JP4616119B2 - マルチビーム生成器、それを用いたマルチビーム光源および空間光伝送装置 - Google Patents
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Description
このとき、光ビームの入射角度変動により受光開口から光ビームが外れないように、光ビームのビーム拡がり角を大きくして、受光開口上での光ビームのスポット径を受光開口より十分大きくすることが望ましい。しかしビーム拡がり角を大きくしすぎると、単位面積当たりの光量が低下し、さらに自由空間損失も増えるので、空間光伝送に必要な受信光強度が確保できなくなる場合があるという問題がある。
このため、特許文献1には、1つの光ビームに通信情報信号である主信号と光ビームの出射方向を調整するためのパイロット信号を重ね合わせて通信相手側に送光する光空間通信装置において、情報の伝達に先立ち光ビームの拡がり角を大きくするとともにパイロット信号の出力レベルを増大し、光ビームの出射方向の調整後に光ビームの拡がり角を小さくするとともに主信号の出力レベルの出力レベルを増大して主信号による情報の伝達を行うようにした光空間通信方法が記載されている。
すなわち、特許文献1に記載された光空間通信装置では、通信のタイミングであるか光追尾動作のタイミングであるかに応じて、発光素子からの光を集光するコリメートレンズを駆動手段により光軸方向に移動することにより、光ビームの拡がり角を変更できるようになっている。
特許文献1に記載の技術では、通信時と追尾動作時とで、光ビームの拡がり角を変更するので、通信時には光量低下を起こすことなく、追尾動作時には適切な追尾範囲が確保できるものの、通信中は光ビームの拡がり角が狭い通信光の範囲で追尾が行われるにすぎない。そのため、何らかの外乱により通信光が受光範囲から外れると、通信を中断して、光ビームの拡がり角を増大させてから追尾動作を行わなければならないという問題がある。したがって、通信相手の追尾を行い、追尾動作が終了してからビーム拡がり角を変更して通信動作に切り換えなくてはならないので、通信を回復するまでに時間がかかってしまうものである。
また、光ビームの拡がり角を変える際にコリメートレンズを移動させるため、通信光の収差を良好に保つためにはコリメートレンズと発光素子との間の位置関係を厳密に位置調整しなければならず、高精度な駆動手段を用いる必要がある。そのため、装置の製作コストが増大してしまうという問題がある。
また、追尾動作を行うためのビーコン光光源を通信光光源と別に設けることも考えられる。しかし、この場合にも追尾範囲を広げようとすると単位面積当たりの光強度が低下することは同様であるため、通信光が入射する範囲での精追尾の追尾精度が低下するという問題がある。精追尾の精度を向上しようとすると、通信光が外れた場合の粗追尾の追尾範囲が狭くなるので、外乱を受けた場合に追尾性能が劣ってしまうという問題がある。
また、精追尾用のビーコン光光源と粗追尾用のビーコン光光源とを備えることも考えられるが、部品点数が増大するとともに、それぞれの位置合わせなど組立調整の手間がかかるという問題がある。
この発明によれば、光入射手段により光分割手段の入射面に光束を入射すると、光分割手段により、ビーム拡がり角がそれぞれ異なる複数の略同軸光に分割して出射される。そのため、相対的にビーム拡がり角が広い広角ビームと、相対的にビーム拡がり角が狭い狭角ビームとが略同軸上にマルチビームとして出射される。
光分割手段としては、物理的、光学的な領域や境界により光束を分割してからビーム拡がり角特性を変えるものや、例えばレンズ面、反射面、偏光面、光分岐面、回折格子面などの光学作用面により分割するとともにビーム拡がり角特性を変えるものや、屈折率分布、複屈折特性、偏光光伝播特性など媒質の空間的光学特性により媒質を透過する過程で分割するとともにビーム拡がり角特性を変えるものや、これらを複数組み合わせたものなどを挙げることができる。
この発明によれば、光入射手段により、光分割手段の入射面の相異なる入射部位にわたって光束が入射され、光分割手段により、それら入射部位に応じて、光束が分割され、ビーム拡がり角が異なる略同軸光として出射される。
分割して出射される光の光量は、光分割手段の異なる入射部位に対するそれぞれの光束の入射割合により異なり、入射光束の光束径や照射位置により決定される。そのため、光分割手段の入射面における入射光束のスポットの位置、大きさにより、出射光の数やそれぞれの光量を可変することができる。
この発明によれば、導光手段の一方の端部に露出された複数の導光領域に対して、入射された光が、複数の導光領域の内を導光され、他方の端部から、それぞれの導光領域の断面外径に応じたビーム拡がり角を備える略同軸光として、分割して出射される。
光分割手段として導光手段を用いるため、入射面と出射面との位置設定が容易となり、マルチビーム生成器を用いた装置のレイアウトの自由度を向上することができる。
また、入射面に対する入射角は、導光手段の端面のNAの範囲であればよいので、比較的自由に設定することができるから、組立が容易となる。
このような導光手段として、光ファイバを好適に採用することができる。
例えば、コアとクラッドとをそれぞれ1つずつ備える光ファイバは、それぞれの領域が、断面外径の異なる導光領域を形成している。そのため、入射面でコアおよびクラッドにまたがるスポット光を照射することにより、コアで導光される光とクラッドで導光される光とに分割され、ビーム拡がり角が異なる2つの出射光が出射面から出射される。
そして、スポット光のスポット径やスポット光の照射位置を可変することにより、コアで導光される光とクラッドで導光される光の光量比を可変することができる。
この発明によれば、集光素子により、導光手段から分割して出射された複数の出射光を集光し、各ビーム拡がり角を変更することができる。そのため、集光素子のパワーや配置位置などの設定により、複数の出射光のビーム拡がり角を連動して変更することができる。
この発明によれば、集光素子移動機構を備え、複数のビーム拡がり角を動的に可変することができるので、必要に応じてビーム拡がり角を調整することができる。
