のICカード100の前進が不可能になったとき、第1のICカード100の押し込み力を解放すると、第1の実施例と同様、カムレバーの一端がハートカムの凹部に係止することで、イジェクト部材570、作動部材580は、図13に示される第2の位置に保持される。この時、第1のICカード100のパッド106は、第1のコンタクト列の複数のコンタクト550と所定の接圧で電気的に接触状態となる。また、第1のICカード100は、複数のコンタクト550のパッド106への接圧を介してカバー部材540に押し付けられることで、図13に示される装着位置に保持されるとともに、ICカード100の抜けが防止される。なお、トレイ520は、依然として、第2の位置に位置したままである。
図13の状態から、第1のICカード100を取り外す場合、第1のICカード100を押し込み、カムレバーの一端をハートカムの凹部から離脱させる。該離脱によるイジェクト部材570のロック状態が解除されることで、第1のICカード100への押し込みを解除すると、コイルスプリング575の付勢力(復帰力)によりイジェクト部材570及び作動部材580が第2の位置から当初の第1の位置に戻される。それにより、第1のICカード100も、カード挿入スロット508から容易に取り出すことが可能となる。第1のICカード100が取り出されることで、トレイ520も当初の第1の位置に戻される。
図14には、カードコネクタ1に第2のICカードとしてのMMCマイクロ200が装着された状態が示されている。
第2のICカード200が、正しい姿勢で、カード挿入スロット508からカード収容空間505内に挿入される。この場合、第2のICカード200は、トレイ520の第1の係止壁17に案内される。
第2のICカード200は、さらに前進することで、切欠202が第2の側壁としての右側壁523に案内され、同時に、第2のICカード200の切欠202の後方は、第2の係止壁25に案内される。この時、一対のロック金具517及び518は、第2のICカードに切欠202が存在していても、両ロック金具517、518が前後に切欠202の長さ分ずれて配置されているので、対応する第1の係止壁525及び第2の係止壁526から同時に離脱し得る。したがって、トレイ520は、ロック状態から解放された状態になる。
この状態で、第2のICカード200がカード収容空間505内でさらに押し込まれると、トレイ520は、トレイ520と第2のICカード200との間の摩擦力により、第2のICカード200の前進に伴って、一緒に前進する。
この状態で、第2のICカード200をさらに押し込むと、第2のICカード200の先端が、トレイ520の第1の当接壁524に当接する。トレイ520の第1の当接壁24は、作動部材580に接しており、また、第2のICカード200の先端も作動部材580の支持面581の後端面に当接することから、作動部材580及びイジェクト部材570も前進する。トレイ520及び作動部材580が前進することで、第2のコンタクト列の複数のコンタクト560の接点部561は、トレイ520の複数のスリット530の真下に入る。また、第1のコンタクト列の複数のコンタクト550の接点部551は、作動部材80の下面をくぐり抜け、トレイ520の前方末端部531の下に入る。
第2のICカード200がさらに前進することで、該第2のICカード200の厚みにより、トレイ20は、前進するとともに、反時計方向に回動し、略水平になるまで押し倒され、図14に示されるように、第3の位置に到達する。トレイ520が第3の位置に達すると、第1のコンタクト列の複数のコンタクト550は、トレイ520の前方末端部531に下に位置しているので下方に変位する。また第2のコンタクト列の複数のコンタクト60は、スリット530を通過してトレイ520の底壁511より上方のカード収容空間505内に相対的に出現する。
第2のICカード200の前進が不可能になったとき、第2のICカード200の押し込み力を解放すると、第1のICカード100のときと同様に、カムレバーの一端がハートカムの凹部に係止し、イジェクト部材570、作動部材580は、図14に示される第2の位置に保持される。この時、第2のICカード200のパッド206は、第2のコンタクト列の複数のコンタクト560と所定の接圧で電気的に接触状態にある。また、第2のICカード200は、複数のコンタクト560のパッド106への接圧を介してカバー部材540に押し付けられることで、第1のICカード100の場合と同様に、図14に示される装着位置に保持されるとともに、ICカード200の抜けが防止される。
図14の状態から、第2のICカード200を取り外す場合、第1のICカード100の場合と同様、第2のICカード200を押し込むことで、イジェクト部材580のロックが解除される。その結果、コイルスプリング575の付勢力(復帰力)によりイジェクト部材570及び作動部材580は、第2の位置から当初の第1の位置に戻される。それにより、第2のICカード200も、カード挿入スロット8から容易に取り出すことが可能となる。第2のICカード200が取り出されることで、トレイ520も当初の第1の位置に戻される。
なお、ICカードの誤挿入防止機構については、第1の実施例と略同じ態様をとるので、説明を省略する。
以上本発明に係るカードコネクタの好ましい実施例について説明してきたが、カードコネクタの構成は上記実施例に限られるものではなく、本発明に係るカードコネクタは、装着されるICカードの大きさや形状に応じて、適宜変更が可能である。