以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[車両の構成]
図1は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置を適用した車両20の概略構成を示すブロック図である。
車両20は、主に、内燃機関1と、点火プラグ2と、スタータ3と、燃料噴射弁4と、回転数センサ5と、クランク角度センサ6と、気筒判別センサ7と、ECU(Engine Control Unit)10と、を備える。なお、車両20は、アイドリングストップ技術を適用したいわゆるエコラン車両として構成されている。
内燃機関1は、複数の気筒を備えており、点火プラグ2による着火(点火)によって気筒内の混合気を爆発させて動力を発生する。例えば、内燃機関1は、ガソリンエンジンによって構成され、4つの気筒を有する。
スタータ3は、内燃機関1を始動させるモータである。具体的には、スタータ3は、内燃機関1の始動により電源装置(不図示)から電力供給を受けることによって、スタータ3内のシャフトが回転する。これにより、内燃機関1内のクランクシャフトが回転され(即ち、クランキングする)、内燃機関1が始動する。詳しくは、スタータ4は、車両20の発進時、例えばエコラン時に運転者がブレーキペダルから足を離してアクセルペダルを踏んだ際に、駆動力を発生することにより車両20を始動させる。
車両20に設けられたセンサは、以下のように機能する。回転数センサ5は、クランクシャフトの回転数を検出する。クランク角度センサ6は、内燃機関1のクランクシャフトに設けられ、クランクシャフトの回転角(クランク角度)を検出する。また、気筒判別センサ7は、内燃機関1のカムシャフトに設けられ、内燃機関1が有する気筒を判別する。これらのセンサは、検出した値に対応する信号をECU10に出力する。
ECU10は、図示しないCPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インタフェイスなどを含んで構成される。ECU10は、上記した各種センサから出力される信号を取得し、点火プラグ2や燃料噴射弁4などの制御を行う。具体的には、ECU10は、燃料噴射時期や燃料噴射量に対する制御や、点火時期の制御などを実行する。このように、ECU10は、制御手段、燃料噴射制御手段、及び点火時期制御手段として機能する。
[一般的な制御方法]
ここで、一般的に始動時に行われる燃料噴射制御及び点火時期制御について説明する。エコラン目的で内燃機関1を停止した場合には、複数の気筒のうちのいずれかは吸気行程で停止する。したがって、エコラン時に運転者がブレーキペダルから足を離してアクセルペダルを踏むなどの要求(以下、「始動要求」と呼ぶ。)があった際に、内燃機関1の始動性を向上させるために、この吸気行程で停止した気筒に注目した制御(以下、この制御を「通常の制御」と呼ぶ。)が行われる。具体的には、吸気行程で停止した気筒に即座に燃料を噴射すると共に、クランキングを開始し、ピストンが圧縮行程における上死点に概ね位置したところで点火及び燃焼を実行する。これにより、内燃機関1の回転数が上昇して、内燃機関1は始動する。
上記した制御において生じる不具合について、図2を用いて説明する。図2は、吸気行程で停止した気筒(以下、「吸気行程停止気筒」と呼ぶ、)の吸気行程及び圧縮行程の弁線図を示す。図2中において、「TDC」は、上死点(TDC;Top Dead Center)を意味し、「BDC」は下死点(BDC;Bottom Dead Center)を意味する。詳しくは、「BTDC」は、上死点前(BTDC;Before Top Dead Center)を意味し、「ATDC」は、上死点後(ATDC;After Top Dead Center)を意味する。また、「BBDC」は下死点前(BBDC;Before Bottom Dead Center)を意味し、「ABDC」は下死点後(ABDC;After Bottom Dead Center)を意味する。吸気行程ではクランク角度はATDCからBBDCの間に位置し、圧縮行程ではクランク角度はABDCからBTDCの間に位置する。なお、本明細書では、ATDCを「0(°CA)」とし、BBDCを「180(°CA)」とする。
図2(a)は、内燃機関1の停止時に、吸気行程の概ね中間時期において停止した気筒を示している。即ち、内燃機関1の停止時におけるクランク角度(以下、「停止クランク角度」と呼ぶ。)が概ね90(°CA)にある気筒を示している。このような場合に、上記した通常の制御を行うことによって、内燃機関1を即座に始動させることができる。
図2(b)は、内燃機関1の停止時に、吸気行程の概ね終了時期において停止した気筒を示している。即ち、停止クランク角度がBBDC付近にある気筒を示している。このような場合に、上記した通常の制御を行うと、噴射した燃料のうちポートウェットとして吸気ポートに残る燃料(以下、「付着燃料」とも呼ぶ。)の割合が大きくなって、気筒内の空燃比がリーンになるために点火しても燃焼させることができない可能性がある。そのため、他の気筒から燃焼を開始することになるため、始動時間が1行程分長くなる。したがって、停止時におけるクランク角度がBBDC付近にある場合には、通常の制御を行っても、内燃機関1の始動性を向上できないと言える。