この発明によれば、多焦点光学素子の異なるパワーを有する複数の領域に、一定のビーム拡がり角を有する光が入射されて、それぞれが透過する複数の領域ごとに光ビームが分割され、それぞれ異なるビーム拡がり角を有する複数の出射光として出射される。
また光入射手段と多焦点光学素子との相対位置を可変することにより複数の出射光のビーム拡がり角を可変することができる
異なるパワーを有する複数の領域は、略同軸状の出射光を形成しやすいように略同心円状に設けることが好ましい。
この発明によれば、位置可変機構により、複数のビーム拡がり角を動的に可変することができるので、必要に応じてビーム拡がり角を調整することができる。
この発明によれば、回折格子を備えるので、複数の回折方向に進む回折光によりそれぞれビーム拡がり角が異なる同軸光として出射される。
また、回折格子は、光束の一部が回折格子を透過するような配置することにより、光束の入射部位により回折光と非回折光とに分割してもよい。また、複数の回折格子を設けて、光束の入射部位により、異なる回折格子を透過することで異なるビーム拡がり角が得られるようにしてもよい。また、複数の回折格子にそれぞれ異なるパワーを有する回折レンズを構成することにより、多焦点光学素子を形成してもよい。この場合、請求項6に記載の発明と同様の作用効果を備える。
この発明によれば、光分割手段の入射面上での光束のスポット径または入射位置を変更する光量比可変部により、ビーム拡がり角が異なる複数の出射光の光量比を容易に可変することができる。
そのため、減光フィルタなどの光量損失を起こす手段を用いることなく光量比を可変することができる。
例えば、空間光伝送装置のビーコン光光源に用いる場合、光追尾が広範囲で光追尾を行う粗追尾動作か、通信光が入射する範囲の狭い範囲の精追尾動作を行うかに応じて、ビーム拡がり角が大きい出射光とビーム拡がり角が小さい出射光との光量比を可変することができるので、光エネルギーを有効利用することができる。
また例えば、照明光源に用いる場合、ビーム拡がり角に応じた照射領域の必要に応じて、照明輝度を可変することができる。
この発明によれば、光入射手段の出射光が、パワーを有する光学素子により収斂または発散されるので、光分割手段の入射面上でのスポット径が可変される。
そのため、例えば光分割手段として入射面の面積が小さい光ファイバを用いるような場合に、光入射手段から拡がり角の大きい光が出射されても、光学素子のパワーを適宜に設定することにより、入射面や光分割手段の境界の外径の大きさに応じた微小なスポット径が形成できるので、光量比の調整が容易となる。
この発明によれば、移動保持機構により、光入射手段を光分割手段の入射面に対して位置移動可能に保持することにより、光入射手段から出射される光束の光分割手段の入射面上でのスポット径または入射位置を変更することができる。そして、それにより光分割手段からの複数の出射光の光量比を可変することができる。
例えば、光束が発散光または収斂光である場合に、光入射手段を光軸方向に移動させることにより、入射面上のスポット径を可変できる。また、一定スポット径の光束の入射位置を可変することにより、それが入射する分割領域ごとの光量を可変し、出射光の光量比を可変することができる。
そのため、光入射手段内では、レンズなどの光学素子の位置移動を行う必要がないので、容易に光量比を可変することができる。
光入射手段から出射される光束としては、レンズなどにより集光された光束を採用することもできるが、例えば光ファイバからの発散光束をそのまま用いることもできる。後者の場合、光入射手段の構成を簡素にすることができる。
この発明によれば、光入射手段が光ファイバを備えるので、光源の配置の自由度が向上し、種々の装置に組み込むことが容易となる。
また、光ファイバにより光伝送を行う装置に組み込むことが容易となる。
また、光ファイバから光分割手段の入射面に直接出射するようにすれば、簡素な構成とすることができて好ましい。
この発明によれば、請求項1〜12に記載のマルチビーム生成器を用いるので、請求項1〜12に記載の発明と同様の作用効果を備える。
この発明によれば、光源部が1つの光源からなるので、ビーム拡がり角が異なり、波長が同一である複数の出射光を投光することができる。また、光源が複数ある場合に比べて簡素に構成することができる。
この発明によれば、ビーコン光光源を備えるので狭角ビームと広角ビームとをマルチビームとして略同軸上に出射することができる。その際、通信光に何ら影響を与えることなくそれらビーコン光を出射することができる。また、狭角ビームと広角ビームとの間の光量比をそれぞれの位置検出に必要な光量が得られるように可変することができる。
また、光量比が動的に可変できる場合には、広角ビームの追尾動作時には広角ビームの光量比を増大し、狭角ビームの追尾動作時には狭角ビームの光量を増大させることができる。前者の場合、ビーム拡がり角も動的に可変できる構成であれば、例えば広角ビームの光量を一定に保持したままビーム拡がり角を拡大して位置検出範囲を拡大するようにしてもよい。また、後者の場合、同じくビーム拡がり角も動的に可変できる構成であれば、狭角ビームの捕捉ができなくなった場合を考慮して、広角ビームも追尾が可能となる程度に広角ビームの照射範囲を確保しておくことが望ましい。
また、本装置を複数用意して2つ以上を対向して配置することにより、通信相手側では、広角ビームを粗追尾動作に用い、狭角ビームを精追尾動作に用いることができるので、相手側からのビーコン光を送受光光学系により受光し、追尾制御機構により相手側の通信光の送光方向を検出して追尾動作を行って、双方向の空間光通信を行うことができる。
この発明によれば、ビーコン光のビーム拡がり角に応じてそれぞれ検出性能が異なる位置検出手段を備えるので、ビーム拡がり角に応じた位置検出を行うことができる。
例えば、ビーム拡がり角が相対的に狭角の場合、通信相手側から送光されるビーコン光の入射方向は、狭い範囲にとどまるから、位置検出手段は、位置検出範囲が狭い範囲で高精度に検出する検出性能とすることが好ましい。また、通信中に追尾制御するため高速応答性を有することが好ましい。例えば4分割PDなどを採用することができる。
