JP4600170B2 - 体温計、および体温計を有する電子機器 - Google Patents
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Description
この測定方法では、体表面から、核心温が得られる深部までの深さを2cmと仮定し、また熱伝導率は、筋肉の熱伝導率を用いて1×10―3cal/cm.sec.℃と仮定して、皮膚の熱抵抗を算出している。そして、この熱抵抗の値、断熱材の熱抵抗値、および外気側の温度を用いて、測定された体表面の温度に対する深部の温度を算出する。このような測定方法では、従来生体から体温計へ伝導する熱流をキャンセルするために必要であったヒータなどの加温手段が不要となるため、省電力化が促進される。
ここで、熱流束測定手段によって、第1温度測定手段の熱流束値と第2温度測定手段の熱流束値とを異なる値になっており、それぞれ異なる温度分布が得られる。これら二つの温度分布から深部の温度を演算するので、予め既知の体温計などによって深部の温度を測定する必要がない。したがって、体温測定手順が簡素化され、体温計の取扱性が向上する。
この発明によれば、多項式近似により温度分布を演算するので、簡単な演算式で正確な深部の温度の演算が可能となる。
この発明によれば、測定部の少なくとも一つが体表面に接触しているので、より正確な温度測定が可能となる。
この発明によれば、表示装置と体温計本体とが別体で構成されているので、生体の体表面に接触する必要がある第1および第2温度測定手段を有する体温計本体の軽量化が促進される。したがって、生体の体表面に体温計本体を長時間接触させても負担とはならず、長時間にわたって連続的な体温のモニタリングが可能となる。
この発明によれば、深部温度演算手段が表示装置に設けられているので、体温計本体の構成部品が最小限に抑制される。したがって、体温計本体の軽量化、小型化が促進され、生体の体表面に接触させる際にも、長時間の測定であっても負担がより一層低減される。
この発明によれば、表示装置および体温計本体がそれぞれ送受信手段を備え、互いに無線通信が可能に構成されているので、表示装置を体温計本体に対してある程度離して設置することが可能となる。表示装置が体温計本体と配線されないため、体温計本体を表示装置から完全に分離できるので、体温計本体の軽量化がより一層促進され、体温計本体の取扱性が向上する。
送受信手段としては、消費電力が小さく、製造コストも低い無線通信技術、微弱電波を使用した通信もしくは特定小電力通信を使用するのが好ましい。以下の各発明でも同様である。
この発明によれば、体温計が生体の体表面に貼付可能に構成されているので、従来の舌下温や腋下温の測定のように一定時間体温計を保持する必要がないため、体温計の操作性、携帯性が向上する。例えば、体温計を幼児や乳幼児などに使用する場合では、一定時間体温計と体表面との接触を良好に保持することが困難である。このような場合でも、体温計が体表面に貼付可能に構成されているので、幼児や乳幼児が動いても体表面と体温計との接触状況を良好に維持できるから、正確な温度が測定可能となる。
前述の効果を達成できる電子機器を提供できる。
すなわち、体温計用制御プログラムは、前記各体温計に設けられたコンピュータを、前記深部温度演算手段や、温度分布演算手段や、熱抵抗算出手段として機能させるためのプログラムであることを特徴とする。
また、前記体温計用制御プログラムは、無線または有線のネットワークを介して体温計に組み込んでもよいが、前記体温計用制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を介在して組み込んでも良い。
図1には、本実施形態にかかる体温計1のブロック構成図が示されている。この体温計1は、生体である人体2(図3参照)の体表面2A(図3参照)に接触する体温計本体3と、体温計本体3とは別体に設けられる表示装置4とを備えている。
まず、図2に示されるように、体温計本体3は、第1および第2温度測定手段である二つ(一対)の温度測定手段3A,3Bを備えている。温度測定手段3Aは、人体2の体表面2Aに接触する接触面300Aを有している断熱材37と、熱流束調整手段として、断熱材37と外気との間に設けられた第1の断熱材としての断熱材38Aとを備えている。一方、温度測定手段3Bは、温度測定手段3Aの接触位置とは異なる位置の体表面2Aに接触する接触面300Bを有している断熱材37と、熱流束調整手段として、断熱材37と外気との間に第2の断熱材としての断熱材38Bを備えている。すなわち、断熱材37は、温度測定手段3Aと温度測定手段3Bとで共通しており、共通の熱抵抗値を有している。
また、温度測定手段3Bは、体表面2Aの温度を第2の基準温度として測定する第2基準温度測定部としての体表面センサ31Bと、断熱材37と断熱材38Bとの界面301Bの温度を第2の参照温度として測定する第2の参照温度測定部としての中間センサ32Bとを備えている。
また、断熱材37を温度測定手段3Aの部分と温度測定手段3Bの部分とで別に設け、温度測定手段3Aと温度測定手段3Bとを完全に分離しても良い。
さらに、温度測定手段3Aの断熱材38Aと、温度測定手段3Bの断熱材38Bとは異なる材料で構成され、これにより、断熱材38Aの熱抵抗値と断熱材38Bの熱抵抗値とは異なる値に設定されている。したがって、温度測定手段3Aの熱流束値と温度測定手段3Bの熱流束値とは異なる値となる。
また、温度測定手段3A,3Bは、体表面センサ31A,31Bおよび中間センサ32A,32Bの他に、前述の図1に示されるように、A/D変換器34A,34Bと、送受信手段35A,35Bとをそれぞれ備えている。なお、温度測定手段3A,3Bが一体で形成されているので、A/D変換器34A,34Bを共通のA/D変換器、送受信手段35A,35Bを共通の送受信手段として組み込むことも可能である。
送受信手段35A,35Bは、それぞれアンテナコイル36A,36Bを備え、A/D変換器34A,34Bでデジタル信号に変換された温度値(抵抗値や電圧値)の信号を表示装置4側に電波送信する。なお、アンテナコイル36A,36Bも共通のアンテナコイルとすることも可能である。
操作部43は、ボタンやレバー、キーなどによって外部から表示装置4に情報を入力可能に構成されており、例えば表示部42に表示される画面に従ってメニューを選択したり、その他被測定者(本実施形態では幼児)の氏名、年齢、体温の測定日時などの情報を入力可能に構成されている。