図2(c)は、内燃機関1の停止時に、吸気行程の概ね開始時期において停止した気筒を示している。即ち、停止クランク角度がATDC付近にある気筒を示している。このような場合、残った吸気行程が長い分だけクランキングを多く行う必要がある。また、上記した通常の制御を行った場合、燃料を噴射してから点火するまでの時間が長いことから、燃料が十分に気化して、燃料が小さな分子やイオンに分解される量が多くなるため、気筒内の気体の分子数が増加し、気筒内の圧力(以下、「筒内圧」と呼ぶ。)が上昇する。そのため、圧縮反発が増大しクランキングに要する時間が更に長くなってしまう。以上より、停止時におけるクランク角度がATDC付近にある場合には、通常の制御を行っても、内燃機関1の始動性を向上できないと言える。
本実施形態では、停止クランク角度がBBDC付近及びATDCにある場合にも始動性を向上させるために、燃料噴射制御及び点火時期制御の少なくともいずれかを行う。以下では、本発明の実施形態に係る制御方法を具体的に説明する。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る制御方法について説明する。第1実施形態では、燃料噴射制御として燃料噴射量の制御を行う。
詳しくは、第1実施形態では、吸気行程停止気筒のクランク角度を考慮に入れて燃料噴射量の制御を行う。具体的には、停止クランク角度と燃料噴射量を増量する量(増量量)との関係を示すマップを用いて、始動直後に用いる燃料噴射量(以下、「1噴射目噴射量」とも呼ぶ。)を決定する。このような燃料の増量を行うのは、主に、付着燃料が原因でリーンとなり燃焼不可となった気筒に対応するためである。即ち、このような気筒内の空燃比を、燃料噴射を増量することによって燃焼可能な空燃比にするためである。
更に、第1実施形態では、増量を行った気筒に対して次に用いる燃料噴射量を、1噴射目噴射量の増量量に基づいて減量する。こうするのは、増量を行った気筒の次の燃焼において発生し得るリッチ失火を防止するためである。
図3は、1噴射目噴射量を決定するために用いるマップの具体例を示している。図3は、横軸に停止クランク角度を示し、縦軸に燃料噴射量を増量させるために用いる増量係数を示している。横軸の停止クランク角度は、左側にATDCを示し、右側にBBDCを示す。即ち、右側に進むほど、停止クランク角度は大きくなる。また、増量係数は、1噴射目基本噴射量(1噴射目に用いる基本噴射量)に対する増量量の割合を示している。増量係数が「0」であるときは、1噴射目噴射量は増量されず、即ち1噴射目噴射量は1噴射目基本噴射量と同一であり、増量係数が大きくなるほど、1噴射目噴射量における増量量が大きくなる。
曲線Aは、実験によって得られた、停止クランク角度と増量係数との関係を示すグラフである。これより、停止クランク角度が小さいとき(停止クランク角度が100(°CA)未満程度であるとき)は増量は不要であり、停止クランク角度が大きいとき(停止クランク角度が100(°CA)以上程度であるとき)増量が必要であることがわかる。更に、停止クランク角度が大きくなるほど、即ちBBDCに近づくほど、燃料噴射量の増量量を大きくする必要があることがわかる。このように増量量を大きくする必要があるのは、停止クランク角度がBBDC近づくほど、付着燃料の量が増えるためである。
次に、図4を用いて、1噴射目噴射量の算出方法について説明する。図4は、1噴射目噴射量の算出処理を示すフローチャートである。この処理は、始動要求があった際に開始され、ECU10によって実行される。
まず、ステップS101では、ECU10は、気筒判別センサ7からの出力に基づいて吸気行程停止気筒を判別すると共に、クランク角度センサ6からの出力に基づいて、この気筒の停止クランク角度を判別する。そして、処理はステップS102に進む。
ステップS102では、ECU10は、1噴射目基本噴射量を算出する。1噴射目基本噴射量は、1噴射目に用いる基本となる噴射量である。この1噴射目基本噴射量は、予め作成されたマップなどに基づいて決定される。以上の処理が終了すると、処理はステップS103に進む。
ステップS103では、ECU10は、1噴射目基本噴射量に対する増量量(以下、「1噴射目増量量」と呼ぶ。)を算出する。具体的には、ECU10は、図3に例示したマップを参照して、ステップS101で得た停止クランク角度に対応する増量係数を求め、1噴射目基本噴射量と増量係数とを乗算することによって1噴射目増量量を得る。そして、処理はステップS104に進む。
ステップS104では、ECU10は、ステップS103で得られた1噴射目増量量を用いて1噴射目噴射量を算出する。具体的には、1噴射目基本噴射量に対して1噴射目増量量を加算することによって、1噴射目噴射量を得る。そして、処理はステップS105に進む。
ステップS105では、ECU10は、メモリなどに1噴射目増量量を記憶する。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