また、ビーム拡がり角が相対的に広角の場合、通信相手側から送光されるビーコン光の光エネルギー密度が低く、入射方向の角度範囲は広範囲にわたるので、位置検出手段は、位置検出分解能は低くても低光量でも検出感度が高い検出性能とすることが好ましい。また、この場合は、通信確立の初期段階における追尾制御か、または通信中の外乱により通信光を捕捉できなくなった場合の追尾制御となるため、狭角ビームにより追尾制御する場合と比べて応答性は低くても十分である。例えばCCDやPSDなどを採用することができる。
この発明によれば、ビーコン光が送受光光学系を通して送光されるので、ビーコン光を拡径する光学系を送受光光学系が兼ねることができるから、ビーコン光をビーコン光光源から直接出射する場合とに比べて高価な光学系の部品点数を削減することができる。また、ビーコン光光源をコンパクトにすることができる。
また、送光光とビーコン光とが同一光軸上に出射することができるので、ビーコン光により送光光の送光方向の情報を正確に伝達することができる。
また、本発明のマルチビーム生成器を用いた空間光伝送装置によれば、マルチビーム生成器により光源から狭角ビームおよび広角ビームを略同軸上に出射してビーコン光を形成することができるので、複数を対向させて空間光通信を行う場合に精追尾、粗追尾のそれぞれに必要な光量比に分割された複数のビーコン光を出射することができるから、精追尾でも粗追尾でも良好な追尾動作を行うことができるという効果を奏する。
本発明の第1の実施形態に係るマルチビーム生成器について、それを用いたマルチビーム光源および空間光伝送装置とともに説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るマルチビーム生成器を用いた空間光伝送装置の概略構成について説明するための側面視の模式説明図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係るマルチビーム生成器を用いたマルチビーム光源の概略構成を説明するための概念図である。図3は、本発明の第1の実施形態に係るマルチビーム生成器の概略構成について説明するための光軸を含む断面説明図である。
空間光伝送装置100の概略構成は、通信光18を送光し、入射光19を受光するための通信制御光学系120と、ビーコン光8を出射するビーコン光光源110(マルチビーム光源)とが、通信制御光学系120から送出される制御信号に基づいて2軸方向の姿勢制御が可能なジンバルステージ30により保持された筐体130に収められてなる。
アフォーカル光学系20は、略平行光として入射される入射光19を、縮径された略平行光とし、入射光19の光路の逆側から入射される通信光18を拡径して装置外部に出射する望遠鏡光学系である。そのような望遠鏡光学系であれば、適宜のレンズ光学系または反射光学系を採用することができる。結像性能や光利用効率を向上するには、自由曲面ミラーなどを偏心または傾いて配置した偏心反射光学系とすることが好ましい。
ビームスプリッタ22は、アフォーカル光学系20に入射したビーコン光19bを反射して光路を分岐するとともに、通信光18、19aを透過させる第1の光路分岐手段である。本実施形態では、ビームスプリッタ面が、通信光18、19aが略100%透過し、ビーコン光19bの一部(例えば50%)を透過する波長分離特性を備える構成を採用することができる。
可動ミラー23は、後述する精追尾検出器28の検出出力に応じて通信光19aの反射方向を一定に保つ制御を行う偏向角制御部230に接続され、偏向角制御部230の制御信号により傾斜角が可変される光偏向手段である。例えば2軸方向に回動可能なガルバノミラーを採用することができる。
ビームスプリッタ24は、通信光光源部25から出射される通信光18を反射して、可動ミラー23で反射される通信光19aの光路と同軸に入射させるための光路合成手段である。本実施形態では、ビームスプリッタ面が、通信光19a、ビーコン光19bを略100%透過し、通信光18が略100%反射する波長分離特性を備える構成を採用することができる。なお、通信光18、19aの波長が同一の場合には、光路中に偏光制御手段を追加することにより偏光状態の差に基づいて上記の分離特性を実現することができる。
通信光検出部29は、ビームスプリッタ24の透過光の光路上に、ビームスプリッタ27を間に介して配置され、可動ミラー23が回動の中立位置にあるとき、アフォーカル光学系20を通る軸上主光線が通信光検出部29の受光部の中心位置を通るように位置決めされている。
ビームスプリッタ27は、ビームスプリッタ面が、ビームスプリッタ24の透過光のうち、通信光19aを略100%透過し、ビーコン光19bを略100%反射する波長分離特性を備える第2の光路分岐手段である。
粗追尾検出器21の検出出力は、ステージ移動制御部210に送出され、受光位置のずれ量を入射方向のずれ量に換算し、そのずれ量を解消するように、ジンバルステージ30を駆動して、筐体130の姿勢制御を行い、アフォーカル光学系20の光軸がビーコン光19bの入射方向に略一致するように回動させる。
粗追尾検出器21が、2次元CCDの場合、各画素データからピーク輝度位置を算出したり、あるいは受光スポットの範囲を検出してその重心位置を算出したりするといった画像処理を行って、受光位置を検出する。
精追尾検出器28の検出出力は偏向角制御部230に送出され、精追尾検出器28の受光面中心からの位置ずれに応じた信号を差動演算回路などにより生成し、偏向角制御部230に含まれる可動ミラー駆動回路を経て可動ミラー23の偏向角を可変するようフィードバックされる。このフィードバック制御により、ビーコン光19bの精追尾検出器28上のスポット位置が常に一定となるよう可動ミラー23の偏向角が制御され、同時に通信光18が対向する装置に向かうように指向角が制御される。
本実施形態のビーコン光光源110は、図2に示すように、ビーコン光8として、相対的にビーム拡がり角(以下、単に拡がり角と称する)が大きい広角放射光6(広角ビーム)と、相対的に拡がり角が小さい狭角放射光7(狭角ビーム)とを同軸上に出射する2ビーム光源である。
ビーコン光光源110の概略構成は、光源部1、光入射手段111、光分割用光ファイバ4(光分割手段)、および空間結合部5(集光素子)からなる。ここで、ビーコン光光源110から光源部1を除いた構成は、本発明の第1の実施形態のマルチビーム生成器を構成する。