図4には、人体2の深部から体表面2Aおよび体温計本体3を通って外気までの温度分布のモデルが示されている。温度測定手段3Aと温度測定手段3Bとの温度分布モデルについて、実線(温度測定手段3A側)と一点鎖線(温度測定手段3B側)とで示している。縦軸は温度(T)を、横軸は熱抵抗(R)を示している。ここで、温度(T)と熱抵抗(R)との関係が直線であれば、その傾きは熱流束Qを表す。温度測定手段3Aと温度測定手段3Bとの温度分布モデルは、同様の振る舞いをするので、以下には、実線で示された温度測定手段3A側を中心に説明する。
また、温度測定手段3A自体には断熱材37による熱抵抗(熱抵抗値Ru0)が存在するため、温度測定手段3A内でも温度の降下が生じ、温度測定手段3Aの界面301Aでは第1の中間温度Tb2となる。中間センサ32Aでは、この第1の中間温度Tb2が測定されることとなる。さらに、温度測定手段3Aの界面301Aと外気との間には熱抵抗値Ru1を有する断熱材38Aが存在しているために温度が低下し、外気温接触部での熱放出(接触部の熱抵抗値Rvによるもの)もあるため、さらに温度が低下して最終的に外気温Tambとなる。
式(4)および式(5)より、熱抵抗値(Rs+Rt)/Ru0を消去すると、深部の温度Tcoreは次の式(6)によって求められる。ここで、温度測定手段3Aと温度測定手段3Bに対する熱抵抗値(Rs+Rt)は同じ必要があるので、体表面センサ31A,31Bと体表面2Aとの間に、体温計本体3のケースに相当する部分が存在する時は、これらのケース部分は同じ熱抵抗を持つように構成する。
ここで、記憶部45は、複数の人体2に関する温度情報を記憶可能に構成されており、深部の温度Tcoreなどが、人体2毎に記憶されている。また、記憶部45は、深部の温度Tcoreを算出する際に測定した第1の体表面温度Tb1および第2の体表面温度Tb3などの測定位置を記憶可能となっている。なお、記憶部45には、前述の温度情報以外にも、例えば被測定者(人体2、幼児)の氏名、年齢、測定日時などの測定情報を記憶させてもよい。この場合に、これらの測定情報は、操作部43から入力されてもよい。
図5には、本実施形態における体温計1の動作を示すフローチャートが示されている。
人体2(本実施形態では幼児の胸部)に体温計本体3を装着し、幼児を抱いた体温計1の操作者5は表示装置4を腕に装着する。操作者5が表示装置4の操作部43を操作することにより表示装置4のスイッチがONされると、送受信手段41が体温計本体3(温度測定手段3Aおよび温度測定手段3B)に電波を送信する。この電波による電磁誘導でアンテナコイル36A,36Bに起電力を発生させることにより体温計本体3にチャージを行う(ステップS1)。起電力により体温計本体3が起動し(ステップS2)、体表面センサ31A,31Bおよび中間センサ32A,32Bが起動する。これらのセンサ31A,31B,32A,32Bが起動すると、体温計本体3は、送受信手段35A,35Bから表示装置4にスタンバイ信号を送信する(ステップS3)。
このようにして所定時間毎に体表面温度Tb1、Tb3および中間温度Tb2,Tb4を測定して深部の温度Tcoreを演算し、記憶部45に蓄積する。
(1)温度測定手段3Aから第1の体表面温度Tb1および第1の中間温度Tb2を得るとともに、温度測定手段3Bから第2の体表面温度Tb3および第2の中間温度Tb4を得ることにより、深部温度演算手段441では、人体2の深部の温度Tcoreを算出できる。全体としての熱抵抗値の異なる2つの温度測定手段3A,3Bを用いることで、2種類の温度分布(熱流束)における体表面温度Tb1,Tb3および中間温度Tb2,Tb4を測定できるので、実際の温度の測定値のみから深部の温度Tcoreを演算できる。このため、従来人体2の深部から表層部までの熱抵抗値Rsを固定値として仮定して設定していた場合に比べて、より実際の温度分布に即した深部の温度Tcoreの演算ができる。よって、より正確な深部の温度Tcoreが得られ、体温計1の測定精度を向上させることができる。
また、全体としての熱抵抗値を、体表面温度測定位置と中間温度測定位置との間の熱抵抗Ru0は共通とし、中間温度測定位置と外気との間の熱抵抗値Ru1,Ru2を変えることによって異なる値としている。したがって、体温計本体3の外気側に衣服や寝具が接触しても、全体としての熱抵抗値が変化するだけで体表面温度測定位置と中間温度測定位置との間の熱抵抗値Ru0は変化しないので、これらの外乱による測定への影響を少なくできる。
さらに、人体2の深部から外気までの熱流束が一定であることを利用して、深部温度演算手段441が人体2の深部の温度Tcoreを算出するので、従来の体温計のように熱流をキャンセルするためのヒータなどの加熱手段が不要となるから、体温計1の構成を簡単にできる。これにより体温計1の小型化をより一層促進できる。そして、従来の加熱手段が不要なので、体温計1の省電力化を促進できるとともに、体温計1を長時間体表面2Aに貼り付けていても安全であるから、体温計1の安全性、取扱性を向上させることができる。
例えば女性が基礎体温を測定する場合などでは、起床直後に安静状態で測定しなければならないなど、体温測定方法に制約が多く、体温測定が面倒であった。ところが、本実施形態の体温計1で測定すれば、長時間体表面2Aに貼り付けた状態で体温を連続的に測定できるので、体温計本体3を装着した状態で就寝すれば、就寝中に自動的に基礎体温が測定でき、起床時には既に基礎体温の測定を終了できる。したがって、体温測定の煩雑さを除去できるから、家庭や旅行先でも測定忘れを防止でき、確実に正確な基礎体温を測定できる。
また、本実施形態の体温計1は、人体2の体温の常時計測ができるから、例えば入院患者などの体温の変化のモニタリングなどに適している。
送受信手段35A,35B,41がアンテナコイル36A,36B,46によって無線通信を行う構成となっているので、配線などが邪魔にならず、体温計1の取扱性を向上させることができる。
さらに、表示装置4が、腕時計型に形成されているので、操作者5が腕につけて表示部42を視認できる。したがって、本実施形態のように体温を測定したい幼児を抱いた状態で体温の表示を確認できるので、体温計1の操作性を向上させることができる。
以下、本発明の第二実施形態を図面に基づいて説明する。
図6には、本実施形態にかかる体温計1のブロック構成図が示されている。この体温計1は、生体である人体2(図8参照)の体表面2A(図8参照)に接触する体温計本体3と、体温計本体3とは別体に設けられる表示装置4とを備えている。