次に、増量を行った気筒に対する次の燃料噴射量を算出する処理について説明する。1噴射目に増量を行うと、増量を行った気筒の吸気ポートウェットによって空燃比のリッチ度合いが大きくなり、リッチ失火が生じる可能性がある。したがって、本実施形態では、増量を行った気筒に発生し得るリッチ失火を防止するために、増量を行った気筒に対する次の燃料噴射量を減量する。詳しくは、燃料噴射量を減量する量(減量量)は、1噴射目噴射量の増量量に基づいて決定される。
図5は、5噴射目の噴射量(5噴射目噴射量)を算出する処理を示すフローチャートである。この場合、4つの気筒を有する内燃機関1に対する処理を想定している。そのため、1噴射目に増量を行った気筒の次の燃料噴射は、5噴射目になる。なお、この処理は、ECU10によって実行される。
まず、ステップS201では、ECU10は、5噴射目基本噴射量を算出する。5噴射目基本噴射量は、予め作成されたマップなどによって規定される噴射量である。そして、処理はステップS202に進む。
ステップS202では、ECU10は、1噴射目増量量に基づいて5噴射目減量量を算出する。具体的には、ECU10は、記憶している1噴射目増量量(図4のステップS105参照)と、0以上1以下の値を有する減量係数とを乗算することによって、5噴射目減量量を得る。そして、処理はステップS203に進む。
ステップS203では、ECU10は、ステップS202で得られた5噴射目減量量を用いて5噴射目噴射量を算出する。具体的には、5噴射目基本噴射量に対して5噴射目減量量を減算することによって、5噴射目噴射量を得る。この場合、減算後の5噴射目噴射量が負の値となった場合には、5噴射目噴射量を「0」とする。即ち、燃料カットする。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
なお、上記では、5噴射目の燃料噴射量を減量する例について示したが、5噴射目の燃料噴射量のみを減量することに限定はされない。例えば、5噴射目の次に行われる9噴射目の燃料噴射量も、減量することが可能である。この場合において、5噴射目噴射量として負の値が算出された場合には、その負の値に0以上1以下の値を有する減量係数を乗算することによって得た値の絶対値を、9噴射目の基本噴射量から減算することによって9噴射目の燃料噴射量を得ることができる。
このように、第1実施形態に係る燃料噴射量の制御によれば、停止クランク角度に基づいて燃料噴射量を決定するため、停止クランク角度によらずに内燃機関1の始動時間を短縮することが可能となる。特に、停止クランク角度がBBDC付近にある場合における始動時間を効果的に短縮することができる。更に、増量を行った後の次のサイクルで減量を行うため、リッチ失火などの発生を抑制することが可能となる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においても、燃料噴射制御として燃料噴射量の制御を行う。
詳しくは、第1実施形態では、停止クランク角度が大きい場合に全ての1噴射目噴射量を増量したが、第2実施形態では、停止クランク角度が第1所定値よりも大きい場合には、燃料噴射量を「0」とする、言い換えると燃料カットを実行する。こうするのは、停止クランク角度が第1所定値よりも大きい場合には、燃料噴射を行うとHCエミッションが悪化する可能性があるからである。即ち、第2実施形態では、エミッションの悪化を防止することを優先した制御を行う。
詳しくは、第2実施形態では、停止クランク角度が第1所定値よりも大きい場合には、吸気行程停止気筒を1噴射目の気筒とせずに、排気行程で停止した気筒(以下、「排気行程停止気筒」と呼ぶ。)を1噴射目の気筒とする制御を行う。こうするのは、吸気行程停止気筒の次に吸気行程が実行される気筒は、排気行程で停止した気筒であるからである。
具体的には、ECU10は、停止クランク角度に基づいて1噴射目の気筒を決定する処理を行う。図6は、この処理を具体的に示すフローチャートである。なお、この処理も、始動要求があった際に開始され、ECU10によって実行される。
まず、ステップS301では、ECU10は、クランク角度センサ6が検出したクランク角度に基づいて、吸気行程停止気筒の停止クランク角度を判別する。そして、処理はステップS302に進む。
ステップS302では、ECU10は、停止クランク角度が第1所定値よりも大きいか否かを判定する。即ち、増量を実行するとエミッションの悪化が生じる可能性があるようなクランク停止角度であるか否かを判定する。停止クランク角度が第1所定値よりも大きい場合(ステップS302;Yes)には、処理はステップS303に進む。この場合には、増量を実行するとエミッションの悪化が生じる可能性がある。一方、停止クランク角度が第1所定値以下である場合(ステップS302;No)には、処理はステップS304に進む。この場合には、増量を実行してもエミッションの悪化が生じる可能性はない。なお、第1所定値は、内燃機関1の温度や、排気通路に設けられた触媒の温度や、エコラン停止期間や、外気温度や、燃料性状判定などに基づいて決定される。