光入射手段111は、光源部1により供給されたレーザ光を、光分割用光ファイバ4の入射面41上の所定位置に所定スポット径の光束として投射するものである。本実施形態では、光ファイバ9、ファイバ結合部2、および光量比可変部3からなる。
ファイバ結合部2は、光ファイバ9から放射された空間光を集光し、光分割用光ファイバ4の入射面41上に所定のスポット径を形成する。本実施形態では、図3に示すように、正のパワーを有するレンズ10を採用している。
本実施形態では、レンズ10を3軸方向に移動可能に保持するアクチュエータからなり、光ファイバ9に対してレンズ10の位置を移動できるようになっている。それにより、入射面41上の入射位置およびスポット径の少なくともいずれかを可変できるようになっている。
本実施形態では、光分割用光ファイバ4は、例えば、直径d1=10μm、外径d2=125μmのシングルモードファイバを採用している。
本実施形態では、空間結合部5として、図3に示すように、正のパワーを有するレンズ11(集光素子)を採用している。レンズ11の焦点距離は、コア4aの直径が、例えば10μm程度の光分割用光ファイバ4を採用する場合、数mm程度であることが好ましい。
そして、レンズ11は、光分割用光ファイバ4の出射面42に対向して、光軸がコア4aの中心軸と同軸となるように配置され、コア出射面42a、クラッド出射面42bから出射されるコア出射光13a(出射光)、クラッド出射光13b(出射光)を集光して、それぞれの拡がり角に応じて、狭角放射光7a、広角放射光6aを形成する。なお、広角放射光6a、狭角放射光7aは、それぞれ広角放射光6、狭角放射光7を構成する光線の1つを描いたものである。
レンズ11の配置位置は、初期調整で光分割用光ファイバ4に対して適宜位置に位置決めされていてもよいし、光分割用光ファイバ4に対して、例えば移動ステージやレンズ送り機構などにより、手動または自動で位置移動できるようにしてもよい。位置移動方向は、光軸方向のみでもよいし、3軸方向であってもよい。
図4は、本発明の第1の実施形態に係るマルチビーム生成器の動作について説明するための図3のA−A線に沿う断面説明図である。図5(a)、(b)、(c)は、それぞれ本発明の第1の実施形態のマルチビーム生成器の広角ビーム、狭角ビーム、それらの合成ビームの放射光強度分布の一例について説明するための模式的なグラフである。それぞれ横軸は光強度Iを示し、縦軸は放射角度ω(単位、deg)を示す。
光源部1から放射され、光ファイバ9に光結合されたレーザ光は、コア9a中を伝播して、端面でレンズ10に向けて放射される(図3参照)。そして、レンズ10により集光されて、入射面41上にスポットを形成する。このとき、光量比可変部3により、レンズ10の位置が適宜移動され、入射面41上のスポットの位置および大きさの少なくともいずれかが調整される。
NA=√(n1 2−n2 2) ・・・(1)
そして、図4(a)に示すように、スポット43Aがコア入射面41aの直径d1を超える場合、クラッド入射面41bに入射された光は、次式を満足することにより、クラッド4b内を全反射して伝播する。
θi<sin−1(n2・sinθc2) ・・・(2)
θc2=cos−1(1/n2) ・・・(3)
ここで、クラッド4bの外周は、屈折率1の空気により覆われているものとしている。また、角θiは入射面41への光線入射角、角θc2はクラッド4bと外周の空気との境界面における臨界角を表す。
本実施形態では、θiが0°から90°の範囲でクラッド入射面41bに入射したすべての光がクラッド4b内を全反射して伝播するいわゆるクラッドモードの設定としている。すなわち、クラッド4bに入射した光は、入射角によらずすべてクラッド4b内に閉じ込められることになる。
クラッドモードとなる条件は、式(2)、(3)より、次式で表される。
n2>1.4142 ・・・(4)
一般的なシングルモードファイバのクラッドの屈折率は、波長1550nmに対して1.463程度、波長980nmに対して1.462程度のため、式(4)を満足しているから、光分割用光ファイバ4として採用することができる。
このとき、コア4aとクラッド4bとは、それぞれの外径が異なるので、コア出射光13aの放射角は、クラッド出射光13bの放射角よりも小さくなっている。
本実施形態のように、コア4a、クラッド4bの外径がそれぞれd1=10μm、d2=125μmの場合、例えば、レンズ11の焦点距離fを6mmとすると、コア出射面42aから出射されるコア出射光13aは略点光源と見なすことができる。
そのため、レンズ11の焦点位置をコア出射面42aに一致させることにより、狭角放射光7aは、略コリメート光となって放射される。
一方、クラッド出射面42bから出射されるクラッド出射光13bは、光分割用光ファイバ4の長さが十分な長さを有する場合、クラッド4b内で、光線角度分布や密度分布が略均一となった面光源となるため、レンズ11に対して、最大像高d0=125/2=62.5μmの光線が最軸外光となる。そして、最軸外光線のレンズ11からの放射角θ0は、次式のように計算される。
θ0=sin−1(d0/f)
=sin−1(0.0625/6)=0.6° ・・・(5)
つまり、コア4aを出射したコア出射光13aによる狭角放射光7aの拡がり角が0°であるのに対して、クラッド4bを出射したクラッド出射光13bによる広角放射光6aの拡がり角は1.2°(=0.6°×2)となる。
また、狭角放射光7は、図5(b)に示すように、式(1)で決まるNAによる拡がり角の狭いガウス分布状の放射角度特性を有する。
実際に観察される放射角度特性は、図5(c)に示すように、それぞれが重ね合わされて放射角度0degにピークを有し、その近傍に集中した高強度の領域と、広い角度範囲に広がった低強度の領域とを有する放射角度特性となる。
このように、ビーコン光光源110は、光入射手段111により入射面41上に入射される光束を、入射面41上の入射部位がコア入射面41aであるかクラッド入射面41bであるかに応じて、それぞれ狭角放射光7、広角放射光6に分割して出射するものとなっている。
例えば、図4(a)に想像線で示すスポット43Bのように、スポット径をスポット43Aより大きく設定すれば、コア入射面41a、クラッド入射面41bに入射する光量のうち、クラッド入射面41bに入射する光量が増えるので、広角放射光6の光量比が増加する。