まず、図7に示されるように、体温計本体3は、第1および第2温度測定手段である二つ(一対)の温度測定手段3A,3Bを備えている。温度測定手段3Aは、人体2の体表面2Aに接触する接触面300Aを有し、この体表面2Aの温度を第1の基準温度として測定する第1基準温度測定部としての体表面センサ31Aと、温度測定手段3Aの外気側に露出する外表面302Aを有するとともに、この外表面302Aの温度を第1の参照温度として測定する第1参照温度測定部としての外表面センサ33Aと、体表面センサ31Aおよび外表面センサ33Aの間に介装される第1の断熱材としての断熱材37Aとを備えている。
また、温度測定手段3Bは、温度測定手段3Aとは別体で設けられており、温度測定手段3Aの接触位置とは異なる位置の体表面2Aに接触する接触面300Bを有し、この体表面2Aの温度を第2の基準温度として測定する第2基準温度測定部としての体表面センサ31Bと、温度測定手段3Bの外気側に露出する外表面302Bを有するとともに、この外表面302Bの温度を第2の参照温度として測定する第2参照温度測定部としての外表面センサ33Bと、体表面センサ31Bおよび外表面センサ33Bの間に介装される第2の断熱材としての断熱材37Bとを備えている。
ここで、断熱材37Aと断熱材37Bとを異なる材料で構成して熱流束調整手段としても良いが、この場合、予めそれぞれの断熱材の熱抵抗値を測定しておく必要がある。本実施形態のように同じ材料の断熱材であれば、厚みの比が分かっていれば良い。
さらに、断熱材が同じ材料であれば、熱伝導率λが同じであるので、温度測定手段3Aと温度測定手段3Bとの体表面に対する接触熱抵抗の差も少ない。
ここで、体温計本体3の貼付位置は、人体2で皮膚温が外気の影響を受けにくく、比較的安定して体表面温度を測定できる額や後頭部、胸部、背中などの部位に設定されることが望ましい。また、断熱材37A,37Bは、温度測定手段3A,3Bを体表面2Aに貼り付けた際に、人体2の深部から体表面2Aおよび断熱材37A,37Bを通って外表面302A,302Bまでの熱流束が定常状態で一定と近似できるように、ある程度の大きさを有していることが望ましい。つまり、断熱材37A,37Bの寸法は、熱の移動が平衡状態である場合において、人体2の深部と温度測定手段3A,3Bが貼り付けられた体表面2Aの位置とを結ぶ方向に略直交する方向、具体的には体表面2Aに沿う方向の熱の移動を無視でき、人体2の深部から体表面2Aまでの熱の移動が1軸方向であるとみなせて、熱流束が一方向に移動していると近似できる寸法であることが望ましい。
また、温度測定手段3A,3Bは、体表面センサ31A,31Bおよび外表面センサ33A,33Bの他に、前述の図1に示されるように、A/D変換器34A,34Bと、送受信手段35A,35Bとをそれぞれ備えている。
A/D変換器34A,34Bは、体表面センサ31A,31Bおよび外表面センサ33A,33Bで変換された抵抗値や電圧値のアナログ信号をデジタル信号に変換し、送受信手段35A,35Bに出力する。もしくは、A/D変換器34A,34Bの代わりにCR発振を利用したRFコンバータを使用しても良い。
図9には、人体2の深部から体表面2Aおよび体温計本体3を通って外気までの温度分布のモデルが示されている。温度測定手段3Aと温度測定手段3Bとの温度分布モデルは同様であるので、図9では、温度測定手段3Aの温度分布モデルについて図示している。
温度測定手段3A自体にも熱抵抗(第1の熱抵抗値Ru1)が存在するため、温度測定手段3A内でも温度の降下が生じ、温度測定手段3Aの外表面302Aでは第1の外表面温度Tb2となる。外表面センサ33Aでは、この第1の外表面温度Tb2が測定されることとなる。さらに、温度測定手段3Aの外表面302Aと外気との間でも外気温接触部での熱放出があるため、温度が低下し、最終的に外気温Tambとなる。
図10には、本実施形態における体温計1の動作を示すフローチャートが示されている。
人体2(本実施形態では幼児の胸部)に体温計本体3を装着し、幼児を抱いた体温計1の操作者5は表示装置4を腕に装着する。操作者5が表示装置4の操作部43を操作することにより表示装置4のスイッチがONされると、送受信手段41が体温計本体3(温度測定手段3Aおよび温度測定手段3B)に電波を送信する。この電波による電磁誘導でアンテナコイル36A,36Bに起電力を発生させることにより体温計本体3にチャージを行う(ステップS1)。起電力により体温計本体3が起動し(ステップS2)、体表面センサ31A,31Bおよび外表面センサ33A,33Bが起動する。これらのセンサ31A,31B,33A,33Bが起動すると、体温計本体3は、送受信手段35A,35Bから表示装置4にスタンバイ信号を送信する(ステップS3)。
このようにして所定時間毎に体表面温度Tb1、Tb3および外表面温度Tb2,Tb4を測定して深部の温度Tcoreを演算し、記憶部45に蓄積する。
(8)温度測定手段3Aと温度測定手段3Bとにおける熱流束を、断熱材37Aと、断熱材37Bとの熱抵抗値を変えることによって調整できる。したがって、熱流束調整手段は、断熱材37Aと断熱材37Bとによって構成され、別途設ける必要がなく構造が簡単にできる。
(9)断熱材37Aと断熱材37Bは厚みだけが異なるので、その厚みの比率は、体表面センサ31Aと外表面センサ33A間の熱抵抗値,体表面センサ31Bと外表面センサ33B間の熱抵抗値との比率αに対応する。したがって、厚みの比率を利用して、生体の深部の温度が演算できる。
図11には、第三実施形態のブロック構成図が示されている。この図11に示されるように、体温計本体3は、第1および第2温度測定手段の一部として熱流束測定部5A,5Bを備え、これらの熱流束測定部5A,5Bは、前述の実施形態での中間センサ32A,32Bおよび外表面センサ33A,33Bを備えておらず、第1の熱流束測定部としての熱流束センサ51Aと、第2熱流束測定部としての熱流束センサ51Bとをそれぞれ備えている。これらの熱流束センサ51A,51Bは、熱流束測定部5A,5Bを体表面2Aに接触させて体温計1中の熱流束値をそれぞれ測定する。ここで、熱流束センサ51A,51Bは、それぞれ体表面2Aから所定区間(例えば外表面302Aまで)の間に互いに異なる熱抵抗値(第1の熱抵抗値および第2の熱抵抗値)を有する断熱材の中に埋め込まれており、熱流束センサ51A,51Bは、当該所定区間の熱流束Qu1,Qu2を測定する。
深部温度演算手段441には、次の式(12)および式(13)のいずれかが記憶されている。
(10)このような構成の体温計1であっても、前述の実施形態と同様に、実際の測定値から生体の深部の温度Tcoreが算出できるので、より正確な体温を測定できる。