ステップS303では、ECU10は、吸気行程停止気筒を1噴射目の気筒とせずに、排気行程停止気筒を1噴射目の気筒として決定する。即ち、ECU10は、吸気行程停止気筒に対する燃料噴射量を「0」とする。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
ステップS304では、ECU10は、吸気行程停止気筒を1噴射目の気筒として決定する。即ち、吸気行程停止気筒に対する燃料噴射を実行することを決定する。そして、処理は当該フローを抜ける。なお、吸気行程停止気筒の燃料噴射量は、第1実施形態に示した図4の処理を実行することによって決定することができる。
以上のように、第2実施形態に係る燃料噴射量の制御によれば、エミッションの悪化を防止しつつ、内燃機関1の始動時間を短縮することが可能となる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、前述した第1実施形態及び第2実施形態とは異なり、燃料噴射制御として燃料噴射時期の制御を行う。
第3実施形態では、停止クランク角度に基づいて1噴射目の燃料噴射時期(なお、燃料噴射時期はクランク角度によって表される。)を設定する。前述したように、停止クランク角度がATDC付近である場合には、気筒内の燃料の気化が進みすぎるために筒内圧が上昇し、圧縮反発が上昇することによって、始動時間が長くなってしまう場合がある。したがって、第3実施形態では、停止クランク角度がATDC付近である場合には、筒内圧が上昇しないような時期に燃料噴射時期を設定する。具体的には、停止クランク角度からある程度クランキングがなされた後に、燃料噴射を行う。即ち、燃料の気化が進み過ぎることを抑制するために、始動後からある程度時間が経過するまで燃料噴射を行わない。一方、停止クランク角度がATDC付近でない場合には、筒内圧が上昇する問題を考慮する必要はないため、始動後即座に燃料噴射を行う。即ち、停止クランク角度を燃料噴射時期に設定する。
図7は、図3に示した停止クランク角度と増量係数との関係を示す図に、圧縮行程における筒内圧最大値を重ねて示した図である。図7は、横軸に停止クランク角度を示し、縦軸に増量係数と筒内圧最大値を示している。曲線Bは、実験によって得られた、圧縮行程における筒内圧の最大値を示すグラフである。これより、停止クランク角度が小さいとき、即ち燃料噴射時期が早いとき、筒内圧最大値が高いことがわかる。また、図7中の網掛け領域では、筒内圧最大値が低く、且つ燃料噴射量の増量が必要でないことから、この領域が1噴射目の最適燃料噴射時期であることがわかる。本実施形態では、このような網掛け領域に位置する第2所定値を用いて燃料噴射時期を設定する。
図8は、1噴射目の燃料噴射時期を決定する方法を説明するための図である。図8は、横軸に停止クランク角度を示し、縦軸に一回目の燃料噴射時期を示す。これによれば、停止クランク角度が第2所定値以下である場合には、第2所定値を燃料噴射時期として用いる。即ち、始動後即座に燃料噴射を行わず、最適燃料噴射時期である第2所定値までクランキングされたときに燃料噴射を実行する。一方、停止クランク角度が第2所定値より大きい場合には、停止クランク角度を燃料噴射時期に設定する。即ち、始動後即座に燃料噴射を行う。
図9は、1噴射目の燃料噴射時期を決定する処理を示すフローチャートである。この処理は、始動要求があった際に開始され、ECU10によって実行される。
まず、ステップS401では、ECU10は、気筒判別センサ7の出力に基づいて吸気行程停止気筒を判別すると共に、クランク角度センサ6の出力に基づいて吸気行程停止気筒の停止クランク角度を判別する。そして、処理はステップS402に進む。
ステップS402では、ECU10は、停止クランク角度が第2所定値よりも大きいか否かを判定する。即ち、燃料噴射時期を始動時よりも遅くすべきか、或いは燃料噴射時期を始動時に設定すべきかを判定する。停止クランク角度が第2所定値よりも大きい場合(ステップS402;Yes)には、処理はステップS403に進む。一方、停止クランク角度が第2所定値以下である場合(ステップS402;No)には、処理はステップS404に進む。
ステップS403では、ECU10は、停止クランク角度を燃料噴射時期に決定する。即ち、ECU10は、始動時に即座に燃料噴射を行う。言い換えると、クランキング開始と略同時に燃料噴射する。この場合には、筒内圧が大きく上昇してしまうおそれはないからである。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。なお、予め燃料噴射を行ってから、クランキングを開始してもよい。
一方、ステップS404では、ECU10は、第2所定値を燃料噴射時期に決定する。即ち、クランク角度が第2所定値となるまでクランキングされたときに、燃料噴射を行う。この場合には、燃料の気化が進み過ぎることを抑制するために、始動後からある程度時間が経過するまで燃料噴射を行わない。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