また、図4(b)に示すように、スポット44として、スポット43Aと同じスポット径で、コア入射面41aに対する入射位置を変更しても、狭角放射光7と広角放射光6との光量比を可変することができる。
図4(b)の場合、スポット44は、コア入射面41aの一部を覆う位置関係にあるので、コア出射光13aの量が低減し、光強度の高いスポット44の中心部は、クラッド入射面41bに入射する。そのため、広角放射光6の光量比が増加する。
また、スポット44がコア入射面41aを全部覆っている場合でも、強度分布が低下するスポット44の周辺部で覆うような入射位置であれば狭角放射光7の光量比が低下する。
このように、光量比可変部3によりレンズ10の位置を移動して、入射面41上のスポットの入射位置およびスポット径の少なくともいずれかを変更すれば、狭角放射光7と広角放射光6との光量比が可変される。
一方、クラッド内伝播光の強度を維持するためには、マイクロベンディング等によるクラッドモードの減衰を避けるように適切に光分割用光ファイバ4を配置することが望ましい。
図6は、本発明の第1の実施形態の空間光伝送装置のビーコン光の放射範囲と位置検出範囲の関係について説明するための概念図である。
図1に示すように、略平行光の入射光19がアフォーカル光学系20に入射されると、アフォーカル光学系20の倍率により光束径が縮径される。そして、ビームスプリッタ22に入射し、入射光19のうち波長が異なるビーコン光19bの約50%が反射されて、粗追尾検出器21により受光される。
一方、ビームスプリッタ22を透過したビーコン光19bは、可動ミラー23で偏向され、ビームスプリッタ24を透過して、ビームスプリッタ27により略100%反射される。そして精追尾検出器28により受光される。
図6は概念図のため、実際の寸法とは異なる。例えば、本実施形態では粗追尾検出器21と精追尾検出器28との感度が数桁程度異なるので、放射光強度が半径の2乗に反比例することを考慮しても、放射範囲48は図示よりもかなり大きくとることができる。
例えば、放射範囲51、48の半径をそれぞれr1、r2とし、粗追尾検出器21、精追尾検出器28の検出に必要な光量を単位面積当たりp1、p2とする、それぞれの感度の差を係数α(ただし、α>1)を用いて次式のように表すことができる。
p2=α・p1 ・・・(6)
また広角放射光6、狭角放射光7の光量比を、例えば1:1にしたとすれば、αが十分大きい場合、次式が成り立つ。
p1・π・r1 2=p2・π・r2 2 ・・・(7)
式(6)、(7)より、
r2=r1・√α ・・・(8)
したがって、例えば、α=1000とすれば、式(8)より、√α=31.6となり、広角放射光6の放射範囲48の半径は、狭角放射光7の約32倍にできる。
粗追尾検出器21は、受光面が大きく低光量であっても高感度に検出できるようになっているので、そのような広角放射光6から良好に位置検出を行うことができ、その検出出力がステージ移動制御部210に送出される。
ステージ移動制御部210では、受光位置を入射方向に換算し、ビーコン光19bの入射方向にアフォーカル光学系20の光軸が合うように、ジンバルステージ30を移動させる制御信号を送出する。
そして精追尾検出器28によりビーコン光19bに入射方向のずれがより高精度に検出され、偏向角制御部230により可動ミラー23の傾斜角がフィードバック制御され、ビーコン光19bが精追尾検出器28の中心に入射するように制御される。
可動ミラー23によりビーコン光19bとともに、通信光19aも一定方向に偏向される。そのため、ビームスプリッタ27を透過した通信光19aは、通信光検出部29の中心位置に入射する。
このようにして、ビーコン光19bを用いて粗追尾検出器21、精追尾検出器28によりそれぞれ粗追尾、精追尾が行われ、通信光19aが通信光検出部29に確実に入射され、外乱をうけても、粗追尾または精追尾により直ちに入射方向ずれが補正されるから、安定して通信を行うことができる。
そして、通信光19aの光路を正確に逆進して、可動ミラー23で偏向され、ビームスプリッタ22を透過してアフォーカル光学系20に入射し、拡径された略平行光として、装置外部に出射される。
このため、通信光19aが到来する方向に正確に送光される。
このようにして、本実施形態の空間光伝送装置100によれば、通信相手側に対して送受光を行い、互いにビーコン光により相手の位置を追尾して双方向通信を行うことができる。
また、ビーコン光8が、広角放射光6と狭角放射光7とからなるので、粗追尾と精追尾とを切り換えることなく、広角放射光6、狭角放射光7のうち捕捉される方を用いて、それぞれ粗追尾、精追尾を行うことができる。そのため、外乱などが生じても迅速に追尾状態に復帰することができる。
したがって、広範囲な初期捕捉性能と、狭角のビーコン光による高精度な追尾動作を両立させることができ、特に移動体通信などにおいて好適なものとなる。
まず、広角放射光6を初期捕捉して、粗追尾・精追尾を上記と同様に行う。
このように精追尾が開始されると、外乱により精追尾範囲を逸脱する場合があるとしても、逸脱すると、ただちに粗追尾動作が行われるので、粗追尾可能な範囲を初期捕捉時ほど広くとる必要がなくなる。そのため、レンズ11を移動して拡がり角を狭める変更を行い、放射範囲48を縮径する。
縮径する大きさは、想定される外乱の大きさや制御能力により、必要に応じて設定することができるが、例えば、放射範囲48を粗追尾検出器21の検出範囲47内に収まる程度の放射範囲48a(図6の2点鎖線)に縮径する。このとき、放射範囲51も同様に縮径され、放射範囲51a(図6の2点鎖線)となる。
このようにすれば、広角放射光6、狭角放射光7の光強度が増加するので、粗追尾検出器21、精追尾検出器28の受光量が増大し、位置検出のS/Nの高い追尾制御が可能となり、通信の安定性を向上することができる。
また、粗追尾検出器21の必要光量は低いので、レンズ10を移動して広角放射光6、狭角放射光7の光量比を変更し、余分な広角放射光6の光量を狭角放射光7に回すようにすれば、さらにS/Nを高めることができる。