ここで、前述の式(12)および式(13)に示されるように、深部の温度Tcoreの算出式には、熱抵抗値が含まれない。したがって、熱流束センサ51A,51Bが熱流束を測定する所定区間の熱抵抗値は、既知である必要はなく、互いに異なる値であればよい。つまり、これらの熱抵抗値を高精度に設定する必要がなく、互いに異なる熱抵抗値を有する断熱材を使用すればよいので、材料の選定や製造管理が容易となり、体温計1の製造が容易となる。
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
図12には、本実施形態にかかる体温計1の構成ブロック図が示されている。また、図13には、体温計本体3が人体2に装着された状態の拡大図が示されている。これらの図12および図13に示されるように、体温計本体3は、第1温度測定手段としての温度測定手段3Aおよび第2温度測定手段としての温度測定手段3Bの二つ(一対)の温度測定手段を備えている。
温度測定手段3Aは、人体2の体表面2Aに接触する接触面300Aを有し、この体表面2Aの温度を第1の体表面温度として測定する第1の測定部としての体表面センサ31Aと、温度測定手段3Aの外気側に露出する外表面302Aを有するとともに、この外表面302Aの温度を第1の外表面温度として測定する第1の測定部としての外表面センサ33Aと、体表面センサ31Aおよび外表面センサ33A間の中央に配置され当該位置の温度を第1の中間温度として測定する第1の測定部としての中間センサ32Aと、各センサ31A,33A,32Aが取り付けられ固定される断熱材37Aとを備えている。
また、温度測定手段3Aおよび温度測定手段3Bは、第一実施形態と同様に、互いに所定距離Lを有して配置されている。
また、温度測定手段3Aの断熱材37Aと、温度測定手段3Bの断熱材37Bとは異なる材料で構成され、これにより、断熱材37Aの熱抵抗値RuA2と断熱材37Bの熱抵抗値RuB2とは異なる値に設定されている。また、接触面300A,300Bから中間センサ32A,32Bまでの距離を設定することにより、接触面300A,300Bからそれぞれの中間センサ32A,32Bまでの熱抵抗値は予め設定された所定値となる。本実施形態では、中間センサ32A,32Bまでの熱抵抗値は、それぞれ熱抵抗値RuA1と熱抵抗値RuB1に設定されている。
また、第四実施形態では、制御手段44は、温度分布演算手段442および深部温度演算手段441を備えている。
温度分布演算手段442は、温度測定手段3Aにおいて、熱抵抗値(R=0)における体表面温度Tb1、熱抵抗値(R=RuA1)における中間温度Tb2、および熱抵抗値(R=RuA2)における外表面温度Tb5から、第七実施形態の式(14)を用いて第1の温度分布TA(R)を演算する。また、温度分布演算手段442は、温度測定手段3Bにおいても同様に、熱抵抗値(R=0)における体表面温度Tb3、熱抵抗値(R=RuB1)における中間温度Tb4、および熱抵抗値(R=RuB2)における外表面温度Tb6から、第2の温度分布TB(R)を演算する。
深部温度演算手段441は、これらの温度分布TA(R)および温度分布TB(R)を連立させてこれらの交点を求めることにより、深部の温度Tcoreを演算する。
(11)体温計1が二つの温度測定手段3A,3Bを備えているので、温度分布演算手段442によりそれぞれ得た温度分布TA(R)および温度分布TB(R)を用いて、深部温度演算手段441では深部の温度Tcoreを演算できる。つまり、表層部熱抵抗値Rsを算出する必要がないので、制御手段44の構成を簡略化できるとともに演算処理を迅速にできる。したがって、体温計1の応答性を向上させることができる。
また、体温計1が二つの温度測定手段3A,3Bを備えているので、温度分布TA(R)および温度分布TB(R)を用いて直接深部の温度を演算できるから、表層部熱抵抗値Rsを求めるために既知の体温計などによって予め深部の温度を測定する必要がなく、体温測定のための準備工程が不要となる。よって体温計1の体温測定時間を短縮できるとともに、体温計1の取扱性を向上させることができる。
次に、本発明の第五実施形態について説明する。第五実施形態は、第四実施形態における第1の測定部と第2の測定部との熱抵抗値が共通となっている点が異なる他は、第四実施形態と同様である。
温度測定手段3Aは、人体2の体表面2Aに接触する接触面300Aを有する断熱材37と、断熱材37と外気との間に設けられた第1の断熱材としての断熱材38Aとを備えている。一方、温度測定手段3Bは、温度測定手段3Aの接触位置とは異なる位置の体表面2Aに接触する接触面300Bを有する断熱材37と、断熱材37と外気との間に設けられた第2の断熱材としての断熱材38Bとを備えている。すなわち、断熱材37は、温度測定手段3Aと温度測定手段3Bとで共通しており、したがって、共通の熱抵抗値Ru0を有する。
なお、体表面2Aから中間センサ32A,32Bまでの熱抵抗値は既知の値であり、それぞれ熱抵抗値RuA1、熱抵抗値RuB1に設定されている。そして、本実施形態では、中間センサ32A,32Bの体表面2Aからの設置距離を等しくするなどの方法により、これらの熱抵抗値RuA1,RuB1は同じ値(RuA1=RuB1)に設定されている。
一方で、断熱材38Aと断熱材38Bとの熱抵抗値は互いに異なる値に設定されており、したがって、温度測定手段3A,3Bは、全体として異なる熱抵抗値となっているが、体表面センサ31A,31Bまでの熱抵抗値、中間センサ32A,32Bまでの熱抵抗値、および界面センサ39A,39Bまでの熱抵抗値は、それぞれ等しく設定されている。
(12)温度測定手段3A,3Bが共通の断熱材37に配置されているので、温度測定手段3A,3Bを一体的に構成することができるから、体温計1の取扱性を向上させることができる。
温度測定手段3A,3Bが全体として互いに異なる熱抵抗値を有しながら、体表面センサ31A,31Bの位置における熱抵抗値、中間センサ32A,32Bの位置における熱抵抗値、および界面センサ39A,39Bの位置における熱抵抗値がそれぞれ等しいので、深部温度演算手段441での深部の温度の演算において、これらの熱抵抗値が消去される。したがって、深部温度演算手段441での演算処理が簡単となり、演算処理を迅速に行える。
また、例えば体温計1の上から被服を着用して被服が体温計1に触れたり、体温計1を装着して寝具に横たわった際に寝具が触れたりすると、温度測定手段3A,3Bの熱抵抗値が変化するが、温度測定手段3A,3Bの全体の熱抵抗値が互いに違いさえすれば、深部の温度を正確に測定できる。したがって、体温計1を装着している間の姿勢や服装などの制限を少なくでき、体温計1の取扱性を向上させることができる。