なお、第3実施形態に係る処理を行った場合にも、吸気行程停止気筒における燃料噴射量は、第1実施形態に示した図4の処理及び図5の処理を実行することによって決定することができる。また、エミッションの悪化を防止する場合には、第2実施形態で示した図6の処理を行うことによって、吸気行程停止気筒に対して燃料カットを実行することができる。
更に、上記した第2所定値は、40(°CA)〜120(°CA)の間に位置するクランク角度に設定することが好ましい。
このように、第3実施形態に係る燃料噴射時期の制御によれば、停止クランク角度に基づいて燃料噴射時期を決定するため、停止クランク角度によらずに内燃機関1の始動時間を短縮することができる。特に、停止クランク角度がATDC付近にある場合に対する始動時間を短縮することができる。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。
前述した第1実施形態乃至第3実施形態では、吸気行程停止気筒のみに燃料噴射を行ったが、第4実施形態では、吸気行程停止気筒だけでなく、圧縮行程で停止した気筒(以下、「圧縮行程停止気筒」と呼ぶ。)にも燃料噴射する。前述したように、吸気行程停止気筒の停止クランク角度がATDC付近にある場合には、吸気行程が長いため、クランキングを多く行う必要がある。したがって、第4実施形態では、圧縮行程停止気筒に対しても燃料噴射を行い、この気筒が点火されることによって生じる回転数の上昇を利用して、吸気行程停止気筒の圧縮行程に要する時間を短縮させる。
ここで、圧縮行程停止気筒に対して燃料噴射を行うことができる理由について、図10を用いて説明する。図10は、吸気行程及び圧縮行程の弁線図を示す。図10(a)は吸気行程停止気筒の図を示す。この場合、吸気行程停止気筒の停止クランク角度はATDC付近に位置する。図10(b)は、吸気行程停止気筒が図10(a)に示した状態にあるときの、圧縮行程停止気筒の図を示している。これより、圧縮行程停止気筒の停止クランク角度は、気筒に設けられた吸気弁が閉となる際のクランク角度よりも小さいことがわかる。即ち、圧縮行程停止気筒における吸気弁は開のままである。そのため、このような状態にある圧縮行程停止気筒に対して燃料噴射を行うことができる。
図11は、圧縮行程停止気筒に対して燃料噴射を行った場合の効果を説明するための図である。図11は、横軸に時間を示し、縦軸に内燃機関1の回転数を示している。曲線C1は圧縮行程停止気筒に対して燃料噴射を行った場合の回転数の変化を示し、曲線C2は圧縮行程停止気筒に対して燃料噴射を行わなかった場合の回転数の変化を示している。
この場合、時刻t1で始動要求が出されており、時刻t1から時刻t2までクランキングを行うことによって吸気気筒停止気筒の吸気行程が終了する。曲線C1より、圧縮行程吸気気筒に対して燃料噴射を行った場合には、時刻t3aで圧縮行程が終了し、時刻t4aで回転数が目標回転数を超える、即ち始動が完了する。一方、曲線C2より、圧縮行程吸気気筒に対して燃料噴射を行わなかった場合には、時刻t3bで圧縮行程が終了し、時刻t4aより遅い時刻t4bで回転数が目標回転数を超える。以上より、圧縮行程停止気筒に対して燃料噴射を行うことにより、吸気行程停止気筒の圧縮行程が早く終了することがわかる。このようになるのは、圧縮行程停止気筒に対して燃料噴射を行うことによって、この気筒が先に点火されることによって回転数の上昇が生じるためである。
次に、燃料噴射を行う気筒を決定するために行われる処理を、図12に示すフローチャートを用いて説明する。この処理も、始動要求があった際に開始され、ECU10によって実行される。
まず、ステップS501では、ECU10は、気筒判別センサ7の出力に基づいて、吸気行程停止気筒を判別すると共に、圧縮行程停止気筒を判別する。そして、処理はステップS502に進む。
ステップS502では、ECU10は、圧縮行程停止気筒の吸気弁が開であるか否かを判定する。例えば、ECU10は、吸気弁の開度センサなどに基づいて、吸気弁の開閉を判定する。吸気弁が開である場合(ステップS502;Yes)には、処理はステップS503に進み、吸気弁が閉である場合(ステップS502;No)には、処理はステップS504に進む。
ステップS503では、ECU10は、吸気弁が開であるため、吸気行程停止気筒だけでなく圧縮行程停止気筒に対しても燃料噴射を行う。そして、処理は当該フローを抜ける。
一方、ステップS504では、ECU10は、吸気弁が閉であるため、圧縮行程停止気筒に対して燃料噴射を行わない。即ち、吸気行程停止気筒に対してのみ燃料噴射を行う。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
なお、第4実施形態に係る処理を行った場合にも、吸気行程停止気筒における燃料噴射量は、第1実施形態に示した図4の処理及び図5の処理を実行することによって決定することができる。また、エミッションの悪化を防止する場合には、第2実施形態で示した図6の処理を行うことによって、吸気行程停止気筒に対して燃料カットを実行することができる。更に、燃料噴射時期は、第3実施形態で示した図9の処理を行うことによって決定することができる。