図7は、本発明の第1の実施形態の第1変形例のマルチビーム生成器の概略構成について説明するための光軸を含む断面説明図である。
本変形例のマルチビーム生成器を用いたビーコン光光源110A(マルチビーム光源)は、上記第1の実施形態のビーコン光光源110において、光ファイバ9、レンズ10を一体に保持して、光分割用光ファイバ4に対して相対移動させるようにしたものであり、光量比可変部3に代えて、光量比可変部の他の実施形態である移動ステージ34(移動保持機構)を備える。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
フェルール37は、例えばFCコネクタなどで使われているジルコニアなどの材料で高精度に製作された中間部材であり、光分割用光ファイバ4の偏心を外形に対して約0.5μm以内の高精度に位置決めするために用いられる。フェルール37の長さは、約10mm程度とされ、フェルール37とクラッド4bとは、クラッド4b内を伝播する光の透過損失が発生することなくクラッド4b内で全反射されるように、屈折率の低い接着剤38により接合されている。
接着剤38としては、例えば光通信用紫外線硬化型接着剤を採用することができる。このような接着剤は、屈折率を1.33から1.7までの範囲でチューニングできる製品が知られている。
例えば、接着剤38として、屈折率1.35のものを採用し、クラッド4bの屈折率n2=1.462とすると、屈折率の計算から、光分割用光ファイバ4への最小入射角が、24.9°となる。これは、NAが0.42以下の光線はすべて全反射することに相当するから、レンズ10として、通常のレンズを用いる限りは、ほとんど光量損失することなくクラッド4b内をクラッドモードとして伝播することができる。
移動ステージ34は、例えば、電磁アクチュエータなどの機構を採用することができる。移動ステージ34の移動方向は、光軸方向のみでもよいし、3軸方向に移動可能であってもよい。
図8は、本発明の第1の実施形態に係るの第1変形例のビーム生成器に用いることができる移動保持機構の一例について説明するための斜視説明図である。図中のxyz直角座標系は、方向の参照の便宜のために記載したものである。
図8に示す移動ステージ34は、ベース63に図示z方向に立設され、図示x方向に変形できるように互いに平行に配置された板バネ62、62の先端にサブホルダ61が設けられ、サブホルダ61から図示x方向に平行に4本のワイヤーバネ60が延され、その先端にホルダ59が形成されている。ワイヤーバネ60は、ホルダ59を図示y方向、z方向に可動に保持している。
ホルダ59には、図示しないが、保持枠32を介して、レンズ10、光ファイバ9が固定されている。
そして、サブホルダ61、ホルダ59には、図示しないコイル、マグネット、ヨークなどで構成される電磁駆動手段により、y、z方向およびx方向にそれぞれ駆動力が付勢される。
例えば、レンズ10から発散光または収斂光が出射される場合、光軸方向に移動することにより、入射面41上のスポット径を可変することができる。また入射面41と平行な方向に移動する場合、出射光の入射位置を偏心させることができる。
したがって、移動ステージ34によりコア入射面41a、クラッド入射面41bに入射する光量比を可変することができる。その際、コア9aとレンズ10との位置関係が固定されているので、移動時の位置ずれなどによりレンズ10からの出射光の収差劣化などが発生するこなく、光量比を安定して可変することができるという利点がある。
図9は、本発明の第1の実施形態の第2変形例のマルチビーム生成器の概略構成について説明するための光軸を含む断面説明図である。
本変形例のマルチビーム生成器を用いたビーコン光光源110B(マルチビーム光源)は、上記第1変形例のビーコン光光源110Aにおいて、レンズ10を削除したものである。以下、第1変形例と異なる点について説明する。
そのため、移動ステージ34により、光ファイバ9を移動することにより、コア9aから出射された発散光が、入射面41上で入射位置およびスポット径の少なくともいずれかが変更された状態で入射される。それにより、広角放射光6と狭角放射光7との光量比が可変される。
D=2・Lf・NA ・・・(9)
例えば、Lf=0.1mmとすると、D=0.024mmとなるので、コア4aの径が0.01mmに対して、2.4倍のスポット径となる。そのため、分光比としては、クラッド4bを伝播するクラッド出射光13bがコア出射光13aに比べておよそ6倍になるものである。
この分光比は、移動ステージ34によりLfを精密に可変することにより、適宜の分光比に設定することができる。
偏心については、上記の実施形態と同様なので、説明は省略する。
次に、本発明の第2の実施形態に係るマルチビーム生成器について説明する。
図10は、本発明の第2の実施形態に係るマルチビーム生成器を用いたマルチビーム光源の概略構成を説明するための光軸を含む断面説明図である。図11(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係るマルチビーム生成器に用いることができる多焦点光学素子の一例について説明するための、それぞれ光軸を含む断面図、右側面図である。図11(c)は、図11(a)における模式的な光路図である。
ただし、移動ステージ34は、少なくともコア9aからの出射光の光軸方向に移動可能に設けられているものとする。この場合、移動ステージ34は、多焦点光学素子の位置可変機構として用いられている。
また、マルチビーム生成器115は、光ファイバ9の図示しない端部に光源部1を配置することによりビーコン光光源112(マルチビーム光源)を構成することができる。
本実施形態では、図11(a)、(b)に示すように、入射面側に平面または球面からなるレンズ面14cが形成され、出射面側の中心部に短焦点レンズ面14aを、境界線Lを隔ててその周辺部に長焦点レンズ面14bをそれぞれ形成した非球面で構成される。
そして、レンズ面14cが、光ファイバ9側に向けて配置されている。
図12(a)、(b)、(c)は、それぞれ本発明の第2の実施形態のマルチビーム生成器の広角ビーム、狭角ビーム、それらの合成ビームの放射光強度分布の一例について説明するための模式的なグラフである。それぞれ横軸は光強度Iを示し、縦軸は放射角度ω(単位、deg)を示す。