以下、本発明の第六実施形態を図面に基づいて説明する。
図16には、本実施形態にかかる体温計1のブロック構成図が示されている。この体温計1は、生体である人体2(図17参照)の体表面に接触する体温計本体3と、体温計本体3とは別体に設けられる表示装置4とを備えている。
まず、図17に示されるように、体温計本体3は、人体2の体表面2Aに接触し、この体表面2Aの温度を検出する基準温度測定部としての体表面センサ31と、体温計本体3の外気側に露出する外表面30を有するとともに、この外表面30の温度を検出する参照温度測定部としての外表面センサ33と、体表面センサ31および外表面センサ33の間に介装される断熱材37とを備えている。この体温計本体3は、粘着剤などによって体表面センサ31側の面を人体2に貼付可能となっており、この粘着剤などにより、体温計本体3が体表面2Aに良好な接触圧力で密着できるように構成されている。本実施形態では、体温計本体3は幼児(人体2)の額に密着されている。
また、体温計本体3は、体表面センサ31および外表面センサ33の他に、前述の図1に示されるように、A/D変換器34と、送受信手段35とを備えている。
A/D変換器34は、体表面センサ31および外表面センサ33で変換された抵抗値や電圧値のアナログ信号をデジタル信号に変換し、送受信手段35に出力する。
送受信手段35は、アンテナコイル36を備え、A/D変換器34でデジタル信号に変換された温度値(抵抗値や電圧値)の信号を表示装置4側に電波送信する。
図19には、人体2の深部から体表面2Aおよび体温計本体3を通って外気までの温度分布のモデルが示されている。この図19に示されるように、人体2の深部から外気までの温度の伝達モデルにおいては、人体2の深部の温度Tcoreは略一定となっている。深部よりも外殻側の表層部では、皮膚の熱抵抗や外気温の影響により体温が下降する。また、体表面2Aと体温計本体3との間には、微視的には隙間が生じているため、この隙間での熱放出により、接触熱抵抗部でも温度が低下する。なお、実際に体温計本体3で体表面2Aの体温を測定する場合には、この接触熱抵抗部により低下した温度Tb1が測定されることとなる。
体温計本体3自体にも熱抵抗が存在するため、体温計本体3内でも温度の降下が生じ、体温計本体3の外表面30では温度Tb2となる。外表面センサ33では、この温度Tb2が測定されることとなる。さらに、体温計本体3の外表面30と外気との間でも外気温接触部での熱放出があるため、温度が低下し、最終的に外気温Tambとなる。
表層部および接触熱抵抗部を合わせた部分、つまり人体2の深部から体表面2Aまでの部分における熱流束Qs+tは、人体2の深部の体温Tcore、および熱抵抗Rs+Rtを用いると次式で表される。
この式に示されるように、体表面センサ31で測定された熱抵抗算出用の算出用体表面温度T0,b1と、外表面センサ33で測定された熱抵抗算出用の算出用外表面温度T0,b2と、熱抵抗算出用の深部の算出用深部体温T0,coreとがわかれば、深部から体表面2Aまでの部分の表層部熱抵抗値Rs+Rtが求められる。
ここで、記憶部45は、複数の人体2に関する温度情報を記憶可能に構成されており、表層部熱抵抗値Rs+Rtや深部の温度Tcoreなどが、各人体2毎に記憶されている。また、記憶部45は、表層部熱抵抗値Rs+Rtを算出する際に測定した算出用体表面温度T0,b1および算出用参照温度T0,b2などの測定位置を記憶可能となっている。なお、記憶部45には、前述の温度情報以外にも、例えば被測定者(人体2、幼児)の氏名、年齢、測定日時などの測定情報を記憶させてもよい。この場合に、これらの測定情報は、操作部43から入力されてもよい。
図20には、本実施形態における体温計1の動作を示すフローチャートが示されている。この図20に示されるように、体温計1で人体2の体温を測定するには、まず、その人体2における深部から体表面2Aまでの表層部熱抵抗値Rs+Rtを算出する体温測定準備工程を行う。
人体2(本実施形態では幼児の額)に体温計本体3を装着し、幼児を抱いた体温計1の操作者5は表示装置4を腕に装着する。操作者5が表示装置4の操作部43を操作することにより表示装置4のスイッチがONされると、送受信手段41が体温計本体3に電波を送信する。この電波による電磁誘導でアンテナコイル36に起電力を発生させることにより体温計本体3にチャージを行う(ステップS11)。起電力により体温計本体3が起動し(ステップS12)、体表面センサ31および外表面センサ33が起動する。これらのセンサ31,33が起動すると、体温計本体3は、送受信手段35から表示装置4にスタンバイ信号を送信する(ステップS13)。
制御手段44の熱抵抗算出手段443は、取得した算出用深部温度T0,coreと、熱流束算出手段444で算出した熱流束Qs+rとから、数式3によって人体2の深部から体表面2Aまでの表層部熱抵抗値Rs+Rtを算出する(ステップS20、熱抵抗算出工程)。制御手段44は、算出した表層部熱抵抗値Rs+Rtを記憶部45に記憶させて(ステップS21、記憶工程)体温測定準備を終了する。
図21は、体温計1の動作を示すフローチャートである。この図21において、体温計1で人体2の体温を測定する際には、まず前述のステップS11と同様に、表示装置4のアンテナコイル46からの電波によるアンテナコイル36に電磁誘導によって、体温計本体3にチャージを行う(ステップS31)。体温計本体3の各センサ31,33が起動すると(ステップS32)、体温計本体3は表示装置4にスタンバイ信号を送信する(ステップS33)。これにより、表示装置4は、体温計本体3が体温を測定する準備が整ったと判断し、記憶部45から人体2の表層部熱抵抗値Rs+Rtを読み出す(ステップS34)。そして、送受信手段41を介して体温計本体3に体温の測定開始信号を送信する(ステップS35)。
なお、制御手段44では、体表面センサ31および外表面センサ33からの温度情報を用いて深部の体温を演算するために、前述の選択手段によって「体温測定モード」が選択されている必要がある。
制御手段44の深部温度演算手段441では、体温計本体3から送信された体表面温度Tb1および外表面温度Tb2から本実施形態で示した前述の式によって深部の温度Tcoreを演算する(ステップS37、深部温度演算工程)。制御手段44は、記憶部45に温度Tcoreを記憶させるとともに(ステップS38)、表示部42に温度Tcoreを表示する(ステップS39)。操作者5は、幼児を抱いた状態で、腕時計型の表示装置4の表示部42で、温度Tcoreを確認できる。
このようにして所定時間毎に体表面温度Tb1および外表面温度Tb2を測定して深部の温度Tcoreを演算し、記憶部45に蓄積する。