なお、圧縮行程停止気筒への燃料噴射量は、予め決めた燃料噴射量を用いてもよいし、マップなどを用いて決定してもよい。
また、第4実施形態では、内燃機関1の温度が所定温度以上である場合には、圧縮行程停止気筒への燃料噴射を実行しない。内燃機関1の温度が高い場合には、圧縮行程停止気筒に燃料噴射すると、自着火する場合があるからである。即ち、第4実施形態では、自着火を防止するために、内燃機関1の温度に基づいて燃料噴射制御を行う。
以上のように、第4実施形態によれば、圧縮行程停止気筒に対しても燃料噴射を行うため、内燃機関1の始動時間を短縮することが可能となる。特に、停止クランク角度がATDC付近にある場合に対する始動時間を効果的に短縮することが可能となる。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態では、前述した第1実施形態乃至第4実施形態と異なり、燃料噴射の制御を行う代わりに点火時期の制御を行う。具体的には、第5実施形態では、停止クランク角度に基づいて点火時期の制御を行う。
ここで、第5実施形態に係る制御の基本概念について説明する。第5実施形態に係る制御は、内燃機関1の始動時に発生する音や振動を抑制するために行う。上記の音や振動は、内燃機関1の発生トルクが大きい場合に顕著となり、発生トルクが小さい場合にはほとんど発生しない。この場合、内燃機関1の発生トルクは停止クランク角度に応じて変化する。したがって、第5実施形態では、適切に始動時に発生する音や振動を抑制するために、停止クランク角度に応じて点火時期を変更する。具体的には、点火時期を適切に遅角させることによって発生トルクを減少させることにより、始動時に発生する音や振動を抑制する。
次に、停止クランク角度と発生トルクとの関係を、図13を用いて説明する。図13は、点火時期を種々に変化させたときの図示平均有効圧の変化を、停止クランク角度ごとに示した図である。図13は、横軸に燃料噴射量を示し、縦軸に図示平均有効圧を示す。縦軸に示す図示平均有効圧は、内燃機関1の発生トルクに概ね対応する。具体的には、図13(a)は停止クランク角度がATDC付近にある場合のグラフを示し、図13(b)は停止クランク角度が100(°CA)付近にある場合のグラフを示し、図13(c)は停止クランク角度がBBDC付近にある場合のグラフを示す。それぞれ、点火時期を種々に変化させることによって得られた結果を重ねて表示している。詳しくは、図13(a)〜図13(c)のそれぞれの最も上に位置する曲線が点火時期を遅角させてないとき(即ち、点火時期はATDCにある)の結果を示し、この曲線から下方向に向かって、点火時期を遅角させる量を大きくしたときの結果を示している。なお、図13中の破線は、図示平均有効圧の最適値を示している。詳しくは、図示平均有効圧が最適値付近にある場合には、内燃機関1の始動時に発生する音や振動は小さい。
図13より、停止クランク角度がATDC付近にある場合には発生トルクが大きいことがわかり、停止クランク角度がBBDC付近にある場合には発生トルクが小さいことがわかる。また、停止クランク角度がATDC付近にある場合には、点火時期を遅角させたときに最適な図示平均有効圧が得られることがわかり、停止クランク角度がBBDC付近にある場合には、点火時期を遅角させると図示平均有効圧が最適な図示平均有効圧よりも小さくなることがわかる。
このような結果が得られる理由は、以下の通りである。停止クランク角度がATDC付近にある場合には、吸気行程が長いため、燃料が十分に気化して良好な混合気が得られる。よって、良好な燃焼が行われるため、内燃機関1の発生トルクが大きい。詳しくは、点火時期を遅角させない場合には、発生トルクは最適な値よりもかなり大きい。そのため、点火時期を遅角させない場合には、始動時に発生する内燃機関1の音や振動が大きくなる。以上より、停止クランク角度がATDC付近にある場合には、点火時期を遅角させることによって、発生トルクが最適な値にすることができる。即ち、点火時期を遅角させることによって、始動時に発生する内燃機関1の音や振動を低減することが可能となる。
一方、停止クランク角度がBBDC付近にある場合には、吸気行程が短いため、燃料が十分に気化しないため良好な混合気は得られない。よって、燃料が不安定となるため、発生トルクは小さい。詳しくは、点火時期を遅角させない場合においても、発生トルクは最適な値の付近に位置する。したがって、停止クランク角度がBBDC付近にある場合には、点火時期を遅角させると、発生トルクは最適な値よりもかなり小さくなってしまう。この場合、点火時期を遅角させなくても内燃機関1の音や振動の問題は生じないため、点火時期を遅角させる必要はない。
以上のような結果を用いて、停止クランク角度と点火時期との関係を示すマップを作成することができる。第5実施形態では、このマップを用いて点火時期に対する制御を行う。