本実施形態では、広角放射光15bと狭角放射光15aとは、回折による重なりを除いて、放射角度により略分離されたマルチビームを形成している。そのため、拡がり角0°の近傍では、広角放射光15bの成分がほとんどないので、拡がり角0°の近傍では、狭角放射光15aのみとなっている。拡がり角0°の範囲の光強度を増加させるには、予め短焦点レンズ面14aの範囲を広くしておくか、コア9aからの出射光が、短焦点レンズ面14aの範囲により多く入射されるように、設定すればよい。
例えば、それぞれの距離を近づければ、拡がり角は大きくなって、それぞれ発散光となり、それぞれの距離を遠ざければ、収束光またはいったん収束してから発散する発散光を形成することができる。
そのため、例えば、第1の実施形態の空間光伝送装置100のビーコン光光源110に代えて、マルチビーム生成器115を用いたビーコン光源112を好適に採用することもできる。
図13(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係るマルチビーム生成器に用いることができる多焦点光学素子の他例について説明するための、それぞれ左側面図、光軸を含む断面図である。図13(c)は、図13(b)における模式的な光路図である。
回折格子複合レンズ14Aは、図13(a)、(b)に示すように、一方のレンズ面が、平面部14dとされ、その中心部に拡がり角を変更するための透過型の回折格子16を形成し、他方のレンズ面を適宜のパワーを有する凸面部14eから形成したものである。回折格子16は、凸面部14eの光軸に対して同心円Mの範囲に形成されている。そして、平面部14d、回折格子16が光ファイバ9の側に向けて配置されている。すなわち、回折格子16は、コア9aからの出射光の入射面側に形成されている。
n・d・sinθm=m・λ ・・・(10)
ここで、mは回折光の次数で、m=0,±1,±2,…である。
回折格子16は、格子ピッチと格子深さとを適宜設定することにより回折方向やその強度分布を必要に応じて設定することができる。本実施形態では、±2次以上の回折効率に比べて、0次と±1次光の効率が大きくなるような設定とし、入射光をほとんど0次光、±1次光として回折させるように設定している。
コア9aから出射された光は、図13(c)に示すように、回折格子16の外側の平面部14dに入射する光が、平面部14dと凸面部14eとで構成されるレンズの集光作用を受けて、断面が円環状の平行光である屈折光17dとして出射される。
一方、コア9aから出射された光のうち、回折格子16に入射する光は、回折格子16により各回折次数ごとに異なる方向に回折され、0次光成分である回折光17bと、+1次光成分である回折光17cと、−1次光成分である回折光17aに分かれる。そして、凸面部14eに入射して屈折されて方向を変える。ここで、回折光17bは、0次光なので、屈折光17dと同様な拡がり角で出射される。
そのため、本実施形態では、コア9aから出射された光が、回折格子複合レンズ14Aの入射面側で回折格子16の領域に入射した光が、回折光17c、回折光17aとして分割され、それぞれ発散光、収斂光として、異なる拡がり角で出射される。また、回折格子16を透過する0次光の回折光17bと、平面部14dを透過する屈折光17dとにより拡がり角0°の平行光が出射される。
この場合、いずれが狭角ビームとなるかは、拡がり角の程度と受光位置に依存する。例えば、近距離では、回折光17aが狭角ビームであるが、収斂した後、発散するような遠距離では、平行光が狭角ビームとなる。
例えば、回折格子16の格子ピッチを等ピッチにした場合は、光軸からの距離によって拡がり角が分布を有するブロード分布特性の上に、拡がり角の小さい略平行な分布を有する分布特性が重なった拡がり角分布の出射光が得られる。
また、格子ピッチを光軸からの距離に応じて勾配を有するように分布させてもよい。この場合、例えば、光軸からの距離によらず特定の拡がり角となるような出射光を形成することもできる。
また、複数の拡がり角の強度比は、分割領域を構成する回折格子16の平面部14dに対する面積比を適宜設定することにより変えることができる。
また、回折格子の断面形状をブレーズ化することにより特定の方向の回折光、例えば+1次光のみを取り出すこともできる。さらに、回折レンズのようにブレーズ面同士を異なる材料で貼り合わせ構造とすることにより色収差を最適化することも可能である。
また、本変形例では、回折格子複合レンズ14Aの入射面側に形成された回折格子16の領域は凸面部14eの光軸に対して同心円Mの範囲に形成されているが、複数の回折方向にわたって回折されれば、この範囲に限るものではなく、平面部14dの面全体に渡って形成されていてもよい。
本発明の第3の実施形態に係る空間光伝送装置について説明する。
図14は、本発明の第3の実施形態に係る空間光伝送装置の概略構成について説明するための側面視の模式説明図である。
ビームスプリッタ31は、ビームスプリッタ面により、ビーコン光8を略100%反射して、アフォーカル光学系20の光軸に沿って入射し、アフォーカル光学系20を介してビーコン光8を外部に出射するとともに、入射光19および通信光18を略100%透過させるものである。このようなビームスプリッタ面は、ビーコン光8、入射光19、通信光18の波長特性、偏光特性などに応じて、光分岐特性を変えた適宜のコーティングにより形成することができる。
また、通信光18とビーコン光8とがアフォーカル光学系20の光軸と同軸状態で出射されるので、通信光18とビーコン光8との出射位置がずれている場合に比べて、通信相手側での追尾精度を向上することができる。特に、通信光18とビーコン光8との出射位置のずれが問題となる近距離通信でも、高精度の追尾を行うことができるという利点がある。
また、多焦点を形成する光学作用面は、必要とされる出射ビームの同軸度合によっては、必ずしも、同心円状の配置に限定されない。例えば、光軸に対して対称な位置に、十分近接して配置してもよい。回折格子を用いれば、そのような位置関係に光学作用面を形成することが容易となる。
例えば、同波長の複数光源から複数の光を入射する場合、光源の数により、出射ビームの光量を容易に加減できるという利点がある。