また、人体2に固有の表層部熱抵抗値Rs+Rtは、変化が小さいので、体温計1を再び使用する場合にも、前回算出した表層部熱抵抗値Rs+Rtを用いることができるので、二回目からの測定時には、体温測定開始までの時間の短縮を図ることができる。この場合に、記憶部45に複数の人体2に対する表層部熱抵抗値Rs+Rtを記憶しておけば、操作部43で操作することによって前回算出した表層部熱抵抗値Rs+Rtを読み出して再度利用することができる。この場合には、体温測定工程を行う際に、操作部43によって人体2を特定するための生体選択を行えばよい。
(13)熱抵抗算出手段443が、人体2の算出用体表面温度T0,b1、算出用外表面温度T0,b2、断熱材37等の既知の熱抵抗値Ru0、および算出用深部温度T0,coreに基づいて表層部熱抵抗値Rs+Rtを算出するので、人体2の伝熱特性に応じた表層部熱抵抗値Rs+Rtを得ることができる。深部温度演算手段441は、この表層部熱抵抗値Rs+Rtを基に深部の温度Tcoreを算出するので、人体2の体型の違いなどによる影響を受けることなく、人体2の伝熱特性に応じて、深部の体温Tcoreを正確に演算できる。
また、人体2の深部から外気までの熱流束が一定であることを利用して、熱抵抗算出手段443が人体2の表層部熱抵抗値Rs+Rtを算出するので、従来の体温計のように熱流をキャンセルするためのヒータなどの加熱手段が不要となるから、体温計1の構成を簡単にできる。これにより体温計1の小型化をより一層促進できる。そして、従来の加熱手段が不要なので、体温計1の省電力化を促進できるとともに、体温計1を長時間体表面2Aに貼り付けていても安全であるから、体温計1の安全性、取扱性を向上させることができる。
送受信手段35,41がアンテナコイル36,46によって無線通信を行う構成となっているので、配線などが邪魔にならず、体温計1の取扱性を向上させることができる。
さらに、表示装置4が、腕時計型に形成されているので、操作者5が腕につけて表示部42を視認できる。したがって、本実施形態のように体温を測定したい幼児を抱いた状態で体温の表示を確認できるので、体温計1の操作性を向上させることができる。
図22には、本実施形態にかかる体温計1のブロック構成図が示されている。この体温計1は、生体である人体2(図23参照)の体表面に接触する温度測定手段としての体温計本体3と、体温計本体3とは別体に設けられる表示装置4とを備えている。
まず、図23に示されるように、体温計本体3は、人体2の体表面2Aに接触する接触面300を有し、体表面2Aの温度を検出する測定部としての体表面センサ31と、体温計本体3の外気側に露出する外表面30を有するとともに、この外表面30の温度を検出する測定部としての外表面センサ33と、体表面センサ31と外表面センサ33との中間位置に配置される測定部としての中間センサ32とを備え、これらの体表面センサ31、中間センサ32、および外表面センサ33は断熱材37に取り付けられ固定されている。この体温計本体3は、粘着剤などによって体表面センサ31側の面を人体2に貼付可能となっており、この粘着剤などにより、体温計本体3が体表面2Aに良好な接触圧力で密着できるように構成されている。
また、断熱材37は、体温計本体3を体表面2Aに貼り付けた際に、人体2の深部から体表面2Aおよび断熱材37を通って外表面30までの熱流束が外部の環境に影響されにくく安定するように、ある程度の大きさを有していることが望ましく、例えば断熱材37が縦横10cm以上の寸法を有する略矩形状に形成されることが考えられる。
また、体温計本体3は、体表面センサ31、外表面センサ33、および中間センサ32の他に、前述の図22に示されるように、A/D変換器34と、送受信手段35とを備えている。
A/D変換器34は、体表面センサ31、外表面センサ33、および中間センサ32で変換された抵抗値や電圧値のアナログ信号をデジタル信号に変換し、送受信手段35に出力する。もしくは、A/D変換器34の代わりにCR発振を利用したRFコンバータを使用しても良い。
送受信手段35は、アンテナコイル36を備え、A/D変換器34でデジタル信号に変換された温度値(抵抗値や電圧値)の信号を表示装置4側に電波送信する。
体温計本体3自体にも熱抵抗が存在するため、体温計本体3内でも温度の降下が生じ、体温計本体3の外表面30では温度Tb2となる。また、中間センサ32の位置では温度Tb2が測定され、外表面センサ33では、この温度Tb4が測定されることとなる。さらに、体温計本体3の外表面30と外気との間でも外気温接触部での熱放出があるため、温度が低下し、最終的に外気温Tambとなる。
ここで、前述の図25に示したように、人体2の深部から体表面2Aまでの熱の移動は1次元的に行われるものではないため、図26においても熱抵抗値と温度との関係は、曲線的となっている。
具体的には、温度分布T(R)は、熱抵抗値Rの多項式近似式として、次の式(14)で表される。
ここで、記憶部45は、複数の人体2に関する温度情報を記憶可能に構成されており、表層部熱抵抗値Rsや深部の温度Tcoreなどが、各人体2毎に記憶されている。また、記憶部45は、表層部熱抵抗値Rsを算出する際に測定した算出用体表面温度T0,b1、算出用中間温度T0,b2、および算出用外表面温度T0,b4などの測定位置を記憶可能となっている。なお、記憶部45には、前述の温度情報以外にも、例えば被測定者(人体2、幼児)の氏名、年齢、測定日時などの測定情報を記憶させてもよい。この場合に、これらの測定情報は、操作部43から入力されてもよい。
図27には、本実施形態における体温計1の動作を示すフローチャートが示されている。この図27に示されるように、体温計1で人体2の体温を測定するには、まず、その人体2における深部から体表面2Aまでの表層部熱抵抗値Rsを算出する体温測定準備工程を行う。
人体2(本実施形態では幼児の胸部)に体温計本体3を装着し、幼児を抱いた体温計1の操作者5は表示装置4を腕に装着する。操作者5が表示装置4の操作部43を操作することにより表示装置4のスイッチがONされると、送受信手段41が体温計本体3に電波を送信する。この電波による電磁誘導でアンテナコイル36に起電力を発生させることにより体温計本体3にチャージを行う(ステップS41)。起電力により体温計本体3が起動すると(ステップS42)、体表面センサ31、中間センサ32、および外表面センサ33が起動する。これらのセンサ31,32,33が起動すると、体温計本体3は、送受信手段35から表示装置4にスタンバイ信号を送信する(ステップS43)。