図14は、停止クランク角度と点火時期との関係を示すマップの具体例を示す図である。図14は、横軸に停止クランク角度を示し、縦軸に点火時期を示している。これによれば、停止クランク角度がATDC付近にある場合には、遅角させる量として大きな値が決定され、停止クランク角度がBBDC付近にある場合には、遅角させる量として概ね「0」が決定される。なお、マップより、停止クランク角度が100(°CA)付近にある場合には、遅角させる量が停止クランク角度に応じて急激に変化することがわかる。
次に、図15を用いて、点火時期を決定する処理について説明する。図15は、点火時期の決定処理を示すフローチャートである。なお、この処理は、始動要求があった際に開始され、ECU10によって実行される。
ステップS601では、ECU10は、クランク角度センサ6の出力に基づいて停止クランク角度を判別する。そして、処理はステップS602に進む。ステップS602では、ECU10は、図14に例示したマップを参照して、ステップS601で得た停止クランク角度に対応する点火時期を決定する。そして、処理は当該フローを抜ける。
なお、第5実施形態に係る処理を行った場合にも、吸気行程停止気筒における燃料噴射量は、第1実施形態に示した図4の処理及び図5の処理を実行することによって決定することができる。また、エミッションの悪化を防止する場合には、第2実施形態で示した図6の処理を行うことによって、吸気行程停止気筒に対して燃料カットを実行することができる。更に、燃料噴射時期は、第3実施形態で示した図9の処理を行うことによって決定することができる。加えて、第4実施形態で示したように、所定の条件を満たす場合には、圧縮行程停止気筒に対しても燃料噴射を行うことができる。
以上のように、第5実施形態によれば、停止クランク角度に応じて点火時期を制御するため、内燃機関1で発生する音や振動を抑制して始動フィーリングを改善することが可能となる。
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について説明する。第6実施形態では、前述した第5実施形態と同様に、始動フィーリングを向上させるために、停止クランク角度に応じて点火時期を制御する。しかしながら、第6実施形態では、始動直後の爆発(以下、「初爆」と呼ぶ。)による内燃機関1の回転数に基づいて点火時期を学習させる点で、第5実施形態とは異なる。このように点火時期を学習させるのは、最適な点火時期は経年変化などによって徐々に変化する場合があるからである。
図16は、第6実施形態の基本概念を説明するための図である。図16は、横軸に時間を示し、縦軸に内燃機関1の回転数を示している。曲線D1及び曲線D2は、エコラン始動時における回転数の変化の例を示している。この場合、時刻t10に始動要求が出されており、時刻t10から時刻t11までクランキングが行われている。曲線D1では、時刻t11から時刻t12まで初爆による膨張行程が行われ、膨張行程中には最大回転数D1aが得られると共に、時刻t12(膨張行程終了時)では回転数D1bが得られる。この場合、最大回転数D1aは目標回転数を超えている。一方、曲線D2では、時刻t11から時刻t13まで初爆による膨張行程が行われ、膨張行程中には最大回転数D2aが得られると共に、時刻t13(膨張行程終了時)では回転数D2bが得られる。この場合、最大回転数D2aは目標回転数を超えていない。
第6実施形態では、膨張行程における最大回転数が目標回転数を超えているか否かによって、点火時期を進角側に学習させるか遅角側に学習させるかを決定する。具体的には、最大回転数が目標回転数よりも大きい場合(図16中の曲線D1参照)には、初爆による最大回転数を減少させるために、点火時期を遅角側に学習させる。一方、最大回転数が目標回転数以下である場合(図16中の曲線D2参照)には、初爆による最大回転数を増加させるために、点火時期を進角側に学習させる。なお、膨張行程における最大回転数を用いる代わりに、膨張行程終了時における回転数(前述した回転数D1b及び回転数D2b)を用いて、点火時期を進角側に学習させるか遅角側に学習させるかを決定してもよい。
図17は、点火時期を学習する際に用いる学習領域(第1学習領域1〜第4学習領域)を示した図である。図17は、横軸に停止クランク角度を示し、縦軸に点火時期を示しており、前述した図14のマップに学習領域を重ねて示している。具体的には、停止クランク角度がATDC付近にある場合には第1学習領域に属し、停止クランク角度が例えば100(°CA)〜140(°CA)にある場合には、停止クランク角度を細かく区切って作成された第2学習領域〜第4学習領域のいずれかに属する。なお、第4学習領域のBBDC方向の外側の領域は、学習を行わない領域である。こうするのは、第5実施形態で示したように、この領域では、もともと点火時期を遅角させないからである。
次に、図18を用いて、初爆気筒(吸気行程停止気筒に対応する)への点火処理を説明する。図18は、この処理を示すフローチャートである。なお、この処理は始動要求があった際に開始され、ECU10によって実行される。
まず、ステップS701では、ECU10は、クランク角度センサ6からの出力に基づいて初爆気筒の停止クランク角度を判別すると共に、図17に例示した図から停止クランク角度に対応する学習領域を決定する。そして、処理はステップS702に進む。