また、複数波長の光を入射する場合、波長差によっても拡がり角が異なるマルチビームを生成できるという利点がある。
2 ファイバ結合部
3 光量比可変部
4 光分割用光ファイバ(導光手段)
4a、9a コア
4b クラッド
5 空間結合部
6、6a、15b 広角放射光(広角ビーム)
7、7a、15a 狭角放射光(狭角ビーム)
8、19b ビーコン光
9 光ファイバ
10 レンズ(パワーを有する光学素子)
11 レンズ(集光素子)
14 多焦点レンズ(多焦点光学素子)
14a 短焦点レンズ面
14b 長焦点レンズ面
14A 回折格子複合レンズ(多焦点光学素子)
16 回折格子
17a、17b、17c 回折光
17d 屈折光
18、19a 通信光
19 入射光
20 アフォーカル光学系(送受光光学系)
21 粗追尾検出器(位置検出手段)
23 可動ミラー
28 精追尾検出器(位置検出手段)
29 通信光検出部
30 ジンバルステージ
34 移動ステージ(移動保持機構)
41 入射面
41a コア入射面
41b クラッド入射面
42 出射面
42a コア出射面
42b クラッド出射面
100、101 空間光伝送装置
110、110A、110B、112 ビーコン光光源(マルチビーム光源)
111 光入射手段
115 マルチビーム生成器
120、121 通信制御光学系
Claims (17)
- 入射面から入射した光を、ビーム拡がり角がそれぞれ異なる複数の略同軸光に分割して同時に出射する光分割手段と、
該光分割手段の入射面に対して光束を入射させる光入射手段とを備えるマルチビーム生成器。 - 前記光分割手段が、前記入射面の入射部位に応じて異なるビーム拡がり角の出射光に分割される構成を備え、
前記光入射手段が、前記光分割手段の前記入射面に対して、異なる入射部位にわたって光束を入射させるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のマルチビーム生成器。 - 前記光分割手段が、
断面外径がそれぞれ異なる複数の導光領域が略同軸上に延され、その両端部に前記複数の導光領域が露出された導光手段からなり、
前記両端部の一方を前記入射面として、前記複数の導光領域に入射された光を、それぞれの入射部位に応じて、前記両端部の他方から分割して出射するようにしたことを特徴とする請求項2に記載のマルチビーム生成器。 - 前記導光手段の出射面側に、分割して出射された複数の出射光を集光してそれぞれのビーム拡がり角を変更する集光素子を配置したことを特徴とする請求項3に記載のマルチビーム生成器。
- 前記集光素子を光軸方向に移動可能に保持する集光素子移動機構を備え、
それにより、前記複数の出射光の各ビーム拡がり角を動的に可変できるようにしたことを特徴とする請求項4に記載のマルチビーム生成器。 - 前記光分割手段が、
異なるパワーを有する複数の領域が径方向に形成された多焦点光学素子からなり、
前記異なるパワーを有する複数の領域に入射された光を、それぞれの入射部位に応じて分割して出射するようにしたことを特徴とする請求項2に記載のマルチビーム生成器。 - 前記多焦点光学素子を、前記光入射手段に対して光軸方向に相対移動可能に保持する位置可変機構を備え、
それにより、前記多焦点光学素子で分割して出射された複数の出射光のそれぞれのビーム拡がり角を動的に可変できるようにしたことを特徴とする請求項6に記載のマルチビーム生成器。 - 前記光分割手段が、回折格子を備え、
該回折格子に入射された光を回折方向により、分割して出射するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のマルチビーム生成器。 - 前記光入射手段が、
前記光分割手段の入射面上での前記光束のスポット径または入射位置を変更することにより、前記ビーム拡がり角が異なる複数の出射光の光量比を可変する光量比可変部を備えることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載のマルチビーム生成器。 - 前記光量比可変部が、
前記光入射手段の出射位置に対して光軸方向に移動可能に設けられたパワーを有する光学素子を備えることにより、前記光分割手段の入射面上でのスポット径を可変することを特徴とする請求項9に記載のマルチビーム生成器。 - 前記光量比可変部が、
前記光入射手段を、前記光分割手段の入射面に対して位置移動可能に保持する移動保持機構からなることを特徴とする請求項9に記載のマルチビーム生成器。 - 前記光入射手段が、光ファイバを備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のマルチビーム生成器。
- 請求項1〜12のいずれかに記載のマルチビーム生成器と、
該マルチビーム生成器の光入射手段に光を供給する少なくとも1つの光源部とを備えることにより、
前記ビーム拡がり角が異なる複数の出射光を略同軸上に投光することを特徴とするマルチビーム光源。 - 前記光源部が、1つの光源からなることを特徴とする請求項13に記載のマルチビーム光源。
- 通信光を含む空間光を送受光する送受光光学系と、該送受光光学系による送光光の出射方向を通信相手側で追尾できるようにするためのビーコン光を出射するビーコン光光源と、前記送受光光学系により受光される通信相手側からのビーコン光の送光方向を追尾する追尾制御機構を備えた空間光伝送装置であって、
前記ビーコン光光源が、請求項13または14に記載のマルチビーム光源からなり、
前記ビーコン光として、ビーム拡がり角が相対的に狭角の狭角ビームと、ビーム拡がり角が相対的に広角の広角ビームとからなるマルチビームとして略同軸上に出射されることを特徴とする空間光伝送装置。 - 前記追尾制御機構が、
前記通信相手側から送光されるビーコン光のビーム拡がり角が相対的に狭角の場合と相対的に広角の場合とに応じて、それぞれ検出性能が異なる位置検出手段を備えることを特徴とする請求項15に記載の空間光伝送装置。 - 前記ビーコン光光源から出射されたビーコン光が、前記送受光光学系を通して送光されることを特徴とする請求項15または16に記載の空間光伝送装置。
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