表示装置4の制御手段44は、体温計本体3から送信された算出用体表面温度T0,b1、算出用中間温度T0,b2、および算出用外表面温度T0,b4に基づいて温度分布演算手段442で定数a,b,cを決定することにより、温度分布T0(R)を演算する(ステップS47、温度分布演算工程)。
制御手段44の熱抵抗算出手段443は、取得した算出用深部温度T0,coreを、温度分布演算手段442で演算した温度分布T0(R)に代入することによって人体2の深部から体表面2Aまでの表層部熱抵抗値Rsを算出する(ステップS49、熱抵抗算出工程)。制御手段44は、算出した表層部熱抵抗値Rsを記憶部45に記憶させて(ステップS50)体温測定準備を終了する。
なお、制御手段44では、体表面センサ31、中間センサ32、および外表面センサ33からの温度情報を用いて深部の体温を演算するために、前述の選択手段によって「体温測定モード」が選択されている必要がある。
制御手段44の温度分布演算手段442では、体温計本体3から送信された体表面温度T、中間温度T、および外表面温度Tから、式(14)を用いて多項式近似の曲線近似を行うことにより、温度分布T(R)を演算する(ステップS57)。
深部温度演算手段441では、熱抵抗算出手段443で算出された表層部熱抵抗値Rsと、温度分布演算手段442で演算された温度分布T(R)とに基づき、深部の温度Tcoreを演算する(ステップS58、深部温度演算工程)。制御手段44は、記憶部45に温度Tcoreを記憶させるとともに(ステップS59)、表示部42に温度Tcoreを表示する(ステップS60)。操作者5は、幼児を抱いた状態で、腕時計型の表示装置4の表示部42で、温度Tcoreを確認できる。
このようにして所定時間毎に体表面温度Tb1、中間温度Tb2、および外表面温度Tb4を測定して深部の温度Tcoreを演算し、記憶部45に蓄積する。
また、人体2に固有の表層部熱抵抗値Rsは、変化が小さいので、体温計1を再び使用する場合にも、前回算出した表層部熱抵抗値Rsを用いることができるので、二回目からの測定時には、体温測定開始までの時間の短縮を図ることができる。この場合に、記憶部45に複数の人体2に対する表層部熱抵抗値Rsを記憶しておけば、操作部43で操作することによって前回算出した表層部熱抵抗値Rsを読み出して再度利用することができる。この場合には、体温測定工程を行う際に、操作部43によって人体2を特定するための生体選択を行えばよい。
(16)熱抵抗算出手段443が、人体2の深部から体表面2Aまでの温度分布T(R)を用いて、算出用深部温度T0,coreに基づいて表層部熱抵抗値Rsを算出するので、人体2の伝熱特性に応じた表層部熱抵抗値Rsを得ることができる。深部温度演算手段441は、この表層部熱抵抗値Rsに基づいて深部の温度Tcoreを算出するので、人体2の体型の違いなどによる影響を受けることなく、人体2の伝熱特性に応じて、深部の体温Tcoreを正確に演算できる。
また、人体2の深部から外気までにおける熱抵抗値と温度との関係を温度分布T(R)として演算し、この温度分布T(R)を用いて人体2の表層部熱抵抗値Rsを算出するので、従来の体温計のように熱流をキャンセルするためのヒータなどの加熱手段が不要となるから、体温計1の構成を簡単にできる。これにより体温計1の小型化をより一層促進できる。そして、従来の加熱手段が不要なので、体温計1の省電力化を促進できるとともに、体温計1を長時間体表面2Aに貼り付けていても安全であるから、体温計1の安全性、取扱性を向上させることができる。
前記第一実施形態では、深部温度演算手段は、式(6)を演算式として記憶し、第1の体表面温度Tb1、第1の中間温度Tb2、第2の体表面温度Tb3、および第2の中間温度Tb4から直接深部の温度Tcoreを演算するものに限らない。例えば、人体の深部から外気までの熱流束Q、および人体の深部から体表面までの部分の熱抵抗値Rs+Rtを求め、これらの熱流束Qおよび熱抵抗値Rs+Rtを用いて深部の温度Tcoreを演算するように構成してもよい。
図29は、本発明の体温計の変形例を示すブロック構成図である。この図29に示されるように、制御手段44は、深部温度演算手段441の他に、体表面温度および中間温度とに基づいて、体表面2Aから界面301A,301Bまでの間の熱流束Qu1,Qu2を算出する熱流束算出手段444と、熱流束算出手段444で算出された熱流束Qu1,Qu2に基づいて、人体2の深部から体表面2Aまでの部分の表層部熱抵抗値Rs+Rtを算出する熱抵抗算出手段443とを備えている。また、深部温度演算手段441は、熱抵抗算出手段443で算出された熱抵抗値Rs+Rtに基づいて、人体2の深部の温度Tcoreを演算するように構成されている。
具体的には、熱流束算出手段444には、前述の式(1)および次の式(15)に表される算出式が記憶されており、これらの算出式により熱流束Qu1,Qu2を算出する。
つまり、例えば深部温度演算手段441に式(16)が記憶されている場合には、体表面センサ31Aから得た第1の体表面温度Tb1および第1の中間温度Tb2、熱抵抗値Ru0を用いて深部の温度Tcoreを演算すればよい。
このような制御手段44の構成によれば、人体2の伝熱特性に応じた表層部熱抵抗値Rs+Rtを得ることができるので、人体2の体型の違いなどによる影響を受けることなく、人体2の伝熱特性に応じて、深部の体温Tcoreを正確に演算できる。
なお、体型が急激に変化するなどして人体2の伝熱特性が変化した場合には、もう一度二つの体表面センサ31A,31Bおよび中間センサ32A,32Bによって第1の体表面温度Tb1および第2の体表面温度Tb3と、第1の中間温度Tb2および第2の中間温度Tb4を測定して熱流束Qu1,Qu2および表層部熱抵抗値Rs+Rtを算出すればよい。
体表面測定手段および参照温度測定部は、2つずつ設けられるものに限らず、3つ以上の複数個設けられていてもよい。
深部温度演算手段は、前記第二実施形態のように式(11)を演算式として記憶し、第1の体表面温度Tb1、第1の外表面温度Tb2、第2の体表面温度Tb3、第2の外表面温度Tb4、および第1の熱抵抗値Ru1と第2の熱抵抗値Ru2との比率αから直接深部の温度Tcoreを演算するものに限らない。例えば、人体の深部から外気までの熱流束Q、および人体の深部から体表面までの部分の熱抵抗値Rs+Rtを求め、これらの熱流束Qおよび熱抵抗値Rs+Rtを用いて深部の温度Tcoreを演算するように構成してもよい。