ステップS702では、ECU10は、まず初爆気筒の基本点火時期を算出する。この場合、ECU10は、前述した第5実施形態で示した方法によって点火時期を決定する。即ち、ECU10は、図14に例示したマップを参照して、ステップS701で得た停止クランク角度に対応する点火時期を決定する。次に、ECU10は、メモリなどに記憶された学習値を用いて基本点火時期を修正する。具体的には、基本点火時期を遅角又は進角させる。以上の処理が終了すると、処理はステップS703に進む。
ステップS703では、ECU10は、ステップS702で算出された点火時期をセットする。そして、処理はステップS704に進む。ステップS704では、ECU10は、初爆気筒に対して点火する制御を行う。そして、処理は当該フローを抜ける。
次に、初爆気筒に対して点火後に行われる処理について、図19に示すフローチャートを用いて説明する。なお、この処理はECU10によって行われる。
まず、ステップS801では、ECU10は、初爆気筒の膨張行程中の最大回転数を、回転数センサ5から取得する。具体的には、図16に示した最大回転数D1a又は最大回転数D2aを取得する。そして、処理はステップS802に進む。
ステップS802では、ECU10は、最大回転数が目標回転数より大きいか否かを判定する。最大回転数が目標回転数より大きい場合(ステップS802;Yes)には、処理はステップS803に進み、最大回転数が目標回転数以下である場合(ステップS802;No)には、処理はステップS804に進む。
ステップS803では、ECU10は、最大回転数を目標回転数付近まで減少させるために、点火時期を遅角側に学習させる。この場合、ECU10は、停止クランク角度が位置する学習領域(図17参照)に基づいて、学習させる量を決定する。なお、ECU10は、学習させた量を学習値としてメモリなどに記憶させる。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
一方、ステップS804では、ECU10は、最大回転数を目標回転数付近まで増加させるために、点火時期を進角側に学習させる。この場合、ECU10は、停止クランク角度が位置する学習領域(図17参照)に基づいて、学習させる量を決定する。なお、ECU10は、学習させた量を学習値としてメモリなどに記憶させる。以上の処理が終了すると、処理はステップS805に進む。
ステップS805では、ECU10は、学習後の点火時期がBTDCまで進角しているか否かを判定する。即ち、進角側に学習させた後の点火時期が上死点よりも進んでいるか否かを判定する。点火時期がBTDCよりも進角してしまうと、発生トルクが低下する。また、発生トルクの低下によって、学習は更に進角側に進んでしまう。したがって、このような進角側への学習を抑制するため、即ち制御の破綻を防止するために、ステップS805の判定を行っている。学習後の点火時期がBTDCである場合(ステップS805;Yes)には、処理はステップS806に進み、学習後の点火時期がBTDCでない場合(ステップS805;No)には、処理は当該フローを抜ける。
ステップS806では、ECU10は、学習後の点火時期がATDCとなるように学習値を修正する。即ち、点火時期がBTDCよりも進角しないようにするため、ATDCを用いて進角側への学習をガードしている。これにより、学習が進角側に進み過ぎることによって生じる発生トルクの低下を抑制することが可能となる。なお、ECU10は、ステップS806において修正した点火時期に対応する学習値を、メモリなどに記憶させる。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
なお、第6実施形態に係る処理を行った場合にも、吸気行程停止気筒における燃料噴射量は、第1実施形態に示した図4の処理及び図5の処理を実行することによって決定することができる。また、エミッションの悪化を防止する場合には、第2実施形態で示した図6の処理を行うことによって、吸気行程停止気筒に対して燃料カットを実行することができる。更に、燃料噴射時期は、第3実施形態で示した図9の処理を行うことによって決定することができる。加えて、第4実施形態で示したように、所定の条件を満たす場合には、圧縮行程停止気筒に対しても燃料噴射を行うことができる。
以上のように、第6実施形態によれば、停止クランク角度に応じて点火時期を学習させるため、経年変化などによる影響を受けることなく、適切に始動フィーリングを改善することが可能となる。
[変形例]
本発明は、内燃機関1としてガソリンエンジンを用いることに限定はされず、ガソリンエンジンの代わりにディーゼルエンジンを用いてもよい。この場合には、点火時期の代わりに、供給空気量などを制御することによって始動性を向上させることができる。また、本発明は、4気筒の内燃機関1に対して適用することに限定はされず、4気筒以外の多気筒の内燃機関に対しても適用することができる。
更に、本発明は、内燃機関1を始動するためにスタータ3を用いることに限定はされず、スタータ3の代わりにモータジェネレータを用いてもよい。この場合には、モータジェネレータがスタータ3の役割を果たすことができる。