図30は、本発明の体温計の変形例を示すブロック構成図である。この図30に示されるように、制御手段44は、深部温度演算手段441の他に、体表面温度および外表面温度とに基づいて、体表面2Aから外表面302A,302Bまでの間の熱流束Qu1,Qu2を算出する熱流束算出手段444と、熱流束算出手段444で算出された熱流束Qu1,Qu2に基づいて、人体2の深部から体表面2Aまでの部分の表層部熱抵抗値Rs+Rtを算出する熱抵抗算出手段443とを備えている。また、深部温度演算手段441は、熱抵抗算出手段443で算出された熱抵抗値Rs+Rtに基づいて、人体2の深部の温度Tcoreを演算するように構成されている。
具体的には、熱流束算出手段444には、前述の式(7)および次の式(19)に表される算出式が記憶されており、これらの算出式により熱流束Qu1,Qu2を算出する。
つまり、例えば深部温度演算手段441に式(21)が記憶されている場合には、体表面センサ31Aから得た第1の体表面温度Tb1および第1の外表面温度Tb2、第1の熱抵抗値Ru1を用いて深部の温度Tcoreを演算すればよい。
このような制御手段44の構成によれば、人体2の伝熱特性に応じた表層部熱抵抗値Rs+Rtを得ることができるので、人体2の体型の違いなどによる影響を受けることなく、人体2の伝熱特性に応じて、深部の体温Tcoreを正確に演算できる。
なお、体型が急激に変化するなどして人体2の伝熱特性が変化した場合には、もう一度二つの体表面センサ31A,31Bおよび外表面センサ33A,33Bによって第1の体表面温度Tb1および第2の体表面温度Tb3と、第1の外表面温度Tb2および第2の外表面温度Tb4を測定して熱流束Qu1,Qu2および表層部熱抵抗値Rs+Rtを算出すればよい。
前記第六実施形態において、熱抵抗算出手段は、表層部熱抵抗値を体表面温度と外表面温度とを用いて求めるものに限らず、例えば体表面温度と外気温度とから求めてもよい。
図31には、体温計1の変形例の構成ブロック図が示されている。この図31に示されるように、体温計本体3には、体表面センサ31、A/D変換器34、および送受信手段35が設けられている。一方、表示装置4には、前記第六実施形態と同様の送受信手段41、表示部42、操作部43、制御手段44、および記憶部45の他、外気温度を測定する参照温度測定部(外気温度測定手段)としての外気センサ47と、A/D変換器48とが設けられている。これらの外気センサ47およびA/D変換器48は、前記第六実施形態の外表面センサ33およびA/D変換器34と同様の構成となっている。
したがって、熱流束算出手段444では、前述の図19における算出用体表面温度T0,b1と算出用外気温度T0,ambとから表層部熱抵抗値Rs+Rtを次式により算出する。
また、曲線近似は、多項式近似に限らず、対数近似、指数近似など、任意の近似方式を採用できる。
なお、体温計本体と表示装置とが別体ではなく、一体に構成されている場合には、体温計に別途算出用深部温度を無線通信によって受信するための受信手段を設けてもよい。
体温計は、前記実施形態のように表示装置4と体温計本体3とが別体で構成されている場合に、表示装置4が複数の体温計本体3の情報を管理するように構成されていてもよい。この場合には、各体温計本体3を識別できるIDコードなどを設け、表示装置4で体温計本体3を認識、管理できるように構成すればよい。
また、体温計の情報を端末などに送って複数個の体温計の情報を管理してもよい。この場合には、端末に生体ごとの体温データなどを蓄積、管理できるので、操作性が向上する。また、このような構成では、使用する体温計を変更した場合でも以前に算出した体温データなどを端末から取得できるので、体温計の利便性を向上させることができる。
表示体の形状は、腕時計に限らず、例えば据え置きであってもよいし、その他ペンダント式などにしてもよい。
したがって、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (8)
- 生体の第1の体表面に接触可能に構成されるとともに、前記第1の体表面からの熱抵抗値が互いに異なる位置での温度をそれぞれ測定可能な3つの測定部で構成される第1温度測定手段と、
前記第1の体表面とは所定距離離れた位置の第2の体表面に接触可能に構成されるとともに、前記第2の体表面からの熱抵抗値が互いに異なる位置での温度をそれぞれ測定可能な3つの測定部で構成される第2温度測定手段と、
前記第1温度測定手段の熱流束値と前記第2温度測定手段の熱流束値とを異なる値にする熱流束調整手段と、
前記第1温度測定手段の各測定部で検出された温度とその各測定部における各熱抵抗値とを用いて曲線近似により、熱抵抗値と温度との関係を示す第1の温度分布を演算するとともに、前記第2温度測定手段の各測定部で検出された温度とその各測定部における各熱抵抗値とを用いて曲線近似により、熱抵抗値と温度との関係を示す第2の温度分布を演算する温度分布演算手段と、
前記第1の温度分布および前記第2の温度分布より前記生体の深部の温度を演算するように構成された深部温度演算手段とを備え、
前記所定距離は、前記第1温度測定手段と前記第2温度測定手段との間での前記各体表面に沿う方向の熱移動が無視できる距離に設定されている
ことを特徴とする体温計。 - 請求項1に記載の体温計において、
前記温度分布演算手段は、多項式近似により前記温度分布を演算するように構成される
ことを特徴とする体温計。 - 請求項1または請求項2に記載の体温計において、
前記測定部の少なくとも一つは、前記生体の前記体表面に接触し、当該体表面の温度を測定する
ことを特徴とする体温計。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の体温計において、
前記深部温度演算手段で演算された前記深部の温度を表示する表示部を有する表示装置と、
第1温度測定手段および第2温度測定手段を有する体温計本体とを備え、
前記表示装置と前記体温計本体とは、別体で構成されている
ことを特徴とする体温計。 - 請求項4に記載の体温計において、
前記深部温度演算手段は、前記表示装置に設けられている
ことを特徴とする体温計。 - 請求項4または請求項5に記載の体温計において、
前記表示装置および前記体温計本体は、無線通信により互いに情報の送受信が可能な送受信手段をそれぞれ備えている
ことを特徴とする体温計。 - 請求項1から請求項6のいずれかに記載の体温計において、
前記体温計本体は、前記生体の体表面に貼付可能に構成されている
ことを特徴とする体温計。 - 請求項1から請求項7のいずれかに記載の体温計を有する
ことを特徴とする電子機器。
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